JP3838391B2 - 化粧料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は処理粉体を含有する化粧料に関する。さらに詳しくは、シリコーン被覆処理粉体に機能性基、特にはアルキル基を高密度で付加することにより、撥水性が高く、分散性に優れる機能を付与した処理粉体を用いたオイルフリーの化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉体表面にSi−Hを有するシリコーン化合物を被覆し、未反応のSi−H基に不飽和化合物を付加することにより、粉体を改質処理する技術が報告されている(特公平1−54380号公報、等)が、その付加量は、一般に粉体あたり100μmol/g未満程度で、疎水性や分散嗜好性を変化させるに必要な量が付加されているにすぎない。このような処理粉体を用いて粉末化粧料等を製造する場合、十分な油脂分散性を得ることが難しく、そのため油分を添加して系中の分散性を高める必要がある。
【0003】
一方、粉末化粧料、特に固形粉末化粧料においては、使用に伴い、化粧料表面が油脂等で固化しがちになるなどの傾向がみられ、このような問題の解消のために、油分を含まない固形粉末化粧料の実現が望まれていた。しかしながら、これまで、固形粉末化粧料の製造においては、油分を全く含まないオイルフリーの化粧料は得られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、撥水性が高く、分散性に優れる処理粉体を得、これを用いて、油分を実質的に全く含まない粉末化粧料を安全かつ簡便に提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、粉体表面をシリコーン化合物で均一被覆し、この上にさらに所定以上の高い密度で機能性基を導入することにより、撥水性が高く、分散性に優れる処理粉体処理粉体が得られること、および、該処理粉体を用いて、油分を実質的に全く含まない粉末化粧料を安全かつ簡便に得ることができるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、粉体表面をSi−H基を有するシリコーン化合物で被覆し、かつ、該シリコーン化合物の未反応のSi−H基部分に、該Si−H基と反応することのできる化合物を100μmol/g以上の密度で付加してなる処理粉体を含有し、実質的に油分を全く含まないことを特徴とする化粧料に関する。
【0007】
また本発明は、上記処理粉体を含有してなる実質的に油分を全く含まない化粧料、特には固形粉末化粧料に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0009】
本発明に用いられる粉体は、特に制限されるものではないが、一般に粒径10mm以下の任意の物体(10mmより大きいものも含まれることがある)を意味し、具体的には、有機顔料、無機顔料、金属酸化物および金属水酸化物、雲母、パール光沢材料、金属、カーボン、磁性粉末、ケイ酸塩鉱物、多孔質材料等が例示的に挙げられる。これら粉体は1種類でもまた複数を組み合わせて用いてもよく、また凝集体、成形体あるいは造形体等であってもよい。また粉体の上にあるいはその中に他の物質(例えば、着色剤、UV吸収剤、医薬品、各種添加剤)を含有していてもよい。本発明によれば粒径0.02μm以下の超微粉体も含めた任意の粉体を改質(処理)することができる。
【0010】
有機顔料としては、例えば赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色305号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号および青色404号や、さらに赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号および青色1号等が挙げられ、さらにこれらの有機顔料がジルコニウムレーキ、バリウムレーキまたはアルミニウムレーキ等のものでもよい。
【0011】
無機顔料としては、例えば紺青、群青、マンガンバイオレット、(酸化)チタン被覆マイカおよびオキシ塩化ビスマス等が挙げられる。
【0012】
金属酸化物および金属水酸化物としては、例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化鉄(α−Fe2O3、γ−Fe2O3、Fe3O4、FeO等)、黄色酸化鉄(特に棒状のもの)、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、水酸化鉄、酸化チタン(特に粒径0.001〜0.1μmの二酸化チタン)、低次酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、水酸化クロム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケルや、これらの2種以上の組み合わせによる複合酸化物および複合水酸化物、例えばシリカアルミナ、チタン酸鉄、チタン酸コバルト、リチウムコバルトチタネート、アルミン酸コバルト等が挙げられる。
【0013】
雲母としては、例えば白雲母、金雲母、黒雲母、絹雲母、鉄雲母、紅雲母、リチア雲母、チンワルド雲母、ソーダ雲母、人工雲母または、KAl2(Al、Si3)O10F2、KMg3(Al、Si3)O10F2、K(Mg、Fe3)(Al、Si3)O10F2で表される雲母等が挙げられる。
【0014】
パール光沢材料としては、例えば雲母チタン系複合材料、雲母酸化鉄系複合材料、ビスマスオキシクロライド、グアニンや、さらに、酸化窒化チタンおよび/または低次酸化チタンを含有するチタン化合物で被覆された雲母等が挙げられる。雲母チタン系複合材料のチタンについては二酸化チタン、低次酸化チタン、酸化窒化チタンのいずれでもよい。また雲母チタン系複合材料またはビスマスオキシクロライドに、例えば酸化鉄、紺青、酸化クロム、カーボンブラック、カーミンあるいは群青等をさらに混合したものであってもかまわない。
【0015】
金属としては、例えばアルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、金、銀、銅、プラチナ、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、シリコン、チタン等が挙げられる。
【0016】
磁性粉体としては、例えばγ−Fe2O3、マグネタイト(Fe3O4)、ベルトライト系酸化鉄(FeOx;1.33<x<1.5)またはそれらがコバルト、マンガン、ニッケル、亜鉛、クロム等で変性されたものや、針状の鉄またはAl、B、Co、Cr、Cu、Mo、Mn、Ni、P、Si、Sn、Znが含有された鉄粉、CrO2やBaフェライト等が挙げられる。
【0017】
また、粉末が、雲母上に被覆された鉄、ニッケル、コバルトまたはその酸化物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0018】
ケイ酸塩鉱物としては、フィロケイ酸塩鉱物(例えば、カオリン族、モンモリロナイト族、粘土雲母族、緑泥石族、蛇紋石)およびテクトケイ酸塩鉱物(例えばゼオライト族)であり、パイロフィライト、タルク、緑泥石、クリソタイル、アンチゴライト、リザダイト、カオリナイト、デッカイト、ナクライト、ハロサイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ベントナイトや、ソーダ沸石、中沸石、スコレス沸石、トムソン沸石等のソーダ沸石族、輝沸石、束沸石、剥沸石等の輝沸石族、および方沸石、重十字沸石、灰十字沸石、菱沸石、グメリン沸石等のゼオライト等が挙げられる。
【0019】
さらに本発明では多孔性物質の処理を良好に行うことができるが、多孔性物質としては、例えば多孔性ガラスビーズ、中空シリカまたはゼオライト、あるいは金属酸化物、金属窒化物、ケイ酸塩鉱物、炭酸塩鉱物、硫酸塩鉱物若しくはリン酸塩鉱物を、造粒または成型したもの、あるいは上記鉱物を造粒または成型した後、焼成したもの、メタル、セルロース、繊維または合成樹脂等を挙げることができる。
【0020】
本発明で用いるSi−H基を有するシリコーン化合物は、Si−H基を有するシリコーン系のものであればどのような化合物でも用いることができる。例えば、シリコーン油、シリコーンレジン、シリコーンワックス等が挙げられる。なかでも、下記一般式(I)
【0021】
【化3】
(R1HSiO)a(R2R3SiO)b(R4R5R6SiO1/2)c (I)
〔式中、R1、R2およびR3は互いに独立に水素原子であるかまたは少なくとも1個のハロゲン原子で置換可能な炭素原子数1〜10の炭化水素基であり(但し、R1、R2、R3が同時に水素原子であることはない);R4、R5およびR6は互いに独立に水素原子であるかまたは少なくとも1個のハロゲン原子で置換可能な炭素原子数1〜10の炭化水素基であり;aは1以上の整数であり、bは0または1以上の整数であり、cは0または2であり(但し、3≦a+b+c≦10000である);そしてこの化合物はSi−H基部分を少なくとも1個含むものとする〕
で表されるシリコーン化合物が好適に用いられる。
【0022】
ここでc=0の場合は、下記の一般式(III)
【0023】
【化4】
(R1HSiO)a(R2R3SiO)b (III)
〔式中、R1、R2、R3、a、bは上記一般式(I)で定義した通り。但し、好ましくはR1、R2およびR3が互いに独立に少なくとも1個のハロゲン原子(特にフッ素原子)で置換可能な炭素原子数1〜4の低級アルキル基またはアリール基(例えばフェニル基)であり;a+bが3以上であり、好ましくは10〜1000、特には20〜500である〕
で表される環状シリコーン化合物である。好ましくは1分子中に水素原子が2個以上存在するものが望ましい。一般式(III)の化合物の具体的例としては、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等を挙げることができる。
【0024】
また、c=2の場合は、下記の一般式(IV)
【0025】
【化5】
(R1HSiO)a(R2R3SiO)b(R4R5R6SiO1/2)2 (IV)
〔式中、R1〜R6、a、bは上記一般式(I)で定義した通り。但し、好ましくはR1〜R6が互いに独立に少なくとも1個のハロゲン原子(特にフッ素原子)で置換可能な炭素原子数1〜4の低級アルキル基またはアリール基(例えばフェニル基)であり;a+bが10〜1000、特には20〜500である〕
で表される鎖状シリコーン化合物である。一般式(IV)の具体例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,7,9,9,9−ノナメチルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,7,9,11,11,11−デカメチルヘキサシロキサン等を挙げることができる。
【0026】
本発明で用いられるSi−H基と反応することのできる化合物(Si−H基反応性化合物)は、上記シリコーン化合物の未反応のSi−H基と反応することができる化合物であればどのような化合物も任意に用いられ得る。
【0027】
このSi−H基反応性化合物は、シリコーン化合物の未反応Si−H部分に対して付加し、所望のペンダント基をシリコーン化合物に導入するためのものである。したがって、Si−H反応性化化合物を適切に選択し、所望のペンダント基を導入することにより、粉体に対して種々の機能を付与することができる。ここで「ペンダント基」とは、Si−H基部分と反応することのできる化合物の残基であって、その化合物の付加反応によってシリコーン化合物に導入される基を意味する。このペンダント基は、粉体に各種の特性および機能を付与する。付加させる不飽和化合物の炭化水素基の種類または長さ等を調節すれば疎水性をより強めることができる。
【0028】
ペンダント基は任意に選択することができる。例えばアルキル基は撥水性が高く油脂によく分散し、紫外線吸収剤付加では経皮吸収のない紫外線吸収粉体を得ることができる。抗菌作用を有する基を付加すれば経皮吸収のない抗菌粉体を得ることができる。エポキシ基を付加したものは樹脂と反応することができ、強固な樹脂・粉体複合体を形成し、熱で膨張しない固い複合体となる。
【0029】
かかるSi−H基反応性化合物としては、例えば、OH基またはSH基をもつ化合物、例えばアミノ酸(システイン等)を使用することができる。さらに炭素−炭素二重結合または三重結合を少なくとも1つもち、Si−H基部分と反応することのできる不飽和化合物(ビニル化合物)を使用することができる。
【0030】
適当な不飽和化合物としては、下記一般式(II)
【0031】
【化6】
【0032】
(式中、R7、R8、R9およびR10は互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、あるいは炭素原子数1〜30の置換または非置換の炭化水素基であるか;あるいはR7とR9とが炭素−炭素結合をなし、−C=C−と一緒になって炭素−炭素三重結合を形成することができ;あるいはR8とR10とが炭素−炭素結合をなし、−C=C−と一緒になって脂環式基を形成することができる)
で表される化合物等が挙げられる。
【0033】
上記において、炭素原子数1〜30の置換または非置換の炭化水素基としては、例えば、脂肪族基(例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、等)、芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基、等)、複素環式基(例えばヘテロ原子として窒素原子、酸素原子またはイオウ原子を1個以上含むもの、等)、脂環式基(例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、等)、スピロ化合物残基またはテルペン化合物残基等が挙げられる。
【0034】
上記炭化水素基R7〜R10は、一般式(II)の化合物における二重結合または三重結合による付加反応に不利な影響を与えない限り、1個以上の不飽和炭化水素基(例えば前記一般式(II)の定義で例示したもの)および/または1個以上の官能基で置換されていることができる。官能基の代表例としては、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基、エポキシ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、4級アンモニウム基、ポリアルキレンエーテル基等を挙げることができる。
【0035】
より好ましい不飽和化合物は、末端あるいは任意の位置に不飽和結合(二重結合、三重結合)を1個以上有するアルケンまたはアルキンであり、例えばアセチレン、エチレン、プロピレン、ブテン、オクテン、デセン、オクタデセン等が挙げられる。アルケン等は、不飽和結合を有していればその位置でSi−H基部分と付加反応するため、それ以外の位置にシクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン等の環状構造が存在していてもかまわない。
【0036】
また、二重結合が二つ以上あるブタジエン、イソプレン等を用いることもできる。
【0037】
本発明では、上記一般式(II)中、上記一般式(II)中、R8、R9、R10が水素原子であり、R7が炭素原子数1〜30、好ましくは炭素原子数8〜18のアルキル基のものが好ましく用いられる。このようにペンダント基としてアルキル基を用いた場合、特に撥水性が高く、分散能が高い処理粉体が得られる。
【0038】
本発明では、粉体表面をSi−H基を有するシリコーン化合物で均一に被覆し、かつこのシリコーン化合物の未反応のSi−H基に、ペンダント基を有する化合物を、粉体あたり100μmol/g以上の高密度で付加する点に特徴がある。このように高密度で機能性基を粉体に導入することにより、機能性を充分発揮できるばかりでなく、従来と異なった性能を発揮することができる。本発明の機能性粉体は化粧料、塗料、複合材料など様々の分野に応用できる。特に化粧料においては、従来必要であった油を全く含有しない粉末化粧料を提供することができる。
【0039】
上記Si−H基を有するシリコーン化合物の粉体被覆方法、機能性基付加方法は、従来からの手段により行うことができる。
【0040】
Si−H基を有するシリコーン化合物の粉体被覆方法については、例えば、上記シリコーン化合物を有機溶媒(クロロホルム、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトン、等)に溶解し、この中に粉体を分散させて分散液を調製し、この分散液を加熱して溶媒を蒸発させ、粉体表面上に被膜を形成させることによってシリコーン化合物の被膜で粉体を被覆することができる。あるいは、上記シリコーン化合物の貧溶媒の中に前記分散液を注ぐか、若しくはその分散液の中に貧溶媒を注いで粉体表面上に不溶化シリコーン化合物を付着させてその被膜を形成させることによって粉体を被覆してもよい。さらに、イン・サイチュー重合法のように、粉体の表面上において触媒の存在下でシリコーン化合物をモノマー重合させることによってシリコーン化合物の被膜で粉体をカプセル化してもよい。あるいはまた、粉体の実質的に全表面上に広く分布する活性点を利用して被覆することもできる。
【0041】
また、シリコーン化合物をそのまま粉体上に散布してもよく、あるいは粉体を溶媒に分散させた後、シリコーン化合物を散布してもよい。
【0042】
あるいは、好ましくは水、または水系溶液中で粉体へのシリコーン化合物被覆を行う。水系溶液とは、水が80重量%程度以上含有されている水を主成分とする溶液を意味する。水以外の他の成分としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、塩酸、硫酸およびこれらの混合物等が挙げられる。なお、この水系溶液に含まれる水としては、イオン交換水、蒸留水等が挙げられるが、この水に無機イオンが存在していてもかまわない。無機イオンとしては、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg++、Ca+、HSO4-、Cl-等が挙げられる。これらのイオン含有量を変えることによって水系のpHをコントロールすることができ、結果的に水系でのペンダント基の付加反応を制御することができる。すなわち無機イオンの量を多くしてpH値を大きくするとSi−H基の架橋を促進させることができ、一方、無機イオンの量を少なくしてpH値を小さくすると架橋の度合いを抑えることができる。したがって、pH値を小さくしてSi−H基の架橋を生じ難くして残存のSi−H基を多くすれば、後述するヒドロシリル化反応によるペンダント基の付加密度を上げることができる。本発明では、ペンダント基を有する化合物を、粉体あたり100μmol/g以上の高密度で付加するために、pH5〜8程度にコントロールするのが好ましい。
【0043】
シリコーン化合物と水系溶液の割合は、粉体の混合方法により異なるが、シリコーン1に対して水0.1〜100(重量比)の範囲で行うのが好ましく、より好ましくは5〜50である。混合方法は、通常用いられている混合機を用いて常法により行うことができる。湿式混合の場合は用いる水の量がやや多めとなり、乾式混合の場合は水の量がやや少なめとなる。
【0044】
粉体に対するシリコーン化合物量は2〜20重量%が好ましく、より好ましくは3〜10重量%である。上記シリコーン量が2重量%未満では、本発明の効果を得られる程度にペンダント基を導入することができず、一方、20重量%超では、粉末状態ではなくなり、好ましくない。またSi−H基反応性化合物は、その系全体のシリコーン化合物のSi−H基の0.5〜3当量が好ましく、より好ましくは1〜2当量である。このシリコーン化合物量に対して上述した割合で水を混合して反応液として用いる。
【0045】
こうしてできたシリコーン被覆粉体は、未反応のSi−H基部分が存在し、アルカリや酸のような苛酷な条件では若干不安定になる。
【0046】
次に、上記粉体を被覆したシリコーン化合物の未反応Si−H基に、このSi−H基と反応することのできる化合物を付加する。これにより、シリコーン化合物の未反応Si−H部分に対してSi−H反応性化合物を付加し、Si−H反応性化合物から誘導されるペンダント基をシリコーン化合物に導入する。Si−H反応性化合物を適切に選択し、所望のペンダント基を導入することにより、粉体に対して種々の機能を付与することができる。
【0047】
これについてさらに述べると、上述の第1段階の被覆工程において、粉体表面でSi−H基どうしの架橋が生じて網目構造が形成され、粉体表面がシリコーン化合物の被膜で被覆されるが、立体障害等のために架橋が完全に行われない。そのため残存のSi−H基が存在し、アルカリや酸のような苛酷な条件では若干不安定となる傾向がある。この残存のSi−H基にSi−H反応性化合物(例えば、アルケンやアルキレン等の不飽和化合物、等)をヒドロシリル化反応によって付加させ、Si−C結合を生成させることにより、アルカリや酸に対してさらに安定な粉体を得ることができる。
【0048】
したがってSi−H反応性化合物(不飽和化合物、等)を適切に選択し、所望のペンダント基を導入することにより、粉体に対して種々の機能を付与することができる。ここで「ペンダント基」とは、Si−H基部分と反応することのできる化合物の残基であって、その化合物の付加反応によってシリコーン化合物に導入される基を意味する。このペンダント基は、粉体に各種の特性および機能を付与する。付加させる不飽和化合物の炭化水素基の種類または長さ等を調節すれば疎水性をより強めることができる。
【0049】
本発明では、このペンダント基を有するSi−H反応性化合物を、粉体1gに対して100μmol/g以上、好ましくは150μmol/g以上付加させる。
【0050】
なお、上記シリコーン化合物の被覆とペンダント基の付加反応をともに水系溶液中で行ってよい。例えば、Si−H基を有する所定量のシリコーン化合物、該Si−H基と反応することのできる化合物、および水を混合機内に投入、混合後、この混合液を粉体に霧状に吹き付け、加熱混合し、ここにさらに触媒を添加する方法が挙げられる。また、粉体の入ったニーダーに水系溶媒を入れ、よく撹拌混合した後に、Si−H基を有するシリコーン化合物およびSi−H基と反応することのできる化合物を添加して加熱混合し、触媒を添加して被覆と付加を同時に行うことができる。この接触による反応は、加熱しながら行うのが反応時間の短縮となるので好ましい。
【0051】
また、ガスの形で供給してもよいし、ボールミルなどで粉体と一緒にして撹拌混合してもよい。ガスの形で供給する場合は沸点の低いものが望ましい。
【0052】
なお、加熱温度は50〜120℃の範囲で行うことができるが、高温の方が反応速度が大きく短時間に反応が終了する。
【0053】
次いで、シリコーン化合物のSi−H基とペンダント基とのヒドロシリル化反応を促進させるために触媒を添加する。
【0054】
このヒドロシル化反応を促進する触媒としては、白金族触媒、すなわちルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の化合物が適しているが、特にパラジウムと白金の化合物が好適である。パラジウム系では塩化パラジウム(II)、塩化テトラアミンパラジウム(II)酸アンモニウム、酸化パラジウム(II)、水酸化パラジウム(II)等が挙げられる。白金系では塩化白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)アンモニウム、酸化白金(II)、水酸化白金(II)、二酸化白金(IV)、酸化白金(IV)、二硫化白金(IV)、硫化白金(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム等が挙げられる。さらにアミン触媒例えばトリブチルアミンまたは重合開始剤を使用することができる。
【0055】
こうしてできた高付加密度粉体のみ、または他の粉体を混合して油分を全く含まない固形粉末化粧料を作ることができる。
【0056】
この粉体以外に配合できる粉体は、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、黒雲母、紅雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼きセッコウ)、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等の無機粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、シリコーン粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末等の有機粉末成分;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン等無機黒色系顔料、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料、群青、紺青等の無機青色系顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色305号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号および青色404号や、さらに赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号および青色1号等のジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキ等の有機顔料が挙げられる。
【0057】
これらの粉末以外に酸化防止剤、防腐剤等を添加することができる。
【0058】
これらの粉体は通常の混合機を用いて混合することができるが、望ましくは高剪断力のものを用いることが望ましい。
【0059】
本発明による上記高密度でペンダント基が付加された処理粉体を用いることにより、あるいは、他の粉体を混合して油分を実質的に全く含まない固形粉末化粧料を得ることができる。なお、ここでいう「油分」とは、常温で液体の状態のものをいい、具体的には、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液状油脂;流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、プリスタン等の炭化水素、オレイン酸、トール油、イソステアリン酸等の脂肪酸;ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の液状高級アルコール;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン等の液状シリコーン;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等のエステル類等が例示される。したがって、油分を実質的に含まない化粧料とは、これら液状油分のいずれをも実質的に含まない化粧料を意味する。
【0060】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれら実施例によってなんら限定されるものでないことはいうまでもない。
【0061】
実施例1−1 セリサイトの処理
セリサイト291gとイオン交換水190gを内容積1Lのニーダーに入れ、室温で十分に攪拌、混合した。その後、Si−H基を有するシリコーン化合物である「シリコーンKF−99」(信越化学(株)製)12gを加え、攪拌・混合を続けながら昇温し、100℃で水を蒸発させながら5時間反応させた。次に、減圧乾燥機により残存している水を除去し、シリコーン処理セリサイトを得た。
【0062】
その後、このシリコーン処理セリサイトにイオン交換水250gを加えよく攪拌、混合した後、テトラデセン50gおよび塩化白金酸15mgを加え、攪拌、混合を続けながら昇温し、100℃で水を蒸発させながら5時間反応させた。次に、減圧乾燥機により残存している水および未反応のテトラデセンを除去した後、被覆粉体を取り出した。得られた処理粉体は著しい疎水性を示した。また、粉体あたりのテトラデセンの付加量を元素分析で測定したところ、382μmol/gであった。
【0063】
実施例1−2
実施例1−1のセリサイトを二酸化チタンに代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た。テトラデセンの付加量は330μmol/gであった。
【0064】
実施例1−3
実施例1−1のセリサイトをシリカゲルに代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た。テトラデセンの付加量は318μmol/gであった。
【0065】
実施例1−4
実施例1−1のセリサイトをタルクに代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た。テトラデセンの付加量は355μmol/gであった。
【0066】
実施例1−5
実施例1−1のセリサイトを亜鉛華に代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た。テトラデセンの付加量は348μmol/gであった。
【0067】
実施例1−6
実施例1−1のセリサイトを雲母チタンに代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た。テトラデセンの付加量は311μmol/gであった。
【0068】
実施例1−7
実施例1−1のセリサイトをベンガラに代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た。テトラデセンの付加量は287μmol/gであった。
【0069】
実施例1−8
実施例1−1のセリサイトを黄酸化鉄に代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た。テトラデセンの付加量は364μmol/gであった。
【0070】
実施例1−9
実施例1−1のセリサイトを黒酸化鉄に代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た。テトラデセンの付加量は303μmol/gであった。
【0071】
実施例2
セリサイト50kg、雲母粉20kg、二酸化チタン10kg、タルク15kg、赤色酸化鉄1kg、黄色酸化鉄3.2kg、黒色酸化鉄0.2kg、微粒二酸化チタン0.6kgとイオン交換水60kgを200Lのニーダーに入れてよく混合し、実施例1と同様に「シリコーンKF−99」(信越化学(株)製)3.5kgを添加しながら昇温し、100℃で8時間反応させた。次に、減圧乾燥機により残存している水を除去し、シリコーン処理複合粉体を得た。
【0072】
その後、このシリコーン処理複合粉体にイオン交換水100kgを加えよく攪拌、混合した後、テトラデセン8kgおよび塩化白金酸3.5gを加え、攪拌・混合を続けながら昇温し、100℃で水を蒸発させながら2時間反応させた。次に、減圧乾燥機により残存している水および未反応のテトラデセンを除去した後、被覆粉体を取り出した。得られた処理粉体は著しい疎水性を示した。また、テトラデセンの付加量を元素分析で測定したところ、402μmol/gであった。
【0073】
実施例3
セリサイト150g、雲母粉100g、二酸化チタン30g、タルク45g、赤色酸化鉄3g、黄色酸化鉄10g、黒色酸化鉄0.6g、微粒二酸化チタン1.8gとイオン交換水180gを1Lのニーダーに入れてよく混合し、実施例1と同様に「シリコーンKF−99」(信越化学(株)製)7.5gを徐々に添加しながら昇温し、100℃で8時間反応させた。次に、減圧乾燥により残存している水を除去し、シリコーン処理複合粉体を得た。
【0074】
その後、このシリコーン処理複合粉体にイオン交換水300gを加えよく攪拌、混合した後テトラデセン15gおよび塩化白金酸10mgを加え、攪拌・混合を続けながら昇温し、100℃で水を蒸発させながら2時間反応させた。次に、減圧乾燥機により残存している水および未反応のテトラデセンを除去した後、被覆粉体を取り出した。得られた処理粉体は著しい疎水性を示した。また、テトラデセンの付加量を元素分析で測定したところ、210μmol/gであった。
【0075】
比較例1
実施例3において、「シリコーンKF−99」(信越化学(株)製)の添加量を3.0gに代えた以外は、実施例3と同様にして処理粉複合体得た。得られた処理複合粉体は、疎水性であり、テトラデセンの付加量は85μmol/gであった。
【0076】
製法
上記成分(1)〜(9)を混合し、粉砕機を通して平均粒径1〜5μmに粉砕し、ふるいを通し粒度を整えた後、圧縮成形し、ケーキ型ファンデーションを得た。得られたファンデーションは油分を全く含んでいないにもかかわらず成形ができ、のびがよく、さらさらした使用性であり、化粧もちが良好であった。
【0077】
製法
上記成分(1)〜(5)を混合し、粉砕機を通して平均粒径1〜5μmに粉砕し、ふるいを通し粒度を整えた後圧縮成形し、ケーキ型ファンデーションを得た。得られたファンデーションは油分を全く含んでいないにもかかわらず成形ができ、のびがよく、さらさらした使用性であり、化粧もちが良好であった。
【0078】
製法
上記成分(1)〜(5)を混合し、粉砕機を通して平均粒径1〜5μmに粉砕し、ふるいを通し粒度を整えた後圧縮成形し、ケーキ型ファンデーションを得た。得られたファンデーションは油分を全く含んでいないにもかかわらず成形ができ、のびがよく、さらさらした使用性であり、化粧もちが良好であった。
【0079】
比較例2
実施例5において、実施例2の処理粉体に代えて、比較例1の処理粉体を用いた以外は、他の配合成分は全く同じものを用いて、ファンデーションを製造した。得られたファンデーションは全く粉っぽく、成形が不可能であった。
【0080】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、シリコーン被覆処理粉体に機能性基、特にはアルキル基を従来に比して高密度で付加することにより、撥水性が高く、分散性に優れる機能を付与した処理粉体を得ることができ、さらにこの処理粉体を用いて、油分を実質的に全く含まない固形粉末化粧料を得ることができる。
Claims (8)
- 粉体表面をSi−H基を有するシリコーン化合物で被覆し、かつ、該シリコーン化合物の未反応のSi−H基部分に、該Si−H基と反応することのできる化合物を100μmol/g以上の密度で付加してなる処理粉体を含有し、実質的に油分を全く含まないことを特徴とする化粧料。
- 上記Si−H基を有するシリコーン化合物が、下記一般式(I)
で表されるシリコーン化合物である、請求項1記載の化粧料。 - 上記シリコーン化合物がメチルハイドロジェンポリシロキサンである、請求項1または2記載の化粧料。
- 上記Si−H基と反応することのできる化合物が、炭素−炭素二重結合または三重結合を少なくとも1つもち、Si−H基と反応することができる不飽和化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧料。
- 上記一般式(II)中、R8、R9、R10が水素原子であり、R7が炭素原子数1〜30の炭化水素基である、請求項5記載の化粧料。
- 上記一般式(II)中、R8、R9、R10が水素原子であり、R7が炭素原子数1〜30のアルキル基である、請求項6記載の化粧料。
- 化粧料が固形粉末化粧料である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化粧料。
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