JP3839523B2 - イオン接触ブリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はイオン接触ブリッジ、および、イオン接触ブリッジと共働するイオン性アナライトの医療診断用電位差試験要素に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療診断の分野では、水性液体の参照液体と水性液体の試料液体との間の電位差を与える電位差試験スライド要素を用いて特定のイオン性アナライトを試験することは一般的である。こうした試験要素は、フレームに離間して取り付けられた2つの実質的に同一のイオン選択性電極を特徴としている。イオン接触ブリッジは2つの液体アクセス開口部を有しており、該液体アクセス開口部の各々は、互いに一直線上に配設されており、かつ、前記イオン選択性電極の一方と液体を介して接触している。2つの液体をイオン接触ブリッジ内で確実に接触させるために、イオン接触ブリッジは、液体アクセス開口部から離反して他方の液体アクセス開口部の方向への流れを誘導するように構成されている。例えば、前記イオン接触ブリッジは繊維シート、例えばフレームに取り付けられた、または、埋設された紙とすることができる。フレームに取り付けられた構成が米国特許第4053381号に開示され、フレームに埋設された構成が米国特許第4273639号に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の例は十分に効果を上げているが、改良の余地がある。すなわち、液体が、イオン接触ブリッジ内で一方の液体アクセス開口部から他方の液体アクセス開口部の方向ではなく、あらゆる方向に輸送される問題がある。最良の状態でも、この方向性のない流れにより必要となる液体が増加する。最悪の場合、方向性のない流れにより短絡を生じることもある。
【0004】
その結果、液体があらゆる方向、すなわち、上記液体アクセス開口部の間を結ぶ直線からある角度以て離反する方向へ流れることを防止するために機械的手段が配設される。米国特許第4556474号に、上記直線方向から離反する流れを遮断するために同直線方向に平行に配設された堰の例が開示されている。こうした堰は必要とされる液体の量を低減することができるが、製造プロセスを複雑なものとする。
【0005】
本発明の以前には、本質的に望ましい方向へのみの流れの方向を許容し、液体の量を必要最小限とするイオン接触ブリッジが必要とされてきた。
本発明は、上記の必要性を解決するイオン接触ブリッジおよびこれを使用した試験要素を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2つの液体を橋絡してイオン交換接触を得るためのイオン接触ブリッジにおいて、前記ブリッジは、貫通する2つの開口部が形成された繊維シートを具備して成り、前記繊維が、概ね直交する2方向へのみの水性流れを許容し、かつ、直交する2方向の何れかから20°を越える角度の水性流れを抑制し、直交する2方向の一方が、前記2つの開口部と概ね一直線をなし、前記開口部内に置かれた水性液体が主として前記直交方向に流れ、前記繊維シートが、更に、概ね直交する経緯2方向に延びる繊維織物を具備し、経方向の繊維が水性導体材料を含み、経方向の繊維が非水性導体材料を含んで成るイオン接触ブリッジを要旨とする。
【0007】
本発明は、また、電位差試験要素において、フレームと、前記フレームに離間して取り付けられ2つの実質的に同一のイオン選択性電極と、前記電極間に延在する請求項1に記載のイオン接触ブリッジとを具備する電位差試験要素を要旨とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、電極、イオン接触ブリッジ、および、スライドフレームから成る特定の構造と、イオン接触ブリッジ内に設けられた特定の材料の織られた繊維とを有する好ましいスライド試験要素と関連させて本発明実施形態を説明する。更に、本発明はスライド試験要素の部品の特定の構成に拘らず、イオンにより橋絡させるイオン接触ブリッジが、2つの液体アクセス開口部と、該2つの液体アクセス開口部と概ね一直線となる方向への少なくとも1つの卓越する液体の流れを形成する限り適用することができる。本明細書において、「概ね一直線となる」との用語は、「上記2つの液体アクセス開口部の中心を結んだ直線から±20°の範囲内の直線に沿う」ことを意味する。
【0009】
本発明は、また、イオン接触ブリッジの繊維シートは2つの方向(経緯)にのみ織られているか否かによらず、また、ある方向への卓越した流れを生じさせるように選択された材料に拘らず有用である。
【0010】
スライド試験要素のために好ましい典型的な構造を示す。試験要素10(図1参照)内において、フレーム16に2つの固体のイオン選択性電極12、14が取り付けられ、上記電極における2つの流体液体アクセス開口部20、22の間のイオン移動を促進するために毛細管ブリッジ18が設けられている。毛細管ブリッジ18は、非多孔質の支持層と、上記両電極へのイオンの接近を許容する多孔質層と、好ましくは非水性導体の非多孔質性被覆上層とを含んで成る。イオン活性度が既知の参照溶液を一方の液体アクセス開口部に滴下し、他方の液体アクセス開口部に試験溶液を滴下すると、2つの溶液は薄い接触面で接触するまで多孔質層内に広がり、溶液間でイオン移動が可能となる。各溶液と、関連する電極との間での電位を測定し、試験溶液内のイオン活性度を表示するために電位計24が配設されている。
【0011】
同様に、有用な代替的構成(図2参照)は、基板ウェブ (base web) 38と間座ウェブ (spacer web) とから成り電気的に絶縁された取付フレーム32を有する試験要素30を特徴としている。2つの固体電極38、40が前記フレームに取り付けられ、かつ、互いに電気的に絶縁されている。内部イオン接触ブリッジが埋設されたカバーシート42が、液体アクセス開口部46、48に置かれた溶液間のイオン移動を促進する。液体アクセス開口部46、48は、電極38、40と液体とが接触できるように、電極38、40の領域までカバーシート42を貫通して設けられている。前記カバーシートには、また、2つの電気的液体アクセス開口部50、52が配設されている。
【0012】
図1、2に示した2つの例では、電極の構成およびその使用法は従来と同様であり、これ以上の説明を必要としない。
【0013】
図1または図2の例が従来技術により形成されるときは、イオン接触ブリッジは、全ての方向への流れを許容する繊維等の材料から成る多孔性シートを具備している。例えば、イオン接触ブリッジ44(図2参照)は、既述の米国特許第4237639号にて記載されたワットマン#2クローマシート (Whatman #2 chroma sheet) から形成されている。この種のイオン接触ブリッジが本発明により改良される。
【0014】
本発明によれば、図1また図2の例は図3に示すイオン接触ブリッジ100を具備している。更に詳細には、イオン接触ブリッジが、繊維シート、好ましくは織布シート102を具備している。織布シート102では、繊維が直交する2つの方向に延びている。繊維110、110′が経繊維であり、繊維112が繊維110に対して概ね垂直に延びる緯繊維である。多くのイオン接触ブリッジと同様に、下に設けられたイオン選択性電極(図示せず)と液体が接触できるように、液体アクセス開口部46、48は、シート102を貫通して形成されている。不可欠なことではないが、シート102は、ポリスチレンまたはポリエチレン等のプラスチックから成る層120に埋設してもよい。
【0015】
液体アクセス開口部46、48の各々は、繊維110′と繊維112の幾つかとを横切る側壁140を有している。言い換えれば、液体アクセス開口部46、48が、イオン接触ブリッジから抜き加工されたとき、側壁140において、繊維110′と繊維112の端部または側部が露出する。例えば、液体アクセス開口部46の側壁140には、繊維110′の端部144が図示されている。然しながら、単一方向の流れを形成するために、こうして繊維110′の露出された部分は、以下に説明するように、上記液体アクセス開口部に置かれた液体を多量に吸収、輸送できるように構成されている。(図3は概略図であり、実際には図示されている以上の繊維、例えば、25.4mm(1in)あたり20から40の繊維が配設される。また、1層よりも多い層が配設される。)
【0016】
繊維110′とは異なり、繊維110は側壁140とは交差していないので、輸送作用は発揮しない。
繊維110、110′は、液体アクセス開口部46、48の中心Cを結ぶ中心線130に対して概ね一直線となる方向に配設されている。すなわち、緯繊維110、110′に沿う直線は、中心線130からの逸脱が20°より小さい角度であり、最も好ましくは17°より小さい角度であり、2つの液体アクセス開口部と交差する繊維110′に沿う液体の流れを確実にしている。
【0017】
また、繊維110、110′は、水性導体材料を含んでおり、これに対して繊維112は非水性導体材料を含んでいる。本明細書において「水性導体」の用語は、繊維の長手方向に沿って水性液体を容易に輸送することを意味する。こうした特性を備えたあらゆる材料を使用することができる。好ましい水性導体材料は、ポリエステルおよびポリプロピレン等のはっ水材料から形成される中空コア糸はもとより、綿、アセテート、レーヨン、ポリエステルのマルチフィラメント糸または中空コア糸から成る群から選択される。ポリエステルおよびポリプロピレン等のはっ水材料から形成される中空コア糸は有用である。と言うのは、コア周囲の殻がはっ水性を備えているにも拘らず、コアを通じて水性液体を輸送するからである。好ましい非水性導体材料は、ポリエステル、ポリプロピレン、はっ水剤を塗布した水性導体材料から成る群から選択される単フィラメント糸またはマルチフィラメント糸である。好ましいはっ水剤は、蝋 (wax) 、ポリ(テトラフルオロエチレン)、シリコーン、3M社製「スコッチガード」(登録商標)等のフッ素化ビニル樹脂から成る群から選択される。非常に好ましい非水性導体材料は3M社製「スコッチガード」(登録商標)で塗布した綿糸である。
【0018】
こうして、側壁140が緯繊維112を横切っていても、水性液体、例えば、参照液体または患者の試料は、液体アクセス開口部46または48の何れかに置かれたとき、緯繊維112ではなく主として経繊維110′に沿って移動する。2つの液体が繊維110′に沿って移動して出会ったとき、イオン接触面が上記2つの液体アクセス開口部の間の何処か、例えば波面150に形成される。
【0019】
図4に示すように、本発明では緯方向の繊維112Aが経方向の繊維110Aと殆ど垂直であることは必要ではない。(既述した構成要素と同様の構成要素には添字Aを付して同じ参照番号で示されている。)こうして、繊維シート102Aは経方向の繊維110Aと、経方向の繊維110Aに対して少なくとも20°の角度α有する緯方向の繊維112Aとを有している。繊維112Aは、その非水性導体成分のために本質的に水性液体を輸送しない。然しながら、角度αが20°以下の場合には、緯繊維を液体輸送作用から除外する必要はない、実際上、こうした緯繊維は、一般的に経繊維から区別できなくなる。
【0020】
イオン接触ブリッジ100またはシート102Aから形成されるイオン接触ブリッジは、従来技術のイオン接触ブリッジの代わりに、図1または2の試験要素への独立の小片として用いることができる。図2の実施形態の場合、カバーシート42にプラスチック120を埋設することなく繊維シート102を直接的に埋設することができる。
【0021】
上記のイオン接触ブリッジを単一方向の流れ特性を有する電位差試験要素における要素とする必要はない。図5に、単一方向流れが他の独立した要素を含むように発展させた態様を示す。既述した構成要素と同様の構成要素には添字Bを付して同じ参照番号で示されている。
【0022】
カバーシート42Bは、2つの液体アクセス開口部46B、48Bと、イオン接触ブリッジ100Bとを有している。イオン接触ブリッジ100Bは既述の実施形態と同様にシート102Bを具備している。然しながら、シート102Bの下に埋設されたイオン選択性電極の代わりに(プラスチックに埋設することができる)開口部202、204を有するプラスチックシート200が挟持される。該プラスチックシートの下に第2の繊維シート210が設けられる。第2の繊維シート210は、ブリッジシート100Bと同様に水性導体繊維110Bと、非水性導体繊維112Bとを具備している。但し、第2の繊維シート210の繊維110Bは、シート110Bの繊維110Bの方向と概ね垂直方向に配設されている。また、シート100Bとは異なり、シート210は、プラスチックに埋設されない。と言うのは、以下に説明するように、シート210の下のプラスチックシートの開口部を十分に湿らせる必要があるからである。繊維110Bの方向によりシート210に到達した液体の流れが、シート210の端部分222に向かって、すなわち、シート110B内の卓越流の方向に対して垂直に、シート210の接点として作用する開口部220から離反する。端部分222は、下側に設けられたプラスチックシート300の開口部310の上方に配置される。開口部310から、シート300に取り付けられたイオン選択性電極38B、40Bへ液体を流下、輸送する。
【0023】
液体が流れの方向を変えてシート210からイオン選択性電極へ流れることを確実にするために、開口部310は米国特許第4271119号に説明されている特性を備えるように形成されている。例えば、米国特許第4271119号に記載されているように、開口部の長さLは幅Wよりも著しく長くなっている。更に、イオン選択性電極を湿らせることを補助するために、ワットマン (Whatman)濾紙等の濾紙材料(図示せず)を開口部310に挿入することができる。
【0024】
シート110Bの場合と同様に、シート210の繊維110Bは、また、接点開口部220の中心を結ぶ直線130Bに対して正確に直交する方向から20°より小さな角度を以て逸脱してもよい。
【0025】
この構成の利点は、イオン選択性電極において液体と接触する部分(影を付して示す部分)が空気と接触しない点である。空気に露出されるとは特定の環境下では欠点となり、本実施形態がそれを除去する。
【0026】
液体を伝達する繊維シートの各々が単一方向性を備えていなくともよい。すなわち、シート210、102Bを単一のシートに組み込んでもよい(図6、7参照)。既述した構成要素と同様の構成要素には添字Cを付して同じ参照番号で示されている。シート200、210が除去されシート110Bが以下のように変更される点を除いて、試験要素が図5の実施形態の場合と同様に構成される。図6に、中心線130Cに概ね直角な方向に水性液体の流れを作り、前記直角方向から20°以上の角度有する方向への流れを抑制するイオン接触ブリッジ100Cを図示する。「概ね直角」の用語は、真に直角方向から±10°の方向を意味する。
【0027】
イオン接触ブリッジ110Cのシート102Cはプラスチック内に埋設された状態で図示されている。シート102Cは、シートの2つの直角方向へ延設された繊維110C(経)シート110C′(緯)のみを有している(実際上は図示されている以上本数の繊維を有している。)。図7において、埋設された経繊維110Cは二点鎖線で図示さている。上記繊維の両者が水性導体となるように、はっ水性(非水性導体)の殻を有する中空コア繊維とする。開口部46C、48Cの側壁が横切れば、例えば、図7において300の開校端において上記繊維の両者は水性液体を輸送する。然しながら、直交する繊維110C、110C′の方向から20°以上逸脱する流れは抑制される。すなわち、繊維110C′は中心線130C(図6参照)から、20°までの角度α1 を以て逸脱してよく、かつ、繊維110Cは、直交する繊維110C′の方向500から20°までの角度α2 を以て逸脱してよい。
【0028】
開口部46C、48Cから下側のシート300の開口部310へ液体が繊維110Cに沿って輸送されることを確実にするために、開口部400、404がシート110Cに形成されており、その側壁410が繊維110Cの中空コアを横切っている。開口部400、404は、好ましくは、実質的に同じ下側の開口部310と寸法、形状を有し、かつ、高さ方向に並設されている。
【0029】
開口部46C、48Cにより横切られている繊維110C、110C′のみが液体を輸送することは明らかである。
この構成により、イオン接触ブリッジは液体の流れを実質的に必要な2つの方向にのみ輸送し、従って、すべての方向に液体が流れるイオン接触ブリッジと比較して必要な液体の体積が低減されることは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
本発明による、試験要素用のイオン接触ブリッジでは、一方が2つのアクセス開口部と概ね一直線となる、直交した方向以外に液体が流れないので、電位差試験のために必要とするイオン接触を形成するために必要な液体の量を低減する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のイオン交換ブリッジまたは本発明のイオン交換ブリッジを備えることのできるスライド試験要素の斜視図である。
【図2】従来のイオン交換ブリッジまたは本発明のイオン交換ブリッジを備えることのできる他のスライド試験要素の分解斜視図である。
【図3】図1または図2のスライド試験要素で使用する本発明の一実施形態によるイオン接触ブリッジの略示部分斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態の部分平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態の分解斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態の略示平面図である。
【図7】図6の矢視線VII-VII に沿う断面図である。
【符号の説明】
100…イオン接触ブリッジ
102…繊維シート
110…経繊維
112…緯繊維
46…液体アクセス開口部
48…液体アクセス開口部
Claims (2)
- 貫通する2つの開口部が形成された繊維シートを備え、2つの水性液体を橋絡してイオン交換接触を得るためのイオン接触ブリッジにおいて、
前記繊維シートは概ね直交する経緯2方向に延びる繊維を具備し、経方向の繊維は水性導体材料を含み、緯方向の繊維は非水性導体材料を含み、前記経方向は前記二つの開口部が並ぶ方向と略平行な方向であり、
前記繊維シートが、前記経方向で水性液体流れを許容し、前記経方向に対して少なくとも20゜傾斜した方向で水性液体流れを抑制することで、前記開口部に存する前記水性液体が、主として前記二つの開口部の間で前記経方向に流れ、前記傾斜した方向に流れないことを特徴とするイオン接触ブリッジ。 - 電位差試験要素において、
フレームと、
前記フレームに離間して取り付けられ2つの実質的に同一のイオン選択性電極と、
前記電極間に延在する請求項1に記載のイオン接触ブリッジとを具備する電位差試験要素。
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