JP3839890B2 - 紙状シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強力が高くて耐熱性に優れ、しかも誘電率の低い紙状シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、誘電率、誘電正接が小さく、高周波特性に優れたプリント配線板としてフッ素樹脂系繊維を用いた抄紙法による湿式不織布(シート)を基材とするものが提案されている。たとえば、特開昭63−69106号公報では、フッ素樹脂系繊維を用いた不織布を基材として用いるものが提案されている。
【0003】
また、特開平2−268486号公報では、フッ素樹脂系繊維とエンジニアリングプラスチック繊維とからなる混抄不織布が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開昭63−69106号公報に記載されたものは、フッ素樹脂系繊維製不織布を基材としても、シートの引張強度が弱く、伸びが大きく腰がなく、張力に耐えられないので、その後の樹脂加工がしにくいという欠点があった。
【0005】
一方、特開平2−268486号公報に記載されたフッ素樹脂系繊維とエンジニアリングプラスチック繊維とからなる混抄不織布は、単なる不織布であるためか、引張強度の低いものでしかなく、プリント配線板を製造しようとしても、やはり樹脂加工がしにくいという欠点があった。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、強力が高く耐熱性に優れ、プリント配線基板用に樹脂含浸したとしても、その後の誘電率の低いまま維持することができる優れた紙状シートを提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために次のような手段を採用する。すなわち、本発明の紙状シートは、フッ素樹脂系繊維およびエンジニアリングプラスチック繊維とからなる紙状シートであって、該シートの表面が該フッ素樹脂系繊維の融着によって平滑緻密化されており、かつ、 JIS L-1096 の 6.27.1 −A法により測定した通気度が30 cc / cm 2 / sec. 以下であることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、プリント配線基板用に樹脂含浸した後でも、誘電率の低さをそのまま維持することができる紙状シートを提供できないか鋭意検討したところ、フッ素樹脂系繊維と耐熱性エンジニアリングプラスチック繊維などのエンジニアリングプラスチック繊維という特定な組合わせで、しかも抄紙という手段でシート化したものが、繊維の均一分散性に優れた均質な紙状シートを提供することを究明したものである。さらに、プリント性、絵際の鮮明性に優れたものを提供するために、平滑化処理したところ、意外にも強力が高く、かつ、耐熱性にも優れた紙状シートを実現することができることを究明したものである。
【0009】
本発明の紙状シートは、フッ素樹脂系繊維とエンジニアリングプラスチック繊維とからなる。ここで、フッ素樹脂系繊維としては、ポリ四フッ化エチレン(以下、PTFEという)、四フッ化エチレン/エチレン共重合体、四フッ化エチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、四フッ化エチレン/6フッ化プロピレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、三フッ化塩化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン/エチレン共重合体、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂などを使用することができるが、特に誘電率の低いPTFEが好ましく使用される。
【0010】
フッ素樹脂系繊維は、引張強度の高い紙状シートを得るためには、繊維長が0.1〜10cmの範囲のものを使用するのが好ましい。
【0011】
かかるフッ素樹脂系繊維は、そのままでも使用することができるが、引張強度の高い紙状シートを得るためには、抄紙工程での分散性を上げることが望まれる。そのためには、フッ素樹脂系繊維の開繊率を、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95〜100%とする。ここでいう開繊率とは、10cmにカットした100本の繊維をマイクロスコープで観察することにより、次の計算式で求められる値である。すなわち、
開繊率(%)={(A−B)/A}×100
式中、A:糸本数、B:2本以上の単繊維からなる糸本数を示す。
【0012】
また、フッ素樹脂系繊維は、湿式不織布化工程での分散性をさらに向上させるためには、プラズマ処理するか、または、フッ素系界面活性剤などのノニオン系、アニオン系もしくは両性の耐熱性界面活性剤処理するなどの表面処理をしたものを使用するのが好ましい。これらの表面処理の中でも、特に両性のフッ素系界面活性剤処理を施したものが好ましく使用される。本発明の紙状シートの表面においては、該フッ素樹脂系繊維そのものが融着して、平滑化および緻密化を実現しているものである。すなわち、該フッ素樹脂系繊維がバインダー的機能を果たしているものである。
【0013】
つぎに、本発明の紙状シートに用いるエンジニアリングプラスチック繊維としては、全芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよび全芳香族ポリエステル(ポリアリレート繊維)などを使用することができる。かかる繊維は、一種或いは二種以上併用することができるが、これらの中でも誘電率が低く、耐熱性に優れた全芳香族ポリエステル繊維(ポリアリレート繊維)が好ましく使用される。
【0014】
また、エンジニアリングプラスチック繊維は、引張強度の高い紙状シートを得るためには、10g/d以上の繊維強度を有する繊維で、さらに繊維長が0.1〜10cmの範囲のものを使用するのが好ましい。
【0015】
本発明の紙状シートを構成する、フッ素樹脂系繊維とエンジニアリングプラスチック繊維の混用比(重量比)は、好ましくは10:90を越え、80:20以下とするのがよく、これを該フッ素樹脂系繊維の含有量でいうならば、好ましくは10重量%を越えて80重量%以下、さらに好ましくは50〜70重量%の範囲内で使用するのが、引張強度の高い紙状シートを得るためによい。フッ素樹脂系繊維の重量比が80%を越えるとシート強力が不満足となり、10%以下であると、接合力も小さく、かつ、樹脂含浸後の誘電率が不十分となる。
【0016】
本発明の紙状シートは、湿式不織布、つまり抄紙プロセスによって得ることができる。かかる紙状シートは、プリント配線基板を主たる用途とするものであり、この用途の場合、後加工として樹脂加工を施すものであり、この樹脂含浸後の誘電率を低く維持するものが好ましい。
【0017】
本発明の紙状シートは、該フッ素樹脂系繊維によって融着されて平滑緻密化されているが、その程度は、プリント配線基板を作るときのプリント性、つまり絵際の鮮明性の上から、該平滑面に斜光を当てたときに、好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは70%の光を反射する平滑性を有するものがよい。
【0018】
また、本発明の紙状シートは、該フッ素樹脂系繊維とエンジニアリングプラスチック繊維が、均一に分散されているものが、易滑製の上からも好ましく、たとえば野村商事株式会社製フォーメーションテスターFMT−2000(光透過型斑測定機)により、測定したときの地合指数が、好ましくは100以下、さらに好ましくは90以下を示すものが、優れた繊維分散性を示すものであり、かかる紙状シートが平滑性にもすぐれており、高い値のものは誘電率も高くなって好ましくないことを意味するものである。
【0019】
本発明の紙状シートは、好ましくは0.9kg/15mm以上、さらに好ましくは1.0kg/15mm以上の強力を有するものがよい。すなわち、強力が0.9kg/15mm未満の場合には、プリント配線基板を製造する際の樹脂加工の工程張力に耐えきれずシート切れを起こすことがある。
【0020】
本発明の紙状シートをプリント配線基板を製造する場合、用途により使用する紙状シートの枚数は異なるが、通常、複数の紙状シートを積層する。このとき、寸法安定性、均整性の面から該紙状シート1枚の厚さは、好ましくは50μm 以下のものを使用する。また、かかる紙状シートの目付は、好ましく20〜60g/m2 、より好ましくは30〜50g/m2 であるものが使用される。
【0021】
本発明では、低厚み(薄い)で高強力のシートを得るためには、上記したエンジニアリングプラスチック繊維およびフッ素繊維からなる混抄紙(不織布)の少なくとも一部の繊維を熱圧着(融着)させておくのが好ましい。かかる融着方法としては、軟化点以上の温度で融点以下の温度、好ましくは約150〜250℃、さらに好ましくは180〜220℃で、圧力5〜50kg/cm2 の範囲の条件がよい。
【0022】
かかる紙状シートは、低通気性であるものが水分の影響が少なくて好ましく、特にJI
S L-1096の6.27.1−A法で測定したときに、好ましくは30cc/cm2/sec.以下、さらに好ましくは25cc/cm2 /sec.以下という低通気度を有するシートであるものが、プリント配線基板としたときの耐久性に優れていてよい。
【0023】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
【0024】
実施例1
開繊率95%、平均繊維長6mm、平均繊度6.7デニールの表面がパーフルオロアルキルベタイン型両性界面活性剤S−131(旭硝子株式会社製)で処理されたPTFE繊維(東レ・ファインケミカル株式会社製フッ素繊維)と平均繊維長5mm、平均繊度2.5デニール、引張強度12g/dの全芳香族ポリエステル繊維とを重量比50:50で混合し、これを家庭用ミキサー(水1200ml)により攪拌分散した。この後、漉いてシート化し乾燥して混抄紙を得た。この混抄紙を、ステンレススチール性ロールの表面にペーパーを巻いたカレンダーによりロール温度200℃、圧力20kg/cm2 の条件で加熱加圧処理を行い、目付39g/m2 の紙状シートを製造した。このシートの野村商事株式会社製フォーメーションテスターFMT−2000(光透過型斑測定機)により、測定したときの地合指数は88であった。この紙状シートの他の物性を表1に示した。
【0025】
また、このシートを樹脂含浸させたものの誘電率も表1に示す通り低誘電率であった。この紙状シートは厚みが薄く、強力を必要とするプリント配線基板用シートとして有用なものであった。
【0026】
実施例2
PTFE繊維と全芳香族ポリエステル繊維の重量比を、60:40に変更した他は、実施例1と同一方法、同一条件を採用することにより得られたシートを、実施例1で用いたのと同一のロールで、ロール温度220℃、圧力30kg/cm2 として熱圧着を行い、目付47g/m2 の紙状シートを得た。この紙状シートの物性を表1に併せて示した。
【0027】
このシートを樹脂含浸させたものの誘電率も表1に併せて示した。この紙状シートも厚みが薄く、地合指数も76で、強力を必要とするプリント配線基板用シートとして有用なものであった。
【0028】
実施例3
PTFE繊維と全芳香族ポリエステル繊維の重量比を50:50に変更した他は、実施例1と同一方法、同一条件を採用することにより得られたシートを、実施例1で用いたのと同一のロールで、ロール温度180℃、圧力25kg/cm2 として、表裏を反転させ2回通しを行い、目付45g/m2 の緻密な紙状シートを得た。得られた紙状シートの物性は表1に併せて示した。このシートを樹脂含浸させたものの誘電率を表1に示した。この紙状シートもまた厚みが薄く、地合指数も83で、強力を必要とするプリント配線基板用シートとして有用なものであった。
【0029】
実施例4
開繊率95%、平均繊維長6mm、平均繊度6.7デニールの表面がフッ素系界面活性剤で処理されていないPTFE繊維(東レ・ファインケミカル株式会社製フッ素繊維)と実施例1で用いたのと同一の全芳香族ポリエステル繊維とを重量比70:30で混合した他は、実施例1と同一方法、同一条件で攪拌分散、熱圧着を行い、目付45g/m2の紙状シートを得た。このシートの地合指数は92で、その他の物性及びこのシートを樹脂含浸させたものの誘電率を表1に示した。
【0030】
実施例5
PTFE繊維と全芳香族ポリエステル繊維の重量比を15:85に変更した他は、実施例1と同一方法、同一条件を採用することにより目付43g/m2の紙状シートを得た。得られたシートの地合指数は96で、その他の物性及びこのシートを樹脂含浸させたものの誘電率を表1に示した。
【0031】
比較例1PTFE繊維と全芳香族ポリエステル繊維の重量比を90:10に変更した他は、実施例1と全く同一条件を採用することにより目付40g/m2の紙状シートを得た。このシートの地合指数は89で、その他の物性及びこのシートを樹脂含浸させたものの誘電率を表1に示した。表1に示したとおり低誘電率で厚みは薄いが明らかに強度が劣りプリント配線基板用への適用は不可能であった。
【0032】
【表1】
比較例2
PTFE繊維と全芳香族ポリエステル繊維の重量比を60:40に変更した他は、実施例1と同一方法、同一条件を採用することにより、得られたシートを実施例1で用いたのと同一のロールで、ロール温度300℃、圧力25kg/cm2 として熱圧着を行い紙状シートを得た。この紙状シートは圧密化されたものの、薄く潰れシートとしての保形性も有さないものであった。
【0033】
【発明の効果】
従来、フッ素繊維の本質的な特性から地合に優れた、低厚み、高強度のシートを得ることは困難とされていたが、本発明によれば、フッ素繊維の耐熱性、誘電特性等の優れた機能をそのままに、薄く高強度、低通気度のシートが得られ、誘電特性に優れ、また耐久性に優れたプリント配線基板用等に最適なものを提供することができる。
Claims (15)
- フッ素樹脂系繊維およびエンジニアリングプラスチック繊維とからなる紙状シートであって、該シートの表面が該フッ素樹脂系繊維の融着によって平滑緻密化されており、かつ、 JIS L-1096 の 6.27.1 −A法により測定した通気度が30 cc / cm 2 / sec. 以下であることを特徴とする紙状シート。
- 該フッ素樹脂系繊維が、フッ素樹脂系繊維とエンジニアリングプラスチック繊維との総量に対し10重量%を越えて80重量%以下の範囲内にある請求項1記載の紙状シート。
- 該フッ素樹脂系繊維が、フッ素樹脂系繊維とエンジニアリングプラスチック繊維との総量に対し50〜70重量%の範囲内にある請求項1記載の紙状シート。
- 該紙状シートが、50μm以下の厚みを有するものである請求項1記載の紙状シート。
- 該紙状シートが、30〜60g/m2 の範囲の目付を有するものである請求項1記載の紙状シート。
- 該エンジニアリングプラスチック繊維が、10g/d以上の強度を有するものである請求項1記載の紙状シート。
- 該エンジニアリングプラスチック繊維が、0.1〜10cmの範囲の繊維長を有するものである請求項1または3記載の紙状シート。
- 該フッ素樹脂系繊維が、該エンジニアリングプラスチック繊維の繊維長より長いものである請求項1記載の紙状シート。
- 該フッ素樹脂系繊維が、親水化処理されているものである請求項1〜3のいずれかに記載の紙状シート。
- 該親水化処理が、フッ素系界面活性剤による表面処理である請求項9記載の紙状シート。
- 該エンジニアリングプラスチック繊維が、全芳香族ポリエステル繊維である請求項1,6,7のいずれかに記載の紙状シート。
- 該フッ素樹脂系繊維が、ポリ四フッ化エチレン繊維である請求項1〜3および8〜11のいずれかに記載の紙状シート。
- 該紙状シートが、プリント配線基板用シートである請求項1〜12のいずれかに記載の紙状シート。
- 該紙状シートが、少なくとも二枚からなる積層シートである請求項13記載の紙状シート。
- フッ素樹脂系繊維およびエンジニアリングプラスチック繊維からなる不織布に対し、150〜250℃、圧力5〜50kg/cm2にて熱圧着させて請求項1記載の紙状シートを得る工程を有することを特徴とする紙状シートの製造方法。
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