JP3833558B2 - スイッチング電源回路、および、それを用いた電子機器 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、確実に過電流から保護可能かつ小型であるにも拘わらず、過電流の原因が解消された場合に通常制御動作に復帰できるスイッチング電源回路、および、それを用いた電子機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、特に小型化が要求される用途では、スイッチング電源回路が広く使用されている。例えば、図9に示すように、従来のスイッチング電源回路101では、入力端子Tinから入力された直流電圧Vinは、図10に示すVoutのように、スイッチングトランジスタTr101によって、予め定める周波数で断続されている。スイッチングトランジスタTr101が導通している間、スイッチングトランジスタTr101と出力端子Toとの間に設けられたコイルL101に流れるコイル電流ILは、増加し、スイッチングトランジスタTr101が遮断されている間、コイル電流ILは減少する。コイルL101の出力端子側には、コンデンサC102が設けられており、スイッチング電源回路101は、当該コンデンサC102によって平滑された直流電圧Voを、出力端子Toを介して、負荷102に供給している。
【0003】
また、上記スイッチング電源回路101では、差動アンプ111が、出力電圧Voに応じた帰還電圧Vadjと基準電圧Vrefとを比較し、コンパレータ114が、発振器113の出力する三角波と当該差動アンプ111の出力とを比較することによって、出力電圧Voに応じたパルス幅のパルス信号が生成される。さらに、駆動回路115は、当該パルス信号に基づいて、スイッチングトランジスタTr101の導通/遮断を制御する。
【0004】
これにより、入力電圧Vinや負荷102の状態が変化しても、スイッチング電源回路101は、当該変化を打ち消すように、スイッチングトランジスタTr101のデューティDを制御して、予め定める値の出力電圧Voを負荷102に供給できる。
【0005】
また、上記スイッチング電源回路101では、過電流保護部116が設けられており、スイッチングトランジスタTr101に流れる電流(スイッチング電流)が過電流検出レベルICLを超えると、RSフリップフロップ122は、過電流検出回路121によってセットされ、発振器113が上記発振周波数でRSフリップフロップ122をリセットするまでの間、コンパレータ114の出力に拘わらず、スイッチングトランジスタTr101を駆動回路115に遮断させる。
【0006】
この結果、過電流時には、図10に示すコンパレータ出力電圧Vcmpが、スイッチングトランジスタTr101の遮断を指示する時点よりも、早い時点で、スイッチングトランジスタTr101が遮断される。このように、過電流時には、スイッチングトランジスタTr101の導通時間が制限されるので、スイッチング電源回路101自体と、例えば、負荷102など、スイッチング電源回路101に接続された機器とを破損や劣化から保護できる。
【0007】
なお、過電流保護部116が上記導通時間を制限している間、導通時間は、出力電圧Voを所望の値に保つために必要な時間よりも短くなっているので、出力電圧Voは、図11中、破線で示すように、徐々に低下する。
【0008】
ここで、過電流が発生してから、過電流保護部116がスイッチングトランジスタTr101を遮断するまでの遅延時間をTdとすると、スイッチングトランジスタTr101の導通時間は、遅延時間Td以下にはならない。したがって、導通時間が制限されている状態での負荷電流Ioは、出力電圧が低くなるに従って、増大する。
【0009】
ところで、小型で低コストなスイッチング電源回路101を実現するためには、上記コイルL101やコンデンサC102を小型化することが有効であり、スイッチングトランジスタTr101のスイッチング周波数(発振器113の発振周波数)を高く設定することが望まれる。なお、上記差動アンプ111、発振器113およびコンパレータ114などの部材を比較的安価なバイポーラ素子で集積回路化したとしても、各部材は、300〔kHz〕程度のスイッチング周波数f0で何ら支障なく動作できる。
【0010】
ところが、上述の遅延時間Tdは、通常、1〔μs〕程度なので、スイッチング周波数f0を300〔kHz〕程度にまで上昇させようとすると、過電流保護部116が正常に動作しなくなる。
【0011】
具体的には、例えば、Vin=24〔V〕、Vo=5〔V〕とするとき、通常制御状態でのデューティDは、約20.8〔%〕になるので、スイッチング周波数f0を300〔kHz〕に設定すると、スイッチングトランジスタTr101の導通時間は、693〔ns〕になる。
【0012】
ところが、この値は、上述の遅延時間Tdよりも短い。したがって、過電流保護部116が過電流を検出してスイッチングトランジスタTr101を遮断させるよりも前に、スイッチングトランジスタTr101は、コンパレータ114の指示に従って遮断されている。この結果、過電流保護部116は、スイッチングトランジスタTr101の導通時間を制限することができない。
【0013】
したがって、図11の1点鎖線に示すように、負荷電流Ioが過電流検出レベルICL(この場合は、2.5〔A〕)を超えても、負荷電流Ioが増大し続ける。この状態では、過電流保護部116によってデューティDを小さくできないので、出力電圧Voが通常制御時と同じ値(この場合は、5〔V〕)のままに制御される。
【0014】
この状態で、さらに負荷電流Ioが増大して、スイッチングトランジスタTr101の定格電流(例えば、3.0〔A〕)を超えると、スイッチングトランジスタTr101のコレクタ−エミッタ間の電圧降下Vceが増大し始める。この結果、スイッチングトランジスタTr101での損失が大きくなって、出力電圧Voが低下し始める。
【0015】
さらに、出力電圧Voが低下して、短絡検出レベルを下回ると(図11中、点Bの時点)、短絡時発振周波数変更回路133は、コンパレータ131の指示によって、発振器113の発振周波数を、例えば、20〔kHz〕などに低下させる(点Cの時点)。この状態では、スイッチング周波数の低下によって、スイッチングトランジスタTr101の導通時間が長くなるので、RSフリップフロップ122は、何ら支障なく、当該導通時間を制限できる。
【0016】
しかしながら、上記の場合は、点Bから点Cへの短絡保護動作が行われるまでの間、すなわち、点Aから点Bまでの間は、スイッチングトランジスタTr101の導通時間が制限されず、過電流保護動作が行われていない。
【0017】
また、この場合は、スイッチングトランジスタTr101のVceが増大しているので、スイッチングトランジスタTr101の電力損失が大きい。したがtって、スイッチング電源回路101が安全に動作するためには、スイッチングトランジスタTr101の安全動作領域(ASO)を広く設計する必要がある。この結果、スイッチングトランジスタTr101のサイズが増大すると共に、製造コストが増加してしまう。
【0018】
したがって、図9に示すスイッチング電源回路101の構成では、確実に過電流から保護するためには、スイッチング電源回路101のスイッチング周波数f0を余り高く設定できず、コイルL101やコンデンサC102の小型化が難しい。
【0019】
一方、確実に過電流から保護可能で、しかも、小型なスイッチング電源回路を実現するために、例えば、特開2000−245142号公報に記載のスイッチング電源回路101aでは、発振器113の発振周波数が、例えば、300〔kHz〕程度に高く設定されており、さらに、過電流時発振周波数変更回路123が設けられている。当該過電流時発振周波数変更回路123は、過電流検出回路121が過電流を検出したときに、発振器113の発振周波数を、例えば、100〔kHz〕など、通常制御時の発振周波数よりも低い値に設定する。
【0020】
当該構成では、図9に示すスイッチング電源回路101とは異なり、過電流時に発振器113の発振周波数が低下する。したがって、図13中、P101aに示すように、過電流保護部116aの遅延時間Tdに制限されずに、通常制御時の発振周波数を高く設定できると共に、過電流時には、図13中、P101bに示すように、過電流保護部116aが確実にスイッチングトランジスタTr101の導通時間を制限できる。これにより、スイッチング電源回路101a自体、および、スイッチング電源回路101aに接続された機器を、過電流から確実に保護でき、しかも、小型なスイッチング電源回路101aを実現できる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、過電流の原因が解消されても、過電流保護動作が継続されて、出力電圧Voが所望の値に復帰しない場合があるという問題を生じる。
【0022】
具体的には、例えば、定常負荷での負荷電流Ioを1.5〔A〕とするとき、上記発振周波数が300〔kHz〕に固定されていた場合の負荷電流(出力電流)Io−出力電圧Voは、例えば、図14中、C300に示す特性になり、定常負荷での負荷電流Ioを超えた領域で、過電流保護部116aによる上記導通時間の制限によって、出力電圧Voが低下している。
【0023】
したがって、例えば、スイッチング電源回路101aの立ち上がり時におけるコンデンサC102の突入電流や、短時間の出力異常などに起因して、出力電流Ioが2.0〔A〕を超える過電流状態になったとしても、これら過電流の原因が解消され、過電流保護部116aが上記導通時間を制限しなくなると、出力電圧Voは、所望の値(この場合は、5〔V〕)に戻ることができる(図14に示す動作点Eの状態)。
【0024】
ところが、発振周波数の低下によって、より早い時点から、過電流保護部116aが導通時間を制限するようになると、例えば、出力電圧が高い場合(スイッチングトランジスタTr101のデューティが高い場合)において、図14中、C100に示すように、定常負荷での負荷電流Ioの時点で、既に、導通時間が制限されている状態になり、所望の出力電圧Voを下回ってしまう。この場合には、過電流の原因が解消されたとしても、スイッチング電源回路101aは、通常の負荷電流Ioの時点(点Dの時点)で安定して動作してしまい、出力電圧Voが所望の値(例えば、5.0〔V〕)に復帰できなくなる虞れがある。
【0025】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、確実に過電流から保護可能かつ小型であるにも拘わらず、過電流の原因が解消された場合に通常制御動作に復帰できるスイッチング電源回路、および、それを用いた電子機器を実現することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るスイッチング電源回路は、上記課題を解決するために、発振手段からの発振信号が示す周期で、スイッチング素子をスイッチングすると共に、出力電圧レベルが予め定める目標値になるように、当該スイッチング素子のデューティを制御する制御手段と、過電流を検出した場合に、上記発振手段の発振周波数を低下させると共に、上記スイッチング素子の導通時間を制限する過電流保護手段とを有するスイッチング電源回路において、上記過電流保護手段は、上記スイッチング素子の電流に基づいて過電流保護動作を行う際、上記スイッチング素子の導通時間を制限するか否かを判定する第1電流レベル、および、上記スイッチング素子の導通時間を制限すると共に、発振周波数を低下させるか否かを判定する第2電流レベルを有し、該第1電流レベルよりも該第2電流レベルの方が高く設定されていることを特徴としている。
【0027】
上記構成において、スイッチング電流の傾きが小さく、スイッチング素子に流れる電流(スイッチング電流)が第1電流レベルと第2電流レベルとの間の状態(第1の状態)では、過電流保護手段は、発振手段の発振周波数を低下させずに、スイッチング素子の導通時間を制限する。一方、スイッチング電流の傾きが大きく、スイッチング電流が第2電流レベルを超えた状態(第2の状態)では、過電流保護手段は、発振手段の発振周波数を低下させると共に、スイッチング素子の導通時間を制限する。
【0028】
ここで、スイッチング電流の傾きが大きい第2の状態では、スイッチング電流の傾きが小さい場合に比べて、スイッチング素子のデューティが小さいので、過電流検出手段の遅延時間が十分に短くないと、スイッチング素子の導通時間を制限することが難しく、過電流保護が不十分になる虞れがある。
【0029】
ところが、上記構成では、第2の状態において、発振手段の発振周波数を、通常制御時よりも低下させているので、過電流検出手段は、遅延時間が比較的長くても、確実に過電流保護できる。したがって、過電流検出手段の遅延時間に制限されることなく、通常制御時の発振周波数を向上させることができる。この結果、確実に過電流から保護できるにも拘わらず、小型なスイッチング電源回路を実現できる。
【0030】
一方、スイッチング電流の傾きが小さい第1の状態では、大きい場合よりも、スイッチング素子のデューティが大きいので、発振周波数を低下させると、導通時間の制限動作によって、出力電圧が低くなった状態で安定してしまい、過電流の原因が解消されても、通常制御動作に復帰できなくなる虞れがある。
【0031】
ところが、上記構成では、第1の状態において、発振周波数を低下させずに、導通時間を制限する。ここで、当該第1の状態では、第2の状態よりもデューティが大きいので、第2の状態よりも余裕をもって、すなわち、第2の状態で発振周波数を低下させずに導通時間を制限するために必要な遅延時間よりも、過電流保護手段の遅延時間が長くても、過電流保護手段は、スイッチング素子の導通時間を制限でき、スイッチング電源回路自体や負荷を過電流から保護できる。
【0032】
これらの結果、確実に過電流から保護可能かつ小型であるにも拘わらず、過電流の原因が解消された場合に通常制御動作に復帰できるスイッチング電源回路を実現できる。
【0033】
上記構成に加えて、上記第2電流レベルは、上記スイッチング素子の定格電流以下に設定されていてもよい。当該構成では、第2電流レベルがスイッチング素子の定格電流以下に設定されているので、スイッチング素子の破壊および劣化を防止できる。
【0034】
さらに、上記構成に加えて、上記過電流保護手段は、上記スイッチング素子に流れる電流が上記第1電流レベルを超えたか否かを判定する第1の差動増幅器と、上記スイッチング素子に流れる電流が上記第2電流レベルを超えたか否かを判定する第2の差動増幅器とを備えていてもよい。
【0035】
当該構成では、各電流レベル用の差動増幅器が設けられているので、より高精度に、それぞれのレベルを超えたか否かを判定できる。
【0036】
また、第1および第2の差動増幅器を設ける代わりに、上記過電流保護手段は、上記スイッチング素子に流れる電流に応じた信号を出力する差動増幅器を有し、当該信号に基づいて、上記第1電流レベルを超えたか否か、および、上記第2電流レベルを超えたか否かを判定してもよい。
【0037】
当該構成では、差動増幅器がスイッチング電流に応じた信号を出力し、当該信号に基づいて、各電流レベルを超えているか否かが判定されるので、第1および第2の差動増幅器で判定する場合よりも回路構成を簡略化できる。
【0038】
また、本発明に係る電子機器は、電源回路として、上述のいずれかのスイッチング電源回路を備えていることを特徴としている。当該スイッチング電源回路は、小型で、しかも、スイッチング電源回路自体や負荷を確実に過電流から保護できる。さらに、過電流の原因が解消された場合に通常制御動作に復帰して、出力電圧レベルが予め定める目標値の出力電圧を負荷に供給できる。したがって、当該スイッチング電源回路を電源回路として用いることによって、過電流に起因する破損や劣化がなく、過電流の原因が解消された場合には、通常動作可能で、しかも、小型な電子機器を実現できる。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態について図1ないし図8に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、図1に示すように、本実施形態に係るスイッチング電源回路1は、入力端子Tinから入力された直流電圧Vinを安定化して生成した出力電圧Voを、出力端子Toを介して、負荷2へ供給する装置であって、例えば、カーステレオなどの車戴機器、CD−ROMドライブなどのパソコン周辺機器、あるいは、液晶テレビなど、小型化が特に要求される機器の電源装置として、特に好適に使用されている。以下では、過電流時の動作について説明する前に、スイッチング電源回路1の全体構成および通常制御時の動作について簡単に説明する。
【0040】
上記スイッチング電源回路1は、チョッパ型のスイッチング電源回路であって、入力端子Tinおよび出力端子To間には、例えば、NPN形のバイポーラトランジスタなどからなり、両者間を導通/遮断するスイッチングトランジスタ(スイッチング素子)Tr1が設けられている。
【0041】
当該スイッチングトランジスタTr1と出力端子Toとの間には、コイルL1が設けられており、当該コイルL1とスイッチングトランジスタTr1との接続点には、ダイオードD1のカソードが接続されている。なお、ダイオードD1のアノードは接地されている。また、入力端子Tinは、脈流平滑用のコンデンサC1を介して接地されており、出力端子Toは、出力平滑用のコンデンサC2を介して接地されている。
【0042】
当該スイッチング電源回路1では、入力段のコンデンサC1で平滑化された入力電圧Vinが、スイッチングトランジスタTr1によって、予め定められた周期で、スイッチングされている。スイッチングトランジスタTr1が導通している期間には、スイッチングトランジスタTr1の出力側(エミッタ)に現れた電圧Voutによって、コイルL1、コンデンサC2および負荷2に対してエネルギが供給される。一方、スイッチングトランジスタTr1が遮断されている期間には、導通中にコイルL1に蓄積されたエネルギが、ダイオードD1によって還流させられて、負荷2に与えられる。
【0043】
ここで、上記スイッチング電源回路1では、スイッチングトランジスタTr1のデューティDと、入力電圧Vinおよび出力電圧Voとの関係は、以下の式(1)に示すように、
D=Ton/(Ton+Toff)=(Vo/Vin) …(1)
となる。
【0044】
したがって、出力電圧Voに基づいてデューティDを制御することで、スイッチング電源回路1は、例えば、5〔V〕など、一定の出力電圧Voを負荷2に供給できる。
【0045】
具体的には、上記出力端子Toは、分圧用に互いに直列に接続された抵抗R1・R2を介して接地されている。なお、両抵抗R1・R2の分圧比は、出力電圧Voが上記一定の値のときに、両抵抗R1・R2の接続点の帰還電圧Vadjが、後述の基準電圧Vref1に一致するように設定されている。
【0046】
また、スイッチング電源回路1には、当該帰還電圧Vadjと予め定められた値の基準電圧Vref1とを比較する差動アンプ11と、当該基準電圧Vref1を生成する基準電圧源12と、予め定められる周波数の三角波を生成する発振器(発振手段)13と、差動アンプ11および発振器13の出力を比較するコンパレータ14と、当該コンパレータ14が出力するパルスに応じて、上記スイッチングトランジスタTr1の導通/遮断を制御する駆動回路15とが設けられている。なお、上記差動アンプ11、コンパレータ14および駆動回路15が特許請求の範囲に記載の制御手段に対応する。
【0047】
上記構成では、例えば、入力電圧Vinのレベル変動や、負荷2の負荷変動などによって、出力電圧Voが低下しようとすると、これに伴ない帰還電圧Vadjが低下する。これにより、差動アンプ11の出力電圧が変化して、コンパレータ14のパルス幅が変更され、駆動回路15は、スイッチングトランジスタTr1のデューティDが長くなるように制御する。これとは逆に、出力電圧Voが増大しようとすると、スイッチング電源回路1は、帰還電圧Vadjに基づいて、それを検出し、スイッチングトランジスタTr1のデューティDが短くなるように制御する。
【0048】
ここで、スイッチング電源回路1が出力電圧Voの変動を検出してから、スイッチングトランジスタTr1のデューティDを制御するまでの応答時間および差動アンプ11の検出精度は、出力電圧Voに許容されている安定性を満たす程度に設定されている。
【0049】
これにより、スイッチング電源回路1は、例えば、入力電圧Vinのレベル変動や、負荷2の負荷変動などに起因する出力電圧Voの変化を打ち消すことができ、十分に安定化された出力電圧Voを出力できる。
【0050】
また、上記スイッチング電源回路1には、過負荷や出力短絡が生じたときに、スイッチング電源回路1自体、および、例えば、負荷2など、スイッチング電源回路1に接続された機器を保護するために、スイッチングトランジスタTr1に流れる電流を検出すると共に、過電流を検出した時に、スイッチングトランジスタTr1の導通期間を制限し、発振器13の発振周波数を低下させる過電流保護部(過電流保護手段)16が設けられている。
【0051】
上記過電流保護部16は、入力端子TinからスイッチングトランジスタTr1までの間に設けられた第1過電流検出回路21と、第1過電流検出回路21からの検出信号がセット信号として入力され、コンパレータ14と駆動回路15との接続点に出力が接続されたRSフリップフロップ22とを備えており、第1過電流検出回路21が過電流を検出した場合、コンパレータ14の出力に拘わらず、駆動回路15にスイッチングトランジスタTr1の遮断を指示できる。
【0052】
また、上記RSフリップフロップ22には、発振器13からの発振信号が入力されており、発振周波数でリセットされている。これにより、第1過電流検出回路21が過電流を検出しなくなると、駆動回路15は、次の周期において、コンパレータ14の出力に応じて、スイッチングトランジスタTr1を導通させることができる。
【0053】
さらに、上記過電流保護部16は、入力端子TinからスイッチングトランジスタTr1までの間に設けられた第2過電流検出回路23と、第2過電流検出回路23からの検出信号がセット信号として入力されるRSフリップフロップ24と、当該RSフリップフロップ24がセットされている間、上記発振器13の発振周波数を低下させる過電流時発振周波数変更回路25とを備えている。
【0054】
上記第2過電流検出回路23がスイッチングトランジスタTr1を流れる電流(スイッチング電流)を過電流と判断するレベル(第2の過電流検出レベルICL2)は、上記第1過電流検出回路21がスイッチング電流を過電流と判断するレベル(第1の過電流検出レベルICL1)よりも高く設定されている。
【0055】
これにより、本実施形態に係る過電流保護部16では、RSフリップフロップ22がスイッチングトランジスタTr1の導通時間を制限しようとしているけれども、過電流時発振周波数変更回路25が発振器13の発振周波数を低下させてはいない期間が設けられている。
【0056】
上記第1の過電流検出レベルICL1は、必要な負荷電流Ioよりも十分大きい値に設定し、上記第2の過電流検出レベルICL2は、当該第1の過電流検出レベルICL1よりは大きく、かつ、スイッチングトランジスタTr1の定格電流を超えない値に設定される。本実施形態では、一例として、通常時の負荷電流が1.0〔A〕、スイッチングトランジスタTr1の電流定格が3.0〔A〕に設定されており、第1および第2の過電流検出レベルICL1・ICL2が、それぞれ、2.0〔A〕および2.5〔A〕に設定されている。なお、本実施形態では、コイルL1のリアクタンスLは、40〔μF〕に設定されている。
【0057】
また、本実施形態では、第2過電流検出回路23が過電流を検出していない状態の発振周波数(第1の発振周波数)が、例えば、300〔kHz〕に設定されており、過電流保護部16が発振周波数を低下させた状態の発振周波数(第2の発振周波数)が、例えば、100〔kHz〕に設定されている。
【0058】
なお、上記RSフリップフロップ24にも、発振器13からの発振信号が入力されており、発振周波数でリセットされている。したがって、第2過電流検出回路23が過電流を検出しなくなると、発振器13の発振周波数は、通常の第1の発振周波数に復帰できる。
【0059】
さらに、上記スイッチング電源回路1には、過負荷や出力短絡が生じたときに、スイッチング電源回路1自体および上記機器を保護するために、帰還電圧Vadjが予め定めるレベルを下回ったときに、発振器13の発振周波数を、さらに低下させる短絡保護部17が設けられている。
【0060】
上記短絡保護部17は、帰還電圧Vadjと、予め定められたレベルの基準電圧Vref2とを比較するコンパレータ31と、当該基準電圧Vref2を生成する定電圧源32と、上記コンパレータ31によって、帰還電圧Vadjが基準電圧Vref2を下回ったと判断された場合に、発振器13の発振周波数を上記第2の発振周波数よりも、さらに低い値の第3の発振周波数に低下させる短絡時発振周波数変更回路33とを備えている。本実施形態では、上記第3の発振周波数は、例えば、20〔kHz〕に設定されている。
【0061】
なお、図1に示すスイッチング電源回路1において、コンデンサC1・C2、ダイオードD1、コイルL1および抵抗R1・R2以外の構成は、出力電圧Voを高精度に制御可能なスイッチング電源回路1を少ない部品点数で構成するために、1つのIC(Integrated Circuit)チップに集積されている方が望ましい。また、スイッチング電源回路1の出力電流によっては、スイッチングトランジスタTr1を別ICに集積してもよいし、出力電圧Voが変更されない場合には、抵抗R1、R2も集積してもよい。さらに、ダイオードD1を同じICに集積してもよい。
【0062】
上記構成では、出力端子Toの一時的な短絡などの異常が発生していない通常負荷の状態では、スイッチング電源回路1は、スイッチングトランジスタTr1のデューティDを制御して、出力電圧Voを一定の値に保っている。この状態では、コイルL1に流れる電流ILは、図2中、N0で示すように、通常時の負荷電流(この例では、1.0〔A〕)付近で変動している。また、この状態では、異常が発生していないので、スイッチングトランジスタTr1のスイッチング周波数(発振器13の発振周波数)は、第1の発振周波数(例えば、300〔kHz〕)に設定されている。
【0063】
ここで、スイッチングトランジスタTr1を流れるスイッチング電流は、コイル電流の傾きが正のときは、コイル電流ILに等しく、負のときは、0である。また、図3に示すように、コイル電流ILの正の傾きは、(Vin−Vo)/L、負の傾きは、−Vo/Lとなる。したがって、両傾きは、上記スイッチング周波数に拘わらず、一定であり、入力電圧Vin、出力電圧VoおよびコイルL1のリアクタンスLによって決定される。なお、傾きが一定の場合、コイル電流値の平均と等しくなる負荷電流Ioは、スイッチング周波数が遅くなる程、低下する。
【0064】
例えば、出力端子Toの一時的な短絡など、出力に異常が発生し、過電流状態になると、スイッチング電源回路1において、デューティD、および、コイル電流ILの傾きが略一定のまま、コイル電流ILの平均値が上昇する。
【0065】
図2に示すS1のように、コイル電流ILが上昇して、第1の過電流検出レベルICL1に達すると、RSフリップフロップ22は、第1過電流検出回路21の指示に従って、スイッチングトランジスタTr1の導通時間を短くしようとする。
【0066】
ところが、図2は、入出力電圧差(Vin−Vo)が大きく、コイル電流ILの傾きが大きい場合を示しており、スイッチング電源回路1は、通常制御の状態において、スイッチングトランジスタTr1のデューティDを短く制御している。
【0067】
例えば、上述の数値例において、入力電圧Vinを30〔V〕、出力電圧Voを5〔V〕とすると、スイッチングトランジスタTr1の導通時間は、5/30/300kより、555〔ns〕程度である。一方、本実施形態では、過電流保護部16の遅延時間Tdが、1〔μs〕程度であり、上記導通時間よりも長くなっている。
【0068】
この場合は、過電流保護部16が過電流を検出してスイッチングトランジスタTr1を遮断させるよりも前に、スイッチングトランジスタTr1は、コンパレータ14の指示に従って遮断されている。したがって、過電流保護部16は、スイッチングトランジスタTr1の導通時間を制限することができない。この結果、コイル電流ILの平均値は、さらに上昇してしまう。なお、この状態では、過電流保護動作が行われていないので、出力電圧Voは、図4に示すP1のように、一定に保たれている。
【0069】
さらに、図2に示すS2のように、コイル電流ILが第2の過電流検出レベルICL2に達すると、第2過電流検出回路23がスイッチング電流が過電流であると判定するので、RSフリップフロップ24および過電流時発振周波数変更回路25は、発振器13の発振周波数を第2の発振周波数に低下させる。
【0070】
この場合は、デューティDが同じであっても、スイッチングトランジスタTr1の導通時間が長くなっている。例えば、上述の数値例では、5/30/100kとなり、約1.7〔μs〕になるので、上記遅延時間Tdが導通時間よりも短くなる。
【0071】
この場合は、スイッチングトランジスタTr1が、コンパレータ14の指示に従って遮断される前に、過電流保護部16が過電流を検出してスイッチングトランジスタTr1を遮断できる。したがって、過電流保護部16は、スイッチングトランジスタTr1のデューティDを小さくできる。なお、この状態では、過電流保護部16の過電流保護動作によって導通時間が制限されているので、図4中、P2に示すように、出力電圧Voは低下する。
【0072】
ここで、過電流状態におけるリップル電流ΔIL(図3参照)は、スイッチングトランジスタTr1のスイッチング周波数をf0とすると、以下の式(2)に示すように、
ΔIL = Vo/L/f0 …(2)
となり、負荷電流Ioは、以下の式(3)に示すように、
Io=ICL−ΔIL/2 …(3)
となる。なお、ICLは、過電流検出レベルであって、この状態では、ICL=ICL2である。したがって、上記数値例で算出すると、リップル電流ΔILは、5/40μ/100k/2より、0.625〔A〕となる。また、負荷電流Ioは、2.5−5/40μ/100k/2から、約1.88〔A〕となり、通常時の負荷電流(1.0〔A〕)よりも大きい。
【0073】
このように、過電流保護部16が過電流保護動作している間の負荷電流Ioが通常時の負荷電流Ioよりも大きい。したがって、負荷2の過電流状態が解消され、過電流保護部16が過電流保護動作を止めると、スイッチング電源回路1は、スイッチングトランジスタTr1の導通時間を正常に制御でき、負荷電流Ioを通常の値(例えば、1〔A〕)に戻すことができる。
【0074】
一方、図5に示すように、入出力電圧差(Vin−Vo)が小さく、コイル電流ILの傾きが小さい場合、スイッチング電源回路1は、通常制御の状態において、スイッチングトランジスタTr1のデューティDを比較的長く制御している。
【0075】
例えば、上述の数値例において、入力電圧Vinを30〔V〕、出力電圧Voを15〔V〕とすると、スイッチングトランジスタTr1の導通時間は、15/30/300kより、約1.7〔μs〕程度になり、過電流保護部16の遅延時間Td(1〔μs〕程度)よりも長くなっている。
【0076】
この場合は、図2および図4の場合とは異なり、図5に示すS4のように、コイル電流ILが第2の過電流検出レベルICL2に達しておらず、発振器13の発振周波数が低下していないにも拘わらず、過電流保護部16は、スイッチングトランジスタTr1が、コンパレータ14の指示に従って遮断される前に、過電流を検出してスイッチングトランジスタTr1を遮断できる。したがって、過電流保護部16は、スイッチングトランジスタTr1のデューティDを小さくできる。なお、この状態では、過電流保護部16の過電流保護動作によって導通時間が制限されているので、図6中、P4に示すように、出力電圧Voは低下する。
【0077】
ここで、この状態で、過電流保護部16が過電流保護動作している際のリップル電流ΔILは、15/40μ/300kより、1.25〔A〕であり、負荷電流Ioは、1.375〔A〕となる。
【0078】
このように、過電流保護部16が過電流保護動作している間の負荷電流Ioが通常時の負荷電流Ioよりも大きいので、負荷2の過電流状態が解消され、過電流保護部16が過電流保護動作を止めると、スイッチング電源回路1は、図6に示す動作点P3のように、スイッチングトランジスタTr1の導通時間を正常に制御でき、負荷電流Ioを通常の値(例えば、1〔A〕)に戻すことができる。
【0079】
ここで、図5および図6のように、コイル電流ILの傾きが小さいにも拘わらず、従来のスイッチング電源回路101a(図12参照)のように、発振周波数を低下させた場合、同様の数値例では、リップル電流ΔILが、15/40μ/100kより、3.75〔A〕となる。
【0080】
この状態では、図5に示すS5のように、コイル電流ILが連続的に流れない状態となるので、図6に示すP5のように、負荷電流Ioおよび出力電圧Voが大幅が低下している。この結果、負荷2の異常が解消されても、スイッチング電源回路101aは、過電流保護状態から復帰できず、図5中、P6に示す状態で安定動作してしまう。なお、この状態では、出力電圧Voは、所望の値(この例では、5〔V〕)にならないので、負荷2が正常動作できなくなる虞れがある。
【0081】
これに対して、本実施形態に係るスイッチング電源回路1では、2つの過電流検出レベルICL1・ICL2が設けられており、過電流保護部16がスイッチングトランジスタTr1の導通時間を制限しようとしているけれども、発振器13の発振周波数を低下させてはいない期間を設けている。
【0082】
この結果、コイル電流ILの傾きが小さく、スイッチングトランジスタTr1のスイッチング周波数(発振器13の発振周波数)を低下させると、過電流保護状態からの復帰異常が発生しやすいときには、スイッチング周波数を低下させずに、スイッチングトランジスタTr1の導通時間を制限できる。
【0083】
一方、コイル電流ILの傾きが大きく、スイッチング周波数を低下させても、過電流保護状態からの復帰異常が発生しにくいときには、スイッチング周波数を低下させると共に、上記導通時間を制限する。この場合は、スイッチング周波数が低く設定されているので、過電流保護部16が、ある程度の遅延時間Tdを有していても、何ら支障なく、導通時間を制限できる。この結果、過電流保護部16の遅延時間Tdに制限されることなく、通常制御時におけるスイッチング周波数を上昇させることができ、例えば、コイルL1など、スイッチング電源回路1の構成要素を小型化できる。
【0084】
これらの結果、確実に過電流から保護可能かつ小型であるにも拘わらず、過電流の原因が解消された場合に通常制御動作に復帰できるスイッチング電源回路1を実現できる。
【0085】
以下では、第1および第2過電流検出回路21・23の構成例について、図7を参照しながら説明する。すなわち、入力端子Tinと、スイッチングトランジスタTr1との間には、互いに直列に接続された検出抵抗41・42が設けられている。両検出抵抗41・42の直列回路の両端は、差動増幅器43の非反転入力端子と反転入力端子とのそれぞれに接続されている。一方、検出抵抗42の両端は、差動増幅器44の非反転入力端子と反転入力端子とのそれぞれに接続されている。なお、上記では、検出抵抗41・42および差動増幅器43によって、第1過電流検出回路21が形成され、検出抵抗42および差動増幅器44によって第2過電流検出回路23が形成されている。
【0086】
ここで、上記検出抵抗41・42は、スイッチングトランジスタTr1のスイッチング電流の流路上に設けられている。したがって、各検出抵抗41・42の抵抗値は、スイッチング電源回路1の電圧変換効率を向上させるために、低い値に設定することが望まれる。本実施形態では、一例として、検出抵抗41・42は、ICの配線としてのアルミ配線の抵抗成分によって実現されている。
【0087】
上記構成例では、上記検出抵抗41の抵抗値が2〔mΩ〕に設定されており、検出抵抗42の抵抗値が8〔mΩ〕に設定されている。また、差動増幅器43の・44のスレッシュ電圧は、20〔mV〕に設定されている。
【0088】
上記構成では、両検出抵抗41・42を流れる電流が、2〔A〕〜2.5〔A〕の間、差動増幅器43の出力電圧が、例えば、ハイレベルなど、予め定められたレベルに反転する。また、この状態では、差動増幅器44の入力電圧(非反転入力端子電圧−反転入力端子電圧)が、スレッシュ電圧を超えていないので、差動増幅器44の出力電圧は、例えば、ローレベルなど、予め定められたレベルのまま、反転していない。これにより、図1に示す両RSフリップフロップ22・24のうち、RSフリップフロップ22のみがセットされる。
【0089】
一方、両検出抵抗41・42を流れる電流が2.5〔A〕を超えると、差動増幅器43・44の入力電圧がスレッシュ電圧を超えるので、両差動増幅器43・44の出力電圧が反転する。これにより、上記両RSフリップフロップ22・24がセットされる。
【0090】
上記構成では、第1の過電流検出レベルICL1の検出用の差動増幅器43と、第2の過電流検出レベルICL2の検出用の差動増幅器44とがそれぞれ別に設けられているので、高精度に各検出レベルICL1・ICL2を検出できる。
【0091】
ところで、上記では、第1および第2過電流検出回路21・23を設けて、スイッチングトランジスタTr1のスイッチング電流が、第1の過電流検出レベルICL1を超えているか否かと、第2の過電流検出レベルICL2を超えているか否かとを判定したが、これに限るものではない。
【0092】
例えば、第1および第2過電流検出回路21・23に代えて、図8に示す過電流検出回路26を設けてもよい。当該過電流検出回路26は、入力端子Tinと、スイッチングトランジスタTr1との間に配された検出抵抗51と、当該検出抵抗51の両端が非反転入力端子および反転入力端子にそれぞれ接続された差動増幅器52とを備えており、スイッチングトランジスタTr1のスイッチング電流に応じた電圧レベルの信号を、RSフリップフロップ22・24の双方に出力できる。一方、RSフリップフロップ22のセット電圧のスレッシュ電圧は、RSフリップフロップ24のセット電圧のスレッシュ電圧よりも高く設定されている。
【0093】
例えば、RSフリップフロップ22のセット電圧のスレッシュ電圧が2〔V〕、RSフリップフロップ24のセット電圧のスレッシュ電圧が2.5〔V〕に設定されている。また、検出抵抗51の抵抗値を10〔mΩ〕、差動増幅器52の増倍率を100とする。この場合、スイッチングトランジスタTr1に流れるスイッチング電流が2〔A〕になると、差動増幅器52の出力電圧が2〔V〕となるので、両RSフリップフロップ22・24のうち、RSフリップフロップ22のみがセットされる。さらに、スイッチング電流が2.5〔A〕を超えると、差動増幅器52の出力電圧が2.5〔V〕を超えるので、RSフリップフロップ22・24の双方がセットされる。
【0094】
上記構成であっても、差動増幅器がスイッチング電流に応じた信号を出力し、当該信号に基づいて、各検出レベルを超えているか否かが判定される。したがって、図7の構成よりも簡単な回路構成で、スイッチング電流が第1の過電流検出レベルICL1を超えたか否かと、第2の過電流検出レベルICL2を超えたか否かとを検出できる。
【0095】
【発明の効果】
本発明に係るスイッチング電源回路は、以上のように、上記過電流保護手段は、上記スイッチング素子の電流に基づいて過電流保護動作を行う際、上記スイッチング素子の導通時間を制限するか否かを判定する第1電流レベル、および、上記スイッチング素子の導通時間を制限すると共に、発振周波数を低下させるか否かを判定する第2電流レベルを有し、該第1電流レベルよりも該第2電流レベルの方が高く設定されている構成である。
【0096】
上記構成では、スイッチング電流の傾きが小さい第1の状態において、発振周波数を低下させずに、導通時間を制限するので、確実に過電流から保護可能かつ小型であるにも拘わらず、過電流の原因が解消された場合に通常制御動作に復帰できるスイッチング電源回路を実現できるという効果を奏する。
【0097】
本発明に係るスイッチング電源回路は、以上のように、上記構成に加えて、上記第2電流レベルは、上記スイッチング素子の定格電流以下に設定されている構成である。当該構成では、第2電流レベルがスイッチング素子の定格電流以下に設定されているので、スイッチング素子の破壊および劣化を防止できるという効果を奏する。
【0098】
本発明に係るスイッチング電源回路は、以上のように、上記構成に加えて、上記過電流保護手段は、上記スイッチング素子に流れる電流が上記第1電流レベルを超えたか否かを判定する第1の差動増幅器と、上記スイッチング素子に流れる電流が上記第2電流レベルを超えたか否かを判定する第2の差動増幅器とを備えている構成である。当該構成では、各電流レベル用の差動増幅器が設けられているので、より高精度に、それぞれのレベルを超えたか否かを判定できるという効果を奏する。
【0099】
本発明に係るスイッチング電源回路は、以上のように、第1および第2の差動増幅器を設ける代わりに、上記過電流保護手段は、上記スイッチング素子に流れる電流に応じた信号を出力する差動増幅器を有し、当該信号に基づいて、上記第1電流レベルを超えたか否か、および、上記第2電流レベルを超えたか否かを判定する構成である。
【0100】
当該構成では、差動増幅器がスイッチング電流に応じた信号を出力し、当該信号に基づいて、各電流レベルを超えているか否かが判定されるので、第1および第2の差動増幅器で判定する場合よりも回路構成を簡略化できるという効果を奏する。
【0101】
本発明に係る電子機器は、以上のように、電源回路として、上述のいずれかのスイッチング電源回路を備えている構成である。それゆえ、過電流に起因する破損や劣化がなく、過電流の原因が解消された場合には、通常動作可能で、しかも、小型な電子機器を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、スイッチング電源回路の要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記スイッチング電源回路の動作を示すものであり、スイッチング電流の傾きが大きい場合における各部波形を示す波形図である。
【図3】上記スイッチング電源回路において、スイッチング電流と、リップル電流との関係を示す波形図である。
【図4】スイッチング電流の傾きが大きい場合における、出力電圧−出力電流の特性を示すグラフである。
【図5】上記スイッチング電源回路の動作を示すものであり、スイッチング電流の傾きが小さい場合における各部波形を示す波形図である。
【図6】スイッチング電流の傾きが小さい場合における、出力電圧−出力電流の特性を示すグラフである。
【図7】上記スイッチング電源回路において、第1および第2過電流検出回路の構成例を示す回路図である。
【図8】上記第1および第2過電流検出回路の変形例を示す回路図である。
【図9】従来技術を示すものであり、スイッチング電源回路の要部構成を示すブロック図である。
【図10】上記スイッチング電源回路の動作を示すものであり、スイッチング電源回路の各部波形を示す波形図である。
【図11】上記スイッチング電源回路において、出力電圧−出力電流の特性を示すグラフである。
【図12】他の従来技術を示すものであり、スイッチング電源回路の要部構成を示すブロック図である。
【図13】上記スイッチング電源回路の動作を示すものであり、スイッチング電源回路の各部波形を示す波形図である。
【図14】上記スイッチング電源回路において、出力電圧−出力電流の特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 スイッチング電源回路
11 差動アンプ(制御手段)
12 コンパレータ(制御手段)
13 発振器(発振手段)
15 駆動回路(制御手段)
16 過電流保護部(過電流保護手段)
ICL1 第1の過電流検出レベル(第1電流レベル)
ICL2 第2の過電流検出レベル(第2電流レベル)
Tr1 スイッチングトランジスタ(スイッチング素子)
Claims (7)
- 発振手段からの発振信号が示す周期で、スイッチング素子をスイッチングすると共に、出力電圧レベルが予め定める目標値になるように、当該スイッチング素子のデューティを制御する制御手段と、過電流を検出した場合に、上記発振手段の発振周波数を低下させると共に、上記スイッチング素子の導通時間を制限する過電流保護手段とを有するスイッチング電源回路において、
上記過電流保護手段は、
上記スイッチング素子の電流に基づいて過電流保護動作を行う際、上記スイッチング素子の導通時間を制限するか否かを判定する第1電流レベル、および、上記スイッチング素子の導通時間を制限すると共に、発振周波数を低下させるか否かを判定する第2電流レベルを有し、該第1電流レベルよりも該第2電流レベルの方が高く設定されていることを特徴とするスイッチング電源回路。 - 上記第2電流レベルは、上記スイッチング素子の定格電流以下に設定されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源回路。
- 上記過電流保護手段は、上記スイッチング素子に流れる電流が上記第1電流レベルを超えたか否かを判定する第1の差動増幅器と、上記スイッチング素子に流れる電流が上記第2電流レベルを超えたか否かを判定する第2の差動増幅器とを備えていることを特徴とする請求項1または2記載のスイッチング電源回路。
- 上記過電流保護手段は、上記スイッチング素子に流れる電流に応じた信号を出力する差動増幅器を有し、当該信号に基づいて、上記第1電流レベルを超えたか否か、および、上記第2電流レベルを超えたか否かを判定することを特徴とする請求項1または2記載のスイッチング電源回路。
- 上記過電流保護手段は、上記スイッチング素子の電流を検出するために上記スイッチング素子と入力電圧が入力される入力端子との間に直列に接続された第1の検出抵抗および第2の検出抵抗をさらに備え、
上記第1の検出抵抗の抵抗値が上記第2の検出抵抗の抵抗値より小さく設定され、
上記第1および第2の差動増幅器の非反転入力端子には上記第2の検出抵抗の上記入力端子側の一端が接続され、上記第1の差動増幅器の反転入力端子には上記第1の検出抵抗の上記スイッチング素子側の一端が接続され、上記第2の差動増幅器の反転入力端子には上記第1および第2の検出抵抗の他端が接続されていることを特徴とする請求項3記載のスイッチング電源回路。 - 上記信号として出力される電圧が、第1スレッシュ電圧を越えるとセットされることにより上記第1電流レベルを超えたか否かを判定する第1のフリップフロップ、および、上記電圧が上記第1スレッシュ電圧より高い第2スレッシュ電圧を越えるとセットされることにより上記第2電流レベルを超えたか否かを判定する第2のフリップフロップを備えることを特徴とする請求項4記載のスイッチング電源回路。
- 電源回路として、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスイッチング電源回路を備えていることを特徴とする電子機器。
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