JP3835867B2 - 印刷版製造用液状感光性樹脂組成物 - Google Patents

印刷版製造用液状感光性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は溶剤型インキに対する耐久性の優れた印刷版の製造に好適な液状感光性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷用版材としてはゴム、固体状感光性樹脂版材及び液状感光性樹脂版材があるが、中でも液状感光性樹脂版材は未硬化樹脂の回収再使用が可能なため経済的に有利であることや、現像が水系の洗浄液で出来るので作業環境が良いなどの特徴を有することから印刷用版材として多用されている。
【0003】
印刷版に使用されるインキには水性インキ、溶剤型インキ等があり、溶剤型インキには、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類などが含まれている。印刷版製造用として汎用されているポリエステル及び/又はポリエーテルジオールを用いた不飽和ポリウレタンプレポリマーをベースとする液状感光性樹脂組成物は、溶剤型インキに対する耐性が低く、溶剤型インキを使用する印刷分野での使用には適さない。このため溶剤型インキを使用する印刷分野では、例えば、特公昭55−34930号公報に開示されている、末端に重合可能な二重結合を少なくても1.2個有し、水添化1,2−ポリブタジエンをセグメントとして含み、数平均分子量が1,000〜30,000である不飽和ポリウレタンプレポリマーをベースとする液状感光性樹脂組成物が用いられている。
【0004】
しかしながら、水添化1,2−ポリブタジエンをセグメントとして含み、数平均分子量が1,000〜30,000である不飽和ポリウレタンプレポリマーをベースとする液状感光性樹脂組成物を用いて得られた印刷版は、高印圧下で連続して印刷した場合、版の変形に対する回復が遅く、文字の太り、文字の変形などが発生し、印刷品質の低下を引き起こす場合があった。そのような場合には、印圧調整に多大な労力を要するので、印刷時に簡単な印圧調整ですみ、生産性を向上させる印刷版が求められていた。
【0005】
さらに、水添化1,2−ポリブタジエンをセグメントとして含み、数平均分子量が1,000〜30,000である不飽和ポリウレタンプレポリマーをベースとする液状感光性樹脂組成物を用いて得られた印刷版は表面粘着性が大きいため、保護フィルムを剥離させる際フィルムが破けたり、版同志が粘着しあって作業性を悪化させたり、紙剥けなどによる印刷不良を生じさせるなどの問題を引き起こすこともあった。
【0006】
このような印刷版の表面粘着性の除去に関しては、組成物にセチルアルコールを含有する方法(特開平06−119753号公報参照)や、水素引き抜き剤をラジカル重合性樹脂硬化物の表面層に含浸させた後、該硬化物の含浸部分に200〜300nmの活性光線を照射する方法(特開昭56−16182号公報参照)が提案されている。しかし、これら方法でも上記の液状感光性樹脂組成物を用いて得られた印刷版を切断した直後では印刷版の切断面の粘着性が残り、その切断面にゴミが付着したり、また切断面同志が粘着しあって作業性が悪化することもあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は印刷版製造用液状感光性樹脂組成物において、感光性樹脂組成物から得られる印刷版の溶剤型インキ耐性を維持し、印刷時に文字太り、文字変形がなく、更に版の粘着性が低下した印刷版を与える液状感光性樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
印刷時、高印圧下で連続して印刷した際に発生する文字太り、文字変形を解消するためには、印刷時の圧力で生じた印刷版の変形をすばやく回復させることが重要であり、この変形回復を早めるには印刷版の反発弾性を高めることが必要である。
反発弾性を高める手法としては、プレポリマーとしてポリエーテルポリオールをセグメントとする不飽和ポリウレタンプレポリマーを用いる方法(EP026336号公報参照)が提案されている。しかし、ポリエーテル系プレポリマーを用いると耐溶剤性が低下するため、溶剤型インキが使用できない。
【0009】
また、ポリエーテルからなる不飽和ポリウレタンをプレポリマーとして用いる場合、エチレン性モノマーとしてアクリレートを使用する方法(EP026336号公報参照)、更にはエチレン性モノマーとして、CH2=CHーCO−O−(C24O)n−R1(nは1〜20、R1はアルキル基)を使用する方法(特開平07−23954号公報参照)が提案されている。しかし、ポリブタジエンからなるプレポリマーを使用する場合、これらのエチレン性モノマーでは耐溶剤性・機械的物性を満足するには使用量に制限があり、その使用量の範囲では反発弾性における効果が見いだせない。従って、これらの従来技術からは溶剤型インキ適性を満足する耐溶剤性、機械的物性を維持し、かつ反発弾性が高められた印刷版を与えるような液状感光性樹脂は得られていなかった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討をした結果、(A)末端水酸基を有する水添化ポリブタジエン化合物であって、1,4−構造の割合が55〜70モル%水添化率が50モル%以上、数平均分子量500〜10,000である水添化ポリブタジエン化合物を、ジイソシアネートによりウレタン結合で鎖延長して得られるプレポリマー前駆体の末端に、重合可能なエチレン性二重結合を少なくとも1個導入して得られる、数平均分子量1,000〜30,000のプレポリマー100重量部、(B)エチレン性モノマー5〜200重量部、及び(C)光重合開始剤を(A)と(B)合計重量に対して、0.01〜10重量%を含有することを特徴とする印刷版製造用液状感光性樹脂組成物を用いることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
作用機構は不明であるが、ポリブタジエンの1,4−構造が半分以上になると反発弾性が大きくなり、版の粘着性が低下する。以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明において(A)成分のプレポリマーを得るために用いられる水添化ポリブタジエン化合物は、1,4−構造を55〜70モル%含む。1,4−構造が55%モル未満であると、得られる印刷版の反発弾性が乏しく、版の粘着性が増えるので好ましくない。また、1,4−構造が70モル%を超えると、感光性樹脂組成物の粘度が著しく大きくなるため、成形性、現像性などの製版作業性が低下し好ましくない。従って、1.4−構造の割合は、55モル%〜70モル%である。
【0012】
ポリブタジエンの水添化率は硬化物の力学的性質、耐溶剤性に大きく影響する。水添化率が50モル%以上であると、得られる印刷版の機械的物性が向上し、良好なインキ受理転移性を示し、また耐溶剤性も向上するので好ましい。したがって、水添化ポリブタジエン化合物の水添化率は50モル%以上である。更に好ましい水添化率は90モル%以上である。水添化ポリブタジエン化合物は1分子当たり少なくとも1個の末端水酸基を有することが必要である。末端水酸基が1分子当たり1個未満の場合、印刷版として十分な機械的物性が得られない。水添化ポリブタジエン化合物の末端水酸基が1分子当たり2個を超えるとジイソシアネートで鎖延長した場合、得られる感光性樹脂組成物の粘度が大きくなるため、成形性、現像性などの製版作業性が低下し好ましくない。機械的物性、粘度のバランスを考慮した場合、好ましい水添化ポリブタジエン化合物の末端水酸基数は1.5〜2.0個である。
【0013】
末端水酸基を有する水添化ポリブタジエン化合物としては、数平均分子量が500〜10,000のものが用いられる。数平均分子量が500未満の場合には得られる印刷版の機械的物性、耐溶剤性が低下し、数平均分子量が10,000を超えると前記化合物の粘度が高く、プレポリマーの製造が困難である。好ましい末端水酸基を有する水添化ポリブタジエン化合物の数平均分子量は1,000〜10,000である。(なお、ここでいう数平均分子量とはGPC法を用いたポリスチレン換算数平均分子量をさす。)
末端水酸基を有する水添化ポリブタジエン化合物とジイソシアネートとの反応は、公知の方法により行うことができる。例えば、この反応は第3級アミンやスズ化合物などのウレタン化触媒の存在下又は不在下で行わせることができ、またこの際の反応温度は40〜100℃が好ましい。このようなジイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族及び芳香族ジイソシアナートが用いられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2,6−及び/又は2,4−トリレンジイソシアネート(2,6−及び/又は2,4−TDI)、パラフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添化2,6−及び/又は2,4−TDI、水添化MDI、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0014】
本発明の(A)成分のプレポリマーを得るために、プレポリマー前駆体の末端に少なくとも1個のエチレン性二重結合を導入する方法は、特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。例えば、ポリマー前駆体の末端水酸基にあらかじめジイソシアネートを反応させて末端にイソシアネート基を導入し、次いでエチレン性二重結合とヒドロキシ基などの活性水素をもつ官能基とを有する化合物と反応させるか、末端水酸基とエチレン性二重結合を有するカルボン酸とエステル化させることにより得ることができる。
【0015】
エチレン性二重結合の導入に用いられるヒドロキシル基などの活性水素をもつ官能基とエチレン性二重結合を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどである。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(Mn=300〜1,000)、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート(Mn=300〜1,000)、グリコール酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの1:1付加反応生成物、グリセリン酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの1:1付加反応生成物、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0016】
本発明の(A)成分であるプレポリマーの数平均分子量は1,000〜30,000の範囲にあることが必要である。この数平均分子量が1,000未満の場合には、その液状感光性樹脂から得られる印刷版の機械的物性、反発弾性が乏しく、印刷版として不適当である。また、この数平均分子量が30,000を超える場合には、その液状感光性樹脂から得られる印刷版の機械的物性、反発弾性は優れているものの、液状感光性樹脂組成物の粘度が著しく大きくなるため、成形性、現像性などの製版作業性が低下する。好ましくは、プレポリマーの数平均分子量の範囲は、5,000〜25,000である。機械的物性の観点からさらに好ましくは、プレポリマーの数平均分子量は10,000〜25,000である。(なお、ここでいう数平均分子量とはGPC法を用いたポリスチレン換算数平均分子量をさす。)
本発明で用いるエチレン性モノマー(B)としては、公知のものが使用できる。例えば、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートやステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(Mn=300〜1,000)やポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(Mn=300〜1,000)などのポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−置換またはN,N’−置換(メタ)アクリルアミド、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(Mn=300〜1,000)やポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(Mn=300〜1,000)などのポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらエチレン性モノマーは目的に応じ1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0017】
エチレン性モノマーの添加量は、プレポリマー100重量部に対して5〜200重量部である。この添加量が5重量部より少ないと感光性樹脂組成物の粘度が高くなったり、得られる印刷版の機械的物性のバランスが取り難くなる。また、この添加量が200重量部を超えると光硬化の際の硬化収縮が大きくなり得られる印刷版の厚み精度が悪くなり、また十分な機械的物性を有する印刷版が得られない。感光性樹脂組成物の製版装置における作業性及び機械的物性のバランスを考えた場合、エチレン性モノマーの添加量はプレポリマー100重量部当たり15〜100重量部の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは30〜70重量部である。
【0018】
上記エチレン性モノマーのうち、エチルヘキシル、オクチル、カプリル、ノニル、デシル、ラウリル、セリル、イソボロニル等の炭素数5〜30の1価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,18−ステアランジオール等の炭素数5〜30の2価アルコールのモノー、ジー(メタ)アクリレートは特に版の耐溶剤性の向上に効果があるので、これらエチレン性モノマーのうち少なくとも1種類を本発明で用いるエチレン性モノマーとして含むことが好ましい。これらエチレン性モノマーの好ましい添加量はプレポリマー100重量部に対し30〜70重量部である。
【0019】
本発明の液状感光性樹脂の成分である光重合開始剤(C)としては、公知の種々のものを使用できる。このようなものとして例えばベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾイン−イソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタノールなどのベンゾイン(ジ)アルキルエーテル類、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、ジメチルアセトフェノンなどを挙げることができる。これらの光重合性開始剤の配合量はプレポリマーとエチレン性モノマーとの総量に対して0.01〜10重量%の範囲である。
【0020】
本発明の液状感光性樹脂組成物には、さらに、目的・必要に応じ、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染顔料、滑剤、酸化防止剤、無機充填剤、界面活性剤、可塑剤、プロセスオイル、流動パラフィン、液状ゴムなどを添加することができる。
次に本発明の液状感光性樹脂組成物を用いて凸版印刷用版を製造する工程の好適な例について説明する。
【0021】
ガラス板の上にネガフィルムを置きその上を薄い保護フィルムでカバーし、その上に本発明の液状感光性樹脂組成物を一定の厚みになるようにスキージしながら支持体となるベースフィルムを貼り合わせ、そして該液状感光性樹脂層の厚みが予め設定された一定値となるようベースフィルムの上にガラス板を当てる。
次いで、上部活性光線源により短時間の露光を行い版の支持体全面に均一な薄い樹脂層すなわちバック析出層を形成するバック露光を行い、次いで下部活性光線源により画像形成露光を行いレリーフを形成する。そして未硬化の樹脂は洗浄除去(現像)し、次いで得られた版全体を水中に浸漬しながら更に活性光線を照射(水中後露光)して硬化をより完全なものとしたのちこれを乾燥して凸版印刷版を製造する。
【0022】
硬化層の厚みが4mm以上の場合には、レリーフ露光工程の前に、上部光源によって支持体側から選択的に露光(マスキング露光)し、予めレリーフの基礎となる土台(シェルフ部)を形成することが望ましい。
前記製版工程において露光に用いられる活性光線源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプなどが挙げられる。またレリーフ像を形成するために用いられる透明画像担体としては、銀塩像による写真製版用のネガまたはポジフィルムが主に用いられる。
【0023】
未硬化樹脂の洗浄液としては、例えば水、アルカリ水溶液、界面活性剤水溶液などが用いられる
本発明の印刷版製造用液状感光性樹脂組成物はフレキソ印刷版製造用やスタンプ印版などの直接製版に使用することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の具体例を実施例にもとづいて説明する。
プレポリマーの分子量を規定するのに用いられたGPC法によるポリスチレン換算平均分子量の測定条件は次の通りであった。
カラム:TSK GEL GMHXL(7.8mm×300mm)2本。
【0025】
溶媒 :テトラハイドロフラン。
流量 :1.0ml/min。試料濃度0.5%以下。
GPC装置:高速GPC HLC−8020(東ソー株式会社製)。
検出機:RI。
標準ポリスチレン:分子量範囲は5.00×102〜1.26×106(東ソー株式会社製)。
【0026】
【製造例1】
ポリブタジエンの1,4−構造が60モル%であり、1分子当たり平均1.95個の水酸基を有する末端水酸基型の水添化ポリブタジエン(平均分子量Mn=3,280、水添化率99モル%)300gとトリレンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20)20.7gを40℃で30分攪拌混合し、次いで80℃で5時間反応させた後、2ーヒドロキシプロピルメタクリレート11g、ハイドロキノン0.3g、ジブチルスズジラウレート0.6gの混合液を加え、80℃で反応させ、赤外吸収スペクトルのチャートにおいて、NCO基特性吸収が消失したところで反応を止め、プレポリマーaを得た。ポリマー分のMnは1.7×104であった。
【0027】
【製造例2】
ポリブタジエンの1,4−構造が60モル%であり、1分子当たり平均1.92個の水酸基を有する末端水酸基型の水添化ポリブタジエン(平均分子量Mn=3,190、水添化率99モル%)300gとトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート28.5gを40℃で30分攪拌混合し、次いで80℃で5時間反応させた後、2ーヒドロキシプロピルメタクリレート15.6g、ハイドロキノン0.3g、ジブチルスズジラウレート0.6gの混合液を加え、80℃で反応させ、赤外吸収スペクトルのチャートにおいてNCO基特性吸収が消失したところで反応を止め、プレポリマーbを得た。ポリマー分のMnは1.7×104であった。
【0028】
【製造例3】
ポリブタジエンの1,4−構造が60モル%であり、1分子当たり平均1.92個の水酸基を有する末端水酸基型の水添化ポリブタジエン(平均分子量Mn=3,190、水添化率99モル%)700gとヘキサメチレンジイソシアネート53.1gを40℃で30分攪拌混合し、次いで80℃で5時間反応させた後、2ーヒドロキシプロピルメタクリレート36.4g、ハイドロキノン0.3g、ジブチルスズジラウレート0.6gの混合液を加え、80℃で反応させ、赤外吸収スペクトルのチャートにおいてNCO基特性吸収が消失したところで反応を止め、プレポリマーcを得た。ポリマー分のMnは1.9×104であった。
【0029】
【比較製造例1】
ポリブタジエン構造の1,4−構造が10モル%であり、1分子当たり平均2.0個の水酸基を有する末端水酸基型のポリブタジエン(平均分子量Mn=2,200、水添化率 90モル%)300gとテトラメチレンジイソシアネート31.5gを40℃で30分攪拌混合し、次いで80℃で5時間反応させた後、2ーヒドロキシプロピルメタクリレート16g、ハイドロキノン0.3g、ジブチルスズジラウレート0.6gの混合液を加え、80℃で反応させ、赤外吸収スペクトルのチャートにおいてNCO基特性吸収が消失したところで反応を止め、プレポリマーgを得た。ポリマー分のMnは1.3×104であった。
【0030】
【比較製造例2】
ポリブタジエン構造の1,4−構造が10モル%であり、1分子当たり平均1.5個の水酸基を有する末端水酸基型の水添化ポリブタジエン(平均分子量Mn=3,200、水添化率86モル%)320gとヘキサメチレンジイソシアネート19.5gを40℃で30分攪拌混合し、次いで80℃で5時間反応させた後、2ーヒドロキシエチルメタクリレート12g、ハイドロキノン0.3g、ジブチルスズジラウレート0.6gの混合液を加え、80℃で反応させ、赤外吸収スペクトルのチャートにおいて、NCO基特性吸収が消失したところで反応を止め、プレポリマーeを得た。ポリマー分のMnは2.5×104であった。
【0031】
【比較製造例3】
ポリブタジエン構造の1,4−構造が60モル%であり、1分子当たり平均2.0個の水酸基を有する末端水酸基型のポリブタジエン(平均分子量Mn=3,000、水添化なし)600gとテトラメチレンジイソシアネート42gを40℃で30分攪拌混合し、次いで80℃で5時間反応させた後、2ーヒドロキシエチルメタクリレート20g、ハイドロキノン0.3g、ジブチルスズジラウレート0.6gの混合液を加え、80℃で反応させ、赤外吸収スペクトルのチャートにおいてNCO基特性吸収が消失したところで反応を止め、プレポリマーeを得た。ポリマー分のMnは1.8×104であった。
【0032】
【実施例1〜3、比較例1〜3】
実施例及び比較例で使用した化合物の略号を表1に示した。
前記製造例で製造したプレポリマーa〜eに、表2に示す通りエチレン性モノマー、光重合開始剤を加え、実施例1〜3、比較例1〜3の各液状感光性樹脂組成物を得た。
【0033】
また、得られた組成物の評価は次のように行った。なお、断りのない限り測定は20℃で行った。
耐溶剤性:調合された液状感光性樹脂組成物を薄い保護フィルムを被せた厚さ4mmのソーダガラス板2枚の間に厚みが1mmになるようにスペーサーをかませて挟み込み、ガラス板上の照度が2.0mW/cm2の光源強度で30分間露光を施し、厚さ1mmのサンプル板を作成した。このサンプル板を1cm×5cmのサンプル片に切り取り、イソプロピルアルコール(IPA)溶剤に24時間浸漬させた。浸漬前と浸漬後のそれぞれのサンプル片の重量を測定し、重量変化率(膨潤率)を求めた。重量変化率が15%を超えると、印刷において文字の太りが発生し、印刷品質において問題になる。
【0034】
印刷版作成:調合された液状感光性樹脂組成物を用いて、旭化成工業(株)製APR製版装置を使用し、全厚3mm、バック析出厚み(支持体込み)約1mm、ベタ画像の面積が6cm×7cmでバック析出部を含めた大きさが10cm×10cmである印刷版を作成した。露光については装置としてAF210E(旭化成工業(株)製)、支持体としてAPRベースフィルムBF123(旭化成工業(株)製)、カバーフィルムとしてCF42(旭化成工業(株)製)を使用した。現像については装置としてALF200W(旭化成工業(株)製)、水系現像液としてW−6(旭化成工業(株)製)を4重量%使用し、約40℃で20分間洗浄した。後露光については装置としてALF200UP(旭化成工業(株)製)を使用し、10分間水中CL/GL後露光した。乾燥については装置としてAL100P(旭化成工業(株)製)を使用し、60℃で10分間乾燥した。
【0035】
印刷版の反発弾性:落球法により測定され、上記印刷版作成方法により作られた印刷版の上方30cmの高さから直径8mmの鉄球を自然落下させ、この鉄球が跳ね返る高さScmを測定した。この際、サンプル版表面にベトツキがある場合は、それによって測定値が変わるので、表面をタルクなどでパウダリング処理したのち測定した。反発弾性が低いと、高印圧下での連続印刷において文字太り、文字の変形など印刷品質に悪影響を及ぼし好ましくない。
【0036】
反発弾性の値は比較例1の値を100と基準にした時の相対比較として示し、値が大きい程、反発弾性が高く好ましい。印刷時の文字太り、文字変形を軽減するために、反発弾性は130%以上の向上が必要である。更に好ましくは150%以上である。
印刷版の粘着性:上記印刷版作成方法により作られた印刷版を用い、タックテスターにより測定した。タックテスター(東洋精機社製)は直径50mm、巾13mmのアルミニウム輪の円周部表面にポリエチレンフィルムを貼り付けたものをレリーフ表面層に接触させ、アルミニウム輪に500gの加重をかけて4秒間放置した後、毎分30mmの速度でアルミニウム輪を引き上げ、アルミニウム輪がレリーフ表面から離れる時の粘着力をプッシュブルゲージで読みとるものである。タックテスターの値は小さい方が粘着性がない印刷版であるといえる。ただし恒久的粘着性評価では、印刷時に剥がれ落ちてしまうコーティング層がない状態、すなわち感光性樹脂組成物中に表面粘着性除去を目的とした滑剤が含まれる場合は滑剤を除去して、感光性樹脂基質の粘着性を評価しなければならない。
【0037】
表面粘着性が大きいと、保護フィルムを剥離させる際フィルムが剥がれたり、印刷版を重ね置きしたときに、版同志が密着してしまったり、被印刷物が紙である場合には紙との粘着性により紙剥けの現象が起こったり、版を切断した際は切断面にゴミの付着、また切断面同志が粘着しあって作業性を低下させるなどの問題が起こる。
【0038】
表面粘着性の値は比較例1の値を100と基準にした時の相対比較として示し、値が小さい程表面粘着性が小さく好ましい。作業性を向上させるには、表面粘着性が70%以下に、好ましくは50%以下に低下した版が好ましい。
以上の方法により測定した結果を表3にまとめた。
実施例1〜3の感光性樹脂組成物から得られた版のIPAに対する膨潤率は5%以下を示し、溶剤型インキに耐えうる印刷版であった。また得られた印刷版の反発弾性は比較例1に対し150〜165%に向上し、連続印刷における文字太り、文字変形がなく、印刷品質の向上が認められた。また、印刷版の粘着性は比較例1に対し30〜45%に低下し、作業性が改善された。またこの液状感光性樹脂組成物の粘度、成形性、水溶液現像性などの製版作業性、版画像再現性、及び得られた印刷版の版厚精度、機械的強度、印刷インキ受理転移性、耐久性などは特に問題となるものはなかった。
【0039】
これに対して、ポリブタジエンの構造が本発明の範囲とは異なる比較例1、2の感光性樹脂組成物から得られた印刷版では反発弾性が低く、粘着性が大きいため高印圧下での連続印刷における印刷品質や製版作業性も改善されなかった。
また、ポリブタジエンの水添化していない比較例3の感光性樹脂組成物から得られた印刷版のIPAに対する膨潤率が印刷品質の問題となる15%の上限を超えた18%と大きく、溶剤型インキに耐えうる印刷版は得られなかった。
【0040】
【表1】
Figure 0003835867
【0041】
【表2】
Figure 0003835867
【0042】
【表3】
Figure 0003835867
【0043】
【発明の効果】
本発明の液状感光性樹脂組成物を用いて製造される印刷版は、溶剤型インキの使用に耐えるものであり、かつ、版の反発弾性が高められ、表面粘着性が少ないため、溶剤型インキの使用にあたり、連続印刷における印刷品質の維持、製版作業性の改善に大きな効果を与える。

Claims (1)

  1. (A)末端水酸基を有する水添化ポリブタジエン化合物であって、1,4−構造の割合が55〜70モル%、水添化率が50モル%以上、数平均分子量500〜10,000である水添化ポリブタジエン化合物を、ジイソシアネートによりウレタン結合で鎖延長して得られるプレポリマー前駆体の末端に、重合可能なエチレン性二重結合を少なくとも1個導入して得られる、数平均分子量1,000〜30,000のプレポリマー100重量部、
    (B)エチレン性モノマー5〜200重量部、及び
    (C)光重合開始剤を(A)と(B)合計重量に対して、0.01〜10重量%を含有することを特徴とする印刷版製造用液状感光性樹脂組成物。
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