JPH05295432A - オンライン加工熱処理による高強度高靭性鋼板の製造方法 - Google Patents

オンライン加工熱処理による高強度高靭性鋼板の製造方法

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JPH05295432A
JPH05295432A JP12663592A JP12663592A JPH05295432A JP H05295432 A JPH05295432 A JP H05295432A JP 12663592 A JP12663592 A JP 12663592A JP 12663592 A JP12663592 A JP 12663592A JP H05295432 A JPH05295432 A JP H05295432A
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rolling
toughness
less
temperature
strength
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JP12663592A
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Inventor
Hiroyasu Yokoyama
泰康 横山
Sadahiro Yamamoto
定弘 山本
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 重量%で、C:0.02〜0.10%,Si:0.02〜1.
00%,Mn;0.30〜2.50%,P≦0.04%,S≦0.02%,A
l:0.001 〜0.065 %,N≦0.010 %からなる鋼の厚板
圧延において、Ac3点〜1250℃に加熱し、圧延機の入側
と出側のオンライン上に設けた保温システムによりAr3
点〜未再結晶上限温度の温度域で70%以上の累積圧下率
を加え、圧延終了後にAr3点以上の温度から150 ℃〜
(Ar3−100)℃の冷却停止温度まで、20℃/秒の冷却速
度で加速冷却する。 【効果】 厚鋼板の強度及び靱性を改善するために、圧
延条件及び冷却条件を限定した。通常用いられる高価な
Niなどを添加せずに(またNiなどの添加による溶接性の
劣化もなしに) 強度及び靱性の大幅な向上をはかること
ができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オンライン加工熱処理
による高強度高靭性鋼板の製造方法に係り、炭素鋼及び
低合金鋼の厚板圧延において、圧延機の入側及び出側の
双方に保温システムを設置することにより圧延中の鋼板
の温度降下を抑制し、未再結晶温度以下Ar3 点以上で高
い累積圧下を加え、更に圧延後Ar3 点以上の温度から1
50℃以上(Ar3 点−100)℃の温度範囲で20℃/
秒以上の高冷却速度で加速冷却を行い、鋼の強度・靭性
を大幅に向上しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】鋼の特性に関する要求は、近年ますます
厳しくなっており、一層の高強度、高靭性化が望まれて
おり、このような要求に対し、従来から制御圧延、制御
冷却を組み合わせた加工熱処理技術が広く行われてい
る。加工熱処理技術の基本思想は鋼の成分、加熱条件、
圧延条件、冷却条件の最適化により微細なフェライト
(α)もしくはベイナイト組織を得ることにあり、この
組織の微細化により高強度化、高靭性化を共に計ろうと
するものである。その中心は、オーステナイト(γ)低
温域の、γが再結晶を起こさない温度域(未再結晶温度
域)の圧延において累積圧下率をできるだけ高く確保
し、γ粒の伸展度を増し、多数の変形帯を導入すること
と、その後の制御冷却におけるγ/α変換比の調整によ
るαの細粒化もしくはベイナイトの微細化である。
【0003】しかし、従来の制御圧延では、仕上板厚と
仕上温度が決まると圧延中の温度降下挙動は一義的に決
定されてしまい、制御圧延において最も重要な因子であ
るγ未再結晶温度域における最大累積圧下率が決定され
る。そのため、未再結晶γ域で70%以上の高い累積圧
下率を取るような圧延は困難である。このγの未再結晶
域を広げ、この領域での累積圧下率を増加させる方法と
しては、Nb,Ti等のマイクロアロイを添加し、未再結晶
上限温度を上昇させる方法がある。現状0.06%以下の
Nb、または0.10%以下のTi添加が行われており、未再
結晶温度域が高温側に50℃程度広がっている。しか
し、現状以上にこれらマイクロアロイの添加量を増加し
ても、その効果が飽和すること、また溶接性が著しく低
下することからこれ以上の添加は有効でなはい。
【0004】一方熱間圧延ラインでの熱損失を防ぐ方
法、装置としては、特公昭41-9644 号、実公昭50-11778
号等が提案されているが、これらはいずれも圧延とその
前行程の間の鋼片搬送時の熱損失を防ぐ方法であり、圧
延中の温度降下を抑制するものではない。また圧延中に
加熱する方法としては特公平2-28477 が提案されている
が、これもクラッド圧延時に合せ材のみを急速加熱し積
極的に板厚方向に温度差をつけて圧延を行うものであ
り、圧延中の鋼板の温度降下を抑制するものではない。
【0005】圧延後の鋼板の加速冷却時に冷却速度を増
すことによる高強度化については、例えば特公昭58-301
2 の第3図に示されるように、冷却速度25℃/秒まで
は連続的に強度が上昇し、靭性は20℃/秒までは変化
せず、それ以上の速度で悪化するという結果を示してお
り、本発明のような炭素鋼、低合金鋼の成分系で未再結
晶温度域での累積圧下率を多く取り、さらに高冷却速度
で冷却することにより高強度だけでなく、高靭性化も同
時に達成するものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記したような従来の
制御圧延では圧延中の鋼板の冷却速度の抑制あるいは制
御ができないため、仕上温度と仕上板厚が決まると材質
に大きな影響を及ぼす未再結晶域での累積圧下率が決定
されてしまい、それ以上の材質向上には、高価な合金元
素を添加するか加速冷却を用いなければならなかった。
加速冷却を用いる方法は合金元素添加よりも安価である
が、この手段では強度のみが変化し、靭性の向上は望む
ことが困難であった。
【0007】従って高強度高靭性鋼板を製造するには、
適切量の合金添加と加速冷却の組合せの最適化を行って
いるが、特に高靭性を要求される場合には、加速冷却で
は対応できないことから高価なNi等の合金を多量に添加
せねばならず、高価な鋼となり、また合金添加量が増え
ることから溶接性の劣化は避けられないものとなる。
【0008】上記のような条件下で、本出願人側におい
ては、特願平3-205225の如きを提案し、このものは本発
明と同様に保温システムにより特定温度域における集中
圧延による鋼の高靭性化を図っているが、圧延後の鋼板
の冷却速度は空冷〜10℃/秒程度であり、かつその制
御冷却の目的も高強度化であって、冷却速度を変化させ
ても靭性は変化しておらず本発明のような成分系で、高
強度化のみならず高靭性化を図ることができない。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記したよう
な従来技術の問題点を解決するために検討を重ねて創案
されたものであって、制御圧延を行う圧延機の入側と出
側の双方に保温システムを設置し圧延中の温度降下を抑
制し、Ar3 点以上未再結晶温度以下の温度域において充
分な累積圧下率を加え、更に圧延後、Ar3 点以上の温度
から150℃以上(Ar3 点−100)℃以下の温度まで
急速冷却することにより、鋼の大幅な特性向上を図るこ
とに成功したものであって、以下の如くである。
【0010】(1) 重量%で、C:0.02〜0.10
%、Si:0.02〜1.00%、Mn:0.30〜2.50%、
P:0.04%以下、S:0.02%以下、Al:0.001〜
0.065%、N:0.010%以下を含有し、残部がFe及
び不可避不純物からなる鋼の厚板圧延において、Ac3
以上1250℃以下に加熱し、圧延機の入側及び出側の
オンライン上に設置した保温システムによりAr3 点以上
未再結晶上限温度以下の温度域において70%以上の累
積圧下率を加え、圧延終了後、Ar3 点以上の温度から1
50℃以上(Ar3 点−100)℃以下の温度まで、20
℃/秒以上の冷却速度で加速冷却を行うことを特徴とす
るオンライン加工熱処理による高強度高靭性鋼板の製造
方法。
【0011】(2) 重量%で、Cu:0.05〜2.0%、
Ni:0.05〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Mo:0.01
〜0.5%、V:0.01〜0.2%、Nb:0.003〜0.06
%、Ti:0.005〜0.03%、B:0.0030%以下の
何れか1種または2種以上をも含有する鋼を用いること
を特徴とする前記(1)項に記載のオンライン加工熱処
理による高強度高靭性鋼板の製造方法。
【0012】(3) 重量%で、Ca:0.005%以下を
も含有することを特徴とする前記(1)項に記載のオン
ライン加工熱処理による高強度高靭性鋼板の製造方法。
【0013】(4) 重量%で、Ca:0.005%以下を
も含有することを特徴とする前記(2)項に記載のオン
ライン加工熱処理による高強度高靭性鋼板の製造方法。
【0014】
【作用】本発明は上述したような従来の課題を解決する
ため、従来とは全く別の観点から検討を加えたものであ
って、従来はγの未再結晶温度域での圧下率を増加させ
るために、マイクロアロイ添加により未再結晶温度域を
拡大することに重点が置かれていたのに対し、本発明
は、今まで全く検討されていなかった圧延中の温度降下
を抑制することにより、鋼種によって決まっている未再
結晶温度域での累積圧下率を増大し、更に圧延後、高冷
速の加速冷却を施すものである。圧延中の温度降下の抑
制については、鋼板表面からの熱損失を抑制することに
より、板厚方向の温度分布を極力均一に保ちながら全体
の温度降下を抑制するものである。さらに圧延後の加速
冷却において、冷却速度を高冷速とすることにより組織
を十分に微細にし、靭性を大幅に改善する。
【0015】より具体的に言うならば、本発明は、炭素
鋼あるいは低合金鋼の厚板圧延においてライン上に保温
システムを設置し、未再結晶温度以下Ar3 点以上の温度
域において70%以上の累積圧下を加え、さらに圧延後
Ar3 点以上の温度から150℃以上(Ar3 点−100)
℃以下の温度範囲を20℃/秒以上の冷却速度で加速冷
却して鋼の特性、特に強度・靭性のバランスを大幅に向
上させるオンライン加工熱処理方法である。従来よりγ
の未再結晶域での圧下率の増加にともない、鋼の強度・
靭性が向上すること、並びに圧延後の加速冷却により靭
性を劣化させることなく高強度化が図れることはよく知
られているが、γ未再結晶温度域での累積圧下率を70
%以上確保した圧延を行った後に、加速冷却することに
よる高靭性化は今まで報告されていない。これは前述し
たように、通常の制御圧延では圧延中の鋼板の温度低下
のため、実操業においては未再結晶温度域で70%以上
の累積圧下率を確保することが困難であったことによ
る。
【0016】本発明においては、未再結晶温度域におけ
る累積圧下率が70%以上であり、この領域で圧下率の
増加に伴い高冷却速度域で強度・靭性が連続的に向上す
るのは、次に述べる作用の相乗効果によるものである。
即ち一つには、γ粒の伸展度及び変形帯の密度が累積圧
下率の増加に伴い上昇し、変態時の核生成サイトとなり
うるγ粒界及び変形帯の単位体積当たりの面積(有効界
面積:Sv)が増加し、変態後の組織が微細化されるため
である。ただし、図1に示すように、未再結晶温度域で
の累積圧下率が70%以上でないと得られる変態後の組
織が十分細かくならず、20℃/秒以上の高速の加速冷
却を行っても靭性は向上しない。しかし、70%以上の
累積圧下率を確保した場合には、粒径が非常に細かくな
っているため、20℃/秒以上の高速の加速冷却を行わ
ないと粒成長を起こし、結果として高靭性が得られなく
なる。
【0017】そこで高冷却速度の加速冷却を組合せるこ
とによりこの粒成長を抑制し、また特に高冷却速度にお
いては変態後の組織を均質な微細組織とすることによ
り、高靭性化を図っている。ここで冷却開始温度をAr3
以上としているのは、Ac3 以下では組織がαとγの二相
組織となり、Cの濃化したγが高冷却速度により靭性を
劣化させるMA分率の多いベイナイトとなるためである。
【0018】また冷却停止温度を規定しているのは、以
下に述べる理由によるものである。冷却停止温度が(Ar
3 点−100)℃以上の場合、比較的高温であるために
冷却停止後に粒成長が起こり、結果として得られる組織
が細かくならず高強度・高靭性が得られなくなるためで
ある。また、冷却停止温度を150℃以下とすると、変
態後の組織中のMA分率が増加し、靭性が悪化する。従っ
て、冷却停止温度を150℃以上(Ar3 点−100)℃
以下とすることにより、粒成長を抑制し、MAの発生を抑
えた高強度・高靭性の鋼板が得られるようになる。
【0019】以上のようにγ未再結晶温度域での累積圧
下率の増大と圧延後の高速加速冷却システムの組合せに
よる高強度高靭性鋼板の製造においては、加熱条件、鋼
の成分系も重要な因子となる。以下にこれらの限定理由
を述べると以下の如くである。
【0020】先ず、加熱温度の限定理由について言うな
らば、本発明の骨子は、最終的に得られる組織を出来る
だけ微細なαもしくは均質微細ベイナイトとすることに
ある。このためにはSvの増加が有効であり、加熱γ粒径
の粗大化を抑制するため、加熱温度の上限を1250℃
とする必要がある。また加熱下限温度は、圧延開始時の
組織をγ単相にしないと均質な細粒γ組織が得られない
のでAc3 点以上とする必要がある。
【0021】次に、成分限定理由について述べると、C
は、0.02〜0.10%であって、このCは強度を確保す
るという観点から0.02%以上必要であるが、0.10%
を超えると圧延後の加速冷却時に靭性を悪化するので0.
10%以下とする必要がある。
【0022】Si:0.02〜1.00%。 Siは、製鋼時の脱酸のために0.02%以上必要である
が、1.0%を超えると熱間加工性を著しく阻害するため
に、0.02%以上1.0%以下とした。
【0023】Mn:0.30〜2.50%。 Mnは、脱酸と強度の確保のため0.30%以上必要である
が、2.50%を超えると靭性を悪化するので0.30%以
上2.50%以下とすべきである。
【0024】P:0.04%以下。 Pは、靭性を劣化する元素であるので0.04%以下とし
た。
【0025】S:0.02%以下。 Sは、主として介在物の形態をとって鋼中に存在し、靭
性を著しく劣化するので0.02%以下とする必要があ
る。
【0026】Al:0.001〜0.065%。 Alは、脱酸剤として必要な元素であり、含有量が0.00
1%未満では脱酸剤としての効果がなく、0.065%を
超えると靭性、熱間延性を阻害するので0.001%以上
0.065%以下とした。
【0027】N:0.01%以下。 Nは、固溶することにより強度を上昇させるが、0.01
%を超えると固溶Nが高くなりすぎ靭性の低下を招くの
で0.01%以下とした。
【0028】Cu,Ni,Cr:0.05〜2.0%。 Cu,Ni,Crは、強度及び靭性を向上させる元素であり、
0.05%以下ではその効果が得られず、またCuは2.0%
を超えると熱間加工性を劣化させ、Ni,Crは2.0%を超
えて含有させるのは経済性の観点から得策ではないので
0.05%以上2.0%以下を必要に応じて添加できるもの
とする。
【0029】Mo:0.01〜0.5%。 Moは、固溶により強度と靭性を安定的に向上させる元素
であり、0.01%以下ではその効果が得られず、0.5%
以上では逆に靭性を損なうため、0.01%以上0.5%以
下を必要に応じて添加できる。
【0030】V:0.01〜0.2%。 Vは、微細なV(C,N)を析出し、析出強化とフェラ
イト粒の微細化による微細化強化、高靭性化を行う元素
であり、0.01%以下ではその効果が得られず、0.2%
以上では析出物が多くなりすぎ逆に靭性を劣化させるた
め、0.01%以上0.2%以下を必要に応じて添加するも
のである。
【0031】Nb:0.003〜0.06%。 Nbは、圧延時にC,Nと共に微細なNb(C,N)を析出
してγ/α変態で生成するフェライト粒を微細化し、析
出強化、細粒化強化、細粒化による高靭性化を成し得る
元素であり、また析出せずに固溶しているNbは、焼入性
を向上し、高強度化に寄与しているが0.003%以下で
はその効果が得られず、0.06%以上では析出物が粗大
化し、靭性に悪影響を与えるため、0.003%以上0.0
6%以下を必要に応じて添加できるものとした。
【0032】Ti:0.005〜0.03%。 Tiは、Nを固定し、TiNを析出してα粒を微細化し、細
粒化による強化と靭性を向上させるため0.005%以上
必要であるが、0.03%を超えると析出物が粗大化して
靭性を向上させるため0.005%以上0.03%以下を必
要に応じて添加できる。
【0033】B:0.0030%以下。 Bは、焼入性を向上する元素であり、高強度化に寄与し
ているだけでなく、粒界にすばやく偏析することによ
り、Pの粒界偏析による靭性劣化を抑制しているが、0.
0030%以上でB化合物の粒界析出物が粗大化して靭
性を著しく劣化するため、0.0030%以下とした。
【0034】Ca:0.005%以下。 Caは、MnSを球状化する形態制御の効果を持つため、大
入熱溶接を行う場合には伸長したMnSに拡散性水素が集
積することに起因する溶接割れを抑制する効果を有する
が、0.005%以上添加すると逆に介在物となり靭性を
劣化するので必要に応じて0.0050%以下を添加でき
るものとした。
【0035】
【実施例】上記したような本発明について、その具体的
実施態様を説明すると、本発明は、具体的には、制御圧
延を行う圧延機の入側と出側の双方のライン上に保温シ
ステムを設置し、温度降下を抑制する。保温システム
は、パス間の放冷時における熱放射の抑制と、圧延ロー
ルまたはローラーテーブルとの接触による抜熱を補うた
め、ガスバーナーあるいは高周波加熱による保温方法が
望ましい。このようなガスバーナーあるいは高周波加熱
はあくまでも保温、つまりは鋼板の温度降下の抑制がそ
の目的であり、特公平2-28477 のように表層を急速加熱
して表層部と内部に極端な温度勾配をつけるようなもの
とは基本思想が全く異なるものである。この保温システ
ムについては図3に示すような、前述の特願平3-205225
で検討されている保温システムと同様のものが板厚方向
の温度分布を極力均一に保つためには望ましい。
【0036】また、圧延後の加速冷却については、従来
は、靭性を劣化させずに高強度化を図ろうとするもので
あったが、本発明のような未再結晶温度域での累積圧下
率を70%以上確保する圧延では、圧延後の加速冷却に
おいて冷却速度を高冷速化することにより、靭性の著し
い改善が図られることが判明した。即ち図1には、次の
表1に示す鋼Aを用いて従来の制御圧延において900
℃以下60%の累積圧下を加えた場合と、圧延機の両側
に高周波タイプの保温システムを設置して制御圧延中の
温度降下を抑制し、従来の制御圧延では確保できない9
00℃以下90%の累積圧下を加えた場合について圧延
後の加速冷却速度を0.5℃/秒(空冷)〜40℃/秒と
変化させて冷却停止温度を550℃とした場合の結果を
示す。従来タイプの制御圧延では冷却速度によらず靭性
は一定値を示す。一方、90%の累積圧下を取った圧延
材では、空冷時においても従来材よりも優れた靭性を示
すのみならず、冷却速度を高速化することによりさらに
高靭性を示す。特に、20℃/秒以上の冷却速度におい
てこの靭性改善効果は顕著であり、空冷材と比較して6
0℃以上脆性破面遷移温度が改善されている。
【0037】
【表1】
【0038】また図2には前記表1の鋼Aを用い、未再
結晶温度域で90%の累積圧下率を取り、仕上温度を8
00℃として795℃から20℃/秒の加速冷却を開始
した場合の冷却停止温度と機械的性質の関係を示すが、
冷却停止温度が150℃以上(Ar3 点−100)℃以下
の範囲において高強度高靭性が得られているのに対し、
(Ar3 点−100)℃以上の高温の場合強度が低く高靭
性も得られていない。また、冷却停止温度を150℃以
下とすると、高強度は得られるものの、靭性が劣化して
いる。従って、冷却停止温度を150℃以上(Ar3 点−
100)℃以下とすることにより、高強度・高靭性の鋼
板が得られる。
【0039】具体的実施例について説明すると以下の如
くである。 (実施例1)次の表2に示す成分を有する炭素鋼Bを用
い、その製造条件を1〜7と種々に変えて製造した場合
の各条件と、その機械的性質は表3に示す如くである。
加熱温度が本発明範囲よりも高い条件1では最終的に得
られる組織が十分に微細化しないため、vTrs=−80℃
である。未再結晶温度域での累積圧下率が小さい条件2
でもやはりvTrs=−50℃となる。また、仕上り温度が
二相域にかかっている条件3、水冷開始温度が二相域に
かかっている条件4については強度が高くなっている
が、組織がフェライトとベイナイトの混合組織を示し、
vTrs=−83,−75℃である。さらに冷却速度が10
℃/秒と低冷却速度の条件5の場合、vTrs=−90℃と
なる。これらの比較例に対し、本発明の加熱圧延、冷却
条件を全て満足した条件6,7についてはいずれもvTrs
<−170℃以下と非常に高靭性となっている。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】(実施例2)次の表4に示す成分の低合金
鋼C〜Fを用いた場合の鋼板製造条件とその機械的性質
は表5に示す如くである。これらの低合金鋼はNbを0.0
2〜0.05%含有しているため、鋼Bと比較して未再結
晶温度が50℃程高く900℃となっている。この場合
でも加熱条件、圧延条件、冷却条件が本発明範囲を満足
していない条件ではvTrs=−55〜−130℃程度であ
るのに対し、本発明範囲を全て満足する条件ではvTrs<
−179℃と高靭性を示す。
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】(実施例3)次の表6に示す化学成分を有
する各種炭素鋼G〜Jについての製造条件と、それによ
って得られた鋼板の機械的性質は表7に示す如くであ
る。成分が本発明の範囲を満足している各鋼G,H,
I,Jは、加熱・圧延・冷却等の条件を全て満足した場
合にはvTrs<−170℃と優れた靭性を示すが、一つで
も本発明範囲を外れるような条件では靭性が悪い。ま
た、この実施例の成分ではCaを添加して介在物の形態制
御を行っているため、シャルピー試験における吸収エネ
ルギーも高い値を示している。
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【0048】(実施例4)次の表8に示した成分を示す
低合金鋼K,L,M,N,O,Pの製造条件とその機械
的性質は表9に示す如くである。加熱・圧延・冷却等の
条件を全く満足した場合にはvTrs<−170℃と優れた
靭性を示すが、一つでも本発明の範囲を外れるような条
件では靭性が悪い。また、この実施例の成分ではCaを添
加して介在物の形態制御を行っているため、シャルピー
試験における吸収エネルギーも高い値を示す。
【0049】
【表8】
【0050】
【表9】
【0051】
【発明の効果】以上に示したような本発明によれば、炭
素鋼、低合金鋼の如きの厚鋼板製造において、適正な成
分、加熱温度、未再結晶温度以下Ar3 点以上の温度範囲
での70%以上の累積圧下率、圧延Ar3 点以上からの2
0℃/秒以上の冷却速度による制御冷却を行うことによ
り、従来法に比較して靭性の大幅に向上した厚鋼板が適
切に製造し得るものであって、工業的にその効果の大き
い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷却速度と機械的性質の関係を示した図表であ
る。
【図2】機械的性質に及ぼす冷却停止温度の影響を要約
して示した図表である。
【図3】保温システムの概要を示した説明図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.02〜0.10%、Si:
    0.02〜1.00%、Mn:0.30〜2.50%、P:0.04
    %以下、S:0.02%以下、Al:0.001〜0.065
    %、N:0.010%以下を含有し、残部がFe及び不可避
    不純物からなる鋼の厚板圧延において、Ac3 点以上12
    50℃以下に加熱し、圧延機の入側及び出側のオンライ
    ン上に設置した保温システムによりAr3 点以上未再結晶
    上限温度以下の温度域において70%以上の累積圧下率
    を加え、圧延終了後、Ar3 点以上の温度から150℃以
    上(Ar3 点−100)℃以下の温度まで、20℃/秒以
    上の冷却速度で加速冷却を行うことを特徴とするオンラ
    イン加工熱処理による高強度高靭性鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%で、Cu:0.05〜2.0%、Ni:0.
    05〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Mo:0.01〜0.5
    %、V:0.01〜0.2%、Nb:0.003〜0.06%、T
    i:0.005〜0.03%、B:0.0030%以下の何れ
    か1種または2種以上をも含有する鋼を用いることを特
    徴とする請求項1に記載のオンライン加工熱処理による
    高強度高靭性鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 重量%で、Ca:0.005%以下をも含有
    することを特徴とする請求項1に記載のオンライン加工
    熱処理による高強度高靭性鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 重量%で、Ca:0.005%以下をも含有
    することを特徴とする請求項2に記載のオンライン加工
    熱処理による高強度高靭性鋼板の製造方法。
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