JP3835541B2 - ゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コアと、このコアを包囲する一層又は二層の層からなる中間層と、該中間層を被覆する熱可塑性樹脂を主材とするカバーとを備えたゴルフボールにおいて、中間層に無機充填剤を適量添加することにより、良好な打球感を有すると共に、耐久性が大幅に改善したゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、カバー材に無機充填剤を添加するという技術は数多く提案されている(特公平5−73427号公報、特開平6−277312号公報、特開昭57−25867号公報、同60−210272号公報等)。
【0003】
中でも、特開平6−277312号公報には、カバー材にチタン白と硫酸バリウムなどの無機充填剤を添加することにより、ボール内での重量分布をコア中心からカバー側にシフトさせ、ボール自体の慣性モーメントを大きくして、飛行中のスピンの減衰を抑制し、その結果、打撃時における初期スピンがかかり難くなり、飛距離を大きくすることができるものである。
【0004】
しかしながら、これらの提案はいずれも基本的にはカバーの高比重化によりボールの慣性モーメントを増加させ、飛距離性能を向上させることを主眼としたものであり、カバー材に無機充填剤を入れすぎると却ってボールの反発性や割れ耐久性を損なってしまう。
【0005】
一方、ゴルフボールは、打撃時の心地よい打球感が必須の要素であり、これがないと商品価値が損なわれてしまうものである。
【0006】
このため、打球感を良くするべく様々な工夫が数多く提案されているが、従来技術の範疇では、軟らかい打球感が得られると、反面、連続打撃での耐久性が低下してしまい、良好な打球感と連続打撃での耐久性の向上を同時に達成することは極めて困難であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは軟らかいコアの周囲に無機充填剤を適量添加した一層又は二層の中間層を形成することにより、良好な打球感と連続打撃時での耐久性の向上を図ることができるゴルフボールを提供するところにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、コアと、このコアを包囲する一層又は二層の層からなる中間層と、該中間層を被覆する熱可塑性樹脂を主材とするカバーとを備えたゴルフボールにおいて、上記中間層の少なくとも一層を適量の無機充填剤を添加した樹脂成分にて形成することにより、軟らかい打球感と優れた連続打撃耐久性を有するゴルフボールが得られることを知見した。
【0009】
即ち、コアと、このコアを包囲する二層の層からなる中間層と、該中間層を被覆する熱可塑性樹脂を主材とするカバーとを備えたゴルフボールにおいて、上記コアがゴム基材を主成分とし、該コアの直径が28〜38mm、該コアの100kg荷重負荷時の変形量が3.0mm以上、中間層の比重が1.0〜1.3、カバーの比重が0.93〜0.98、好ましくは0.95〜0.98であると共に、上記中間層の少なくとも一層が、樹脂成分と、この樹脂成分100重量部に対して平均粒径0.01〜100μmを有する無機充填剤5〜40重量部とを含有したものであること、好ましくは中間層の厚みを0.5〜6.0mmに形成すること、内側の中間層のショアD硬度を45〜70とし、外側の中間層のショアD硬度を55以下とすること、及びカバーのショアD硬度を55〜70とすることにより、軟らかく形成されたコアと無機充填剤を適量添加した中間層とが、意外にも相乗的に作用して、従来からの解決課題であった打撃時の打球感を軟らかく心地よいものにできると共に、連続打撃時の耐久性及び外観性に優れたゴルフボールが得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0010】
なお、本発明は、従来技術のように、カバー材に無機充填剤を添加し、カバーを高比重化することによりボールの慣性モーメントを増加させ、飛び性能を向上させることを目的とするものではなく、軟らかいコアと無機充填剤を適正な量で均一に分散させた一層又は二層の層からなる中間層とを組み合わせることにより、これらが相乗的に作用して、今までにない良好な打球感と連続打撃での優れた耐久性を有するゴルフボールを得ることを主眼としたものである。
【0011】
従って、本発明は、コアと、このコアを包囲する二層の層からなる中間層と、該中間層を被覆する熱可塑性樹脂を主材とするカバーとを備えたゴルフボールにおいて、上記コアがゴム基材を主成分とし、該コアの直径が28〜38mm、該コアの100kg荷重負荷時の変形量が3.0mm以上であると共に、上記中間層の少なくとも一層が、樹脂成分と、この樹脂成分100重量部に対して平均粒径0.01〜100μmを有する無機充填剤5〜40重量部とを含有したものであり、その中間層の比重が1.0〜1.3であり、カバーの比重が0.93〜0.98であると共に、内側の中間層のショアD硬度が45〜70であり、外側の中間層のショアD硬度が55以下であり、カバーのショアD硬度が55〜70であることを特徴とするゴルフボールを提供する。
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明のゴルフボールは、ソリッドコアと、このソリッドコアを包囲する二層に多層化された中間層と、該中間層を被覆するカバーとを有する多層構造に構成されており、後述するように、中間層の少なくとも一層が樹脂成分とこれに無機充填剤を適量添加した樹脂組成物から形成されるものである。
【0013】
上記ソリッドコア1は、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴムを主成分とする基材ゴムを主材とするゴム組成物から形成することができるが、特に反発性を向上させるためにはポリブタジエンゴムが好ましい。ポリブタジエンゴムとしては、シス構造を少なくとも40%以上有するシス−1,4−ポリブタジエンが好適である。また、この基材ゴム中には、所望により上記ポリブタジエンに天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴムなどを適宜配合することができるが、ポリブタジエンゴム成分を多くすることによりゴルフボールの反発性を向上させることができるので、これらポリブタジエン以外のゴム成分はポリブタジエン100重量部に対して10重量部以下とすることが好ましい。
【0014】
上記ゴム組成物には、ゴム成分以外に架橋剤としてメタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩,マグネシウム塩やトリメチルプロパンメタクリレート等のエステル化合物などを配合し得るが、特に反発性の高さからアクリル酸亜鉛を好適に使用し得る。これら架橋剤の配合量は、基材ゴム100重量部に対し15〜40重量部であることが好ましい。
【0015】
また、ゴム組成物中には、通常、ジクミルパーオキサイド等の加硫剤が配合されており、この加硫剤の配合量は基材ゴム100重量部に対し0.1〜5重量部とすることができる。
【0016】
上記ゴム組成物には、更に必要に応じて、老化防止剤や比重調整用の充填剤として酸化亜鉛や硫酸バリウム等を配合することができ、これら充填剤の配合量は、基材ゴム100重量部に対し0〜130重量部である。
【0017】
本発明におけるコア用ゴム組成物の好適な実施態様は、以下に示す通りである。
シス−1,4−ポリブタジエン 100重量部
酸化亜鉛 5〜40重量部
アクリル酸亜鉛 15〜40重量部
硫酸バリウム 0〜40重量部
パーオキサイド 0.1〜5.0重量部
老化防止剤 適量
加硫条件:好ましくは150±10℃の条件で5〜20分間加硫を行う。
【0018】
そして、上記コア用ゴム組成物は、通常の混練機(例えばバンバリーミキサー、ニーダー及びロール等)を用いて混練し、得られたコンパウンドをコア用金型を用いてインジェクション成形又はコンプレッション成形により形成する。
【0019】
このようにして得られたソリッドコアは、その直径が好ましくは28〜38mm、より好ましくは30〜37mmであり、比重が好ましくは1.05〜1.25、より好ましくは1.07〜1.23である。
【0020】
また、コアの100kg荷重負荷時の変形量は3.0mm以上であることが必要であり、好ましくは3.0〜8mm、より好ましくは3.3〜7.0mmである。コアの変形量が3.0mm未満ではコアが硬くなりすぎ、打撃時の打球感が硬くなり、本発明の目的を達成できなくなる。一方、8mmを超えるとコアが軟らかくなりすぎ、反発性を著しく低下させてしまう場合がある。なお、コアは1種類の材料からなる単層構造としてもよく、異種の材料からなる層を積層した二層以上からなる多層構造としても構わない。
【0021】
上記中間層は、コアの周囲に二層に形成することができる。
【0022】
この中間層は熱可塑性樹脂を主成分とし、例えばポリエステルエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレン系エラストマー、ウレタン系樹脂、水添ブタジエン樹脂及びこれらの混合物などが挙げられるが、具体的には、「ハイミラン」(三井・デュポンポリケミカル社製)、「サーリン」(デュポン社製)、「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)、「パンデックス」(大日本インキ化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0023】
ここで、中間層をコアの周囲に二層(第1中間層の周囲に第2中間層を被覆した場合)形成する本発明においては、第1中間層には比較的高硬度のアイオノマー樹脂を主成分として用い、第2中間層には第1中間層よりも軟らかいポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等を用いることが好ましい。
【0024】
本発明においては、中間層の一層のみ又は両中間層に無機充填剤を添加する。
【0025】
この場合、無機充填剤をこれが添加される層を形成する樹脂成分100重量部に対して5〜40重量部、好ましくは10〜38重量部、より好ましくは13〜36重量部添加する。無機充填剤の添加量が5重量部未満では補強効果が生じなくなる。一方、40重量部を超えると分散性や反発性に悪影響が出る。
【0026】
本願発明において、無機充填剤の平均粒子径は0.01〜100μmの範囲内に規定されるものであり、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜1.0μmである。平均粒子径が上記範囲より小さすぎても、大きすぎても充填時の分散性を悪化させることになり、本発明の作用効果を達成できない場合がある。
【0027】
また、無機充填剤の比重は通常6.5以下、好ましくは2.0〜6.0である。 このような無機充填剤としては、例えば硫酸バリウム(比重約4.47)、ルチル型のチタン白(比重約4.17)、炭酸カルシウム(比重約2.6)などが挙げられ、これらの1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
なお、中間層組成物には、必要に応じて酸化防止剤、金属石鹸等の分散剤などを添加することもできる。
【0029】
上記中間層をコアの周囲に被覆する方法としては、特に制限はなく、通常のインジェクション成形又はコンプレッション成形を採用することができる。
【0030】
このようにして成形された中間層の比重は全体で1.0〜1.3、好ましくは1.02〜1.28、より好ましくは1.05〜1.26である。
【0031】
また、中間層の厚みは全体で好ましくは0.5〜6.0mm、より好ましくは1.0〜5.0mmであり、無機充填剤が添加された層の厚みについては、好ましくは0.7〜4.0mm、より好ましくは0.8〜3.5mmである。
【0032】
中間層が二層の多層構造からなる本発明においては、外側の中間層がショアD硬度で55以下であり、内側の中間層がショアD硬度45〜70、好ましくは55〜70である。
【0033】
上記カバー3は、熱可塑性樹脂を主材とするカバー材から形成され、例えばポリエステルエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレン系エラストマー、ウレタン系樹脂、水添ブタジエン樹脂及びこれらの混合物などが挙げられるが、特にアイオノマー樹脂が好ましく、具体的には、「ハイミラン」(三井・デュポンポリケミカル社製)、「サーリン」(デュポン社製)が挙げられる。
【0034】
本発明においては、カバーにも無機充填剤を添加することは差し支えないが、無機充填剤を多量に添加するとインジェクション成形時にウェルドの発生などの外観上の不具合が発生しやすくなるため、極力カバーへの充填量は少ないほうが好ましく、通常添加量はカバーを形成する樹脂成分100重量部に対して0〜8.0重量部であり、白味を増すためのチタン白、青味調整のための群青などを上記必要最小限の添加に留めておくことが望ましい。
【0035】
なお、カバー材には、必要に応じてUV吸収剤、酸化防止剤、金属石鹸等の分散剤などを添加することもできる。
【0036】
上記カバーを中間層上に被覆する方法としては、特に制限はなく、通常のインジェクション成形又はコンプレッション成形を採用することができる。
【0037】
このようにして成形されたカバーの比重は0.93〜0.98の範囲内に規定されるものであり、好ましくは0.95〜0.98である。また、カバーの厚みは0.5〜2.5mm、好ましくは0.8〜2.3mmであり、またカバーのショアD硬度は55〜70、好ましくは58〜68である。なお、カバーは異なる材料から選択された複数層に形成しても差し支えない。
【0038】
本発明のゴルフボールは、以上の構成を備えることにより、軟らかく心地よい打球感及び良好な外観性を備えると共に、繰り返し打撃での耐久性が飛躍的に向上したものである。
【0039】
なお、本発明のゴルフボールは、その表面に多数のディンプルが形成されており、必要に応じて表面に塗装及びスタンプなどの仕上げ処理を施すことができる。またボール全体の硬度が100kgの荷重を負荷した時に生じる変形量で好ましくは2.6〜6.0mm、より好ましくは3.0〜5.8mmであり、ボール直径及び重量はR&Aのゴルフ規則に従い、直径42.67mm以上、重量45.93g以下に形成することができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、軟らかいコアと少なくとも一層に無機充填剤を適量添加した二層の層からなる中間層との組み合わせにより、今までにはない優れた割れ耐久性と良好な打球感を備えたゴルフボールが得られるものである。
5以下であり、内側の中間層がショアD硬度45〜70、好ましくは55〜70である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、表1,2の配合量は総て重量部である。
【0042】
〔実施例、比較例〕
表1に示した配合処方のコア用ゴム組成物をニーダーで混練し、コア用金型内で155℃の温度で約15分間加硫することにより実施例、比較例のソリッドコアを作成した。
【0043】
得られたコアの周囲に表2に示した中間層材及びカバー材を表3の組み合わせで射出成形により被覆形成して、実施例1〜3及び比較例1,2のソリッドゴルフボールを作成した。なお、比較例2は中間層のないコアとカバーからなるツーピースゴルフボールである。
【0044】
次いで、得られたゴルフボールについて、下記の方法によりコア硬度、連続打撃耐久性、打球感及び外観性を測定した。結果を表3に併記する。
コア硬度
コアに100kg荷重を負荷した時の変形量(mm)で表した。
連続打撃耐久性
スイングロボットを用いてボールをドライバー(J’s World Stage ロフト角11度(ブリヂストンスポーツ株式会社製))により、ヘッドスピード45m/secの条件で繰り返し打撃した後、ボール表面の割れの発生状態を打撃回数によって相対的に比較した。
◎:全く問題なし
○:クラックの発生あり
△:比較的早期破壊
×:早期破壊
打球感
プロゴルファー4名により実打した時の感触を下記基準で評価した。
◎:軟らかく心地良い
○:良好
△:やや硬い
×:硬い
外観性
成形後のボール表面の状態を目視観察して下記基準で評価した。
◎:極めて良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果から、比較例1は第1中間層に無機充填剤を2重量部しか添加しないもの、第2中間層に無機充填剤を添加しないものであるため、連続打撃での耐久性が劣るものである。
【0049】
比較例2は従来のコアとカバーからなるツーピースボールであり、カバーに無機充填剤を多量に添加したために、連続打撃耐久性及び外観性が劣ると共に、打球感が極めて悪いものである。
【0050】
これに対して、実施例1〜3のボールは、軟らかいコアの周囲に無機充填剤を適量に添加した二層の中間層を形成することにより、連続打撃耐久性、打球感、外観性のいずれも優れたものである。
Claims (5)
- コアと、このコアを包囲する二層の層からなる中間層と、該中間層を被覆する熱可塑性樹脂を主材とするカバーとを備えたゴルフボールにおいて、上記コアがゴム基材を主成分とし、該コアの直径が28〜38mm、該コアの100kg荷重負荷時の変形量が3.0mm以上であると共に、上記中間層の少なくとも一層が、樹脂成分と、この樹脂成分100重量部に対して平均粒径0.01〜100μmを有する無機充填剤5〜40重量部とを含有したものであり、その中間層の比重が1.0〜1.3であり、カバーの比重が0.93〜0.98であると共に、内側の中間層のショアD硬度が45〜70であり、外側の中間層のショアD硬度が55以下であり、カバーのショアD硬度が55〜70であることを特徴とするゴルフボール。
- 上記カバーの比重が0.95〜0.98である請求項1記載のゴルフボール。
- 上記中間層の厚みが0.5〜6.0mmである請求項1又は2記載のゴルフボール。
- 上記無機充填剤の比重が6.5以下である請求項1〜3のいずれか1項記載のゴルフボール。
- 上記無機充填剤の平均粒径が0.1〜10μmである請求項1〜4のいずれか1項記載のゴルフボール。
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