JP3839414B2 - 共振素子及び集積回路装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルタ、レゾネータ等の共振素子及びその共振素子を用いた集積回路装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、高周波を用いた通信技術等の普及に伴い、高周波を用いた技術において使用される素子には、低コスト化が強く要請されている。かかる低コスト化の要請に応じるべく、半導体素子の集積化が推進されている。
【0003】
一方、高周波を用いた技術において必要不可欠な素子の一つとして、フィルタがある。更なる微細化、低コスト化を実現するためには、フィルタと半導体素子とを同一基板上に集積化することが求められている。
【0004】
なお、共振素子と半導体素子とが同一基板上に集積化されたデバイスの例としては、例えば特許文献1、2に開示されたものが知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−183428号公報
【特許文献2】
特許3315580号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、単にフィルタと半導体素子とを同一基板上に集積化した場合には、フィルタが半導体素子や配線の影響を受けてしまうため、所望の遮断特性や共振特性が得られにくい。しかも、遮断周波数における波長の数波長分の大きさになってしまい、微細化することが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、他の素子とともに同一基板上に集積化した場合であっても良好な特性が得られ、しかも微細化を実現しうる共振素子及びその共振素子を用いた集積回路装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、基板上に形成された信号線路と、前記信号線路の両側に形成された接地導体とを有し、少なくとも片側の前記接地導体に、前記信号線路側が開いた抜きパターンが形成されており、前記抜きパターンの長さは、共振周波数に基づき定められ、前記抜きパターンは、前記信号線路の延在する方向に対して交差する方向に延伸し、前記信号線路側が開いた第1の部分パターンと、前記第1の部分パターンの延伸方向に対して交差する方向に延伸し、前記第1の部分パターンと繋がっている第2の部分パターンとを有することを特徴とする共振素子により達成される。
【0009】
また、上記目的は、半導体基板上に形成された信号線路と、前記信号線路の両側に形成された接地導体とを有し、少なくとも片側の前記接地導体に、前記信号線路側が開いた抜きパターンが形成されており、前記抜きパターンの長さは、共振周波数に基づき定められ、前記抜きパターンは、前記信号線路の延在する方向に対して交差する方向に延伸し、前記信号線路側が開いた第1の部分パターンと、前記第1の部分パターンの延伸方向に対して交差する方向に延伸し、前記第1の部分パターンと繋がっている第2の部分パターンとを有する共振素子と、前記半導体基板上に形成された半導体素子とを有することを特徴とする集積回路装置により達成される。
【0010】
また、上記目的は、回路基板上に形成された信号線路と、前記信号線路の両側に形成された接地導体とを有し、少なくとも片側の前記接地導体に、前記信号線路側が開いた抜きパターンが形成されており、前記抜きパターンの長さは、共振周波数に基づき定められ、前記抜きパターンは、前記信号線路の延在する方向に対して交差する方向に延伸し、前記信号線路側が開いた第1の部分パターンと、前記第1の部分パターンの延伸方向に対して交差する方向に延伸し、前記第1の部分パターンと繋がっている第2の部分パターンとを有する共振素子と、前記回路基板上に実装された半導体素子とを有することを特徴とする集積回路装置により達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による共振素子及び集積回路装置について図1乃至図7を用いて説明する。図1は本実施形態による共振素子の構造を示す概略図、図2は本実施形態による集積回路装置の構造を示す概略図、図3は本実施形態による共振素子のフィルタ特性を示すグラフ、図4は本実施形態による共振素子のフィルタ特性のシミュレーション結果を示すグラフ、図5は接地導体に線状パターンを有する共振素子の構造を示す平面図、図6は本実施形態による共振素子のT字状パターンに発生する電界を示す平面図、図7は本実施形態による共振素子の製造方法を示す工程図である。
【0012】
まず、本実施形態による共振素子の構造について図1を用いて説明する。図1(a)は本実施形態による共振素子の構造を示す斜視図、図1(b)は本実施形態による共振素子の構造を示す平面図である。
【0013】
なお、本実施形態では、共振素子としてフィルタを例に説明するが、本発明は、フィルタのみならずレゾネータ等の他のあらゆる共振素子に適用することができる。
【0014】
図1(a)に示すように、シリコン基板10上に、絶縁層12が形成されている。
【0015】
絶縁層12上には、図1(a)及び図1(b)に示すように、導電層よりなる線状の信号線路18が形成されている。信号線路18両側の絶縁層12上には、接地導体20が形成されている。信号線路18と接地導体20との間には、間隙16a、16bが存在している。信号線路18と接地導体20とは、同一の導電層14を用いて形成されている。こうして、絶縁層12上に、コプレーナ型の伝送線路が形成されている。信号線路18の一端からRF信号が入力され、他端からは所定の周波数成分が遮断されたRF信号が出力される。
【0016】
接地導体20には、信号線路18側が開いた抜きパターンであるT字状パターン22a、22bが形成されている。T字状パターン22aとT字状パターン22bとは、信号線路を軸として、対称に形成されている。それぞれのT字状パターン22a、22bは、信号線路18の延在する方向に対して交差する方向に延伸し、信号線路18側が開いたT字の縦線に相当する部分パターン23aと、部分パターン23aの延伸方向に対して交差する方向に延伸し、部分パターン23aと繋がっているT字の横線に相当する部分パターン23bとから構成されている。遮断周波数での波長をλとした場合、T字状パターン23a、23bの長さは、例えば、共におよそλ/8となっている。これらT字状パターン22a、22bは、信号線路18との共振により、RF信号のうち所定の周波数成分を遮断し或いは透過するフィルタ特性を得るためのものである。本実施形態による共振素子は、フィルタ特性を得るためのT字状パターン22a、22bが十分に小さい。このため、遮断周波数における波長の数波長分の大きさとなっていた従来のフィルタに比して、十分に微細化することができる。
【0017】
こうして、本実施形態による共振素子が構成されている。
【0018】
次に、上述した本実施形態による共振素子とともに半導体素子を同一基板上に集積化してなる本実施形態による集積回路装置について図2を用いて説明する。図2(a)は本実施形態による集積回路装置の構造を示す断面図、図2(b)は本実施形態による集積回路装置の構造を示す平面図である。図2(b)は図2(a)のA−A′線断面図である。
【0019】
図2(a)に示すように、シリコン基板10上に、能動素子である半導体素子24が形成されている。シリコン基板10の下面には、パッケージを接地するための電極26が形成されている。
【0020】
シリコン基板10上には、絶縁層28が形成されている。絶縁層28には、半導体素子24間を電気的に接続等するための配線層30が埋め込まれている。
【0021】
絶縁層28上には、図2(b)に示すように、信号線路18と、T字状パターン22a、22bが形成された接地導体20とから構成される本実施形態による共振素子が形成されている。
【0022】
こうして、本実施形態による集積回路装置が構成されている。
【0023】
図1(b)及び図2(b)中に示すように、共振素子のT字状パターン22a、22bのそれぞれのT字の縦線の長さをL1、T字の横線の長さをL2で表した場合、共振素子の遮断周波数は、パターン長の総和L1+L2に反比例する。本実施形態では、遮断周波数は基本周波数の4分の1波長程度となっている。RF信号のうちの偶数次高調波に対しては、図1(b)中に示すポイントAは見かけ上オープンとなる。このため、信号線路18を伝搬する偶数次高調波は、T字状パターン22a、22bの影響を受けることなく透過する。一方、奇数次高調波に対しては、図1(b)中に示すポイントAは見かけ上オープンとはならない。このため、信号線路18を伝搬する奇数次高調波は、T字状パターン22a、22bと信号線路18との共振により遮断される。
【0024】
図3は、本実施形態による共振素子のフィルタ特性を示したものである。図3から分かるように、奇数次高調波は遮断され、偶数次高調波は透過している。
【0025】
以下、本実施形態において、フィルタ特性を得るためのパターンとして、T字状パターン22a、22bを形成している理由について図4乃至図6を用いて説明する。図4は、本実施形態による共振素子のフィルタとしての透過特性のシミュレーション結果を示すグラフである。このシミュレーション結果は、電磁界シミュレーションにより得られたものである。
【0026】
なお、図4のグラフでは、T字状パターンに代えて図5に示す線状パターンを形成した場合のシミュレーション結果のグラフも併せて示している。
【0027】
図5に示す共振素子では、接地導体20に、T字状パターン22a、22bに代えて、線状パターン32a、32bが形成されている。それぞれの線状パターン32a、32bの長さは、それぞれ、T字状パターン22a、22bのパターン長の総和L1+L2と等しくなっている。
【0028】
なお、図4中太線で示すグラフがT字状パターン22a、22bを形成した場合のシミュレーション結果を示し、細線で示すグラフが線パターン32a、32bを形成した場合のシミュレーション結果を示している。
【0029】
シミュレーション結果から明らかなように、T字状パターン22a、22bを形成した場合の方が、線状パターン32a、32bを形成した場合に比べて、遮断周波数帯域における周波数成分をより十分に遮断することができ、良好なフィルタ特性が得られることが分かる。
【0030】
T字状パターン22a、22bを用いた方が良好なフィルタ特性が得られるのは、以下のようなメカニズムによるものであると考えられる。
【0031】
信号線路18にRF信号が入力されると、図6に示すように、遮断周波数付近では、T字状パターン22a、22bのエッジに沿って接地導体20に図中矢印で示すように電流が流れる。この電流は、接地導体20のT字状パターン22a、22bのエッジで生じている電位差によるものである。
【0032】
そして接地導体20のT字状パターン22a、22bのエッジに発生した電流により、T字状パターン22a、22bに図中矢印で示すように電界が発生する。
【0033】
しかし、T字状パターン22a、22bに発生した電界は、図6に示すように、部分的に逆方向のものとなる。この結果、T字状パターン22a、22bに発生した電界は部分的に相殺される。このため、放射が発生し難くなり、放射損が低減される。
【0034】
一方、線状パターン32a、32bの場合、T字状パターン22a、22bの場合のように発生する電界が部分的に相殺されることはない。このため、T字状パターン22a、22bの場合と比較して、放射損が大きくなっていると考えられる。
【0035】
以上のことから、T字状パターン22a、22bの場合の方が、線状パターン32a、32bの場合よりも更に効果的に放射損を低く抑えることができ、この結果、遮断周波数帯域における周波数成分をより十分に遮断することができると考えられる。
【0036】
本実施形態による共振素子では、T字状パターン22a、22bを接地導体20に有しているため、線状パターン32a、32bが接地導体20に形成された場合に比べて、遮断周波数帯域における周波数成分をより十分に遮断することができ、良好なフィルタ特性を得ることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、T字状パターン22a、22bを形成しているが、線状パターン32a、32bを形成してもよい。線状パターン32a、32bの場合にも、ある程度、良好なフィルタ特性を得ることができる。但し、上述したように、T字状パターン22a、22bの方が有利である。
【0038】
本実施形態では、信号線路18にRF信号が入力されると、図2(a)に示すよう電界及び磁界が発生する。図2(a)では、電界及び磁界を、それぞれ実線及び点線で示している。図示するように、本実施形態による共振素子はコプレーナ型の伝送線路により構成されているため、電界及び磁界は、信号線路18と接地導体20とが形成されている層の近傍のみに分布する。このため、RF信号を信号線路18に入力した際に生じる電界及び磁界は、絶縁層28に埋め込まれた配線層30や半導体素子24の影響をほとんど受けない。したがって、本実施形態による共振素子は、絶縁層28に埋め込まれた配線層30や半導体素子24の影響を受けることなく、良好なフィルタ特性を得ることができる。
【0039】
このように、本実施形態による共振素子は、コプレーナ型の伝送線路により構成されており、しかも、接地導体20に抜きパターンが形成されていることに主たる特徴の一つがある。
【0040】
例えば基板下面に接地導体が形成されたマイクロストリップ型の伝送線路によりフィルタを構成した場合、基板上面の信号線路と基板下面の接地導体との間に電界及び磁界が発生する。このため、半導体素子とともにフィルタを同一基板上に集積化すると、フィルタ特性はともに集積された半導体素子の影響を大きく受けることになる。
【0041】
これに対し、本実施形態による共振素子では、コプレーナ型の伝送線路によりフィルタが構成されている。このため、図2(a)に示すように、信号線路18と接地導体20とが形成された層の近傍に電界及び磁界が発生する。したがって、本実施形態による共振素子は、半導体素子とともに同一基板上に集積化した場合であっても、半導体素子から影響を受け難い構造となっている。
【0042】
このため、本実施形態によれば、半導体素子とともに同一基板上にフィルタを集積化した場合であっても、良好なフィルタ特性を実現することができる。
【0043】
また、従来のフィルタは、遮断数波数における波長の数波長分の大きさになってしまっていた。
【0044】
これに対し、本実施形態では、コプレーナ型の伝送線路の接地導体20に抜きパターンを形成することによりフィルタを構成するので、極めて微細なフィルタを提供することができる。そのうえ、T字状パターン22a、22bを接地導体20に形成するだけでよいため、従来のフィルタと比較して、更なるサイズの微細化を図ることが可能である。
【0045】
また、本実施形態による共振素子は、フィルタ特性を得るためのパターンがT字状パターン22a、22bであることにも主たる特徴の一つがある。
【0046】
T字状パターン22a、22bは、前述の通り、RF信号の入力により発生する電界が部分的に相殺されるため、放射損を低減することができる。これにより、遮断周波数帯域での周波数成分を十分に遮断することができ、良好なフィルタ特性を得ることができる。
【0047】
次に、本実施形態による共振素子の製造方法について図7を用いて説明する。図7(a)、図7(c)、図7(e)、図7(g)、及び図7(i)は本実施形態による共振素子の製造方法を示す工程断面図、図7(b)、図7(d)、図7(f)、図7(h)、及び図7(j)は本実施形態による共振素子の製造方法を示す工程平面図である。なお、図7(a)、図7(c)、図7(e)、図7(g)、及び図7(i)は、それぞれ図7(b)、図7(d)、図7(f)、図7(h)、及び図7(j)のA−A′線断面図である。
【0048】
まず、シリコン基板10上に、例えばスピンコートされたポリイミドよりなる絶縁層12を形成する(図7(a)、図7(b)を参照)。
【0049】
次いで、絶縁層12上に、例えばスパッタ法により、例えばAuよりなる導電層14を形成する(図7(c)、図7(d)を参照)。
【0050】
次いで、導電層14上に、例えばスピンコート法により、レジスト膜34を形成する。続いて、露光及び現像工程によりレジスト膜34をパターニングする。これにより、導電層14のT字状パターン22a、22bの形成予定領域上及び信号線路18と接地導体20との間の間隙16a、16bとなる領域上のレジスト膜34を除去する(図7(e)、図7(f)を参照)。
【0051】
次いで、パターニングされたレジスト膜34をマスクとして、導電層14をエッチングする。こうして、導電層14に、絶縁層12が露出された間隙16、16b及びT字状パターン22a、22bが形成される(図7(g)、図7(h)を参照)。
【0052】
次いで、マスクとして用いたレジスト膜34を剥離する(図7(i)、図7(j)を参照)。
【0053】
こうして、本実施形態による共振素子が形成される。
【0054】
このように、本実施形態によれば、フィルタ特性の劣化を招くことなく共振素子と半導体素子とを同一基板上に集積化することができ、また、微細でしかも良好なフィルタ特性を有する共振素子を実現することができるので、システムの微小化及び低コスト化を実現することができる。
【0055】
(変形例)
本実施形態の変形例による共振素子について図8を用いて説明する。図8は本変形例による共振素子の構造を示す斜視図である。
【0056】
本変形例による共振素子は、信号線路18と接地導体20との間に段差が存在していることに主たる特徴がある。
【0057】
図8に示すように、基板36にメサ状の凸部38が形成されており、凸部38上面に導電層よりなる信号線路18が形成されている。凸部38両側の基板36上には、接地導体20が形成されている。凸部38上の信号線路18両側の接地導体20には、フィルタ特性等を得るためのT字状パターン22a、22bがそれぞれ形成されている。なお、図8では、基板36として絶縁性基板を用いており、絶縁層12が形成されていない場合を示している。
【0058】
図1に示す共振素子では、信号線路18と接地導体20との間に段差が存在していないため、信号線路18と接地導体20との間の間隙16a、16bの幅を適宜設定することにより特性インピーダンスの値が調整される。しかし、良好なフィルタ特性を得るためには間隙16a、16bの幅をあまり大きくすることはできず、特性インピーダンスの値の調整には制約が存在する。
【0059】
これに対し、本変形例による共振素子は、信号線路18と接地導体20との間隙の幅のみならず、凸部38の高さを適宜設定することによっても、特性インピーダンスの値を調整することができる。したがって、本変形例によれば、共振素子の使用目的等に応じて、高い自由度で、特性インピーダンスを所望の値に設定することができる。
【0060】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による共振素子について図9及び図10を用いて説明する。図9は本実施形態による共振素子の構造を示す平面図、図10は本実施形態による共振素子のフィルタ特性を示すグラフである。なお、第1実施形態による共振素子と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し或いは簡略にする。
【0061】
本実施形態による共振素子は、第1実施形態による共振素子において互いに対称に形成されていたT字状パターン22a、22bに代えて、互いに非対称なT字状パターン40a、40bが形成されていることに主たる特徴がある。
【0062】
すなわち、図9に示すように、信号線路18両側の接地導体20に、信号線路18を軸として、互いに非対称なサイズの異なるT字状パターン40a、40bが形成されている。
【0063】
基本波の波長をλとし、図9に示すように、図中左側のT字状パターン40aのT字の縦線の長さをL1L、T字の横線の長さをL2Lとし、図9中右側のT字状パターン40bのT字の縦線の長さをL1R、T字の横線の長さをL2Rとした場合、例えばL1L+L2L≒1/6λ、L1R+L2R≒1/3λとなっている。T字状パターン40a、40bの長さがそれぞれL1L+L2L≒1/6λ、L1R+L2R≒1/3λとなっているため、本実施形態による共振素子では、高調波のうちの3n次高調波を透過するようなフィルタ特性がえられる。
【0064】
図10は、本実施形態による共振素子のフィルタ特性を示したものである。図10から分かるように、本実施形態による共振素子では、高調波のうちの3n次高調波が透過される。
【0065】
このように、本実施形態によれば、接地導体20に形成するT字状パターン40a、40bのパターン長の総和をそれぞれ適宜設定することにより、所望の高調波を透過するフィルタ特性を実現することができる。
【0066】
なお、上記では、高調波のうちの3n次高調波を透過するフィルタ特性を有する場合を例に説明したが、例えばL1L+L2LをL1L+L2Lの4倍の長さとすることにより、高調波のうちの5n次高調波を透過するフィルタ特性を得ることもできる。このように一のT字状パターンのパターン長の総和を他のT字状パターンのパターン長の総和の整数倍とすることにより、高調波のうちの特定の高調波を透過するフィルタ特性を得ることができる。
【0067】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による共振素子について図11及び図12を用いて説明する。図11は本実施形態による共振素子の構造を示す平面図、図12は本実施形態による共振素子のフィルタ特性を示すグラフである。なお、第1実施形態による共振素子と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し或いは簡略にする。
【0068】
本実施形態による共振素子は、T字の横線と縦線との比率、大きさが異なる複数種類のT字状パターンが信号線路18に沿って配列されていることに主たる特徴がある。
【0069】
すなわち、図11に示すように、信号線路18両側の接地導体20には、信号線路18に沿って、複数組のT字状パターン42an、42bn(n=1〜10)が配列されている。各組のT字状パターン42an、42bnは、種々のT字の横線と縦線との比率、大きさを有している。T字状パターン42an、42bnは、上記と同様に、抜きパターンである。
【0070】
図12は、本実施形態による共振素子のフィルタ特性を示したものである。図12から分かるように、本実施形態による共振素子では、帯域幅の広いローパスフィルタが実現されている。
【0071】
このように、本実施形態によれば、種々のT字の横線と縦線との比率、大きさを有する複数組のT字状パターン42an、42bnを配列するので、広い遮断帯域幅を有するローパスフィルタを実現することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、10組のT字状パターンを形成する場合を例に説明したが、形成するT字状パターンは10組に限定されるものではない。また、形成するT字状パターンのT字の横線と縦線との比率、大きさも適宜設定することができる。要求されるフィルタ特性等に応じて、配列するT字状パターンの組数、T字の横線と縦線との比率、大きさを適宜設定することにより、所望の遮断帯域幅を有するフィルタ特性を得ることができる。
【0073】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による集積回路装置について図13を用いて説明する。図13は本実施形態による集積回路装置の構造を示す斜視図である。なお、第1実施形態による共振素子と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し或いは簡略にする。
【0074】
本実施形態による集積回路装置は、回路基板46に共振素子が形成されており、同一の回路基板46上に半導体素子48が実装されていることに主たる特徴がある。
【0075】
すなわち、図13に示すように、回路基板46に、線状の信号線路18と、接地導体20が形成されている。接地導体20には、T字状パターン22a、22bが形成されている。こうして、回路基板46上に共振素子であるフィルタが形成されている。共振素子が形成された領域は、図13において点線の楕円を用いて表されている。
【0076】
なお、回路基板46としては、例えばLTCC(Low Temperature Cofired Ceramics)基板等のあらゆる回路基板を用いることができる。
【0077】
回路基板46上には、例えばMMIC(Microwave Monolithic Integrated Circuit)チップ等の半導体素子48が実装されている。回路基板46上には電極パッド50が形成されており、電極パッド50と半導体素子48とは、ワイヤボンディング等により電気的に接続されている。
【0078】
上述のように共振素子が形成され、半導体素子48が実装された回路基板46は、パッケージ44に封入されている。
【0079】
このように、微細でしかも良好なフィルタ特性を得ることができる共振素子を回路基板46上に形成し、同一の回路基板46上に半導体素子48を実装してもよい。
【0080】
なお、本実施形態では、第1実施形態による共振素子を回路基板46上に形成する場合を例に説明したが、第2実施形態或いは第3実施形態による共振素子を回路基板46上に形成してもよい。
【0081】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態では、本発明をフィルタに適用する場合を例に説明したが、フィルタのほか、例えばレゾネータにも本発明を適用することができる。この場合も、微細化できるとともに良好な共振特性を得ることができ、また、半導体素子とともに集積化した場合にも、半導体素子から影響を受け難く、良好な共振特性を得ることができる。したがって、レゾネータと半導体素子とを同一基板上に形成する場合であっても、微細化及び低コスト化を実現することができる。
【0083】
また、上記実施形態では、シリコン基板を用いる場合を例に説明したが、基板は、シリコン基板に限定されるものではない。シリコン基板のほか、例えば、GaAs基板等を用いてもよい。
【0084】
また、上記では絶縁層上に信号線路や接地導体を形成する場合を例に説明したが、絶縁性基板を用いる場合には、絶縁性基板上に信号線路や接地導体を形成してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、接地導体20にT字状パターンを形成する場合を例に説明したが、接地導体20に形成するパターンは、T字状パターンに限定されるものではなく、信号線路18側が開いた抜きパターンであればよい。例えば、図14に示すように、T字状パターンに代えて、Y字状パターン52a、52bを接地導体20に形成してもよい。このようなY字状のパターンを用いた場合であっても、T字状パターンと同様に放射損を低減することができ、良好なフィルタ特性を得ることができる。
【0086】
また、上記実施形態では、信号線路18の両側の接地導体20に抜きパターンを形成する場合を例に説明したが、必ずしも両側の接地導体20に抜きパターンを形成する必要はない。少なくとも、信号線路18の片側の接地導体20に抜きパターンが形成されていればよい。
【0087】
また、上記実施形態では、共振素子を半導体素子とともに同一基板上に集積化する場合を例に説明したが、同一基板上に集積化する素子は半導体素子に限定されるものではない。共振素子と他のあらゆる素子とを同一基板上に集積化する場合に本発明を適用することができる。
【0088】
(付記1) 基板上に形成された信号線路と、前記信号線路の両側に形成された接地導体とを有し、少なくとも片側の前記接地導体に、前記信号線路側が開いた抜きパターンが形成されており、前記抜きパターンの長さは、共振周波数に基づき定められていることを特徴とする共振素子。
【0089】
(付記2) 付記1記載の共振素子において、前記抜きパターンは、前記信号線路の延在する方向に対して交差する方向に延伸し、前記信号線路側が開いた第1の部分パターンと、前記第1の部分パターンの延伸方向に対して交差する方向に延伸し、前記第1の部分パターンと繋がっている第2の部分パターンとを有することを特徴とする共振素子。
【0090】
(付記3) 付記2記載の共振素子において、前記抜きパターンは、T字状又はY字状の抜きパターンであることを特徴とする共振素子。
【0091】
(付記4) 付記1乃至3のいずれかに記載の共振素子において、前記抜きパターンは、前記信号線路の両側に形成されていることを特徴とする共振素子。
【0092】
(付記5) 付記4記載の共振素子において、前記信号線路に対して一側の一の前記抜きパターンと、前記信号線路に対して他側の他の前記抜きパターンとが、前記信号線路を軸として、対称に形成されていることを特徴とする共振素子。
【0093】
(付記6) 付記4記載の共振素子において、前記信号線路に対して一側の一の前記抜きパターンと、前記信号線路に対して他側の他の前記抜きパターンとが、前記信号線路を軸として、非対称に形成されていることを特徴とする共振素子。
【0094】
(付記7) 付記6記載の共振素子において、前記一の抜きパターンにおけるパターン長の総和は、前記他の抜きパターンにおけるパターン長の総和のほぼ整数倍であることを特徴とする共振素子。
【0095】
(付記8) 付記7記載の共振素子において、前記一の抜きパターンにおけるパターン長の総和は、前記他の抜きパターンにおけるパターン長の総和のほぼ2倍であることを特徴とする共振素子。
【0096】
(付記9) 付記1乃至8のいずれかに記載の共振素子において、前記信号線路と前記接地導体との間に段差が存在していることを特徴とする共振素子。
【0097】
(付記10) 付記9記載の共振素子において、前記基板には、メサ状の凸部が形成されており、前記信号線路は前記凸部上に形成され、前記接地導体は前記凸部の両側における前記基板上に形成されていることを特徴とする共振素子。
【0098】
(付記11) 付記1乃至10のいずれかに記載の共振素子において、複数種の前記抜きパターンが、前記信号線路に沿って配列されていることを特徴とする共振素子。
【0099】
(付記12) 半導体基板上に形成された信号線路と、前記信号線路の両側に形成された接地導体とを有し、少なくとも片側の前記接地導体に、前記信号線路側が開いた抜きパターンが形成されており、前記抜きパターンの長さは、共振周波数に基づき定められている共振素子と、前記半導体基板上に形成された半導体素子とを有することを特徴とする集積回路装置。
【0100】
(付記13) 回路基板上に形成された信号線路と、前記信号線路の両側に形成された接地導体とを有し、少なくとも片側の前記接地導体に、前記信号線路側が開いた抜きパターンが形成されており、前記抜きパターンの長さは、共振周波数に基づき定められている共振素子と、前記回路基板上に実装された半導体素子とを有することを特徴とする集積回路装置。
【0101】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、基板上に形成された信号線路と、信号線路の両側に形成された接地導体とを有する伝送線路の少なくとも片側の接地導体に、信号線路側が開いた抜きパターンを形成することによりことにより共振素子が構成されているため、他の素子とともに同一基板上に集積化した場合であっても良好な特性が得られ、しかも微細化を実現することができる。
【0102】
また、本発明によれば、信号線路の延在する方向に対して交差する方向に延伸し、信号線路側が開いた第1の部分パターンと、第1の部分パターンの延伸方向に対して交差する方向に延伸し、第1の部分パターンと繋がっている第2の部分パターンとを有する抜きパターンが接地導体に形成されているので、更に良好な特性を得るとともに微細化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による共振素子の構造を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態による集積回路装置の構造を示す概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態による共振素子のフィルタ特性を示すグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態による共振素子のフィルタ特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】接地導体にストレート形状のパターンを有する共振素子の構造を示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による共振素子におけるT字状パターンに発生する電界を示す平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による共振素子の製造方法を示す工程図である。
【図8】本発明の第1実施形態の変形例による共振素子の構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態による共振素子の構造を示す概略図である。
【図10】本発明の第2実施形態による共振素子のフィルタ特性を示すグラフである。
【図11】本発明の第3実施形態による共振素子の構造を示す概略図である。
【図12】本発明の第3実施形態による共振素子のフィルタ特性を示すグラフである。
【図13】本発明の第4実施形態による集積回路装置の構造を示す斜視図である。
【図14】本発明の変形例による共振素子の構造を示す平面図である。
【符号の説明】
10…シリコン基板
12…絶縁層
14…導電層
16a、16b…間隙
18…信号線路
20…接地導体
22a、22b…T字状パターン
23a、23b…部分パターン
24…半導体素子
26…電極
28…絶縁層
30…配線層
32a、32b…線状パターン
34…レジスト膜
36…基板
38…凸部
40a、40b…T字状パターン
42an、42bn(n=1〜10)…T字状パターン
44…パッケージ
46…回路基板
48…半導体素子
50…電極パッド
52a、52b…Y字状パターン

Claims (9)

  1. 基板上に形成された信号線路と、
    前記信号線路の両側に形成された接地導体とを有し、
    少なくとも片側の前記接地導体に、前記信号線路側が開いた抜きパターンが形成されており、
    前記抜きパターンの長さは、共振周波数に基づき定められ
    前記抜きパターンは、前記信号線路の延在する方向に対して交差する方向に延伸し、前記信号線路側が開いた第1の部分パターンと、前記第1の部分パターンの延伸方向に対して交差する方向に延伸し、前記第1の部分パターンと繋がっている第2の部分パターンとを有する
    ことを特徴とする共振素子。
  2. 請求項1記載の共振素子において、
    前記抜きパターンは、前記信号線路の両側に形成されている
    ことを特徴とする共振素子。
  3. 請求項記載の共振素子において、
    前記信号線路に対して一側の一の前記抜きパターンと、前記信号線路に対して他側の他の前記抜きパターンとが、前記信号線路を軸として、対称に形成されている
    ことを特徴とする共振素子。
  4. 請求項記載の共振素子において、
    前記信号線路に対して一側の一の前記抜きパターンと、前記信号線路に対して他側の他の前記抜きパターンとが、前記信号線路を軸として、非対称に形成されている
    ことを特徴とする共振素子。
  5. 請求項記載の共振素子において、
    前記一の抜きパターンにおけるパターン長の総和は、前記他の抜きパターンにおけるパターン長の総和のほぼ整数倍である
    ことを特徴とする共振素子。
  6. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の共振素子において、
    前記信号線路と前記接地導体との間に段差が存在している
    ことを特徴とする共振素子。
  7. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の共振素子において、
    複数種の前記抜きパターンが、前記信号線路に沿って配列されている
    ことを特徴とする共振素子。
  8. 半導体基板上に形成された信号線路と、前記信号線路の両側に形成された接地導体とを有し、少なくとも片側の前記接地導体に、前記信号線路側が開いた抜きパターンが形成されており、前記抜きパターンの長さは、共振周波数に基づき定められ、前記抜きパターンは、前記信号線路の延在する方向に対して交差する方向に延伸し、前記信号線路側が開いた第1の部分パターンと、前記第1の部分パターンの延伸方向に対して交差する方向に延伸し、前記第1の部分パターンと繋がっている第2の部分パターンとを有する共振素子と、
    前記半導体基板上に形成された半導体素子と
    を有することを特徴とする集積回路装置。
  9. 回路基板上に形成された信号線路と、前記信号線路の両側に形成された接地導体とを有し、少なくとも片側の前記接地導体に、前記信号線路側が開いた抜きパターンが形成されており、前記抜きパターンの長さは、共振周波数に基づき定められ、前記抜きパターンは、前記信号線路の延在する方向に対して交差する方向に延伸し、前記信号線路側が開いた第1の部分パターンと、前記第1の部分パターンの延伸方向に対して交差する方向に延伸し、前記第1の部分パターンと繋がっている第2の部分パターンとを有する共振素子と、
    前記回路基板上に実装された半導体素子と
    を有することを特徴とする集積回路装置。
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