JP3841784B2 - 乾式バレル研磨用メディアの調整方法及び乾式バレル研磨方法 - Google Patents

乾式バレル研磨用メディアの調整方法及び乾式バレル研磨方法 Download PDF

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この発明は、バリ取りと光沢仕上げが可能な乾式バレル研磨用メディアの調整方法及びこのメディアを用いた乾式バレル研磨方法に関する。
従来の乾式バレル研磨(特許第3263818号公報)は、湿式バレル研磨用のプラスチックメディアと油脂質潤滑剤で被覆した植物性繊維質の2種類を混合した乾式メディアを使用していた。このメディアの特徴は、プラスチックメディアで主にワークの研磨を行い、発生した磨耗粉がプラスチックメディアやワークに付着して目詰まりしないように、植物性繊維質によって磨耗粉を吸着除去していた。そのため植物性繊維質は時間の経過とともに劣化し、定期的に植物性繊維質自身を更新する必要があった。またバレル研磨では研磨後にワークとメディアに選別することを要する。この選別は選別網を装着した振動選別機やワークの磁性を利用した磁気選別機によって行う。ところが前記のように2種類のメディアが存在すると、選別網の開き目によってメディアの大きさが制限されたり、特殊な選別機を必要とするため、研磨後の選別処理という面でも課題を抱えていた。このように従来の混合メディアは管理上に難点があった。さらにこの混合メディアは、バリ取りや丸み付けなどの粗仕上乃至中仕上を得意としたが、光沢仕上には不向きであった。
こうしたメディアとは別に、乾式バレル研磨専用のプラスチックメディアもある(実公平2−43652号公報)。このメディアは単独で相当な研磨力を有しておりワークのバリ取りや端面の丸み付けを得意とした。しかも研磨中に磨耗粉を集塵除去すれば、ワークやメディアに磨耗粉が付着せず、ワーク表面が比較的美麗に仕上がるとともに研磨性能も維持できるという利点があった。選別工程においてもメディアが1種類なので前記のような選別上の問題も生じない。ところがこのメディアにも次のような問題があった。即ち、このメディアはバリ取りや端面の丸み付けに優れるものの、湿式研磨に比べればワーク表面の光沢度は劣っていた。そのため仕上目的が、バリ取り及び光沢仕上げの場合、まず初めにこのメディアでバリ取り仕上げを行ってから、次にメディアを入れ替えて光沢用メディアよる光沢仕上げを行わなければならず、2工程研磨を必要とした。
さらに特開2002−79453号公報には、組織内に砥粒及び細孔を有さない合成樹脂メディア上に油脂質研磨剤を被覆した乾式メディアによって、ワークを光沢仕上する方法が開示されているが、このメディアは組織内に砥粒や細孔を持たないのでバリ取りはできず、専ら光沢仕上に用いられていた。
特許第3263818号公報 実公平2−43652号公報 特開2002−79453号公報
以上よりこの発明が解決しようとする課題は、1つのメディアでバリ取りと光沢仕上げを同時に可能とする点にある。
上記課題を解決するために請求項1に係るメディアの調整方法の発明は、砥材を樹脂で結合したバレル研磨用メディアをバレル研磨機又は混合機に投入し、研磨対象ワークが存在しない状態で油剤を添加するとともに前記バレル研磨機又は混合機を集塵機からの吸引作用を受けながら稼動することによって前記メディア表面に前記油剤をコーティングしたことを特徴とする。次に請求項に係る発明は、請求項1記載の乾式バレル研磨用メディアの調整方法において、前記バレル研磨機又は混合機に研磨対象ワークと同材質の金属片を投入し、この金属片から発生した磨耗粉を前記油剤とともに前記メディア表面にコーティングしたことを特徴とする。次に請求項に係る発明は、請求項1又は2記載の乾式バレル研磨用メディアの調整方法において、前記油剤の添加は、ミスト状に行うことを特徴とする。そして請求項に係る研磨方法の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の乾式バレル研磨用メディアの調整方法によって得られたメディアと研磨対象ワークをバレル研磨機に投入してこのワークをバレル研磨することを特徴とする。
この発明によれば、砥材を樹脂で結合したバレル研磨用メディアの表面に油剤をコーティングしたことによって、このメディアを使用して乾式バレル研磨を行えば、バリ取り及び光沢仕上が同時にできるから、従来メディアでは不可能であった課題が一挙に解決できる。またメディアは表面に油剤がコーティングされた単独メディアだから、研磨後の選別で問題となることもない。
まず本発明の乾式バレル研磨用メディアの調整方法について説明する。使用するメディアは砥材を樹脂で結合したいわゆるプラスチックメディアで、乾式バレル研磨専用に開発されたものが良いが、従来からある湿式バレル研磨用のものでも良い。前記砥材は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、炭化珪素等の一種又はこれらを組み合わせた複数種を用いることができる。前記樹脂は、不飽和ポリエステル、フェノール、ユリア等の熱硬化性樹脂や、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂からなるメディアは、型内に溶融した樹脂と砥材を入れて加熱し、硬化を待って脱型して得る。熱可塑性樹脂からなるメディアは、押し出し成型機に樹脂と砥材を入れ、加熱して樹脂を溶融させ、成型機から押し出して冷却硬化し、所望長さに切断して得る。一方、添加する油剤は一般的な液状のプレス油を用いることができ、例えば不水溶性プレス加工油があるが、水溶性プレス油でも良い。この他に粘度の高いペースト状の油剤でも良い。
前記メディアに前記油剤をコーティングするには図1において、まず適当量のメディア1をバレル研磨機2(バレル研磨機に限らず、混合機でも良い。要するにメディアに油剤をコーティングできるものであれば何でも良い)に入れ、装置を稼動する。ここではバレル研磨機2の駆動軸3を不図示のモータによって回転すると、駆動軸3上に固着された回転盤4が回転して回転盤4と筒状固定槽5とで構成される容器6内のメディア1に渦流動を生じさせるようになっている。その後油剤を添加するが、容器6内には研磨対象ワークを投入せずに行うのが良い。ワークを投入して研磨しながら油剤を添加すると、ワークにも油剤が付着し、その結果、ワーク表面が黒色化してしまうからである。したがって容器6内にはメディア1のみ、つまりいわゆる共摺り状態で油剤を添加するのが良い。またこのとき、バレル研磨機2の底部に集塵機8を接続し、回転盤4と筒状固定槽5との隙間Sを介して容器6内に集塵機8からの吸引作用を及ぼすと良い。吸引作用はなくても油剤のコーティングは可能だが、この吸引作用によって油剤がメディア表面に早くコーティングできるからである。さらにこのとき、対象ワークと同材質の金属片(不図示)を少量投入すると良い。金属片を入れなくてもバリ取りと光沢性能は良好となるが、この金属片から生じた磨耗粉がメディア表面に油剤とともにコーティングされると、バリ取りと光沢性能が一層増すからである。また前記油剤の添加は、スプレー7を用いてミスト状(油剤を圧縮空気で霧状にして吹き付ける)に行うと良い。流動するメディア1に向けてミスト状にスプレーすれば、油剤が全体に均一にしかも早くコーティングされるからである。
前記のようにして乾式バレル研磨用メディアを調整したら、このメディアを所定量、バレル研磨機に移す(前記の例ではバレル研磨機2を引き続いて使う)。そして対象ワーク9を投入し、バレル研磨機2を稼動する(図2参照)。このときもバレル研磨機2には集塵機8が接続されており、研磨によって生じるワークやメディアの磨耗粉を隙間Sを介して積極的に吸引除去する。そうすることによってワーク表面には磨耗粉が付着せず、またメディア表面も磨耗粉で目詰まりしないので、研磨性能を維持できるのである。こうして研磨された対象ワークは、バリが除去されるとともに表面が美麗な光沢を発するものとなる。
上記実施形態に基づいた実験例を図1、2を参照しながら説明する。油剤のコーティングに使用するバレル研磨機は前記同様の集塵機付き渦流バレル研磨機2(株式会社チップトン製EFF40D 容器容量40リットル)で、メディア1はアルミナ砥材をポリアミド樹脂で結合したもの(形状は一辺3mm、高さ3mmの三角柱)10kgを用意した。油剤はプレス成形に用いる不水溶性プレス加工油(スギムラ化学工業株式会社製 S−274 粘度18cSt)を用意した。まず渦流バレル研磨機2へメディア1を投入して、メディアの稜部に存在する成形時のバリを取るため2時間共摺りした。次に、メディア1表面に油剤をしっかりとコーティングするため、油剤15ccをスプレー7によりミスト状に添加してから5時間共摺りした。共摺り後、メディアの表面状態を観察したところ、油剤がしっかりとコーティングされた黒色の表面となった。
こうして得られたメディア1(以下このメディアを第一調整メディアという)が入ったバレル研磨機2に対象ワーク9である軸受部品(材質は高炭素クロム軸受鋼)200個を投入して、バリ取り及び光沢仕上を行った。25分後にワーク9を取り出して表面状態を観察した。
次に前記バレル研磨機2に第一調整メディア1のみが入った状態で装置を稼動し、前記の対象ワークである軸受部品500g(30個)を磨耗粉生成用として投入し、油剤10ccをスプレー7により添加した。この状態で4時間共摺りした。その後さらに油剤10ccを添加し3時間共摺りした。共摺り終了後、投入した磨耗粉生成用ワークを取り出すとともにメディアの表面状態を観察したところ、油剤がしっかりとコーティングされた黒色の表面で、しかも磨耗粉による金属粉の点在も認められた。
こうして得られたメディア1(以下このメディアを第二調整メディアという)を使用して再び前記と同じ軸受部品200個のバレル研磨を行った。25分後にこのワーク9を取り出して表面状態を観察した。
比較のため、油剤も金属片もコーティングしない、即ち、メディア1のみを使用して前記と同じ軸受部品200個のバレル研磨テストも行った。以上の実験結果を下表に示す。
Figure 0003841784
評価はいずれも目視でバリ取り状態と光沢度を観察した。その結果、実施例1の第一調整メディアは、バリ取り、光沢ともに満足の行く結果となった。実施例2の第二調整メディアは、バリ取りは第一調整メディアと同等だが、光沢度は前者に増して極めて良い結果となった。しかしながら従来の研磨法である実施例3のメディアのみによるものは、バリ取りは十分なものの、光沢度は不十分な結果となった。
メディアに油剤をコーティングする模式図 油剤がコーティングされたメディアでワークをバレル研磨する模式図
符号の説明
1 メディア
2 バレル研磨機
3 回転軸
4 回転盤
5 筒状固定槽
6 容器
7 スプレー
8 集塵機
9 ワーク
S 隙間

Claims (4)

  1. 砥材を樹脂で結合したバレル研磨用メディアをバレル研磨機又は混合機に投入し、研磨対象ワークが存在しない状態で油剤を添加するとともに前記バレル研磨機又は混合機を集塵機からの吸引作用を受けながら稼動することによって前記メディア表面に前記油剤をコーティングしたことを特徴とする乾式バレル研磨用メディアの調整方法。
  2. 請求項1記載の乾式バレル研磨用メディアの調整方法において、前記バレル研磨機又は混合機に研磨対象ワークと同材質の金属片を投入し、この金属片から発生した磨耗粉を前記油剤とともに前記メディア表面にコーティングしたことを特徴とする乾式バレル研磨用メディアの調整方法。
  3. 請求項1又は2記載の乾式バレル研磨用メディアの調整方法において、前記油剤の添加は、ミスト状に行うことを特徴とする乾式バレル研磨用メディアの調整方法。
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載の乾式バレル研磨用メディアの調整方法によって得られたメディアと研磨対象ワークをバレル研磨機に投入してこのワークをバレル研磨することを特徴とする乾式バレル研磨方法。
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