JP3837694B2 - 磁性薄膜、磁性薄膜の製造方法、及び、磁気ヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁性薄膜、磁性薄膜の製造方法、及び、磁気ヘッドに関するものであり、特に、ハードディスクドライブ(HDD)の誘導型薄膜磁気ヘッド用上部磁極コアや薄膜トランス等の磁気デバイスに用いる高飽和磁束密度Bs のメッキ膜を得るための構成に特徴のある磁性薄膜、磁性薄膜の製造方法、及び、磁気ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの外部記憶装置であるハードディスクは、年率倍のスピードで記録密度が向上し、磁気ヘッドの素子サイズも小さく、記録媒体の高保磁力化が進んでおり、この様な高保磁力の記録媒体に対しても十分な書き込み能力を有する磁性材料が要求されている。
【0003】
高保磁力の記録媒体に対しても十分な書き込み能力を有するためには、誘導型薄膜磁気ヘッドを構成する上部磁極コア、或いは、上部磁極コア及び下部磁極層として、飽和磁束密度Bs の高い材料を用いることが必要があり、近年の高記録密度化の要請に伴って、将来的には最も磁束の集中する部分にはBs ≧2.0Tが必須であるとされている。
【0004】
また、この様な誘導型薄膜磁気ヘッドは、先端に十分な磁束が発生するように磁極材料は3〜4μmの膜厚を有し、且つ、段差を持つ形状であるため、他の磁性材料堆積方法として多用されているスパッタリング法等の真空成膜技術では成膜レートの効率が悪く、且つ、有効なエッチング方法が確立されてない。
したがって、従来においては、析出効率が高く、且つ、レジストフレームを用いることにより選択成膜に優れた電気メッキ法によって磁極が形成されている。
【0005】
従来の誘導型薄膜磁気ヘッドの書込用磁極材料としては、NiFe合金薄膜、即ち、パーマロイが一般的に用いられているが、因に、従来より多用されているNi80Fe20、即ち、80NiFeの飽和磁束密度はBs =1.0Tであり、また、Ni50Fe50、即ち、50NiFeの飽和磁束密度はBs =1.5Tである。
【0006】
しかし、上述の高飽和磁束密度化の要請に対してはNiFeでは不十分であり、高飽和磁束密度化の要請に応える磁性材料としては、磁性合金においては最も高い飽和磁束密度Bs が得られているFeCo合金が注目されている。
因に、バルクのFe60Co40においては、2.45Tが得られている(必要ならば、R.M.Bozorth,IEEE Press,p.80,1993参照)。
【0007】
この様なFe組成比の高い磁性材料を成膜する場合には、メッキ浴中のFeイオン濃度を既存のNiFe等と比較して十分高める必要があり、Fe組成比の増加に伴って二価のFeイオンが三価のFeイオンに変化する量も増大する。
【0008】
この様に、三価のFeイオンがメッキ浴中に存在すると、一般にもろく、応力の大きな黒灰色のメッキ膜になりやすく、また、メッキ膜にピットやクラックを生じるなどの問題が生じ、メッキ浴中における三価のFeイオンの増加量が無視できなくなる。
【0009】
そこで、この様な問題を解決するために、Feイオン及びCoイオンを含むメッキ浴中にPd,Cu,Pt,Au,Ag,Ir,Rh,Ru等の金属イオンを添加することが試みられている(必要ならば、特開平5−29172号公報参照)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、メッキ浴中にPd,Cu等の金属イオンを添加した場合には、これらの金属は非磁性金属であるため、得られたメッキ膜の飽和磁束密度が低下してしまうという問題がある。
【0011】
したがって、本発明は、非磁性金属を添加することなく、ピットやクラックの発生が抑制された高飽和磁束密度のFeCo系のメッキ膜を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
ここで、図1を参照して本発明における課題を解決するための手段を説明する。
なお、図1は、本発明のFeCoNiの組成範囲を示す三角組成図である。
図1参照
上述の目的と達成するために、本発明は、磁性薄膜において、Fe,Co,Niの重量組成比が、Fe80Co20,Fe40Co60,Fe 40 Co 55 Ni 5 ,Fe 55 Co 40 Ni 5 ,Fe 55 Co 25 Ni 20 ,Fe70Co10Ni20を頂点とする領域(但し、Fe 40 Co 55 Ni 5 とFe 55 Co 40 Ni 5 を結ぶ直線上の領域及びFe 55 Co 40 Ni 5 とFe 55 Co 25 Ni 20 を結ぶ直線上の領域は除く)に含まれ、且つ、Ni組成比が1重量%以上であることを特徴とする。
【0013】
NiはFe或いはCoと比較して磁気モーメントは小さいものの、PdやCuと異なり磁性元素であるので、第三元素として添加した場合には、飽和磁束密度Bs の低下を最小限に抑えることができる。
【0014】
また、Niはメッキ材料として広汎に用いられていることからも明らかなように、硬く、耐薬品性、光沢性に優れ、良好なメッキが得られやすい特長があり、Feの増加に伴って発生しやすいピットやクラックを防ぐことが可能になる。
【0015】
したがって、この様なFe組成比の大きなFeCo系合金において、Ni組成比を1重量%以上にすることによって、表面ラフネスRa が小さく、例えば、Ra <200nm以下で、高飽和磁束密度、例えば、Bs ≧2.0T、より好適には、Bs ≧2.2Tの磁性薄膜を再現性良く成膜することが可能になる。
なお、この場合の表面粗さRa は、JIS規格B0601−1994規定において規定する算術平均粗さであり、表面の粗さ曲線をy=f(x)とした場合、基準長Lに渡ってy=f(x)の絶対値を積分し、基準長Lで規格化した値であり、本明細書における表面粗さRa 或いはラフネスRa は、全てJIS規格B0601−1994規定において規定する算術平均粗さを意味する。
【0016】
なお、この場合、メッキベース層としては、メッキ膜と同じ系で、且つ、NiFeより飽和磁束密度の大きなFeCoNi膜、例えば、Fe26Co63Ni11を用いることが望ましく、それによって、上部磁極コア或いは下部磁極層全体の飽和磁束密度を高めることができる。
【0017】
また、本発明は、磁性薄膜の製造方法において、Feイオン、Coイオン、及び、Niイオンを含むメッキ浴中のFeイオン/(Feイオン+Coイオン)が、0.3≦Feイオン/(Feイオン+Coイオン)<1.0であるメッキ浴を用いることを特徴とする。
【0018】
この様に、高飽和磁束密度のFeCo系磁性薄膜を得るためには、Fe組成比を0.4以上にする必要があり、そのためには、メッキ浴中のFeイオン/(Feイオン+Coイオン)を、0.3≦Feイオン/(Feイオン+Coイオン)とする必要がある。
【0019】
この場合、メッキ浴中に、〔=C−SO2 −〕構造を含まず、且つ、炭素三重結合或いは炭素二重結合を有する有機不飽和化合物、例えば、2−プロピン−1−オール〔PPO,分子式:HC≡C−CH2 −OH〕を含有させることが望ましく、それによって、表面粗さRa の小さなメッキ膜の成膜が可能になる。
【0020】
また、本発明は、少なくとも誘導型薄膜磁気ヘッドを備えた磁気ヘッドにおいて、誘導型薄膜磁気ヘッドの上部磁極及び下部磁極の少なくとも一部に上記磁性薄膜を用いたことを特徴とする。
【0021】
この様に、上記の磁性薄膜を用いることによって、磁気ヘッドの高性能化及び低コスト化が可能になり、ひいては、磁気記憶装置の高性能化が可能になる。
なお、この場合には、上部磁極及び下部磁極の全体を構成しても良いし、また、何方か一方を構成しても良いし、或いは、上部磁極及び下部磁極の少なくとも先端部のチップ状磁極コアとして用いても良いものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
ここで、図2乃至図6を参照して、本発明の実施の形態の磁性薄膜の製造方法を説明する。
本発明の実施の形態において用いるメッキ装置は、従来技術として一般に用いられているパドル装置を用い、このパドル装置によってメッキ浴を攪拌しながら電解メッキを行うものであり、パドルの形状、磁性薄膜を堆積させる基板との距離、即ち、カソードとの距離、及び、回転速度等は必要に応じて任意に設定するものであり、特に限定されるものではない。
【0023】
また、本発明の実施の形態に用いるメッキ浴は、
硫酸第一鉄(FeSO4 ・7H2 O)、硫酸ニッケル(NiSO4 ・6H2 O)、及び、硫酸コバルト(CoSO4 ・7H2 O)を、メッキ浴中における金属イオン濃度比が、Fe2+:Co2+=30:70〜100:0で、且つ、Ni2+:(Fe2++Co2++Ni2+)=0.01:100〜80:100になるように混合し、ほう酸を30g/リットル添加することによって、pHを2.0〜3.5、例えば、2.5に調整するとともに、塩化アンモニウムによって導電性を調整し、さらに、界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムを0.2g/リットル添加したものを用いる。
また、酸化防止剤としてアスコルビン酸を添加する。
【0024】
この様なメッキ浴を用いて電解メッキを行うことなるが、基板として表面にSiO2 膜を形成したSi基板を用いるとともに、密着性を改善するために厚さが、例えば、10nmのTi膜をスパッタリング法によって成膜したのち、メッキベース層として厚さが、例えば、50nmのFeCoNi膜をスパッタリング法によって成膜する。
なお、FeCoNi膜の重量組成比は、Fe26Co63Ni11とする。
【0025】
次いで、室温〜40℃、例えば、30℃の温度で、5〜20mA/cm2 の間の複数の電流密度で、400〔Oe〕以上の直流磁界、例えば、400〔Oe〕の直流磁界中で電解メッキを行って下地となるFeCoNi膜上にFeCoNi磁性薄膜を成膜した。
【0026】
図2参照
図2は、メッキ膜の成膜レートのNi組成比依存性の説明図であり、この場合には、Fe2+:Co2+=50:50とメッキ浴中のFe2+/Co2+比を一定にした状態で、Ni2+濃度を変化させて成膜レートを調べたものであり、図におけるNi組成比はメッキ膜中のNiの重量比を示している。
【0027】
図から明らかなように、Ni組成比の増加とともに成膜レートは上昇することが理解され、メッキ浴中にNiイオンを含まない場合には、成膜が実質的に不可能であった。
これは、Ni自身に触媒作用があり、メッキ浴中にNiイオンが含まれていることによって、Ni自身が析出しやすいとともにメッキ反応を促進するためと考えられ、Ni組成比がメッキ膜の重量に対して1.0重量%において、0.05μm/分の成膜レートが得られた。
【0028】
図3参照
図3は、図2の場合と同様の成膜条件におけるメッキ膜の表面粗さRa のNi組成比依存性の説明図である。
図から明らかなように、Ni組成比の増加とともに表面粗さRa が小さくなることが理解される。
【0029】
これは、Niは元々光沢性に優れ、良好なメッキ膜が得られる特長があるので、Feの増加に伴って生じやすいピットがクラックを抑えた結果であると考えられる。
因に、Ni組成比がメッキ膜の重量に対して1.0重量%において、Ra ≒200nmであり、5重量%以上で、Ra ≒10nm程度に安定する。
【0030】
図4参照
図4は、図2の場合と同様の成膜条件におけるメッキ膜の飽和磁束密度Bs のNi組成比依存性の説明図である。
図から明らかなように、Ni組成比の増加とともに飽和磁束密度Bs が低下することが理解される。
なお、図における白丸は、Ni=0重量%の場合の文献値(必要ならば、上記の、R.M.Bozorth,IEEE Press,p.80,1993参照)であり、Bs ≒2.4Tである。
【0031】
これは、Niは磁性元素ではあるものの、FeやCoと比べて磁気モーメントが小さいためであり、そのため、Ni組成比の増加とともに、飽和磁束密度Bs は低下するが、従来のようにCuやPd等の非磁性元素を添加した場合に比べて飽和磁束密度Bs の低下を抑制することができる。
因に、Ni≒20重量%で、Bs ≒2.0Tとなり、測定誤差はあるものの、Ni組成比が15重量%になるまで、Bs ≒2.2Tの飽和磁束密度を保つことができる。
【0032】
図5参照
図5は、図2の場合と同様にFe2+:Co2+=50:50とメッキ浴中のFe2+/Co2+比を一定にした状態で、Ni2+濃度、即ち、NiSO4 濃度を変化させた場合のメッキ膜中のNi析出量(重量%)を測定したものであり、Ni2+濃度は、NiSO4 /(FeSO4 +CoSO4 +NiSO4 )のモル比で示している。
【0033】
上述のように、メッキ浴中にNiSO4 を添加しない場合には、成膜が不可能であったが、図から明らかなように、NiSO4 /(FeSO4 +CoSO4 +NiSO4 )=0.01モル%となるようにNiSO4 を添加した場合に、メッキ膜中のNi析出量は約1.0重量%となることが理解される。
【0034】
図6参照
図6は、FeとCoの析出量比のFeSO4 とCoSO4 の濃度比依存性を示した図であり、メッキ浴中のNiSO4 濃度を0.01モル%と一定にした状態で、FeSO4 /CoSO4 比を変化させた場合のメッキ膜中のFeとCoの析出量比を調べたものである。
なお、メッキ浴における濃度比は、FeSO4 /(FeSO4 +CoSO4 )をモル%で示し、析出量比は、Fe/(Fe+Co)を重量%で示している。
【0035】
図から明らかなように、FeSO4 /(FeSO4 +CoSO4 )の増加とともに、Fe/(Fe+Co)はほぼリニアに増加することが理解され、傾向外挿すると、Fe組成比の上限は80%となる。
【0036】
一方、Fe組成比の下限は、成膜条件からは存在しないものの、高飽和磁束密度の磁性膜を得るためにFe組成比を増加させているものであるので、Fe組成比は40%以上にすることが望ましく、特に、50%以上にすることが望ましい。
因に、Fe組成比を40%以上にするためには、図6を参照するならば、測定誤差はあるものの、FeSO4 /(FeSO4 +CoSO4 )を30モル%以上にする必要があることが理解される。
【0037】
以上を纏めて綜合的に考察するならば、FeCo系メッキ浴へNiを添加することによって成膜レートを高め、且つ、表面粗さRa を小さくすることができるので、メッキ膜中のNi組成比としては、1.0重量%以上、より好適には2.0重量%以上とすることが望ましく、成膜レート、表面粗さRa 、及び、飽和磁束密度Bs の全てについて優れた特性を得るためには、5.0重量%以上とすることが望ましい。
【0038】
一方、図4から明らかなように、高飽和磁束密度を達成するためには、Ni組成比は小さい方が望ましく、元々のBs ≧2.0Tの高飽和磁束密度膜を得るという目的を考慮するならば、Ni組成比は20重量%以下とすることが望ましく、Bs ≒2.2Tとするためには、15重量%以下とすることが望ましい。
【0039】
また、図6から明らかなように、Fe/(Fe+Co)にも制限があり、上述のように、Feの組成比は40重量%〜80重量%にすることが望ましい。
【0040】
再び、図1参照
以上を纏めると、Fe80Co20,Fe40Co60,Fe40Co40Ni20,Fe70Co10Ni20を頂点とする4角形領域に含まれ、且つ、Ni組成比が1重量%以上である領域が好適であることが理解されるが、図1では、本発明とは目的の異なる従来例との重複を避けるために、Fe 80 Co 20 ,Fe 40 Co 60 ,Fe 40 Co 55 Ni 5 ,Fe 55 Co 40 Ni 5 ,Fe 55 Co 25 Ni 20 ,Fe 70 Co 10 Ni 20 を頂点とする領域(但し、Fe 40 Co 55 Ni 5 とFe 55 Co 40 Ni 5 を結ぶ直線上の領域及びFe 55 Co 40 Ni 5 とFe 55 Co 25 Ni 20 を結ぶ直線上の領域は除く)に含まれ、且つ、Ni組成比が1重量%以上の領域とする。
【0041】
したがって、上記の条件満たす磁性薄膜を誘導型(インダクティブ)薄膜磁気ヘッドの少なくとも一部として用いることによって、高保磁力磁気記録媒体への記録が可能になる。
例えば、上下の磁極層がライトコイルの中心で結合したコ字状のインダクティブ薄膜磁気ヘッドにおいては、内側が本発明の磁性薄膜となる2層構造で構成しても良いし、或いは、コア幅を狭めるために上下磁極層の先端部、即ち、ライトポールにおいて上下に互いに対向する幅細の突起を設けたチップドタイプの磁極の場合には、この突起を本発明の磁性薄膜によって構成すれば良く、それによって、高保磁力磁気媒体への記録が可能になり、記録密度の向上が達成される。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明は実施の形態に記載した構成に限られるものではなく、各種の変更が可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、メッキ浴の導電性を高めるための試薬として塩化アンモニウムを用いているが、塩化アンモニウムに限られるものではなく、塩化ナトリウム、或いは、硫酸アンモニウムを添加しても良いものである。
【0043】
また、上記の実施の形態においては、サッカリンナトリウム等の有機添加剤、即ち、一次光沢剤を含まないメッキ浴を用いているが、表面粗さRa を低減するために、サッカリンナトリウム等の有機添加剤を添加しても良いものである。
【0044】
なお、Niメッキにおける一次光沢剤とは、単独では光沢を表さないか、或いは、半光沢を与える程度のものであるが、後述する二次光沢剤と合わせて併用すると優れた光沢が現れるものであり、しかも、この一次光沢剤は二次光沢剤が与える内部応力を低減させる効果を有するものであり、一般に、〔C=C−SO2 〕や〔C=C−C−SO2 〕等の二重結合を有する硫黄化合物が多く、例えば、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸ナトリウムが該当する。
【0045】
さらに、表面粗さRa 低減するための他の方法として、〔=C−SO2 −〕の構造を持たない有機添加剤であり、且つ、炭素三重結合或いは炭素二重結合の構造のいずれかを有する有機不飽和化合物、即ち、二次光沢剤を添加しても良いものである。
この様な有機不飽和化合物を添加することによって、表面粗さRa を低減することができるとともに、耐食性に優れた磁性薄膜を得ることができる。
【0046】
なお、有機添加剤として、〔=C−SO2 −〕構造を含まず、且つ、炭素三重結合〔C≡C〕を含む二次光沢剤としては、2−プロピン−1−オール〔PPO,分子式:HC≡C−CH2 −OH〕が好適であるが、2−プロピン−1−オールに限られるものではなく、2−プロピン−1−オールと同じ〔=C−SO2 −〕構造を含まず、且つ、炭素三重結合〔C≡C〕を含む二次光沢剤である、例えば、2−ブチン−1−オールまたは2−ブチン−1、4−ジオール等を用いても良いものである。
【0047】
さらには、〔=C−SO2 −〕構造を含まず、且つ、炭素二重結合〔C=C〕を含む二次光沢剤である、例えば、スルホンベンズアルデヒド、クマリン誘導体等を用いても良いものである。
【0048】
また、上記の実施の形態においては、メッキ浴中に酸化防止剤となるアスコルビン酸を添加しているが、添加した場合には、メッキ膜の成膜レートに低下傾向が見られるので、必ずしも添加する必要はないものである。
【0049】
また、上記の実施の形態においては、飽和磁束密度を高めるために、メッキベース層として、メッキ膜と同系であるFeCoNi膜を用いているが、FeCoNi膜に限られるものではなく、NiFe膜を用いても良いものである。
【0050】
また、上記の実施の形態の説明においては、誘導型の薄膜磁気ヘッドの上部磁極層或いは下部磁極層に用いることを前提に説明しているが、本発明はこの様な用途に限られるものではなく、再生専用の単独のMRヘッドの上下の磁気シールド層として用いても良いものであり、更には、誘導型の薄膜磁気ヘッドとMRヘッドを積層させた複合型薄膜磁気ヘッドの上下の磁気シールド層及び上下の磁極層の全体若しくはその一部として用いても良いものである。
【0051】
さらに、本発明は磁気ヘッドに用いる磁性材料に限られるものではなく、例えば、磁気測定装置等における磁気シールド材或いは磁気トランス等として用いることができる。
【0052】
ここで、本発明の詳細な特徴を説明する。
(付記1) Fe,Co,Niの重量組成比が、Fe80Co20,Fe40Co60,Fe 40 Co 55 Ni 5 ,Fe 55 Co 40 Ni 5 ,Fe 55 Co 25 Ni 20 ,Fe70Co10Ni20を頂点とする領域(但し、Fe 40 Co 55 Ni 5 とFe 55 Co 40 Ni 5 を結ぶ直線上の領域及びFe 55 Co 40 Ni 5 とFe 55 Co 25 Ni 20 を結ぶ直線上の領域は除く)に含まれ、且つ、Ni組成比が1重量%以上であることを特徴とする磁性薄膜。
(付記2) 上記の磁性薄膜の飽和磁束密度が2.0T以上であることを特徴とする付記1記載の磁性薄膜。
(付記3) 上記磁性薄膜のメッキベース層として、FeCoNi膜を用いたことを特徴とする付記1または2に記載の磁性薄膜。
(付記4) 付記1記載の磁性薄膜の製造方法において、Feイオン、Coイオン、及び、Niイオンを含むメッキ浴中のFeイオン/(Feイオン+Coイオン)が、0.3≦Feイオン/(Feイオン+Coイオン)<1.0であるメッキ浴を用いることを特徴とする磁性薄膜の製造方法。
(付記5) 上記メッキ浴中のNiイオン濃度が、全金属イオン濃度に対し、0.01%以上であることを特徴とする付記4記載の磁性薄膜の製造方法。
(付記6) 上記メッキ浴中に、〔=C−SO2 −〕構造を含まず、且つ、炭素三重結合或いは炭素二重結合を有する有機不飽和化合物を含有させることを特徴とする付記4または5に記載の磁性薄膜の製造方法。
(付記7) 上記炭素三重結合或いは炭素二重結合を有する有機不飽和化合物が、2−プロピン−1−オールであることを特徴とする付記6記載の磁性薄膜の製造方法。
(付記8) 少なくとも誘導型薄膜磁気ヘッドを備えた磁気ヘッドにおいて、前記誘導型薄膜磁気ヘッドの上部磁極及び下部磁極の少なくとも一部に付記1乃至3のいずれか1に記載の磁性薄膜を用いたことを特徴とする磁気ヘッド。
(付記9) 付記8記載の磁気ヘッドを備えたことを特徴とする磁気記憶装置。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、Fe組成比が大きく高飽和磁束密度の磁性薄膜を成膜する際に、メッキ浴にNiイオンを添加することによって、飽和磁束密度の低下を最小限に抑えた状態で、ピットやクラックのない良好なメッキ膜を得ることができ、それによって、薄膜磁気ヘッドの高周波化、高記録密度化に寄与し、ひいては、高性能HDD装置等を組み込んだ磁気記憶装置等の普及に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の磁性薄膜の好適な組成範囲の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるメッキ膜の成膜レートのNi組成比依存性の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるメッキ膜の表面粗さRa のNi組成比依存性の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるメッキ膜の飽和磁束密度Bs のNi組成比依存性の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるNi析出量のNiSO4 含有量依存性の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるFe,Co析出量のFeSO4 ,CoSO4 濃度比依存性の説明図である。
Claims (3)
- Fe,Co,Niの重量組成比が、Fe80Co20,Fe40Co60,Fe 40 Co 55 Ni 5 ,Fe 55 Co 40 Ni 5 ,Fe 55 Co 25 Ni 20 ,Fe70Co10Ni20を頂点とする領域(但し、Fe 40 Co 55 Ni 5 とFe 55 Co 40 Ni 5 を結ぶ直線上の領域及びFe 55 Co 40 Ni 5 とFe 55 Co 25 Ni 20 を結ぶ直線上の領域は除く)に含まれ、且つ、Ni組成比が1重量%以上であることを特徴とする磁性薄膜。
- 請求項1記載の磁性薄膜の製造方法において、Feイオン、Coイオン、及び、Niイオンを含むメッキ浴中のFeイオン/(Feイオン+Coイオン)が、0.3≦Feイオン/(Feイオン+Coイオン)<1.0であるメッキ浴を用いることを特徴とする磁性薄膜の製造方法。
- 少なくとも誘導型薄膜磁気ヘッドを備えた磁気ヘッドにおいて、前記誘導型薄膜磁気ヘッドの上部磁極及び下部磁極の少なくとも一部に請求項1記載の磁性薄膜を用いたことを特徴とする磁気ヘッド。
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