JP3848714B2 - エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸およびその第二鉄錯塩の製法 - Google Patents

エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸およびその第二鉄錯塩の製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸(以下、EDDSと略記する)のメソ体とラセミ体の異性体混合物から、夫々の異性体およびそれらの第二鉄錯塩を単離した状態で製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EDDSは従来から生分解性化合物として公知であり、その第二鉄錯塩もまた優れた生分解性を有している。またEDDSの第二鉄錯塩は、露光済のハロゲン化銀写真感光材料を処理するための写真用処理剤として利用できることも明らかにされている(特開平4−313752号など)。更にEDDS第二鉄錯塩の製法については、例えば特開平7−2745号などにその記述が見られる。
【0003】
ところでEDDSの[S,S]体は、天然物であるL−アスパラギン酸と1,2−ジブロモエタンを原料として下記の反応により製造できることが知られており、これは例えばInorganic Chemistry第7巻(1968)の第2405〜2412頁にも記述されている。
【0004】
【化1】
Figure 0003848714
【0005】
この方法では、L−アスパラギン酸が工業原料としては高価であり、しかも1,2−ジブロモエタンは変異原生物質に指定されている化合物であってその取扱いに問題があるところから、工業的製法としての汎用性に欠ける。
【0006】
そこで安価且つ容易に入手できる原料を用いた合成法として、下記式で示される様に無水マレイン酸とエチレンジアミンとをアルカリの存在下で反応させる方法が提案された(米国特許第3,158,635号など)。
【0007】
【化2】
Figure 0003848714
【0008】
ところがこの方法では、合成されるEDDSが2個の不斉炭素原子の存在によって、ラセミ体である[S,S],[R,R]とメソ体である[R,S]の合計3種類の光学異性体の混合物として生成するため、各異性体に特有の作用効果を有効に活用しようとするとこれを分離しなければならないが、工業的に実用可能な分離法が確立されていないため、光学異性体混合物としてしか利用されておらず、該光学異性体の第二鉄錯塩についても同様である。また本発明者らが確認したところによると、EDDSあるいはその第二鉄錯塩の中でも特にEDDSラセミ体あるいはその第二鉄錯塩は、生分解性において特に優れており、EDDSラセミ体第二鉄錯塩を単離した状態で製造することができれば、その特性を一層有効に活用できると考えられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、生分解性を有し、写真用処理剤などとして有用なEDDSおよびその第二鉄錯塩のメソ体およびラセミ体を、夫々の異性体として単離した状態で製造することのできる方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係る製法とは、
(1) EDDSのメソ体とラセミ体の異性体混合物、
(2) 上記ラセミ体に対しFe換算で略等モル量の四三酸化鉄、
(3) 上記メソ体とラセミ体の総和に対し略等モル量のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を
水溶液中で加熱反応させ、上記ラセミ体の第二鉄錯塩を水溶液として分離し、あるいは更に、この水溶液を濃縮および/もしくは冷却し、該EDDSラセミ体第二鉄錯塩を結晶として得るところに要旨が存在する。
【0011】
また本発明に係る他の製法は、
(1) EDDSのメソ体とラセミ体の異性体混合物、
(2) 上記ラセミ体に対しFe換算で略等モル量の四三酸化鉄、
(3) 上記メソ体とラセミ体の総和に対し略等モル量のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を
水溶液中で加熱反応させ、上記ラセミ体の第二鉄錯塩を水溶液として分離した後、得られる不溶物を、該不溶物中のメソ体に対し、Fe換算で略等モル量以上の四三酸化鉄、および略等モル量以上のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物と水溶液中で加熱反応させ、上記メソ体の第二鉄錯塩を水溶液として分離し、あるいは更に、この水溶液を濃縮および/もしくは冷却し、EDDSメソ体第二鉄錯塩を結晶として得るところに要旨が存在する。
【0012】
更に本発明に係るEDDSの製法は、上記と同様に
(1) EDDSのメソ体とラセミ体の異性体混合物、
(2) 上記ラセミ体に対しFe換算で略等モル量の四三酸化鉄、
(3) 上記メソ体とラセミ体の総和に対し略等モル量のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を
水溶液中で加熱反応させ、上記ラセミ体の第二鉄錯塩を水溶液として分離し、該水溶液に過剰量のアルカリを加えFe成分を水酸化鉄として除去した後、濾液を酸性にしてEDDSのラセミ体を得、あるいは上記加熱反応後に不溶物として残る固形物をアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物の水溶液で処理して可溶物を溶出させ、得られるアルカリ水溶液を酸性にしてEDDSのメソ体を得るところにその特徴が存在する。
【0013】
【発明の実施の形態】
上記の様に本発明では、無水マレイン酸とエチレンジアミンとの反応等によって製造されるEDDSのメソ体とラセミ体からなる異性体の混合物から、それら各異性体あるいは第二鉄錯塩を実質的に単離した状態で製造するところに特徴を有しており、その特徴は、EDDSのメソ体とラセミ体のアンモニアあるいはアルカリ金属水酸化物の水溶液中における四三酸化鉄との反応速度に差があるという、これまで確認されておらない新たな性質を活用し、該反応速度の差を利用してEDDSおよび第二鉄錯塩のメソ体とラセミ体とを、単離した状態で製造可能にしたところにある。
【0014】
即ち本発明者らが確認したところによると、EDDSのメソ体とラセミ体が混在する異性体混合物を、アンモニアあるいはアルカリ金属水酸化物の水溶液中で四三酸化鉄と反応させると、各異性体の第二鉄錯塩が生成するが、その生成反応速度はメソ体とラセミ体との間でかなり異なり、特に上記処理に用いられる四三酸化鉄と、アンモニアもしくはアルカリ水酸化物のEDDSに対する使用量を適正に調整してやれば、まずEDDSのラセミ体のみが第二鉄錯塩を形成して可溶化する。従って、この水溶液を不溶性で残ったEDDSのメソ体などと分離すると、EDDSラセミ体第二鉄錯塩のみを実質的に単離した状態で得ることができる。また、残された不溶物を、再び適量の四三酸化鉄と、アンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を含む水溶液中で加熱処理すると、該不溶物中に含まれるEDDSのメソ体が第二鉄錯塩を形成して可溶化し、EDDSメソ体第二鉄錯塩を実質的に単離した状態で得ることができるのである。
【0015】
また、上記の様にして得られるEDDS第二鉄錯塩のメソ体あるいはラセミ体の水溶液に過剰量のアルカリを加えると、錯塩が分解しFeが水酸化鉄として沈殿すると共に、EDDSのメソ体あるいはラセミ体は4・アルカリ塩として可溶化するので、上記水酸化鉄の沈殿を除去した後の水溶液を塩酸や硫酸などの酸によって酸性にすると、メソ体あるいはラセミ体はEDDS・4Hとなって沈殿するので、EDDSメソ体第二鉄錯塩からはEDDS・4Hメソ体を、またEDDSラセミ体第二鉄錯塩からはEDDS・4Hラセミ体を、夫々単離した状態で得ることが可能となる。
この方法を、EDDSラセミ体またはその第二鉄錯塩、およびEDDSメソ体またはその第二鉄錯塩の製法に分けて更に詳細に説明する。
【0016】
まず、EDDSラセミ体第二鉄錯塩を製造するに当たっては、 (1)EDDSのメソ体とラセミ体の異性体混合物、 (2)上記ラセミ体に対しFe換算で略等モル量の四三酸化鉄、および (3)上記メソ体とラセミ体の総和に対し略等モル量のアンモニア(またはアルカリ金属水酸化物)を、水溶液中で加熱反応させる。そうすると、上記異性体混合物中のラセミ体が優先的に四三酸化鉄およびアンモニア(またはアルカリ金属水酸化物)と反応して第二鉄錯塩、たとえば[EDDSラセミ体]4-・Fe3+・NH4 +を形成し、水に可溶化する。そして異性体混合物中に含まれるEDDSメソ体は、その一部が1・アンモニウム塩を形成しても錯塩を形成し難く不溶物として残存し、未反応で残存する四三酸化鉄も不溶物として残るので、この反応液を濾過して不溶物を除去すると、実質的にEDDSラセミ体第二鉄錯塩のみを水溶液として得ることができる。
【0017】
該EDDSラセミ体第二鉄錯塩の生成反応においては、EDDS異性体混合物中のラセミ体に対し、四三酸化鉄をFe換算で略等モル量使用すると共に、メソ体とラセミ体の総和に対し略等モル量のアンモニア(またはアルカリ金属水酸化物)を使用し、それらを水溶液中で加熱反応させる。ここで、四三酸化鉄の使用量が多過ぎると、EDDSメソ体までも錯塩を形成して可溶化し、得られるEDDSラセミ体第二錯塩の純度が低くなり、逆に不足する場合は、一部のEDDSラセミ体が錯塩を形成することなく未反応のままで不溶物として残存し、EDDSラセミ体第二鉄錯塩としての収率が低下してくる。またアンモニア(またはアルカリ金属水酸化物)の使用量が多過ぎる場合は、EDDSメソ体の一部が2・アンモニウム塩(またはアルカリ金属塩)を形成し可溶化してEDDSラセミ体第二鉄錯塩の純度が低下し、逆に不足する場合は、pH低下によりEDDSメソ体の反応性も高くなるため、前記選択的錯塩形成反応が阻害され、EDDSラセミ体第二鉄錯塩の収率が低下してくる。
【0018】
従って、EDDSラセミ体第二鉄錯塩生成反応を行なう際には、上記異性体混合物中のEDDSラセミ体に対して四三酸化鉄を略等モル量と、アンモニア(またはアルカリ金属水酸化物)をメソ体とラセミ体の総和に対し等モル量使用するのが最善であるが、工業化するに当たっては等モル量から若干外れる場合もあり、±10重量%程度であれば許容される。尚、上記錯塩形成反応はpH3〜7の範囲、より好ましくはpH4〜6の範囲で行なうのがよく、pHが高すぎる場合は錯塩形成反応速度が遅くなって満足のいく収率が得られ難くなり、逆に低過ぎる場合はEDDSラセミ体の選択的錯塩形成反応が阻害されてメソ体までも錯塩を形成して可溶化し易くなり、目的物の純度が低下してくる。反応温度は特に制限されないが、常温では上記の錯塩形成反応速度が遅くて処理に長時間を要し、また高すぎる場合は、錯塩形成反応速度が高くなりすぎて前記選択的錯塩形成反応が阻害され、目的物の純度が低下傾向を示す様になるので、好ましくは30〜80℃、より好ましくは50〜70℃の範囲で行なうのがよい。
【0019】
この工程で不溶物を除去して得られる水溶液は、実質的にEDDSラセミ体第二鉄錯塩と少量のアンモニア(またはアルカリ金属水酸化物)を含む水溶液であり、これを濃縮および/もしくは冷却すると、EDDSラセミ体第二鉄錯塩を高純度の結晶として得ることができる。
【0020】
またEDDS・4Hラセミ体を得たい場合は、上記EDDSラセミ体第二鉄錯塩を含む水溶液に過剰量のアルカリを加え、錯塩を分解させてFe成分を水酸化鉄として不溶化し分離除去してから、水溶液を塩酸や硫酸、硝酸などの酸で酸性にすると、EDDS・4Hラセミ体が不溶化して沈殿するので、これを濾取するとEDDS・4Hラセミ体を高純度品として得ることができる。
【0021】
一方上記ラセミ体第二鉄錯塩を得る工程で、可溶化したEDDSラセミ体第二鉄錯塩を含む水溶液を濾過した後の残留物として得られる不溶物中には、不純物として混入することのある不溶物や少量の四三酸化鉄、および錯塩を形成していないEDDSメソ体が含まれているが、該沈殿(不溶物)中のEDDSメソ体に対し、Fe換算で略等モル量以上の四三酸化鉄と、略等モル量以上、好ましくは2倍モル以上のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を加え、水溶液中で加熱反応させると、上記EDDSメソ体は第二鉄錯塩を形成して水に可溶化するので、不溶性で残存する四三酸化鉄等と濾別すると、EDDSメソ体の第二鉄錯塩を水溶液として得ることができ、これを濃縮および/もしくは冷却すると、EDDSメソ体第二鉄錯塩を高純度の結晶として得ることができる。
【0022】
該EDDSメソ体第二鉄錯塩を生成する際においては、系中にEDDSラセミ体は実質的に含まれていないので、反応条件はもっぱら錯塩生成効率を主体にして設定すればよく、好ましいpHは3〜7、より好ましくは4〜6、好ましい温度は60〜90℃、より好ましくは70〜80℃の範囲である。
【0023】
またEDDS・4Hメソ体を得たい場合は、
▲1▼上記EDDSメソ体第二鉄錯塩を含む水溶液に過剰量のアルカリを加え、錯塩を分解させてFe成分を水酸化鉄として不溶化し分離除去してから、水溶液を塩酸や硫酸、硝酸などの酸で酸性にし、あるいは
▲2▼前記EDDSラセミ体第二鉄錯塩を得る際に、EDDSラセミ体第二鉄錯塩を水溶液として分離した後に残る不溶物を、過剰量のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を含む水溶液で処理し、EDDSメソ体を4・アルカリ塩として可溶化してから、不溶性で残る不純物および水酸化鉄を分離除去し、得られるアルカリ水溶液を塩酸や硫酸、硝酸などの酸で酸性にすると、
EDDS・4Hメソ体が不溶化して沈殿するので、これを濾取するとEDDS・4Hメソ体を高純度品として得ることができる。
【0024】
かくして本発明によれば、無水マレイン酸とエチレンジアミン等を原料として得られるEDDS異性体混合物から、四三酸化鉄およびアンモニア(またはアルカリ金属水酸化物)との錯塩生成反応速度差を活用することによって、EDDSのメソ体とラセミ体あるいはそれらの第二鉄錯塩をそれぞれ高純度物として効率よく製造することができる。
【0025】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0026】
実施例1
撹拌機および温度計を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、EDDS・4H(メソ体/ラセミ体=45.4/54.6重量比)200g(純度87.0%、メソ体:0.27モル、ラセミ体:0.33モル)と、25%アンモニア水40.5g(0.60モル)、水813gおよびFe34 25.3g(Feとして0.33モル)を入れ、60℃で3時間反応を行ない、同温度で反応液中に空気を吹き込んで鉄錯塩中の鉄の酸化を行なった。反応終了後、反応液を濾過することによって、可溶物と不溶物に分離した。
【0027】
得られた可溶物(濾液)を減圧下に液量が200gとなるまで濃縮し、液温を20℃まで冷却すると結晶が析出するので、この結晶を遠心分離器で分離し、少量の水で洗浄してから60℃で15時間乾燥すると、淡黄色の結晶粉末63.4gが得られた。
【0028】
この結晶粉末は、下記の分析結果からも明らかである様にEDDSラセミ体の第二鉄アンモニウム錯塩であり、上記収量から求められる仕込みEDDS・4Hに対する収率は28.4%であった。
Figure 0003848714
【0029】
実施例2
上記実施例1と同様にして、EDDS・4Hメソ体/ラセミ体混合物と、アンモニア水、水およびFe34 を加熱反応させ、反応終了後、反応液を濾過することによって得られた可溶物に、20%NaOH水溶液(NaOHとして1.3モル)を加え、生成した沈殿(水酸化鉄)を濾別した後、濾液に塩酸を加えてpH2.5に調整すると白色の沈殿が析出するので、これを水で洗浄してから乾燥すると、61.7gの白色粉末が得られた。該白色粉末のIR分析および液体クロマトグラフィー分析の結果、EDDS・4Hラセミ体が99.5%、EDDS・4Hメソ体が0.5%であり、仕込んだEDDS異性体混合物中のEDDS・4Hラセミ体に対する回収率は65%であることが確認された。
【0030】
実施例3
撹拌機および温度計を取り付けた500mlの四つ口フラスコに、上記実施例1で濾別した不溶物(未反応のEDDSメソ体)100g(0.34モル)を入れ、次いで25%アンモニア水23.1g(0.34モル)、水400gおよびFe34 25.5g(Fe換算で0.34モル)を入れ、80℃で10時間反応を行なった後、60℃で反応液中に空気を吹き込んで鉄錯塩中の鉄の酸化を行なった。
【0031】
反応終了後、不溶物を濾去し、濾液を減圧して反応液量が200gになるまで濃縮した。次いで液温を20℃まで冷却すると結晶が析出するので、この結晶を遠心分離器で分離し、少量の水で洗浄してから60℃で15時間乾燥すると、淡黄色の結晶粉末66.4gが得られた。
【0032】
この結晶粉末は、下記の分析結果からも明らかである様にEDDSメソ体の第二鉄アンモニウム錯塩であり、上記収量から求められる仕込みEDDS・4Hに対する収率は53.9%であった。
Figure 0003848714
【0033】
尚参考のため、L−アスパラギン酸と1,2−ジブロモエタンを原料として合成したEDDS・4Hの[S,S]異性体を用いて得られたEDDS第二鉄アンモニウムの液体クロマトグラムを図5に、又上記で得たEDDS・4HのIRスペクトル(KBr法)を図6に示す。
【0034】
実施例4
前記実施例1で可溶物を濾取した後の不溶物に、25%濃度のアンモニア水93.1gを加えて溶解させ、残存する不溶物を濾別してから希塩酸を加えてpH2.5に調整すると白色の沈殿が析出するので、これを水で洗浄してから乾燥すると、54.7gの白色粉末が得られた。該白色粉末のIR分析および液体クロマトグラフィー分析の結果、EDDS・4Hメソ体が92.5%、EDDS・4Hラセミ体が7.5%であり、仕込んだEDDS異性体混合物中のEDDS・4Hメソ体に対する回収率は69%であることが確認された。
【0035】
比較例
撹拌機および温度計を取り付けた2リットルの四つ口フラスコに、EDDS・4H(メソ体/ラセミ体=45.4/54.6重量比)200g(純度87.0%、メソ体:0.27モル、ラセミ体:0.33モル)と、25%アンモニア水40.5g(0.60モル)、水813gおよびFeCl3 232g(Feとして0.6モル)を入れ、25℃で1時間反応を行なった。この反応液を液体クロマトグラフ分析したところ、未反応のEDDSは確認されなかったので、反応液をそのまま減圧して反応液量が300gとなるまで濃縮した。濃縮工程で少量の結晶が析出したので、濾取してその成分を調べたところ、塩化アンモニウムであることが確認された。その後更に減圧濃縮したが、EDDS第二鉄錯塩の結晶を得ることはできなかった。
【0036】
実施例5
温度および時間によるEDDS・4Hメソ体とEDDS・4Hラセミ体との第2錯塩形成反応性を調べるため、下記の実験を行なった。
すなわち、撹拌機および温度計を取り付けた500mlの四つ口フラスコに、メソ体純度99.8%のEDDS・4H:30.0g(0.10モル)、ラセミ体純度99.5%のEDDS・4H:30.0G(0.10モル)、Fe34 :16.0g(0.20モル)、25%アンモニア水:14.0g(0.20モル)および水:400gを仕込み、下記表1に示す温度で同表に示す時間撹拌した後、第二鉄錯塩として溶解した溶液のEDDS第二鉄錯塩濃度と液体クロマトグラフィー分析結果から、各温度および時間におけるメソ体とラセミ体の反応率を調べた。
【0037】
結果は表1に示す通りであり、反応温度と反応時間によってメソ体とラセミ体との反応率はかなり異なるが、いずれの場合もメソ体よりもラセミ体の反応率の方が高い反応率を示している。また特に反応温度が高くなると、ラセミ体は殆んど全てが反応しメソ体の反応率が高まってくる結果、反応によって生成する第二錯塩のラセミ体純度は低下してくる。従って、ある程度高い反応率を確保しつつラセミ体を選択的に反応させて生成物のラセミ体純度を高めるには、適当な反応温度と反応時間を採用することが望ましい。
【0038】
【表1】
Figure 0003848714
【0039】
表1の結果から考えると、反応温度を70℃に設定した場合は0.5時間以内、反応温度を60℃に設定した場合は2時間前後、反応温度を50℃に設定した場合は3〜4時間程度、反応温度を30℃に設定した場合は4時間程度以上に設定することにより、メソ体の反応率をそれほど高めることなく、ラセミ体の反応率を十分に高め得ることが分かる。
【0040】
尚表1には、得られた反応液を夫々60%まで濃縮してから20℃まで冷却することによって生成した結晶の第二鉄錯塩のメソ体/ラセミ体純度を併記しており、この値からも明らかである様に、濃縮・冷却によって生成する結晶のラセミ体純度は反応液のラセミ体純度よりも格段に高くなっている。これは、ラセミ体・メソ体混合系の第二錯塩から結晶化を行なう場合、第二鉄錯塩のラセミ体が優先的に析出するためと考えられる。但し、反応液のラセミ体純度が85%を下回ると、反応液中のメソ体がラセミ体に対して不純物として作用するため、反応液を濃縮しても第二鉄錯塩の結晶が析出しなくなる。そして、反応液中のメソ体濃度が15%程度までであれば、濃縮・冷却によりラセミ体鉄錯塩の結晶を得ることができ、ラセミ体単離の目的を十分に果たし得ることが分かる。
【0041】
【発明の効果】
以上の様に本発明によれば、無水マレイン酸とエチレンジアミン等を原料として得られるEDDS光学異性体混合物を用いて、簡単な方法でEDDSのメソ体およびラセミ体あるいはそれらの第二鉄錯塩を、それぞれ個別に高純度物として製造し得ることになった。特に本発明によれば、上記異性体の中でも特に生分解性に優れたラセミ体またはその第二鉄錯塩を単離した状態で製造することができ、EDDSまたはその第二鉄錯塩の特長を一層効果的に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得たEDDSラセミ体第二鉄アンモニウム塩の液体クロマトグラムである。
【図2】実施例1で得たEDDS・4HのIRスペクトルである。
【図3】実施例2で得たEDDSメソ体第二鉄アンモニウム塩の液体クロマトグラムである。
【図4】実施例2で得たEDDS・4HのIRスペクトルである。
【図5】L−アスパラギン酸および1,2−ジブロモエタンより合成したEDDS・4Hの[S,S]異性体を用いて得られたEDDS第二鉄アンモニウムの液体クロマトグラムである。
【図6】L−アスパラギン酸および1,2−ジブロモエタンより合成したEDDS・4HのIRスペクトルである。

Claims (6)

  1. (1) エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸のメソ体とラセミ体の異性体混合物、
    (2) 上記ラセミ体に対しFe換算で略等モル量の四三酸化鉄、
    (3) 上記メソ体とラセミ体の総和に対し略等モル量のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を
    水溶液中で加熱反応させ、上記ラセミ体の第二鉄錯塩を水溶液として分離することを特徴とする、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸ラセミ体第二鉄錯塩の製法。
  2. 上記請求項1で水溶液として分離されるラセミ体の第二鉄錯塩水溶液を濃縮および/もしくは冷却し、該第二鉄錯塩を結晶として得ることを特徴とするエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸ラセミ体第二鉄錯塩の製法。
  3. (1) エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸のメソ体とラセミ体の異性体混合物、
    (2) 上記ラセミ体に対しFe換算で略等モル量の四三酸化鉄、
    (3) 上記メソ体とラセミ体の総和に対し略等モル量のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を
    水溶液中で加熱反応させ、上記ラセミ体の第二鉄錯塩を水溶液として分離した後、得られる不溶物を、該不溶物中のメソ体に対し、Fe換算で略等モル量以上の四三酸化鉄、および略等モル量以上のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物と水溶液中で加熱反応させ、上記メソ体の第二鉄錯塩を水溶液として分離することを特徴とするエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸メソ体第二鉄錯塩の製法。
  4. 上記請求項3で水溶液として分離されるメソ体の第二鉄錯塩水溶液を濃縮および/もしくは冷却し、該第二鉄錯塩を結晶として得ることを特徴とするエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸メソ体第二鉄錯塩の製法。
  5. (1) エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸のメソ体とラセミ体の異性体混合物、
    (2) 上記ラセミ体に対しFe換算で略等モル量の四三酸化鉄、
    (3) 上記メソ体とラセミ体の総和に対し略等モル量のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を
    水溶液中で加熱反応させ、上記ラセミ体の第二鉄錯塩を水溶液として分離し、該水溶液に過剰量のアルカリを加えFe成分を水酸化鉄として除去した後、濾液を酸性にしてエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸のラセミ体を得ることを特徴とするエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸の製法。
  6. (1) エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸のメソ体とラセミ体の異性体混合物、
    (2) 上記ラセミ体に対しFe換算で略等モル量の四三酸化鉄、
    (3) 上記メソ体とラセミ体の総和に対し略等モル量のアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物を
    水溶液中で加熱反応させ、上記ラセミ体の第二鉄錯塩を水溶液として濾別した後、不溶物をアンモニアもしくはアルカリ金属水酸化物の水溶液で処理して可溶物を溶出させ、得られるアルカリ水溶液を酸性にしてエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸のメソ体を得ることを特徴とする、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸の製法。
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