JP3841316B2 - 汚泥処理設備 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は汚泥処理設備、詳しくは下水汚泥などの有機汚泥を、乾燥、添加剤添加などの前処理を施すことなく効率的に最終処分でき、しかもセメント原料焼成時に発生した排ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減可能な汚泥処理設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水処理場から排出される下水汚泥は、古来、肥料として利用される場合もあったが、汚泥に重金属類が含有されていること、および、肥料としての利用では処理量が少ないことなどの理由から、最近では、陸上埋立てや海上投棄が主流となっている。
しかしながら、下水処理場からの汚泥排出量は、近年、首都圏を中心に増加傾向にあり、陸上埋立てや海上投棄のための処理場の不足、さらには環境汚染防止上の制約を受けて、汚泥処理は焼却処分に移行しているのが現状である。この汚泥の焼却設備としては、既にいくつかのものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の焼却炉による汚泥焼却装置では、焼却に先立って汚泥を乾燥する必要がある。また、乾燥排ガスの脱臭もしなければならない。これにより、乾燥コスト、脱臭コストおよび焼却コストが嵩み、全体としての処理コストが高くなるという問題点があった。
また、汚泥の乾燥に生石灰を用いる方法も提案されている。これは、生石灰を汚泥中に含まれる水分と反応させて消石灰を生成させ、そのときの反応熱により残留水分を蒸発し、汚泥を空気圧送可能な乾燥物としてセメント原料に利用するものである。しかしながら、この方法でも、汚泥乾燥時に生石灰を添加しなければならないという不具合がある。
【0004】
ところで、建築の分野には、基本資材の一つとしてセメントがある。
セメントは、セメント原料をつくる原料工程、セメント原料を焼成する焼成工程、焼成により中間製造されたセメントクリンカに石膏を加える仕上げ工程を経て、製品となる。
このうち、焼成工程に用いられる主装置として、乾式セメントキルンがある(以下、乾式キルンという場合がある)。
乾式キルンは、円筒状のキルンシェルを回転させながら、上流のプレヒーターで仮焼されたセメント原料を、重油や粉砕石炭を燃料に焼成する一種の窯である。この焼成時には、NOxを含む多量の排ガスが発生する。
近年、この排ガス中のNOxが大気を汚染すると取り沙汰され、この対策として、現在では乾式キルンのNOx排出基準が制定されている。
【0005】
セメント生産工場では、このNOx排出基準を満たすために、各種のNOx低減方法を採用している。
例えば、その一つに乾式キルンの窯尻部へアンモニアを噴霧し、このアンモニアの脱硝作用によりNOxを低減する方法が知られている。ところが、この方法では、噴霧用のアンモニアを別途多量に購入しなければならず、コスト高になるという経済的な問題点があった。
【0006】
そこで、発明者らは、上述した乾燥、脱臭などの前処理を施して焼却している有機汚泥に着目し、この有機汚泥中に含まれるアンモニアを利用して、経済的に、この焼成時の排ガス中のNOxを低減可能な汚泥処理設備を開発するに至った。
【0007】
【発明の目的】
この発明の目的は、低コストで効率的な有機汚泥の最終処分と、経済的なNOx低減処理とを同時に満足できる汚泥処理設備を提供することにある。また、この発明の別の目的は、脱臭性に優れた汚泥処理設備を提供することにある。さらに、この発明の目的は、排ガス中のNOxの脱硝率を大きくできる汚泥処理設備を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、アンモニアを含む有機汚泥を、セメント製造プラントの焼成工程に用いられる、セメント原料仮焼用のプレヒーターの下部から上記セメント原料焼成用の乾式セメントキルンの窯尻部までの間に導入する汚泥処理設備であって、その出入口に密閉扉が屋根の軒下から吊下された汚泥貯留用建屋と、汚泥投入口に密閉蓋が設けられるとともに、上記汚泥貯留用建屋内に配置され、アンモニアを含む有機汚泥を貯留する貯留タンクと、上記貯留タンクと、上記プレヒーターの下部から上記セメント原料焼成用の乾式セメントキルンの窯尻部までの間とを連結する汚泥導入管と、上記貯留タンクの下部に設けられた切り出しコンベアと、上記汚泥貯留用建屋の内部であって、上記切り出しコンベアの下流に設けられた供給コンベアと、上記汚泥貯留用建屋の内部に配設され、上記供給コンベアから投下された有機汚泥を上記汚泥導入管を通して圧送するスラリーポンプと、上記汚泥導入管の汚泥導出側の端部に設けられて、放射外方から管内に圧縮空気を吹き込むことにより、上記有機汚泥を1〜6kgf/cm 管端より噴出する汚泥分散装置とを有するとともに、上記汚泥貯留用建屋の屋根には、プレヒータ内の仮焼時に生じるガスを吸引するファンの吸引力により、上記汚泥貯留用建屋内の悪臭を導入するタンク側ガス排出路が設けられた汚泥処理設備である。
【0009】
ここでいう有機汚泥としては、アンモニアを含む例えば下水汚泥、活性汚泥、浚渫汚泥などが挙げられる。
また、汚泥導入装置としては、例えば各種のポンプ類を有するパイプ圧送構造体などが挙げられる。その他にも、例えばベルトコンベア、スクリュコンベアなどの各種コンベア類などが挙げられる。すなわち、要は、有機汚泥を円滑に移送できる構造であれば、どのような形式の装置でもよい。
【0010】
乾式キルンへの有機汚泥の添加量には特に制限がないものの、通常、セメント原料の品質や使用量、焼成温度などの各種処理条件により適宜決定される。ただし、既存の乾式キルンに、その運転条件を特に変更することなく有機汚泥を投入できる量が好ましい。
例えば、セメントクリンカー生産量が90〜100t/hの乾式キルンを用いた場合、有機汚泥の添加量は0〜10.0t/hとし、製造されるセメントクリンカの重量に対して0〜1/10程度の有機汚泥を投入するのが好ましい。セメント原料に対する有機汚泥の添加量が10.0t/hを超えると、汚泥からの水分によってキルンでの焼成が不安定になり、セメントクリンカの品質に悪影響を及ぼすおそれが大きくなるからである。
【0011】
また、ここでいうプレヒーターの下部から乾式セメントキルンの窯尻部までの間(以下、キルン窯尻側という場合がある)とは、プレヒーターの下部域や、乾式キルンの窯尻部域に限らず、両者の連結部分でもよい。なお、プレヒーターの下部域と、乾式キルンの窯尻部域との両方に、有機汚泥を導入してもよい。
【0012】
貯留タンクの密閉蓋や、汚泥貯留用建屋の密閉扉は、上下左右へスライドしたり、任意方向へ回動したりして開閉するもの、または蛇腹式で伸縮開閉するものなど、どのような開閉構造の蓋または扉でもよい。
【0013】
上記汚泥分散装置は、上記有機汚泥を上記汚泥導入管の管端より1〜6kgf/cm で噴出する。
乾式キルン内への有機汚泥の噴出圧は、乾式キルンの大きさや有機汚泥の流動性などにより上記範囲内で適宜決定される。
【0014】
【作用】
請求項1に記載の発明にあっては、汚泥導入装置により貯留タンク内の有機汚泥を、プレヒーターの下部からセメント原料焼成用の乾式セメントキルンの窯尻部までの間に導入し、乾式セメントキルン内で、有機汚泥と、プレヒーターからの仮焼後のセメント原料とを混合しながら焼成する。このように、有機汚泥の導入箇所をキルン窯尻側としたので、汚泥は、キルン燃焼排ガスにより十分に乾燥され、セメント原料との間での反応時間を十分にとって焼成される。換言すると、セメントクリンカ中に汚泥の粘土分を十分に取り込むことができるのである。
【0015】
セメント原料の焼成時には、NOxを含む排ガスが多量に発生する。ところが。この発明では、発生したNOxが有機汚泥に含まれるアンモニアの脱硝作用によって還元され、低減される。その反応を次式に示す。
2NH+1/2O →2NH+H
NH +NO→N+H
この式から分かるように、アンモニアを含む不要な廃棄物である有機汚泥を、乾式セメントキルン内のセメント原料に添加することで、焼成時に発生する排ガス中のNOxを経済的に低減処理できる。
【0016】
一方、これと同時に、含水率が高く、悪臭を放つ有機汚泥側にも利点がある。すなわち、従来は、焼却処分する前に、脱臭装置により脱臭しながら乾燥機で乾燥したり、添加剤添加といった前処理を施していた。
しかし、この発明では、プレヒーターによる仮焼時の熱や、乾式キルンによる焼成時の熱で有機汚泥中の水分が蒸発してしまう。しかも、有機汚泥に含まれる臭いの強いアンモニアはNOxの脱硝時に分解され、さらに添加物も不要であることから、設備コストおよびランニングコストの何れも安価となり、かつ効率的に有機汚泥を最終処分できる。
【0017】
また、例えば有機汚泥のキルン窯尻側への導入箇所を、プレヒーターの下部とすれば、プレヒーターによるセメント原料の仮焼時の熱によって、予め有機汚泥に含まれる水分の大半を除去し、乾式キルンへ送り込める。これにより、NOx の発生量が多く、比較的多量の有機汚泥が添加された場合でも、乾式キルンの通常運転には、さほど影響がない。
【0018】
例えば有機汚泥を積んだトラックは、汚泥貯留用建屋の開放された密閉扉を通り、その後、貯留タンク付近で停止して、積み込まれた有機汚泥を、密閉蓋が開放された汚泥投入口から貯留タンク内へ投入する。次いで、汚泥投入口の密閉蓋や汚泥貯留用建屋の密閉扉は、トラックが去った後に閉じて、貯留タンクおよび汚泥貯留用建屋を密閉する。
このように、貯留される有機汚泥は、その水面から放たれる悪臭が、貯留タンクの密閉蓋と、汚泥貯留用建屋の密閉扉という二重構造により、外部へ漏れ難くなっている。これにより、汚泥処理設備が脱臭性に優れたものとなる。
【0019】
また、請求項1に記載の発明にあっては、スラリーポンプにより、貯留タンク内の有機汚泥が、汚泥導入管からキルン窯尻側へ導入される際、有機汚泥は、汚泥分散装置の圧縮空気によりキルン窯尻側の内部へ噴き出される。
具体的には、汚泥導入管の管端部において、汚泥分散装置により放射外方から管内に圧縮空気が吹き込まれ、この空圧により管端部内の有機汚泥が、キルン窯尻側の内部へ細かく分散しながら噴出される。
【0020】
この分散によって、有機汚泥に含まれるアンモニアと排ガスとの接触面積が大きくなる。したがって、同量の有機汚泥を添加しても、そのまま乾式キルンに流し込む場合に比べて、排ガス中のNOxの脱硝率が良くなる。
このときの有機汚泥の噴出圧力は、1〜6kgf/cm 、特に2〜3kgf/cm が好ましく、1kgf/cm 未満では風速が小さくて汚泥の分散が悪くなり、また6kgf/cm を超えると汚泥を吹き飛ばしてしまってその分散が悪くなるからである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1はこの発明の一実施例に係る汚泥処理設備が外設されたセメント焼成設備の概略正面図、図2は汚泥処理設備を構成する汚泥分散装置の拡大断面図である。
図1において、Aは一実施例に係る汚泥処理設備であり、この汚泥処理設備Aはセメント製造工場のセメント焼成設備1にライン連結されることにより、セメント原料aの焼成時の熱を利用して有機汚泥bを焼却する。まず、セメント焼成設備1を説明する。
セメント焼成設備1は、プレヒーター2内で仮焼されたセメント原料aを、乾式セメントキルン4内で焼成してセメントクリンカa′を中間製造する設備である。なお、ここで用いられる乾式セメントキルン4は、90〜100t/hでセメントクリンカa′を生産するものとする。
【0022】
プレヒーター2は、図外の原料ミルにより粉砕されたセメント原料aを、下流の乾式セメントキルン4により焼成し易いように、所定温度まで予熱するものである。プレヒーター2は、多数のサイクロン2aを、数階建ての鉄骨架台2bに搭載して設けられている。また、最上段のサイクロン2aには、ファン20を有して仮焼時の生じたガスを図外のガス処理設備へ導くガス排出系21が接続されている。
【0023】
乾式セメントキルン4は、若干下流側へ下方傾斜した横向き円筒状のキルンシェル4aを有している。キルンシェル4aの内周面には、耐火物が張られている。
このキルンシェル4aを周方向へ回転させながら、重油や微粉石炭を燃料にしてバーナー4bで加熱することで、プレヒーター2からのセメント原料aを焼成し、セメントクリンカa′を中間製造する。その後、セメントクリンカa′は、乾式セメントキルン4の下流部に連結されたクリンカクーラー4cにより冷却され、仕上げ工程へ送られる。次に、図1、図2を参照して、上記汚泥処理設備Aを説明する。
【0024】
図1に示すように、汚泥処理設備Aは、有機汚泥bの貯留タンク5と、このタンク5内の有機汚泥bを、乾式セメントキルン4の窯尻部4dに導入する汚泥導入装置6とを備えている。
貯留タンク5は、容積100mのタンクであり、上部にある汚泥投入口5aには、上下方向へ回動可能な密閉蓋5bを有している。
貯留タンク5は、その下部が土中に埋設された状態で、汚泥貯留用建屋7の屋内に配置されている。汚泥貯留用建屋7の出入口7aには、屋根の軒下から蛇腹式の密閉扉9が伸縮可能に吊下されている。また、屋根の中央部には、上記ガス排出系21のガス排出路21aに一端部が連結されたタンク側ガス排出路7bの端部が連結されている。次に、図1および図2を参照して汚泥導入装置6を詳細に説明する。
【0025】
図1に示すように、汚泥導入装置6は、貯留タンク5の下部に設けられて、タンク内の有機汚泥bを所定量ずつ連続的に切り出すスクリュー式の切り出しコンベア10を有している。切り出しコンベア10の下流には、短尺なスクリュー式の供給コンベア11が下方配置されている。
供給コンベア11から投下された有機汚泥bは、汚泥導入管12の他端部に連結されたピストン型のスラリーポンプ13(その他にもスネークポンプでもよい)が受け取るようになっている。汚泥導入管12は、貯留タンク5と乾式セメントキルン4の窯尻部4dとを連結する管体で構成されている。スラリーポンプ13によりこの汚泥導入管12を通って有機汚泥bが圧送される。
なお、これらの構成部品10、11、13は、蛇腹式の密閉扉9によって密閉できる汚泥貯留用建屋7の内部に配置されている。これは、このような有機汚泥bの供給系が、系外へ悪臭を漏らす虞れがある開放系であっても、汚泥貯留用建屋7の屋外へは、悪臭を漏らさないためである。
【0026】
図2に示すように、汚泥導入管12の汚泥導出側の端部には、放射外方から管内に圧縮空気cを吹き込むことにより、有機汚泥bを管端から窯尻部4d内へ噴出する汚泥分散装置15が設けられている。
汚泥分散装置15は、汚泥導入管12の汚泥導出側の端部に外嵌された空気供給路形成用の円筒ジャケット16を有している。汚泥導入管12の先端近くには、各々の孔が先端へ向かって斜めに穿孔された圧縮空気cの噴出孔17が、放射状に8個形成されている。なお、噴出孔17は、必ずしも先端へ向かって斜めに穿孔する必要はなく、汚泥導入管12の軸線方向に対して垂直に穿孔してもよい。また、噴出孔17の形成個数も、8個に限らなくても、例えば6個、10個など任意個数でもよい。
【0027】
次に、これらの汚泥処理設備Aおよびセメント焼成設備1の作動を説明する。
予めトラック8により貯留タンク5に有機汚泥bを投入しておく。すなわち、トラック8は、汚泥貯留用建屋7の開放された密閉扉9を通り、その後、貯留タンク5の近くで停止し、密閉蓋5bが開いた汚泥投入口5aから貯留タンク5内へ有機汚泥bを投入する。
トラック8の退去後は、密閉蓋5bおよび密閉扉9とが閉まる。トラック8による有機汚泥bのタンク投入時、この汚泥貯留用建屋7の屋内に漏れた悪臭は、ファン20の吸引力により、タンク側ガス排出路7bからガス排出路21aへ吸引され、その後、図外のガス処理設備により処理される。
このように、密閉蓋5bと密閉扉9との二重構造により、取り扱われる有機汚泥bを密封するようにしたので、その悪臭が外部へ漏れ難い。これにより、脱臭性に優れた汚泥処理設備Aが得られる。
【0028】
次いで、セメント原料aは、プレヒーター2の各サイクロン2aを流下中に仮焼される。その後、セメント原料aは、乾式セメントキルン4の窯尻部4dへ流れ込み、バーナー4bの熱により焼成されて、セメントクリンカa′となる。
この際、乾式セメントキルン4の窯尻部4d内には、汚泥タンク5内の有機汚泥bが、汚泥導入装置6のスラリーポンプ13により、汚泥導入管12を介して4t/hで流し込まれる。
【0029】
ここで、具体的な有機汚泥bの窯尻部4d内への導入を説明する。汚泥タンク5内の有機汚泥bは、切り出しコンベア10、供給コンベア11からスラリーポンプ13に流れ込む。その後、スラリーポンプ13により汚泥導入管12を通過して窯尻部4dへと導入される。
一方、圧縮空気cは、汚泥導入管12に外嵌された円筒ジャケット16を通って、放射外方から合計8個の噴出孔17を介して汚泥導入管12の管内に吹き込まれる。
したがって、この吹き込まれた圧縮空気cにより、汚泥導入管12の汚泥導出側の端部に達した有機汚泥bが3kgf/cm の噴出圧で、窯尻部4d内に分散状態で噴出される。
【0030】
こうして噴出された有機汚泥bは、従来のように、予め有機汚泥bに、高いコストがかかる脱臭、乾燥、添加物添加といった前処理を施さなくても、セメント原料焼成時のバーナー熱により、経済的に焼却できる。
一方、乾式セメントキルン4内で発生した排ガス中のNOxは、有機汚泥b中のアンモニアの脱硝作用による還元により減少するので、低コストで効率的な有機汚泥bの最終処分を、有機汚泥bの焼却と同時に行なうことができる。
さらに、この汚泥導入管12からの噴出によって、有機汚泥bが窯尻部4dまたは乾式セメントキルン4の全域に分散される。これにより、有機汚泥bに含まれるアンモニアと、乾式セメントキルン4内で発生した排ガスとの接触面積が大きくなる。したがって、同量の有機汚泥aを添加しても、そのまま乾式セメントキルン4に流し込む場合に比べて、排ガス中のNOxの脱硝率が良くなる。
また、この有機汚泥bは無償若しくは安価な廃棄物であり、しかもNOx低減用の付帯設備も簡易であるので、NOxの低減処理の経済性を向上できる。
【0031】
ここで、この発明をより具体的に説明するために、従来技術と比較してNOx 低減の実験を行なった際のデータを表1に示す。
なお、乾式セメントキルンとしては、セメントクリンカ生産量100t/hを採用し、下水汚泥である有機汚泥を(1)添加しない(従来技術に該当)、(2)4t/hで添加する(上記実施例ではないが本発明に該当)、(3)4t/hで添加し、かつ3kgf/cmの圧縮空気により窯尻部内へ噴き出す(上記実施例に該当)という点だけを異ならせ、残りは同じ条件で、それぞれセメントクリンカを得た。
【0032】
【表1】
Figure 0003841316
【0033】
表1から明らかなように、排ガス中のNOxは、有機汚泥を添加しない場合より添加した方が約26%減少した。さらに、これに圧縮空気を加えた場合では有機汚泥を添加しない場合に比べて約61%にまで減少した。もちろん、添加される有機汚泥は下水汚泥であるので、良好な経済性も同時に得られた。
【0034】
【発明の効果】
この発明によれば、プレヒーターの下部から乾式セメントキルンの窯尻部までの間に、アンモニアを含む廃棄物の有機汚泥を導入するようにしたので、アンモニアの脱硝作用によるNOx低減処理の経済性の向上と、乾燥や添加剤添加などの前処理がいらない有機汚泥の安価で効率的な最終処分と、を同時に満足できる。
特に、このように有機汚泥の悪臭が、貯留タンクの密閉蓋と、汚泥貯留用建屋の密閉扉との二重構造により外部へ漏れ難い構造となっているので、脱臭性に優れた汚泥処理設備が得られる。
さらに、このように有機汚泥を、圧縮空気によって、プレヒーターの下部から乾式セメントキルンの窯尻部までの間に噴出するようにしたので、排ガス中のNOxの脱硝率をより大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例に係る汚泥処理設備が外設されたセメント焼成設備の概略正面図である。
【図2】 この発明の一実施例に係る汚泥処理設備を構成する汚泥分散装置の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 セメント焼成設備、
2 プレヒーター、
4 乾式セメントキルン、
4d 窯尻部、
5 汚泥タンク、
5b 密閉蓋、
6 汚泥導入装置、
7 汚泥貯留用建屋、
9 密閉扉、
12 汚泥導入管、
13 スラリーポンプ、
15 汚泥分散装置、
A 汚泥処理設備、
a セメント原料、
a′ セメントクリンカ、
b 有機汚泥、
c 圧縮空気。

Claims (1)

  1. アンモニアを含む有機汚泥を、セメント製造プラントの焼成工程に用いられる、セメント原料仮焼用のプレヒーターの下部から上記セメント原料焼成用の乾式セメントキルンの窯尻部までの間に導入する汚泥処理設備であって、
    その出入口に密閉扉が屋根の軒下から吊下された汚泥貯留用建屋と、
    汚泥投入口に密閉蓋が設けられるとともに、上記汚泥貯留用建屋内に配置され、アンモニアを含む有機汚泥を貯留する貯留タンクと、
    上記貯留タンクと、上記プレヒーターの下部から上記セメント原料焼成用の乾式セメントキルンの窯尻部までの間とを連結する汚泥導入管と、
    上記貯留タンクの下部に設けられた切り出しコンベアと、
    上記汚泥貯留用建屋の内部であって、上記切り出しコンベアの下流に設けられた供給コンベアと、
    上記汚泥貯留用建屋の内部に配設され、上記供給コンベアから投下された有機汚泥を上記汚泥導入管を通して圧送するスラリーポンプと
    上記汚泥導入管の汚泥導出側の端部に設けられて、放射外方から管内に圧縮空気を吹き込むことにより、上記有機汚泥を1〜6kgf/cm 管端より噴出する汚泥分散装置とを有するとともに、
    上記汚泥貯留用建屋の屋根には、プレヒータ内の仮焼時に生じるガスを吸引するファンの吸引力により、上記汚泥貯留用建屋内の悪臭を導入するタンク側ガス排出路が設けられた汚泥処理設備。
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