JP3845696B2 - 超微細粒フェライト組織鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、鋼製品に関し、さらに詳しくは、高強度で、高靱性で、かつ溶接性にも優れた、結晶粒径0.7μm以下で整粒のフェライト組織を主体とした鋼材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその解決課題】
従来より、低炭素鋼においてフェライト結晶粒径の微細化を図ることが、鋼の強度を向上させ、かつ靱性を向上させる有力な手段であることが知られている。
【0003】
そして、鋼の強度を2倍以上にするためには、フェライト結晶粒径0.7μm以下にする必要があることも知られている。しかしながら、従来では、0.7μm以下の超微細粒子フェライト結晶粒バルク材を得ることは非常に困難であった。
【0004】
このような状況において、フェライトの粒径の微細化についての改善方法が案出されてきている。たとえば、日本金属学会誌、第57巻第3号(1993)p.254に示されているような回転するポットの中に剛体球と原料鋼粉末を入れて粉末を強加工し、固化成形する、CAMP-ISTJ, Vol.11(1998)p.1035 に示されているようなメカニカルミリング法、鋼を圧延して半分に切断し、これを重ねてさらに圧延することを繰り返す、繰り返し重ね接合圧延(ARB)法や、METALLURJICAL AND MATERIALS TRANS ACTIONS A, Vol.29(1998)p.2237 に示されているようにL字型の型の中を鋼を通過させて意図的に剪断歪みを導入し組織を微細化するECAP法等が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの手法は鋼の製造に時間がかかることや、あるいは大量生産が困難であるなどの問題があり、工業的規模での利用が難しいという問題があった。
【0006】
そこで、この出願の発明は、上記のとおりの従来方法の問題点を解消し、強度並びに靱性に優れ、さらには溶接性も良好な、鋼全体が0.7μm以下の超微細フェライト粒からなる鋼材の新しい製造方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、フェライトが再結晶しない温度領域で全50%以上の多パス圧延を行い、次いで2パス以内でフェライトが動的再結晶する温度領域で圧延する工程を含むことを特徴とする超微細粒フェライト組織鋼の製造方法を提供する。
【0008】
また、この出願の発明は、第2には、微細な出発材料を得るための工程を追加し、先ず鋼を900℃以上に加熱し、Ar1点より高温にて30%以上の多パス圧延を行い、その後に前記した全50%以上の多パス圧延、及びこれに続く2パス以内の圧延を行うことを特徴とする超微細粒フェライト組織鋼の製造方法を提供する。
【0009】
さらに、この出願の発明は、第3には、穴型圧延機を用いて、圧延中の試料断面形状が相似形以外の変形を伴う圧延を行うことを特徴とする超微細粒フェライト組織鋼の製造方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴を有するものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0011】
まず、この出願の第1の発明方法においては、鋼材をフェライトが再結晶しない温度領域で50%以上の多パス圧延を行う。次いでフェライトが動的再結晶する温度領域に加熱し、1ないし2パスの圧延を行い、動的再結晶させる。これらの工程を含むことによって、鋼全体が0.7μm以下の整粒である超微細粒フェライト組織からなる鋼材を製造する。
【0012】
フェライトが再結晶しない温度領域で50%以上の多パス圧延を行うことの理由は、後工程での動的再結晶に必要な核の元を作り込んでおくためである。
この段階でより多くの再結晶核の元を創製することにより最終的に得られるフェライト粒径はより微細なものになる。この多パス圧延の段階で再結晶を起こした場合には、得られるフェライト粒径は混粒になりやすい。
【0013】
このため、前工程としての多パス圧延では、鋼材を570℃以下のフェライトが再結晶しない温度領域で圧延することが欠かせない。より好ましい加熱温度の範囲は、500〜570℃である。そして、多パス圧延では50%以上の圧延とするが、より好ましくは85%以上である。
【0014】
また、この出願の発明において、後工程として、フェライトが動的再結晶する温度領域に加熱し、1〜2パスの圧延を行って加工組織を動的再結晶させることの理由は、1〜2パスの圧延で動的再結晶させることで、前記の再結晶の核から一度に再結晶を起こさせ超微細フェライト粒組織を創製するためである。
【0015】
このとき、最終1〜2パスを高温にする加熱はできるだけ迅速に行う必要がある。そのため、高周波誘導加熱などの加熱方法を採用してもよいし、あるいは、圧延加工にともなう加工発熱を用いることができるが、加工発熱による方法を採用し、最終1〜2パスで加工発熱を利用するのが簡単で有効である。その理由は、最終1〜2パスの実質減面率を他のパスに対して増加させることにより大きな加工発熱が起こり動的再結晶が可能になるからである。
【0016】
なお、フェライトの動的再結晶温度は、成分、加工量、ひずみ速度によって異なるが、動的再結晶のための核があらかじめ用意されている状態では550℃〜Aeの温度範囲である。
【0017】
後工程としての、フェライトの動的再結晶温度領域での圧延は1ないし2パスとするが、これは2パスを超える圧延では組織が混粒になりやすいからである。また1ないし2パスでの圧延の圧下率については特に限定されることはない。
【0018】
そして、この出願の以上のとおりの第1の発明の方法において、対象とする出発鋼材の結晶粒径は、微細であれば微細であるほど良い。そこで、あらかじめ出発鋼材を900℃以上に加熱しオーステナイト化し、Ar1点より高い温度範囲で30%以上の多パス圧延を行うことが有効である。Ar1点以上で加工を行うことにより、その後の冷却中の変態を通じてより微細なフェライト組織が得られる。
【0019】
30%未満の加工では、変態後の組織を微細化する効果はあまり大きくない。 また、この出願の発明では、前記の圧延には穴型圧延を用いることもできる。この場合には特に、穴形状を工夫することで最終的に得られる棒材の組織をより等軸化することが可能となる。その際、多パス圧延の穴形状については、特に、四角形、三角形等の穴形状が異なるパスを順次通すか、あるいは、穴形状は相似形であっても試料を回転させて圧延機に挿入することで、圧延中の試料断面形状が相似変形以外の変形を伴うように圧延することにより、T断面だけでなく、L断面の組織も等軸化することが可能である。ここで「穴形状は相似形であっても、試料を回転させて圧延機に挿入することで、圧縮中の試料断面形状が相似変形以外の変形を伴う」と言うことの意味は、例えば、正方形の穴に正方形の断面をもつ試料を通すとき、穴の辺の中央と試料の角を合わせ通すと、試料の断面は圧延中に一旦、八角形となり最終的に正方形となる加工態様をいい、穴と試料の角を相互に合わせる場合に、試料は相似形のまま圧縮変形するが、このような場合とは異なっている。また、ここで言う「T断面」とは棒の長手方向に対して垂直に切断した断面であり、「L断面」とは水平に切断した断面を言う。
【0020】
この発明での圧延加工後の冷却は特に限定されないが、例えば10℃/s以上の比較的速い冷却速度で冷却することがフェライト粒の粗大化を防止する観点から望ましい。
【0021】
また、この出願の発明における鋼材の種類については、厳密な限定はないが、たとえばその組成(重量%)が以下のものを好適なものとして例示することができる。
【0022】
C:0.25以下
Si:0.10〜1.00
Mn:0.50〜2.00
P:0.08以下
S:0.010以下
N:0.010以下
Al:0.050以下
Fe:残部
もちろん、原料や製造工程からの不可避的不純物の混入が許容されることは言うまでもない。
【0023】
以下、実施例を示し、この出願の発明について、さらに詳しく説明する。
【0024】
【実施例】
<実施例1>
化学組成(重量%)がC/0.15、S/0.28、Mn/1.45、P/0.005、S i/0.0004、Al/0.031、N/0.0016、Fe/残部であって、その形状が115φ×500mmの鋼材を900℃に1h加熱し、少なくとも加工開始前はオーステナイトである、オーステナイト域の700〜750℃で9パス46%溝ロール圧延し、次いでフェライト域の500〜570℃で20パス90%の溝ロール圧延し、その後、加工発熱で圧延温度が610℃となる2パスの強加工溝ロール圧延(減面率50%)を行い、その後水冷した。これによって、試料鋼材A1を得た。
【0025】
最終の2パス直前までは加工フェライト組織であったが、最終2パスで動的再結晶が起こり、超微細粒子フェライト結晶(粒径0.7μm以下)組織となった。得られた鋼材A1の硬さは240(Hv)であった。図1は、この組織を例示した電子顕微鏡写真である。
【0026】
このもののフェライト粒径は0.7μm以下であり、その硬さは230(Hv)であった。
<比較例1>
比較のために、実施例1において、最終2パス610℃溝ロール圧延(50%)に加えて、さらに2パス610℃溝ロール圧延(減面率32%)を行い、その後水冷し、試料鋼材Bを得た。
【0027】
この鋼材Bのフェライト粒は、平均1.8μmであって、その組織は、図2に示されたものであった。また、鋼材Bの硬さは180(Hv)であった。
【0028】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によれば、フェライト粒径0.7μm以下の超微細粒子フェライト組織鋼を、温度制御された圧延によって容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の鋼材A1の組織を例示した図面に代わる電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例1の鋼材Bの組織を例示した図面に代わる電子顕微鏡写真である。
Claims (3)
- 下記の組成からなる鋼材をフェライトが再結晶しない温度領域で下記の組成からなる鋼材を溝ロールを用いて全減面率50%以上の多パス圧延を行い、次いで2パス以内でフェライトが動的再結晶する温度領域で溝ロールを用いて圧延する工程を含むことを特徴とする結晶粒径0.7μm以下で整粒の超微細粒フェライト組織鋼の製造方法。
C:0.25重量%以下
Si:0.10〜1.00重量%
Mn:0.50〜2.00重量%
P:0.08重量%以下
S:0.010重量%以下
N:0.010重量%以下
Al:0.050重量%以下
Fe:残部 - 下記の組成からなる鋼材を900℃以上に加熱し、Ar1点より高温にて30%以上の多パス圧延を行い、次いでフェライトが再結晶しない温度領域で溝ロールを用いて全減面率50%以上の多パス圧延を行い、次いで2パス以内でフェライトが動的再結晶する温度領域で溝ロールを用いて圧延する工程を含むことを特徴とする結晶粒径0.7μm以下で整粒の超微細粒フェライト組織鋼の製造方法。
C:0.25重量%以下
Si:0.10〜1.00重量%
Mn:0.50〜2.00重量%
P:0.08重量%以下
S:0.010重量%以下
N:0.010重量%以下
Al:0.050重量%以下
Fe:残部 - 多パスの穴型圧延機を用いて、圧延中の試料断面形状が相似形以外の変形を伴う圧延を行うことを特徴とする請求項1または2の結晶粒径0.7μm以下で整粒の超微細粒フェライト組織鋼の製造方法。
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