JP3845483B2 - 密封装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば連続鋳造機用ロールの軸受用ダストシール等に用いられる密封装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の密封装置としては、たとえば図2に示すようなものが知られている。すなわち、この密封装置100は、連続鋳造機用ロール101のロール軸101aの軸受102にロール本体101b側からダストが浸入しないようにするために用いられるもので、軸方向に配列された2つのシール部材104,105によってダストの浸入を2重にシールしている。
【0003】
そして、各シール部材104,105のシールリップ104a,105aがダストによって傷が付かないように、第1のシール部材104の背面側からグリース等の液体潤滑剤106を供給し、各シールリップ104a,105aのロール軸101aとの接触面間に浸入するダストを洗い流していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記した従来の密封装置では、液体潤滑剤106によってダストを十分に洗い流すことができない場合があり、この残留ダストによってダスト側のシールリップ104aが傷付き、シール部材104,105間の空間108にダストが浸入する場合がある。
【0005】
このシール部材104,105間の空間108に浸入したダストは液体潤滑剤106によって排出され難く、空間108内に蓄積されていく。そのため、ダストによって各シールリップ104a,105aの摺動面の早期摩耗やシールリップ104a,105aが接触するローラ軸101a表面の早期摩耗を招来し、ダストが軸受102側に浸入するおそれがある。
【0006】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、シール部材のダストによる傷つきを可及的に低減し得る密封装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にあっては、互いに同心的に相対回転可能に組み付けられる2部材間をシールするもので、軸方向に配設される潤滑剤供給側の第1のシール部材とダスト側の第2のシール部材とを備えた密封装置において、前記第1及び第2のシール部材は、相対回転する2部材の一方の部材に固定される環状の固定部と、他方の部材に対して摺動自在に密封接触する環状のシール部とを備え、前記第2のシール部材の固定部は前記第1のシール部材の固定部内周に嵌着され、この第1のシール部材と第2のシール部材の嵌着部に、第1,第2のシール部材間の空間とダスト側の空間とを連通する通路を設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、第2のシール部材によってダストの浸入が防止され、仮に第1のシール部材と第2のシール部材間にダストが浸入したとしても、第1のシール部材側から供給される液体潤滑剤と共に通路を通じてダスト側空間に排出され、第1のシール部材と第2のシール部材間にダストが蓄積されない。
【0009】
特に、第2のシール部材を樹脂製のシールリングによって構成すれば、ダストによる傷が付きにくくダストの浸入を可及的に低減することができる。また、第1のシール部材を、第2のシール部材側に延びるゴム状弾性体製のシールリップを有する構成とすることにより、液体潤滑剤の供給圧によってシールリップが開きやすく、シールリップと相手部材との摺動接触面を効率よく洗い流して摺動接触面をダストの無い清浄な状態に保つことができ、シールリップの耐久性向上を図ることができる。
【0010】
また、通路を嵌着部の周方向に複数設けておけば、密封装置を横向きで使用する場合には、液体潤滑剤供給時に、ダストは下側の通路よりダスト側空間に排出される。
【0011】
また、第1,第2のシール部材の嵌着部には、第2のシール部材の固定部を保持するガイドリングを介在させ、該ガイドリングに通路を構成する切欠きを設けることが好ましい。
【0012】
このように通路形成用にガイドリングを用いれば、第2のシール部材自体には通路用の特別の加工が不要である。
【0013】
さらに、第1,第2のシール部材の間には、第1のシール部材のシール部と第2のシール部材のシール部との軸方向位置を固定する位置決め環を介装し、該位置決め環にガイドリングの切欠きと共に通路を構成する穴を設けるようにすれば、第1,第2のシール部材を正確に組み付けることができると共に、通路をも構成することができる。
【0014】
一方、ダスト側空間に、相対回転可能の2部材間に、ダスト側に流出する潤滑剤を溜める環状隙間を形成したことを特徴とする。
【0015】
このようにすれば、通路から排出された液体潤滑剤が環状隙間に溜まり、水あるいはスケール等のダストの浸入を阻止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1には本発明の実施の形態に係る密封装置を示している。
【0018】
1は密封装置全体を示すもので、従来例と同様に、連続鋳造機等のロール2のロール軸2aの軸受3へのダスト側空間Dからのダストの浸入を防止する場合を例にとって説明するものとする。
【0019】
この密封装置は、互いに同心的に相対回転可能に組み付けられる2部材としての固定のシールハウジング4と、可動のロール軸2a間をシールするもので、軸方向に配設される潤滑剤供給側の第1のシール部材5とダスト側の第2のシール部材6とを備え、ダストの浸入を二重にシールしている。シールハウジング4は軸受ハウジング7に固定されている。
【0020】
第1のシール材5は、一方の部材としてのシールハウジング4に固定される環状の固定部51と、他方の部材としてのロール軸2aに対して回転摺動自在に密封接触するシール部としての環状のシールリップ52とを備えている。
【0021】
固定部51は断面略L字形状の金属環55によって構成され、シールハウジング4内周に嵌合される円筒状部51aと、円筒状部52の液体潤滑剤供給側の端部から半径方向内方に延びる内向きフランジ部51bと、から構成されている。そして、内向きフランジ部51bの内端からゴム状弾性体製のシールリップ52がダスト側空間Dに向かって軸方向に内方に徐々に傾斜するように延びており、リップ先端52aがロール軸2a外周に接触して第1シール部S1を構成している。
【0022】
上記円筒状部51aは、ほぼシールリップ52部分を覆う円筒状部本体53と、この円筒状部本体53からダスト側に延長された延長部54と、から構成され、円筒状部本体53は金属環55外周にゴム状弾性体56が焼き付けられ、延長部54の外周は金属環55の外周面が露出している。
【0023】
一方、第2のシール部材6は全体として断面略矩形状のリング部材で、固定部を構成するゴム状弾性体製の外周リング61と、この外周リング61の内周に一体的に固定され内周がロール軸2aに摺動自在に密封接触して第2シール部S2を構成する樹脂製のシールリングとしての内周リング62と、から構成されている。
【0024】
この内周リング62の材料としては、摺動抵抗が小さくかつダストに対する耐摩耗性に優れた樹脂材料が選択される。たとえば、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)等のフッ素系樹脂を用いることができる。PTFE等の樹脂材料には用途に応じてグラスファイバーやグラファイト、炭素繊維等の各種充填材を充填してもよい。もちろん、これらの樹脂材料に限らず種々の材料が選択され得る。
【0025】
一方、外周リング61は前記第1のシール部材5の固定部51の延長部54内周に嵌着され、この第1のシール部材5と第2のシール部材6の嵌着部に、第1,第2のシール部材5,6間の空間Aとダスト側の空間Dとを連通する通路8を設けられている。
【0026】
この第1,第2のシール部材5,6の嵌着部には、第2のシール部材6を保持するガイドリング9が介在され、ガイドリング9に通路8を構成する切欠き81が円周方向に複数等配されている。
【0027】
ガイドリング9は、第2のシール部材6の外周リング61が全周的に密に嵌合される内環91と、この内環91外周が密に嵌合される外環92とから構成されており、通路8を構成する切欠き81は外環92に設けられている。
【0028】
内環91は断面略L字形状の金属環で、円筒部91aと、この円筒部91aの第1のシール部材5側端部に形成される内向きフランジ部91bとから構成されている。
【0029】
また、外環92も断面略L字形状の金属環で、円筒部92aと、この円筒部92aのダスト側空間側の端部から内向きに延びる内向きフランジ部92bとから構成されている。そして、切欠き81は円筒部92aからフランジ部92aまで軸方向全長にわたって延びている。
【0030】
このように通路8形成用にガイドリング9を用いれば、第2のシール部材6自体には通路用の特別の加工が不要である。
【0031】
さらに、第1,第2のシール部材5,6の間には、第1のシール部材5のシール部S1と第2のシール部材6のシール部S2との軸方向位置を固定する位置決め環10が介装され、この位置決め環10にはガイドリング9の切欠き81と共に通路8を構成する穴11が設けられている。
【0032】
この位置決め環10も断面L字形状の金属環で、第1のシール部材5の円筒状部本体53に固定される円筒部10aと、この円筒部10aの第2のシール部材5側端部から半径方向内方に延びる内向きフランジ部10bとから構成され、円筒部10aの反第2のシール部材側端部が第1のシール部材5の固定部51の内向きフランジ部51bに突当てられ、内向きフランジ部10bが前記ガイドリングの内環の内向きフランジ部91bと当接されている。
【0033】
このように位置決め環10を設けることにより、第1,第2のシール部材5,6を正確に組み付けることができる。位置決めされた状態で、第1のシール部材5の固定部51の円筒状部51a先端の延長部54先端をかしめ、このかしめ部54aによって、第1,第2のシール部材5,6が強固に固定される。
【0034】
一方、ダスト側空間Dには、シールハウジング4とロール軸2aとの間に、ダスト側空間Dに流出する潤滑剤を溜める環状隙間12が形成されている。この例では、シールハウジング4の端部に半径方向内方に延びる内向きフランジ部41が設けられ、この内向きフランジ部41内周をロール軸2a外周と近接させて、環状隙間12を形成している。
【0035】
本実施の形態にあっては、第2のシール部材6によってダストの浸入が防止される。仮に第1のシール部材5と第2のシール部材6間にダストが浸入したとしても、第1のシール部材5側から供給される液体潤滑剤と共に通路8を通じてダスト側空間Dに排出され、第1のシール部材5と第2のシール部材6間にダストが蓄積されない。
【0036】
すなわち、ダスト側のシールは硬い樹脂製の内周リング62を備えた第2のシール部材6で行ってダストによる傷つきを防止し、軸受3側のシールはゴム状弾性体製のシールリップ52を有するリップタイプの第1のシール部材5によって行うと共に液体潤滑剤垂れ流し方式とし、この液体潤滑剤排出のための通路8をダスト側の第2のシール部材6の外径側に設けたものである。
【0037】
液体潤滑剤の流れを詳細に説明すると、まず、液体潤滑剤は軸受ハウジング7に設けられた給油孔7aから供給される。供給圧によって、液体潤滑剤は第1のシール部材5のシールリップ52を押し広げて第1シール部S1とロール軸2aとの接触面間の隙間から第1,第2のシール部材5,6間の空間に流入し蓄積される。さらに、液体潤滑剤が供給されると、位置決め環10の等配穴11よりガイドリング9の外環92に設けられた等配の切欠き81を抜けて、シールハウジング4の内向きフランジ部41端面との隙間からダストと共に排出される。さらに、ロール軸2aとシールハウジング4の内向きフランジ部41間の環状隙間12を通過する際に、この環状隙間12に液体潤滑剤の溜まりを作る。この液体潤滑剤の溜まりによっても、水,スケール等のダストの浸入が防止される。
【0038】
第2のシール部材6の樹脂製の内周リング62はロール軸2aと接触状態を保っているので、第2シール部S2の接触面間からダストが浸入することはない。また、この内周リング62は硬質樹脂によって構成されているので、ダストによって傷が付きにくい。しかも内周リング62が全幅にわたって面接触しているので、ダスト側の端部が多少傷ついても、残りの接触面によってダストの浸入が阻止される。
【0039】
また、第1のシール部材5を、ダスト側に延びるゴム状弾性体製のシールリップ52を有する構成とすることにより、液体潤滑剤の供給圧によってシールリップ52が開きやすく、シールリップ52とロール軸2aとの摺動面を効率よく洗い流して摺動面をダストの無い清浄な状態に保つことができ、シールリップ52の耐久性向上を図ることができる。
【0040】
また、第1,第2のシール部材5,6間の空間に水,スケール等が浸入しても、使用方法として密封装置1は横向きで使用され、通路8を構成する穴11および切欠き81が円周上に等配で開いているので、液体潤滑剤供給時に下側の通路8よりダストの排出が可能となる。
【0041】
また、通路8が周方向に複数設けられているので、第1,第2のシール部材5,6間の空間Aに仮にダストが浸入しても、密封装置を横向きで使用する場合には、ダストは第1,第2のシール部材5,6間の空間に蓄積されることなく、液体潤滑剤供給時に、ダストを下側の通路8よりダスト側空間Dに排出することが可能となる。
【0042】
このようにすれば、通路8から排出された液体潤滑剤が環状隙間12に溜まり、水あるいはスケール等のダストの浸入を阻止することができ、密封性を長期にわたって維持できる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、第2のシール部材によってダストの浸入が防止され、仮に第1のシール部材と第2のシール部材間にダストが浸入したとしても、第1のシール部材側から供給される液体潤滑剤と共に通路を通じてダスト側空間に排出されるので、第1,第2のシール部材の間に浸入したダストによる第1,第2のシール部材の傷つきを防止することができ、長期にわたって良好なシール性能が維持される。
【0044】
特に、第2のシール部材を硬質樹脂製のシールリングによって構成すれば、ダストによる傷が付きにくくダストの浸入を可及的に低減することができる。また、第1のシール部材をゴム状弾性体製のシールリップを有する構成とすることにより、シールリップと相手部材との摺動面を効率よく洗い流してダストの無い清浄な状態に保つことができ、シールリップの耐久性向上を図ることができる。
【0045】
また、通路を嵌着部の周方向に複数設けておけば、液体潤滑剤と共にダストを下側の通路より排出することが可能となる。
【0046】
また、第1,第2のシール部材の嵌着部に通路を構成する切欠きを設けたガイドリングを介装すれば、第2のシール部材自体には通路用の特別の加工が不要である。
【0047】
さらに、第1,第2のシール部材の間に、ガイドリングの切欠きと共に通路を構成する穴を有する位置決め環を介装すれば、第1,第2のシール部材を正確に組み付けることができると共に、通路をも構成することができる。
【0048】
一方、ダスト側空間に、相対回転可能の2部材間に、ダスト側に流出する潤滑剤を溜める環状隙間を形成すれば、通路から排出された液体潤滑剤が環状隙間に溜まり、水あるいはスケール等のダストの浸入を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態に係る密封装置を示す図、同図(b)は同図(a)の密封装置の装着状態を示す図である。
【図2】図2(a)は従来の密封装置を示す図、同図(b)は同図(a)の密封装置の装着状態を示す図である。
【符号の説明】
1 密封装置
2 ロール
2a ロール軸
2b ロール本体
3 軸受
4 シールハウジング
41 内向きフランジ部
5 第1のシール部材
51 固定部
51a 円筒状部
51b 内向きフランジ部
52 シールリップ
52a リップ先端
53 円筒状部本体
54 延長部
54a かしめ部
55 金属環
56 ゴム状弾性体
S1 第1シール部
6 第2のシール部材
61 外周リング(固定部)
62 内周リング
S2 第2シール部
7 軸受ハウジング
7a 供給孔
8 通路
81 切欠き(通路)
9 ガイドリング
91 内環
91a 円筒部
91b 内向きフランジ部
92 外環
92a 円筒部
92b 内向きフランジ部
10 位置決め環
10a 円筒部
10b 内向きフランジ部
11 穴(通路)
12 環状隙間
A第1,第2のシール部材間の空間
Dダスト側の空間
Claims (5)
- 互いに同心的に相対回転可能に組み付けられる2部材間をシールするもので、軸方向に配設される潤滑剤供給側の第1のシール部材とダスト側の第2のシール部材とを備えた密封装置において、
前記第1のシール部材及び前記第2のシール部材は、相対回転する2部材の一方の部材に固定される環状の固定部と、他方の部材に対して摺動自在に密封接触する環状のシール部とを備え、
前記第2のシール部材の固定部は前記第1のシール部材の固定部内周に嵌着され、この第1のシール部材と第2のシール部材との嵌着部に、第1のシール部材と第2のシール部材との間の空間と、ダスト側の空間とを連通する通路が設けられているとともに、
潤滑剤供給側の第1のシール部材は、ダスト側に延びて相手部材に摺動自在に接触するゴム状弾性体製のシールリップを備え、
ダスト側の第2のシール部材は、断面略矩形状であり、相手部材に摺動自在に接触する硬質樹脂製のシールリングを備えている
ことを特徴とする密封装置。 - 通路は、第1,第2のシール部材の嵌着部の周方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の密封装置。
- 第1,第2のシール部材の嵌着部には、第2のシール部材の固定部を保持するガイドリングが介在され、該ガイドリングに通路を構成する切欠きが設けられている請求項1または2記載の密封装置。
- 上記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間には、第1のシール部材のシール部と第2のシール部材のシール部との軸方向位置を固定する位置決め環を介装し、該位置決め環にガイドリングの切欠きと共に通路を構成する穴が設けられている請求項3記載の密封装置。
- ダスト側の空間に、相対回転可能の2部材間に、ダスト側に流出する潤滑剤を溜める環状隙間を形成したことを特徴とする請求項1,2,3または4記載の密封装置。
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