JP3846979B2 - 剥離強力に優れた面ファスナー雌材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用にあたり雄材との剥離強力に優れた面ファスナー雌材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、スパンボンド不織布又はメルトブロー不織布のような熱接着不織布を係合部としこれを他の不織布と一体化した面ファスナー雌材が知られている。熱接着不織布は各繊維が相互に接着されているため、繰り返し着脱される面ファスナーとして使用しても係合力が低下しないという利点がある。これらは係合部となる不織布と基盤となる不織布の二つ以上の繊維層を高圧水流で交絡させて一体化した面ファスナー雌材である。
【0003】
また基盤の繊維層を熱収縮させて、もう一方の係合部の繊維層に凹凸を形成させた嵩高性不織布がある。例えば、特開昭60−17164号公報には長繊維不織布と熱収縮性の大きな不織布を積層し、長繊維不織布の表面に畝を形成させた不織布が、また、特開昭63−309657号公報には、感熱収縮性繊維と非収縮性繊維からなり、感熱収縮性繊維の収縮発現により非収縮性繊維に撓みが生じて不織布表面に多数の畝が形成された不織布が開示されている。
【0004】
また、別の例にも、このような不織布に形成された凸部を係合部として用いる面ファスナー雌材が、例えば特開平6−33359号公報において提案されている。さらに特開平9−158022号公報において本出願人が開示した面ファスナー雌材は係合部の表面は長手方向に筋状の畝部が形成され、さらにこの畝部と直交する多数の凸部をもつもので、係合部がスパンボンド不織布、メルトブロー不織布のような長繊維不織布からなるものを記載している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらの不織布はいずれも二つの繊維層をニードルパンチングや高圧柱状水流により筋状に交絡部分をつくり繊維層間を一体化させた後、一方の繊維層の熱収縮応力を利用してもう一方の繊維層を盛り上がらせるようにしたものである。従って凸部が形成されている部分は繊維層間の交絡の度合いが低く繊維の自由度が比較的高いから繊維層が非常に柔らかく、面ファスナー雄材の係合部と係合しやすいという利点があった。
【0006】
しかしながら係合部の不織布は構成繊維が相互に熱接着しているため、熱接着部分に雄材のフック部があたるとフック部の先端が不織布内に貫通できない部分がある。このため係合箇所が少なくなり、このような部分が多いと面ファスナー係合力が弱くなる欠点があった。しかも実際に面ファスナー雌材として例えば紙おむつ等に使用されるときは、その大きさは2×3cm程度であり、このような小さく切断して使う製品の全てを管理することは困難であり、このような係合力の弱い面ファスナー雌材を装着された製品は使用者に不便をかけていたのである。
【0007】
本発明は面ファスナー雌材に熱繊維不織布を使用し、従来のものより係合力の高い、しかも繰り返しの着脱によっても係合力の低下しない面ファスナー雌材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は第二繊維層の熱接着不織布を構成する繊維群のなかのある部分を破断した、特定の構造の不織布を使用することによりこの課題を解決した。
【0009】
すなわち本発明は、第一繊維層と第二繊維層とが繊維同士の交絡により一体化されてなる不織布において、第二繊維層は熱接着不織布であり該熱接着不織布を構成する繊維群のうちの少数部分が破断し、及び/又は繊維群の隣接する繊維間の接着部分のうちの少数部分が剥離している毛羽の多い不織布であり、第二繊維層を係合部として使用することを特徴とする面ファスナー雌材。
【0010】
上記面ファスナー雌材は、第二繊維層が短い畝状の多数の凹凸をもつものであることが好ましい。
【0011】
また上記面ファスナー雌材の別の態様は、第一繊維層と第二繊維層とが繊維同士の交絡により一体化されてなる不織布において、交絡部が筋状に存在し、かつ交絡部の間の部分の第二繊維層は盛り上がった連続する畝部を形成しているものである。
【0012】
さらに上記面ファスナー雌材の別の態様は、上記の盛り上がった連続する畝部に交絡部と直交する方向を長手とする短い畝状の多数の凹凸をもつものである。上記第二繊維層の熱接着不織布はスパンボンド不織布もしくはメルトブロー不織布であることが好ましい。
【0013】
上記短い畝状の多数の凹凸をもつ態様の本発明の面ファスナー雌材の第一繊維層は熱により収縮する性質を有する繊維層であり、第二繊維層は第一繊維層が収縮する温度より高い収縮開始温度をもつ繊維層からなる。
【0014】
上記発明の面ファスナー雌材の製造方法は、繊維の薄層ウェブである第一繊維層の少なくとも片面に、熱接着不織布であり該熱接着不織布を幅方向に拡幅し、構成する繊維群のうちの少数部分が破断し、及び/又は繊維群の隣接する繊維間の接着部分のうちの少数部分が剥離している毛羽の多い不織布である第二繊維層を積層し、これに高圧柱状水流を噴射して、両繊維層を一体化させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の面ファスナー雌材の製造方法は、前記第一繊維層は熱により収縮する性質を有する繊維層であり、前記第二繊維層は、第一繊維層が収縮する温度より高い収縮開始温度をもつ熱接着不織布であり、これに高圧柱状水流を噴射して両繊維層を一体化させた後、加熱処理を施すことにより、第一繊維層を収縮させ、第二繊維層に短い畝状の多数の凸部を形成させることが好ましい。
【0016】
また、本発明の面ファスナー雌材の製造方法は、前記第一繊維層は熱により収縮する性質を有する繊維層であり、前記第二繊維層は、第一繊維層が収縮する温度より高い収縮開始温度をもつ熱接着不織布であり、これに高圧柱状水流を筋状に噴射して、両繊維層を一体化させるとともに、筋状の交絡部の間を盛り上がった連続する畝部とした後、加熱処理を施すことにより、第一繊維層を収縮させ、該畝部状に畝部と直交する方向を長手とする、短い多数の凹凸を形成させることが好ましい。
【0017】
上記短い畝状の多数の凹凸をもつ態様の本発明の面ファスナー雌材の第一繊維層には、最大熱収縮率50%以上である熱収縮繊維を30重量%以上好ましくは40重量%以上含む繊維層を使用すると都合がよい。
【0018】
上記本発明の面ファスナー雌材の第二繊維層の熱接着不織布は切断強力MD(長さ方向)0.5〜3.0kg/5cm、CD(幅方向)0.2〜0.8kg/5cm及び目付5〜20g/m2 の不織布を使用する事が好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の面ファスナー雌材は二層の不織布からなり、その係合部となる第二繊維層が特定の構成をもった熱接着不織布である。
【0020】
本発明の第二繊維層に使用する熱接着不織布は、構成繊維中の熱接着繊維が熱溶融して周囲の繊維間を接着しているものであり、すべての構成繊維が接着部分をもつ不織布が好ましく、特にスパンボンド不織布、メルトブロー不織布は薄く低目付のものが得られやすいので好ましい。
【0021】
そして上記不織布は、構成繊維の繊維群のうちの少数部分が破断し、及び/又は繊維群の隣接する繊維間の接着部分のうちの少数部分が剥離しており毛羽の多い不織布を使用する。
【0022】
上記毛羽の多い不織布とは次ぎのようなものを言う。
第二繊維層の面ファスナーの係合部面を表にして任意の箇所で二つ折りにし、折り目の稜線部分に25.5mm四方の枠を持つ繊維拡大鏡を10回当てて観察するとき稜線上25.5mm巾の中に1本以上の繊維端が5回以上見つかるものをいう。 このような熱接着不織布は例えばスパンボンド不織布を幅方向にテンターで拡幅して、構成繊維の一部を破断し或いは接着部分を剥離させて得ることができる。
【0023】
このような構造の熱接着不織布は、特に切断強力と目付とが特定のものであることが好ましい。すなわち、切断強力MD(長さ方向)0.5〜3.0kg/5cm、CD(幅方向)0.2〜0.8kg/5cm、より好ましくはMD0.8〜2.5kg/5cm、CD0.3〜0.6kg/5cm、及び目付5〜20g/m2 より好ましくは8〜15g/m2 程度のものである。MDは不織布の長さ方向、CDは不織布の幅方向である。
【0024】
このような熱接着不織布を面ファスナー雌材の係合部に使うと表面の構成繊維は比較的自由に動き得る状態にあるので、雄材のフックに容易に係合でき、フック全体の係合本数が増加するから面ファスナーの剥離強力が向上する。
【0025】
このような熱接着不織布を構成する繊維は熱溶融性の繊維であればよいが例えば、アセテート等の半合成繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等から任意に一あるいは二以上選択して使用することができる。繊維形状等も特に限定されず、分割性複合繊維や異形断面を有する繊維等を任意に使用することができる。
【0026】
これらの繊維を短繊維状にして定法によりカードを通し、パラレルウェブやクロスウェブ等にしてこれを熱ロールをとおして不織布にしたものや、一度高圧水流処理を施して不織布化した後熱処理したものが使用できる。
【0027】
しかし第二繊維層は面ファスナー雌材の係合部となるものであるからなるべく軽量で均一な地合いをもつことが望ましく、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布が良好に使用できる。
なかでもポリエステル繊維のスパンボンド不織布は比較的融点がたかく、1〜10デニール程度の繊度のものがフックと係合しやすい。第一繊維層を熱収縮させて第二繊維層に凹凸を生じさせるときには特に好ましく使用できる。繊度は1〜10デニール程度のものがフックと係合しやすい。
【0028】
これら不織布をテンター等で幅方向に10〜50%拡幅し、構成する繊維群のうちの少数部分を破断し、及び/又は繊維群の隣接する繊維間の接着部分のうちの少数部分を剥離し、繊維端を多数発生させ毛羽の多い不織布として使用する。拡幅処理にあたって全体が均一に拡幅され目付のムラがないように徐々に拡幅するのがよい。
【0029】
次ぎに第一繊維層につき説明する。
第一繊維層は薄物の不織布である。その目付は5g/m2 以上好ましくは10g/m2 以上である。あまり目付が軽いと均一な繊維層をつくることが難しいからである。
その素材は熱収縮繊維層を要するとき以外は特に限定されない。通常のカードウェブから高圧水流処理あるいは熱接着処理による不織布を形成し得る短繊維やスパンボンド不織布、メルトブロー不織布になり得る素材であればよい。
例えばレーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等から任意に一あるいは二以上選択して使用することができる。繊維形状等も特に限定されず、分割性複合繊維や異形断面を有する繊維等を任意に使用することができる。
【0030】
特に第一繊維層を熱収縮させ、第二繊維層に凹凸を形成させるときは熱収縮性繊維あるいは潜在捲縮性繊維を30重量%以上含まれていることが必要である。30重量%未満では熱収縮が不十分になるからである。好ましくは40重量%以上である。
第一繊維層を構成する繊維の好ましい例として、熱によって収縮する熱収縮性繊維を挙げることができる。本発明では、最大熱収縮率が少なくとも50%以上である熱収縮性繊維を使用することが好ましい。ここで最大熱収縮率とは、加熱された繊維が繊維の形状を保ったままで示す熱収縮率のうちで最大のものをいう。最大熱収縮率が50%未満では、第一繊維層の熱収縮が不十分で第二繊維層に形成される凸部の数が少なくなり、嵩高性に乏しいものとなる。
【0031】
なかでもエチレン−プロピレンランダムコポリマーからなる繊維は融解ピーク温度(Tm)が130〜145℃の範囲にあるエチレン−プロピレンランダムコポリマーを70重量%以上含むオレフィン系ポリマーからなる繊維を選ぶと最大熱収縮率が少なくとも50%であり、この繊維を繊維層に30重量%以上混合すると十分な収縮が得られる。ここで融解ピーク温度(Tm)とは、示差走査熱量計(DSC)によりポリマーノ融解熱測定を行ったときにDSC曲線が最高値を示すときの温度をいう。Tmが130℃未満であるとポリマーがゴム的弾性を示すようになり、繊維のカード通過性が悪くなる。逆に145℃を超えると、繊維の熱収縮性が通常のポリプロピレン程度となってしまうために好ましくない。
【0032】
また熱により捲縮を発現する潜在捲縮性繊維を使用するときは加熱により25.5mmあたり25個以上の立体捲縮を発現するような繊維を使用することが好ましい。25個未満では、繊維層全体を十分に収縮させることができないからであり、より好ましくは30〜60個である。かかる潜在捲縮性繊維を用いた場合、収縮した後の第一繊維層は良好な伸縮性を有するものとなるため、最終的に得られる面ファスナー雌材の不織布には伸縮性が付与されることとなる。
この場合熱収縮性繊維あるいは潜在捲縮性繊維は、第一繊維層中に30重量%以上含まれていることが望ましい。30重量%未満では、第一繊維層の収縮が不十分となるからである。これらの繊維が30重量%以上含まれていれば、第一繊維層にその他の繊維を混合することができる。混合する繊維は特に限定されず、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等から任意に一あるいは二以上選択して使用することができる。特に、前述のエチレン−プロピレンランダムコポリマーからなる繊維のように疎水性の繊維をを使用する場合には、親水性繊維であるレーヨン繊維と混合して第一繊維層を構成すると、高圧水流の衝撃による繊維の「飛び散り」が抑制され、高圧水流による繊維同士の交絡が強固なものとなるので好ましい。勿論、第一繊維層は熱収縮性繊維あるいは潜在捲縮性繊維のみから構成されていてもよい。
【0033】
第一繊維層を熱収縮させる場合、第一繊維層の態様は、ステープル繊維からなるパラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブ、ランダムウェブなど何れであっても良いが、繊維層の熱収縮の方向を一方向に集中させるほうが、第二繊維層に凸部が均一に形成される。従って、第一繊維層はパラレルウェブであることが望ましい。また、後述するように、本発明においては、第一繊維層と第二繊維層の交絡処理は部分的に施されるため、交絡部以外の部分においては、第一繊維層中の繊維同士を予め交絡あるいは接合させておく必要がある。そのため、第一繊維層には予め高圧水流等による交絡処理を施し、これを不織布の状態としてから、後述する繊維層間の交絡処理を施すことが望ましい。
【0034】
第一繊維層の目付は5g/m2 以上であることが望ましい。5g/m2 未満では均一な繊維層を作成することが難しいからである。より好ましくは10〜40g/m2 である。
第一繊維層と第二繊維層は、繊維同士の交絡により一体化される。交絡は高圧柱状水流により繊維層の全面にわたる方法、あるいは交絡部を筋状に作る方法があるが、全面に交絡部を作ると第二繊維層の係合部に寄与する繊維がすくなくなるので交絡部を筋状に作ることが好ましい。
【0035】
すなわち交絡部は、図5、図6のように、交絡部(1)がストライプ状に形成され、それ以外の部分では第一繊維層(2)と第二繊維層(3)の間が実質的に交絡していない状態であり、第二繊維層は畝部(4)形成する。
【0036】
かかる筋状の交絡部を形成させる方法としては、第一繊維層と第二繊維層とからなる積層体に、孔径0.05〜0.5mmのオリフィスが巾方向に一定の間隔をおいて穿設されたノズルから高圧水流を噴射する方法が挙げられる。この方法によれば、水流が被処理物に衝突する部分はごく一部に限られるので、それだけ繊維の「飛び散り」を抑制することができ、両繊維層を均一な状態で一体化させることができる。ここでオリフィスの間隔は、そのまま交絡部の間隔となる。但し、この間隔は、後の第一繊維層の熱収縮により狭くなることに留意する必要がある。本発明においては、オリフィスの間隔、即ち交絡部の間隔は0.5〜15mmであることが望ましい。
交絡部を筋状にするときはオリフィス間隔2mm未満では実質的に不織布全面に水流を噴射したのと変わらず、繊維の「飛び散り」が無視できなくなる。また、15mmを超えると、一定面積中に占める交絡部の割合が小さくなりすぎ、両繊維層間の一体化が不十分となるため好ましくない。より好ましくは3〜10mmである。
【0037】
また、この方法により高圧水流処理を施す場合、交絡部の占める面積が小さいため、被処理物全面に水流を噴射する場合よりも水圧をやや高めに設定して交絡を強固にするとよい。具体的には、60kg/cm2 以上であることが好ましい。より好ましくは80〜180kg/cm2 である。
【0038】
第一繊維層が熱収縮する場合は、この一体化された積層不織布に加熱処理を施して、第一繊維層を収縮させ、交絡部以外の部分の第二繊維層に凹凸を形成させる。このとき加熱処理時に不織布の長さ方向にオーバーフィードさせ、図7、図8に示すように畝部(4)と直交する方向を長手とする凸部(5)を多数形成する。 上記の場合、第一繊維層の縦方向の収縮率は、10〜80%であることがことが望ましい。10%未満では、畝の形成が不十分で不織布に十分な嵩高性を付与することができず、また面ファスナー雌材として用いた場合には、凸部の数が少ないために係合力が不十分となる。収縮率が大きくなるほど、形成される畝の数は多くなるが、80%以上収縮させると繊維密度が高くなって触感が硬くなり、またこれを面ファスナー雌材として用いても係合力は変わらず、むしろ厚みが増し、柔軟性が悪くなるので好ましくない。
【0039】
また、第一繊維層の横方向の収縮率は2〜60%程度であることが望ましい。あまり横方向の収縮率が大きくなると、交絡部の間において、上述したような細かな畝状の凸部が形成されにくくなるからである。
【0040】
縦方向の収縮率を大きくし、横方向の収縮率を押さえるためには、第一繊維層として、構成繊維の大部分が縦方向に配列したパラレルウェブからなる不織布を使用するとよい。
【0041】
加熱処理は、第一繊維層中の熱収縮性繊維あるいは潜在捲縮性繊維が、熱収縮あるいは捲縮する温度で行う。具体的には、例えば熱風貫通型乾燥機により行うことができる。この場合、熱収縮率は温度および滞留時間によって決定される。例えば、熱収縮性繊維として前述したエチレン−プロピレンランダムコポリマーからなる繊維を用いる場合には、加熱温度(T℃)を100<T<Tm+30の範囲内とし、この温度で10秒〜1分間加熱処理を施せばよい。加熱温度が100℃未満では熱収縮が不十分であり、Tm+30℃を超えると繊維が完全に溶融し収縮応力が著しく低下するため好ましくない。
【0042】
このようにして得られる本発明の不織布は、交絡部が筋状に存在し、交絡部の間において不織布の横方向を長手とする畝状の凸部が多数形成されたものである。そして、畝状の凸部においては繊維の自由度が比較的高いから、不織布全体は非常に柔らかく、また、面ファスナー雄材の係合部と非常に係合しやすいという利点を有するものである。また、交絡部の占める割合が少ないため、低目付であっても均一で、優れた外観を呈する不織布を得ることができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例を挙げて具体的に説明する。なお、得られた面ファスナー性能(毛羽の多さ、剥離強力)は、次のような方法で測定した。
【0044】
毛羽の多さ
図9に示すように第二繊維層の面ファスナー雌材の係合部面を表にして任意の箇所で二つ折りにし、折り目の稜線部分(6)に25.5mm四方の枠を持つ繊維拡大鏡(8)を10回当てて観察するとき図10に示すように折り目の稜線部分(6)上25.5mm巾の中に1本以上の繊維端(7)が見つかる回数。本発明の面ファスナー雌材は5回以上観察できるものをいう。
【0045】
剥離強力
高さ約0.5mmのキノコ型フック部が1cm2 あたり約200本設けられた幅3cm長さ8cmの面ファスナー雄材を本発明の面ファスナー雌材上におき重さ1kgのローラーで1往復して接着した。次いで係合した一方の端部4cm(雄材と雌材の合計8cm)を剥がして、角度180度の方向に上と下に分け、オリエンテック(株)製テンシロンを用いて、速度30cm/分で約3cm剥離した。そしてグラフから極大点6点、極小点6点を読み取り、その平均値を剥離強力(gf/3cm)とした。
【0046】
[実施例]
以下のように第一繊維層、第二繊維層を準備した。
第一繊維層
ポリエチレン(鞘)ポリプロピレン(芯)の複合繊維(2デニール、51mm)50%と融解ピーク温度(Tm)136℃のエチレン−プロピレンランダムコポリマー繊維(2デニール、51mm)50%を混合し20g/m2 のウェブを作成した。次いでこのウェブに水圧50kg/cm2 の高圧柱状水流を噴射し、繊維同士を交絡させて不織布にしこれを第一繊維層とした。
第二繊維層
ポリプロピレンスパンボンド不織布PPSB(旭化成株式会社製)15g/m2 をテンターで横方向に拡幅しイ、ロ、ハ3種類の目付の不織布とした。各々の目付(g/m2 )及び強力(kg/5cm)は次ぎのとおりであった。
【0047】
第一繊維層と第二繊維層の一体化
上記二つの繊維層を重ね合わせ第二繊維層の側から水圧60kg/cm2 の高圧柱状流を各々次ぎのように噴射して面ファスナー雌材を作成した。
た。
A 不織布の移動速度8m/分で全面に噴射(図1の斜視図及び図2の断面図に示す面ファスナー雌材)。
B 不織布の移動速度4m/分で5mmピッチで線状に噴射(図5の斜視図及び図6の断面図に示す面ファスナー雌材)。
【0048】
熱収縮処理
上記A、Bの方法で作成した面ファスナー雌材を135℃、コンベアの移動速度8.6m/分、約2倍のオーバーフィードで熱風処理し、エチレン−プロピレンランダムコポリマー繊維を収縮させることにより第一繊維層を面収縮させ、第二繊維層に小さい畝状の凸部を多数形成した。
図3の斜視図及び図4の断面図に示すように上記Aによる面ファスナー雌材を熱処理したものは長辺が幅方向の小さい畝部を全面に多数形成した。
図7の斜視図及び図8の断面図に示すように上記Bによる面ファスナー雌材を熱処理したものは長辺が幅方向の小さい凸部を畝部の表面に多数形成した。
【0049】
面ファスナー雌材の性能
スパンボンド不織布を拡幅せずその初期のまま第二繊維層に使ったものを比較例、拡幅して第二繊維層に使ったものを本発明の実施例として性能を比較した。
第二繊維層 一体化の方法 熱収縮処理 毛羽発見回数 剥離強力
初期 A なし 0 30
初期 A あり 0 33
初期 B なし 1 75
初期 B あり 1 71
イ A なし 8 105
イ A あり 8 110
イ B なし 8 117
イ B あり 8 124
ロ A なし 9 133
ロ A あり 10 144
ロ B なし 10 140
ロ B あり 10 136
ハ A なし 10 166
ハ A あり 10 170
ハ B なし 10 230
ハ B あり 10 227
【0050】
【発明の効果】
上記のとおりスパンボンド不織布を拡幅して第二繊維層とし、係合部に使った本発明の面ファスナー雌材はいずれも100以上の高い係合力を示した。これに対しスパンボンド不織布をそのまま係合部にした比較例の面ファスナー雌材は約35%程度の係合力が低い結果であった。
この面ファスナー雌材は、紙おむつ等のディスポーザブル商品に特に好ましく使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一繊維層と第二繊維層の全面が高圧柱状水流により一体化された状態を示す斜視図である。
【図2】第一繊維層と第二繊維層の全面が高圧柱状水流により一体化された状態を示す断面図である。
【図3】第一繊維層と第二繊維層の全面が高圧柱状水流により一体化され畝状の凸部を形成した状態を示す斜視図である。
【図4】第一繊維層と第二繊維層の全面が高圧柱状水流により一体化され畝状の凸部を形成した状態を示す断面図である。
【図5】第一繊維層と第二繊維層が高圧柱状水流により筋状に一体化された状態を示す斜視図である。
【図6】第一繊維層と第二繊維層が高圧柱状水流により筋状に一体化された状態を示す断面図である。
【図7】第一繊維層と第二繊維層が高圧柱状水流により筋状に一体化され畝状の凸部を形成した状態を示す斜視図である。
【図8】第一繊維層と第二繊維層が高圧柱状水流により筋状に一体化され畝状の凸部を形成した状態を示す断面図である。
【図9】毛羽の状態を測定する方法を示す斜視図である。
【図10】毛羽の状態を拡大繊維鏡で測定した一例である。
【符号の説明】
1 交絡部
2 第一繊維層
3 第二繊維層
4 畝部
5 凸部
6 折り目の稜線部分
7 繊維端
8 繊維拡大鏡
Claims (9)
- 第一繊維層と第二繊維層とが繊維同士の交絡により一体化されてなる不織布において、第二繊維層は幅方向に拡幅した熱接着不織布であり該熱接着不織布を構成する繊維群のうちの少数部分が破断し、及び/又は繊維群の隣接する繊維間の接着部分のうちの少数部分が剥離している毛羽の多い不織布であり、第二繊維層を係合部として使用することを特徴とする面ファスナー雌材。
- 第二繊維層は短い畝状の多数の凹凸をもつ請求項1記載の面ファスナー雌材。
- 第一繊維層と第二繊維層とが繊維同士の交絡により一体化されてなる不織布において、交絡部が筋状に存在し、かつ交絡部以外の部分の第二繊維層は盛り上がった連続する畝部を形成している請求項1記載の面ファスナー雌材。
- 盛り上がった連続する畝部上に該畝部と直交する方向を長手とする短い畝状の多数の凹凸をもつ請求項3記載の面ファスナー雌材。
- 第二繊維層の熱接着不織布はスパンボンド不織布もしくはメルトブロー不織布である請求項1〜4いずれかに記載の面ファスナー雌材。
- 繊維の薄層ウェブである第一繊維層の少なくとも片面に、熱接着不織布であり該熱接着不織布を幅方向に拡幅し、構成する繊維群のうちの少数部分が破断し、及び/又は繊維群の隣接する繊維間の接着部分のうちの少数部分が剥離している毛羽の多い不織布である第二繊維層を積層し、これに高圧柱状水流を噴射して、両繊維層を一体化させることを特徴とする面ファスナー雌材の製造方法。
- 前記第二繊維層の熱接着不織布は、幅方向に10〜50%拡幅されている請求項6記載の面ファスナー雌材の製造方法。
- 前記第一繊維層は熱により収縮する性質を有する繊維層であり、前記第二繊維層は、第一繊維層が収縮する温度より高い収縮開始温度をもつ熱接着不織布であり、これに高圧柱状水流を噴射して両繊維層を一体化させた後、加熱処理を施すことにより、第一繊維層を収縮させ、第二繊維層に短い畝状の多数の凸部を形成させることを特徴とする、請求項6または7記載の面ファスナー雌材の製造方法。
- 前記第一繊維層は熱により収縮する性質を有する繊維層であり、前記第二繊維層は、第一繊維層が収縮する温度より高い収縮開始温度をもつ熱接着不織布であり、これに高圧柱状水流を筋状に噴射して、両繊維層を一体化させるとともに、筋状の交絡部の間を盛り上がった連続する畝部とした後、加熱処理を施すことにより、第一繊維層を収縮させ、該畝部状に畝部と直交する方向を長手とする、短い多数の凹凸を形成させることを特徴とする請求項6または7記載の面ファスナー雌材の製造方法。
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