JP3836218B2 - ブロー成形性に優れる分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はブロー成形性に優れた分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。更に詳しくは成形品とした場合の表面外観が良好であり、ドローダウン特性の極めて優れた大型ブロー成形に適した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、芳香族ポリカーボネート樹脂は透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れた性能を有することから、射出成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形等によって、溶融成形され多くの用途に供されている。
【0003】
特に近年、大型成形品を安価に得る方法としてブロー成形法が注目されている。ブロー成形法により均一な肉厚の大型成形品を得るためには、材料の自重によるドローダウンの少ないこと、ダイ出口でのスエルが小さいことが材料に対して要求される。
【0004】
しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂は溶融時の自重によるドローダウンが大きいため、ブロー成形によって均一な肉厚成形物が得られ難く、特に大型成形物は成形が困難である。
【0005】
かかる欠点を改良するために、芳香族ポリカーボネート樹脂として三価以上の多価フェノールを共重合して分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂にする方法(特開昭48−693号公報)や超高分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂を特定量配合する方法(特開平4−253766号公報)が提案されている。
【0006】
しかしながら自動車用外板材料や住宅用建材等の、近年更に大型化が進んでいる部材においてはかかる分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂や超高分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂のみではドローダウン性が十分とは言えない。さらにドローダウン性を改良するために、分岐剤の比率を高めたり、超高分子量成分の比率を高めたりする手法をとった場合、溶融粘度の著しい上昇をもたらしかかる芳香族ポリカーボネート樹脂の製造が困難になると共に、不純物の割合が増加するため結果として成形品の熱安定性を低下させ、ひいては安定したドローダウン性を得られなくなる問題を生ずる。
【0007】
特開平7−207138号公報には分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を含んだ芳香族ポリカーボネートに特定の屈折率のガラス繊維及びポリカプロラクトンを配合した組成物が提案されており、ブロー成形性に優れた材料であることが記載されている。更にガラス繊維を添加することでドローダウン性が改良されることも例示されている。しかしながらかかる組成物は透明性という点では極めて良好な特性を有するものの、塗装を施し使用する用途等では必ずしも良好とはいえない。すなわちかかる組成物のブロー成形品は表面にガラス繊維の浮きが生じ表面外観が十分とはいえないため、例えば自動車部品等の良好な塗装外観を必要とする用途では塗膜を厚くして対応しているが、これは生産効率の低下によるコストアップや溶剤使用量の増加による環境面の問題を生じている。
【0008】
特開平7−149498号公報には芳香族ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂に、特定のL/Dのワラストナイトを配合することで、外観の良好な低線膨張性の材料が得られることが提案されている。かかる公報には芳香族ポリカーボネート樹脂として分岐状芳香族ポリカーボネートを含有してよいことも記載されている。しかしながらかかる公報の組成物ではL/Dの低いワラストナイトを使用しているために、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を必須成分とした場合でもドローダウン特性は十分とはいえない。
【0009】
すなわち表面外観が良好でドローダウン特性の極めて優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が要求されていたものの、かかる要求を満足する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は得られていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成形品の表面外観が良好であり、ドローダウン特性の極めて優れた大型ブロー成形に適した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂に特定のワラストナイト、及びカルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックスを配合する事により目的とする大型ブロー成形に適した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、アスペクト比L/D=5〜50のワラストナイト(B成分)1〜100重量部、カルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス(C成分)0.02〜5重量部からなるブロー成形性に優れる分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、及びこれからなる成形品に係るものである。
【0013】
本発明で使用する分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)は、二価フェノール及び少量の分岐剤とカーボネート前駆体との反応によって製造される。ここで使用する二価フェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]を対象とするが、その一部又は全部を他の二価フェノールで置換えてもよい。他の二価フェノールとしては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン等があげられる。ここで、前記の二価フェノールを単独で又は2種以上を使用することができる。
【0014】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カルボニルエステル又はハロホルメート等があげられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメート及びこれらの混合物である。
【0015】
分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当り、例えば下記例に示すような三官能以上の多官能性化合物の少なくとも一種以上を分岐剤として、二価フェノールに対して0.5〜3.0モル%程度共重合させる方法によって製造される。分岐剤の例として、例えばフロログルシン、フロログルシド、又は4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、又はトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの酸クロライド等が挙げられる。A成分として使用する分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂の重合度は、粘度平均分子量で表して一般に10,000〜40,000、好ましくは15,000〜30,000である。本発明でいう粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηSP)を次式に挿入して求めたものである。
ηSP/C=[η]+0.45[η]2C
[η]=1.23×10-4M0.83
(但し[η]は極限粘度であり、Cはポリマー濃度で0.7である。)
【0016】
分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂として粘度平均分子量が10,000未満のものを使用した場合は、ブロー時の膨らみ性が不均一となり、偏肉の多いブロー成形物となる。また、粘度平均分子量が40,000を越えたものを使用した場合は、溶融粘度が過剰に増大し、パリソンの成形が困難となる。かかる重合度の分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当たって、適当な分子量調節剤、反応を促進するための触媒等の使用は差し支えない。
【0017】
芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する基本的な手段を簡単に説明する。カーボネート前駆体としてホスゲンを用いる溶液法では、通常酸結合剤又はその水溶液及び有機溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が使用される。また反応促進のため例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を使用することができ、分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を使用することが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応温度は数分〜5時間、反応中のpHは10以上に保つのが好ましい。
【0018】
カーボネート前駆体として炭酸ジエステルを使用するエステル交換反応(溶融法)では、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノール及び分岐剤を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌し、生成するアルコール又はフェノール類を留出させる方法により行う。反応温度は生成するアルコール又はフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコール又はフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に用いられる触媒を使用することができる。このエステル交換反応に使用する炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0019】
かかる製造法によって得られた分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂に、分岐剤を共重合してない直鎖状の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合することで、かかる分岐剤濃度及び分子量を満足する分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を調整してもよい。すなわち、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂にかかる直鎖状の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合する場合は、分岐剤濃度を全体の二価フェノールに対して0.5〜3モル%、かつ粘度分子量を10,000〜40,000、好ましくは15,000〜30,000となるようにすべきである。
【0020】
本発明で使用するワラストナイト(B成分)は、針状結晶をもつ天然白色鉱物(カルシウムメタシリケート)であり、化学式CaSiO3で表され、通常SiO250重量%、CaO47重量%、その他Fe2O3、Al2O3等を含有しており、比重は約2.9である。本発明においては、該ワラストナイトはアスペクト比L/D=5〜50、好ましくは8〜40、更に好ましくは15〜35の範囲にあることが必要である。本発明でアスペクト比L/Dとは、ワラストナイトを走査型電子顕微鏡写真を撮影し、写真中の100個のワラストナイト繊維の平均繊維長(L)と平均繊維径(D)との比で表されるものである。
【0021】
また、該ワラストナイトは、通常の表面処理剤、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤等で表面処理を施したものを使用しても差し支えない。アスペクト比L/Dが5未満では、十分なドローダウン特性が得られず、アスペクト比L/Dが50を超えると得られる成形品の外観が悪化するようになり好ましくない。
【0022】
本発明で使用するカルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス(C成分)とは、オレフィン系ワックスを特殊処理して得られるカルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を持つワックスである。このワックスを配合することにより、成形加工時のせん断によるワラストナイトの破壊を低減させ、本来のアスペクト比を保持し、それにより良好なドローダウン特性を発現するものと考えられる。
【0023】
このカルボキシル基及びカルボン酸無水物基は、このオレフィン系ワックスのどの部分に結合してもよく、またその濃度は特に限定されないが、該オレフィン系ワックス1g当り0.1〜6meq/gの範囲が好ましい。0.1meq/gより少なくなると剛性及び耐衝撃性の改良効果が不十分となり、6meq/gより多くなると該オレフィン系ワックス自身の熱安定性が悪化し好ましくない。かかるオレフィン系ワックスの市販品としては例えばダイヤカルナ−PA30(三菱化学(株)製:商品名)、ハイワックス酸処理タイプの2203A、1105A(三井石油化学(株)製:商品名)等が挙げられ、これら単独あるいは2種以上の混合物として使用される。
【0024】
本発明のブロー成形性に優れる分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、アスペクト比L/D=5〜50のワラストナイト(B成分)1〜100重量部、好ましくは5〜70重量部、更に好ましくは10〜40重量部、カルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス(C成分)を0.02〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部からなるものである。
【0025】
アスペクト比L/D=5〜50のワラストナイト(B成分)の配合割合が1重量部未満では、補強効果が小さく、ドローダウン特性の改良が不十分となり、100重量部を超えると得られる成形品の外観が悪化するようになり好ましくない。
【0026】
カルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス(C成分)の配合割合が0.02重量部未満ではドローダウン特性、及び耐衝撃性の改良効果が小さく、5重量部を超えると外観、機械的強度が低下するようになり好ましくない。
【0027】
本発明においてA成分、B成分、及びC成分からなる樹脂組成物にて目的とする樹脂組成物を得ることが可能であるが、更に、耐衝撃性、特に低温雰囲気下の耐衝撃性を向上させるために、ゴム質重合体(D成分)を、難燃性を付与するために、難燃剤(E成分)、難燃助剤(F成分)、また、耐衝撃性の厚み依存性を改良するために、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフトした熱可塑性グラフト共重合体を、また、耐薬品性を改良するために、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂等の他の熱可塑性樹脂(G成分)を配合することが可能である。
【0028】
ゴム質重合体(D成分)としては、例えば、ブタジエン−アルキル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のジエン系弾性重合体、ブタジエン−アルキルアクリレート−アルキル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル系弾性重合体、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが相互に絡み合った構造を有している複合弾性重合体、オレフィン系共重合体等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上混合して用いることも可能である。さらにオレフィン系共重合体とは、エチレン及び/又は炭素数3以上のα−オレフィンと不飽和カルボン酸エステルとを重合させて得られるものである。かかるオレフィン系共重合体を構成する炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、デセン−1、4−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられるがプロピレン又はブテン−1が好ましい。また不飽和カルボン酸エステルとしては、炭素数3〜8の不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエステルであり、具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、等が挙げられるが、アクリル酸エチル又はメタクリル酸メチルが好ましい。該オレフィン系共重合体はエチレン及び/又は炭素数3以上のα−オレフィンは50〜99重量%、不飽和カルボン酸エステル1〜50重量%の範囲内で共重合したものを用いることが好ましい。
【0029】
ゴム質重合体(D成分)の配合割合はA成分、B成分及びC成分からなる樹脂組成物100重量部に対し、1〜20重量部の範囲が好ましい。1重量部未満では衝撃改善効果が不十分であり、20重量部を超えると耐熱性や剛性が低下するようになる。
【0030】
難燃剤(E成分)としては、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)に対して一般的に使用される、ハロゲン系及び/又はリン系のものが好ましい。ハロゲン系難燃剤としては例えば芳香族ハロゲン化合物、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化ポリカーボネート樹脂、ハロゲン化芳香族ビニル系重合体、ハロゲン化シアヌレート樹脂、ハロゲン化ポリフェニルエーテル、ハロゲン化ポリフェニルチオエーテル等が挙げられ、好ましくはデカブロモジフェニルオキサイド、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ブロム化ポリスチレン樹脂、ブロム化架橋ポリスチレン樹脂、ブロム化ビスフェノールシアヌレート樹脂、ブロム化ポリフェニレンオキサイド、ポリジブロムフェニレンオキサイドが挙げられる。リン系難燃剤としては例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等の非ハロゲンリン酸エステル、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル等が挙げられる。かかる難燃剤E成分の配合割合はA成分、B成分及びC成分の3成分からなる樹脂組成物又は、A成分、B成分、C成分及びD成分の4成分からなる樹脂組成物100重量部に対して通常、1〜30重量部である。1重量部未満では十分な難燃効果が得られ難く、30重量部を越えると成形時の熱安定性が低下するようになる。
【0031】
また、難燃剤の効果を増大させるために難燃助剤(F成分)を用いることも可能である。難燃助剤(F成分)の例としてはモリブデン化合物、アンチモン化合物等を挙げることができる。このうち、特に好ましいものは、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモンである。また、難燃性能を更に向上させるためにフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを用いることも可能である。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格においてタイプIIIに分類されているものである。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、UL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しており、かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、一層の難燃効果を与えるものである。かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)よりテフロン6Jとして、又はダイキン工業(株)よりポリフロンとして市販されており容易に入手することが可能である。かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの配合量はA成分、B成分及びC成分の3成分からなる樹脂組成物又は、A成分、B成分、C成分及びD成分の4成分からなる樹脂組成物100重量部に対して通常、0.1〜1重量部である。0.1重量部未満では十分な溶融滴下防止性能が得られ難く、1重量部を越えると外観が悪化するようになる。
【0032】
他の熱可塑性樹脂(G成分)としては、例えば、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフトした熱可塑性グラフト共重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上混合して用いることも可能である。
【0033】
他の熱可塑性樹脂(G成分)の配合割合はA成分、B成分及びC成分からなる樹脂組成物100重量部に対し、1〜50重量部の範囲が好ましい。1重量部未満では耐衝撃性の厚み依存性や耐薬品性等の改善効果が不十分であり、50重量部を超えると溶融時の自重によるドローダウンが大きくブロー時の膨らみ性が不均一となり、偏肉の多いブロー成形物となる。
【0034】
本発明のA成分、B成分及びC成分からなる組成物には、更にD成分、E成分、F成分及びG成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で、核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、エチレンーアクリル酸ナトリウム等)、安定剤(例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル等)、酸化防止剤(例えばヒンダードフェノール系化合物等)、光安定剤、着色剤、発泡剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、等を配合してもよい。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、各成分をV型ブレンダー、リボンミキサー、タンブラー等で均一に混合した後、通常の押出機等にて溶融混練し、ペレット化することができる。また、任意の各成分のいずれかをあらかじめ混合した後、残りの成分を混合し、通常の押出機等にて溶融混練し、ペレット化してもよい。かくして得られた樹脂組成物はブロー成形、インジェクションブロー成形のほか、押出成形、熱成形、真空成形、射出成形、ガスアシスト成形等の任意の方法で容易に成形することができる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。また評価は下記の方法によった。
【0037】
(1)表面外観
箱型のブロー成形品の一部を切り出し、日本ビーケミカル(株)製R−230ドーバーホワイトを塗布し、80℃×1時間乾燥した後、万能表面形状測定機(SURFCOM 3B.E−MD−S10A:東京精密(株)製)にて触針径2μm、触針圧0.07gの条件にて平均表面粗さ(Ra)を測定した。なお塗装膜厚は30μmであった。Ra値は0.010μm以下が好ましい。
【0038】
(2)衝撃強度
ASTM D256に従い、アイゾットノッチ付きインパクト(厚さ3.2mm)を測定した。20kgf・cm/cm以上の値が好ましい。
【0039】
(3)剛性
ASTM D790に従い、曲げ試験を実施し、曲げ弾性率を測定した。
【0040】
(4)ドローダウン性(以下DDと表示)
ブロー成形機のダイより押出されたパリソンがダイ下、任意の長さに達した時の重量を測定し、図1に示すように横軸にパリソン長さ、縦軸にパリソン重量をとって曲線OPを作成し、この曲線に原点で接線OBを引き、パリソン長さLiに対応する重量をWpi、パリソン長さLiに対応する接線OBとの交点の重量をWBiとし下式より求める。
DD(%)={(WBi−WPi)/WBi}×100
ドローダウン性(DD値)は小さい方が好ましく、特に25%以下の値が好ましく大型ブロー成形品に適している。
【0041】
(5)燃焼性
UL94/V試験
UL規格94−Vに従い、燃焼試験を行った。なお、試験片の厚みは1/16インチであった。
UL94/5V試験
UL規格94−5Vに従い、燃焼試験を行った。なお、試験片の厚みは2.5mmであった。
【0042】
[分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂の合成例]
ホスゲン吹き込み管、温度計及びかきまぜ機を取り付けた反応槽に、ビスフェノールA114部を溶解した12.3%NaOH水溶液394部と塩化メチレン291部を入れ、かきまぜながら20〜25℃でホスゲン69.3部を40分を要して導入し、オリゴマーを生成せしめた。このものにフェノール1.97部とフロログルシン0.91部を溶解した10%NaOH水溶液9部を加え、5分間かきまぜた後トリエチルアミン0.23部を加え10分間かきまぜてフロログルシンを反応せしめた。しかる後、ビスフェノールA22.8部を溶解した4%NaOH水溶液237部を加え、約40分間かきまぜを続けて反応を完結した。反応混合液から塩化メチレン相を分離し、水洗後塩酸酸性とし水相の導電率がイオン交換水のそれとほとんど同じになるまで水洗を続けた後塩化メチレン相を分離し塩化メチレンを蒸発してポリマーを得た。このポリマーの粘度平均分子量は24,600であった。
【0043】
[実施例1〜10及び比較例1〜6]
表1及び表2に示す各成分を表記載の配合割合でV型ブレンダーで混合した後、径30mmのベント式押出機[ナカタニ(株)製VSK−30]によりシリンダー温度290℃でペレット化した。このペレットを120℃で5時間乾燥した後、射出成形機[FANUC(株)製T−150D]によりシリンダー温度290℃、金型温度80℃で試験片を作成し、評価結果を表1及び表2に示した。 また、上記ペレットを120℃で5時間乾燥した後、ブロー成形機[住友重機械工業(株)製住友ベクームSE51/BA2]を用いて、パリソンを形成し、Li=50cmの位置でドローダウン性を測定した。使用したブロー成形機のスクリュー径は50mmφ、ダイ外径は60mmφ、ダイ内径は56mmφである。さらに、得られたパリソンを型締め、吹き込みし、W100mm×T40mm×H300mmの箱型のブロー成形品を得た。この時の成形条件は、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、ブロー空気圧が5kgf/cm2である。
【0044】
なお、表1及び表2記載の各成分を示す記号は下記の通りである。
(A)分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂
▲1▼上記合成例の分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(以下分岐PCと称す)
▲2▼ビスフェノールAとホスゲンより製造される粘度平均分子量25,000の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂:帝人化成(株)製「パンライトL−1250」(以下PCと称す)
(B)無機充填剤
▲1▼ワラストナイト:NN−4;巴工業(株)製、平均径(D)=4μm、アスペクト比L/D=20(以下W−1と称す)
▲2▼ワラストナイト:WIC10;キンセイマテック(株)製、平均径(D)=4.5μm、アスペクト比L/D=8(以下W−2と称す)
(C)オレフィン系ワックス
α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合によるオレフィン系ワックス:ダイヤカルナ−PA30;三菱化学(株)製(無水マレイン酸含有量=10重量%)(以下WAXと称す)
(D)ゴム質重合体
▲1▼ブタジエン−アルキルアクリレート−アルキルメタアクリレート共重合体:EXL−2602;呉羽化学工業(株)製(以下E−1と称す)
▲2▼ポリオルガノシロキサン成分及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が相互侵入網目構造を有している複合ゴム:S−2001;三菱レイヨン(株)製)(以下E−2と称す)
(E)難燃剤
▲1▼ハロゲン系難燃剤(テトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー)[帝人化成(株)製FG−7000](以下FR−1と称す)
▲2▼リン系難燃剤(トリフェニルホスフェート)[大八化学(株)製TPP](以下FR−2と称す)
(F)滴下防止剤
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン[ダイキン工業(株)製ポリフロンF−201L]
(G)他の熱可塑性樹脂
▲1▼ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフトした熱可塑性グラフト共重合体
ABS樹脂:三井東圧化学(株)製「サンタックUT−61」(以下ABSと称す)
▲2▼ポリエチレンテレフタレート樹脂:帝人(株)製「TR−8580」、固有粘度0.8(以下PETと称す)
▲3▼ポリブチレンテレフタレート樹脂:帝人(株)製「TRB−H」、固有粘度1.07(以下PBTと称す)
(X)ワラストナイト以外の無機充填剤
▲1▼ガラス繊維:3PE−941;日東紡(株)製、平均径(D)=13μm、アスペクト比L/D=230(以下CSと称す)
▲2▼タルク:林化成(株)製HST−0.8(以下Tと称す)
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
この表から明らかなように、例えば実施例1と比較例1を比較した場合、A成分が分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を含まない場合には十分なドローダウン性を持たず、すなわち良好なブロー成形性を有しないことがわかる。さらに実施例1と比較例2を比較した場合、C成分を含まない場合にはドローダウン性が十分でないことがわかる。また実施例1と比較例3を比較した場合B成分を含まない場合には更にドローダウン性が低下することがわかる。更に実施例1と比較例4及び比較例5を比較すると、B成分を他の充填剤に変えた場合には平均表面粗さが大きい、すなわち外観が不十分であったり、ドローダウン性が不良であることがわかる。更に比較例6より必要以上にB成分が含まれる場合には、ドローダウン性の改良効果よりも外観の悪化が目立つようになることがわかる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、ブロー成形品とした場合の表面外観が良好であり、ドローダウン特性が極めて優れ大型ブロー成形に適しており、更に詳しくは衝撃強度にも優れるものであり、OA機器分野、自動車分野及び住宅建材分野等の各種工業用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のドローダウン特性を測定するための図。
Claims (2)
- 分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、アスペクト比L/D=5〜50のワラストナイト(B成分)1〜100重量部、カルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス(C成分)0.02〜5重量部からなるブロー成形性に優れる分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1に記載のブロー成形性に優れる分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から形成された成形品。
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