JP3839385B2 - エマルジョン燃料用乳化剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエマルション燃料用乳化剤に関し、さらに詳しくは、軽油又は重油等の燃料油と水を乳化して得られるエマルション燃料を製造するための乳化剤、及び該乳化剤を使用して得られるエマルジョン燃料に関する。
【0002】
【従来の技術】
エマルション燃料とは水を軽油又は重油等の燃料油に乳化したもので、燃焼に伴い生成する窒素酸化物や煤塵を通常の燃料より低減できることが知られている。乳化するためには、通常、乳化剤が使用され、代表的な乳化剤としてはソルビトール、ソルビタン及びソルバイド等の多価アルコールの脂肪酸エステルやアルコールのアルキレンオキサイド付加物等のノニオン性界面活性剤またそれらの配合物等がある。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】
特開昭52−69909号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の上記多価アルコール脂肪酸エステルを用いた乳化剤は経時的にタール状の沈降物を生成し、タンク及びラインに沈着するという問題点がある。さらにこの乳化剤を用いたエマルジョン燃料は燃焼時に煤を多量に発生する恐れがあり、また、十分な乳化安定性がなく、経時的にエマルジョンが分離しやすいという問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、遊離の多価アルコール含量が少ない多価アルコール脂肪酸エステルが優れた乳化分散能を有し、乳化剤自体の経時安定性に優れることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ソルビトール、ソルビタン及びソルバイドからなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール(a)及び炭素数9〜25の脂肪族モノカルボン酸(b)とを、(a)1モルに対して(b)1.1〜3モルの反応モル比で反応させて、多価アルコール(a)と脂肪族モノカルボン酸(b)とのエステルを得た後、水洗分液により未反応の多価アルコール(a)を除去してエステル(A)を得る工程を含み、
遊離の多価アルコール(a)の含有量がエステル(A)に対して1質量%以下であるエマルジョン燃料用乳化剤の製造方法;並びに該製造方法で得られる乳化剤を含有してなるエマルジョン燃料である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明におけるエステル(A)は多価アルコール(a)と脂肪族モノカルボン酸(b)を公知の製造方法で脱水によりエステル化した後、未反応の(a)を水洗等により除去することで得ることができる。
多価アルコール(a)はソルビトール、ソルビタン(1,4−ソルビタン、3,6−ソルビタン、1,5−ソルビタン)、ソルバイド(1,4,3,6−ソルビド)からなる群から選ばれ、1種でも2種以上の混合物でもよい。好ましくは混合物であり、より好ましくはソルビタンが混合物の40質量%以上である。
【0007】
炭素数9〜25の脂肪族モノカルボン酸(b)としては(炭素数はカルボキシル基の炭素も含む)例えば、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸;ウンデシレン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸が挙げられる。これらの内、好ましくは炭素数14〜22の脂肪族モノカルボン酸であり、より好ましくは、炭素数16〜20の脂肪族モノカルボン酸である。炭素数が9未満であると金属が錆びやすくなり、25を超えると、粘度が高くなり、乳化分散性が悪くなる。
【0008】
該(a)と(b)の反応モル比は、(a)1モルに対して、(b)を好ましくは1.1〜3モル、より好ましくは1.2〜2モル、特に好ましくは1.3〜1.8モルである。
該(A)を製造する際に、(a)と(b)の合計量に対し好ましくは0.01〜1質量%の公知のエステル化触媒(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、塩酸、硫酸、三フッ化ホウ素等の酸性触媒等)を使用してもよい。
エステル化の反応温度は好ましくは150〜280℃、より好ましくは180〜260℃である。製造条件の一例としては、例えば、(a)と(b)及び水酸化ナトリウム水溶液(50質量%)を反応容器(ステンレス製オートクレーブ)に仕込み、反応温度150〜280℃で、脱水しながら2〜30時間反応させる。反応は全酸価(JIS K0070 3.1による。以下同様とする。)の値でチエックでき、この値が0まで下がるのが理想であるが、過剰のカルボン酸の量に応じて反応を続けて酸価を下げてから取り出し、水洗分液により、未反応の(a)を除去する方法等が挙げられるが、この条件に拘束はされない。
【0009】
(A)中の(a)の含有量は(A)に対して1質量%以下であり、好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。(a)の含有量が1質量%を超えると、タール状の沈降物が発生しやすくなる。
通常、エステル(A)はモノエステル、ジエステル、トリエステル等の混合物が生成するが、モノエステル及び/又はジエステルが好ましい。モノエステルとジエステルの混合の場合は、質量比で90/10〜10/90が好ましい。これらの生成比は(a)と(b)の上記の投入モル比によってコントロール出来る。
【0010】
さらに乳化剤中に下記一般式(1)で表される化合物(B)の1種又は2種以上の混合物を含有させることが好ましい。配合割合は任意であるが、乳化剤全量の内、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは15〜60%、特に好ましくは20〜40質量%である。
R1−[(OA)k−OH]x (1)
[式中、R1は炭素数8〜24の炭化水素基を有する1価アルコール又は多価アルコールの残基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは平均が1〜50となる0又は1以上の整数、xは1又は2〜6の整数]
【0011】
一般式(1)のR1は炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基を有する1価アルコール又は多価アルコール(d)から水酸基を除いた残基である。
R1のうち、炭素数8〜24の炭化水素基を有する1価アルコールの残基としては、直鎖又は分岐の以下のものが挙げられる。
(1)脂肪族鎖状炭化水素系1価アルコールの残基;アルキル基(オクチル、ノニル、デシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、セチル、ステアリル、ノナデシル、2−エチルヘキシル、2−エチルオクチル基等)、アルケニル基(オクテニル、デセニル、ドデセニル、トリデセニル、ペンタデセニル、オレイル、ガドレイル基等)及びアルカジエニル基(リノレイル基等);
(2)芳香環含有炭化水素系1価アルコールの残基;アラルキル基(フェニルノニル、フェニルオクチル基等)等;
(3)脂環基含有炭化水素系1価アルコールの残基;単環脂環基含有炭化水素基(エチルシクロヘキシル、プロピルシクロヘキシル、オクチルシクロヘキシル、ノニルシクロヘキシル、シクロヘキシルオクチル、シクロヘキシルノニル、シクロヘキシルビスメチレン、シクロヘキシルビスエチレン基等)及び多環脂環基含有炭化水素基(アダマンチル基等);
【0012】
R1のうち、炭素数8〜24の炭化水素基を有する多価アルコールの残基としては以下のものが挙げられる。
(4)脂肪族鎖状炭化水素系多価アルコールの残基;アルキレン基(オクタメチレン、ノナメチレン、ドデカメチレン基等)、アルケニレン基(オクタメチレニレン基等)。
(5)脂環基含有炭化水素系多価アルコールの残基;シクロヘキシルビスメチレン、シクロヘキシルビスエチレン基等;
(6)芳香環含有炭化水素系多価アルコールの残基;キシリレン基等:
【0013】
R1のうち、好ましいものは、炭素数8〜24の脂肪族炭化水素基を有する1価アルコールの残基であり、より好ましいものは、炭素数8〜24の脂肪族鎖状炭化水素基を有する1価アルコールの残基である。
一般式(1)中、Aは炭素数2以上、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4、特に好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基を表し、(OA)の部分は、炭素数2以上のアルキレンオキサイド(e)の付加により形成される。このようなアルキレンオキサイド(e)としては、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−又は2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド等が挙げられる。好ましくはEO及び/又はPOである。
一般式(1)中、kは(e)の付加モル数に相当し、平均が1〜50となる整数であり、好ましくは2〜40、より好ましくは2〜20である。kが50以下であると、乳化性能が得られる。
一般式(1)中のxは、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3である。
前記アルコール類(d)は、残基R1 を与えるものであり、炭素数8〜24の炭化水素基を有する1価アルコール又は多価アルコールである。
【0014】
(B)としては、工程が煩雑でないことから、(d)及び(e)から直接製造されたものであることが好ましい。ここで、「直接製造された」とは、上記付加物が、精留等により未反応アルコールや付加モル数の異なるものを分別する操作なしで、直接得られたものであることを意味する。但し、分別を目的としないで、簡単な操作で未反応アルキレンオキサイドや低沸点物をストリッピングしたものは分別操作に含まれない。
【0015】
一般式(1)で示されるポリエーテル(B)の製造法としては、(d)に触媒の存在下、好ましくは温度30〜180℃、好ましくは圧力0〜0.6MPaで(e)をランダム又はブロックで付加させて製造できる。
上記触媒としては、(e)の付加に通常用いられる公知の触媒でよく、例えば、水酸化物[KOH、NaOH、CsOH、Ca(OH)2等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物等];酸化物(K2O 、CaO、BaO等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物等);アルカリ金属(Na、K等)及びその水素化物(NaH、KH等);アルカリ金属のアルコキシド(NaOCH3、NaOC2H5、KOCH3等);トリエチルアミン、トリメチルアミン等のアミン類;BF3、BCl3、AlCl3、FeCl3、SnCl3等のルイス酸;H2SO4、HClO4等のプロトン酸;KClO4、NaClO4等のアルカリ金属の過塩素酸塩;Ca(ClO4)2、Mg(ClO4)2等のアルカリ土類金属の過塩素酸塩;Al(ClO4)3等の前記以外の金属の過塩素酸塩等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、KOH、NaOH、NaOCH3、CsOH、BF3である。
【0016】
本発明の乳化剤のHLB値は燃料中に水を安定に乳化するために1〜12が好ましく、より好ましくはHLB値が2〜9である。ここで扱うHLB値は小田法(「新・界面活性剤入門」三洋化成工業株式会社発行P197)によって算出される値である。
【0017】
本発明の乳化剤は、(A)又は必要により(B)を混合し乳化剤として用いてもよいが、さらに必要により、本発明の効果を妨げない量のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤[(A)、(B)を除く]、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を配合することができる。
乳化剤中の(A)以外の界面活性剤の全量のうち、(B)の割合(有効成分換算:質量%)は好ましくは10〜100%であり、より好ましくは20〜100%である。アニオン性界面活性剤を併用する場合、界面活性剤の全量のうちアニオン性界面活性剤が好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下になる様にする。また、(A)(B)以外のノニオン性界面活性剤を併用する場合は、界面活性剤の全量のうち好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下になる様にする。同様に、カチオン性界面活性剤を併用する場合は好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下になる様にする。また、両性界面活性剤を併用する場合は、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下である。
また、(A)(B)以外の界面活性剤は、上記の様に予め配合して使用しても、又は乳化工程の途中で別々に添加してもよい。この場合の添加量の割合は、上記の配合する場合と同様である。
【0018】
具体的には、アニオン性界面活性剤としては、炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等]、炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテル硫酸エステル塩[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム等]、炭素数8〜24の炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル塩[モノ若しくはジアルキルスルホコハク酸エステルジ若しくはモノナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)モノ若しくはジアルキルスルホコハク酸エステルジ若しくはモノナトリウム等]、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、炭素数8〜24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]、炭素数8〜24の炭化水素基を有するリン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等]、アシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]、反応基を有する硫酸エステル塩及びスルホン酸塩[アルキル(炭素数3〜18)(メタ)アリルスルホコハク酸塩、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(アルキレン基はエチレン、プロピレン、ブチレン:単独、ランダム、ブッロクでもよい)モノメタクリレート硫酸エステル化物塩等が挙げられる。
【0019】
(A)(B)以外のノニオン性界面活性剤としては、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=20)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=30)等]、(A)以外の多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸エチレングリコール等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8,重合度=1〜100)多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノラウリン酸ポリオキシエチレン(重合度=10)ソルビタン、ポリオキシエチレン(重合度=50)ジオレイン酸メチルグルコシド等]、脂肪酸アルカノールアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数1〜22)フェニルエーテル、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数8〜24)アミノエーテル及びアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]等が挙げられる。
【0020】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]、アミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。これらの1種または2種以上が使用出来る。
【0021】
本発明の乳化剤において、さらに油溶性有機溶媒、水溶性有機溶媒、水及びこれらの2種以上を混合してもよい。好ましいものは油溶性有機溶媒である。
油溶性有機溶媒としては、例えば、軽油、アルキルベンゼン(ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン等)、炭素数6〜24の炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、2メチルヘキサン、オクチルシクロヘキサン等)等及びこれら2種以上の併用が挙げられる。これらのうちで特に好ましいものは軽油である。
水溶性有機溶媒としては、例えば炭素数5以下の脂肪族炭化水素系モノアルコール(メタノール、エタノール、iso-およびn−プロパノール、iso-、sec-、tert-およびn-ブタノール、並びにn-ペンタノールなど)、炭素数5以下の多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等)、炭素数5以下の脂肪族カルボン酸アルキルエステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等)、炭素数5以下の脂肪族ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等)、炭素数5以下の脂肪族グリコールモノアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)、炭素数5以下の環状エーテル(テトラヒドロフラン等)が挙げられる。
【0022】
本発明の乳化剤は、(A)単独又は必要により(B)を加えて、さらに上記のその他の成分を混合することにより得られる。混合は通常の混合装置であれば特に限定はなく、混合条件も特別な条件は必要とせず通常の混合条件でよい。本発明の乳化剤は液体、ペースト、固体、粉末等種々の形態で使用することができるが、液体及びペーストが使いやすく好ましい。
本発明の乳化剤は液体及びペースト状で使用する場合、(A)を含む界面活性剤の濃度(乳化剤の有効成分濃度)は、好ましくは3〜100質量%、より好ましくは10〜100質量%である。
【0023】
本発明のエマルション燃料を構成する燃料油としては、石油留分、LNG、植物油等内燃機関の燃料として使用しうる全ての燃料油が挙げられるが、好ましくは軽油、及び重油である。
本発明の乳化剤(有効成分換算)の燃料油への添加量は0.1〜10質量%が好ましい。0.1%以上であれば十分な乳化力が得られ、10%以下であれば経済的である。
本発明のエマルジョン燃料において、燃料油、水及び乳化剤(純分換算)の質量比は、好ましくは50〜99.9/0〜50/0.1〜15、さらに好ましくは70〜99.9/0〜29.9/0.1〜12、特に好ましくは75〜99.9/0〜24.9/0.1〜10である。
【0024】
本発明のエマルジョン燃料は、W/O型又はO/W型であるが、好ましくはW/O型である。W/O型の方がエマルション形成時の粘度が低く、燃焼室内への燃料噴射の点で好ましい。
また、エマルジョン燃料は、水以外に上記の水溶性有機溶媒、例えば不凍液成分として使用されるジエチレングリコール、トリエチレングリコール等、及びこれらの2種以上の混合物を含有していてもよい。これらの水溶性有機溶媒の含有量はエマルジョン燃料の合計質量に対して、好ましくは0〜20%(乳化剤中に水溶性有機溶媒を含む場合は、それらも含む合計が0〜20%)である。
【0025】
なお、本発明のエマルジョン燃料中には、必要に応じてその他の添加剤、例えば防錆剤、流動点降下剤、腐食防止剤等を配合することもできる。例えば、防錆剤の具体例としては、炭素数1〜30の脂肪族アミン、炭素数1〜30の脂肪族アミンの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数=1〜200、無触媒又はアルカリ触媒による付加物)等が挙げられる。炭素数1〜30の脂肪族アミンの具体例としては、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。
炭素数1〜30の脂肪族アミンの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物の具体例としては、エチルアミンのEO付加物、エチルアミンのPO付加物、エチルアミンのBO付加物、ドデシルアミンのEO付加物、ドデシルアミンのPO付加物、ドデシルアミンのBO付加物、オレイルアミンのEO付加物、オレイルアミンのPO付加物、オレイルアミンのBO付加物、モノエタノールアミンのBO付加物等が挙げられる。防錆剤の添加量はエマルジョン燃料全量に対して50〜50,000ppmが好ましい。
【0026】
さらに低温流動性が必要な場合には流動点降下剤を添加でき、流動点降下剤の具体例としては、EVA(エチレン酢酸ビニル)系流動点降下剤、ASA(アルケニルコハク酸)系流動点降下剤、PMA(ポリアルキルメタクリレート)系流動点降下剤などが挙げられる。
EVA系流動点降下剤の具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のフマル酸アルキル(炭素数1〜12)エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル共重合体のマレイン酸アルキル(炭素数1〜12)エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−ベヘン酸ビニル3元共重合体、エチレン−酢酸ビニル−ベヘン酸ビニル3元共重合体のフマル酸アルキル(炭素数1〜12)エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−ベヘン酸ビニル3元共重合体のマレイン酸アルキル(炭素数1から12)エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−(4−メチルペンテン−1)3元共重合物、エチレン−酢酸ビニル−(4−メチルペンテン−1)3元共重合物のフマル酸アルキル(炭素数1〜12)エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−(4−メチルペンテン−1)3元共重合物のマレイン酸アルキル(炭素数1〜12)エステルグラフト物等が挙げられる。これらの共重合体における単量体の構成比率は、2元共重合体の場合、通常、エチレン/酢酸ビニル=90/10〜60/40質量%、3元共重合体の場合はエチレン+酢酸ビニル/その他の単量体=90/10〜99.9/0.1質量%、さらにグラフト物の場合、幹ポリマーに対するグラフト部分の質量割合が通常50〜200質量%である。
【0027】
ASA系流動点降下剤としてはアルケニル基の炭素鎖長が8〜50のアルケニルコハク酸アミド等が挙げられる。
PMA系流動点降下剤の具体例としては、アルキル基の炭素数が12〜30のポリアルキルメタクリレート、アルキル基の炭素数が12〜30のアルキルメタクリレート−スチレン共重合物等が挙げられる。流動点降下剤の添加量としては、エマルジョン燃料全量に対して50〜5,000ppmが好ましい。
【0028】
腐食防止性を付与する場合には腐食防止剤(例えばアルケニルコハク酸系防錆剤、アルケニルコハク酸のエステル系防錆剤)、清浄性を付与する場合には清浄剤(例えば、ジブチルアミンのEO付加物等)を添加してもよい。腐食防止剤の添加量はエマルジョン燃料全量に対して50〜50,000ppmが好ましい。
【0029】
添加剤の投入時期は特に限定されず、乳化剤、水又は燃料油に予め添加しても、乳化時又は乳化後に添加してもよい。
本発明のエマルジョン燃料の製造方法としては、前述の燃料油、水及びその他の添加剤を乳化できる方法であれば特に限定されない。
例えば、▲1▼まず、燃料油に乳化剤を混合してから、水を徐々に添加する方法、
▲2▼ 水に乳化剤を混合してから、燃料油に添加する方法
▲3▼ 水、燃料油、乳化剤を一括混合する方法
これらのうち、好ましい方法は混合機の簡略性、エマルション形成の容易さの点で▲1▼の方法である。
乳化混合機としては、特に限定されないが、櫂型もしくはスクリュー型攪拌羽根を装着した撹拌混合機およびホモジナイザー等が例示される。
得られるエマルジョンの平均粒子径は直径10μm以下が好ましく、この場合、エマルジョンは安定である。
【0030】
本発明のエマルジョン燃料の用途としては、自動車、航空機、船舶、発電機、ボイラー、暖房機等燃料を使用する対象であればいずれの用途にも使用できる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。部は質量部を示す。
【0032】
残査中の(a)の含有量は(A)を水洗分液し、水相を脱水した後の残さ量から求めた。残査はガスクロマトグラフィー(GC)により、(a)成分であることが確認され、(A)及び(b)は検出されなかった。また、(A)を構成するエステルの多価アルコール部分のソルビトール/ソルビタン/ソルバイド質量比(以下、ソルビトール/ソルビタン/ソルバイド質量比と記す)は(A)をアルカリにより加水分解し、生成した多価アルコールをGCにより、定量することにより求めた。
GCによる測定条件は次の通り。
【0033】
《GCの測定条件》
機器 :島津製GC−9A
カラム :OV−1(3%) 0.5m
検出器 :FID
インジェクション温度 :270℃
昇温速度 :100〜250℃/16℃毎分
注入量 :0.8μl
キャリアーガス :N2、50ml/min
試料 :10mgをスクリュー管に採取し、シリル化剤[N−トリメチルシリルイミダゾール(東京化成社製)]を1ml加え、50〜60℃で30分以上静置した。
【0034】
製造例1
撹拌及び温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ソルビトールの70質量%水溶液を461部仕込み、窒素気流下、135℃まで昇温しながら3時間脱水した。脱水後、オレイン酸761部及び水酸化ナトリウム水溶液1.0部を仕込み、窒素気流下、230℃で生成水を留去しながら、約10時間反応させた。70℃に冷却後、800部の水を仕込み、撹拌水洗した後、静置、分液により、水相を取り除いた。さらに100℃で減圧脱水し、残留水分を取り除くことにより、乳化剤1,000部を得た(A−1)[主成分がモノエステルとジエステルの混合物であり、モノエステル/ジエステル質量比=39/61、残査中の(a)含量は0.3質量%、ソルビトール/ソルビタン/ソルバイド質量比=24/62/14]。
【0035】
製造例2
製造例1における(A−1)66.6部にオレイルアルコールのEO5モル付加物(三洋化成工業社製 エマルミン50、以下同様とする。)を33.3部を配合することにより、乳化剤を得た(A−2)。
【0036】
製造例3
製造例1における(A−1)40部にオレイルアルコールのEO5モル付加物を60部を配合することにより、乳化剤100部を得た(A−3)。
【0037】
製造例4
製造例1における(A−1)66.6部にオレイルアルコールのEO4モル付加物(三洋化成工業製 エマルミン40)を33.3部を配合することにより、乳化剤100部を得た(A−4)。
【0038】
製造例5
製造例1における(A−1)66.6部にオレイルアルコールのEO14モル付加物(三洋化成工業製 エマルミン140)を33.3部を配合することにより、乳化剤100部を得た(A−5)。
【0039】
比較製造例1
撹拌及び温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ソルビトールの70質量%水溶液を461部仕込み、窒素気流下、135℃まで昇温しながら3時間脱水した。脱水後、オレイン酸761部及び水酸化ナトリウム水溶液1.0部を仕込み、窒素気流下、230℃で生成水を留去しながら、約10時間反応させることにより乳化剤1000部を得た(B−1)[主成分がモノエステルとジエステルの混合物であり、モノエステル/ジエステル質量比=39/61、残査中の(a)含量は4.6質量%、ソルビトール/ソルビタン/ソルバイド質量比=24/62/14]。
【0040】
比較製造例2
比較製造例1における(B−1)66.6部にオレイルアルコールのEO5モル付加物を33.3部を配合することにより、乳化剤を得た(B−2)。
【0041】
比較製造例3
オレイルアルコールのEO5モル付加物を乳化剤とした(B−3)。
【0042】
実施例
乳化剤(A−1)〜(A−5)、(B−1)〜(B−3)の経時安定性、及びこれらの乳化剤によるエマルジョン燃料の乳化安定性の評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0043】
経時安定性評価方法;
表1記載の乳化剤250mlを250mlのメスシリンダーに入れ、開放系で100℃に保ち、1カ月後の外観を観察した。経時安定性の評価基準は以下の通りである。
○:外観変化せず
△:変色あり
×:黒褐色タール状物発生
【0044】
乳化安定性評価方法;
櫂型撹拌羽根付きの攪拌機を装着したステンレス製ビーカーに軽油(JIS 2号 160ml)を仕込み、さらに表1記載の乳化剤を添加し、低速撹拌(200rpm)して溶解した後、1,000rpmの速度で撹拌しながら1分間かけて水(40ml)を徐々に加え、さらに3分間1000rpmで撹拌してW/O型エマルジョンを製造した。製造したエマルジョンの内100mlを共栓付きガラス製メスシリンダー(100ml)に移して70℃で4時間静置した。油相、水相及び乳化相の体積を測定することで乳化安定性の評価とした。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明の乳化剤は経時的に安定であり、かつ燃料と水の乳化安定性に優れる。したがって貯蔵安定性に優れたエマルション燃料を製造できる。
Claims (3)
- ソルビトール、ソルビタン及びソルバイドからなる群から選ばれる1種以上の多価アルコール(a)及び炭素数9〜25の脂肪族モノカルボン酸(b)とを、(a)1モルに対して(b)1.1〜3モルの反応モル比で反応させて、多価アルコール(a)と脂肪族モノカルボン酸(b)とのエステルを得た後、水洗分液により未反応の多価アルコール(a)を除去してエステル(A)を得る工程を含み、
遊離の多価アルコール(a)の含有量がエステル(A)に対して1質量%以下であるエマルジョン燃料用乳化剤の製造方法。 - さらに下記一般式(1)で表される化合物(B)の1種または2種以上の混合物とエステル(A)との混合工程を含む請求項1に記載の製造方法。
R1−[(OA)k−OH]x (1)
[式中、R1は炭素数8〜24の炭化水素基を有する1価アルコール又は多価アルコールの残基;Aは炭素数2以上の1種以上のアルキレン基;kは平均が1〜50となる0又は1以上の整数、xは1又は2〜6の整数] - 請求項1又は2に記載の製造方法で得られるエマルジョン燃料用乳化剤、燃料油及び水を含有してなり、燃料油に対する乳化剤の添加量が0.1〜10質量%であるエマルジョン燃料。
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