JP3844058B2 - 脂質測定方法およびそれに用いる試薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少ない試料で、簡便な操作により、効率良く、特定リポ蛋白画分中の脂質成分を分別測定する方法およびこの方法に使用する測定試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体の主要な脂質であるコレステロール、中性脂肪およびリン脂質は、血液中においてアポ蛋白と共にリポ蛋白を形成して存在している。このリポ蛋白は、物理的な性状の違いにより、カイロミクロン、超低比重リポタンパク(VLDL)、低比重リポタンパク(LDL)、高比重リポタンパク(HDL) 等に分類される。これらリポ蛋白のうち、LDLは動脈硬化を引き起こす原因物質の一つであり、HDLは反対に抗動脈硬化作用を示すことが知られている。
【0003】
以前より、虚血性心疾患の予防や治療効果の判定を目的として、血液中の総コレステロール、総中性脂肪の測定が行われてきたが、疫学的な検討により、LDL中のコレステロール量が動脈硬化性疾患の発症頻度と正相関を示す一方、HDL中のコレステロール量が動脈硬化性疾患の発症頻度と逆相関を示す事が明らかにされ、LDLやHDLといったリポ蛋白画分毎の変動を把握する重要性が認識されるに至った。そして、今日では、各リポ蛋白を構成する蛋白成分であるアポ蛋白Bやアポ蛋白A−I、あるいはリポ蛋白画分毎のコレステロールの測定が行われている。
【0004】
前記したように、血液中の脂質成分の測定方法としては、全てのリポ蛋白中に含まれる特定の脂質の総量、例えば総コレステロールや総中性脂肪を測定するものや、LDLやHDLといった特定のリポ蛋白中のコレステロールを測定する方法などがある。
【0005】
このうち前者は、測定対象とする脂質成分に対する酵素と、該脂質成分と酵素との反応をリポ蛋白の区別なく可能にする条件(例えばTritonX−100などのリポ蛋白選択性の低い界面活性剤)を組み合わせて実施されるものであり、全てのリポ蛋白中の測定対象脂質成分が測定される。
【0006】
後者は、測定対象とする脂質成分に対する酵素と、該酵素を特定のリポ蛋白中の測定対象脂質成分とのみ反応可能にする特殊な条件を組み合わせて実施されるものであり、特定のリポ蛋白画分中の測定対象脂質成分が測定される。
【0007】
この特殊な条件を作るために、従来は、超遠心分離、電気泳動、ゲル濾過、あるいは凝集剤による沈殿(沈殿法)などの手段により、測定試料中から、測定対象とするリポ蛋白を単離する方法(以下、これらを総称して「分画法」という)が採用されていた。
【0008】
最近、これら分画法によらず特殊な条件を生じさせる方法(以下、総称する時は「直接法」という)として、例えば、HDLコレステロール測定に関する、胆汁酸のリポ蛋白に対する反応時間の差を利用する方法(特公平6−016720号)、測定対象外のリポ蛋白を凝集させた状態で酵素反応を行う方法(特開平6−242110号)、糖化合物を使用する方法(特許第2653755号)、修飾酵素を使用する方法(特許第2600065号)、リポ蛋白を溶解しない界面活性剤を使用する方法(特許2799835号)、測定対象外のリポ蛋白中のコレステロールを予め酵素反応により消去する方法(特開平9−000299号)、カラギナンを使用する方法(特開平9−121895号)、リポ蛋白選択性のある界面活性剤を使用する方法(特開平11−056395号)、カリクスアレンを使用する方法(国際公開WO98/59068号)、リン化合物を使用する方法(特開2000−116400号)など、多数が考案されている。
【0009】
これらの直接法のいくつかは、操作が煩雑な分画法と比較して、簡便であるため、実際に日常的な臨床検査の分野で使用されている。しかしながら、その実用化された方法であっても、例えば、試薬に凝集剤を含有する方法においては、生じた凝集物が測定精度に影響を与えたり、また、凝集剤と測定機器用のアルカリ性洗浄剤とが反応し流路に凝集塊がつまるなど、測定機器への負担が生じたり、あるいは、修飾酵素を使用する方法においては、酵素を修飾する際の工程管理(品質の維持)や経費増の問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、測定精度に影響を与えず、また、測定機器に負担をかけず、さらに容易に入手できる等の条件を満たしながら、直接法における特殊な条件を生じさせることが可能な物質を見出し、これを利用した血液等にふくまれる脂質の測定方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題について、鋭意研究を行った結果、測定対象とする特定リポ蛋白中の脂質成分、例えばHDLコレステロールの測定に際し、試薬中に有機ケイ素化合物を含有させ、コレステロールを基質とする酵素と測定試料を混合すると、凝集剤や修飾酵素の非存在下であっても、HDLコレステロールのみを特異的に測定できることを見出し本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、有機ケイ素化合物の存在下に脂質を測定することを特徴とする脂質測定方法およびそれに使用する試薬を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明方法は、脂質を含有する検体中に有機ケイ素化合物を存在せしめ、以下、公知の脂質測定試薬を用いて脂質を測定することにより実施される。
【0014】
本発明において用いられる有機ケイ素化合物としては、シリコーンおよびその誘導体を挙げることができる。このシリコーンは、ケイ素原子と酸素原子が結合したシロキサン結合の繰り返し構造−(Si−O)n−からなる高分子(総称してポリシロキサン(polysiloxane)という)のうちアルキル基やアリール基などの有機基を有するものを言う。シリコーンの物性は、この分子構造に起因しており、重合度、側基の種類、橋かけの程度などによって粘度、揮発性などが異なり、性状としては、液状、グリース状、ゴム状、樹脂状のものがある。これらのシリコーンおよびその誘導体は、例えば、シリコーン、高重合シリコーン、環状シリコーン、アルキルシリコーン、シリコーン系界面活性剤、変性シリコーンオイルなどの分類名で市販されており、容易に入手可能なものである。前記変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルに有機基を導入したもので、導入される有機基の種類からは、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、ポリエーテル変性、アルキル変性などのタイプに分類され、構造の点からは、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型に分類することができる。本発明の目的を達成するために、これらシリコーンおよびその誘導体は、単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。また、各社より個別製品の特性等について記載されたカタログが発行されており、これらを参照して使用する有機ケイ素化合物を選択することができる。
【0015】
本発明の有機ケイ素化合物は、検体および目的とする脂質測定用の試薬と同時に加えても、あるいは、検体に混合させたのち、残りの脂質測定用成分を含む試薬を混合して目的とする脂質を測定しても、検体と脂質測定用試薬の一部を混合した後、本発明の有機ケイ素化合物を含む試薬を加えて目的とする脂質を測定してもよい。
【0016】
また、脂質測定用試薬を添加した後、最終的に目的とする脂質を検出する方法は特に制限されず、例えばパーオキシダーゼと色原体をさらに組み合わせて行う吸光度分析、補酵素や過酸化水素を直接検出する方法なども利用することができる。
【0017】
本発明において、検体に対する有機ケイ素化合物の添加量は、測定すべき脂質の種類、検体の性質、使用する試薬の種類等、あるいは後記する界面活性剤もしくはグリセロールの配合の有無やその量によって異なり、実験的に最適条件を選択すべきであるが、一般的には、0.0001〜5質量%(以下、単に「%」で示す)、好ましくは0.001〜5%程度である。
【0018】
特に本発明は、先に例示した直接法で実施されること、換言すれば有機ケイ素化合物と直接法に使用される試薬とを組み合わせて使用することができ、そうすることが好ましい。例えば、リポ蛋白を溶解しない界面活性剤(特許2799835号)や、リポ蛋白選択性のある界面活性剤(特開平11−056395号)と組み合わせて使用すれば、これらの界面活性剤の性質をより高めることができる。
【0019】
更に、本発明においては、有機ケイ素化合物の水溶性を調節するために、例えば、界面活性剤やグリセロールなどと混合し、乳化させて使用してもよい。
【0020】
このうち、界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性界面活性剤などのいずれでも使用可能であり、特に制限はないが、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキルリン酸塩、N−アシルタウリン塩、スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、酢酸ベタイン類、イミダゾリン類、アルキルアンモニウム塩、アミドアミン、多価アルコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテルとその脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレン蜜蝋誘導体、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、エチレンジアミンのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などを例示することができる。
【0021】
上記した界面活性剤は、単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用し、測定系中に添加することができる。これら界面活性剤の組み合わせ、あるいは添加量は、シリコーンおよびその誘導体の種類、界面活性剤の種類等によって異なり、実験的に最適条件を選択すべきであるが、一般的には測定系中の濃度として、0.0001〜5%程度であり、0.001〜5%程度とすることがより好ましい。
【0022】
また、界面活性剤のほかに、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、カルボキシビニルポリマーなどの高分子乳化剤、エタノールなどの有機溶媒、測定の特異性を損なわないシリコーンおよびその誘導体なども水溶性の調整に使用することができる。
【0023】
本発明の方法により測定される脂質は生体中にあるものなら何れでもよいが、リポ蛋白を構成する脂質であるコレステロール、中性脂肪、リン脂質が特に好ましい。
【0024】
本発明の方法において、脂質を測定するために使用される酵素としては、目的とする脂質を基質とするものなら何れも使用できる。例えば、臨床検査法提要第30版(金原出版、1993年発行)などに記載され、汎用されているコレステロール、中性脂肪、リン脂質を測定するために使用される酵素は当然に使用可能であり、本発明の範囲に含まれる。
【0025】
これら脂質のうち、例えばコレステロールを測定する場合は、コレステロールデヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼなど一般にコレステロール測定に使用されるものなら何れでも差し支えなく使用できる。これらは、微生物由来、動物由来、植物由来など、いずれでも、また遺伝子操作により作られたものでも良く、化学修飾の有無も問わない。
【0026】
これら酵素は必要に応じて、補酵素や検出のための酵素や発色剤などと組合せてを使用することができ、補酵素としてはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドなどが、酵素としてはペルオキシダーゼなどが、発色剤としてはトリンダー系の色素やアミノアンチピリンなどが使用できる。
【0027】
これら検出のための酵素は、単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができ、またその使用量は酵素によって異なり、特に制限されるものではないが0.001〜100単位/mLで、好ましくは0.1〜100単位/mLで使用することができる。
【0028】
本発明方法を有利に実施するためには、上記した有機ケイ素化合物、脂質を測定するための酵素、発色剤、補酵素等を適宜組み合わせて調製した脂質測定試薬を使用することができる。また更に、必要に応じて測定の特異性を損なわず、また、特定のリポ蛋白の凝集を生じない範囲であれば、カタラーゼなどの他の酵素や塩、pH調整のための緩衝剤、界面活性剤、防腐剤、アルブミンなどの蛋白質類、抗体、抗生物質、サポニン、レクチン、ポリアニオンなど特定のリポ蛋白に親和性を有する試薬を配合することができる。
【0029】
これらのうち、緩衝剤としては、グッドの緩衝剤、りん酸、トリス、フタル酸塩など何れでもよく、反応液としてpH4から10の範囲で緩衝作用を有する条件が設定できるものであれば使用できる。その使用量は、特に制限させるものではないが0.0005〜2mol/Lで、好ましくは0.01〜1mol/Lで使用される。いずれも実施にあたっては、使用する酵素の特性あるいは、試薬に含まれるその他の成分との関係等から、実験的に最適条件を選択すべきである。
【0030】
なお、本発明方法を有利に実施するための脂質測定試薬の具体例を示せば次の通りである。
( HDL−コレステロール測定用試薬 )
(1)有機ケイ素化合物
(2)コレステロールエステラーゼ
(3)コレステロールオキシダーゼ
(4)パーオキシダーゼ
(5)発色剤(4−アミノアンチピリンとジスルホブチルメタトルイジン等)
* 所望により、リポ蛋白選択性のある界面活性剤などを使用できる。
【0031】
( LDL−コレステロール測定用試薬 )
( 第一試薬 )
(1)有機ケイ素化合物
(2)コレステロールエステラーゼ
(3)コレステロールオキシダーゼ
(4)パーオキシダーゼ
(5)二種組み合わせることにより発色する成分のうちの一方(例えば、4−アミノアンチピリン等)
* 所望により、リポ蛋白選択性のある界面活性剤など
( 第二試薬 )
(6)二種組み合わせることにより発色する成分のうちの他方(例えば、ジスルホブチルメタトルイジン等)
(7)リポ蛋白選択性の低い界面活性剤
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、遠心分離などの前処理の必要がなく、簡便な操作で効率良く特定画分中の脂質(例えばコレステロ−ル)を定量する事ができる。また、少ない試料で、簡便な操作により、特異的な測定が可能であるため、種々の自動分析装置に適用でき、臨床検査の領域においても極めて有用である。特に、リポ蛋白選択性が高いため、切片、傾きが改善することになり、微小なリポ蛋白選択性の制御が可能になるというメリットを有するものである。
【0033】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はなんらこれらに制約されるものではない。
【0034】
実 施 例 1
超遠心分離法により調製したHDL、LDL画分を試料として、本発明の効果を確認した。HDLおよびLDL画分中のコレステロールの測定には、下記の組成の試薬を使用した。
【0035】
( 第一試薬 )
PIPES緩衝液(pH6.5) 50 mmol/L
4−アミノアンチピリン 0.5mol/L、
【0036】
( 第二試薬 )
PIPES緩衝液(pH6.5) 50 mmol/L
コレステロールエステラーゼ 1 単位/mL
コレステロールオキシダーゼ 1 単位/mL
ジスルホブチルメタトルイジン 1.0 mmol/L
パーオキシダーゼ 5 単位/mL
有機ケイ素化合物 1 %
(いずれも日本ユニカー製)
【0037】
測定は日立7170型自動分析機を使用して行った。 試料2.4μLに第一試薬240μLを添加し、約5分後、第二試薬80μLをさらに添加した。 第二試薬添加直前と添加後5分後の600nmにおける吸光度を測定し、その差を試料吸光度とした。対照として、リポ蛋白選択性の低いTritonX−100、1%を本発明の有機ケイ素化合物の代わりに含有する第二試薬を使用した。
【0038】
TritonX−100を含む第二試薬で測定した時の試料吸光度を100とし、各種有機ケイ素化合物を含む第二試薬で測定した時の相対試料吸光度を求めた。LDLに対する相対試料吸光度と、HDLに対する相対試料吸光度の比を計算し効果を比較した。結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
本発明の有機ケイ素化合物を含む第二試薬で測定した時の、相対吸光度の比は0.04〜0.5であった。これは本発明の有機ケイ素化合物が、LDL中のコレステロールと酵素との反応よりも、HDL中のコレステロールと酵素の反応をより可能にすると言う特殊条件を生じさせていることを示すものである。
【0041】
実 施 例 2
リポ蛋白を含む20例の血清検体を試料として本発明の効果を確認した。測定には次の組成の試薬を用いた。
【0042】
( 第一試薬 )
Bis−Tris緩衝液(pH6.0) 50 mmol/L
コレステロールオキシダーゼ 1 単位/mL
パーオキシダーゼ 1.25 単位/mL
ジスルホブチルメタトルイジン 0.5 mmoll/L
フルフェナム酸 150 μmol/L
【0043】
( 第二試薬 )
Bis−Tris緩衝液(pH6.0) 50 mmol/L
コレステロールエステラーゼ(旭化成) 1.5 単位/mL
4−アミノアンチピリン 1.0 mmol/L、
エマルゲンB−66 1.5 %
有機ケイ素化合物 0.001%
(NUC-SiliconL720:日本ユニカー製)
【0044】
測定は日立7170型自動分析機を使用して行った。 試料2.4μLに第一試薬240μLを添加し、約5分後、第二試薬80μLをさらに添加した。 第二試薬添加直前と添加後5分後の600nmにおける吸光度を測定し、その差より血清検体中のHDLコレステロール濃度を求めた(2ポイント法)。較正用物質として濃度既知のコントロール血清を用いた。対照として、本発明の有機ケイ素化合物を含有しない第二試薬を使用した。
【0045】
市販の分画法試薬(HDL−C・2キット;第一化学薬品製)を用い、同時に血清試料中のHDLコレステロール濃度を測定した。 分画法試薬の値をX、実施例の値をYとし、相関係数、回帰式を比較した。結果を表2および図1に示した。
【0046】
【表2】
【0047】
本発明の有機ケイ素化合物を含む第二試薬で測定した場合、本発明の有機ケイ素化合物を含まない第二試薬で測定した場合に対し、傾き、切片がともに改善されていた。これは本発明の有機ケイ素化合物が、LDL中のコレステロールと酵素との反応よりも、HDL中のコレステロールと酵素の反応をより可能にすると言う特殊条件を生じさせ、リポ蛋白選択性のある界面活性剤の特性をより向上させることを示すものである。
【0048】
実 施 例 3
リポ蛋白を含む26例の血清検体を試料として、第二試薬に含有させる本発明の有機ケイ素化合物をNET−SG−60A(実施例3A)あるいはNET−SG−60C(実施例3B)(いずれも0.05%、日本サーファクタント製)とする以外は、すべて実施例2と同様の条件で本発明の効果を確認した。結果を表3および図2に示した。
【0049】
【表3】
【0050】
本発明の有機ケイ素化合物を含む第二試薬で測定した場合、本発明の有機ケイ素化合物を含まない第二試薬で測定した場合に対し、傾き、切片のいずれもが改善されていた。これは本発明の有機ケイ素化合物が、LDL中のコレステロールと酵素との反応よりも、HDL中のコレステロールと酵素の反応をより可能にすると言う特殊条件を生じさせ、リポ蛋白選択性のある界面活性剤の特性をより向上させることを示すものである。
【0051】
実 施 例 4
リポ蛋白を含む30例の血清検体を試料として、第二試薬に含有させる本発明の有機ケイ素化合物をKF−700(0.08%、信越シリコーン製)とする以外は、すべて実施例2と同様の条件で本発明の効果を確認した。結果を表4および図3に示した。
【0052】
【表4】
【0053】
本発明の有機ケイ素化合物を含む第二試薬で測定した場合、本発明の有機ケイ素化合物を含まない第ニ試薬で測定した場合に対し、傾き、切片ともに改善されていた。これは本発明の有機ケイ素化合物が、LDL中のコレステロールと酵素との反応よりも、HDL中のコレステロールと酵素の反応をより可能にすると言う特殊条件を生じさせ、リポ蛋白選択性のある界面活性剤の特性をより向上させることを示すものである。
【0054】
実 施 例 5
リポ蛋白を含む20例の血清検体を試料として、第二試薬に含有させる本発明の有機ケイ素化合物を表5とする以外は、すべて実施例2と同様の条件で本発明の効果を確認した。なお、実施例5A〜5Dの有機ケイ素化合物はエタノールに10%となるよう溶解してから、また、5Eおよび5Fの有機ケイ素化合物は、SH8400(東レ・ダウコーニング・シリコーン製の変性シリコーンオイル)と一緒に、それぞれが10%となるようエタノールに溶解、混合してから第二試薬の調製に使用した。結果を表6に示した。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
本発明の有機ケイ素化合物を含む第二試薬で測定した場合、本発明の有機ケイ素化合物を含まない第二試薬で測定した場合に対し、切片が特に改善されていた。これは本発明の有機ケイ素化合物が、LDL中のコレステロールと酵素との反応よりも、HDL中のコレステロールとの反応をより可能にするという特殊条件を生じさせ、リポ蛋白選択性のある界面活性剤の特性をより向上させることを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2に示した本発明方法と、本発明の有機ケイ素化合物を含まない試薬を用いた方法(対照法)で、同じ血清試料中のHDLコレステロール濃度を測定し、その結果と分画法での結果の相関を調べた図面。図中、Aは対照法、Bは本発明方法である。
【図2】 実施例3Aおよび3Bに示した本発明方法と、本発明の有機ケイ素化合物を含まない試薬を用いた方法(対照法)で、同じ血清試料中のHDLコレステロール濃度を測定し、その結果と分画法での結果の相関を調べた図面。図中、Aは対照法、Bは実施例3Aの方法、Cは実施例3Bの方法である。
【図3】 実施例4に示した本発明方法と、本発明の有機ケイ素化合物を含まない試薬を用いた方法(対照法)で、同じ血清試料中のHDLコレステロール濃度を測定し、その結果と分画法での結果の相関を調べた図面。図中、Aは対照法、Bは本発明方法である。
以 上
Claims (16)
- シリコーン及び/又はその誘導体(但し、エステル加水分解酵素活性阻害作用を有するものを除く)の存在下に血液成分中の脂質を測定することを特徴とする脂質測定方法。
- 以下の方法(a)〜(c)
(a)超遠心分離法により調製したHDL、LDL画分を試料として、その2.4μL に第一試薬240μLを添加し、約5分後、第二試薬80μLをさらに添加する。
(b)第二試薬添加直前と添加後5分後の600nmにおける吸光度を測定し、その差 を試料吸光度とする。
(c)第二試薬のシリコーン及び/又はその誘導体の代わりにTriton(登録商 標)X−100を1%含む第二試薬で測定した時の試料吸光度を100とし、シリ コーン及び/又はその誘導体を含む第二試薬で測定した時のLDLに対する相対試 料吸光度と、HDLに対する相対試料吸光度を求める。
( 第一試薬 )
PIPES緩衝液(pH6.5) 50 mmol/L
4−アミノアンチピリン 0.5 mol/L
( 第二試薬 )
PIPES緩衝液(pH6.5) 50 mmol/L
コレステロールエステラーゼ 1 単位/mL
コレステロールオキシダーゼ 1 単位/mL
ジスルホブチルメタトルイジン 1.0 mmol/L
パーオキシダーゼ 5 単位/mL
シリコーン及び/又はその誘導体 1 %
により測定されたLDLに対する相対試料吸光度と、HDLに対する相対試料吸光度との比が0.04〜0.5となるシリコーン及び/又はその誘導体の存在下に血液成分中の脂質を測定することを特徴とする脂質測定方法。 - シリコーン及び/又はその誘導体が、高重合シリコーン、環状シリコーン、シリコーン系界面活性剤及び変性シリコーンオイルから成る群より選択されたものである請求項第1項または第2項に記載の脂質測定方法。
- 脂質成分が特定のリポ蛋白に含まれる脂質である請求項第1項乃至第3項の何れかの項に記載の脂質測定方法。
- 脂質成分がコレステロール、中性脂肪またはリン脂質のいずれかである請求項第1項乃至第4項のいずれかの項記載の脂質測定方法。
- シリコーン及び/又はその誘導体が存在し、凝集剤が存在しない条件において、リポ蛋白に酵素を作用させ、リポ蛋白中に含まれている脂質を検出することを特徴とする請求項第1項乃至第5項のいずれかの項記載の脂質測定方法。
- リポ蛋白中の脂質に対する酵素の作用を、リポ蛋白選択性のある界面活性剤の存在下行う請求項第1項乃至第6項の何れかの項記載の脂質測定方法。
- シリコーン及び/又はその誘導体(但し、エステル加水分解酵素活性阻害作用を有するものを除く)を含有することを特徴とする脂質測定試薬。
- 以下の方法(a)〜(c)
(a)超遠心分離法により調製したHDL、LDL画分を試料として、その2.4μL に第一試薬240μLを添加し、約5分後、第二試薬80μLをさらに添加する。
(b)第二試薬添加直前と添加後5分後の600nmにおける吸光度を測定し、その差 を試料吸光度とする。
(c)第二試薬のシリコーン及び/又はその誘導体の代わりにTriton(登録商 標)X−100を1%含む第二試薬で測定した時の試料吸光度を100とし、シリ コーン及び/又はその誘導体を含む第二試薬で測定した時のLDLに対する相対試 料吸光度と、HDLに対する相対試料吸光度を求める。
( 第一試薬 )
PIPES緩衝液(pH6.5) 50 mmol/L
4−アミノアンチピリン 0.5 mol/L
( 第二試薬 )
PIPES緩衝液(pH6.5) 50 mmol/L
コレステロールエステラーゼ 1 単位/mL
コレステロールオキシダーゼ 1 単位/mL
ジスルホブチルメタトルイジン 1.0 mmol/L
パーオキシダーゼ 5 単位/mL
シリコーン及び/又はその誘導体 1 %
により測定されたLDLに対する相対試料吸光度と、HDLに対する相対試料吸光度との比が0.04〜0.5となるシリコーン及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする脂質測定試薬。 - シリコーン及び/又はその誘導体が、高重合シリコーン、環状シリコーン、シリコーン系界面活性剤及び変性シリコーンオイルから成る群より選択される請求項第8項または第9項に記載の脂質測定試薬。
- 脂質成分が特定のリポ蛋白に含まれる脂質である請求項第8項乃至第10項のいずれかの項記載の脂質測定試薬。
- 脂質成分がコレステロール、中性脂肪またはリン脂質のいずれかである請求項第8項乃至第11項のいずれかの項記載の脂質測定試薬。
- 次の成分(1)〜(5)
(1)シリコーン及び/又はその誘導体(但し、エステル加水分解酵素活性阻害作用を 有するものを除く)
(2)コレステロールエステラーゼ
(3)コレステロールオキシダーゼ
(4)パーオキシダーゼ
(5)発色剤
を含有するHDL−コレステロール測定用試薬。 - 更に、リポ蛋白選択性のある界面活性剤を配合した請求項第13項記載のHDL−コレステロール測定用試薬。
- 次の成分(1)〜(5)
(1)シリコーン及び/又はその誘導体(但し、エステル加水分解酵素活性阻害作用を 有するものを除く)
(2)コレステロールエステラーゼ
(3)コレステロールオキシダーゼ
(4)パーオキシダーゼ
(5)二種組み合わせることにより発色する成分のうちの一方
を含有する第一試薬と、次の成分(6)及び(7)
(6)二種組み合わせることにより発色する成分のうちの他方
(7)リポ蛋白選択性の低い界面活性剤
を含有する第二試薬とを組合せてなるLDL−コレステロール測定用キット。 - 更に、第一試薬にリポ蛋白選択性のある界面活性剤を配合した請求項第15項記載のLDL−コレステロール測定用キット。
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