JP3847008B2 - パルス幅変調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザプリンタ,LEDプリンタ,光ディスク装置,デジタル複写機,光通信装置等における光源の光出力を制御および変調することなどに利用されるパルス幅変調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光源の光出力を変調する方式として、光の量自体を変調するパワー変調方式、光の点灯時間を変調するパルス幅変調方式、およびその両者を組み合わせたパワー・パルス幅混合変調方式などがある。それらの方式のうち、パルス幅変調方式としては、例えば図13に示すように、各パルス発生周期に対応した三角波もしくはのこぎり波を発生し(図13(a))、三角波もしくはのこぎり波のレベルをコンパレータを用いてスライスレベルと比較することでパルス幅変調信号を生成する(図13(b))所謂アナログ的なパルス幅変調方式や、例えば、図14に示すように、高周波クロックを生成し(図14(a))、デジタル的にそのクロックを分周することで遅延パルスを生成し(図14(b),(c),(d))、その論理和または論理積でパルス幅変調信号(図14(e)には、図14(b)のパルスと図14(c)のパルスとの論理積をとったパルス幅変調信号が示されている)を生成する所謂デジタル式のパルス幅変調方式などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、パルス幅変調にて画像の階調表現を行なう画像形成装置においては動作速度の高速化が望まれている。なお、図15には、パルス幅変調にて画像の階調表現を行なう仕方の一例が示されている。すなわち、1画素を黒画素として表現する場合には、図15(a)に示すように、1画素分(1ドット分)のパルス幅をもつパルスを生成する。また、1画素を白画素として表現する場合には、図15(b)に示すように、パルス幅が0のパルスを生成する(すなわち、パルスを発生しない)。また、1画素を中間画素(グレイ階調の画素)として表現する場合には、図15(c)あるいは(d)に示すように、1画素分(1ドット分)のパルス幅よりも小さいパルス幅をもつパルスを生成することによって、階調表現を行なうことができる。
【0004】
しかしながら、パルス幅変調方式として、上述した従来のアナログ的なパルス幅変調方式を用いる場合、三角波もしくはのこぎり波の直線性,再現性と動作速度の高速化とが両立しない。すなわち、動作速度を高速化させると、三角波もしくはのこぎり波の直線性(リニアリティー)を得ることが困難になり、正確なパルス幅を得ることができない。また、パルス幅変調方式として上述した従来のデジタル式のパルス幅変調方式を用いる場合には、最高動作周波数はデバイスに依存し、画像の階調性と動作速度の高速化が両立しない。
【0005】
例えば、画素クロックが50MHzにおいて256値変調をパルス幅で行なおうとすれば、アナログ的なパルス幅変調方式においては20n秒の周期において三角波もしくはのこぎり波に良好な直線性およびスイングをもたせることは困難である。また、デジタル式のパルス幅変調方式においては50MHz×256=12.8GHzのクロックを有する構成が必要となるが、12.8GHzのクロックを有する構成を実現することは困難である。
【0006】
このように、従来では、高階調性を実現でき、かつ、高速動作を実現するパルス幅変調装置を提供することは困難であった。
【0007】
本発明は、動作速度が速い場合でも画像の高階調性を実現できる小型,低コストのパルス幅変調装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、所定周波数のクロック信号に対し、周波数が逓倍された逓倍クロック信号を生成し、生成した逓倍クロック信号から所定の位相遅延した複数のパルスを生成するデジタル遅延手段と、階調を表現するデータの上位ビット信号に基づき、前記位相の異なる複数のパルスのうちの1つのパルスを選択するパルス選択手段と、遅延信号を生成し、前記パルス選択手段で選択されたパルスを前記遅延信号に基づき遅延させるアナログ遅延手段と、前記アナログ遅延手段で生成されたパルスと前記デジタル遅延手段により生成された複数のパルスのうちの1つのパルスとに基づいてパルス幅信号を生成するパルス幅生成手段とを有し、
前記アナログ遅延手段は、第1の遅延制御電流Iiを生成する第1の遅延制御電流生成手段と、第2の遅延制御電流Ij ( j≠i ) を生成する第2の遅延制御電流生成手段と、第1の遅延制御電流Iiと第2の遅延制御電流Ijと階調を表現するデータの下位ビット信号とに基づき、遅延量制御電流Inを遅延信号として算出する遅延量制御電流算出手段と、前記パルス選択手段で選択されたパルスを前記遅延信号に基づき遅延させる遅延手段とにより構成されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のパルス幅変調装置において、前記遅延量制御電流算出手段は、第1の遅延制御電流Iiと第2の遅延制御電流Ijとの差分(Ii−Ij)と階調を表現するデータの下位ビット信号とに基づき、遅延量制御電流Inを遅延信号として算出することを特徴としている。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載のパルス幅変調装置において、前記第1および第2の遅延制御電流生成手段は、所定のパルスを遅延する遅延手段と、遅延したパルスの位相遅れ量を検出する位相検出手段と、前記位相検出手段により出力される位相遅れ検出信号と基準信号とを比較し前記遅延手段の遅延量を制御する反転増幅手段とにより構成されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項2記載のパルス幅変調装置において、前記遅延量制御電流算出手段は、階調を表現するデータの下位ビット信号をD/A変換してD/A変換結果を出力するD/A変換手段と、IiとIjの乗算結果を、D/A変換手段からのD/A変換結果によって割算して遅延信号Inを得る割算手段とから構成されていることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係るパルス幅変調装置の構成例を示す図である。図1のパルス幅変調装置は、VCO11,分周回路12,位相比較器または位相周波数比較器13を有し、位相の異なる複数のパルス、例えばX0,X1,X2,X3を生成するPLL(フェーズ・ロックド・ループ)回路1と、PLL回路1で生成された位相の異なる複数のパルスのうちの1つのパルスを選択するセレクタ15と、セレクタ15により選択されたパルスの位相をアナログ的に遅延させるアナログ遅延部16と、アナログ遅延部16により位相が一定量遅れたパルスと基準となる基本信号(例えば、外部からのクロックCLK、あるいは、PLL回路1により生成された位相の異なる複数のパルスのうちの1つのパルス(例えばX0など))とによりパルス幅を生成するパルス幅生成部18とから構成されている。
【0013】
図2は図1のパルス幅変調装置の動作の概略を説明するためのタイムチャートである。図2においては、説明を簡単にするため、PLL回路1において、外部からのクロック(画素クロック)CLKの周波数は4逓倍されるとする。例えば、PLL回路1に入力するクロックの周波数が50MHzであるとき、PLL回路1のVCO11から出力されるパルス周波数は、50×4=200MHzになるとする。図2(a)には4逓倍されたクロック(4×CLK)が示されている。ここで、この4逓倍されたクロックのデューティは50%であるとする。これは、4逓倍されたクロック(4×CLK)の周波数(例えば200MHz)をさらに逓倍して400MHzの周波数のものにすることができるからである。
【0014】
また、PLL回路1の分周回路12は、VCO11から出力される4逓倍されたクロック(4×CLK)より図2(b)〜(e)に示すようなπ/4づつ位相の異なるパルスX0〜X3を生成する。ここで、このパルス幅変調装置のパルス幅変調によって画像の階調表現を行なうとする場合、最上位ビットがD4,最下位ビットがD0である画像データ(デジタルデータ;階調を表現するデータ)が入力されると仮定し(すなわち、1ドットあたり25=32階調のパルス幅変調を行なうと仮定し)、図1に示すように、上位ビットD4,D3,D2がセレクタ15に入力し、下位ビットデータD1,D0がアナログ遅延部16に入力するとする。この例の場合、セレクタ15における論理は、セレクタ15の出力をPSとするとき、例えば次式で表わされる。
【0015】
【数1】
【0016】
すなわち、セレクタ15からは、データD4,D3,D2に応じて、X3,X2,X1,X0,*X3,*X2,*X1,*X0のいずれか1つが選択されて出力される。なお、*は反転記号である。
【0017】
次に、アナログ遅延部16においては、下位ビットデータD1,D0に従い、X0の周期をTとするとき、D1・D0を(3/32)T遅延とし、D1・*D0を(2/32)T遅延とし、*D1・D0を(1/32)T遅延とし、*D1・*D0を遅延なしとする。いま、例えば、D4,D3,D2,D1,D0が(1,1,0,1,0)であるときには、アナログ遅延部16の出力をDPLSとすると、アナログ遅延部16の出力DPLSは、図2(f)に示すように、X2+Δ1(Δ1=(2/32)T遅延)となる。そして、パルス幅生成部18では、例えば、アナログ遅延部16の出力DPLSと*X0との論理積をとってUとする。上述の例では、U=*X0・(X2+Δ1)となり、図2(g)に示すようなパルスUが得られる。また、パルス幅生成部18では、D4・X0+Uをパルス幅信号PWMOUTとして最終的に出力する。すなわち、上述の例では、最上位ビットD4が1であるので、図2(h)に示すようなパルス幅信号PWMOUTを1ドットに出力することができる。
【0018】
なお、図2の例では、1ドット内において左に寄せたドットを形成しているが、セレクタ15の論理やアナログ遅延部16の設定により、ドット内において右に寄せたドット形成も可能である。図3には、ドット内において右に寄せたドットを形成する例が示されている。なお、図3において、図3(a)乃至(e)に示す基本パルス4×CLK,分周パルスX0〜X3は、図2(a)乃至(e)に示すものと同じである。
【0019】
ドット内において右に寄せたドットを形成する場合には、セレクタ15における論理は、セレクタ15の出力をPSとするとき、次式で表わされる。
【0020】
【数2】
【0021】
すなわち、この場合も、セレクタ15からは、データD4,D3,D2に応じて、X3,X2,X1,X0,*X3,*X2,*X1,*X0のいずれか1つが選択されて出力されるが、図3(数2)の例では、図2(数1)の例に対し、X0,X1,X2,X3,*X0,*X1,*X2,*X3の選択論理の順序が逆になっている。
【0022】
そして、図3の例では、アナログ遅延部16において、D1・D0を(1/32)T遅延とし、D1・*D0を(2/32)T遅延とし、*D1・D0を(3/32)T遅延とし、*D1・*D0を(4/32)T遅延とする。いま、例えば、D4,D3,D2,D1,D0が(1,0,1,0,1)であるときには、アナログ遅延部16の出力DPLSは、図3(f)に示すように、X2+Δ2(Δ2=(3/32)T遅延)となる。そして、パルス幅生成部18では、アナログ遅延部の出力DPLSとX0との論理積をとってUとする。上述の例では、U=X0・(X2+Δ2)となり、図3(g)に示すようなパルスUが得られる。また、パルス幅生成部18では、D4・*X0+Uをパルス幅信号PWMOUTとして最終的に出力する。すなわち、上述の例では、最上位ビットD4が1であるので、図3(h)に示すようなパルス幅信号PWMOUTを1ドットに出力することができる。
【0023】
このように、セレクタ15の論理やアナログ遅延部16の設定により、ドット内において右に寄せたドット形成も可能であり、上記論理や遅延を切り替えるモードセレクタがあれば、外部制御信号により、1ドット内でドット毎に左寄せ、右寄せのドット形成が可能である。
【0024】
図4はアナログ遅延部16の構成例を示す図である。図4を参照すると、アナログ遅延部16は、第1の遅延制御電流Iiを生成する第1の遅延制御電流生成部19aと、第2の遅延制御電流Ij(j≠i)を生成する第2の遅延制御電流生成部19bと、第1の遅延制御電流Iiと第2の遅延制御電流Ijとの差分(Ii−Ij)と階調を表現するデータAnとに基づき、遅延量すなわち遅延信号(いま遅延させたい量を決定する遅延電流)Inを算出する遅延量制御電流算出部20と、遅延量制御電流部20によって算出された遅延信号(遅延電流)に基づき基準となる基本信号の正転もしくは反転信号を遅延させる遅延部25とを備えている。なお、以下の説明では、第1の遅延制御電流生成部19aと第2の遅延制御電流生成部19bとを合わせて、便宜上、遅延量制御部17と称す。また、遅延量制御電流算出部20は、デジタルデータ(階調を表現するデジタルデータのうち、下位ビットデータ(例えば、D1,D0))をD/A変換してD/A変換結果Anを出力するD/A変換回路31と、IiとIjの乗算結果を、D/A変換回路31からのD/A変換結果Anによって割算して遅延信号Inを得る割算回路32とから構成されている。
【0025】
また、図5は第1の遅延制御電流生成部19aの一構成例を示す図である。図5の例では、第1の遅延制御電流生成部19aは、所定のパルスを遅延させる遅延部21と、遅延したパルスの位相遅れ量を検出する位相検出部22と、位相検出部22の出力(位相遅れ検出信号)と基準信号とを比較して遅延部21の遅延量を制御する誤差AMP部(反転増幅部)23とからなっており、ある遅れ量が制御されている電流、すなわち遅延制御電流Iiを生成するようになっている。
【0026】
また、図6は第1の遅延制御電流生成部19aの他の構成例を示す図である。図6の構成例は図5とほぼ同様であるが、図6の構成の場合、位相検出部22に制御信号を加えて位相遅れ検出量を制御できる構成とすることにより、誤差AMP部23の回路構成を簡略化でき、回路素子数を低減することができる。
【0027】
図7は第1の遅延制御電流生成部19aの動作を説明するための図である。先ず、図7(a),(b),(c),(d)に示すように、例えばパルスX0,*X0は、遅延部21により時間ΔTだけ遅延されてX0D,*X0Dとなる。この場合、位相検出部22は、次式で表わされる論理αを出力する。
【0028】
【数3】
α=*X0・X0D+X0・*X0D
【0029】
この場合、X0・*X0D,*X0・X0Dは、図7(e),(f)に示すように、同期Tで現れる遅延時間ΔTのパルスであり、X0・*X0D+*X0・X0D,すなわちαは、図7(g)に示すように、T/2周期で現れる遅延時間ΔTのパルスとなる。ここで、論理αに対応する電流出力をIcとし、そのピーク電流値をN×Irefとし、誤差AMP部23において、電流出力Icと基準信号となる基準電流Irefとを比較して、遅延部21の遅延量を決定する電流Iiを制御する。この場合、例えば、N=4とすれば、遅延時間ΔT=T/8となる場合にαの積分波形の平均値がIrefとなるので、Iiは、遅延時間ΔT=T/8となるように制御される。一般に、遅延時間ΔT=T/(2N)と表わすことができる。つまり、Nを自由に設定することにより、入力パルスX0の半分の周期T/2の範囲内の遅延で、制御された遅延パルス(遅延電流パルスIi)を自在に得ることができる。
【0030】
図8は第1の遅延制御電流生成部19aをバイポーラトランジスタで構成した場合の具体的な回路例を示す図である。図8の回路の動作を説明する。図8の回路では、Q16,Q17,Q18,およびR0で構成される電流源により、遅延量を決定する電流Iiを生成する。入力されるパルスX0,*X0は、Q1,Q2で構成されるダイオード負荷回路およびQ19,Q20で構成されるエミッタフォロワ回路により遅延される。Q1,Q2で構成されるダイオード負荷回路の出力は、非常に小さい振幅であるので、Q3,Q4,R3,R4で構成される2値化回路を介すことでスイングを調整する。Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10で構成される二重平衡回路、すなわちECL(エミッタ・カップルド・ロジック)回路は、その電流出力Icに対応する論理をαとすると、α=*X0・X0D+X0・*X0Dであり、その電流出力IcはQ11,Q12で構成されるカレントミラー回路により反転されて、Q14,R1で構成される基準電流Irefと比較される。この比較部であるQ14のコレクタはハイインピーダンスであり、また、接地電位GNDに対し容量C1が接続されていることにより,Icと基準電流Irefとが比較され、その出力はQ15,R0で構成される電流となる。ここで、Q15,Q16,Q17,Q18で構成される電流源は、エミッタ抵抗がそれぞれR0であることにより、それぞれに流れる電流が同じとなるカレントミラー回路となっている。つまり、Q15,R0で構成される電流はIiとなり、所望の遅延量が得られるように出力電流Iiは制御される。ここで、Q13,R2で構成される電流源の電流をIrefのN倍とすると、前述のように、遅延時間ΔT=T/(2N)となる遅延パルスX0Dおよび*X0Dを得ることができる。例えば、N=4の場合には、R1:R2=4:1、Q13のエリアファクタ(エミッタ面積):Q14のエリアファクタ(エミッタ面積)=4:1となるように設定すれば、4×Irefなる電流をQ13,R2で構成される電流源に正確に流すことが可能であるので、遅延時間ΔT=T/8、つまり位相遅れ量としてはΔθ=π/4の遅延パルスを生成することができる。第1の遅延制御電流生成部19aをすべての設定したい遅延量に対し、それぞれ構成すれば、すべての遅延時間を制御することが可能となる。
【0031】
ここで、遅延時間と遅延を生成する電流Iiとの関係を考える。例えば、図8に示す回路の場合、X0がハイレベルの時、Q21,Q22で構成される差動トランジスタのQ22はオフとなっており、その結果として、Q22に対しダイオード負荷となっているQ2はオフであり電流が流れていない。X0がハイレベルの状態からローレベルの状態に高速に変化したときの過渡動作を考えると、Q22に電流が流れ始めるが、Q2のエミッタ抵抗は電流がほとんど流れていないためハイインピーダンスとなっており、Q22のコレクタにはコレクタ−基板間寄生容量などの寄生容量があるため、Q22に流れる電流、すなわちIiは、寄生容量の変化電位に対する充放電電流となる。
【0032】
図9は図8に示す回路の遅延部の等価的な回路構成を示す図である。図9の等価回路において、X0,*X0として図10(a)に示すような信号が入力するとき、X0がハイレベル(*X0がローレベル)となっているときには(図10(a)に、この状態を▲1▼で示す)、ダイオードQ1に電流Iが流れる一方、ダイオードQ2には電流は流れない(電流は0となる)。また、X0がハイレベルからロウレベルになるときには(図10(a)に、この状態を▲2▼で示す)、ダイオードQ1に流れていた電流Iは0になり、一方、ダイオードQ2に流れる電流は0からIになる。なお、このとき、図9において、寄生容量CとダイオードQ2の内部抵抗Rとの時定数CRによって、ダイオードQ2に流れ始める電流Iは、信号X0,*X0に対して、図10(b)に示すような過渡応答を示す。すなわち、時定数CRによって定まる時間t=CRだけ遅延したものとなる。ここで、遅延時間tと電流I(=Ii)との関係は次のようになる。
【0033】
すなわち、一般に容量をC、変化電位をΔV、電流をI、充放電時間をtとすると、電荷Qは、Q=C・ΔV=I・tで表わすことができる。これから、寄生容量の充放電に要する時間、つまり遅延時間tは、t=(C・ΔV)/Iであり、容量に充放電する電流Iに反比例する。
【0034】
上述した例の遅延時間ΔT=T/8、つまり位相遅れ量としてはΔθ=π/4の遅延の場合の遅延時間と遅延制御電流Ii(i=8)との関係は、次式で表わされる。
【0035】
【数4】
τ/8=K/I8+Δτ
【0036】
ここで、τは周期、Kは比例定数、I8はτ/8遅れを制御する遅延制御電流Ii(i=8)であり、Δτは固定遅れ定数とする。同様に、I16をτ/8+τ/16遅れを制御する遅延制御電流Ii(i=16)とし、I32をτ/8+τ/32遅れを制御する遅延制御電流Ii(i=32)とし、I64をτ/8+τ/64遅れを制御する遅延制御電流Ii(i=64)とし、I128をτ/8+τ/128遅れを制御する遅延制御電流Ii(i=128)とし、I256をτ/8+τ/256遅れを制御する遅延制御電流Ii(i=256)とすると、遅延時間と遅延制御電流Iiとの関係は、次式のように表わすことができる。
【0037】
【数5】
τ/8+τ/16=K/I16+Δτ
τ/8+τ/32=K/I32+Δτ
τ/8+τ/64=K/I64+Δτ
τ/8+τ/128=K/I128+Δτ
τ/8+τ/256=K/I256+Δτ
【0038】
換言すれば、第1の遅延制御電流生成部19aにおいて、遅延時間と遅延制御電流Ii(IAn)との関係は、一般に、次式のようになる。
【0039】
【数6】
τ/8+τ/An=K/IAn+Δτ
【0040】
同様に、第2の遅延制御電流生成部19bも、図5あるいは、図6と同様の構成となっており、図7と同様の動作を行なうようになっている。また、第2の遅延制御電流生成部19bをバイポ−ラトランジスタで構成した場合の具体的な回路例も図8と同様のものにすることができ、この場合も、遅延時間と遅延制御電流Ijとの関係は、数4,数5,数6によって与えられる。
【0041】
このように、第1の遅延制御電流生成部19aと第2の遅延制御電流生成部19bとは、互いに同様の構成,動作のものにすることができるが、第1の遅延制御電流生成部19aは、ある遅延量が制御されている電流Iiを生成するのに対し、第2の遅延制御電流生成部19bは、第1の遅延制御電流生成部19aとは異なる遅延量が制御されている電流Ij(j≠i)を生成するようになっている。
【0042】
そして、遅延量制御電流算出部20は、第1の遅延制御電流Iiと、第2の遅延制御電流Ijとの差分(Ii−Ij)と遅延データ(階調を表現するデータ)Anとに基づき、遅延量すなわち遅延信号(いま遅延させたい量を決定する遅延電流)Inを算出するようになっている。
【0043】
具体的に、第1の遅延制御電流生成部19aにおいてτ/8遅れを生成する電流I8(i=8)を生成し、また、第2の遅延制御電流生成部19bにおいて3τ/16遅れを生成する電流I16(j=16)を生成すると考えると、遅延量制御電流算出部20は、数4,数5,数6よりτ、K、Δτを消去して、次式のように、遅延電流InをI8およびI16を用いて算出することができる。
【0044】
【数7】
In=2・I8・I16/{(32・(I8−I16)/An+2・I16)}
【0045】
また、図11は遅延量制御電流算出部20をバイポーラトランジスタで構成した具体的な回路例を示す図である。図11を参照すると、遅延量制御電流算出部20は、デジタルデータ(例えば、D3〜D0)をD/A変換するD/A変換回路31と、IiとIjの乗算結果をD/A変換回路31からのD/A変換結果Anによって割算する割算回路32とにより構成されている。
【0046】
図11の割算回路32の動作について説明する。図11に示すように、電流源をそれぞれI0,I1,I2,In,In'とし、ID0,ID1,ID2,ID3で示す差動スイッチからI1に加算される電流がないとする。Q30,Q31で構成される差動回路のベース電位は、そのまま、Q34,Q35で構成されるエミッタフォロワ回路を介して、Q32,Q33で構成される差動回路のベース電位に入力されるので、Q30,Q31で構成される差動回路に流れる電流比とQ32,Q33で構成される差動回路に流れる電流比は同じである。このことにより、In+In'=I2,In:In'=I0:(I1−I0)なる関係式が導かれ、その結果、次式で表わされる割算回路が構成されていることがわかる。
【0047】
【数8】
In=I0・I2/I1
【0048】
数7および数8において、
I0=I8
I2=2・I16
I1=2・I16
ΔI=I8−I16
とすると、図11に示す回路構成により数7に示す遅延電流Inを生成することが可能となる。図11に示す回路構成の場合、ID0,ID1,ID2,ID3で示す差動スイッチおよびQ30,Q31で構成される差動回路、Q32,Q33で構成される差動回路は、すべて高速に動作することにより、入力される画像データすなわちデジタルデータの下位ビットデータ(例えば、D0,D1,D2,D3)に従い、各ドット毎に遅延量を高速に変化させることが可能である構成を実現できる。図11に示す回路例では、I8,I16のそれぞれの制御電流を生成し、ID0,ID1,ID2,ID3で示す4ビット構成の差動スイッチにより1ドットあたり8ビット階調(256階調)表現を行なう構成例(D0〜D3のデジタルデータが入力するとしたときの構成例)を示しているが、もちろんさらに高階調表現が必要な系や階調数の少ない系においても、同様の構成により自在にパルス幅を生成することが可能である。
【0049】
また、図12は遅延部25をバイポーラトランジスタで構成した具体的な回路例を示す図である。図12を参照すると、遅延部25には遅延信号すなわち遅延電流Inが流れ、これにより、パルス,例えばX0,*X0を、この遅延電流Inに応じた遅延量でアナログ遅延させ、X0D,*X0Dを出力するように構成されている。
【0050】
以上のように、本発明は、階調を表現するデータに略反比例する遅延信号を生成し、基準となる基本信号(例えば、外部からのクロックCLK、あるいは、PLL回路1により生成された位相の異なる複数のパルスのうちの1つのパルス(例えばX0など))の正転もしくは反転信号を、上記遅延信号Inに基づき所望の位相で遅延させるアナログ遅延部16と、アナログ遅延部16で生成されたパルスと前記基本信号とに基づいてパルス幅信号を生成するパルス幅生成部18とを有しており、上記アナログ遅延部16を用いることで、高速アナログ遅延回路を実現でき、動作速度が速い場合でも画像の高階調性を実現できるパルス幅変調装置を提供することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項4記載の発明によれば、所定周波数のクロック信号に対し、周波数が逓倍された逓倍クロック信号を生成し、生成した逓倍クロック信号から所定の位相遅延した複数のパルスを生成するデジタル遅延手段と、階調を表現するデータの上位ビット信号に基づき、前記位相の異なる複数のパルスのうちの1つのパルスを選択するパルス選択手段と、遅延信号を生成し、前記パルス選択手段で選択されたパルスを前記遅延信号に基づき遅延させるアナログ遅延手段と、前記アナログ遅延手段で生成されたパルスと前記デジタル遅延手段により生成された複数のパルスのうちの1つのパルスとに基づいてパルス幅信号を生成するパルス幅生成手段とを有し、前記アナログ遅延手段は、第1の遅延制御電流Iiを生成する第1の遅延制御電流生成手段と、第2の遅延制御電流Ij ( j≠i ) を生成する第2の遅延制御電流生成手段と、第1の遅延制御電流Iiと第2の遅延制御電流Ijと階調を表現するデータの下位ビット信号とに基づき、遅延量制御電流Inを遅延信号として算出する遅延量制御電流算出手段と、前記パルス選択手段で選択されたパルスを前記遅延信号に基づき遅延させる遅延手段とにより構成されており、デジタル遅延回路と高速アナログ遅延回路を組み合わせることにより、動作速度が速い場合でも画像の高階調性を実現可能な小型・ローコストパルスの幅変調装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパルス幅変調装置の構成例を示す図である。
【図2】図1のパルス幅変調装置の動作の概略を説明するためのタイムチャートである。
【図3】図1のパルス幅変調装置の動作の概略を説明するためのタイムチャートである。
【図4】アナログ遅延部の一部を示す図である。
【図5】第1の遅延制御電流生成部の構成例を示す図である。
【図6】第1の遅延制御電流生成部の他の構成例を示す図である。
【図7】第1の遅延制御電流生成部の動作を説明するための図である。
【図8】第1の遅延制御電流生成部をバイポーラトランジスタで構成した場合の具体的な回路例を示す図である。
【図9】図8に示す回路の遅延部の等価的な回路構成を示す図である。
【図10】図9の遅延部の動作を説明するための図である。
【図11】遅延量制御電流算出部をバイポーラトランジスタで構成した具体的な回路例を示す図である。
【図12】遅延部をバイポーラトランジスタで構成した具体的な回路例を示す図である。
【図13】アナログ的なパルス幅変調方式を説明するための図である。
【図14】デジタル式のパルス幅変調方式を説明するための図である。
【図15】パルス幅変調にて画像の階調表現を行なう仕方の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 PLL回路
11 VCO
12 分周回路
13 位相比較器または位相周波数比較器
15 セレクタ
16 アナログ遅延部
17 遅延量制御部
18 パルス幅生成部
19a 第1の遅延制御電流生成部
19b 第2の遅延制御電流生成部
20 遅延量制御電流算出部
21 遅延部
22 位相検出部
23 誤差AMP部
25 遅延部
31 D/A変換回路
32 割算回路
Claims (4)
- 所定周波数のクロック信号に対し、周波数が逓倍された逓倍クロック信号を生成し、生成した逓倍クロック信号から所定の位相遅延した複数のパルスを生成するデジタル遅延手段と、階調を表現するデータの上位ビット信号に基づき、前記位相の異なる複数のパルスのうちの1つのパルスを選択するパルス選択手段と、遅延信号を生成し、前記パルス選択手段で選択されたパルスを前記遅延信号に基づき遅延させるアナログ遅延手段と、前記アナログ遅延手段で生成されたパルスと前記デジタル遅延手段により生成された複数のパルスのうちの1つのパルスとに基づいてパルス幅信号を生成するパルス幅生成手段とを有し、
前記アナログ遅延手段は、第1の遅延制御電流Iiを生成する第1の遅延制御電流生成手段と、第2の遅延制御電流Ij ( j≠i ) を生成する第2の遅延制御電流生成手段と、第1の遅延制御電流Iiと第2の遅延制御電流Ijと階調を表現するデータの下位ビット信号とに基づき、遅延量制御電流Inを遅延信号として算出する遅延量制御電流算出手段と、前記パルス選択手段で選択されたパルスを前記遅延信号に基づき遅延させる遅延手段とにより構成されていることを特徴とするパルス幅変調装置。 - 請求項1記載のパルス幅変調装置において、前記遅延量制御電流算出手段は、第1の遅延制御電流Iiと第2の遅延制御電流Ijとの差分(Ii−Ij)と階調を表現するデータの下位ビット信号とに基づき、遅延量制御電流Inを遅延信号として算出することを特徴とするパルス幅変調装置。
- 請求項1記載のパルス幅変調装置において、前記第1および第2の遅延制御電流生成手段は、所定のパルスを遅延する遅延手段と、遅延したパルスの位相遅れ量を検出する位相検出手段と、前記位相検出手段により出力される位相遅れ検出信号と基準信号とを比較し前記遅延手段の遅延量を制御する反転増幅手段とにより構成されていることを特徴とするパルス幅変調装置。
- 請求項2記載のパルス幅変調装置において、前記遅延量制御電流算出手段は、階調を表現するデータの下位ビット信号をD/A変換してD/A変換結果を出力するD/A変換手段と、IiとIjの乗算結果を、D/A変換手段からのD/A変換結果によって割算して遅延信号Inを得る割算手段とから構成されていることを特徴とするパルス幅変調装置。
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