JP3835267B2 - 発進用摩擦係合装置の潤滑装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、発進時に滑りを伴う係合状態に制御される摩擦式のクラッチやブレーキなどの潤滑をおこなうための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両が発進する場合、駆動トルクを次第に増大させてショックを生じさせることなく滑らかに発進させることが望ましい。このような制御は、手動変速機を搭載した車両においては、クラッチを、滑りを伴う係合状態であるいわゆる半クラッチ状態に操作することにより実行されている。また、トルクコンバータを搭載した車両においては、トルクコンバータでクリープトルクを発生させることができるので、制動力を次第に低下させて車両を滑らかに発進させることにより実行されている。さらに、最近では、湿式のクラッチやブレーキをスリップ状態に制御することによりそのトルク容量を徐々に増大させ、それに伴って駆動トルクを滑らかに増大させて車両を発進させるように構成した自動変速機も使用されるようになってきている。その一例が、「エスティマ ハイブリッド」新型車解説書(2001年6月15日 トヨタ自動車株式会社発行)に記載されている。
【0003】
これを簡単に説明すると、この車両は、内燃機関とモータとを動力源として備えたハイブリッド車であって、発進時にはモータを使用することにより、摩擦係合装置を係合させたまま、スムースに発進することができる。これに対して、後進時にエンジンによっても発進できるように構成してあり、動力切替装置を構成しているダブルピニオン型遊星歯車機構のリングギヤを多板ブレーキに連結しておき、その多板ブレーキを徐々に係合させて反力トルクを増大させることにより、後進方向のトルクを増大させるように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように摩擦係合装置をスリップ状態に制御し、そのスリップ回転数を低下させるように係合力を徐々に増大させて発進する制御は、フリクションスタートと称されており、このような発進制御の際には、摩擦係合装置に作用する摩擦力が大きく、その熱負荷も大きくなる。したがってフリクションスタートに使用される摩擦係合装置の焼き付きや摩耗を抑制あるいは防止するために、いわゆる湿式の摩擦係合装置においては、充分に潤滑油を供給する必要がある。
【0005】
一方、上述したハイブリッド車におけるトランスアクスルを含めて、自動制御される変速機では、油圧によって変速制御を一般におこなっており、そのために油圧ポンプを備えている。その油圧ポンプで発生させた圧油は、変速制御のみならず、軸受などの潤滑にも作用されているので、上記の発進用摩擦係合装置の潤滑をその油圧ポンプを使用しておこなうことも可能である。
【0006】
しかしながら、フリクションスタート時に要求される潤滑油の量は、変速制御や軸受などの潤滑に必要とする量に比較してかなり多い。そのため、制御用油圧を発生させる油圧ポンプを、フリクションスタートのための潤滑油を発生させるポンプと共用するとすれば、大型の油圧ポンプを必要とすることになり、その結果、変速機や油圧制御装置が大型化して車載性が悪化する不都合が生じる。また、車両の走行時間の全体に占める発進制御をおこなう時間の割合はかなり小さいが、発生させるべき圧油の量は、フリクションスタート時が最も多い。そのため、フリクションスタートのための潤滑油を制御油圧と併せて発生させるとすれば、走行中に大型の油圧ポンプを不必要に駆動し続けることになり、発生させた油圧をリリーフバルブで逃がすとしても、動力の損失が生じ、これが燃費の悪化要因となる。
【0007】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、フリクションスタートをおこなう駆動装置の小型軽量化を図ってその車載性を向上させ、また燃費の改善を図ることのできる発進用摩擦係合装置の潤滑装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、摩擦力によってトルクを伝達し、かつ発進時に、第1の油圧ポンプで発生させた油圧によって滑り状態に制御される発進用摩擦係合装置の潤滑装置において、油溜まりのオイルをはね上げるギヤユニットと、前記油溜まりからオイルを汲み上げるように油路が構成されているとともに、前記発進用摩擦係合装置が滑り状態に制御された場合に、その発進用摩擦係合装置に潤滑油を供給する第2の油圧ポンプと、前記第2の油圧ポンプで汲み上げたオイルの前記油溜まりへの還流量を制御する還流制御手段とを備えていることを特徴とする潤滑装置である。
【0009】
したがって請求項1の発明では、発進用摩擦係合装置が滑り状態に制御される場合に、第2の油圧ポンプで汲み上げた潤滑油が、その発進用摩擦係合装置に供給され、その結果、発進用摩擦係合装置が潤滑かつ冷却される。そのため、第1の油圧ポンプは、上記の潤滑油を発生させる必要がないので、これを小型化できるとともに、走行中に常時、第1の油圧ポンプを駆動するとしても、定常的な走行中に必要としない上記の潤滑油を発生させないから、動力の損失が低減される。また一方、第2の油圧ポンプは発進用摩擦係合装置が滑り状態に制御されるときに限って潤滑油をその発進用摩擦係合装置に供給すればよいので、定常的な走行時や停車時には、油圧を発生させる必要がなく、そのため、第2の油圧ポンプで消費する動力が低減される。
【0011】
また、ギヤユニットが撹拌するオイルを、第2の油圧ポンプが汲み上げる。そのため、少なくとも第2の油圧ポンプが発進用摩擦係合装置に潤滑油を供給している際には、油溜まりの油面が下がるので、ギヤユニットによってはね上げあるいは撹拌するオイルの量が減少する。その結果、ギヤユニットによるオイルのいわゆる撹拌損失が低減される。
【0013】
さらに、発進用摩擦係合装置が滑り状態に制御されている場合には、油溜まりに対する還流量を相対的に増大させ、それ以外の状態では、還流量を減少させることができる。そのため、発進用摩擦係合装置の潤滑あるいは冷却が必要な場合には、第2の油圧ポンプが汲み上げて発進用摩擦係合装置に供給する潤滑油(オイル)の量が充分に確保され、また発進用摩擦係合装置の潤滑あるいは冷却を必要としない場合には、油溜まりへの還流量が低下してその油面が下がるので、ギヤユニットによるいわゆる撹拌損失が低減される。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。図1はこの発明に係る潤滑装置の油圧系統図であり、ここに示す潤滑装置は、フリクションスタートクラッチ1に対して潤滑および/または冷却のための潤滑油を供給するように構成されている。このフリクションスタートクラッチ1は、摩擦面を潤滑油によって湿潤状態に維持し、かつ冷却するように構成された湿式多板構造の摩擦係合装置であって、油圧アクチュエータ(図示せず)に供給された油圧によりトルク容量が制御されるようになっている。また、このフリクションスタートクラッチ1は、エンジンなどの動力源の動力を変速機(それぞれ図示せず)に入力するためのクラッチに限られないのであって、発進のための反力トルクを与えるためのクラッチあるいはブレーキを含む。そして、このフリクションスタートクラッチ1は、前進方向もしくは後進方向に車両が発進する際に、解放状態から滑りを伴う係合状態に制御され、その結果、車両の駆動トルクを徐々に増大させるように制御される。
【0015】
このフリクションスタートクラッチ1に対して潤滑油を供給するためのサブポンプ2が設けられている。このサブポンプ2が、この発明の第2の油圧ポンプに相当し、エンジンによって直接駆動され、あるいはエンジンの動力を使用して発生させた電力で動作するモータ(図示せず)によって駆動されるようになっている。このサブポンプ2の吸入口は、デファレンシャルギヤ室3における油溜まり4に浸漬したストレーナ5に連通されている。すなわち、サブポンプ2は、デファレンシャルギヤ室3内のオイル6を汲み上げるように構成されている。
【0016】
ここで、デファレンシャルギヤ室3は、この発明におけるギヤユニットに相当するデファレンシャルギヤ7を収容している空間部分であって、そのデファレンシャルギヤ7は、前記フリクションスタートクラッチ1を含む変速機(図示せず)から出力されたトルクを左右の駆動輪(図示せず)に分配して伝達する差動装置であり、そのリングギヤによって油溜まり4中のオイル6をはね上げるようになっている。すなわちデファレンシャルギヤ7は、掻き上げ潤滑をおこなうようになっている。
【0017】
上記のサブポンプ2の吐出口に切換弁8が接続されている。この切換弁8はオイル6の供給箇所を二箇所に切り替えるように構成された弁であって、一例として電磁切換弁が用いられている。この切換弁8における吐出側のいずれか一つのポートにオイルクーラー9が接続されており、このオイルクーラー9を通過して冷却されたオイル6が、前記フリクションスタートクラッチ1の摩擦面に供給されるようになっている。
【0018】
そして、このフリクションスタートクラッチ1は、前述したデファレンシャルギヤ室3の内部もしくはデファレンシャルギヤ室3の上方に配置されている。したがってフリクションスタートクラッチ1を通過した余剰のオイル6が、デファレンシャルギヤ室3に自由落下してその油溜まり4に還流するようになっている。
【0019】
なお、サブポンプ2から吐出したオイル6の一部を、デファレンシャルギヤ7に供給するようになっている。これは、デファレンシャルギヤ7を強制潤滑するためである。
【0020】
また、前記切換弁8の他の吐出側のポートがリザーバータンク(オイルパン室)10に連通されている。このリザーバータンク10は、変速機の制御および潤滑のためのオイル6を溜めておくためのタンクであって、変速機の制御および潤滑のための油圧を発生させるメインポンプ11の吸入口に接続したストレーナ12がこのリザーバータンク10の内部に配置されている。そして、このメインポンプ11は各種の調圧バルブや切換バルブあるいはアキュームレータなどを備えたバルブボディー13に接続され、メインポンプ11で発生させた油圧をこのバルブボディー13によって制御して変速機の所定箇所に供給するようになっている。また、変速機を通過した余剰のオイルもしくは漏れ出たオイルは、リザーバータンク10に戻るようになっている。
【0021】
前述したように、切換弁8を介してリザーバータンク10にオイル6供給するようになっているので、このリザーバータンク10からデファレンシャルギヤ室3にオイル6を戻すようになっている。そのために、リザーバータンク10とデファレンシャルギヤ室3とを隔てている隔壁14における所定の高さの位置に、その隔壁14を貫通した戻し孔15が形成されている。したがってリザーバータンク10における油面がこの戻し孔15より高くなった場合に、この戻し孔15を越えている部分のオイル6が、戻し孔15を通ってデファレンシャルギヤ室3に還流するようになっている。
【0022】
つぎに上記のように構成された潤滑装置の作用について説明する。エンジンが停止している場合、各ポンプ2,11が停止しており、したがって図2に示すように、デファレンシャルギヤ室3およびリザーバータンク10からオイル6が汲み上げられることはない。図2の破線は、油路が形成されているものの、オイル6が流れていないことを示している。
【0023】
そのため、リザーバータンク10における過剰な量のオイル6、すなわち戻し孔15の高さを超える量のオイル6が、戻し孔15を通ってデファレンシャルギヤ室3に還流し、油溜まり4を形成する。その結果、、油溜まり4の油面が高くなっていて、デファレンシャルギヤ7の下側の多くの部分がオイル6に浸っている。
【0024】
したがって車両を長時間(もしくは長期間)、放置しておいた状態から急に発進する場合であっても、デファレンシャルギヤ7に対して充分な量の潤滑油が供給され、デファレンシャルギヤ7やこれに関連する箇所の摩耗や焼き付きなどの不都合が回避される。
【0025】
エンジンを起動して発進する場合、あるいはアイドリング時の状態を図3に示してある。この図3で実線は潤滑油(オイル)が流れていることを示し、破線は流れていないことを示している。すなわち各ポンプ2,11が駆動されてオイル6を汲み上げており、メインポンプ11からバルブボディー13にオイル6が供給され、ここで制御された油圧が変速機に供給されている。
【0026】
また、サブポンプ2がデファレンシャルギヤ室3の油溜まり4からオイル6を汲み上げており、そのオイル6の一部は、デファレンシャルギヤ7に供給されている。また、加圧されたオイル6がサブポンプ2から切換弁8に供給されている。この切換弁8は、オイルクーラー9にオイル6を送るように切り換えられており、その結果、オイルクーラー9が冷却されたオイル6がフリクションスタートクラッチ1に供給される。
【0027】
発進時には、このフリクションスタートクラッチ1がスリップ状態に制御されているので、その摩擦面の滑りによって熱が発生しているが、その摩擦面にオイル6が連続的に供給されるので、その温度上昇や焼損が防止される。また、摩擦面にオイル6が介在することにより、摩擦材の過度な摩耗が防止される。
【0028】
こうしてフリクションスタートクラッチ1を潤滑もしくは冷却したオイル6は、自由落下によってデファレンシャルギヤ室3に還流する。したがってデファレンシャルギヤ室3の油溜まり4については、サブポンプ2による汲み上げとフリクションスタートクラッチ1からの自由落下による還流とが生じるので、油面の高さがほぼ一定に維持される。そのため、サブポンプ2はエアの吸い込みなどのことが生じずに充分な量のオイル6をフリクションスタートクラッチ1に供給することができる。
【0029】
なお、アイドリング時においても、クリープトルクを発生させるために、フリクションスタートクラッチ1が滑り状態に制御されることがある。その場合であっても、発進時と同様に、充分な量のオイル6が供給されるので、フリクションスタートクラッチ1の摩耗や焼き付きなどの事態が未然に回避される。
【0030】
発進後、低車速で走行している状態を図4に示してある。この図4で実線はオイル6が流れていることを示し、破線は流れていないことを示している。すなわち各ポンプ2,11が駆動されてオイル6を汲み上げており、メインポンプ11からバルブボディー13にオイル6が供給され、ここで制御された油圧が変速機に供給されている。
【0031】
また、サブポンプ2がデファレンシャルギヤ室3の油溜まり4からオイル6を汲み上げており、そのオイル6の一部は、デファレンシャルギヤ7に供給されている。また、サブポンプ2から切換弁8に加圧されたオイル6が供給されている。この切換弁8は、リザーバータンク10に潤滑油を送るように切り換えられており、したがってサブポンプ2によってデファレンシャルギヤ室3の油溜まり4から汲み上げられたオイル6は、フリクションスタートクラッチ1に供給されずに、リザーバータンク10に送られる。車両が既に発進していて低車速で走行していれば、フリクションスタートクラッチ1が完全に係合していて、その摩擦面での滑りが実質的に生じていないからである。
【0032】
また、サブポンプ2で汲み上げたオイル6がリザーバータンク10に供給されるので、デファレンシャルギヤ室3内のオイル6の量が次第に減少するが、リザーバータンク10における油面の高さが前記戻し孔15より高くなると、この戻し孔15からデファレンシャルギヤ室3にオイル6が流れ落ちる。これは、リザーバータンク10に対してデファレンシャルギヤ室3が低い位置に配置されているからであり、こうしてデファレンシャルギヤ室3に対して相対的に少量のオイル6が還流させられる。
【0033】
したがって発進後、低車速で走行している状態では、デファレンシャルギヤ室3における油溜まり4の油面の高さが低くなり、それに伴ってデファレンシャルギヤ7が浸っているオイル6の深さが浅くなるから、デファレンシャルギヤ7が撹拌するオイル6の量が少なく、そのためデファレンシャルギヤ7によるいわゆる撹拌損失が低減される。なお、この場合、サブポンプ2は、デファレンシャルギヤ7にオイル6を供給する一方、リザーバータンク10にオイル6を送給すればよいので、サブポンプ2で発生させる油圧は特に高くなくてよい。したがってサブポンプ2による発生油圧を極力低圧として動力損失を低減することが好ましい。
【0034】
つぎに中高車速走行時の状態について説明する。図5はその状態を示しており、各ポンプ2,11が高速回転してその吐出量が、二本の矢印で示すように増大させられる。そのため、戻し孔15を介してリザーバータンク10からデファレンシャルギヤ室3に還流するオイル6の量よりも、サブポンプ2で汲み上げてリザーバータンク10に送給するオイル6の量が多くなるので、デファレンシャルギヤ室3のオイル6すなわち油溜まり4が殆ど無くなる。その結果、デファレンシャルギヤ7によるオイル6の撹拌が生じなくなるので、いわゆる動力の撹拌損失が解消され、車両の燃費が向上もしくは改善される。
【0035】
上記のように図1に示す構成では、フリクションスタートクラッチ1に対する潤滑の供給をサブポンプ2がおこない、メインポンプ11にはその機能が要求されないので、メインポンプ11を特に大容量あるいは大型のものとする必要がない。また、サブポンプ2は、フリクションスタートクラッチ1の潤滑をおこない、また定常的な走行時にデファレンシャルギヤ室3からリザーバータンク10に潤滑油を送給できる程度のものであればよいので、特に大容量もしくは大型のものである必要はなく、したがって装置全体として小型で車載性の良好なものとすることができる。
【0036】
また、上記の例では、エンジンを駆動している間はサブポンプ2を動作させることになるが、車速が増大するに従ってデファレンシャルギヤ室3の油面が下がってデファレンシャルギヤ7による潤滑の撹拌の程度が減少するから、いわゆる撹拌損失を低下もしくは回避して燃費を向上させることができる。特に、上記の図1に示す例では、切換弁8および戻し孔15によって、デファレンシャルギヤ室3に還流するオイル6の量を制御するので、中高速走行時には、デファレンシャルギヤ7がオイル6に浸らない程度に油面を下げることができ、中高速走行時の動力損失を低減して燃費を向上させることができる。したがって、上記の切換弁8および戻し孔15がこの発明の還流制御手段に相当している。
【0037】
つぎにこの発明の他の例を説明する。図6は、図1に示す構成を一部変更して構成したものであって、サブポンプ2で汲み上げたオイル6をオイルクーラー9に直接供給するように構成し、またこのフリクションスタートクラッチ1を通ったオイル6をリザーバータンク10に戻し、さらに、リザーバータンク10からデファレンシャルギヤ室3へのオイル6の還流をカット弁16で制御し、そして、デファレンシャルギヤ7の強制潤滑をバルブボディー13からのオイル6でおこなうように構成されている。
【0038】
すなわち、フリクションスタートクラッチ1がリザーバータンク10の上方に配置され、フリクションスタートクラッチ1から自由落下するオイル6をリザーバータンク10に至らしめるようになっている。また、サブポンプ2の吐出口がオイルクーラー9に直接連通され、前述した切換弁8は設けられていない。さらに、カット弁16は、電気的に制御される所謂オン・オフ弁であって、リザーバータンク10からデファレンシャルギヤ室3に至る油路に介装され、その油路を開閉するように構成されている。したがってこのカット弁16がこの発明の還流制御手段に相当している。そして、バルブボディー13から出力するオイル6の一部をデファレンシャルギヤ7に潤滑油として導くように油路が構成されている。その他の構成は、図1に示す構成と同一であるから、図6に図1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0039】
この図6に示す装置の作用を説明すると、エンジンが停止している状態では、各ポンプ2,11が停止しており、したがってデファレンシャルギヤ室3の油溜まり4からオイル6が汲み上げられていない。また、カット弁16が油路を閉じているので、リザーバータンク10からデファレンシャルギヤ室3に対するオイル6の流入はない。そのため、デファレンシャルギヤ室3の油面が高くなっていて、デファレンシャルギヤ7の下側の部分の多くがオイル6に浸っている。
【0040】
したがって車両を長時間(もしくは長期間)、放置しておいた状態から急に発進する場合であっても、デファレンシャルギヤ7に対して充分な量の潤滑油が供給され、デファレンシャルギヤ7やこれに関連する箇所の焼き付きなどの不都合が回避される。
【0041】
エンジンを起動して発進する場合、あるいはアイドリング時の状態を図8に示してある。この状態では、各ポンプ2,11が駆動されてオイル6を汲み上げており、メインポンプ11からバルブボディー13にオイル6が供給され、ここで制御された油圧が変速機に供給されている。また、サブポンプ2がデファレンシャルギヤ室3の油溜まり4からオイル6を汲み上げてオイルクーラー9を介してフリクションスタートクラッチ1に供給している。
【0042】
発進時には、このフリクションスタートクラッチ1がスリップ状態に制御されているので、その摩擦面の滑りによって熱が発生しているが、その摩擦面にオイル6が連続的に供給されるので、その温度上昇や焼損が防止される。また、摩擦面に潤滑油が介在することにより、摩擦材の過度な摩耗が防止される。
【0043】
こうしてフリクションスタートクラッチ1を潤滑もしくは冷却したオイル6は、自由落下によってリザーバータンク10に流入する。これに対してカット弁16が油路を開いているので、リザーバータンク10の油面が高くなると、オイル6がカット弁16を通ってデファレンシャルギヤ室3に還流する。したがってデファレンシャルギヤ室3の油溜まり4については、サブポンプ2による汲み上げとリザーバータンク10からの還流とが生じるので、油面の高さがほぼ一定に維持される。そのため、サブポンプ2はエアの吸い込みなどのことが生じずに充分な量のオイル6をフリクションスタートクラッチ1に供給することができる。
【0044】
なお、アイドリング時においても、クリープトルクを発生させるために、フリクションスタートクラッチ1が滑り状態に制御されることがある。その場合であっても、発進時と同様に、充分に量のオイル6が供給されるので、フリクションスタートクラッチ1の摩耗や焼き付きなどの事態が未然に回避される。
【0045】
さらに、車両が発進した後、通常走行状態となった場合には、図9に示すように、カット弁16が油路を閉じ、その結果、デファレンシャルギヤ室3からサブポンプ2がオイル6を汲み上げるのみで、リザーバータンク10からデファレンシャルギヤ室3に対するオイル6の還流が生じないので、デファレンシャルギヤ室3のオイル6すなわち油溜まり4が殆どなくなる。その結果、デファレンシャルギヤ7によるオイル6の撹拌が生じなくなるので、いわゆる動力の撹拌損失が解消され、車両の燃費が向上もしくは改善される。
【0046】
したがって図6に示す構成であっても、上述した図1に示す構成と同様の作用・効果を得ることができる。
【0047】
なお、この発明は上述した各具体例に限定されない。例えばこの発明におけるギヤユニットは、デファレンシャルギヤ以外のギヤであってもよい。また、第2の油圧ポンプが潤滑油を汲み上げる油溜まりに還流する潤滑油の量を制御する手段は、上記の各具体例で示した切換弁や戻し孔およびカット弁以外の手段であってよく、要は、必要に応じて還流量を変更できる構成であればよい。さらに、発進用摩擦係合装置から油溜まりなどに潤滑油を還流させるための手段は、上記の具体例で示した自由落下に限られないのであり、したがってこの発明では、発進用摩擦係合装置を油溜まりやオイルパンなどの上方に配置する構成に限定されず、その配置位置は、適宜でよい。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、発進用摩擦係合装置が滑り状態に制御される場合に、制御用の第1の油圧ポンプとは別に設けられた第2の油圧ポンプで汲み上げた潤滑油が、その発進用摩擦係合装置に供給され、その結果、発進用摩擦係合装置が潤滑かつ冷却されるため、第1の油圧ポンプは、上記の潤滑油を発生させる必要がないので、これを小型化し、さらには潤滑装置もしくはこれを含む変速機を小型化して車載性を向上させることができる。また、走行中に常時、第1の油圧ポンプを駆動するとしても、定常的な走行中に必要としない上記の潤滑油を発生させないから、動力の損失が低減される。また一方、第2の油圧ポンプは発進用摩擦係合装置が滑り状態に制御されるときに限って潤滑油をその発進用摩擦係合装置に供給すればよいので、定常的な走行時や停車時には、油圧を発生させる必要がなく、そのため、第2の油圧ポンプで消費する動力が低減され、ひいては車両全体としての燃費を向上もしくは改善することができる。
【0049】
また、ギヤユニットが撹拌するオイルを、第2の油圧ポンプが汲み上げるため、少なくとも第2の油圧ポンプが発進用摩擦係合装置に潤滑油を供給している際には、油溜まりの油面が下がり、ギヤユニットによってはね上げあるいは撹拌するオイルの量が減少し、その結果、ギヤユニットによるオイルのいわゆる撹拌損失が低減され、ひいては車両全体としての燃費を向上もしくは改善することができる。
【0050】
さらに、発進用摩擦係合装置が滑り状態に制御されている場合には、油溜まりに対する還流量を相対的に増大させ、それ以外の状態では、還流量を減少させることができるため、発進用摩擦係合装置の潤滑あるいは冷却が必要な場合には、第2の油圧ポンプが汲み上げて発進用摩擦係合装置に供給する潤滑油(オイル)の量が充分に確保され、また発進用摩擦係合装置の潤滑あるいは冷却を必要としない場合には、油溜まりへの還流量が低下してその油面が下がるので、ギヤユニットによるいわゆる撹拌損失が低減され、ひいては車両全体としての燃費を向上もしくは改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一具体例における油圧系統を模式的に示すブロック図である。
【図2】 そのエンジンが停止している場合の動作状態を示す説明図である。
【図3】 そのフリクションスタート時もしくはアイドリング時の動作状態を示す説明図である。
【図4】 その低速走行時の動作状態を示す説明図である。
【図5】 その中高速走行時の動作状態を示す説明図である。
【図6】 この発明の他の具体例における油圧系統を模式的に示すブロック図である。
【図7】 そのエンジンが停止している場合の動作状態を示す説明図である。
【図8】 そのフリクションスタート時もしくはアイドリング時の動作状態を示す説明図である。
【図9】 その通常走行時の動作状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1…フリクションスタートクラッチ、 2…サブポンプ、 3…デファレンシャルギヤ室、 4…油溜まり、 6…オイル、 7…デファレンシャルギヤ、 8…切換弁、 10…リザーバータンク、 11…メインポンプ、 15…戻し孔、 16…カット弁。
Claims (1)
- 摩擦力によってトルクを伝達し、かつ発進時に、第1の油圧ポンプで発生させた油圧によって滑り状態に制御される発進用摩擦係合装置の潤滑装置において、 油溜まりのオイルをはね上げるギヤユニットと、
前記油溜まりからオイルを汲み上げるように油路が構成されているとともに、前記発進用摩擦係合装置が滑り状態に制御された場合に、その発進用摩擦係合装置に潤滑油を供給する第2の油圧ポンプと、
前記第2の油圧ポンプで汲み上げたオイルの前記油溜まりへの還流量を制御する還流制御手段と
を備えていることを特徴とする発進用摩擦係合装置の潤滑装置。
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