JP3836029B2 - 磁気ディスク用アルミニウム合金基板の打抜きプレス用金型、磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法 - Google Patents

磁気ディスク用アルミニウム合金基板の打抜きプレス用金型、磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びこれを素板から打抜くための打抜きプレス用金型に関し、特に、外周縁における端面ダレが少ない磁気ディスク用アルミニウム合金基板の打抜きプレス用金型並びにこれを使用して打抜いた磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスクにおいては、面記録密度の飛躍的な向上が図られており、近い将来には、面記録密度が100Gbit/inに達しようとしている。また、同時に、磁気ディスク1枚当たりの記録容量を高めるため、磁気ディスクの表面全域、即ち、ディスクの最外周縁まで使用することが検討されている。このため、特に、磁気ディスク用基板の外周部ではより厳しい機械的精度が求められている。
【0003】
一般に、面記録密度は、円周方向の記録密度(BPI:Bit Per Inch)と半径方向の記録密度(Track Per Inch)の積として表される。前述の面記録密度の飛躍的な向上は、半径方向の記録密度の増大に負うところが大きい。半径方向の記録密度を高めるためには、情報の書き込み及び読み取りのための磁気ヘッドの性能向上と、この磁気ヘッドを磁気ディスク上0.1μm以下の超低空で安定して浮上させることが必要であり、また、所定の半径位置に、極めて短時間で磁気ヘッドを位置決めするための技術開発も必要である。
【0004】
更に、磁気ディスク1枚当たりでの記録容量を高めるため、磁気ディスクの最外周縁まで使用する場合、最外周域においても磁気ヘッドが超低空で安定に飛行する必要があり、このため、基板最外周域の表面性状が重要となる。
【0005】
一般に、磁気ディスク用基板としては、所定の板厚に圧延されたアルミニウム合金板を打抜きプレスにより円輪状(中心部が円形にくり抜かれた円盤状)に打抜いたアルミニウム合金基板が使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この打抜きの際、打抜かれたアルミニウム合金基板の外周縁が大きく垂れる(以下、このような状態を、端面ダレという)という問題点が発生している。
【0007】
通常、打抜きプレスにより打抜かれたアルミニウム合金基板は100μm以上の大きな打抜き歪みを持つため、これを取り除くため、打抜き後に加圧焼鈍が行なわれる。その後、外周端部を整えるため、切削バイトを用いた端面加工と、表面性状を整えるための研削砥石を用いた研削が行なわれ、更に、より表面精度を高めるために、基板全面にNiPメッキ膜が形成され、その後、研磨により表面性状を高めることにより、最終的な磁気ディスク用基板となる。
【0008】
従って、打抜き後に大きな端面ダレを持つような場合には、打抜き時の外径を磁気ディスクから決まる所定寸法よりも大きくして打抜いた後、端面加工して前記所定寸法まで小さくする必要があり、所定の外径寸法を得るために、端面加工に長時間を要する。また、端面加工で取り切れない端面ダレは、その後の研削工程で取り除く必要があるが、研削工程で端面ダレを取り除くためには研削代を多くする必要があり、研削時間の長時間化を招くことになる。このため、プレス打抜き後の端面ダレが大きい場合には、打抜き後の各工程においてコスト上昇を招くことから、端面ダレが小さいアルミニウム合金基板が望まれている。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、磁気ディスク用アルミニウム合金基板の外周域における端面ダレを小さくできる打抜きプレス用金型を提供すると共に、この打抜きプレス用金型を用いて打抜かれた低コストの磁気ディスク用アルミニウム合金基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板の打抜きプレス用金型は、アルミニウム合金素板を円盤状に打抜くためのダイス及びパンチよりなるプレス用金型において、外縁を打抜くためのダイスの刃先角度が0.1乃至15°であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法は、ダイス及びパンチよりなるプレス用金型によりアルミニウム合金素板を打抜いて、中心部が円形にくり抜かれた円盤状の磁気ディスク用アルミニウム合金基板を製造する方法において、外縁を打抜くためのダイスの刃先角度が0.1乃至15°であり、打抜きにより、外周縁から半径方向に5mm内側の位置から外周側へ向かって、先端の曲率半径が25μmの超硬合金製触針を用いて、印加荷重30mN、走査速度0.1mm/秒の条件で測定した端面の平均ダレ幅が、600μm以下である基板を得ることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、中心部が円形にくり抜かれた円盤状の磁気ディスク用アルミニウム合金基板において、バリがない面における外周縁から半径方向に5mm内側の位置から外周側へ向かって、先端の曲率半径が25μmの超硬合金製触針を用いて、印加荷重30mN、走査速度0.1mm/秒の条件で測定した端面の平均ダレ幅が、600μm以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明者等が端面ダレを抑制すべく、鋭意実験研究した結果、打抜きプレス用金型、特に、外縁を打抜くための外縁ダイスにおけるアルミニウム合金板と接する面の刃先角度が、基板の端面ダレに大きく影響していることを見出した。
【0015】
そこで、本発明においては、磁気ディスク用アルミニウム合金基板における端面ダレを小さくするために、アルミニウム合金素板を円輪状に打抜くためのダイス及びパンチよりなるプレス用金型において、外周縁打抜き用ダイスの刃先角度を0.1乃至15°とする。
【0016】
この金型ダイスにより製造された磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、基板の最外周縁から5mm内周側の位置から、半径方向の外周側へ向かって、先端曲率半径25μmの超硬合金製触針を用いて、印加荷重30mN、走査速度0.1mm/秒にて測定した端面の平均ダレ幅が600μm以下である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施例に係る打抜きプレス用金型を示す断面図である。アルミニウム合金の素板10は帯状(ストリップ)をなし、矢印方向に水平に搬送される。この素板10の搬送域に、下金型として、外縁用ダイス1と内縁用パンチ2とが配置されており、上金型としてストリッパープレート3と上パンチ4とが配置されている。外縁用ダイス1は、磁気ディスク用基板の外縁を規定するものであり、内縁用パンチ2は磁気ディスク用基板の内縁を規定するものである。ストリッパープレート3は外縁用ダイス1との間で、上金型と下金型との間に位置する素板10を挟持し、素板1を固定するものである。上パンチ4は、下降して、外縁用ダイス1と内縁用ダイス2との間に進入し、円輪状の磁気ディスク用基板を打抜くものである。
【0018】
図2は図1のA部を拡大して示す断面図である。この図2に示すように、基板の外周縁を規定する外縁用ダイス1の刃先5は、その中心軸を鉛直にして設置された外縁用ダイス1の内周面6に垂直な水平面に対してなす角度(刃先角度)θが0.1乃至15°をなす。即ち、外縁用ダイス1はその縦断面において刃先5が内周面6との間で鋭角(90°−θ)に傾斜している。なお、外縁用ダイス1のA部の反対側のB部は図2と左右対称の形状をなしており、刃先5は同様に鋭角をなして傾斜している。
【0019】
なお、プレス用金型(外縁用ダイス1,内縁用パンチ2,ストリッパープレート3及び上パンチ4)の材質としては、一般的な冷間金型用合金工具鋼(SKD)及び高速度工具鋼(SKH)等を使用でき、金型材用として使用することができる材料であれば、特に問題なく使用することができる。
【0020】
このように構成された金型により、アルミニウム合金素板10を打抜く場合には、先ず、素板10が上金型と下金型との間に搬送されてきて停止した後、上金型のストリッパープレート3が下降し、素板10を下金型の外縁用ダイス1とストリッパープレート3とで挟み込み、拘束する。更に、これに追従し、上パンチ4が下降し、下金型の外縁用ダイス1と上パンチ4とによる剪断加工により、円輪状基板の外縁が形成され、下金型の内縁用パンチ2と上パンチ4との剪断加工により、円輪状基板の内径側が形成される。このようにして、所定の内外径を有する円輪状基板が打抜かれる。
【0021】
本発明においては、刃先角度θを0.1乃至15°としている。これにより、上パンチ4と外縁用ダイス1との剪断加工の工程で、剪断加工時の加工性、換言すれば、切れ味が改善され、その結果として、端面ダレが小さな磁気ディスク用アルミニウム合金基板が得られる。この場合、刃先角度θが0.1°より小さいと、端面ダレは小さくならず、また、刃先角度θが15°より大きくなると、これ以上、刃先角度を大きくして刃先5をより鋭くしても、端面ダレ防止の改善効果は得られず、金型作製費用が高くなるため、外縁用ダイスの刃先角度は0.1乃至15°とする。
【0022】
なお、本発明で使用されるアルミニウム合金素板10は、一般的な溶解、鋳造、圧延及び熱処理を行なうことにより得られ、溶解時に、アルミニウム原料に各種元素を添加することにより、所望の組成の磁気ディスク用アルミニウム合金素材とすることができる。また、この鋳塊を圧延する際に、圧延及び熱処理条件を変更することにより、板厚及び強度等の調整が可能である。また、アルミニウム合金素材10は、磁気ディスク用として使用することができる品種のものであれば、合金種によらず同様の効果が得られる。
【0023】
このようにして本発明の金型ダイスにより得られた円輪状の磁気ディスク用アルミニウム合金基板は、基板の外周縁から半径方向に5mm内側の位置から、半径方向の外周縁までの外周域にて、先端曲率半径25μmの超硬合金製触針を用いて、印加荷重30mN、走査速度0.1mm/秒にて測定した端面の平均ダレ幅が600μm以下である。図3は、この基板のダレ幅を測定する領域を示す模式図である。基板の外周縁を基準線▲2▼にて示した場合、この外周縁から5mm半径方向内側の位置とは、A点のことである。基準線▲1▼は、基板におけるバリがない方の表面の延長線であり、この基準線▲1▼から外れ始める位置がダレ開始点である。そして、このダレ開始点から基準線▲2▼が示す外周縁までの長さがダレ幅である。本発明においては、このダレ幅を複数箇所で測定し、その平均値を求めた。なお、図3においては、説明の便宜上、基板上面にはバリが存在せず、バリが下面に現れているが、この基板の上下面は図1と逆である。図1においては、上パンチ4により素板10を打抜くと、外縁用ダイス1の側の基板表面(図1の下面)にはバリが発生せず、基板上面側にバリが発生する。
【0024】
端面ダレを測定する領域(外周域)を外周縁から5mm内側の位置から外周縁までとしたのは、図3に示すように、ダレ幅に対して十分に長い基板表面上の基準点A,Bをとるため、即ち、ダレ開始点よりも十分に内側の位置からダレを測定するためである。
【0025】
なお、磁気ディスク用基板として求められる同心円を得るために、端面に形成されたバリ及び凹凸を取り除く必要があり、このバリ及び凹凸を取り除くために、通常、打抜き後の基板の外周部を10μm程度は切削除去している。本発明においては、このような端面加工をする前の製品(打抜き後の製品)において、平均ダレ幅を600μm以下とするものである。
【0026】
平均ダレ幅を600μm以下としたのは、ダレ幅がこれより大きくなると、端面加工ではこれを取りきれなくなり、端面加工後の研削工程に長時間を要することになるためである。また、ダレ幅がこれより大きくなると、基板の打抜き外径を大きくして、その後広い領域を端面加工する必要があるが、この端面加工に長時間を要することになり、ランニングコスト及び材料コストが上昇する。
【0027】
先端曲率半径が25ミクロンの超硬合金製触針を使用して、印加荷重30mN、走査速度0.1mm/秒にて端面ダレを測定する理由は、本発明で解決しようとするμmオーダーの端面ダレを、再現性良く測定するためである。
【0028】
なお、本発明は、3.5インチタイプの他、他のサイズ(例えば、3.0インチ、2.5インチ等)の磁気ディスク用基板にも適用可能であり、本発明の打抜きプレス用金型を用いることにより、同様に端面ダレの小さな磁気ディスク用アルミニウム合金基板が得られる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の範囲に入る実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。下記条件にて、3.5インチタイプの磁気ディスク用アルミニウム合金基板を作製した。また、打抜き後、円輪状基板の打抜き歪みを矯正するため、基板に対し通常の加圧焼鈍を行なった。その後、下記条件により、図3に示すようにして、外縁用ダイスと接した基板端面のダレ幅を測定した。ダレ幅の測定に際しては、ダレ幅に対し十分に長い(2倍以上)基板表面上の基準点A、Bをとり、点A、Bを結び外周端に延長した基準線を基準線▲1▼とする。更に、基準線▲1▼に対して垂直な端面の基準線▲2▼を決め、基準線▲1▼上で、実態の表面輪郭が離れ始める点をダレ開始点として、そこから基準線▲2▼までの距離をダレ幅と定義した。なお、端面のダレ幅は、基板1枚当たり4個所を90°置きに等間隔で測定し、平均値を端面のダレ幅(基板)とした。また、このような測定を、打抜き条件毎に20枚行ない、この平均値及び最大値を各打抜き条件下での端面のダレ幅として評価した。
【0030】
プレス条件
金型材質:冷間金型用合金工具鋼(SKD)、高速度工具鋼(SKH)
外径ダイスの刃先角度、0、1、5、7、9°
打抜き方式:プッシュバック方式による連続打抜き
クリアランス:9.0%
アルミニウム合金
合金名:JIS5086
板厚:1.292mm
端面のダレ幅測定条件
測定機:ミツトヨ製 輪郭形状測定機(商品名:コントレーサー)、型番:CV-500
解析プログラム:FORMPAK-1000
触針先端の曲率半径:25μm
印加荷重:30mN
走査速度:0.1mm/s
【0031】
上記条件で測定した端面ダレ測定結果を下記表1に示す。本発明の実施例1乃至8においては、端面ダレが小さい磁気ディスク用アルミニウム合金基板が得られた。これに対し、外縁用ダイスの刃先が傾斜を持たない(つまり、外縁用ダイスの刃先角度が0°)比較例1、2においては、端面ダレが700μm以上と大きいものであった。
【0032】
その後、実施例及び比較例の磁気ディスク用アルミニウム合金基板について、端面加工及び両面研削機により研削を行なったが、実施例1乃至8の場合は、端面ダレが小さいため、比較例に比べて研削時間を大幅に短縮できた。また、磁気ディスクとした場合にも、外周域において磁気ヘッドが超低空で安定に飛行した。
【0033】
【表1】
Figure 0003836029
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、円輪状に打抜くための打抜きプレス用金型を工夫し、特に、外径ダイスの刃先角度を0.1乃至15°とすることにより、端面ダレが小さい磁気ディスク用アルミニウム合金基板を得ることができる。これにより、端面加工及び研削加工コストを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る打抜きプレス用金型を示す断面図である。
【図2】図1のA部の拡大断面図である。
【図3】ダレ幅の測定方法を示す模式図である。
【符号の説明】
1:外縁用ダイス
2:内縁用パンチ
3:ストリッパープレート
4:上パンチ
5:刃先
6:外縁用ダイスの内周面

Claims (3)

  1. アルミニウム合金素板を中心部が円形にくり抜かれた円盤状に打抜くためのダイス及びパンチよりなるプレス用金型において、外縁を打抜くためのダイスの刃先が打ち抜き方向に平行の面とこの面に鋭角をなして傾斜する傾斜面とから構成され、前記傾斜面が打ち抜き方向に垂直の方向に対してなす刃先角度は0.1乃至15°であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の打抜きプレス用金型。
  2. ダイス及びパンチよりなるプレス用金型によりアルミニウム合金素板を打抜いて、中心部が円形にくり抜かれた円盤状の磁気ディスク用アルミニウム合金基板を製造する方法において、外縁を打抜くためのダイスの刃先が打ち抜き方向に平行の面とこの面に鋭角をなして傾斜する傾斜面とから構成され、前記傾斜面が打ち抜き方向に垂直の方向に対してなす刃先角度は0.1乃至15°であり、打抜きにより、バリがない面における外周縁から半径方向に5mm内側の位置から外周側へ向かって、先端の曲率半径が25μmの超硬合金製触針を用いて、印加荷重30mN、走査速度0.1mm/秒の条件で測定した端面の平均ダレ幅が、600μm以下である基板を得ることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板の製造方法。
  3. 中心部が円形にくり抜かれた円盤状の磁気ディスク用アルミニウム合金基板において、バリがない面における外周縁から半径方向に5mm内側の位置から外周側へ向かって、先端の曲率半径が25μmの超硬合金製触針を用いて、印加荷重30mN、走査速度0.1mm/秒の条件で測定した端面の平均ダレ幅が、600μm以下であることを特徴とする磁気ディスク用アルミニウム合金基板。
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