JP3831899B2 - 脈波伝播速度測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脈波伝播速度測定装置に関し、特に精度の良い測定が可能な脈波伝播速度測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、動脈硬化等の血管疾患の指標として、脈波伝播速度又は脈波速度(Pulse Wave Velocity:PWV)が一般的に用いられている。PWVは心臓から大動脈に血液を送り出す際に派生した血管壁圧が動脈中を移動する際に発生する波動が血管壁を伝わる早さであり、速くなるほど血管が硬くなっていることを意味する。PWVは血管上の2点の脈波及びその伝播時間を測定し、この2点間の距離を伝播時間で除すことにより求められる。
【0003】
これまで、PWV測定装置としては、1)心音マイクを用いて取得した心音第2音と、脈波センサを用いて取得した股動脈及び頚動脈の脈波との時間差、並びに脈波センサの距離とから測定を行うもの、2)カフを用いて被験者の四肢の2点を軽度圧迫して測定した動脈の脈波から測定を行うもの、3)超音波センサを用いて2点における血管径変動を測定し、変動波形の相互相関をとることにより脈波速度を求めるもの等が知られているが、測定が簡便なことからカフを用いて測定を行うPWV装置が良く用いられている。
【0004】
図4は、PWV測定装置の構成例を示す図である。
図において、10はPWV測定装置の全体制御を司る演算制御部であり、図示しないCPU、ROM、RAM、各種インタフェース等から構成され、例えばROMに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより後述する測定処理を含めた装置全体の制御を実行する。
【0005】
演算制御部10は、上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202から供給される脈波信号(および、必要に応じて心音検出部203から供給される心音信号)を用いて、各種の脈波伝播速度を算出する。求められる脈波伝播速度としては、R−PWV(上腕−右足首間の脈波伝播速度)、L−PWV(上腕−左足首間の脈波伝播速度)、B−PWV(心臓−上腕間の脈波伝播速度)等がある。
【0006】
上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202は、演算制御部10の制御に従い、図示しないポンプや排気弁等を用いて、ホース21h、22hを介して接続される各2つのカフ21R、L及び22R、Lのゴム嚢(21aR,21aL,22aR,22aL)の加圧/減圧(駆血)制御を行う。また、上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202にはまた、ホース21h、22hを伝播してくる脈波を検出するセンサ、例えば圧力センサ(211R、L及び221R、L)が設けられる。なお、図4では上肢用駆血制御部201と下肢用駆血制御部202とが独立して設けられる構成を示すが、一体化されていても良い。
【0007】
心音検出部203は、心音マイク23を用いて検出された被験者の心音から、脈波の立ち上がりに対応する心音(例えば(II音))を検出し、心音信号として演算制御部10に通知する。心音信号は主に、B−PWVを求める際、心臓における脈波の開始時点を決定するために用いられる。
【0008】
演算制御部10にはまた、各種の操作ガイダンスや計測結果、診断指標を表示可能な表示部70、計測結果、診断指標を記録出力可能な記録部75、計測結果、診断指標を保存する、例えばハードディスクドライブや書き込み可能な光ディスクドライブ、不揮発性半導体メモリ等からなる保存部80、音声でのガイダンス出力や各種報知音が出力可能な音声発生部85、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル等からなり、ユーザによる入力、指示を可能にする入力/指示部90が接続されている。また、これ以外にも、他の機器と通信を行うための通信インタフェースや、リブーバブルメディアを用いる記憶装置等が設けられても良い。
【0009】
このような構成を有するPWV測定装置を用いてPWVの測定を行う場合、準備段階として、心音マイク23を被験者の胸部に、上肢用のカフ21R、21L(以下、まとめてカフ21と言うことがある)をそれぞれ被験者の右、左の上腕部に、下肢用のカフ22R、22L(以下、まとめてカフ22と言うことがある)をそれぞれ被験者の足首に装着する。心音マイク23の装着はテープ等で、カフ21、22の装着は面ファスナー等により行うことができる。
【0010】
測定の準備が完了し、例えば入力/指示部90から測定開始指示が与えられると、演算制御部10は上肢用駆血制御部201、下肢用駆血制御部202及び心音検出部203に対して処理の開始を指示する。
【0011】
上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202は指示を受けてカフ21、22に対しホース21h、22hを介して空気を送り、圧力センサ(211R、L及び221R、L)が所定の圧力を検出するまでゴム嚢21aR,21aL,22aR,22aLを膨らませる。この圧力は任意に設定可能であるが、圧力が高すぎると脈の伝播を妨げ、また被験者が感じる圧迫感が大きくなり、また圧力が低すぎると脈波の検出が困難になるため、脈波の検出に支障が無い範囲で低い圧力に設定することが好ましい。
【0012】
カフの圧力が上がると、カフのゴム嚢21aR,21aL,22aR,22aL及びホース21h、22hを介して脈波が空気の圧力波として伝播し、圧力センサ(211R、L及び221R、L)で検出される。上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202は、この圧力センサ(211R、L及び221R、L)が検出した脈波を電気信号に変換し(一般には圧力センサ自体が圧力を電気信号に変換して出力する)、各カフから得られた脈波信号としてそれぞれ演算制御部10へ出力する。
【0013】
一方、心音検出部203は、心音マイク23から入力される信号(心音マイク23の構成に依存した加速度信号、音圧信号等)から、脈波の立ち上がりに対応する心音(例えば(II音))を検出し、心音信号により検出を通知する。
【0014】
演算制御部10は、上肢用駆血制御部201から得られる、上腕部における脈波信号と、下肢用駆血制御部202から得られる、右足首における脈波信号とから、R−PWVを求める。具体的には2つの脈波信号の相互相関を求め、特徴点(好ましくは脈波の立ち上がり点)の伝播遅延と、上腕、下肢のカフの装着部位間の血管長とから、脈波伝播速度を求める。また、同様にして上肢用駆血制御部201から得られる、上腕部における脈波信号と、下肢用駆血制御部202から得られる、左足首における脈波信号とから、L−PWVを求める。
【0015】
また、B−PWVについては、心音検出部203からの心音信号を受診してから、上腕部のカフから得られる脈波信号の立ち上がりが検出されるまでの時間と、被験者の身長等から求められる、心臓から上腕部までの血管の長さを用いて算出する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
このようなPWV測定装置においては、カフに空気を送り込むためのホースと、カフの圧力を検知する圧力センサを、脈波の検出にも兼用可能であるため、構造を簡便にすることが可能である。また、消耗品であるカフに壊れやすく高価なセンサを設けないことにより、カフを安価に構成できる上、信頼性、耐久性を実現していた。しかし、このような構成のPWV測定装置には次のような問題があった。
【0017】
すなわち、この種の装置において、カフを装置本体(駆血制御部)に接続するホースの長さは均一でなく、例えば図5に示すように、下肢用のカフ22R、Lのホース22hの長さをd2、上肢用のカフ21R、Lのホースの長さをd1とすると、d2>d1(あるいはd1>d2)であった。そして、ホースの長さは、主に装置本体の設置位置と、被験者の測定時の状態(通常はベッドに横たわった状態で測定する)の足首及び上腕との位置関係によって決められていた。
【0018】
上述のように、脈波は、カフのゴム嚢に伝わった後、ホース内部の空気を伝播し、圧力センサで検出される。そのため、伝播経路であるホース長が異なると、カフのゴム嚢に脈波が伝達してから、圧力センサに検知されるまでの時間が異なることになる。
【0019】
図6及び図7は、例えばd1=2500mm、d2=3000mmの場合、ゴム嚢近傍に設けた圧力センサで測定した脈波が、本体側の圧力センサで測定されるまでの時間差を測定した結果を示す波形図である。図6が右上腕部、図7が右足首に装着したカフで測定した結果を示す。何れも、上の波形がゴム嚢近傍で測定した波形、下の波形が本体側(ホース取り付け部)に設けられた圧力センサで測定した波形である。脈波の対応する特徴点間として脈波の立ち上がり点を用いて相互の時間差を測定した結果、図6の上腕部(ホース長d1=2500mm)で9.6ms、図7の足首(ホース長d2=3000mm)では13.4msであった。従って、この測定においては、ホース長の差500mmにより13.4−9.6=3.8msの伝播時間差が生じていることがわかる。
【0020】
例えば、被験者の身長が170cmで、PWVが14m/s前後の場合、ホースによる伝播時間を考慮しない、足首−上腕部での脈波伝播時間は80ms程度となるが、この状態で足首と上腕部でのホース長相違に起因する伝播時間差が4ms生じると、最終的に得られるPWVには増加方向に5%強の誤差が生じる。誤差は実際の脈波伝播時間が遅くなるとさらに大きくなり、その影響は無視できないものである。
【0021】
伝播遅延差がどのような条件でも一定であるか、計算によって求まるものであれば測定値を補正することにより対処が可能であるが、実際には脈の強弱など不確定要素が存在するため、算術的な補正は困難である。
【0022】
本発明はこのような従来の脈波伝播速度測定装置の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、かつ簡便な構成により高精度な脈波伝播速度の測定が可能な脈波伝播速度測定装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、被験者の上肢の一部を押圧するための第1のカフと、被験者の下肢の一部を押圧するための第2のカフと、第1及び第2のカフに個々に接続された第1及び第2のホースと、第1及び第2のホースを介して第1及び第2のカフに気体を送り込み、所定の圧力を与えるカフ駆動手段と、第1及び第2のホースを伝播してくる脈波を検出する第1及び第2のセンサ手段とを有し、第1及び第2のセンサ手段で検出した脈波を用いて脈波伝播速度を測定する脈波伝播速度測定装置において、第1及び第2のホースが、実質的に同一の長さを有することを特徴とする脈波伝播速度測定装置に存する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明をその好適な実施形態に基づき詳細に説明する。■(脈波伝播速度測定装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る脈波伝播速度測定装置の構成例を示すブロック図である。上述した図4の脈波伝播速度測定装置と同じ構成要素には同じ参照数字を付してある。
【0025】
図4との比較及び図2から明らかなように、本実施形態に係る脈波伝播速度測定装置は、上肢用駆血制御部201及び下肢用駆血制御部202とカフ21、22とを接続するホース21’h及び22hの長さを等しくしたことを特徴とし、他の構成は図4に示した測定装置と同じであって良い。
【0026】
このように、カフ21、22と測定装置本体とを接続するホース21h’、22hの長さを等しくすることにより、理論上上述したホース長の相違に起因した伝播遅延差が無くなり、測定されるPWVの誤差を解消することが可能である。この場合、ホースの材質、太さ等についても同一であることが必要である。
【0027】
■(測定結果)
d3=2500mmとした同一のホース21h’を用いて構成した脈波伝播速度測定装置により、図6及び図7と同様に計測した波形図を図3に示す。上の波形がゴム嚢近傍で測定した波形、下の波形が本体側(ホース取り付け部)に設けられた圧力センサで測定した波形である。脈波の対応する特徴点間として脈波の立ち上がり点を用いて相互の時間差を測定した結果、ホースによる伝播遅延は9.2msであった。図6に示した、d1=2500mmのホースを用いて測定した右腕の脈波伝播遅延が9.6msであったから、上肢及び下肢のホースによる伝播遅延差は0.4msと大幅に低減していることが分かる。
【0028】
なお、B−PWV(心臓−上腕部間の脈波伝播速度)を得る場合には、上肢用のカフ21による測定結果のみを用いるため、ホースによる伝播時間を考慮した補正を行う。
【0029】
【他の実施形態】
上述の実施形態においては、上肢用カフ21R、L(及び下肢用カフ22R、L)とがそれぞれ独立したホースを介してそれぞれの駆血制御部に接続される構成を有している場合のみを説明したが、駆血制御部から所定の長さまでは共通のホースとし、途中から上肢用カフ21R用のホースと上肢用カフ21L用のホースに分岐するように構成することも可能である。下肢用カフ22についても同様である。
【0030】
また、上肢用駆血制御部201と下肢用駆血制御部202を一体化した構成としても良い。
【0031】
さらに、上肢用カフ21、下肢用のカフ22がそれぞれ一対ある場合についてのみ説明したが、一対のカフがあれば1箇所のPWVは測定可能であるため、場合によっては一対のカフのみを用いても良い。
【0032】
また、カフに圧を加えるための気体は空気に限ることなく、他の気体の使用も可能である。加えて、ホースの長さは伝播遅延差が十分小さくなる程度に同一であればよく、必ずしも厳密な意味での同一性は問わない。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の脈波伝播速度測定装置によれば、簡便な構成により精度の高い測定結果を得ることが可能になるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る脈波伝播速度測定装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る脈波伝播速度測定装置において、上肢用カフ及び下肢用カフの接続に用いるホースの長さの関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る脈波伝播速度測定装置を用いて測定した、下肢用カフのホース伝播遅延を示す波形図である。
【図4】従来の脈波伝播速度測定装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】従来の脈波伝播速度測定装置において、上肢用カフ及び下肢用カフの接続に用いるホースの長さの関係を示す図である。
【図6】従来の脈波伝播速度測定装置を用いて測定した、上肢用カフのホース伝播遅延を示す波形図である。
【図7】従来の脈波伝播速度測定装置を用いて測定した、下肢用カフのホース伝播遅延を示す波形図である。

Claims (2)

  1. 被験者の上肢の一部を押圧するための第1のカフと、
    前記被験者の下肢の一部を押圧するための第2のカフと、
    前記第1及び第2のカフに個々に接続された第1及び第2のホースと、
    前記第1及び第2のホースを介して前記第1及び第2のカフに気体を送り込み、所定の圧力を与えるカフ駆動手段と、
    前記第1及び第2のホースを伝播してくる脈波を検出する第1及び第2のセンサ手段とを有し、
    前記第1及び第2のセンサ手段で検出した脈波を用いて脈波伝播速度を測定する脈波伝播速度測定装置において、
    前記第1及び第2のホースが、実質的に同一の長さを有することを特徴とする脈波伝播速度測定装置。
  2. 前記第1及び第2のホースのホースと実質的に同一の長さを有する第3及び第4のホースと、
    前記第3及び第4のホースを介して接続される第3及び第4のカフを更に有することを特徴とする請求項1記載の脈波伝播速度測定装置。
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