JP3834343B2 - 円筒形電池の減圧注液方法および装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、例えばリチウムイオン二次電池などの円筒形電池の製造ラインに関し、特に、電池ケース内を減圧しておいて電解液を注入する減圧注液方法および装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
円筒形電池の減圧注液方法と装置について従来の代表的な構成が特開昭61−171061号公報に開示されている。この従来技術の概略を図1に示している。金属製で有底円筒形の電池ケース4内にシート状の正極・セパレータ・負極をスパイラル型に巻いた電極セット部品1が装填されている。注液工程では、電池ケース4にキャップ9を被せ、ケースの開口端にパッキン10を当接してケース内を気密に塞ぐ。キャップ9の内側には円筒形の垂下壁11が一体的に設けられており、この垂下壁11がケース4のくびれ部7付近の内周面のすぐ内側に配置される。
【0003】
キャップ9の中心にはノズル13が貫通しており、ノズル13の下端がケース4内の電極セット部品1の中央空間5に挿入された形になる。ノズル13の上部にはバルブ15を介してリザーブタンク14が連通するように設けられており、このリザーブタンク14に別途に計量された電池1個分の電解液16がはいる。また、キャップ9には排気穴12が形成されており、その排気穴12に図示していない真空ポンプが適宜な配管により接続されている。
【0004】
図1のように電池ケース4にキャップ9を被せた後、前記の真空ポンプを作動させてケース内部空間の空気を排出し、ケース内部空間が適宜に減圧したならばバルブ15を開く。すると、リザーブタンク14内の電解液16がノズル13を通じてケース内部空間内に強制的に引き込まれ、電極セット部品1の隙間にスムーズに浸透し、一定量の電解液が短時間で電池ケース4内に収容される(減圧しない注液方法に比べてきわめて能率がよい)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図1に示した従来の減圧注液方法および装置では、つぎに述べるいくつかの問題点があった。
【0006】
▲1▼キャップ9で塞いだ電池ケース4の内部空間を真空ポンプにより減圧しながらノズル13からケース4内に電解液16を注入するので、注入した電解液の一部が揮発し、その揮発した電解液成分が排気穴12から真空ポンプに吸引されてしまう。
【0007】
▲2▼キャップ9が電池ケース4の開口端の上に大きく覆い被さるように装着され、キャップ9により封止されるケース内部空間の容積が相当大きく、したがってケース内を充分に減圧するのに時間がかかる。
【0008】
▲3▼キャップ9に付設した垂下壁11で電池ケース4のくびれ部7より上部の内面に注入した電解液が飛散・付着することを防止しているが(くびれ部7の上部のケース内面に電解液が付着すると電池の封口性能が低下して漏液が多くなる)、揮発した電解液成分が垂下壁11の下端を回り込んでケース4の上部内面に付着することを防ぐことができなかった。
【0009】
この発明は前述した従来の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、注入した電解液が揮発して真空ポンプに吸引されるのを防ぎ、また能率よく注入でき、ケースの封口部内面に電解液が付着しないようにした円筒形電池の減圧注入方法および装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこでこの発明では、電極セット部品が装填されている円筒形電池ケースの上端開口部内に第1シリンダの下端部分をはめ込んで前記ケースを塞ぐとともに、前記第1シリンダに形成されている小さな弁穴を通じて前記ケースの内部空間を真空ポンプに接続し、この真空ポンプによって前記ケース内部空間を減圧し、その後、前記第1シリンダ内に上下摺動自在にはめ込まれている第2シリンダを下降させて、この第2シリンダにより前記弁穴を塞いで前記ケース内部空間と前記真空ポンプ経路とを遮断するとともに、前記第2シリンダに付設されているノズルを前記ケース内に挿入し、その状態で前記ノズルから前記ケース内に電解液を注入するようにした。
【0011】
好ましくは、前記電池ケース内に装填した前記電極セット部品から延出するリード板に予め封口体を溶接したものを準備し、該封口体を該電池ケースの周壁外へ配置し、この状態で下端外周部に筒状弾性シール部材を装着した前記第1シリンダの下端部を該電池ケースの上端開口部にはめ込むとともに該シール部材によって該リード板を包み込むように該電池ケース内面に密着させて該電池ケースの開口部を塞ぐようにすることである。
【0012】
また、この発明の減圧注液方法を実施するための装置としては、2重構造になっている前記第1シリンダおよび前記第2シリンダと、これら第1シリンダおよび第2シリンダをそれぞれ上下に変位させる駆動機構と、前記第1シリンダの前記弁穴に配管接続された前記真空ポンプと、前記第2シリンダに付設されている前記ノズルの上部に配管接続された電解液供給系とを備える。
【0013】
ここで、前記第1シリンダの下端部が前記円筒形電池ケースのくびれ部の上面部分に当接して前記ケース内部空間を封止するように構成することが望ましい。
【0014】
更に好ましくは、前記第1のシリンダの下端外周部に筒状弾性シール部材を装着し、該第1のシリンダが該電池ケースの内部空間を封止するときに、該弾性シール部材が該電池ケースの内部に収納された電極と電池ケースの周壁外側に設置した封口体とを接続するリード板を包み込むようにして該くびれ部に密着するようにすることである。
【0015】
【作用】
前記第1シリンダで塞いだケース内部空間を前記真空ポンプで減圧した後、前記第2シリンダが下降してくると前記弁穴が自動的に塞がれて、ケース内部空間と前記真空ポンプ経路とが遮断され、その状態で前記ノズルから電解液が注入されるので、注入した電解液またはその揮発成分が真空ポンプに吸引されることはない。また、前記第1シリンダの下端部分が電池ケースの上端開口部内に入り込むので、減圧対象となるケース内部空間の容積は小さくなり、したがって短時間で充分に減圧することができる。さらに、前記第1シリンダの下端部が前記円筒形電池ケースのくびれ部の上面部分に当接して前記ケース内部空間を封止することで、くびれ部より上のケース内面に電解液が付着することがなくなる。
【0016】
【実施例】
図2、図3、図4にこの発明の第1実施例の構成と動作を示している。ワークホルダ17に円筒形電池ケース4が垂直の姿勢で保持されている。電池ケース4内にはスパイラル型の電極セット部品1が装填されている。電池ケース4の上端部近くにはビーディング加工により形成されたくびれ部7がある。
【0017】
図2のように、ワークホルダ17の真上に注液装置が配置されている。注液装置は2重構造の第1シリンダ2と第2シリンダ3とを有する。第1シリンダ2の筒穴の上部に第2シリンダ3が上下摺動自在にはめ込まれている。第2シリンダ3の中心を下方に貫通する状態で注液用のノズル13が設けられている。ノズル13の上部は配管18により注液ポンプ19に接続されおり、またノズル13の途中にはチェック弁21が介挿されている。
【0018】
第1シリンダ2の円筒部分の最下部には小さな弁穴6が形成されており、この弁穴6には真空ポンプ8につながる配管20が接続されている。この弁穴6は、第1シリンダ2に対して第2シリンダ3が上下動することで開閉される。また、第2シリンダ3の筒穴内の空間3aは電磁弁22に配管接続されており、この電磁弁22が開かれると、空間3aが大気に開放されるようになっている。また、第1シリンダ2の下端には電池ケース4の内径寸法に対応する円筒部2aが突出形成されており、その円筒部2aの外周下端にはパッキン23が装着されている。
【0019】
また図示していないが、2重構造の第1シリンダ2と第2シリンダ3とをそれぞれ上下に変位させるための油圧アクチュエータなどを用いた駆動機構が付設されており、注液工程ではつぎに述べるシーケンスで動作する。
【0020】
注液工程の準備段階では、図2のように、第1シリンダ2および第2シリンダ3はいずれもワークホルダ17に対して上方位置にあり、この状態で注液しようとするワーク(電極セット部品1が装填された電池ケース4)がホルダ17にセットされる。
【0021】
つぎに図3のように、第1シリンダ2のみが下降する。第1シリンダ2の下端の円筒部2aは電池ケース4の同心線上にあり、第1シリンダ2が下降すると円筒部2aが電池ケース4の上端開口部にはまり込み、円筒部2aのリング状パッキン23が電池ケース4の内周におけるくびれ部7の上面側に当接し、ここで内部空間を封止して密閉する。また図3に示すように、第1シリンダ2のみが下降し、第2シリンダ3は上方位置にあるので、第2シリンダ3が第1シリンダ2に対して相対的に上方に変位したことになり、第2シリンダ3の周面で塞がれていた弁穴6が開く。つまり、第1シリンダ2で密閉されたケース内部空間が弁穴6を通じて真空ポンプ8につながる。真空ポンプ8は常時作動しており、弁穴6が開かれるとケース内部空間の空気が真空ポンプ8により吸引され、ケース内部空間が減圧される。ここで、第1シリンダ2の円筒部2aが電池ケース4内にはまり込んで、パッキンがくびれ部7の上面側に当接してケース4を密閉するので、減圧対象のケース内部空間の容積を充分に小さくすることができる。
【0022】
つぎに図4のように、第2シリンダ3も下降し、ノズル13がケース内部空間の中心に挿入される。このとき同時に、下降した第2シリンダ3の周面で弁穴6が再び塞がれる。したがってケース内部空間と真空ポンプ8の経路とが遮断される。この状態で注液ポンプ19が作動し、所定量の電解液をノズル13を通じて電池ケース4内に供給する。この電解液が減圧されているケース内部空間に速やかに浸透する。電解液が揮発しても、ケース内部空間と真空ポンプ8は遮断されているので、電解液成分が真空ポンプ8に吸引されることはない。また、第1シリンダ2の円筒部2aが電池ケース4内にはまり込んで、パッキンがくびれ部7の上面側に当接してケース4を密閉するので、くびれ部7の上方のケース内面に電解液が付着することはない。
【0023】
所定量の電解液を注入したならば、図4の状態において、電磁弁22を開き、ノズル13のまわりの微小隙間を通じてケース内部空間を大気に開放する。この後に第1シリンダ2および第2シリンダ3を上昇させ、図2の初期状態に復帰する。
【0024】
なおこの時、好ましくは、電磁弁22に直列に加圧空気供給用電磁弁(図示せず)を設け、電磁弁22の開放と同時に加圧空気供給用電磁弁を開放して電池ケース内に圧縮空気を圧送し、捲回した電極内に上記負圧によって吸収されなかった余剰の電解液を強制的に吸収させるようにすることである。その後、加圧空気供給用電磁弁のみを閉じて電池ケース内部を大気に開放する。
【0025】
図5は本発明の第2実施例を示し、この実施例ではスパイラル形の電極セット部品の正極の中央部から延出したリード板25に予め正極封口体26が溶接により接続され、この封口体26を電池ケース4の周壁外側に位置させた状態で電池ケース4をワークホルダ17内に設置している。ワークホルダの下方内部には圧縮スプリング27が配設されその上方のプッシャー28を介して電池ケースを上方に付勢するようにしている。また、第1のシリンダ2の下端外周部には、前記第1実施例のリング状パッキング23に代えて、シール用ゴム等からなる筒状の弾性シール部材29が取り付けられている。その他の点は前記第1実施例の場合と実質的に同様である。
【0026】
この第2実施例の場合には、上記のように電池ケース4をワークホルダ17内に設置した後に第1のシリンダ2を降下させると、その下端部が電池ケースの上端開口部に嵌挿されるとともにその下端外周部に設けた筒状の弾性シール部材29が、図5の拡大部分に示したように、電池ケース4のくびれ部7に押し当たって弾性変形され、リード板25の内面に密着しかつこれを隙間なく包み込むようにしてくびれ部の内周面に密着する。この時、第1のシリンダ2の弾性シール部材29が電池ケースのくびれ部7に押し当たってこれを押し下げようとする力が働くが、ワークホルダ1の下方内部の圧縮スプリング27の作用によって電池ケースを押し上げる力が働くため、弾性シール部材29とくびれ部7との間には良好な圧接状態を得ることができる。その後の注液工程は前記第1実施例の場合と同様に行われる。
【0027】
この第2実施例の場合には、リード板25を封口体26に溶接した後に電池ケース内に注液が行われるため、第1実施例の場合のように電解液がリード板に付着してその後に行われる封口体との溶接の際に溶接不良を起こす恐れがない。また、第2実施例の場合には、予めリード板と封口体との溶接が行われているため、第1実施例の場合のように溶接の際の溶接熱によって電解液に悪影響を与えるような恐れもなくなる。また、第1のシリンダの下端部には筒状の弾性シール部材を用いているため、リード板との圧接面積をリング状シール部材に比べて広く取ることができ、良好な気密性を得ることができる。
【0028】
【発明の効果】
この発明によれば、第1シリンダで塞いだケース内部空間を前記真空ポンプで減圧した後、前記第2シリンダが下降してくると前記弁穴が自動的に塞がれて、ケース内部空間と前記真空ポンプ経路とが遮断され、その状態で前記ノズルから電解液が注入されるので、注入した電解液またはその揮発成分が真空ポンプに吸引されることはない。また、第1シリンダの下端部分が電池ケースの上端開口部内に入り込むので、減圧対象となるケース内部空間の容積は小さくなり、したがって短時間で充分に減圧することができる。さらに、第1シリンダの下端部が円筒形電池ケースのくびれ部の上面部分に当接してケース内部空間を封止することで、くびれ部より上のケース内面に電解液が付着することがなくなる。
【0029】
また、電池ケース内に装填した電極セット部品から延出するリード板に予め封口体を溶接したものを用いて減圧注液を行う場合には、注液の後にリード板と封口体とを溶接するものと比べて、この部分の溶接が確実になると共に溶接熱によって電解液が変質されるのを防ぐことができる。またこの場合、第1シリンダの下端部に筒状シール部材を装着したものを用いることによって、筒状シール部材がリード板を包み込むようにして隙間なく電池ケース内面に密着して電池ケース開口部を気密に密閉することができる。また、第1のシリンダの下端部には筒状の弾性シール部材を用いているため、リード板との圧接面積をリング状シール部材に比べて広く取ることができ、良好な気密性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の減圧注液装置の概略構成図である。
【図2】この発明の第1実施例による減圧注液装置の第1工程の概略構成図である。
【図3】この発明の第1実施例による減圧注液装置の第2工程の概略構成図である。
【図4】この発明の第1実施例による減圧注液装置の第3工程の概略構成図である。
【図5】この発明の第2実施例による減圧注液装置の第3工程の概略構成図である。
【符号の説明】
1 電極セット部品 2 第1シリンダ
3 第2シリンダ 4 電池ケース
6 弁穴 7 くびれ部
8 真空ポンプ 13 ノズル
17 ワークホルダ 19 注液ポンプ
21 チェック弁 22 電磁弁
23 パッキン 25 リード板
26 封口体 27 圧縮スプリング
29 筒状シール部材
Claims (5)
- 電極セット部品が装填されている円筒形電池ケース(4)の上端開口部内に第1シリンダ(2)の下端部分をはめ込んで前記ケースを塞ぐとともに、前記第1シリンダに形成されている小さな弁穴(6)を通じて前記ケースの内部空間を真空ポンプ(8)に接続し、この真空ポンプによって前記ケース内部空間を減圧し、その後、前記第1シリンダ内に上下摺動自在にはめ込まれている第2シリンダ(3)を下降させて、この第2シリンダにより前記弁穴を塞いで前記ケース内部空間と前記真空ポンプ経路とを遮断するとともに、前記第2シリンダに付設されているノズル(13)を前記ケース内に挿入し、その状態で前記ノズルから前記ケース内に電解液を注入することを特徴とする円筒形電池の減圧注液方法。
- 前記電池ケース(4)内に装填した前記電極セット部品(1)から延出するリード板(25)に予め封口体(26)を溶接したものを準備し、該封口体を該電池ケース(4)の周壁外へ配置し、この状態で下端外周部に筒状シール部材(29)を装着した前記第1シリンダ(2)の下端部を該電池ケースの上端開口部にはめ込むとともに該シール部材によって該リード板を包み込むように該電池ケース内面に密着させて該電池ケースの開口部を塞ぐようにしてなることを特徴とする請求項1記載の円筒形電池の減圧注液方法。
- 請求項1または2の減圧注液方法を実施するための装置であって、2重構造になっている前記第1シリンダ(2)および前記第2シリンダ (3)と、これら第1シリンダおよび第2シリンダをそれぞれ上下に変位させる駆動機構と、前記第1シリンダの前記弁穴(6)に配管接続された前記真空ポンプ(8)と、前記第2シリンダに付設されている前記ノズル(13)の上部に配管接続された電解液供給系とを備えたことを特徴とする円筒形電池の減圧注液装置。
- 前記第1シリンダ(2)の下端部が前記円筒形電池ケース (4)のくびれ部(7)の上面部分に当接して前記ケース内部空間を封止することを特徴とする請求項3に係る円筒形電池の減圧注液装置。
- 前記第1のシリンダ(2)の下端外周部に筒状弾性シール部材(29)が装着され、該第1のシリンダが該電池ケース(4)の内部空間を封止するときに、該弾性シール部材が該電池ケースの内部に収納された電極と電池ケースの周壁外側に設置した封口体とを接続するリード板を包み込むように該くびれ部(7)に密着してなることを特徴とする請求項4記載の円筒形電池の減圧注液装置。
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