JP3847134B2 - 放射線検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線検出装置に係り、特に後方散乱X線のように、微弱な放射線を検出するのに好適な放射線検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線は、その物質透過能力の高さから、医療分野ではレントゲン装置などに、また産業分野では非破壊検査装置などに広く利用されている。従来の一般的なX線の利用方法は、検査対象にX線を照射し、検査対象を透過したX線を検査対象の反対側で検出するようにしている。すなわち、図7に示したように、検査対象10の一側にX線発生器12を配置し、検査対象10の他側にX線14を検出するためのX線フィルムやCCDカメラなどのX線受信器16を配置し、検査対象10を透過してきたX線14をX線受信器16によって受信(検出)して映像化し、検査対象10の内部欠陥18の有無などを検査するようにしている。
【0003】
また、検査対象10の三次元映像を求める場合、コンピュータ断層撮影法(CT)と呼ばれる技術が用いられる。このCTにおいては、図8に示したように、検査対象10の一側にX線発生器12を配置し、検査対象10の他側にCCDカメラやシンチレーション検出器などのX線受信器20を配置する。そして、X線発生器12を検査対象10の周囲を旋回させたり、矢印26のように検査対象10に沿って移動させて複数箇所においてX線14を放射するとともに、X線受信器20を検査対象10の周囲を旋回させたり、矢印24のように検査対象10に沿って移動させて複数箇所でX線14を受信し、X線受信器20の受信信号をコンピュータによって処理して検査対象10の断層像(断面画像)を求めるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来のいわゆるX線装置においては、透過X線を検出するようになっているため、検査対象10の一側にX線源であるX線発生器12を配置し、検査対象10の他側にX線検出器であるX線受信器16、20を配置する必要がある。このため、検査対象10の厚さが厚い場合、X線14が減衰して検査対象10を透過できないという問題がある。また、検査対象10が航空機などのように巨大な構造物である場合、X線発生器12とX線受信器16との位置合わせが困難である。しかも、透過X線によって検査を行なうため、航空機の翼や機体の表層部に生じた亀裂などの欠陥を検出することが困難である。
【0005】
そこで、X線の後方散乱を検出して映像化する装置の開発が検討されている。しかし、X線は、物質透過能力が大きいため、後方散乱する量が極めてわずかである。このため、後方散乱X線の到来角度に関する情報を残したまま極めて微弱な後方散乱X線を検出することは困難であり、後方散乱X線に基づく映像を得ることは、いまだに実現されていないのが現状である。
【0006】
ところで、到来角度に関する情報を得つつ後方散乱X線を検出する場合、ピンホール型のX線検出装置を使用することが考えられる。このピンホール型X線検出装置を用いて後方散乱X線を検出し、検査対象の内部構造を知ろうとする場合、ピンホール型X線検出装置を移動させて多数の点において後方散乱X線を検出する必要がある。このため、多くの時間を必要とするばかりでなく、後方散乱X線が極めて微弱であるため、外乱の影響を大きく受け、内部構造を明瞭に知覚することが困難となる。
【0007】
本発明は、前記従来技術の欠点を解消するためになされたもので、放射線が後方散乱された位置を高い精度で容易に検出することができるようにすることを目的としている。
また、本発明は、測定時間の短縮を図ることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、放射線源の前方に配置され、放射線を透過させる直交変調パターンの変調モードに従った複数の穴列を有する第1マスクと、この第1マスクと相対移動可能に設けられて、前記第1マスクに形成した穴列の1つを露出させるスリットを有する第1スリット板と、前記放射線源から放射された前記放射線の、検査対象により後方散乱された放射線が入射する放射線検出部と、この放射線検出部の前方に配置され、後方散乱した放射線を透過させる前記直交変調パターンの変調モードに従った複数の穴列を有する第2マスクと、この第2マスクと相対移動可能に設けられて前記放射線を遮蔽可能であるとともに、前記第2マスクに形成した穴列の1つを露出させるスリットを有する第2スリット板と、この第2マスクと前記放射線検出部との間に介在し放射線通過部を有し、前記第2マスクと共同して前記放射線検出部に入射した放射線の入射方向を定める入射方向特定板と、を有することを特徴としている。
第1マスクと第1スリット板と第2マスクと第2スリット板とは、それぞれ円盤状に形成するとよい。
【0009】
【作用】
上記のごとくなっている本発明は、放射線源から直交変調パターンの変調モードに従って放射線を放射(送信)し、放射線検出部側においても、検査対象によって後方散乱された放射線を、直交変調パターンの変調モードに従って検出(受信)する。そして、放射線検出部は、入射方向特定板を介して入射した放射線を検出するようになっているため、入射方向特定板の放射線通過部の位置と、第2マスクの穴列を構成している穴の位置とから後方散乱された放射線の到来方向がわかる。従って、放射線源からの放射線の放射方向がわかれば、放射線が後方散乱された位置を容易に、精度よく知ることができる。しかも、複数の穴からなる変調モードを形成する穴列を介して放射線の放射、検出を行なうようにしているため、一度に複数の点にピンホール型の放射線検出器を配置して検出したと同様の効果が得られて検出時間の短縮を図ることができるばかりでなく、検出精度が向上して微弱な後方散乱放射線による鮮明な画像(映像)を得ることが可能となる。
【0010】
第1マスク、第1スリット板、第2マスク、第2スリット板を円盤状に形成すると、マスクを回転させるだけで直交変調パターンの変調モードに基づいて複数の穴列を容易に切り換えて放射線の放射、検出を行なうことができ、装置をコンパクトにすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る放射線検出装置の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る放射線検出装置の一部を切り欠いた斜視図であって、X線の後方散乱を検出するように構成した例を示したものである。図1において、放射線検出装置であるX線検出装置50は、X線52を放射する送信側ユニット100と、後方散乱X線54を検出する受信側ユニット200とから構成してある。
【0012】
送信側ユニット100は、円筒状ケーシング102の側部の一部が切り欠かれ、X線発生器60のX線放射部62をケーシング102の内部に挿入できるようになっている。X線発生装置60は、実施形態の場合、マイクロフォーカス型のX線発生器であって、10μm以下の焦点サイズが得られるようになっている。そして、X線放射部62には、ケーシング102の半径方向に配置した扇上の放射ガイド64が装着してあって、扇上のX線ビームを図の上方に放射するようにしてある。
【0013】
送信側ユニット100は、X線放射部62の前方側、すなわちケーシング102の上部に円盤状の第1マスク104が配置してある。この第1マスク104は、中心部がケーシング102の底板106に固定した駆動手段となるモータ108の回転軸に取り付けてあって、回転自在となっている。そして、第1マスク104は、複数の穴列110が設けられている。これらの穴列110は、詳細を後述するように、直交変調パターンであるアダマール行列に基づく変調モードに従って形成してあり、第1マスク104の中心に対して放射状に等間隔に配置してある。穴列110を構成している穴は、第1マスク104を厚さ方向に貫通していて、この穴を介してX線52を外部に放射可能となっている。
【0014】
第1マスク104の上には、第1マスク104に近接させて、または第1マスク104と接触させて第1スリット板112が配置してある。この第1スリット板112は、ケーシング102の上端部に固定してある。従って、第1マスク104と第1スリット板112とは、相対回転(相対移動)可能となっている。そして、第1スリット板112は、金属などによりX線52を遮蔽できる厚さに形成してあって、半径方向に1つのスリット114を有している。このスリット114は、幅および長さが、第1マスク104に形成した任意の穴列110を露出させることができる大きさとなっており、X線発生装置60の放射ガイド64の上方に位置している。このため、X線発生器60のX放射部62から出射されたX線52は、第1マスク104の、第1スリット板112に設けたスリット114と一致した位置の穴列110のみから外部に放射され、図2に示したように検査対象10に照射される。
【0015】
直交変調パターンを形成するためのアダマール行列は、要素が「+1」と「−1」とからなっていて、対角線に沿って対称位置にある要素が同じである対称行列となっている。このアダマール行列Hは、次の数式1の漸化式によって定義される。
【数1】
Figure 0003847134
ただし、数式1において、kは次数である。
【0016】
すなわち、例えば3次のアダマール行列H(3)は、図3(1)に示したように表される。従って、送信側ユニット100の第1マスク104に設けた各穴列110は、3次のアダマール行列に基づいた場合、穴列110を構成する穴の形成パターンが同図(2)に示したようになる。この図3(2)において、白抜きの四角がアダマール行列の「1」に対応していて穴があけられ、X線52の放射が可能であることを示し、斜線を施した四角がアダマール行列の「−1」に対応していて穴があけられておらず、X線52を放射できないことを示している。そして、各穴列110からのX線52の放射は、第1マスク104と第1スリット板112とを重ねた状態において、第1マスクを図3(3)の矢印120のように回転させ、穴列110を第1スリット板112のスリット114から露出させることによって行なわれる。
【0017】
受信側ユニット200は、送信側ユニット100に対して適宜の間隔をもって、検査対象10に対して送信側ユニット100と同じ側に配置される。そして、受信側ユニット200は、送信側ユニット100と同様に、円筒状のケーシング202の上部に第2マスク204が回転自在に配設してある。この第2マスク204は、中心部がケーシング202の底板206に固定した駆動モータ208の取り付けてあって、ケーシング202に対して回転自在となっている。なお、実施形態の場合、駆動モータ108、208は、ステッピングモータを用いているが、サーボモータなどであってもよいし、シリンダやラチェットなどを用いて間欠的に移動させる機構などであってもよい。
【0018】
第2マスク204には、送信側ユニット100の第1マスク104と同様に、アダマール行列に基づく変調モードに従った複数の穴列210が、第2マスク204の中心に対して放射状に等間隔で形成してある。そして、第2マスク204の上には、ケーシング202に固定した第2スリット板212が配設してある。この第2スリット板212は、金属などによって後方散乱X線54を遮蔽できる厚さに形成してある。また、第2スリット板212は、半径方向に1つのスリット214を有している。このスリット214は、第2マスク204に設けた複数の穴列210の任意の穴列を露出させることができる大きさとなっている。従って、検査対象10からの後方散乱X線54は、第2マスク204に設けた穴列210の、第2スリット板212のスリット214と対応した位置にある穴列210のみからケーシング202内に入射するようにしてある。
【0019】
受信側ユニット200のケーシング202の内部には、X線検出部220が設けてある。このX線検出部220は、第2スリット板212に設けたスリット214の下方に位置していて、ケーシング202の底板206に固定してある。また、X線検出部220と第2マスク204との間には、入射方向特定板であるピンホール板222が配設してある。このピンホール板222は、第2マスク204と適宜の間隔をもって配置してあって、図5に示したように、作用を後述する放射線通過部であるピンホール223を有し、X線検出部220に近接して配置してある。そして、X線検出部220は、図5に示したように、ピンホール板222の下面に対面して設けた、後方散乱X線54を光に変換するシンチレータ224と、このシンチレータ224の放射した光を電子に変換して電子の数を増倍する光電子増倍管226とを有している。
【0020】
このように構成してあるX線検出装置50は、図2に示したように、送信側ユニット100と受信側ユニット200とが検査対象10に対して同じ側に配置される。そして、送信側ユニット100の駆動モータ108と受信側ユニット200の駆動モータ208とは、モータ駆動制御器70に接続され、モータ駆動制御器70によって回転が制御されるようになっている。このモータ駆動制御器70は、映像生成装置となるコンピュータ72に接続してあり、駆動モータ108、208に与えた駆動信号をコンピュータ72に入力する。
【0021】
一方、X線発生装置60は、X線制御器74に接続してあって、X線制御器74によって出力などを制御できるようになっている。そして、受信側ユニット200に設けたX線検出部220の光電子増倍管226は、電流・電圧変換器76に接続してあって、電流パルスとして出力する検出信号が電流・電圧変換器76により電圧パルスに変換される。この電流・電圧変換器76の出力する電圧パルスは、増幅器78によって増幅されたのち、コンピュータ72に入力される。
【0022】
このようになっている実施形態のX線検出装置50による後方散乱X線54の検出と、この後方散乱X線54による映像化は、次のようにして行なわれる。
まず、図2に示したように、送信側ユニット100と送信側ユニット200とを検査対象10の同じ側の初期位置に配置、それぞれのスリット板112、212を検査対象10に対面させる。実施形態の場合、送信側ユニット100と受信側ユニット200とは、移動可能な台車などに設置してあって、一体に移動できるようにしてある。そして、図4のステップ300に示したように、X制御器74を介してX線発生器60をオンするとともに、コンピュータ72に検査開始の指令が入力されると、コンピュータ72がモータ制御器70に駆動指令を与える。
【0023】
モータ制御器70は、予め与えられた制御プログラムに従って、送信側ユニット100の駆動モータ(ステッピングモータ)を駆動し第1マスク104を回転させ、図4のステップ301に示したように、第1マスク104の所定の第1穴列110、例えば図3(2)の1番上の穴パターンからなる穴列110を第1マスク112のスリット114と対応した位置し、スリット114に対応した穴列の番号情報(穴パターン情報)をコンピュータ72に送出する。また、モータ制御器70は、受信側ユニット200の駆動モータ(ステッピングモータ)208を駆動して第2マスク204を回転し、所定の第1の穴列210を第2スリット板212のスリット214と対応した位置に移動させ(ステップ302)、この穴列210の番号情報(穴パターン情報)をコンピュータ72に入力する。これにより、X線52が送信側ユニット100のスリット114と対応した穴列110の各孔から放射され、このX線52の検査対象10による後方散乱X線54が、受信側ユニット200のスリット214に対応した穴列210の各孔を介して検出される。なお、このステップ300からステップ302までの処理は、任意の順序で行なうことができる。
【0024】
検査対象10に照射されたX線52の後方散乱されたX線54は、受信ユニット200の第2スリット板212のスリット214、第2マスク204の穴列210を介してケーシング202内に入射し、X線検出部によって検出される。すなわち、ケーシング202内に入射した後方散乱X線54の一部は、図5に示したように、ピンホール板222のピンホール223を介して、X線検出部220のシンチレータ224に入射して光に変換される。このシンチレータ224の発した光は、光電子増倍管226に入射する。光電子倍増管226は、シンチレータ224からの光を光電変換面において電子に変換し、さらにこの電子を増倍して電流パルスとして出力する。
【0025】
この電流パルスは、電流・電圧変換器76によって電圧パルスに変換されたのち、増幅器78によって増幅され、コンピュータ72に入力される。コンピュータ72は、増幅器78から入力した電圧パルス(受信信号)を、モータ制御器70の送出した第1マスク104の穴列110の番号と、第2マスク204の穴列210の番号との組み合わせに対応させて記憶する(ステップ303)。
【0026】
モータ制御器70は、第2マスク204の回転制御を行なってから所定の時間が経過すると、ステップ304に示したように、第2マスク204の穴列210のすべてを第2スリット板212のスリット214と対応した位置に移動させた可否かを判断する。すべての穴列210がスリット214との対応位置に移動させていない場合、駆動モータ208を駆動して次の穴列210をスリット214と対応した位置にし(ステップ305)、その穴列210の番号情報をコンピュータ72に入力する。そして、前記と同様にして後方散乱X線54の検出が行なわれ、コンピュータ72が受信信号を記憶する(ステップ303)。このステップ303〜ステップ305の処理は、第2マスク204のすべての穴列210による後方散乱X線54の検出が終了するまで繰り返される。
【0027】
モータ制御部70は、ステップ304において、第2マスク204のすべての穴列210を第2スリット板212のスリット214と対応した位置に移動させたと判断すると、さらにステップ306に進んで第1マスク104の穴列110のすべてを第1スリット板112のスリット114と対応した位置に移動させたか否かを判断する。第1マスク104のすべての穴列110をスリット114と対応した位置に移動させていないと判断した場合、送信側ユニット100の駆動モータ108を駆動して次の穴列110をスリット114と対応した位置に移動させ(ステップ307)、さらにステップ302に戻る。そして、モータ制御器70は、受信側ユニット200の駆動モータ208を駆動し、第2マスク204の第1の穴列210を第2スリット板212のスリット214と対応した位置に移動させる。モータ制御器70は、第1マスク104の穴列110と第2マスク204の穴列210との番号情報をコンピュータ72に入力する。
【0028】
以下、ステップ302〜ステップ307までの処理は、第1マスク104のすべての穴列110が第1スリット板112のスリット114と対応した位置に移動され、最後の穴列110から放射されたX線52についての、第2マスク204のすべての穴列210を介した後方散乱X線54の検出が終了するまで繰り返される。これにより、第1マスク104の穴列110の数がN、第2マスク204の穴列210の数がNであるとすると、N×Nとおりのアダマールマスクの組が得られる。
【0029】
モータ制御部70は、第1マスク104の穴列110と第2マスク204の穴列210とのすべての組み合せを終了すると、ステップ306においてその旨をコンピュータ72に入力する。コンピュータ72は、ステップ308に示したように、記憶した受信データ(検出データ)をアダマール逆変換し、第1マスク104のX線52を放射した穴列110を構成している穴の位置と、ピンホール板222のピンホール223に後方散乱X線54を入射させた第1マスク204の穴列210を構成している穴の位置とを求め、後方散乱X線54による画像を生成して表示装置などの出力装置に出力する(ステップ309)。
【0030】
すなわち、アダマール逆変換することにより、図5に示したように、X線発生器60の微小な焦点Fから放射されたX線52を検査対象10に照射した、送信側ユニット100の第1マスク104に設けた穴列110を構成している穴Aの位置と、受信側ユニット200のピンホール板222に設けたピンホール223に後方散乱X線54を入射させた、第2マスク204に形成した穴列210を構成している穴Bの位置をとを特定することができる。従って、検査対象10の後方散乱が生じた位置は、送信側ユニット100における焦点FとX線52を通過させた穴Aとを結ぶ直線の延長線L1 と、受信側ユニット200のピンホール223と後方散乱X線54を通過させた穴Bとを結ぶ直線の延長線L2 との交点Pとして求めることができる。すなわち、後方散乱X線54の検出を容易に行なえるとともに、後方散乱X線54の到来方向を容易に知ることができ、検査対象10の断面画像(二次元画像)を得ることができる。そして、検査対象10が一様でなく、空洞や異物などの内部欠陥18が存在すると、その部分における後方散乱の確率が検査対象10自体の後方散乱の確率と異なるため、内部欠陥18の画像(映像)を得ることができる。
【0031】
コンピュータ72は、検査対象10について三次元画像を求める場合、図4のステップ310に示したように、検査領域のすべてについて後方散乱X線54の検出(検査)を行なったか否かを判断する。検査領域のすべてについて検査を行なっていない場合、ステップ311に示したように、X線検出装置50を所定量だけ移動(トラバース)させる。以後、最初のステップ301に戻って上記したステップ301〜ステップ311の処理が繰り返される。
【0032】
このように、実施の形態においては、微小焦点Fから放射したX線52を、アダマール行列に基づいた穴パターンを有する穴列110を介して検査対象10に照射し、その後方散乱X線54をアダマール行列に基づいた穴パターンを有する穴列210とピンホール223とを介して受信するようになっているため、X線の後方散乱を生じた位置を容易、正確に求めることができる。しかも、多数の穴から構成された穴列110、210を介してX線の放射、検出を行なうようにしてあるため、それぞれの穴列110、210の数をNとした場合、ピンホール型のX線検出装置を使用した場合に比較してN2 /4倍効率がよくなり、検出精度も向上する。
【0033】
なお、上記した実施形態は、本発明の一態様の説明であって、例えば、前記実施形態においては、検査対象10の三次元映像を求める場合に、各検査位置において後方散乱X線の検出を終了するごと画像(映像)を生成して表示する場合について説明したが、検査領域のすべてについてX線検出を終了したのち、画像の生成を行なうようにしてもよい。また、前記実施形態においては、スリット板112、212をマスク104、204の上に配置した場合について説明したが、マスク104、204に下に配置してもよい。そして、前記実施形態においては、マスク104、204を回転させる場合について説明したが、これらを直線的に移動させるようにしてもよい。また、前記実施の形態においては、放射線がX線である場合について説明したが、放射線はカンマ線や粒子線であってもよい。
【0034】
さらに、前記実施形態においては、入射方向特定板がピンホール板222である場合について説明したが、図6に示したようなスリット板であってもよい。すなわち、この入射方向特定スリット板230は、X線検出部220の前面に配置され、後方散乱X線54を通過させる通過スリット232を備えている。この通過スリット232は、同図(2)に示したように、矢印234のように回転する第2マスク204に形成した穴列210と直交するように配置してある。このように、ピンホール223の代わりに通過スリット232を用いることにより、送信側ユニット100側の第1マスク104の面と、受信側ユニット200の第2マスク204の面とが同一平面内になくともよく、X線検出装置の組立てが容易となる。
【0035】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、放射線源からの放射線を、直交変調パターンの変調モードに従った第1マスクを介して放射(送信)し、放射線検出部側において、検査対象によって後方散乱された放射線を、直交変調パターンの変調モードに従った第2マスクと入射方向特定板とを介して検出するようにしているため、放射線の到来方向を容易、正確に知ることができる。従って、放射線源からの放射線の放射方向がわかれば、放射線が後方散乱された位置を容易に、精度よく知ることができる。しかも、複数の穴からなる変調モードを形成する穴列を介して放射線の放射、検出を行なうようにしているため、一度に複数の点にピンホール型の放射線検出器を配置して検出したと同様の効果が得られて検出時間の短縮を図ることができるばかりでなく、検出精度が向上して微弱な後方散乱放射線による鮮明な画像(映像)を得ることが可能となる。
【0036】
第1マスク、第1スリット板、第2マスク、第2スリット板を円盤状に形成すると、マスクを回転させるだけで直交変調パターンの変調モードに基づいて複数の穴列を容易に切り換えて放射線の放射、検出を行なうことができ、装置をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る放射線検出装置の一部を切り欠いた斜視図である。
【図2】 実施に形態に係る放射線検出装置を用いた映像装置の概略構成の説明図である。
【図3】 実施の形態に係る第1マスクに形成した穴列を構成する穴パターンの説明図である。
【図4】 実施の形態に係る映像装置の作用を説明するフローチャートである。
【図5】 実施の形態に係る放射線検出装置により、後方散乱放射線の到来方向の求め方を説明する模式図である。
【図6】 他の実施形態に係る入射方向特定板の説明図であって、(1)は斜視図、(2)は入射方向特定板の通過スリットと第2マスクの穴列との関係を説明する図である。
【図7】 従来の一般的なX線の検出方法の一例を説明する図である。
【図8】 従来のX線を用いたコンピュータ断層撮影法を説明する模式図である。
【符号の説明】
10………検査対象、18………内部欠陥、50………放射線検出装置(X線検出装置)、52………X線、54………後方散乱X線、60………X線発生器、100………送信側ユニット、104………第1マスク、108、208………駆動モータ、110、210………穴列、112………第1スリット板、114、214………スリット、200………受信側ユニット、204………第2マスク、212………第2スリット板、220………X線検出部、222、230………入射方向特定板(ピンホール板、入射方向特定スリット板)、223、232………放射線通過部(ピンホール、通過スリット)。

Claims (2)

  1. 放射線源の前方に配置され、放射線を透過させる直交変調パターンの変調モードに従った複数の穴列を有する第1マスクと、
    この第1マスクと相対移動可能に設けられて、前記第1マスクに形成した穴列の1つを露出させるスリットを有する第1スリット板と、
    前記放射線源から放射された前記放射線の、検査対象により後方散乱された放射線が入射する放射線検出部と、
    この放射線検出部の前方に配置され、後方散乱した放射線を透過させる前記直交変調パターンの変調モードに従った複数の穴列を有する第2マスクと、
    この第2マスクと相対移動可能に設けられて前記放射線を遮蔽可能であるとともに、前記第2マスクに形成した穴列の1つを露出させるスリットを有する第2スリット板と、
    この第2マスクと前記放射線検出部との間に介在して放射線通過部を有し、前記第2マスクと共同して前記放射線検出部に入射した放射線の入射方向を定める入射方向特定板と、
    を有することを特徴とする放射線検出装置。
  2. 前記第1マスクと前記第1スリット板と前記第2マスクと前記第2スリット板とは、それぞれ円盤状に形成してあることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
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