JP3834106B2 - 熱延連続化プロセスを用いた成形性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱延連続化法による熱延鋼板の製造方法に係り、特に自動車や産業機械等に用いられる成形性に優れた加工用熱延鋼板を連続的に熱間圧延して製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車等の加工用鋼板の技術分野では、加工性の良い冷延鋼板が使用されていたが、最近は冷延鋼板に代わる素材として比較的安価な加工用熱延鋼板が使用されるようになってきている。
【0003】
そのため、加工用熱延鋼板として従来以上の優れた加工性が要求されており、加工用熱延鋼板の加工性を改善する方法が種々提案されている。
【0004】
例えば、素材鋼中にBを添加して固溶Nを固定し、これにより非時効性の確保や結晶粒の粗大化を助長して軟質化をはかる方法が知られており、特開平63ー143225号では、低炭素鋼中に微量Bを添加し、加熱温度が1180℃以下で仕上げ温度Ar3点以上の条件で熱間圧延して捲取る加工用熱延鋼板の製造方法が開示されている。この方法によれば、絞り加工性が改善され、最大伸びが52%となることが示されている。
【0005】
また、特開平2ー104614号では、低炭素鋼中に微量Bを添加すると共に最終スタンドの圧下率を25%以上と規制して非時効化とγの再結晶の促進を図って加工性を改善する加工用熱延鋼板の製造方法が開示されている。この方法によれば、絞り加工性が改善され、最大伸びが50%となることが示されている。
【0006】
また、特開昭63−76822号では、B量とN量を規制すると共に、仕上げ最終前スタンドの出側温度をAr3変態点以上とすることによりプレス加工性を改善した加工用熱延鋼板の製造方法が開示されている。この方法によれば、最大伸び49.0%となることが示されている。
【0007】
このように従来の低炭素鋼を素材とする加工用熱延鋼板の製造方法では、伸びが最大50%程度のものしか得られていない。
【0008】
また、通常はスキンパスをかけることにより腰折れやストレッチャーストレインを防止しているが、スキンパスをかけなくてもそれらが発生しなければスキンパス工程を省略できるため、コストを下げることが可能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、特別の合金元素を添加することなしに通常の低炭素鋼で50%を超える伸びを実現することができ腰折れおよびストレッチャーストレインの発生しない加工用熱延鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1) 重量%で、
C :0.01〜0.08%、
Mn:0.05〜0.5%、
Si:0.003〜0.5%、
P :0.05%以下、
S :0.02%以下、
Al:0.005〜0.3%、
N :0.007%以下、
B :0.0005〜0.005%
残部不可避不純物を除いてFeから成る鋼片を、粗圧延してシートバーとした後、Ar3変態点以上の温度で捲取り、3秒以上1℃/s以下の冷却速度で保持し、その後捲戻し、そして、該シートバーの先端をその前に粗圧延され圧延ラインを先行するシートバーの後端に接合して、仕上げ温度Ar3変態点以上で連続的に熱間仕上圧延をし、600℃以上の捲取温度で捲取ることを特徴とする50%以上の伸びを有し腰折れやストレッチャーストレインが発生しない成形性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。
【0011】
(2) 重量%で、
C :0.01〜0.08%、
Mn:0.05〜0.5%、
Si:0.003〜0.5%、
P :0.05%以下、
S :0.02%以下、
Al:0.005〜0.3%、
N :0.007%以下、
B :0.0005〜0.005%
残部不可避不純物を除いてFeから成る鋼片を、1150℃以下で低温加熱し、粗圧延してシートバーとした後、Ar3変態点以上の温度で捲取り、3秒以上1℃/s以下の冷却速度で保持し、その後捲戻し、そして、該シートバーの先端をその前に粗圧延され圧延ラインを先行するシートバーの後端に接合して、仕上げ温度Ar3変態点以上で連続的に熱間仕上圧延をし、600℃以上の捲取温度で捲取ることを特徴とする50%以上の伸びを有し腰折れやストレッチャーストレインが発生しない成形性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
熱延鋼板に加工性を持たせるためには加工性に有害なSやNを除くために、MnS、BNやAlNとして析出処理する必要があり、仕上げ圧延前にMnS、BNやAlNをできるだけ析出させておくことが、鋼中に存在する固溶Sや固溶Nを減少させ伸びの向上につながるものであり、そのためには、1150℃以下で低温加熱する析出処理、及び粗圧延シートバーをAr3変態点以上の温度で捲取り、3秒以上1℃/s以下の冷却速度で保持し、その後捲戻す析出処理とにより、MnS、BNやAlNの析出物を析出させると伸びが著しく向上するとの知見に基づいて本発明をなしたものである。
【0014】
図1は、保持時間と伸びとの関係を示す図である。図1に示す実験結果によれば、保持時間の増加に伴って伸びが向上し、保持時間が3秒以上となると伸びが50%以上となることが分かる。この様に伸びが向上するメカニズムは、MnS、BNやAlNを析出させた結果、セメンタイト密度が低くなる。即ち、セメンタイトの単位面積当たりの個数が少なくなり、大きくまばらになるからである。そのため、伸びが著しく向上するものと考えられる。
【0015】
本発明が対象とする鋼板の成分及び成分範囲を限定した理由を述べる。
【0016】
Cは、硬化元素であり、C量が少ない程加工性に有利であるが、C量を低下させる脱炭処理の経済性を考慮してC量の下限を0.01%とした。また、C量が多くなると硬質になり加工性を劣化するのでC量の上限を0.08%とした。
【0017】
Mnは、靱性を付与するために必要な元素であると共に、鋼中の固溶SをMnSとして析出させ伸びを向上させるに必要な元素であり、0.05%以上の量が必要である。また、Mn量が多くなると硬化して伸びを向上させる効果が飽和するので、上限を0.5%とした。
【0018】
Siは、鋼の脱酸剤として添加されるが、多くなると硬化して加工性を劣化させるので、その範囲を0.003〜0.5%とした。
【0019】
P、Sは、不純物として不可避的に含有され伸びに悪影響を与えるので、Pは最大0.05%、Sは最大0.02%とした。
【0020】
Alは、鋼の脱酸剤として添加され鋼中に含有されるが、Alは鋼中のNをAlNとして析出させ伸びを向上させるに必要な元素であり、0.005%以上必要である。一方、Al量が多くなるに応じて伸びが向上するが、0.3%を超えると硬化して加工性を劣化させるので、Alは0.005〜0.3%とした。
【0021】
Nは不可避不純物として含有され伸びを害するので低い方が望ましい、0.007%を超えるとAlNやBNとして析出する以上の固溶N量が増大し伸びを害するので、上限を0.007%とした。
【0022】
Bは、鋼中のNをBNとして析出させるに必要な元素であると共に、セメンタイト密度を低くして、即ちセメンタイト粒を粗大化させて熱延鋼板を軟質化させ伸びを向上させるに必要な元素であり、最低0.0005%の量が必要である。しかし、0.005%を超えて含有させると固溶Bが存在することとなり、伸びの向上に寄与しなくなり、鋼板の割れ発生の原因ともなるので、最大0.005%とした。
【0023】
次いで、加熱炉での低温加熱処理について述べると、加工性を劣化させないで、熱間圧延をするためには、圧延されるシ−トバ−の温度を少なくともAr3変態点以上の温度とする必要がある。図2はシ−トバ−の仕上げ温度分布を示す図である。図2に示すように、熱間圧延されるシ−トバ−の先端部の仕上温度が一番低く、後端部になるに従い仕上温度が高くなる。後端部の仕上温度が高くなる理由は、加工発熱によるものと考えられる。
【0024】
このように、シ−トバ−の仕上温度は、シ−トバ−の全長に亘って均一でないため、シ−トバ−の材質も先端部と中間部とで異なったものとなり問題があった。
【0025】
また、加熱炉での加熱は、熱間圧延されるシ−トバ−の最低仕上温度、即ち、シ−トバ−の先端部の仕上げ温度がAr3変態点以上の温度となるように加熱温度を選定しなければならなかった。そのため、従来の加熱炉での加熱は、Ar3変態点よりもかなり高温の約1200℃の温度に加熱することが行われていた。
【0026】
ところが、本発明では、粗圧延されたシートバーの先端を、その前に粗圧延され熱延ラインを先行するシートバーの後端に接合してあるので、連続的に熱間圧延をすることが可能となり、しかも、その熱間圧延は等速圧延とすることができるので、シートバーの全長に亘って圧延条件が同じとなり、従来のバッチ型の熱間圧延の加速圧延とは異なって、シートバーの温度低下のバラツキが生じない。即ち、本発明の熱延連続化法によれば、シートバーの先端部が存在しないので、熱延条件が従来の熱延仕上鋼板の中間部に相当するだけの圧延となるので、仕上鋼板の温度低下は一定となり、その温度低下も少ない。
【0027】
このような理由により、本発明では、加熱炉での温度を従来の温度よりも低く設定でき加熱炉原単位の低下が図られる。実験によれば、熱延仕上鋼板の温度をAr3変態点以上にするためには1150℃以下で950℃以上の低温加熱であれば充分であることが分かった。しかも、1150℃以下の低温加熱を行えば、従来以上に鋼中へのMnS、BNやAlNの析出が促進され、鋼板の加工性、特に伸びが向上する効果が生じ、鋼板の全長に亘ってその材質が改善されたものとなることを見出した。
【0028】
更に、析出処理について説明する。
【0029】
MnSやAlNの析出物をオーステナイト域で出来るだけ析出させることが伸び向上につながるものである。そのためシートバーをAr3点以上で捲取り、次いで、3秒以上1℃/S以下の冷却速度で保持し、その後捲戻すことによりMnS、BNやAlNの析出物を析出させると、その後の仕上圧延でこれが核となり析出を著しく促進し伸びが向上するのである。
【0030】
また、析出物の生成のためには、3秒以上1℃/S以上の冷却速度に保持する必要があり、これ以下では50%以上の伸びの向上に効果がない。
【0031】
本発明の析出処理には、鋼板の巻取りを行うコイルボックス法(Iron and Steel Engineer,1981,No.11,P.452)が使用できる。この方法は、鋼板を曲げると同時にコイル状に巻き取るため、保温効果を有していて、3秒以上1℃/S以下の冷却速度に保持するのに特別の加熱装置なしで行うことができる。
【0032】
そして、前述した低温加熱によるMnS、BNやAlNの1次析出を行わせて核を作っておくと、上記析出処理による析出が著しく促進することが判明した。従って、低温加熱による析出処理と上記析出処理との両方の析出処理を組み合わせて析出処理を行うと相乗効果が生じて好適である。
【0033】
更に、600℃以上の捲取温度で捲取ると、鋼板中に残存する固溶NがBNとして析出し、更にセメンタイトの析出が促進されて固溶Cが低減する。そのため、固溶Cと固溶Nが共にほとんど残存しなくなり、これらが原因で生じる腰折れやストレッチャーストレインが発生しない。捲取温度が600℃未満ではこのような効果が生じない。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明を図に基づいて説明する。
図3は、熱延連続化法における成形性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法の概要を示す図である。
【0035】
図3に示すように、加熱炉1で1150℃以下に加熱された鋼スラブは、粗圧延機2で熱間圧延され、これをAr3変態点以上の温度で巻取ってシートバーのコイル3とし、次いで3秒以上1℃/S以下の冷却速度で保持し、その後捲戻す。捲戻されたシートバー3の先端は、溶接用切断機4でもって切断され溶接に適する先端開先が形成される。先行するシートバーが仕上圧延機に搬送され仕上圧延されるが、その後端は同じく溶接用切断機4でもって切断され溶接に適する後端開先が形成される。先行するシートバーの後端と後行のシートバーの先端とは、溶接装置5により溶接して接合される。
【0036】
溶接装置5は、移動台車からなっておりシートバーの後端の移動速度と同期して移動することができるように制御されていて、移動台車を移動させながら先行するシートバーの後端と後行のシートバーの先端とを溶接する。溶接法は、レーザービーム溶接法が適するが、他の公知の溶接法も適用できる。
【0037】
溶接装置5によって一体に接合され長尺となったシートバーは、仕上圧延機6で連続的に仕上温度Ar3変態点以上で仕上圧延され、次いで、ランアウトテーブルに設置された冷却装置7により600℃以上の捲取温度に水冷却された後に、コイルとして捲取機10で捲取られる。仕上鋼板は所定の長さを捲取られると、切断機9で切断され別のコイルとして捲取機10で捲取られる。なお、切断機9による切断部位は、溶接装置5で接合した部位を切断することが好ましい。
【0038】
本発明では、シートバーの先端を圧延ラインを先行するシートバーの後端と接合して長尺の鋼板とするので、連続して熱間仕上圧延をすることができるので、上記に述べた析出処理を組み合わせて析出処理を施すことが可能となる。そして、仕上圧延中にこの析出処理によるMnS、BNやAlNの析出物を核として析出物の促進がはかられ、50%以上の伸びを有し腰折れやストレッチャーストレインは発生しない加工用熱延鋼板が得られる。
【0039】
【実施例】
表1に示す成分の鋼片を用いて、表2に示す条件で加工用熱延鋼板を製造した。その結果を表2中に併せて記載してある。
【0040】
本発明の鋼片の成分範囲を外れる比較例E、F、Gの鋼種を用いて本発明で規定する製造条件で製造した比較例No.5〜7は、鋼板の全長に亘る材質のばらつきは無いものの、センター部の材質が本発明よりも劣っていた。更に、No.7はBの量が少ないため腰折れが発生した。
【0041】
また、本発明で規定する成分範囲の鋼材に対して、本発明で規定する製造条件から外れる条件で製造した比較例No.8〜11は、接合を行なっているため鋼板の全長に亘る材質のばらつきは無いものの、センター部の材質が本発明例よりも特に伸びが低く劣っていた。また、No.11は巻取温度が低いため腰折れが発生した。そして、比較例No.12は、接合を行なっていないため、鋼板の全長に亘る材質のばらつきがあった。
【0042】
本発明例のNo.1〜4はいずれもセンター部の材質は良好で、かつ鋼板の全長に亘る材質のばらつきも無く、腰折れも発生しなかった。なお、低温加熱したNo.2の本発明例は、材質(伸び)が最も優れていた。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明の熱延連続化法による成形性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法によれば、50%以上の伸びを有する加工用熱延鋼板を得ることができ、鋼板の全長に亘って均質なものになり、また、低温加熱により加熱炉原単位の低下がはかれ、更に、熱延鋼板の先端部の材質不良による製品歩留りを向上させることができ、スキンパスをしなくても腰折れやストレッチャーストレインが発生せず、その上、高い生産性を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】保持時間と伸びとの関係を示す図である。
【図2】熱延鋼板の仕上温度分布を示す図である。
【図3】本発明の熱延連続化法による成形性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法の概要を示す図である。
【符号の説明】
1 加熱炉
2 粗圧延機
3 粗圧延コイル
4 溶接用切断機
5 溶接装置
6 仕上圧延機
7 冷却装置
8 ピンチロール
9 切断機
10 捲取機
Claims (2)
- 重量%で、
C :0.01〜0.08%、
Mn:0.05〜0.5%、
Si:0.003〜0.5%、
P :0.05%以下、
S :0.02%以下、
Al:0.005〜0.3%、
N :0.007%以下、
B :0.0005〜0.005%
残部不可避不純物を除いてFeから成る鋼片を、粗圧延してシートバーとした後、Ar3変態点以上の温度で捲取り、3秒以上1℃/s以下の冷却速度で保持し、その後捲戻し、そして、該シートバーの先端をその前に粗圧延され圧延ラインを先行するシートバーの後端に接合して、仕上げ温度Ar3変態点以上で連続的に熱間仕上圧延をし、600℃以上の捲取温度で捲取ることを特徴とする50%以上の伸びを有し腰折れやストレッチャーストレインが発生しない成形性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。 - 重量%で、
C :0.01〜0.08%、
Mn:0.05〜0.5%、
Si:0.003〜0.5%、
P :0.05%以下、
S :0.02%以下、
Al:0.005〜0.3%、
N :0.007%以下、
B :0.0005〜0.005%
残部不可避不純物を除いてFeから成る鋼片を、1150℃以下で低温加熱し、粗圧延してシートバーとした後、Ar3変態点以上の温度で捲取り、3秒以上1℃/s以下の冷却速度で保持し、その後捲戻し、そして、該シートバーの先端をその前に粗圧延され圧延ラインを先行するシートバーの後端に接合して、仕上げ温度Ar3変態点以上で連続的に熱間仕上圧延をし、600℃以上の捲取温度で捲取ることを特徴とする50%以上の伸びを有し腰折れやストレッチャーストレインが発生しない成形性に優れた加工用熱延鋼板の製造方法。
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