JP3842492B2 - 藻類濃度測定システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川の水、湖沼の水、ダムの水など、上道水の原水となる水に含まれている藻類の濃度を測定する藻類濃度測定システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
上水道の水源である、河川、湖沼、ダムでは、多種多用な生物が生存しているが、中にはそれらが増殖することにより、水質管理、制御に障害をもたらす場合がある。その中の1つに富栄養化が進んだ水域で、藻類が増殖し、凝集障害、瀘過障害、異臭味障害が発生することが挙げられる。これらの障害を未然に防止するためには、水道原水中の藻類の種類および濃度を定量的に測定し、適切な対策をとる必要がある。
【0003】
従来の藻類の分析では、原水をバッチ的にサンプリングして得られたサンプル水を分析する方法が行われており、連続的に水道原水中の藻類を監視することは困難であった。この場合の分析法としては、顕微鏡観察による藻類種の分画および藻類数の計数が上げられる。この方法では、藻類種の判別および藻類数の計数には、熟練を要すること、または同一サンプルでも測定毎の誤差が大きいこと、測定に時間と手間とがかかることが問題である。
【0004】
また、藻類の分析する他の方法として、水中の藻類に含まれる色素であるクロロフィルaを抽出し、その含有量を吸光度測定を用いて定量する方法も用いられる。この方法では、一定体積中の藻類に含まれるクロロフィルaの量を精度良く測定可能であるものの、藻類細胞の破砕、色素の溶媒への抽出、遠心分離などの工程が必要であるため、やはり連続的に測定を行うのは困難である。
【0005】
そこで、連続的に藻類濃度を測定する方法として、藻類に含まれる色素を特定の波長の光で選択的に励起し、蛍光強度から藻類濃度を測定する方法が開発された。この蛍光法による測定では、溶媒への抽出を行う必要が無いため、連続的に測定が可能である。また、微量の藻類についても検出可能であることから、河川水など、比較的、藻類濃度の低い水道原水に対しても適用可能である。
【0006】
また、蛍光法による藻類濃度の定量的測定は、藻類の培養状態のモニタリングなどにも適用されている。これは純粋培養している培地中での藻類の増殖を、蛍光強度の増加からモニタリングするものである。この場合、サンプルに含まれるものは、藻類、培地のみであり、蛍光測定を妨害する因子の混入は無いことから、理想的な測定が可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の藻類濃度測定方法においては、次に述べるような問題があった。
【0008】
すなわち、蛍光法を使用すれば、水道原水中の藻類濃度を連続的に測定可能であるが、河川水などの水道原水には、藻類以外の濁質が含まれている。これらの濁質のほとんどは、蛍光を発する特性は有していない。
【0009】
しかし、水中に存在する濁質に光が当たると、散乱が起こり、照射光と同波長の光が四方に発するため、受光器に、照射光と同波長の散乱光(1次散乱光)が到達する。また、照射光と異なる波長においても、濁質の存在により、1次散乱光の整数倍の波長を持った光(高次散乱光)、水のラマン散乱強度の増大、その他の全波長域での散乱光強度の増大が見られる。
【0010】
また、蛍光分析では、照射光と異なる波長(照射光より長波長側)の光を受光するため、1次散乱光の存在はさほど問題とならない。しかし、ラマン散乱およびそれ以外の全波長域での強度の増大により、受光器によって、測定対象とする藻類の蛍光強度と濁質による散乱光の両方が測定されることになる。
【0011】
特に、原水に含まれる濃度レベルの藻類が発する蛍光が微弱であることから、藻類に比較して多量の濁質が混入している原水の場合、正確な藻類濃度の測定を行うことが難しいという問題があった。
【0012】
また、濁質の蛍光測定に及ぼす影響を除去する方法として、蛍光測定を行う前段で、フィルタにより藻類以外の濁質を物理的に除去する方法が提案されているが、このような方法では、藻類自身が濁質の一種として除去されてしまうため、フィルタの適用が困難である。
【0013】
これらのことから、蛍光法で、藻類濃度を定量的に正確に測定するためには、濁質の影響を何らかの方法で補正する必要があった。
【0014】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定することができる藻類濃度測定システムを提供することを主目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、請求項1では、透明部材によって構成され、サンプル水が満たされる測定セルと、この測定セルに満たされている前記サンプル水に特定波長域の光を照射しつつ、このサンプル水で散乱された光を受光し、濁度データを生成する濁度測定手段と、前記測定セルに満たされている前記サンプル水に特定波長域の励起光を照射しつつ、このサンプル水から発せられる蛍光を受光して蛍光強度データを生成する蛍光測定手段と、前記濁度測定手段から出力される濁度データに基づき、前記蛍光測定手段から出力される蛍光強度データに含まれる濁度分を補正する濁度影響補正手段と、この濁度影響補正手段から出力される濁度補正済みの蛍光強度データに基づき、前記サンプル水に含まれる藻類の濃度を求める藻類濃度演算手段とを備え、前記蛍光測定手段は、クロロフィルaに対応する400〜500nmの波長域内にある波長光を生成し、これを励起光として前記測定セル内の前記サンプル水に照射し、また前記測定セル内の前記サンプル水から発せられる蛍光のうち、670〜690nmの波長域内にある蛍光を選択的に受光して、クロロフィルaを含有している緑藻類及び珪藻類の能度を計測する第1の蛍光強度データを生成し、フィコシアニンに対応する540〜600nmの波長域内にある波長光を生成し、これを励起光として前記測定セル内の前記サンプル水に照射し、また前記測定セル内の前記サンプル水から発せられる蛍光のうち、630〜650nmの波長域内にある蛍光を選択的に受光して、フィコシアニンを含有している藍藻類の濃度を計測する第2の蛍光強度データを生成することを特徴としている。
【0016】
請求項2では、サンプル水の濁度を散乱光を用いて測定して濁度データを生成する濁度計と、透明部材によって構成され、前記サンプル水が満たされる測定セルと、この測定セルに満たされている前記サンプル水に特定波長域の励起光を照射しつつ、このサンプル水から発せられる蛍光を受光して蛍光強度データを生成する蛍光測定手段と、前記濁度計から出力される濁度データに基づき、前記蛍光測定手段から出力される蛍光強度データに含まれる濁度分を補正する濁度影響補正手段と、この濁度影響補正手段から出力される濁度補正済みの蛍光強度データに基づき、前記サンプル水に含まれる藻類の濃度を求める藻類濃度演算手段とを備え、前記蛍光測定手段は、クロロフィルaに対応する400〜500nmの波長域内にある波長光を生成し、これを励起光として前記測定セル内の前記サンプル水に照射し、また前記測定セル内の前記サンプル水から発せられる蛍光のうち、670〜690nmの波長域内にある蛍光を選択的に受光して、クロロフィルaを含有している緑藻類及び珪藻類の能度を計測する第1の蛍光強度データを生成し、フィコシアニンに対応する540〜600nmの波長域内にある波長光を生成し、これを励起光として前記測定セル内の前記サンプル水に照射し、また前記測定セル内の前記サンプル水から発せられる蛍光のうち、630〜650nmの波長域内にある蛍光を選択的に受光して、フィコシアニンを含有している藍藻類の濃度を計測する第2の蛍光強度データを生成することを特徴としている。
【0018】
請求項3では、請求項1又は2のいずれか1に記載の藻類濃度測定システムにおいて、 前記濁度影響補正手段は、前記濁度計または前記濁度測定手段で得られた濁度データ、前記蛍光測定手段で得られた第1及び第2の蛍光強度データ、次式に示す演算式を使用して、第1及び第2の蛍光強度データに含まれる濁度の影響を除去することを特徴としている。
【0019】
I0=I−(a・D+b)
但し、a:係数
b:係数
D:濁度
I:濁度補正前の蛍光強度
I0:濁度補正後の蛍光強度
【0020】
請求項4では、請求項1又は3のいずれか1に記載の藻類濃度測定システムにおいて、 前記濁度測定手段または前記蛍光測定手段のうち、少なくともいずれか一方は、複数の光学フィルタを切り替えて指定された波長を持つ励起光を生成する処理、指定された波長を持つ透過光、散乱光、蛍光を受光する処理を行うことを特徴としている。
【0022】
請求項5では、請求項1乃至4のいずれか1に記載の藻類濃度測定システムにおいて、 前記測定セルに前記サンプル水を導入する前に前記サンプル水を撹拌し、凝集している藻類を分散させる撹拌処理手段を備えたことを特徴としている。
【0023】
請求項6では、請求項5に記載の藻類濃度測定システムにおいて、前記撹拌処理手段は、前記サンプル水を機械的に撹拌する撹拌子であることを特徴としている。
【0024】
請求項7では、請求項5に記載の藻類濃度測定システムにおいて、前記撹拌処理手段は、前記サンプル水を超音波を用いて撹拌する超音波処理手段であることを特徴としている。
【0025】
請求項8では、請求項1乃至7のいずれか1に記載の藻類濃度測定システムにおいて、前記測定セル内を洗浄する測定セル洗浄手段を備えたことを特徴としている。
【0026】
請求項9では、請求項8に記載の測定セル洗浄手段において、前記測定セル洗浄手段は、前記測定セル内をオゾンによって洗浄するオゾン洗浄手段であることを特徴としている。
【0027】
請求項10では、請求項8に記載の測定セル洗浄手段において、前記測定セル洗浄手段は、前記測定セル内を酸によって洗浄する酸洗浄手段であることを特徴としている。
【0028】
上記構成の請求項1によれば、システム全体を小型化しつつ、1つの測定セルで、サンプル水に混在している濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々、計測させて、藻類の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
また、サンプル水に混在している濁質の濃度と、緑藻、珪藻類などの濃度とを各々、計測させて、緑藻、珪藻類などの濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
さらに、サンプル水に混在している濁質の濃度と、藍藻類などの濃度とを各々、計測させて、藍藻類などの濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0029】
請求項2によれば、サンプル水に混在している濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々、計測させて、藻類の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
また、サンプル水に混在している濁質の濃度と、緑藻、珪藻類などの濃度とを各々、計測させて、緑藻、珪藻類などの濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
さらに、サンプル水に混在している濁質の濃度と、藍藻類などの濃度とを各々、計測させて、藍藻類などの濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0031】
請求項3によれば、演算内容を簡素化し、処理速度を高めながら、サンプル水に混在している濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々、計測させて、藻類の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0034】
請求項4によれば、光源、受光素子などを共通化させて、システム全体を小型化させながら、サンプル水に混在している濁質の濃度と、緑藻、珪藻類などの濃度とを各々、計測させて、緑藻、珪藻類などの濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0035】
請求項5によれば、サンプル水中に、藻類が凝集した状態で、濁質と混在していても、凝集している藻類をばらばらにした後、濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々、計測させて、藻類の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0036】
請求項6によれば、サンプル水中に、藻類が凝集した状態で、濁質と混在していても、撹拌子などによってサンプル水を直接、撹拌させて、凝集している藻類をばらばらにした後、濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々、計測させて、藻類の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0037】
請求項7によれば、サンプル水中に、藻類が凝集した状態で、濁質と混在していても、超音波によってサンプル水を振動させて、凝集している藻類をばらばらにした後、濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々、計測させて、藻類の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0038】
請求項8によれば、機械的な力、化学的な力などにより、測定セル内を適時、洗浄して、測定精度が低下しないようにしつつ、サンプル水に混在している濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々、計測させて、藻類の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0039】
請求項9によれば、強酸化作用を持つオゾンによって、測定セル内に付着した藻類、
有機物、生物などを取り除いて、測定精度が低下しないようにしつつ、サンプル水に混在している濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々、計測させて、藻類の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0040】
請求項10によれば、強い酸化作用を持つ酸によって、測定セル内に付着したカルシウム、マグネシウムなどでできたスケールを取り除いて、測定精度が低下しないようにしつつ、サンプル水に混在している濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々、計測させて、藻類の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させる。
【0041】
【発明の実施の形態】
《発明の基本説明》
次に、本発明による藻類濃度測定システムの詳細な説明に先だち、図11〜図16に示すグラフ、図17に示す構成図を参照しつつ、本発明による藻類濃度測定システムの基本原理を説明する。
【0042】
<藻の種類と、励起波長、蛍光波長との関係>
まず、サンプル水に含まれる藻の種類と、励起光照射手段から出射される励起光の波長と、蛍光受光手段で受光される蛍光の波長との関係を把握するため、以下に述べる実験を行った。
【0043】
すなわち、水道原水に含まれる藻類には、一般の植物と同様に、特定波長の励起光を照射したとき、特定波長の蛍光を発するクロロフィルaという色素が含まれていることから、蛍光法を使用してサンプル水中の藻類濃度を測定することができるものと思われる。
【0044】
そこで、藻類の濃度を正確に測定することができるかどうかを確認するため、クロロフィルaの濃度が“85[μg/l]”となるように、サンプル水中に緑藻、珪藻のみを混入し、300〜800nmの波長範囲で励起光を生成し、これをサンプル水に照射し、その励起スペクトルを測定したところ、図11に示すように、クロロフィルaの蛍光波長である678nmを含む、400〜500nmの範囲で、励起スペクトルのピークが現われのを確認した。
【0045】
このとき、上記の励起光の波長範囲である435nmの励起光をサンプル水に照射した時点で、図12のグラフに示すように、670〜690nmの波長範囲で、蛍光スペクトルのピークが現われるのを確認した。
【0046】
また、クロロフィルaの濃度が“140[μg/l]”となるように、サンプル水中に藍藻類のみを混入し、上記の励起光の波長範囲である435nmの励起光をサンプル水に照射し、その蛍光スペクトルを測定したところ、図13のグラフに示すように、670〜690nmで、クロロフィルaによるピークが僅かしか現われないことを確認した。
【0047】
これらの実験結果から、435nmの励起光をサンプル水に照射し、クロロフィルaの蛍光波長となる678nmの蛍光を受光し、その強度を測定すると、サンプル水中に含まれる緑藻、珪藻などの濃度しか測定できないことが分かった。
【0048】
この原因として、異臭味障害の原因となる藍藻類では、細胞内にクロロフィルaを含有しているものの、細胞内に励起光が入り込まないこと、クロロフィルaから発せられる蛍光が細胞内から出ないことなどが考えられ、細胞膜などを破砕しない限り、藍藻類の濃度を測定することができないと思われる。
【0049】
そこで、緑藻、珪藻などについては、435nmの励起光をサンプル水に照射しつつ、クロロフィルaの蛍光波長となる678nmの蛍光を受光し、その強度を測定する方法で、緑藻、珪藻などの濃度を測定し、緑藻、珪藻以外の藻、例えば異臭味障害の原因となっている藍藻類については、これら藍藻類に特徴的な色素であるフィコシアニンに着目し、このフィコシアニンの濃度を測定して藍藻類の濃度測定を行うという方法を考案した。
【0050】
この方法による効果を確認するために、クロロフィルaの濃度が“140[μg/l]”となるように、サンプル水中に藍藻を混入し、300〜800nmの波長範囲で励起光を生成して、これをサンプル水に照射し、その励起スペクトルを測定したところ、図14に示すように、フィコシアニンの蛍光波長642nmを含む連続した範囲で、励起スペクトルが現われるのを確認することができた。
【0051】
この際、励起光波長が蛍光波長に近いほど、サンプル水から発せられる蛍光が大きくなるものの、励起光の波長と、蛍光の波長とがあまりにも近いと、サンプル水中の濁質分などによる、1次散乱光の影響が大きくなり、蛍光受光手段によって、散乱光を光学的にカットできなくなってしまい、測定誤差が大きくなってしまうことから、ラマン散乱の発生なども考慮し、励起光の波長を540〜600nmにし、蛍光測定を行うことにした。
【0052】
そして、クロロフィルaの濃度が“140[μg/l]”となるように、サンプル水中に藍藻を混入し、上記の励起光の範囲である600nmの励起光を照射したところ、図15のグラフに示すように、640nm付近に蛍光スペクトルのピークが現われるのを確認することができた。
【0053】
また、クロロフィルaの濃度が“85[μg/l]”となるように、サンプル水中に緑藻のみを混入し、上記の励起光の波長範囲である600nmの励起光をサンプル水に照射して、その蛍光スペクトルを測定したところ、図16のグラフに示すように、640nmで、蛍光スペクトルのピークが僅かしか現われないことを確認することができた。
【0054】
そして、これら図15、図16のグラフを比較すると分かるように、緑藻については、640nm付近で、蛍光のピークが現われずに、他のピークが現われ、さらに藍藻と比較すると、蛍光強度のレベルが非常に小さいことから、この波長域で蛍光測定を行うことにより、サンプル水中に含まれる藍藻の濃度を測定できることがわかった。
【0055】
これらの実験結果から、本発明による藻類濃度測定システムでは、サンプル水中の緑藻、珪藻の濃度を蛍光測定するとき、400〜500nmの波長範囲にある励起光を使用し、670〜690nmの波長範囲にある蛍光を受光して、緑藻、珪藻の濃度を測定し、また540〜600nmの波長範囲にある励起光を使用し、630〜650nmの波長範囲にある蛍光を受光して、藍藻の濃度を測定することにより、水道原水中に含まれる緑藻(または、珪藻)の濃度と、藍藻の濃度とを個々に測定する。
【0056】
この際、これら緑藻(または、珪藻)の濃度、藍藻の濃度を別々に測定することも可能であるが、1つの光源および1つの受光素子を用い、励起光照射手段および蛍光受光手段で、2つの光学フィルタを交互に切り替えることにより、緑藻類および藍藻類を交互に、かつ連続的に測定する。
【0057】
<濁度による蛍光強度の補正>
次に、上述した蛍光測定法によって得られた蛍光強度に含まれる濁度の影響を除去する方法について説明する。
【0058】
まず、壁面が透明な蛍光測定セル中にサンプル水を導入し、励起光照射手段により、蛍光測定セル内のサンプル水に特定の波長の励起光を照射しつつ、蛍光受光手段によって、サンプル水から発せられる蛍光の強度を測定すると、藻類に含まれる色素による蛍光強度および濁質による散乱光強度を合わせた光強度が得られることから、濁質による散乱光強度の大きさを算定できれば、藻類に含まれる色素による純粋な蛍光強度を求めることができるものと推定される。
【0059】
そこで、図1に示すように、サンプル水流路3、濁度計4、蛍光測定セル5、励起光照射装置6、蛍光受光装置7、濁度影響補正演算装置10、藻類濃度演算手段11によって藻類濃度測定システム1を構築し、サンプル水2の蛍光強度を測定するとき、この測定動作と並行して、サンプル水2中の濁度(サンプル水の濁質含有量を表わす指標)を測定し、この測定動作で得られた濁度を使用して、励起光照射装置6から発せられる励起光がサンプル水2中の濁質によって散乱される度合い(散乱光強度)を算出し、蛍光受光装置7で得られる蛍光強度を補正して、藻類9に含まれた色素による純粋な蛍光強度を求めた。
【0060】
この際、サンプル水2の蛍光測定を行う前に、サンプル水2の濁度と、サンプル水2の散乱光強度との相関関係を求め、この相関関係に基づき、測定動作で得られた濁度から蛍光強度の補正値を算出するための演算式を決定して、濁質影響補正演算装置10に登録しておき、測定動作によって濁度が得られたとき、濁質影響補正演算装置10に、測定動作によって濁度と、演算式とを使用させて、蛍光受光装置6で得られた蛍光強度を補正させ、これによって得られた藻類9の色素による蛍光強度を藻類濃度演算装置11に渡した。
【0061】
そして、一般的には、濁質8による散乱光強度が増分として、藻類9の蛍光強度に上乗せされる形で現われ、実測された蛍光強度から濁質8による散乱光強度を減じることにより、藻類9の色素による蛍光強度を算出することができ、また濁質と散乱光強度との関係がほぼ線形で表すことができることから、次式によって一般的な濁質による影響を補正した。
【0062】
I0=I−(a・D+b) …(1)
但し、a:係数
b:係数
D:濁度
I:濁度補正前の蛍光強度
I0:濁度補正後の蛍光強度
また、実験によって、蛍光強度と藻類濃度との相関関係についても、事前に関係式を決定し、これを藻類濃度演算装置11に登録しておき、濁質影響補正演算装置10から、濁度補正された蛍光強度が出力されたとき、登録されている関係式を使用して、蛍光強度から藻類濃度を算出させた。
【0063】
この結果、サンプル水中に濁質が混在していても、このサンプル水中に含まれている藻類の濃度を正確に定量化することを確認した。なお、図1の構成、作用については第1の実施の形態で詳述する。
【0064】
《発明の実施の形態》
次に、上述した基本原理を使用した、本発明による藻類濃度測定システムについて詳細に説明する。
【0065】
<第1の実施の形態>
図1は本発明による藻類濃度測定システムのうち、第1の実施の形態を示す構成図である。
【0066】
この図に示す藻類濃度測定システム1は、水道原水などの一部を取込み、これをサンプル水2として流すサンプル水流路3と、このサンプル水流路3の途中に介挿され、このサンプル水流路3を流れるサンプル水2の濁度を測定して濁度データを生成する濁度計4と、無蛍光ガラスなどの透明部材によって構成され、サンプル水流路3の途中に介挿される蛍光測定セル5と、この蛍光測定セル5の奥側に配置され、蛍光測定セル5内を流れるサンプル水2に励起光を照射する励起光照射装置6と、蛍光測定セル5の上側に配置され、蛍光測定セル5内のサンプル水2から発せられた蛍光を受光して、蛍光強度データを生成する蛍光受光装置7と、濁度計4から出力される濁度データに基づき、蛍光受光装置7から出力される蛍光強度データを補正して、サンプル水2中に含まれる濁質8による誤差を補正する濁度影響補正演算装置10と、この濁度影響補正演算装置10によって補正された蛍光強度データに基づき、蛍光測定セル5内を流れるサンプル水2の藻類濃度を求める藻類濃度演算装置11とを備えている。
【0067】
濁度計4は、市販されている通常の濁度計などによって構成されており、サンプル水流路3を流れるサンプル水2の濁度を測定し、この測定動作で得られる濁度データを濁度影響補正装置10に供給する。
【0068】
また、励起光照射装置6は、光源となる発光素子と、特定の波長の光を選択的に透過させる1つまたは2つの光学フィルタとを備えおり、サンプル水2中の藻類濃度を測定するとき、発光素子を動作させて、励起光を生成するとともに、光学フィルタによって、励起光の中から、特定の波長の光を選択して、蛍光測定セル5内にあるサンプル水2中の藻類9に特有の色素のみを励起させる。
【0069】
また、蛍光受光装置7は、光学フィルタと受光素子とを備えており、光学フィルタによって、蛍光測定セル5中のサンプル水2から発せられる蛍光のうち、特定の波長光(励起光により励起された色素から発生られる蛍光)のみを透過させながら、受光素子によって、光学フィルタで選択された蛍光を受光させ、これよって得られた蛍光の強度を示す蛍光強度データを濁度影響補正演算装置10に供給する。
【0070】
この場合、事前に行われた測定作業で、クロロフィルaの波長域に対応する435nmの波長を持つ励起光をサンプル水2に照射したとき、図2に示すように、678nmの波長を持つ蛍光が発せられ、またフィコシアニンの波長域に対応する600nmの波長を持つ励起光をサンプル水2に照射したとき、図3に示すように、642nmの波長を持つ蛍光が得られた場合には、次式に示す演算式に基づき、蛍光受光装置7の定数が調整され、緑藻、珪藻の濃度に応じた蛍光強度データ、藍藻類の濃度に応じた蛍光強度データが生成され、これらが濁度影響補正演算装置7に供給される。
【0071】
IChr=0.3Cg+4.1 …(2)
IPhr=5.8Cb+3.0 …(3)
但し、IChr:クロロフィルaピークの蛍光強度
[励起光435nm、蛍光678nm]
IPhr:フィコシアニンピークの蛍光強度
[励起光600nm、蛍光642nm]
Cg:緑藻濃度、クロロフィルaレベル[μg/l]
Cb:藍藻濃度、クロロフィルaレベル[μg/l]
濁度影響補正演算装置10は、サンプル水2中に含まれる濁質濃度(濁度)からサンプル水2によって散乱される光の強度(散乱光強度)を求める演算式が格納されたテーブルと、このテーブルに格納されている演算式で得られた散乱光強度に基づき、蛍光受光装置7から出力される蛍光強度データを補正して、濁質成分の影響を取り除く演算式が格納されたテーブルと、これらのテーブルに格納されている各演算式を使用して、演算処理を行う演算処理部とを備えており、濁度計4から出力される濁度データに基づき、サンプル水2中の濁質8によって発生する散乱光の強度(散乱光強度)を求めるとともに、この散乱光強度を使用し、蛍光受光装置7から出力される蛍光強度データを補正し、サンプル水2中の濁質8による影響を取り除いて、サンプル水2中の藻類9に含まれている色素に由来した純粋な蛍光強度データを求め、これを藻類濃度演算装置11に供給する。
【0072】
この場合、事前に行われた測定作業で、サンプル水2に無機質の濁質8を添加し、クロロフィルaの波長域に対応する、435nmの波長を持つ励起光をサンプル水2に照射したとき、図4に示すように678nmの蛍光波長に対し、濁度と散乱光強度との関係が得られ、またフィコシアニンの波長域に対応する、600nmの波長を持つ励起光をサンプル水2に照射したとき、図5に示すように642nmの蛍光波長に対し、濁度と散乱光強度との関係が得られると、濁度影響補正演算装置10によって、濁度計4から出力された濁度データで示されるサンプル水2の濁度Dが使用されて、次式に示す演算が行われ、クロロフィルaピークの散乱光強度(蛍光強度変化分)ΔIChr、フィコシアニンピークの散乱光強度(蛍光強度変化分)ΔIPhrが求められる。
【0073】
ΔIChr=0.1D+0.5 …(4)
ΔIPhr=0.5D+1.8 …(5)
但し、ΔIChr:クロロフィルaピークの散乱光強度度(蛍光強度変化分)
[励起光435nm、蛍光678nm]
ΔIPhr:フィコシアニンピークの散乱光強度(蛍光強度変化分)
[励起光600nm、蛍光642nm]
D:濁度[mg/l]
そして、実際に測定された蛍光強度Iが藻類9の蛍光強度に濁質の影響が上乗せされた形になっていることから、濁度影響補正演算装置10によって、次式に示す演算が行われて、実測した蛍光強度Iからクロロフィルaピークの散乱光強度(蛍光強度変化分)ΔIChr、またはフィコシアニンピークの散乱光強度(蛍光強度変化分)ΔIPhrが減算されて、藻類9に含まれる色素に由来する純粋な蛍光強度が求められ、これが蛍光強度データとして、藻類濃度演算装置11に供給される。
【0074】
I0Chr=I−ΔIChr …(6)
I0Phr=I−ΔIPhr …(7)
藻類濃度演算装置11は、濁度影響補正演算装置10から出力される蛍光強度データから藻類濃度データを求める演算式が格納されたテーブルと、このテーブルに格納された演算式を使用して演算処理を行う演算処理部とを備えており、濁度影響補正演算装置10から出力される蛍光強度データに基づき、サンプル水2中に含まれている藻類9の濃度を示す藻類濃度データを求め、これを表示装置(図示は省略する)などに供給する。
【0075】
そして、この藻類濃度測定システム1aの測定精度を確認するために、藍藻(クロロフィルa濃度13.9[μg/l])を含むサンプル水2に濁質8となる無機質を少なめに混入したとき、通常量だけ混入したとき、多めに混入したときに分けて、藍藻の濃度を測定したとき、図6の表12に示す結果を得ることができた。
【0076】
この表12から明らかなように、濁度Dによる補正を行うことにより、無機濁質の添加量によらず、藍藻の濃度を正確に定量化することができた。
【0077】
このように、この第1の実施の形態では、濁度計4によって、サンプル水流路3を流れるサンプル水2の濁度を測定し、さらに励起光照射装置6に励起光を生成させ、これを蛍光測定セル5内のサンプル水2に照射させながら、蛍光受光装置7によって、蛍光測定セル5内のサンプル水2から発せられる蛍光を受光させるとともに、濁度影響補正演算装置10によって、濁度計4から出力される濁度データに基づき、蛍光受光装置7から出力される蛍光強度データを補正させ、サンプル水2中に含まれる濁質8による影響を取り除かせた後、藻類濃度演算装置11によって、濁質8による影響が取り除かれた蛍光強度データを藻類濃度データに変換させるようにした。このため、サンプル水2に濁質8が混在していても、濁質9の影響を受けずに、サンプル水2中に含まれている藻類9の濃度を連続的に測定させることができる。
【0078】
また、この第1の実施の形態では、サンプル水2に含まれる濁質8の濃度と、サンプル水2で散乱されて発せられる散乱光の強度とが線形になり、また蛍光受光装置7で受光される光の強度が、サンプル水2から発せられる蛍光の強度と、散乱光の強度とを加算した形になっていることに着目した、(2)式〜(7)式で示される簡単な演算式を用いて、濁度計4から出力される濁度データで、蛍光受光装置7から出力される蛍光強度データを補正し、サンプル水2に含まれている藻類9の濃度を求めるようにしているので、演算処理を簡素化させ、リアルタイムで、サンプル水2中に含まれている藻類9の濃度を連続的に測定させることができる。
【0079】
また、この第1の実施の形態では、サンプル水2に含まれている緑藻、珪藻類の濃度を測定するとき、波長が435nmの励起光を使用して、波長が678nmの蛍光を受光させ、またサンプル水2に含まれている藍藻類の濃度を測定するとき、波長が600nmの励起光を使用して、波長が642の蛍光を受光させるようにしているので、サンプル水2に含まれている緑藻、珪藻類の濃度、または藍藻類の濃度のうち、いずれかの濃度を選択的に測定させて、水道原水に対する適切な水処理を行わせることができる。
【0080】
さらに、この第1の実施の形態では、1つの励起光照射装置6から波長が435nmの励起光、または波長が600nmの励起光のうち、どちらの励起光でも、出射可能にするとともに、蛍光受光装置7によって、波長が678nmの蛍光、または波長が642の蛍光のうち、どちらの蛍光でも受光可能にしているので、光源、受光素子などを共通化させて、システム全体を小型化させながら、サンプル水2に混在している緑藻、珪藻類の濃度と、藍藻類の濃度とを各々、計測させることができる。
【0081】
<第2の実施の形態>
図7は本発明による藻類濃度測定システムのうち、第2の実施の形態を示す構成図である。
【0082】
この図に示す藻類濃度測定システム15は、水道原水などの一部を取込み、これをサンプル水16として流すサンプル水流路17と、無蛍光ガラスなどの透明部材によって構成され、サンプル水流路17の途中に介挿される蛍光測定セル18と、この蛍光測定セル18の奥側に配置され、蛍光測定セル18内を流れるサンプル水16に各波長の励起光を照射する励起光照射装置19と、蛍光測定セル18の手前側に配置され、蛍光測定セル18内のサンプル水16を透過した励起光を受光して、受光信号を生成する透過光受光器20と、この透過光受光器20から出力される受光信号に基づき、サンプル水16の濁度を示す濁度データを生成する濁度演算装置21と、蛍光測定セル18の上側に配置され、蛍光測定セル18内のサンプル水16から発せられた蛍光を受光して、蛍光強度データを生成する蛍光受光装置24と、濁度演算装置21から出力される濁度データに基づき、蛍光受光装置24から出力される蛍光強度データを補正して、サンプル水16中に含まれる濁質22による誤差を補正する濁度影響補正演算装置25と、この濁度影響補正演算装置25によって補正された蛍光強度データに基づき、蛍光測定セル18内を流れるサンプル水16の藻類濃度を求める藻類濃度演算装置26とを備えている。
【0083】
励起光照射装置19は、図8に示すように、光源となる発光素子27と、クロロフィルaを励起させる波長の光(例えば、波長が435nmの光)を選択的に透過させる光学フィルタ28と、フィコシアニンピークを励起させる波長の光(例えば、波長が600nmの光)を選択的に透過させる光学フィルタ29と、サンプル水16の濁度を測定するのに適した波長の光(例えば、波長が660nmの光)を選択的に透過させる光学フィルタ30と、これらの光学フィルタ28、29、30のいずれかを発光素子27の光軸上に突出させる光学フィルタ切換機構31とを備えており、サンプル水16中の藻類濃度、濁度を測定するとき、発光素子27を動作させて、励起光を生成するとともに、光学フィルタ切換機構31によって、各光学フィルタ28、29、30のいずれかを発光素子27の前面に突出させて、励起光の中から、特定の波長の光を選択させ、これを蛍光測定セル18内のサンプル水16に照射させる。
【0084】
また、透過光受光器20は、蛍光測定セル18内のサンプル水16を透過した励起光(濁度測定用の波長を持つ励起光)を選択的に透過させる透過光光学フィルタ32と、この透過光光学フィルタ32を透過した透過光を受光し、その強度に応じた受光信号を生成する受光素子33とを備えており、蛍光測定セル18内のサンプル水16を透過した励起光(濁度測定用の波長を持つ励起光)を選択して、その強度に応じた受光信号を生成し、これを濁度演算装置21に供給する。
【0085】
濁度演算装置21は、透過光受光器20から出力される受光信号で示された透過光の強度とサンプル水16中に存在する濁質22の濃度との関係が記述されたテーブルと、このテーブルに格納されている透過光の強度と濁質22の濃度との関係を参照しつつ、透過光受光器20から出力される受光信号に応じた濁度データを生成する演算処理部とを備えており、透過光受光器20から受光信号が出力されているとき、この受光信号の強度に応じた濁度データを生成し、これを濁度影響補正演算装置25に供給する。
【0086】
また、蛍光受光装置24は、蛍光測定セル18中のサンプル水16から発せられる蛍光のうち、クロロフィルaが発する蛍光の波長光を選択的に透過させる光学フィルタ34と、フィコシアニンが発する蛍光の波長光を選択的に透過させる光学フィルタ35と、各光学フィルタ34、35のいずれかを使用して、蛍光測定セル18内のサンプル水16から発生られた蛍光を選択的に透過させる光学フィルタ切換機構36と、この光学フィルタ切換機構36によって選択された光学フィルタを透過した蛍光を受光して、蛍光強度データを生成する受光素子37とを備えており、光学フィルタ切換機構36によって、各光学フィルタ34、35の一方を選択して、蛍光測定セル18中のサンプル水16から発せられる蛍光のうち、特定の波長光(励起光により励起された色素から発生られる蛍光)のみを透過させながら、受光素子37によって、光学フィルタで選択された蛍光を受光させ、これよって得られた蛍光の強度を示す蛍光強度データを濁度影響補正演算装置25に供給する。
【0087】
濁度影響補正演算装置25は、サンプル水16中に含まれる濁質22の濃度(濁度)からサンプル水16によって散乱される光の強度(散乱光強度)を求める演算式が格納されたテーブルと、このテーブルに格納されている演算式で得られた散乱光強度に基づき、蛍光受光装置24から出力される蛍光強度データを補正して、濁質成分の影響を取り除く演算式が格納されたテーブルと、各テーブルに格納されている各演算式を使用して、演算処理を行う演算処理部とを備えており、濁度演算装置21から出力される濁度データに基づき、サンプル水16中の濁質22によって発生する散乱光の強度(散乱光強度)を求めるとともに、この散乱光強度を使用し、蛍光受光装置24から出力される蛍光強度データを補正して、サンプル水16中の藻類23に含まれている色素に由来した純粋な蛍光強度データを求め、これを藻類濃度演算装置26に供給する。
【0088】
藻類濃度演算装置26は、濁度影響補正演算装置25から出力される蛍光強度データから藻類濃度データを求める演算式が格納されたテーブルと、このテーブルに格納された演算式を使用して演算処理を行う演算処理部とを備えており、濁度影響補正演算装置25から出力される蛍光強度データに基づき、サンプル水16中の藻類濃度を示す藻類濃度データを求め、これを表示装置(図示は省略する)などに供給する。
【0089】
このように、この第2の実施の形態では、励起光照射装置19に濁度測定用の励起光を生成させ、これを蛍光測定セル18内のサンプル水16に照射させながら、透過光受光器20、濁度演算装置21によって、蛍光測定セル18内のサンプル水16を透過した励起光の強度を測定させ、濁度データを生成させた後、励起光照射装置19に藻類濃度測定用の励起光を生成させ、これを蛍光測定セル18内のサンプル水16に照射させながら、蛍光受光装置24によって、蛍光測定セル18内のサンプル水16から発せられる蛍光を受光させ、蛍光強度データを生成させ、さらに濁度影響補正演算装置25によって、濁度演算装置21から出力される濁度データに基づき、蛍光受光装置24から出力される蛍光強度データを補正させ、サンプル水16中に含まれる濁質22による影響を取り除かせた後、藻類濃度演算装置26によって、濁質22による影響が取り除かれた蛍光強度データを藻類濃度データに変換させるようにした。このため、装置全体を小型化しつつ、1つの蛍光測定セル18で、サンプル水16に混在している濁質22の濃度と、藻類23の濃度とを各々、計測させて、藻類23の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、濁質22の影響を受けずに、サンプル水16中に含まれている藻類23の濃度を連続的に測定させることができる。
【0090】
また、この第2の実施の形態では、サンプル水16の濁度を測定するとき、励起光照射装置19の光学フィルタ切換機構31によって、蛍光測定用の光学フィルタ28、29から濁度測定用の光学フィルタ30に切り替え、励起光照射装置19から濁度測定に適した波長範囲の励起光を出射させ、これを蛍光測定セル18内のサンプル水16に照射させながら、透過光受光器20によって、蛍光測定セル18内のサンプル水16を透過した励起光を受光させ、サンプル水16の濁度を測定させるようにしているので、1つの励起光照射装置19によって、蛍光測定用の励起光と、濁度測定用の励起光とを出射させることができ、これによって蛍光測定のための測定セルと、濁度測定用セルとを独立させたシステムに比べて、システム全体を小型化させることができる。
【0091】
また、この第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同様に、サンプル水16に含まれる濁質22の濃度と、サンプル水16で散乱されて発せられる散乱光の強度とが線形になり、また蛍光受光装置24で受光される光の強度が、サンプル水16から発せられる蛍光の強度と、散乱光の強度とを加算した形になっていることに着目した、(2)式〜(7)式で示される簡単な演算式を用いて、濁度演算装置21から出力される濁度データで、蛍光受光装置24から出力される蛍光強度データを補正し、サンプル水16に含まれている藻類23の濃度を求めるようにしているので、演算処理を簡素化させ、リアルタイムで、サンプル水16中に含まれている藻類23の濃度を連続的に測定させることができる。
【0092】
また、この第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同様に、サンプル水16に含まれている緑藻、珪藻類の濃度を測定するとき、波長が435nmの励起光を使用して、波長が678nmの蛍光を受光させ、またサンプル水16に含まれている藍藻類の濃度を測定するとき、波長が600nmの励起光を使用して、波長が642の蛍光を受光させるようにしているので、サンプル水2に含まれている緑藻、珪藻類の濃度、または藍藻類の濃度のうち、いずれかの濃度を選択的に測定させて、水道原水に対する適切な水処理を行わせることができる。
【0093】
さらに、この第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同様に、1つの励起光照射装置19から波長が435nmの励起光、波長が600nmの励起光、波長が660nmの励起光のうち、いずれの励起光でも、出射可能にするとともに、蛍光受光装置24によって、波長が678nmの蛍光、または波長が642の蛍光のうち、どちらの蛍光でも受光可能にしているので、光源、受光素子などを共通化させて、システム全体を小型化させながら、サンプル水16に混在している濁質22の濃度と、緑藻、珪藻類の濃度と、藍藻類の濃度とを各々、計測させることができる。
【0094】
<第3の実施の形態>
図9は本発明による藻類濃度測定システムのうち、第3の実施の形態を示す構成図である。
【0095】
この図に示す藻類濃度測定システム40は、水道原水などの一部を取込み、これをサンプル水41として流すサンプル水流路42と、無蛍光ガラスなどの透明部材によって構成され、サンプル水流路42の途中に介挿される蛍光測定セル43と、この蛍光測定セル43の奥側に配置され、蛍光測定セル43内を流れるサンプル水41に各波長の励起光を照射する励起光照射装置44と、蛍光測定セル43の上側に配置され、蛍光測定セル43内のサンプル水41から発せられた散乱光または蛍光を受光して、受光信号を生成する蛍光/散乱光受光器45と、この蛍光/散乱光受光器45から出力される受光信号に基づき、濁度データまたは蛍光強度データを生成する蛍光/濁度演算装置46と、この蛍光/濁度演算装置46から出力される濁度データに基づき、蛍光/濁度演算装置46から出力される蛍光強度データを補正して、サンプル水41中に含まれる濁質47による誤差を補正する濁度影響補正演算装置49と、この濁度影響補正演算装置49によって補正された蛍光強度データに基づき、蛍光測定セル43内を流れるサンプル水41の藻類濃度を求める藻類濃度演算装置50とを備えている。
【0096】
励起光照射装置44は、図10に示すように、光源となる発光素子51と、クロロフィルaを励起させる波長の光(例えば、波長が435nmの光)を選択的に透過させる光学フィルタ52と、フィコシアニンを励起させる波長の光(例えば、波長が600nmの光)を選択的に透過させる光学フィルタ53と、サンプル水41の濁度を測定するのに適した波長の光(例えば、波長が660nmの光)を選択的に透過させる光学フィルタ54と、これらの光学フィルタ52、53、54のいずれかを発光素子51の光軸上に突出させる光学フィルタ切換機構55とを備えており、サンプル水41中の藻類濃度、濁度を測定するとき、発光素子51を動作させて、励起光を生成するとともに、光学フィルタ切換機構55によって、各光学フィルタ52、53、54のいずれかを発光素子51の前面に突出させて、励起光の中から、特定の波長の光を選択させ、これを蛍光測定セル43内にあるサンプル水41に照射させる。
【0097】
また、蛍光/散乱光受光器45は、蛍光測定セル43中のサンプル水41から発せられる蛍光のうち、クロロフィルaが発する蛍光の波長光を選択的に透過させる光学フィルタ56と、フィコシアニンが発する蛍光の波長光を選択的に透過させる光学フィルタ57と、濁度測定用の波長光を選択的に透過させる光学フィルタ58と、各光学フィルタ56、57、58のいずれかを使用して、蛍光測定セル43内のサンプル水41から発生られた散乱光、または蛍光を選択的に透過させる光学フィルタ切換機構59と、この光学フィルタ切換機構59によって選択された光学フィルタを透過した散乱光または蛍光を受光して、散乱光強度信号または蛍光強度信号を生成する受光素子60とを備えており、光学フィルタ切換機構59によって、各光学フィルタ56、57、58の1つを選択して、蛍光測定セル43中のサンプル水41から発せられる散乱光または蛍光のうち、特定の波長光(濁質47で散乱させれた散乱光、または励起光により励起された色素から発生られる蛍光)のみを透過させながら、受光素子60によって、これら散乱光または蛍光を受光させ、散乱光の強度を示す散乱光強度信号または蛍光の強度を示す蛍光強度信号を生成させ、これを蛍光/濁度演算装置46に供給する。
【0098】
蛍光/濁度演算装置46は、蛍光/散乱光受光器45から出力される散乱光強度信号を濁度データに変換するのに必要なテーブルと、蛍光/散乱光受光器45から出力される蛍光強度信号を蛍光強度データに変換するのに必要なテーブルと、各テーブルの内容を参照しつつ、蛍光/散乱光受光器45から出力される散乱光強度信号、蛍光強度信号を濁度データ、蛍光強度データに変換する演算処理部とを備えており、蛍光/散乱光受光器45から散乱光強度信号が出力されているとき、この散乱光強度信号を濁度データに変換して、濁度影響補正演算装置49に供給し、また蛍光/散乱光受光器45から蛍光強度信号が出力されているとき、この蛍光強度信号を蛍光強度データに変換して、濁度影響補正演算装置49に供給する。
【0099】
濁度影響補正演算装置49は、サンプル水41中に含まれる濁質47の濃度(濁度)からサンプル水41によって散乱される光の強度(散乱光強度)を求める演算式が格納されたテーブルと、このテーブルに格納されている演算式で得られた散乱光強度に基づき、蛍光/濁度演算装置46から出力される蛍光強度データを補正して、サンプル水41中に含まれている濁質47の影響を取り除く演算式が格納されたテーブルと、各テーブルに格納されている各演算式を使用して、演算処理を行う演算処理部とを備えており、蛍光/濁度演算装置46から出力される濁度データに基づき、サンプル水41中の濁質47によって発生する散乱光強度を求めるとともに、この散乱光強度を使用し、蛍光/濁度演算装置46から出力される蛍光強度データを補正して、濁質成分の影響を取り除いて、サンプル水41中の藻類48に含まれている色素に由来した純粋な蛍光強度データを求め、これを藻類濃度演算装置50に供給する。
【0100】
藻類濃度演算装置50は、濁度影響補正演算装置49から出力される蛍光強度データから藻類濃度データを求める演算式が格納されたテーブルと、このテーブルに格納された演算式を使用して演算処理を行う演算処理部とを備えており、濁度影響補正演算装置49から出力される蛍光強度データに基づき、サンプル水41中の藻類濃度を示す藻類濃度データを求め、これを表示装置(図示は省略する)などに供給する。
【0101】
このように、この第3の実施の形態では、励起光照射装置44によって濁度測定用の波長を持つ励起光を生成させ、これを蛍光測定セル43内のサンプル水41に照射させながら、蛍光/散乱光受光器45、蛍光/濁度演算装置46によって、蛍光測定セル43内のサンプル水41で散乱された励起光の強度を測定させ、濁度データを生成させた後、励起光照射装置44によって、蛍光測定用の波長を持つ励起光を生成させ、これを蛍光測定セル43内のサンプル水41に照射させながら、蛍光/散乱光受光器45、蛍光/濁度演算装置46によって、蛍光測定セル43内のサンプル水41から発せられる蛍光を受光させ、蛍光強度データを生成させ、さらに濁度影響補正演算装置49によって、蛍光/濁度演算装置46から出力される濁度データに基づき、蛍光/濁度演算装置46から出力される蛍光強度データを補正させ、サンプル水41中に含まれる濁質47による影響を取り除かせた後、藻類濃度演算装置50によって、濁質47による影響が取り除かれた蛍光強度データを藻類濃度データに変換させるようにした。このため、装置全体を小型化しつつ、1つの蛍光測定セル43で、サンプル水41に混在している濁質47の濃度と、藻類48の濃度とを各々、計測させて、藻類48の濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、濁質47の影響を受けずに、サンプル水41中に含まれている藻類48の濃度を連続的に測定させることができる。
【0102】
また、この第3の実施の形態では、サンプル水41濁度を測定するとき、励起光照射装置44の光学フィルタ切換機構55によって、蛍光測定用の光学フィルタ52、53から濁度測定用の光学フィルタ54に切り替え、励起光照射装置44から濁度測定に適した波長範囲の励起光を出射させ、これを蛍光測定セル43内のサンプル水41に照射させるとともに、蛍光/散乱光受光器45の光学フィルタ切換機構59によって、蛍光測定用の光学フィルタ56、57から濁度測定用の光学フィルタ58に切り替え、蛍光測定セル43内のサンプル水41で散乱された励起光を受光させ、サンプル水41の濁度を測定させるようにしているので、1つの蛍光/散乱光受光器45、蛍光/濁度演算装置46によって、蛍光測定と、濁度測定とを行わせることができ、これによってシステム全体を小型化させることができる。
【0103】
また、この第3の実施の形態では、上述した第1、第2の実施の形態と同様に、サンプル水41に含まれる濁質47の濃度と、サンプル水41で散乱されて発せられる散乱光の強度とが線形になり、また蛍光/散乱光受光器45で受光される光の強度が、サンプル水41から発せられる蛍光の強度と、散乱光の強度とを加算した形になっていることに着目した、(2)式〜(7)式で示される簡単な演算式を用いて、蛍光/濁度演算装置46から出力される濁度データで、蛍光/濁度演算装置46から出力される蛍光強度データを補正し、サンプル水41に含まれている藻類48の濃度を求めるようにしているので、演算処理を簡素化させ、リアルタイムで、サンプル水41中に含まれている藻類48の濃度を連続的に測定させることができる。
【0104】
また、この第3の実施の形態では、上述した第1、第2の実施の形態と同様に、サンプル水41に含まれている緑藻、珪藻類の濃度を測定するとき、波長が435nmの励起光を使用して、波長が678nmの蛍光を受光させ、またサンプル水41に含まれている藍藻類の濃度を測定するとき、波長が600nmの励起光を使用して、波長が642の蛍光を受光させるようにしているので、サンプル水41に含まれている緑藻、珪藻類の濃度、または藍藻類の濃度のうち、いずれかの濃度を選択的に測定させて、水道原水に対する適切な水処理を行わせることができる。
【0105】
さらに、この第3の実施の形態では、上述した第1、第2の実施の形態と同様に、1つの励起光照射装置44から波長が435nmの励起光、波長が600nmの励起光、波長が660nmの励起光のうち、いずれの励起光でも、出射可能にするとともに、蛍光/散乱光受光器45によって、波長が678nmの蛍光、波長が642の蛍光、波長が660nmの散乱光のうち、いずかの蛍光、または散乱光を受光可能にしているので、光源、受光素子などを共通化させて、システム全体を小型化させながら、サンプル水41に混在している濁質47の濃度と、緑藻、珪藻類の濃度と、藍藻類の濃度とを各々、計測させることができる。
【0106】
《他の実施の形態》
また、上述した第2、第3の実施の形態では、励起光照射装置19、44の光学フィルタ切換機構31、55を動作させて、蛍光測定用の光学フィルタ28、29、52、53、濁度測定用の光学フィルタ30、54のいずれか一方を選択させて、励起光照射装置19、44から蛍光測定に適した波長範囲の励起光、濁度測定に適した波長範囲の励起光のいずれか一方を出射させるようにしているが、蛍光測定に適した波長範囲の励起光を出射する励起光照射装置と、濁度測定に適した波長範囲の励起光を出射する励起光照射装置とを使用して、サンプル水16、41に含まれている藻類22、48の濃度測定と、サンプル水16、41に含まれている濁質22、47の濃度測定とを並列に行わせるようにしても良い。
【0107】
このように、構成することにより、サンプル水流路17、42を流れるサンプル水16、41の特性変動が激しいときでも、サンプル水16、41の同じ部分に対し、藻類22、48の濃度測定と、濁質22、47の濃度測定とを行わせて、藻類濃度の測定精度が低下しないようにすることができる。
【0108】
また、上述した第1、第2、第3の実施の形態では、水道原水などの一部を取り込んで、これをサンプル水2、16、41として、そのまま蛍光測定セル5、18、43に導入するようにしているが、藻類9、23、48の種類によっては、個体同士が結び付いて群体を形成するとともに、個体および群体同士が凝集し、肉眼で確認できるほどの大きさの塊になる場合があり、このように凝集した状態で、蛍光測定を行うと、励起光が塊中の内部の藻類9、23、48まで到達せずに、実際のサンプル水2、16、41に含まれている藻類9、23、48のうち、励起されて蛍光を発する藻類9、23、48の割合が小さくなり、均一に分散している場合に比較し、低い濃度になってしまうことがある。
【0109】
そこで、このような場合には、サンプル水流路3、17、42の途中に、超音波の振動によって、藻類同士の結合を物理的に分割させる超音波撹拌装置、または急速に回転する撹拌子によって、藻類同士の結合を物理的に分割させる撹拌装置などを挿入して、サンプル水流路3、17、42内を流れるサンプル水2、16、41を撹拌させ、凝集した藻類9、23、48を均一に分散させた後、蛍光測定セル5、18、43に導入させるようにしても良い。
【0110】
このようにすることにより、藻類9、23、48が凝集して塊になっているときでも、これらの塊を分割させて、サンプル水2、16、41中に藻類9、23、48を均一に分散させ、藻類濃度の測定精度を向上させることができる。
【0111】
また、上述した第1、第2、第3の実施の形態では、蛍光測定セル5、18、43の透明度が低下しないことを前提にしているが、実際の蛍光測定セル5、18、43では、内部に藻類9、23、48、あるいは濁質8、22、47が付着したり、その他の生物、その他の無機質、有機質などが付着して、蛍光測定セル5、18、43の透明度が低下してしまうことがある。
【0112】
そこで、このような場合、蛍光測定セル5、18、43の透明度が低下した時点、あるいは予め設定されている周期で、測定動作を停止させて、サンプル水流路3、17、42から蛍光測定セル5、18、43を取り外し、その内部を機械的に洗浄するようにしても良い。
【0113】
また、蛍光測定セル5、18、43内を洗浄する方法として、汚れの内容に応じた洗浄方法、例えば蛍光測定セル5、18、43内に生物が付着して、繁殖しているとき、あるいは有機性の付着物が付着しているときには、強力な酸化力を持つオゾンを使用して、蛍光測定セル5、18、43内を洗浄し、また蛍光測定セル5、18、43内にカルシウム、マグネシウムなどの硬度成分が析出して、スケールが付着しているとき、塩酸などの酸を使用して、蛍光測定セル5、18、43内を洗浄するようにしても良い。
【0114】
このように、汚れの内容に応じて、洗浄方法を選択することにより、蛍光測定セル5、18、43の透明度を高い状態に保ち、測定精度が低下しないようにすることができる。
【0115】
また、このように、オゾン、酸などを使用する洗浄方法では、サンプル水流路3、17、42から蛍光測定セル5、18、43を取り外す必要が無いことから、予め設定された周期で、自動的に洗浄を開始させたり、蛍光測定セル5、18、43の汚れが規定の汚れ以上になった時点で、自動的に洗浄を開始させたりしても良い。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の藻類濃度測定システムでは、サンプル水に混在している濁質の濃度と、緑藻、珪藻類などの濃度とを各々、計測させて、緑藻、珪藻類などの濃度測定で得られた藻類濃度に含まれる濁質分をキャンセルさせ、これによって濁質の影響を受けずに、サンプル水中に含まれている藻類の濃度を連続的に測定させることができる。
【0117】
請求項2、3の藻類濃度測定システムでは、1つの測定セルによりサンプル水に混在している濁質の濃度と藻類の濃度とを各々計測できるので、システム全体を小型化することができる。
【0118】
請求項4の藻類濃度測定システムでは、演算内容を簡素化し、処理速度を高めることができる。
【0120】
請求項4の藻類濃度測定システムでは、光源、受光素子などを共通化させて、システム全体を小型化させることができる。
【0121】
請求項5、6、7の藻類濃度測定システムでは、サンプル水中に、藻類が凝集した状態で、濁質と混在していても、撹拌子などによってサンプル水を直接、撹拌させて、超音波によってサンプル水を振動させて、凝集している藻類をばらばらにした後に濁質の濃度と、藻類の濃度とを各々計測することができる。
【0122】
請求項8の藻類濃度測定システムでは、機械的な力、化学的な力などにより、測定セル内を適時、洗浄して、測定精度が低下しないようにすることができる。
【0123】
請求項9の藻類濃度測定システムでは、強酸化作用を持つオゾンによって、測定セル内に付着した藻類、有機物、生物などを取り除いて、測定精度が低下しないようにすることができる。
【0124】
請求項10の藻類濃度測定システムでは、強い酸化作用を持つ酸によって、測定セル内に付着したカルシウム、マグネシウムなどでできたスケールを取り除いて、測定精度が低下しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による藻類濃度測定システムの第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】緑藻を含むサンプル水、藍藻を含むサンプル水に波長が435nmの励起光を照射したとき、サンプル水から発せられる波長が678nmの蛍光強度と、クロロフィルa濃度との関係を示すグラフである。
【図3】緑藻を含むサンプル水、藍藻を含むサンプル水に波長が600nmの励起光を照射したとき、サンプル水から発せられる波長が642nmの蛍光強度と、クロロフィルa濃度との関係を示すグラフである。
【図4】模擬濁質として、種々の濃度のカオリンを添加したサンプル水に波長が435nmの励起光を照射したとき、サンプル水から発せられる波長が678nmの散乱光と、濁度との関係を示すグラフである。
【図5】模擬濁質として、種々の濃度のカオリンを添加したサンプル水に波長が600nmの励起光を照射したとき、サンプル水から発せられる波長が642nmの散乱光と、濁度との関係を示すグラフである。
【図6】図1に示す藻類濃度測定システムにおいて、蛍光強度に濁度補正を行う前の数値と、蛍光強度に濁度補正を行った後の数値との関係を示す表である。
【図7】 本発明による藻類濃度測定システムの第2の実施形態を示す構成図である。
【図8】図7に示す励起光照射装置、蛍光測定セル、透過光受光器、濁度演算装置、蛍光受光装置の詳細な内容を示す構成図である。
【図9】 本発明による藻類濃度測定システムの第3の実施形態を示す構成図である。
【図10】図9に示す励起光照射装置、蛍光測定セル、蛍光/散乱光受光器、蛍光/濁度演算装置の詳細な内容を示す構成図である。
【図11】緑藻、珪藻のみを含むサンプル水に照射する励起光の波長と、サンプル水から発せられる波長が678nmとなっている蛍光の強度との関係を示すグラフである。
【図12】緑藻、珪藻のみを含むサンプル水に波長が435nmの励起光を照射したとき、サンプル水から発せられる蛍光の波長と、強度との関係を示すグラフである。
【図13】藍藻類のみを含むサンプル水に波長が435nmの励起光を照射したとき、サンプル水から発せられる蛍光の波長と、強度との関係を示すグラフである。
【図14】藍藻類のみを含むサンプル水に照射する励起光の波長と、サンプル水から発せられる波長が642nmとなっている蛍光の強度との関係を示すグラフである。
【図15】藍藻類のみを含むサンプル水に波長が600nmの励起光を照射したとき、サンプル水から発せられる蛍光の波長と、強度との関係を示すグラフである。
【図16】緑藻、珪藻のみを含むサンプル水に波長が600nmの励起光を照射したとき、サンプル水から発せられる蛍光の波長と、強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1,15,40:藻類濃度測定システム
2,16,41:サンプル水
3,17,42:サンプル水流路
4:濁度計
5,18,43:蛍光測定セル(測定セル)
6:励起光照射装置(蛍光測定手段)
7,24:蛍光受光装置(蛍光測定手段)
8,22,47:濁質
9,23,48:藻類
10,49:濁度影響補正演算装置(濁度影響補正手段)
11,50:藻類濃度演算装置
19,44:励起光照射装置(濁度測定手段、蛍光測定手段)
20:透過光受光器(濁度測定手段)
21:濁度演算装置(濁度測定手段)
25:濁度影響補正演算装置(濁度影響補正手段)
26:藻類濃度演算装置
27,51:発光素子
28,29,30,34,35,52,52,53,54,56,57,58:光学フィルタ
31,36,55,59:光学フィルタ切換機構
32:透過光光学フィルタ
33,37,60:受光素子
45:蛍光/散乱光受光器(濁度測定手段、蛍光測定手段)
46:蛍光/濁度演算装置(濁度測定手段、蛍光測定手段)
Claims (10)
- 透明部材によって構成され、サンプル水が満たされる測定セルと、
この測定セルに満たされている前記サンプル水に特定波長域の光を照射しつつ、このサンプル水で散乱された光を受光し、濁度データを生成する濁度測定手段と、
前記測定セルに満たされている前記サンプル水に特定波長域の励起光を照射しつつ、このサンプル水から発せられる蛍光を受光して蛍光強度データを生成する蛍光測定手段と、
前記濁度測定手段から出力される濁度データに基づき、前記蛍光測定手段から出力される蛍光強度データに含まれる濁度分を補正する濁度影響補正手段と、
この濁度影響補正手段から出力される濁度補正済みの蛍光強度データに基づき、前記サンプル水に含まれる藻類の濃度を求める藻類濃度演算手段と、
を備え、
前記蛍光測定手段は、クロロフィルaに対応する400〜500nmの波長域内にある波長光を生成し、これを励起光として前記測定セル内の前記サンプル水に照射し、また前記測定セル内の前記サンプル水から発せられる蛍光のうち、670〜690nmの波長域内にある蛍光を選択的に受光して、クロロフィルaを含有している緑藻類及び珪藻類の能度を計測する第1の蛍光強度データを生成し、
フィコシアニンに対応する540〜600nmの波長域内にある波長光を生成し、これを励起光として前記測定セル内の前記サンプル水に照射し、また前記測定セル内の前記サンプル水から発せられる蛍光のうち、630〜650nmの波長域内にある蛍光を選択的に受光して、フィコシアニンを含有している藍藻類の濃度を計測する第2の蛍光強度データを生成する
ことを特徴とする藻類濃度測定システム。 - サンプル水の濁度を散乱光用いて測定して濁度データを生成する濁度計と、
透明部材によって構成され、前記サンプル水が満たされる測定セルと、
この測定セルに満たされている前記サンプル水に特定波長域の励起光を照射しつつ、このサンプル水から発せられる蛍光を受光して蛍光強度データを生成する蛍光測定手段と、
前記濁度計から出力される濁度データに基づき、前記蛍光測定手段から出力される蛍光強度データに含まれる濁度分を補正する濁度影響補正手段と、
この濁度影響補正手段から出力される濁度補正済みの蛍光強度データに基づき、前記サンプル水に含まれる藻類の濃度を求める藻類濃度演算手段と、
を備え、
前記蛍光測定手段は、クロロフィルaに対応する400〜500nmの波長域内にある波長光を生成し、これを励起光として前記測定セル内の前記サンプル水に照射し、また前記測定セル内の前記サンプル水から発せられる蛍光のうち、670〜690nmの波長域内にある蛍光を選択的に受光して、クロロフィルaを含有している緑藻類及び珪藻類の能度を計測する第1の蛍光強度データを生成し、
フィコシアニンに対応する540〜600nmの波長域内にある波長光を生成し、これを励起光として前記測定セル内の前記サンプル水に照射し、また前記測定セル内の前記サンプル水から発せられる蛍光のうち、630〜650nmの波長域内にある蛍光を選択的に受光して、フィコシアニンを含有している藍藻類の濃度を計測する第2の蛍光強度データを生成する
ことを特徴とする藻類濃度測定システム。 - 請求項1又は2のいずれか1に記載の藻類濃度測定システムにおいて、
前記濁度影響補正手段は、前記濁度計または前記濁度測定手段で得られた濁度データ、前記蛍光測定手段で得られた第1及び第2の蛍光強度データ、次式に示す演算式を使用して、第1及び第2の蛍光強度データに含まれる濁度の影響を除去する、
I0=I−(a・D+b)
但し、a:係数
b:係数
D:濁度
I:濁度補正前の蛍光強度
I0:濁度補正後の蛍光強度
ことを特徴とする藻類濃度測定システム。 - 請求項1又は3のいずれか1に記載の藻類濃度測定システムにおいて、
前記濁度測定手段または前記蛍光測定手段のうち、少なくともいずれか一方は、複数の光学フィルタを切り替えて指定された波長を持つ励起光を生成する処理、指定された波長を持つ透過光、散乱光、蛍光を受光する処理を行う、
ことを特徴とする藻類濃度測定システム。 - 請求項1乃至4のいずれか1に記載の藻類濃度測定システムにおいて、
前記測定セルに前記サンプル水を導入する前に前記サンプル水を撹拌し、凝集している藻類を分散させる撹拌処理手段、
を備えたことを特徴とする藻類濃度測定システム。 - 請求項5に記載の藻類濃度測定システムにおいて、
前記撹拌処理手段は、前記サンプル水を機械的に撹拌する撹拌子である、
ことを特徴とする藻類濃度測定システム。 - 請求項5に記載の藻類濃度測定システムにおいて、
前記撹拌処理手段は、前記サンプル水を超音波を用いて撹拌する超音波処理手段である、
ことを特徴とする藻類濃度測定システム。 - 請求項1乃至7のいずれかに記載の藻類濃度測定システムにおいて、
前記測定セル内を洗浄する測定セル洗浄手段、
を備えたことを特徴とする藻類濃度測定システム。 - 請求項8に記載の測定セル洗浄手段において、
前記測定セル洗浄手段は、前記測定セル内をオゾンによって洗浄するオゾン洗浄手段である、
ことを特徴とする藻類濃度測定システム。 - 請求項8に記載の測定セル洗浄手段において、
前記測定セル洗浄手段は、前記測定セル内を酸によって洗浄する酸洗浄手段である、
ことを特徴とする藻類濃度測定システム。
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