JP3831897B2 - 光重合照射器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は歯科用コンポジットレジン充填材に可視光又は紫外光を照射するために発光ダイオードから発した光を導光用ライトガイドへ高出力で効率よく且つ均斉度高く入射させることによって、出射光において照射ムラが無く重合硬化するための光重合照射器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバーを利用した光重合照射器の光源部の基本構造において、従来から発光ダイオ−ドの発光素子から発する光を効率よく導光用ファイバーへ入射するために特開平09−010238号、特開平07−240536号、特開平11−219608号などに開示されているように種々の構造のものが案出されている。例として第6図に示すような特開平11−219608号によれば複数の樹脂レンズ型発光ダイオード61を同一方向へ光が放射できるように回路基板62上に配列し、発光ダイオード61の前方に配置したテーパー部に金属反射層64を被覆した先細のテーパー状の透明集光体63によって光を出射面側へ導きその先細の集光部即ち出射部に光ファイバー65を接続することによって複数の発光ダイオード61からの光を集光させることが可能となり光ファイバー65へ光を入射させることが試みられている。
またさらに、特開平09−010238号を第7図で説明すると片側端面が発光面となる凸状の二次曲面からなる透明で且つ円錐面上に金属反射層75を付けた円錐状導光体72において前記凸状の二次曲面の接線に対して直角の方向に光を出射できるように複数の樹脂レンズ型発光ダイオード71を凸面上に配置し、その光を円柱状導光体73内で集光74することによって前記円錐状導光路72を介して円柱状導光体73の出射面側から光を外部へ照射する構造などが知られている。
そして、これらの光源部の基本構造を利用した光重合照射器の従来例として図8に示す小型の光重合照射装置が特開2000ー271155号に開示されているように多数個の発光ダイオード81を球面からなる発光ダイオード支持体82に配列し、その発光ダイオードは光ファイバー83の入射端に集光できるようになっている。このように構成された光学系を制御する回路84と駆動電源85と共にハンドピース86内に収納することによって、ハンディな光重合照射器が実用化されていることが良く知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平09−010238号においては複数の発光ダイオードからの光を導光体を介して光ファイバー内に集光点を持たせる事によって効率よく光ファイバーへ入射できるものの、その光の均斉度が悪く光ファイバーから出射された光も同様に均斉度の悪いものであった。そして、砲弾型発光ダイオードの配光特性のバラツキが大きく導光しようとする光ファイバー径が小さくなるほど多数個の発光ダイオードを同一点に集光することは非常に困難になり、個々の発光ダイオード固有の配光バラツキ、光軸バラツキがあるために発光ダイオード個別の光学的な位置調整が必要になったり、導光体としても寸法精度が要求される透明の且つ円錐面に金属層を設けた円錐状二次曲面が必要になるなど実用上大変な困難性があった。
さらには、多数個の発光ダイオードを配列したことによって実質的な光源の大きさが大きくなり過ぎ、さらに多数個の発光ダイオードを使用するために消費電力も大きくなり蓄電池容量が大きくなったり或いは直流電源部が大きくなるなど装置全体の大きさにも影響を与え小型軽量化を目的とする装置においてはハンドリングの悪さや重すぎるなどの実用上の問題があった。
特開平11−219608号においては透明のテーパー状導光体によって発光ダイオードからの光が集光されるものの光反射による光減衰や光導光用ファイバーへ入射する光の入射角度を規定の角度以内即ち臨界角内に納めるためにテーパー角度を大きくすることができないことから、実質的にテーパー角度が小さくなり発光ダイオードから集光点即ち光導光用ファイバーの入射端との距離が遠くなり距離による光減衰が大きくなるなど、光学系からの光の漏れが少ないものの、光の反射、屈折損失に加えて照射距離が長くなることによって光減衰が大きくなるなどの問題があった。
一方、実用上の面から小型にするためにテーパー角度を大きく取り実質的な長さを短くしようとすると発光ダイオードの光がテーパ面で大きく屈折することによって反射ロスが大きくなりあまり効率の良いものにはならなかった。
このために前者従来例と同様多数個の発光ダイオードを使用する点では変わりなく実用上装置が大きくなり、消費電力も大きなものになっていたのが現状であった。
上述のように、従来技術においては基本的な構成は光ファイバーからの出射光の増大を計るために多数個の発光ダイオードを用いて光学的な工夫をすることによって高光出力のファイバー用光源を得る努力がなされたが、光学系での光損失が大きくその結果多くの発光ダイオードを用いた割には充分な光出力が必ずしも得られていない。また多くの発光ダイオードを用いるためにコストが高く、装置の小型化や低消費電力性などでも問題があるのが現状である。
さらにこれら光源部の基本構造を利用した例として特開2000−271155号に示したハンディな装置においては、前記したように基本的に多数個の発光ダイオードを利用したものでありハンディとはいえその大きさは大きく実用上問題があった。
【0004】
【目的】
本発明の目的は1個の発光ダイオードからの光を効率よく導光用ライトガイドへ入射し且つ高光出力で照射ムラのない軽量・小型で且つ信頼性の高い光重合照射装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためにピーク発光波長が350〜500nmの光を放射する1個の発光ダイオードをライトガイドの入射端に密着或いは近接して配置することによって光学的な光損失を最小限に低減でき、さらに発光ダイオードの光出力を増大させるために発光ダイオード背面に密着した放熱効果を持つ放熱体を設けることによって発光ダイオードに通電する電流を高めることを可能とし、その結果発光ダイオードへの入力電力を高めることが可能となり放射される光量の増大が計られたことのみならず過大な電流を通電しても放熱効果により信頼性を損なわないように構成したことを特徴とする。
このように光出力を増大させる目的で発光ダイオードに過大な電流を流すことによって発熱が伴うが、ライトガイドを含めた光学システムを発熱による性能低下及び経時変化から守る熱処理方法として特にライトガイドへの熱的な負担を軽減するために放熱体をライトガイドとは相反する側、即ち発光ダイオードの光放射側とは反対側に設けることによって熱処理が成されライトガイドを含めた光学システム全体の性能低下及び劣化を防止できる。
さらに、発光ダイオードが一定の動作温度を超えないように光照射時間即ち発光ダイオードへの通電時間を制御するためのタイマー機能や発光ダイオード近傍に配置した温度センサーによる通電遮断機構を合わせ持たせることによってさらに信頼性の向上が図れる。
【0006】
【実施例】
以下、本発明の第一の実施例を図1において説明する。
第1図において、11は例えば470nm或いは490nmの光を放射する発光ダイオードであり、その背面にはアルミニウム金属からなる放熱体12が熱伝導性の接合材13を介して密着されている。
さらにこの放熱体12には熱検知センサー20が取り付けられ発光ダイオード11から放熱体12を介して伝導する熱を検知できるようになっており、一定の温度を超えると発光ダイオード11への通電を遮断する機能が組み込まれている。
一方、発光ダイオード11の放射面側には放射面に密着或いは近接してライトガイド14の入射端が発光ダイオード11の光軸と多芯の結束ガラスファイバーに依って構成されたライトガイド14端面の中心が略一致するように配置されている。
このような放熱体12を備えた発光ダイオード11と前記ライトガイド14からなる光学系部はプラスチックケース15内に収納されると同時にネジ16やシリコンゴムからなるストッパー17などによって固定され、ライトガイド14の出射側はプラスチックケース15の外部に露出され、歯科医療において狭い患部に出射端を当てることが可能になっている。
さらに放熱体側には発光ダイオード11への通電電流を制御したりタイマー機能や異常加熱を検知した時に通電を遮断する回路などが形成された回路基板を含む回路部18と電源スイッチ21及びリチウムイオン電池19からなる電源用バッテリーが内蔵されている。
従って、本歯科用光重合照射器はコードレスであり、使用している発光ダイオードも1個と最小限に留められているために複雑な光学系の必要はなく、発光ダイオードが1個であることから消費電力も少なくバッテリー容量も小さくて済み従来よりも小型の電池で対応できることから本体部は従来からある発光ダイオード式の照射器よりも大幅に小型化が可能になり取り扱いが容易になっている。
このように用意された照射器において連続定格電流350mAで470nmのピーク発光波長を持つ発光ダイオードに定格電流の約4倍の1.3Aの電流を通電して、一般的に良く使用されている470nm付近に感度ピークを持つZ250レジンでの硬化実験を行ったところ、5秒照射で2mmの厚さまで硬化した。40秒照射では4mm強の厚さまで硬化した。これは従来のハロゲンランプ方式の照射器では50Wクラスに相当するものである。その時の消費電力はたかだか5W程度で1/10の大幅な省電力化が図られた事になる。
又、過電流による発光ダイオードの光量劣化を調べるために10秒オン、10秒オフの間隔で点滅寿命試験を行ったところ1万回の点滅においても光量劣化は20%以下で、充分実用に耐えられることが判明した。
尚、本実施例において発光ダイオードが発する熱の放熱手段としてアルミニウム基板やアルミニウム金属からなる放熱体を用いたが、より放熱効果が高いヒートパイプを用いることに更なる光量増加が可能である。
図2(a)、(b)は本発明の第二の実施例の概略構造断面図である。
上記第一の実施例における構成に加えて、図2(a)においてライトガイドと発光ダイオードとの間にライトガイドへの光導光効率を高めるように光学レンズ系を用いて発光ダイオードから放射された光を集光できるフレネルレンズ21aを配置したことによってライトガイド放射端から出射される光量を高めることができる。
さらにフレネルレンズに替わって、図2(b)に示すように実質的なレンズ効果を持つ構造として通常はライトガイド入射端は平面であるのに対して凹面状に形成されたライトガイド21bを用いることによっても光量を増大させることが出来る。
図3は本発明の第三の実施例を説明する概略構造断面図である。
上記第一の実施例において、ライトガイドとして多芯の結束ガラスファイバーを用いたが内面が化学研磨され鏡面加工されたステンレススチールからなる金属管31即ち内面が鏡面研磨された中空管を用いて導光すれば、多芯結束ガラスファイバーを用いた第一の実施例の出射端における光量と略同等の光量が得られ実施例1に用いたガラスファイバーよりもコストが安いだけでなく、機械的強度の改善が図られ万一照射器を落下させてもライトガイドを損傷することなく、より実用性の高い照射器が得られる。
さらに、中空管を使用したことによってライトガイドの紫外域吸収が無くなり400nm以下の波長を放射する、例えば350nmの紫外発光ダイオードの光も第一の実施例のようにファイバーを構成しているガラスによって吸収すること無く効率よく導光できことが可能になる。
本実施例では金属管を使用したがこれをガラス管、石英製ムク棒或いはセラミック管を用いて内面或いは外面を鏡面メッキ或いは蒸着コートしたものも同等の効果が得られることができる。
石英製ムク棒を使用した場合、特に合成石英製ムク棒を使用した場合において紫外域の吸収は少なくなり前記した紫外発光ダイオードの使用が可能である。
又、さらに光量を増大させるには中空管の入射端に少なくとも発光ダイオードの発光部が挿入されるように配置することによってもさらに光量の増大化が可能になる。
図4は本発明の第四の実施例の概略構造断面図である。
上記第一の実施例において、発光素子が一つ搭載された発光ダイオードを使用したが光量を増大させるために複数個の発光素子を近接して配置した発光ダイオード41を採用すれば更にライトガイド出射端における光量は増大し、よりレジン硬化速度を速められることができる。
図5は第五の実施例の部分概略断面図である。
上記第一の実施例において、発光ダイオード51の発光部周辺を発光側を透明板で構成した水冷ジャケット53で覆う。発光ダイオード51から放散された熱を放熱器52と共に水冷ジャケット53内に満たされたエタノール54によってさらに積極的に熱を放散することによって発光ダイオード51に流す電流を高めることが可能となる。その結果、さらに通電電流を高めることが可能となり入力電力の増大化が可能となり、結果的に光量の増大となりより短時間でのレジン硬化が達成できる。
本実施例のように単に発光ダイオード周辺を冷却液で覆うことでも、実際の使用条件は数秒から数十秒の短い点灯時間であるために冷却液を強制循環などの手段を用いずに自然対流による冷却方式でも点灯時間内において冷却液による充分な冷却能力を確保できることを確認できる。
実施例においては冷却媒体としてエタノールを用いたが純水或いは134a代替フロンなど、他の冷却媒体を用いることも可能である。
本実施例以外でも、放熱器に替わって熱電素子などの電子冷却手段によって強制的に冷却液を低温に維持することによっても同等の効果を得られることが考えられるが、電子冷却に要する電力は大きくハンディ装置としては実用上問題がある。
【007】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は本体ケース内に350〜500nmの光を放射する発光ダイオードを1個搭載し、ライトガイドによって本体外部へ導光する構成において点灯時にその発光ダイオードから発生する熱を発光ダイオードの背面から積極的に放熱するための手段として発光ダイオードに密着して配置した放熱部を具備することによって過大な電流を通電させることが可能となりレジン硬化に必要とするエネルギーを確保する事ができた。
さらに、過熱による装置の故障や発光ダイオードの寿命低下を防止するための保護機能として熱検知センサーを発光ダイオード近傍に配置したことによってさらに信頼性の高い装置を得ることができた。
又、ライトガイドとして中空管或いは石英製ムク棒を使用することによって400nm以下の短波長を放射する発光ダイオードの使用も可能になるなど波長選択性を広げることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に基づく光重合照射器の構造断面図である。
【図2】図2はライトガイドの実施方法をしめした説明図である。
【図3】図3はライトガイドの実施方法をしめした説明図である。
【図4】図4は発光ダイオードの実施方法をしめした説明図である。
【図5】図5は水冷ジャケットの実施方法をしめした説明図である。
【図6】図6は従来例である。
【図7】図7は従来例である。
【図8】図8は従来例である。
Claims (2)
- 一つの発光ダイオードからの光を外部へ導出するライトガイドを有する光重合照射器において、ライトガイド入射端に対向するように発光ダイオードの光放射面側を密着あるいは近接配置し、かつ発光ダイオードの背面側には発光ダイオードの発する熱を放出するための手段として、発光ダイオードの背面に直接的に金属あるいはセラミックからなる放熱器を接合し、前記発光ダイオードは連続定格電流以上で点灯する事を特徴とする光重合照射器。
- 前記光重合照射器には発光ダイオードからの熱を検知できる手段を備え、一定の温度を越えたときに発光ダイオードへの通電を遮断する機能を有するとともに前記発光ダイオードは連続定格電流以上で点灯することを併せ持つことを特徴とする請求項1記載の光重合照射器。
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