JP3846755B2 - 冷媒循環式空調システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒の搬送管を共用して多層階の建物の冷暖房を行う冷媒循環式空調システムにおいて、冷房時に停止中のファンコイルユニットによる冷媒の停滞が生じるのを防止しようとする冷媒循環式空調システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、図3に示す如く、建物の上部位置に室外機の熱交換器1を設置し、同熱交換器1と建物内の各部屋に設置のファンコイルユニット2との間を冷媒の搬送管で連結して冷媒が循環する閉回路を構成し、冷房時には室外機の熱交換器1内の冷媒液を複数のファンコイルユニット2に重力の作用と気化した冷媒の圧力により自然循環させることにより各部屋を冷房し、暖房時には室外機の熱交換器1で気化した冷媒ガスを、その圧力と液化した冷媒液を熱交換器1に戻すための建物の下部位置に設けたポンプ3によってファンコイルユニット2に循環させることにより各部屋を暖房するようにした冷媒循環式空調システムがある。図3で5は冷媒液搬送管、6は冷媒ガス搬送管、7は膨張弁、8は受液器である。
【0003】
このシステムにあっては、冷媒の搬送管を冷房、暖房用に共用することができるため、配管数を削減でき、配管工事のための費用も削減できてイニシャルコストを大幅に軽減できるだけでなく、冷房運転時には冷媒の搬送動力を必要としないため、冷房運転時のランニングコストを大幅に軽減することができるという利点を有する反面、吸収式冷凍機等の熱交換器を建物の最上部に設置し、冷媒液のポテンシャルエネルギーとガス圧によって冷媒を循環させるようにしたものであるから、ファンコイルユニットの設置場所に大きな高低差がある場合、冷房時には冷媒液の圧力が最も高い最下階のファンコイルユニットに供給される冷媒液の供給量が最も多く、上層階に行くに従ってその供給量は少なくなり、三、四階ある多層階の建物にあっては、最下階のファンコイルユニットと最上階のファンコイルユニットとでは冷媒液の供給量が極端に異なって冷媒の供給バランスが悪く、逆に、暖房時には冷媒ガスの圧力が最も高い最上階のファンコイルユニットに供給される冷媒ガスの供給量が最も多く、下層階に行くに従ってその供給量が少なくなり、同じ最上階のファンコイルユニットと最下階のファンコイルユニットとでは冷媒の供給バランスが悪いという問題があった。
【0004】
本特許出願人らはこの問題を解決するものとして先に特開平9−26187号公報や特開平9−26188号公報に開示されるものを出願した。これは図3に示すシステムにおいて、膨張弁には各部屋のファンコイルユニットの運転停止時に自動的に閉鎖して上記ファンコイルユニットの熱交換器への冷媒の供給を遮断する比例制御可能な電子膨張弁を用いている。各ファンコイルユニットの冷媒液搬送管側と冷媒ガス搬送管側とに夫々温度センサーを配置してあり、温度センサーで冷媒液搬送管側と冷媒ガス搬送管側の温度を測定することでこの間の温度差を測定し、この温度差が一定になるように膨張弁を開閉制御するようにしてある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平9−26187号公報や特開平9−26188号公報のようにしてあると、各階における冷媒の圧力差があっても各ファンコイルユニットへの冷媒の供給量は均一化され、冷房時、暖房時の如何に拘わらず各階のファンコイルユニットへの冷媒の供給バランスを良好ならしめることができるが、次の新たな問題がある。冷房時に於ける部分負荷立ち上げ時には、運転停止中のファンコイルユニットがあるが、この運転停止中のファンコイルユニットでは膨張弁が全閉状態になっており、冷媒が流れない状態になっている。ところが停止しているファンコイルユニットの冷媒液が流れないと、冷媒液搬送管の冷媒液の流量が少なく、冷媒液の温度が上がり、冷媒液が気化し、冷媒液搬送管の屋上横引き管等に気化した冷媒ガスが停滞してしまって、冷媒の循環を阻害し、立ち上げ時間が長くなるという問題がある。
【0006】
本発明は叙述の点に鑑みてなされたものであって、部分負荷立ち上げ時でも冷媒液搬送管に冷媒ガスが停滞するのを防止して冷媒の循環を阻害しなく、立ち上げ時間を短くできる冷媒循環式空調システムを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の冷媒循環式空調システムは、建物の上部位置に室外機の熱交換器1を設置し、同熱交換器1と建物内の各部屋に設置のファンコイルユニット2との間を冷媒の搬送管で連結して冷媒が循環する閉回路を構成し、冷房時には室外機の熱交換器1内の冷媒液を複数のファンコイルユニット2に重力の作用と気化した冷媒ガスの圧力により主に自然循環させることにより各部屋を冷房し、暖房時には室外機の熱交換器1で気化した冷媒ガスを、そのガスの圧力と液化した冷媒液を室外機の熱交換器1に戻すための建物下部位置に設けたポンプ3によりファンコイルユニット2に循環させることにより各部屋を暖房するようにしたものにおいて、冷房時に運転停止中のファンコイルユニット2についての冷媒液搬送管5側の冷媒液の温度を測定し、この冷媒液搬送管5側の冷媒の温度がある温度以上になったとき運転停止中のファンコイルユニット2の熱交換器へ冷媒液を流すために膨張弁7を一定開度だけ開くように制御するコントローラー9を設けて成ることを特徴とする。冷房運転時に運転停止中のファンコイルユニット2の冷媒液搬送管5側の冷媒液の温度を測定し、この冷媒液の温度がある温度以上(冷媒液搬送管5を流れる冷媒液の流量が多いと温度が低く冷媒液の流量が少ないと温度が高くなる)になったとき膨張弁7を一定開度だけ開いて停止中のファンコイルユニット2の熱交換器に冷媒液を所定の流量で流すように制御することができ、部分負荷立ち上げ時でも冷媒液搬送管5を流れる冷媒液の流量を多くして気化した冷媒ガスのガス抜きを促進でき、部分負荷時の冷媒の循環を阻害しなく、立ち上げ時間を短くできる。
【0008】
また停止中の上記膨張弁7の制御を行うファンコイルユニット2を室外機に最も近い1台として成ることを特徴とすることも好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明システムの実施の形態を図面により具体的に説明する。図1は本発明システムであり、1は、建物の屋上にある機械室に設置された室外機たる吸収式冷凍機、蒸発器等の熱交換器で、冷房時に冷水等により、暖房時には温水等によって内部の熱交換コイルを通過する冷媒が冷却または加熱される。2は、各部屋に設置されたファンコイルユニットで、部屋の大きさによってファンコイルユニット2の容量も変わるが、本実施の形態の場合、説明を簡単にするために全てのファンコイルユニット2は同一容量のものとする。7は、各部屋のファンコイルユニット2の運転停止時自動的に閉鎖して上記ファンコイルユニット2の熱交換器(図示せず)への冷媒の供給を遮断する比例制御可能な電子膨張弁のような膨張弁である。6は、暖房時には室外機の熱交換器1で加熱されて気化した冷媒ガスを各ファンコイルユニット2に供給し、冷房時には各ファンコイルユニット2の熱交換器を通過して気化した冷媒ガスを熱交換器1に戻すための冷媒ガス搬送管、5は、暖房時にはファンコイルユニット2の熱交換器を通過して液化した冷媒液を熱交換器1に戻し、冷房時には熱交換器1で冷却されて液化した冷媒を熱交換器1から各部屋のファンコイルユニット2の熱交換器に供給する冷媒液搬送管である。3は、暖房時各部屋のファンコイルユニット2の熱交換器を通過して液化した冷媒液を熱交換器1に戻すためのポンプ、10は、冷房時と暖房時に交互に開閉して冷媒の流れを制御するバルブである。11は、各部屋のファンコイルユニット2の熱交換器の冷媒ガス側の温度を常時測定する温度センサー、12は、同熱交換器の冷媒液側の温度を常時測定する温度センサー、9は、冷、暖房運転の切り替え毎に機能が切り替えられ、冷房時と暖房時に両温度センサー11,12が測定した温度差Δtを監視し、その温度差が一定の温度差となるようにファンコイルユニット2の膨張弁7を開閉制御したり、冷房時において運転停止中のファンコイルユニット2における温度センサー12にて測定した冷媒液側の温度を監視し、その温度により膨張弁7を開閉制御したりするコントローラーである。13は冷媒液戻し管である。
【0010】
上記本発明システムを冷房運転とし、各部屋のファンコイルユニット2の運転を開始すると、運転開始当初は各部屋の熱負荷が大きいため、その熱負荷を速やかに解消すべくコントローラー9はファンコイルユニット2の膨張弁7に信号を送って弁体を最大開度にして冷媒液ファンコイルユニット2の熱交換器に供給する。このとき冷媒液の入口側と出口側の温度差Δtは非常に大きい。
【0011】
熱負荷が小さくなり、冷媒液の入口側と出口側の温度差Δtが小さくなってある設定された値例えば5℃になると、コントローラー9はこの温度差を保つように膨張弁7の弁体を開閉制御してファンコイルユニット2の熱交換器への冷媒液の供給量を調整する。この制御は運転している全てのファンコイルユニット2で行われるため、各階において冷媒液の圧力差があっても全ファンコイルユニット2での冷媒液の供給量は略均一化され、各階のファンコイルユニット2への冷媒の供給のバランスが良好となる。
【0012】
本発明システムを暖房運転とし、各部屋のファンコイルユニット2の運転を開始すると、運転開始当初は各部屋の熱負荷が大きいため、その熱負荷を速やかに解消すべくコントローラー9はファンコイルユニット2の膨張弁7に信号を送って弁体を最大開度にして冷媒ガスを熱交換器に供給する。このとき冷媒ガスの入口側と出口側の温度差Δtが非常に大きい。
【0013】
熱負荷が小さくなり、冷媒ガスの入口側と出口側の温度差Δtが小さくなってそのΔtがある設定された値例えば10℃になると、コントローラー9はこの温度差を保つように膨張弁7の弁体を開閉制御してファンコイルユニット2の熱交換器への冷媒ガスの供給量を調整する。この制御は運転している全てのファンコイルユニット2で行われるため、各階において冷媒ガスの圧力差があっても全ファンコイルユニット2での冷媒ガスの供給量は略均一化され、各階のファンコイルユニット2への冷媒の供給のバランスが良好になる。
【0014】
尚、上記制御運転中、各部屋の温度調節は、冷媒の供給量の調整によって行うことができないので、ファンコイルユニット2のファンによる送風量の調節によって行うものである。
また本発明システムを冷房運転としたときで、部分負荷の立ち上げを行うときはコントローラー9で次のように制御を行う。部分負荷の運転を行うときは運転停止中のファンコイルユニット2があり、このファンコイルユニット2の膨張弁7が全閉状態になっている。このため運転停止中のファンコイルユニット2があると、冷媒液搬送管5の冷媒液の流量が少なくなって冷媒液の温度が高くなって冷媒液が気化して冷媒ガス発生し、冷媒ガスが冷媒液搬送管5の屋上横引き管等に停滞して冷媒循環を阻害するおそれがあるが、次のように制御することで冷媒循環を阻害するのを防止するようにできる。つまり、ファンコイルユニット2の冷媒液搬送管5側に温度センサー12を設けてあるが、ファンコイルユニット2の運転停止中にはこの温度センサー12で冷媒液の温度を測定してコントローラー9で監視するようになっている。そして冷媒液搬送管5側の冷媒液の温度TLがある温度T1 (例えば18℃)以上となると(TL≧T1 )、膨張弁7を一定開度(例えば30%)だけ開いて冷媒液をファンコイルユニット2の熱交換器に流すように制御を行う。つまり、冷媒液搬送管5側の冷媒液の温度は、冷媒液搬送管5を流れる冷媒液の流量が少ないと高くなり、流量が多いと低くなるが、温度が高いとき流量が少ないために膨張弁7を開いて流量を多くする。勿論、冷媒液搬送管5側の温度TLがある温度T1 以下の場合(TL≧T1 )、冷媒液搬送管5の冷媒液の流量が所定以上のために膨張弁7を全閉状態にしておく。上記のように冷媒液搬送管5側の冷媒液の温度TLがある温度以上になったとき一定開度だけ膨張弁7を開いて冷媒液を流すようにすると、冷媒液搬送管5の冷媒液の流れを十分にして冷媒液搬送管5の冷媒ガスのガス抜きを促進することができ、上記のような冷媒の循環の阻害をすることがなく、部分負荷の運転時の立ち上げ時間を短くできる。
【0015】
また上記例では各ファンコイルユニット2のコントローラー9でファンコイルユニット2の運転停止中の冷媒液搬送管5側の冷媒液の温度を監視して温度が高いとき膨張弁7を開くように制御することについて述べたが、このように制御するのは室外機の熱交換器1に最も近いファンコイルユニット2だけであってもよい。つまり、図1の符号Aで示すファンコイルユニット2だけであってもよい。つまり、室外機の熱交換器2に最も近いファンコイルユニット2は冷媒液搬送管5の冷媒ガスが停滞しやすい屋上横引き管の近傍にあり、このファンコイルユニット2が運転停止中でも膨張弁7を開いて冷媒液を流すようにすると、効果的にガス抜きができ、冷媒の循環の阻害を十分に防止できる。
【0016】
【発明の効果】
本発明の請求項1の発明は、冷房時に運転停止中のファンコイルユニットについての冷媒液搬送管側の冷媒液の温度を測定し、この冷媒液搬送管側の冷媒の温度がある温度以上になったとき運転停止中のファンコイルユニットの熱交換器へ冷媒液を流すために膨張弁を一定開度だけ開くように制御するコントローラーを設けているので、冷房運転時に運転停止中のファンコイルユニットの冷媒液搬送管側の冷媒液の温度を測定し、この冷媒液の温度がある温度以上になったとき膨張弁を一定開度だけ開いて停止中のファンコイルユニットの熱交換器に冷媒液を所定の流量で流すように制御することができるものであって、部分負荷立ち上げ時でも冷媒液搬送管を流れる冷媒液の流量を多くして気化した冷媒ガスのガス抜きを促進できて部分負荷時の冷媒の循環を阻害しなく、立ち上げ時間を短くできるものである。
【0017】
また本発明の請求項2の発明は、請求項1において、停止中の上記膨張弁の制御を行うファンコイルユニットを室外機に最も近い1台としているので、最もガス抜きが効果的にできるファンコイルユニットで膨張弁を制御して十分に冷媒の循環を阻害しないようにできるものであり、しかも1台のファンコイルユニットを制御するだけのために構造を簡単にできるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明システムの概略説明図である。
【図2】各ファンコイルユニットとコントローラーの概略説明図である。
【図3】本発明の背景となるシステムの概略説明図である。
【符号の説明】
1 熱交換器
2 ファンコイルユニット
3 ポンプ
5 冷媒液搬送管
6 冷媒ガス搬送管
7 膨張弁
9 コントローラー
11 温度センサー
12 温度センサー

Claims (2)

  1. 建物の上部位置に室外機の熱交換器を設置し、同熱交換器と建物内の各部屋に設置のファンコイルユニットとの間を冷媒の搬送管で連結して冷媒が循環する閉回路を構成し、冷房時には室外機の熱交換器内の冷媒液を複数のファンコイルユニットに重力の作用と気化した冷媒ガスの圧力により主に自然循環させることにより各部屋を冷房し、暖房時には室外機の熱交換器で気化した冷媒ガスを、そのガスの圧力と液化した冷媒液を室外機の熱交換器に戻すための建物下部位置に設けたポンプによりファンコイルユニットに循環させることにより各部屋を暖房するようにした冷媒循環式空調システムにおいて、冷房時に運転停止中のファンコイルユニットについての冷媒液搬送管側の冷媒液の温度を測定し、この冷媒液搬送管側の冷媒液の温度がある温度以上になったとき運転停止中のファンコイルユニットの熱交換器へ冷媒液を流すために膨張弁を一定開度だけ開くように制御するコントローラーを設けて成ることを特徴とする冷媒循環式空調システム。
  2. 運転停止中の上記膨張弁の制御を行うファンコイルユニットを室外機に最も近い1台として成ることを特徴とする請求項1記載の冷媒循環式空調システム。
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