JP3833570B2 - マイクロ波周波数逓倍器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はマイクロ波周波数逓倍器に係り、特に、10GHz程度以上の入力マイクロ波信号周波数の2倍または4倍の周波数を有するマイクロ波又はミリ波の信号を出力するマイクロ波周波数逓倍器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図14は、特許第2807508号公報に開示されているバランス型マイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【0003】
この周波数逓倍器では、ソース接地のFET10とゲート接地のFET11とを備え、FET10の入力端子であるゲートGと、FET11の入力端子であるソースSとが共に入力伝送線路12に結合され、FET10の出力端子であるドレインDとFET11の出力端子であるドレインDとが共に出力伝送線路13に直接接続されている。
【0004】
FET10のゲートGと入力伝送線路12との間には、直流遮断用キャパシタ14が接続され、FET11のソースSと入力伝送線路12との間には、位相遅れを生じさせるリアクタンス素子15が接続されている。
【0005】
FET10及びFET11がピンチオフ付近で動作するように、FET10及びFET11のゲートにそれぞれ定電圧電源16及び17から抵抗18及び19を介して直流バイアス電圧が印加される。FET11のゲートと接地との間には直流カット用キャパシタが接続されている。
【0006】
マイクロ波入力端子T1に正弦波を供給すると、FET10は正の半波を整流したものを出力し、FET11は負の半波を整流し極性を反転したものを出力する。すなわち、FET10及びFET11のドレイン電流に含まれる基本波及び奇数次高調波は、位相が互いに逆相であるので、T3で両者が相殺される。これに対し、FET10及びFET11のドレイン電流に含まれる偶数次高調波の位相は同相であるので、互いに強め合う。4倍波の振幅は、2倍波の振幅に比し相当小さい。
【0007】
FET10及び11の伝達特性の差による、基本波及び奇数次高調波の逆相からのずれ及び偶数次高調波(特に2倍波及び4倍波)の同相からのずれは、リアクタンス素子15により防止される。
【0008】
図14の周波数逓倍器によれば、入力マイクロ波信号から互いに逆相の基本波を生成するハイブリッド回路が不要であるので、小形化が可能であるという利点を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が上述のマイクロ波周波数逓倍器に10GHz程度以上の入力マイクロ波を供給してその特性を調べたところ、次のような問題があることが分かった。
【0010】
入力周波数が10GHz程度以上になり、その結果として出力周波数が20GHz以上になると、ゲート接地であるFET11がそのゲートGまたはドレインDにおいて負性抵抗特性等の不安定性を示すようになることを知見した。この場合、対策として出力端子T2付近にアッテネータを接続してみたが、スプリアス発振を防止できなかった。
【0011】
上記逓倍器の設計においては、FET11のドレインDにバイアス用直流電圧・電流を供給するスタブを接続し、さらに、目的の逓倍周波数に対して出力最大となるようにインピーダンス整合をとるのが一般的である。
【0012】
しかし、このスタブと上記負性抵抗の組み合わせ、あるいはFET10及び11とを含む閉ループによる発振が生じる。上記の周波数逓倍器の出力に接続される出力バッファ増幅器の入力整合状態が劣悪(反射係数が1に近い)である場合には、上記スプリアス発振が顕著となる。
【0013】
また、4逓倍回路を実現する場合には、出力周波数がミリ波領域に達するので、これを実現するに足る高性能な(最大応答周波数とも言うべき最大発振周波数fmaxが高い)ゲート接地FET11部の負性抵抗あるいは反射利得がより大きくなって、上記問題が一層深刻になる。
【0014】
上記負性抵抗が生じる要因は、FET11のゲートGを接地する導体の寄生インダクタンスおよびFET11のドレインDとソースSとの間に寄生する微小な帰還容量である。特に、ゲート接地FETは入力信号と出力信号とが同相であるため、上記寄生インダクタンスはゲート接地のFET11に正帰還を生じさせる(入力信号と出力信号とが逆相であるソース接地FETでは、負帰還となり、ソース接地FETは低雑音増幅器で一般的に用いられる)。
【0015】
しかし、ボンディングワイヤ又は基板に形成されたビアを介して接地し、またはコプレーナ線路の接地導体に接続するいずれの場合も、ゲート接地FETを形成するためには必ず何らかの接地用リードが必要である。先端開放の1/4波長伝送線路を基板上に形成することにより接地する方法もあるが、この場合、所定周波数(または帯域)成分についてのみの接地であるので、該所定周波数よりも高い周波数成分については、上記寄生インダクタンスが生ずる。
【0016】
結局、上記寄生インダクタンスを、ゲート接地FETの動作を全ての周波数において不安定にさせない程度に小さくすることは困難であり、ミリ波あるいはそれに近い高周波において、ゲート接地FETを含む回路は不安定になり易いという問題があった。
【0017】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、トランジスタの制御入力端を接地する導体の寄生インダクタンスによるスプリアス発振が生じない安定なマイクロ波周波数逓倍器を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明によるマイクロ波周波数逓倍器は、
入力マイクロ波信号が供給される入力伝送線路と、
出力伝送線路と、
第1制御入力端及び第1電流路を有し、該第1制御入力端が該入力伝送線路に結合され、該第1電流路の一端が接地導体に接続された第1トランジスタと、
第2制御入力端及び第2電流路を有し、該第2制御入力端が該接地導体に接続され、該第2電流路の一端が該入力伝送線路に結合された第2トランジスタと、
該第1電流路の他端と該出力伝送線路との間に接続された第1ダンピング抵抗と、
該第2電流路の他端と該出力伝送線路との間に接続された第2ダンピング抵抗と、
を有し、
該接地導体は、グランドプレートと該グランドプレートに導通し且つ該第1トランジスタと該第2トランジスタとの間に形成された1つのビアとを有し、該第1電流路の一端及び該第2制御入力端はいずれも該1つのビアに略等しい距離で直接に接続されて該1つのビアを介し該グランドプレートに導通している。
【0019】
上記構成において、入力伝送線路に正弦波を供給すると、第1トランジスタは正の半波を整流したものを出力し、第2トランジスタは負の半波を整流し極性を反転したものを出力する。すなわち、第1及び第2のトランジスタの電流路を流れる電流に含まれる基本波及び奇数次高調波は、位相が互いに逆相であるので、出力伝送線路で両者が相殺される。これに対し、第1及び第2のトランジスタの電流路を流れる電流に含まれる偶数次高調波の位相は同相であるので、互いに強め合う。
【0020】
第1及び第2のダンピング抵抗により、すべての周波数の信号の振幅が減じられるが、位相はシフトしない。従って、偶数次高調波が強め合って出力伝送線路から取り出される。
【0021】
また、第2トランジスタの制御入力端を接地する導体の寄生インダクタンスにより負性抵抗が生じても、第2ダンピング抵抗が、第2トランジスタと出力伝送線路とで形成される擬似発振回路を成立できなくする。すなわち、該擬似発振回路の共振器として機能する出力伝送線路での損失を増加して任意の周波数で発振条件を成立しないようにすることができる。従って、ミリ波のような高周波数の逓倍信号を得るように設計パラメータを定めた場合でも、スプリアス発振のない安定なマイクロ波周波数逓倍器を実現することができる。
【0022】
第1および第2のトランジスタを周回するループで生成される発振は、ループ利得が1よりも小さくなるように第1及び第2のダンピング抵抗の抵抗値を定めることにより、ループ発振を抑圧することができる。
【0023】
また、アッテネータが直列抵抗と並列抵抗を組み合わせて構成できることから、第1及び第2のダンピング抵抗と出力伝送線路との接続点と、接地との間に、抵抗を接続することにより、マイクロ波周波数逓倍器とそれに続く出力バッファ増幅器との間のインピーダンス整合を改善することができ、あるいはこれらの回路を含む全体のレベルダイヤグラムを調整することができる。
【0024】
なお、第1及び第2のダンピング抵抗を介してそれぞれ第1及び第2のトランジスタの電流路に電流が供給されるので、電圧降下が生ずる。すなわち、第1及び第2のトランジスタの一方が導通状態で他方が非導通状態である時、該一方の電流路の端子間電圧は直流バイアス電圧よりも低下し、該他方の電流路の端子間電圧は直流バイアス電圧にほぼ等しい電圧に維持される。この電圧低下は、ダンピング抵抗値が大きい程大きくなる。しかし、第1及び第2のトランジスタは閾値電圧付近にバイアスされているので、トランジスタに流れる電流の平均値は例えば十ミリアンペア以下と低く、30オーム程度以下のダンピング抵抗であれば該電圧低下は0.3V程度であり、第1及び第2のトランジスタによる逓倍能率の低下は無視できる。
【0025】
また、周波数が高くなるとマイクロ波周波数逓倍器に必須の接地に伴なう寄生インダクタンスが無視できなくなるが、本発明では、該第1トランジスタの該電流路の一端及び該第2制御入力端が、共通の該ビアを介して該グランドプレートに導通しているので、該第1トランジスタの該電流路の一端と該グランドプレートとの間の寄生インダクタンスと、該第2制御入力端と該グランドプレートとの間の寄生インダクタンスとが略同一になる。
【0026】
本発明の他の目的、構成及び効果は以下の説明から明らかになる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。複数の図中の対応する同一又は類似の構成要素には、同一又は類似の符号を付している。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のマイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【0029】
外部マイクロ波は、特性インピーダンスZ0を有する入力伝送線路12の一端T1に供給される。入力伝送線路12の他端は、一方では直流バイアス成分遮断用キャパシタ14を介して、第1トランジスタとしてのFET10の制御入力端であるゲートGに接続され、他方では伝送線路15を介して、第2トランジスタとしてのFET11の電流路一端であるソースSに接続されている。伝送線路15は、各FET10及び11の寄生容量等によって生じる通過位相差を補正して、両FET10及び11に同相の信号を入力するために用いられる。
【0030】
FET10の電流路他端であるドレインDと特性インピーダンスZ0の外部出力伝送線路13の一端T3との間にはダンピング抵抗20が接続され、FET11の電流路他端であるドレインDと外部出力伝送線路13の該一端T3との間にはダンピング抵抗21が接続されている。
【0031】
FET10のソースS及びFET11のゲートGは、接地される。22および23は、これら接地のための導体が持つ寄生インダクタンスを示す。FET11のゲートは、図14のキャパシタを介さずに接地される。すなわち、キャパシタが占める面積および接地のための導体が占める面積によって、FET11のゲートから接地点までの距離が増大し、その寄生インダクタンスとソース接地FET10の寄生インダクタンス22との間に差が生じるのを避けるため、第1実施形態では図14のキャパシタを使用しない。
【0032】
FET10のゲートは、直流バイアス用抵抗18を介して、電圧Vggを出力する直流定電圧源16に接続されている。直流定電圧源16は、FET10のゲート・ソース間のバイアス電圧がFET10のピンチオフ電圧付近となるように、バイアス抵抗18に印加する。
【0033】
FET11のソースには、マイクロ波入力端子T1に接続された自己バイアス回路24によって、ドレイン電流に比例したバイアス電圧が供給される。自己バイアス回路24は、FET11のゲート・ソース間のバイアス電圧がFET11のピンチオフ電圧付近となるようにドレイン電流を制御する。
【0034】
マイクロ波入力端子T1に正弦波を供給すると、FET10は正の半波を整流したものを出力し、FET11は負の半波を整流し極性を反転したものを出力する。すなわち、FET10及びFET11のドレイン電流に含まれる基本波及び奇数次高調波は、位相が互いに逆相であるので、T3で両者が相殺される。これに対し、FET10及びFET11のドレイン電流に含まれる偶数次高調波の位相は同相であるので、互いに強め合う。
【0035】
FET10および11のゲート・ソース間のバイアス電圧が上述のようになるように設計し、直流定電圧源16の電圧を調整することにより、FET10及び11のドレイン電流に含まれる基本波及び高調波の利得が互いに同一にされる。
【0036】
入力マイクロ波の信号レベルを大きくしていくと、FET10及び11の非線形性により両ドレイン電流は次第につぶれた波形となり、高次の逓倍波成分の振幅が増加する。
【0037】
逓倍波周波数が20GHzを超える場合には、あるいはこれを可能にするために最大応答周波数とも言うべき最大発振周波数fmaxが非常に高い電界効果型トランジスタをFET10およびFET11用として使用する場合には、寄生インダクタンス23がFET11のドレイン・ソース間に正帰還を生じるように作用して、負性抵抗が生じる。他方、FET10は負帰還の状態となっている。
【0038】
図14の従来例のように両FET10及び11のドレインに直接、出力伝送線路13が接続され、かつ入力インピーダンスが低い回路が後続されていると、反射型発振回路が形成され易く、予期しないスプリアス発振が生ずる。この後続回路が、所望の逓倍波の周波数について整合状態が良い場合でも、その動作帯域を外れたより高い周波数においては、スプリアス発振が生ずる。これは、高性能(高fmax)のトランジスタを用いて図14の従来回路を構成する場合に顕著である。
【0039】
これに対し本第1実施形態では、FET11のドレインと出力伝送線路13との間にダンピング抵抗21が接続されているので、例え負性抵抗が生じていても発振条件が成立せず、これによってスプリアス発振を除去することができる。
【0040】
また、FET10のドレインと出力伝送線路13との間にもダンピング抵抗20が接続されているので、FET10からの基本波周波数成分および逓倍波成分の出力レベルをそれぞれ、FET11からの基本波周波数成分および逓倍波成分の出力レベルに一致させることができる。
【0041】
両ダンピング抵抗の抵抗値は、理論的には同一値でよいが、基本波周波数成分および奇数次逓倍波成分のT3での逆相合成による抑圧と、得たい偶数次逓倍波成分のT3での同相合成による出力増加とをより達成するために、両ダンピング抵抗の抵抗値を異ならせてもよい。
【0042】
スプリアス発振は、従来では、上記反射型発振回路のみでなく、FET11での逆方向伝達を介してFET11のゲートに達し、さらに伝送線路15及びキャパシタ14を介してFET10のゲートに達し、FET10での順方向伝達によりFET10のドレインに達し、FET10のドレインからFET11のドレインに達し、ループにおいて、ループ利得が1より大きくなることによっても生じた。この場合、T3およびT1でのインピーダンスは高い。FET11が寄生インダクタンス23によって負性抵抗を呈している場合には、このループ利得が1より大きくなる可能性がある。
【0043】
これに対し、本第1実施形態ではループ利得が、ダンピング抵抗20及び21によって低減され、1より小さくなることによって発振が生じない。
【0044】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態のマイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【0045】
この波周波数逓倍器は、上記第1実施形態のそれの出力伝送線路13を、伝送線路13及び25と接地キャパシタ26との組合せで置き換えたものである。全ての伝送線路のインピーダンスは、特性インピーダーンスZ0とは限らず、以下のように決定されている。すなわち、マイクロ波周波数逓倍器は、その出力が最大となる負荷インピーダンスを有している。
【0046】
これを実現するために、FET10及び11からの逓倍波出力の合成点T3に特性インピーダンスZ3の伝送線路13の一端が接続され、その他端(T2)に特性インピーダンスZ4の伝送線路25の一端が接続され、その他端にドレインバイアス電圧Vddが印加され、該他端はキャパシタ26で高周波接地されている。伝送線路13及び25からなるT型回路によって所望の負荷インピーダンスを実現できるので、逓倍波周波数成分の出力レベルを最大にすることができる。
【0047】
なお、このT型回路に限らず、所望の負荷インピーダンスを実現する種々の回路構成を利用してもよい。
【0048】
位相調整用の伝送線路15のインピーダンスZ2は、所望の周波数帯域においてFET10及び11に同位相かつ同振幅の基本波周波数信号が供給されるように、FET10およびFET11の入力インピーダンスに応じて決定される。
【0049】
入力伝送線路12のインピーダーンスZ1は、これと自己バイアス回路24との組合せで、マイクロ波周波数逓倍器の入力インピーダンスが、入力伝送線路12の一端T1に接続される不図示のマイクロ波信号源のインピーダンスと整合するように決定される。
【0050】
本第2実施形態のマイクロ波周波数逓倍器によれば、第1実施形態の全ての機能を実現し、かつ、最適入出力条件を実現することができる。
【0051】
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態のマイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【0052】
この周波数逓倍器では、第2実施形態の出力端子T2に、入力基本波周波数の2倍の周波数について長さが1/4波長の先端開放伝送線路(オープンスタブ)が接続されている。これにより、FET10及び11から発生される入力基本周波数の2逓倍波がトラップされる。上記第1及び第2実施形態と同様に奇数次の逓倍波が逆相合成によって抑圧され、また、6次以上の偶数次の逓倍波は非常に出力レベルが小さい。
【0053】
したがって、出力端子T2からはほぼ4逓倍波のみが出力される。例えば10GHzの基本波周波数は、40GHzの信号に効果的に変換される。また、発振器の位相雑音を12dBの上昇(逓倍の原理より周波数2倍(オクターブ)で6dBの位相雑音上昇)に抑えることができる。
【0054】
他方、誘電体共振器を用いた発振器では、位相雑音が約20dB/オクターブで上昇する(論文調査からの経験則)。
【0055】
ミリ波で位相雑音の低い発振器を実現するには、逓倍方式が最も優れていることから、本第3実施形態のようにミリ波でも安定に動作できる高次逓倍器は、適用範囲が広い。
【0056】
本第3実施形態のマイクロ波4逓倍器は上記のように、マイクロ波2逓倍器にトラップ用スタブを1つだけ追加することにより実現できる。ダンピング抵抗が無いと、このトラップ用スタブがゲート接地のFET11と作用して新たな不安定性を引き起こす、あるいは、上記不安定性を何らかの形で変化させる。このような状況は設計を非常に複雑かつ困難にする。しかし、ダンピング抵抗20及び21を接続することによって該不安定性を除去できるので、安定な逓倍動作が可能である。
【0057】
図4は、図3の回路を実現する、GaAsなどの半絶縁性基板上のレイアウト図である。
【0058】
図4中、ハッチング領域は、上下に対向する金属膜の間に誘電体が挟まれたキャパシタの誘電体領域を示している。該半絶縁性基板の背面には、金属膜であるグランドプレートが被着されている。各伝送線路は、基板上面のラインパターンと、該グランドプレートと、これらの間に誘電体として機能する該半絶縁性基板とで構成されるストリップ線路である。V1〜V3はいずれも、内壁に金属膜が被着されたビアであり、該グランドプレートに接続されている。各ビアの基板上面側周囲には、金属膜が被着されている。ビアは、その中に金属が充填されているものであってもよい。
【0059】
図5〜8はそれぞれ、図4中のV−V、VI−VI、VII−VII及びVIII−VIII線に沿った拡大断面図である。
【0060】
図5において、30は半絶縁性基板、31はグランドプレート、141〜143はそれぞれキャパシタ14を構成する金属膜、誘電体及び金属膜である。
【0061】
図6において、D1はFET10のドレイン電極、32は絶縁体である。
【0062】
図7において、33及び34は半絶縁性基板30に不純物イオンが注入されて形成された動作層であり、G1及びG2はゲート電極、D2はドレイン電極、S3及びS4はソース電極である。FET11は、MES構造であり、2つのトランジスタが並列接続されたものであって、ソースS3とS4とが配線パターンで接続され、ゲートG1とG2とが配線パターンで接続される。
【0063】
図8において、抵抗21は半絶縁性基板30に不純物イオンが注入されて形成されており、201及び202は抵抗20の両側に接続された配線パターンである。
【0064】
図4において、FET10のソース電極S1及びS2並びにFET11のゲート電極(太線)はいずれも、金属配線パターンとビアV2とを介してグランドプレート31に接続されている。
【0065】
抵抗18は、その値を比較的大きくするために2個所に形成された抵抗が直列接続され、その各々は抵抗20と同様に構成されている。
【0066】
自己バイアス回路24は、一般に良く用いられる構成であり、スパイラルインダクタ241に、抵抗242と交流接地用キャパシタ243との並列回路の一端が接続され、該並列回路の他端はビアV1を介してグランドプレート31に接続されている。FET11のドレインからソースに流れる直流電流は、スパイラルインダクタ241を介して抵抗242に流れ、接地に至る。抵抗242の抵抗値は、その両端間の直流電圧がFET11の閾値電圧となるように定められている。キャパシタ243は、マイクロ波周波数逓倍器の動作周波数においてインピーダンスを無視できるので、スパイラルインダクタ241をインピーダンス整合用に使用することができる。
【0067】
オープンスタブ27は、マイクロ波周波数逓倍器を小形にするため、FET10と伝送線路15を取り囲むように形成されている。
【0068】
図9〜12は、図4のマイクロ波周波数逓倍器の実験結果を示す。
【0069】
図9〜11は各種Sパラメータの周波数特性図であり、実線は、ダンピング抵抗20及び21を有する図4のマイクロ波周波数逓倍器を用いた場合を示し、破線は、図4のマイクロ波周波数逓倍器においてダンピング抵抗20及び21を用いなかった構成の場合を示している。
【0070】
マイクロ波周波数逓倍器は、9.5GHzの入力信号を38GHzの出力信号に変換する仕様で設計パラメータが定められ、使用したダンピング抵抗の抵抗値は12オームである。
【0071】
図9は、入力反射利得の周波数特性を示している。
【0072】
図9から明らかなように、60〜73GHzの周波数領域において、両特性間に大きな差があり、実線では反射利得のない安定な動作であるのに対し、破線では反射利得数dBの周波数を含め周波数特性が大幅に変化するという不安定な動作を呈している。上記周波数領域のどこかでスプリアス発振が生じ、このスプリアス発振成分と基本波周波数成分および逓倍波成分との間で相互変調が行われ、多数のスプリアスが発生したものと考えられる。
【0073】
図10は、出力反射利得の周波数特性を示している。
【0074】
FET10のドレインは高インピーダンスであるので、反射利得は0dB付近にある。実線では全周波数で利得のない安定な動作であるのに対し、破線では広い周波数範囲(33〜70GHz)で利得を有し、特に60GHz付近では10dBに至る反射利得が観測されるという不安定な動作を呈している。
【0075】
図11は、逆方向伝達利得の周波数特性を示している。
【0076】
FET10及びFET11は基本的に非可逆であるので、FET10及びFET11の寄生サセプタンスによって周波数向上に伴い伝達量が増加するにしても、逆方向の伝達利得は0dBより大幅に低いはずである。しかるに、30GHzを超える周波数では−10dB前後に達している。これは寄生インダクタンスの帰還効果である。
【0077】
実線では全周波数で−10dB強以下で比較的滑らかな変化であるのに対し、破線では60GHzから70GHzの周波数で急峻で不安定な動作を呈している。5dB近い逆方向伝達利得も観測される。
【0078】
図12は、ダンピング抵抗値(0〜30Ω)に対する順方向通過利得の変化を38GHzについて示す。ダンピング抵抗値が12オームでは利得低下が2dB程度であり、実用上充分に小さい。
【0079】
図12は、安定性の指針であるKファクタも示している。無条件安定、つまりK>1となるのは、ダンピング抵抗値が12オーム弱以上である。また、ダンピング抵抗値が増加しても通過利得の減少は緩やかであり、20オームまでは実用上許容範囲である。
【0080】
以上説明したように、本発明の要点であるダンピング抵抗は、マイクロ波周波数逓倍器を安定化し、設計を容易にし、さらに、逓倍利得の低下を小さく抑えることができる。
【0081】
[第4実施形態]
図13は、本発明の第4実施形態のマイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【0082】
この周波数逓倍器では、図3のFET10及び11の替わりにそれぞれ、バイポーラトランジスタ10A及び11Aが用いられている。このバイポーラトランジスタのコレクタ、ベース及びエミッタはそれぞれ図3のFETのドレイン、ゲート及びソースに対応している。バイポーラトランジスタとしては、遮断周波数が高いHBTが好ましい。
【0083】
他の点は、上記第3実施形態と同一である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のマイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態のマイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【図3】本発明の第3実施形態のマイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【図4】図3の回路を実現する半絶縁性基板上のレイアウト図である。
【図5】図4中のV−V線に沿った拡大断面図である。
【図6】図4中のVI−VI線に沿った拡大断面図である。
【図7】図4中のVII−VII線に沿った拡大断面図である。
【図8】図4中のVIII−VIII線に沿った拡大断面図である。
【図9】図4のマイクロ波周波数逓倍器の入力反射利得の周波数特性図である。
【図10】図4のマイクロ波周波数逓倍器の出力反射利得の周波数特性図である。
【図11】図4のマイクロ波周波数逓倍器の逆方向伝達利得の周波数特性図である。
【図12】ダンピング抵抗値(0〜30Ω)に対する順方向通過利得及びKファクタの変化を38GHzの信号について示すグラフである。
【図13】本発明の第4実施形態のマイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【図14】従来のバランス型マイクロ波周波数逓倍器の回路図である。
【符号の説明】
10、11 FET
10A、11A バイポーラトランジスタ
12 入力伝送線路
13 出力伝送線路
14 キャパシタ
15 伝送線路
16 定電圧電源
18 バイアス抵抗
20、21 ダンピング抵抗
22、23 寄生インダクタンス
24 自己バイアス回路
T1 入力端子
T2 出力端子

Claims (7)

  1. 入力マイクロ波信号が供給される入力伝送線路と、
    出力伝送線路と、
    第1制御入力端及び第1電流路を有し、該第1制御入力端が該入力伝送線路に結合され、該第1電流路の一端が接地導体に接続された第1トランジスタと、
    第2制御入力端及び第2電流路を有し、該第2制御入力端が該接地導体に接続され、該第2電流路の一端が該入力伝送線路に結合された第2トランジスタと、
    該第1電流路の他端と該出力伝送線路との間に接続された第1ダンピング抵抗と、
    該第2電流路の他端と該出力伝送線路との間に接続された第2ダンピング抵抗と、
    を有し、
    該接地導体は、グランドプレートと該グランドプレートに導通し且つ該第1トランジスタと該第2トランジスタとの間に形成された1つのビアとを有し、該第1電流路の一端及び該第2制御入力端はいずれも該1つのビアに略等しい距離で直接に接続されて該1つのビアを介し該グランドプレートに導通していることを特徴とするマイクロ波周波数逓倍器。
  2. 上記第1トランジスタ、上記第2トランジスタ、上記第1ダンピング抵抗及び上記第2ダンピング抵抗は、半絶縁性基板の一方の面に形成され、上記グランドプレートは該半絶縁性基板の他方の面に形成され、上記ビアは該半絶縁性基板に形成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波周波数逓倍器。
  3. 上記第2トランジスタと上記出力伝送路との接続で生成される発振を抑制するように上記第2ダンピング抵抗の抵抗値が決定され、上記第1トランジスタと上記第2トランジスタとを通り周回して生成される発振を該第1ダンピング抵抗と該第2ダンピング抵抗との直列接続で抑制するように該第1ダンピング抵抗の抵抗値が決定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ波周波数逓倍器。
  4. 上記出力伝送線路に接続され、上記入力マイクロ波信号の周波数の2倍の周波数の信号をトラップするスタブ、
    をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のマイクロ波周波数逓倍器。
  5. 一端が上記第1制御入力端に接続されたバイアス抵抗と、
    上記入力伝送線路と該第1制御入力端との間に接続された直流遮断用キャパシタと、
    該入力伝送線路と上記接地導体との間に接続された自己バイアス回路と、
    を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のマイクロ波周波数逓倍器。
  6. 上記第1トランジスタは、上記第1制御入力端としてのゲートと、上記第1電流路の上記一端としてのソースと、該第1電流路の上記他端としてのドレインとを有する第1電界効果トランジスタであり、
    上記第2トランジスタは、上記第2制御入力端としてのゲートと、上記第2電流路の上記一端としてのソースと、該第1電流路の上記他端としてのドレインとを有する第2電界効果トランジスタである、
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のマイクロ波周波数逓倍器。
  7. 上記第1トランジスタは、上記第1制御入力端としてのベースと、上記第1電流路の上記一端としてのエミッタと、該第1電流路の上記他端としてのコレクタとを有する第1バイポーラトランジスタであり、
    上記第2トランジスタは、上記第2制御入力端としてのベースと、上記第2電流路の上記一端としてのエミッタと、該第1電流路の上記他端としてのコレクタとを有する第2バイポーラトランジスタである、
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のマイクロ波周波数逓倍器。
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