JP3831091B2 - 反応性シリル基含有共重合体及びその処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な反応性シリル基含有共重合体、特に被処理材料に優れた撥水性、防汚性を付与し、繊維材料に対しては糊づけ性、防しわ性及び良好な使用感も付与することができ、またその効果の耐久性にも優れる共重合体及びその処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ある材料に撥水性や防汚性を付与する方法として、樹脂やシリコーン系化合物等を処理する方法が知られている。
特に、繊維材料については撥水の程度はもちろんであるが、繰り返し洗濯されたり、折り畳まれたりするので、他の材料よりも高い耐久性が要求され、また、フレーキングを生じないことやその使用感も非常に重要である。
また、シャツなどの衣類に対しては、撥水性や防汚性の他に、糊付け、しわ取り、しわ伸ばし効果の付与も望まれることが多い。これらのニーズに応じて、従来より撥水剤、糊付け剤、しわ取り剤(アイロンスムーサー)等が市販されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまで撥水性や防汚性、しわ取り、糊付け等の効果、その耐久性、使用感において十分満足の行くものは未だ得られておらず、これらの効果を一度の処理で、しかも簡単に付与し得る繊維処理剤が望まれていた。
本発明は、このような従来技術の課題に鑑み成されたものであり、その目的は、繊維材料に撥水性、防汚性、防しわ性、糊付け性を簡単に付与することができ、使用感やこれらの効果の耐久性も良好な物質及びその処理方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(A)三官能性シリル基を有するアクリル酸系エステル、(B)アクリル酸系アルキルエステル、(C)シロキサン含有アクリル酸系エステル、及び(D)アミン含有(メタ)アクリル酸エステルを構成モノマーとする共重合体を繊維材料等の被処理材料に塗布後、加水分解して該共重合体を架橋せしめることにより優れた撥水性、防汚性、防しわ性、糊付け性、使用感が付与され、しかもこれら効果の耐久性も非常に高く、また、フレーキングも生じることがないことを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明にかかる共重合体は、下記一般式(I)で示されるモノマー(A)と、
下記一般式(II)で示されるモノマー(B)と、
下記一般式(III)で示されるモノマー(C)と、
下記一般式( VII )で示されるモノマー(D)と、
を構成モノマーとして有することを特徴とする。
【0006】
【化8】
(一般式(I)中、R1は水素原子あるいはメチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3、R4、R5はそれぞれ炭素数1〜6のアルコキシ基を意味する。)
【化9】
(一般式(II)中、R6は水素原子あるいはメチル基、R7は炭素数1〜18のアルキル基を意味する。)
【化10】
(一般式(III)中、R8は水素原子あるいはメチル基、R9は炭素数1〜6のアルキレン基を意味する。Xは下記一般式(IV)〜(VI)の何れかで表される基を意味する。)
【0007】
【化11】
(一般式(IV)中、R10は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。)
【化12】
(一般式(V)中、R11は炭素数1〜6のアルキル基、x1は正の整数を意味する。)
【化13】
(一般式(VI)中、R8、R9は前記定義の通りである。R12は炭素数1〜6のアルキル基、x2は正の整数を意味する。)
【化14】
(一般式 (VII) 中、R 13 は水素原子あるいはメチル基、R 14 は炭素数1〜6のアルキ レン基を意味する。Yは−N + (R 15 ) 3 又は−N(R 15 ) 2 で示される基であり、R 15 は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。)
【0008】
なお、本発明の共重合体において、モノマー(A)の割合が、共重合体中25〜85重量%であることが好適である。
また、本発明の共重合体において、モノマー(B)の割合が共重合体中5重量%以上、モノマー(C)の割合が共重合体中1重量%以上であることが好適である。
【0009】
また、本発明の共重合体において、モノマー(D)の割合は、共重合体中のモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)の総重量に対して1〜100重量%の範囲であることが好適である。
【0010】
本発明にかかる繊維処理剤は、前記共重合体からなることを特徴とする。
また、本発明にかかる撥水剤は前記共重合体からなることを特徴とする。
本発明の共重合体の処理方法は、前記共重合体を被処理材料に塗布後、加水分解せしめ、該共重合体分子間を架橋することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
前記一般式(I)で示されるモノマー(A)は三官能性シリル基−SiR3R4R5を含有するアクリル酸若しくはメタアクリル酸のエステル体である。一般式(I)において、R1は水素原子又はメチル基である。また、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を意味し、好ましくはプロピレン基である。
R3、R4、R5は、加水分解することによってシロキサン結合Si−O−Siを形成し、これにより本発明の共重合体分子間を架橋し得る反応性官能基であり、共重合体の安定性や、加水分解により生じる副生成物の安全性、後述する架橋反応の反応性等の点から炭素数1〜6のアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。なお、R3、R4、R5は同一又は異なっていても良い。本発明の共重合体においては上記モノマー(A)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0012】
モノマー(B)はアクリル酸若しくはメタアクリル酸のアルキルエステルである。一般式(II)において、R6は水素原子、若しくはメチル基であり、R7は炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基を意味するが、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。なお、本発明の共重合体においては上記モノマー(B)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0013】
モノマー(C)はシロキサン含有(メタ)アクリル酸エステルである。一般式(III)において、R8は水素原子又はメチル基である。R9は炭素数1〜6のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基、プロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基である。Xは前記一般式(IV)〜(VI)の何れかで表されるシロキサンを意味する。一般式(IV)〜(VI)において、R10、R11、R11’、R12は炭素数1〜6の直鎖又は分岐状のアルキル基、又はフェニル基を表す。なお、各一般式中にR10、R11、R12がそれぞれ複数存在するが、これらは同一又は異なっていてもよい。R10、R11、R12として好ましくはメチル基である。R11’として好ましくはブチル基が挙げられる。Xが一般式(V)又は一般式(VI)の場合、モノマー(C)の分子量は1,000〜100,000、好ましくは2,000〜20,000である。なお、本発明の共重合体においては上記モノマー(C)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0014】
本発明の共重合体は、さらに前記一般式(VII)で示されるアミン含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー(D)を構成モノマーとして有する。一般式(VII)中、R13は水素原子あるいはメチル基である。R14は炭素数1〜6のアルキレン基を意味し、好ましくはエチレン基、プロピレン基が挙げられる。Yは−N+(R15)3又は−N(R15)2で示される基であり、R15は炭素数1〜6のアルキル基を意味する。また、−N+(R15)3基の場合にはハロゲンや有機酸等を対イオンとした塩であってもよい。
【0015】
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記モノマー(A)〜(D)以外のモノマー(E)を本発明の共重合体の構成モノマーとして有することも可能である。
本発明にかかる共重合体は上記モノマーを公知の重合方法を用いて重合することにより得ることができ、例えば溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法等を用いることができる。例えば、溶液重合法の場合には、各モノマーを求めるモノマー組成にて溶媒に溶解し、窒素雰囲気下、ラジカル重合開始剤を添加して加熱撹拌することにより本発明の共重合体を得ることができる。
【0016】
重合の際に用いられる溶媒としては、モノマーを溶解又は懸濁し得るものであって、水を含まない有機溶媒であればいかなる溶媒でも用いることが可能であり、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィンなどの炭化水素系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩化物系溶媒などの他、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン等が挙げられる。これら溶媒は2種以上混合して用いても良い。通常、用いる重合開始剤の開始温度よりも沸点が高い溶媒を選択することが好適である。
【0017】
重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物の他、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸系重合開始剤が挙げられる。なお、これらの重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。
重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常70℃程度とすればよい。
【0018】
重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。比較的高分子量のポリマーを得たい場合には、1日程度反応させることが望ましい。反応時間が短すぎると未反応のモノマーが残存し、分子量も比較的小さくなることがある。
本発明の共重合体の平均分子量は特に制限されず、オリゴマー以上の重合度を有していれば目的とする効果を発揮し得る。ただし、重合度が小さくなると後述する架橋反応の速度が低下し、また、あまりに重合度が大きすぎると粘度が高くなって塗布性や作業性に劣ることから、その平均分子量は2,000〜150,000程度であることが好ましい。
【0019】
このようにして得られる本発明の共重合体は、モノマー(A)に由来する官能性シリル基を有している。このため、これを加水分解することによって本発明の共重合体分子同士が架橋し、架橋体を形成することができる。そして、このような架橋反応を被処理材料上で行うことにより、該材料表面に強固に共重合体の架橋体被膜が形成され、耐久性のある高い撥水性、防汚性を発揮することができる。また、本発明の共重合体による架橋体被膜は繊維材料に対して糊付け性や、しわ伸ばし、防しわ効果を発揮し、また、その使用感にも優れるという特徴を有する。よって、これらの効果を一度に付与したい用途に好適である。
【0020】
本発明の共重合体のモノマー組成としては、共重合体中のモノマー(A)の割合が25〜85重量%、さらには40〜75重量%であることが好ましい。モノマー(A)が少なすぎると架橋反応部位が少ないため、撥水性や耐洗濯性等の効果が十分発揮されない。一方、モノマー(A)の割合が多すぎる場合にも、撥水性、耐洗濯性が低下する傾向にある。これは、架橋反応部位が多すぎて、しかも密な状態にあるため、架橋反応がきれいに進行せず、架橋体上に未反応部位が多量に残るためと考えられる。また、使用感が悪かったり、フレーキングを生じることもある。
【0021】
モノマー(B)は、架橋体被膜の撥水性に寄与するとともに、フレーキングを抑制したり、モノマー(C)によるべたつきを抑え、架橋体被膜の性質を調整する。モノマー(B)の割合としては、共重合体中5重量%以上、好ましくは10重量%以上である。モノマー(B)の割合が高くなると他のモノマーの割合が低下し、また共重合体がアルコール系溶媒に難溶性となるので、モノマー(B)は多くとも74重量%以下、好ましくは60重量%以下である。
モノマー(C)はシロキサン部分を有し、これにより架橋体被膜の撥水性を著しく高めるとともに、繊維になめらかさを付与して良好な仕上がりとすることができる。また、フレーキングも抑制する。本発明の共重合体中、モノマー(C)は1重量%以上、好ましくは5重量%以上であるが、モノマー(C)の割合が多すぎると、相対的にその他のモノマーの比率が低くなり、耐洗濯性等が劣る傾向があるので、多くとも70重量%以下、好ましくは60重量%以下である。
【0022】
また、上記モノマー(A)〜(C)とともに、さらにモノマー(D)を構成モノマーとして有する共重合体を処理した場合には、繊維に対してなめらかさとともにぬめり感が付与され、しっとりとした使用感が得られる。しかしながら、モノマー(D)の割合が多すぎると、モノマー(D)が有するアミン部分によって被膜の親水性が高くなり撥水性、耐洗濯性等が劣るようになる。モノマー(D)の割合としては、モノマー(A)〜(C)の総重量に対して1〜100重量%、好ましくは5〜50重量%である。
【0023】
本発明の共重合体の好適な例として、例えば一般式( IX )で示される共重合体を挙げることができる。
【化15】
なお、一般式( IX )中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R13、R14、X、Yは前記定義の通りである。n、m、l、pはそれぞれモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)、モノマー(D)のモル比を表す。
【0024】
本発明にかかる共重合体の処理方法としては、本発明の共重合体を被処理材料に塗布後、加水分解し、該共重合体分子同士を架橋せしめることを特徴とする。架橋方法としては、水、酸、アルカリによる反応や熱による反応が挙げられる。具体的には、本発明の共重合体を塗布後、塗布部を水(水蒸気等でも可)、酸、又はアルカリに接触せしめたり、加熱することにより加水分解、架橋させる方法がある。また、予め水、酸又はアルカリで処理した被処理材料に、該共重合体を塗布して加水分解、架橋を行ってもよい。また、本発明の共重合体に、水、酸又はアルカリを混合し、直ちに塗布する方法も考えられる。水、酸、アルカリによる反応の場合には加熱してもよいが、通常室温で処理すれば十分である。なお、架橋反応の進行が緩慢であっても良い場合には、特にこのような酸、アルカリ、水と接触せしめなくとも大気中の水分により自然架橋させることも可能である。
【0025】
本発明にかかる処理方法で用いられる酸、アルカリとしては、本共重合体を加水分解し架橋反応せしめることができるものであれば特に限定されず、有機・無機の酸、アルカリを用いることができる。もちろん、これらの酸、アルカリは、その1種又は2種以上を用いることができ、また、水との混合物であっても良い。
本発明の共重合体は適当な溶媒の溶液、または分散液や乳化液の形で用いることができる。このうち、好適な実施形態の一つとして、該共重合体を含有する非水系組成物が挙げられる。
【0026】
非水系組成物としては、例えば、該共重合体を有機溶媒中に溶解もしくは分散せしめたものが挙げられる。このような有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化合物炭化水素、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤炭素数1〜4の脂肪族1〜4価アルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、ジオキサン、酢酸メチル、ジホルムアミド等が挙げられる。なお、このうち毒性や安全性の点から好ましいものは脂肪族1〜2価のアルコールであり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールが挙げられ、特に安全性の点からはエタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0027】
本発明にかかる共重合体を水分含有組成物とした場合には、製品中で架橋反応が起こるため、塗布時に適宜調製することが好適である。なお、このような水分含有組成物もまた、本発明の範疇である。
本発明の共重合体を配合した組成物において、該共重合体の濃度は特に制限されないが、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。配合量が少なすぎると一回の処理で十分な効果が得られないことがあり、多すぎる場合には塗布性、伸展性、使用感等が劣ったり、フレーキングを生じることがある。
【0028】
本発明にかかる処理用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であればその他の成分を配合することができる。例えば、界面活性剤、紫外線防御剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、皮膜形成剤、油性成分、高分子化合物、噴射剤等が挙げられる。水、酸、アルカリは共重合体と別剤としておくことが好ましいが、塗布時に適宜調製するのであれば、前記のように本発明の共重合体とともに水、酸、アルカリを組成物中に配合することも可能である。また、顔料や色素等の色材を配合すれば、耐水性のある着色被膜を形成することも可能であり、紫外線吸収剤を配合すれば被処理材料の退色を防止することも可能である。
【0029】
本発明において処理される材料としては、単繊維、紡績糸、ランダム繊維、織物及び最終製品の任意の形態の繊維材料が好適である。このような最終製品としては、例えば靴、傘、帽子、スキーウエア、シャツ、カーペット等が挙げられる。なお、本発明において繊維材料とは皮革や紙繊維、紙製品等その他の繊維状材料及びその製品も包含する。また、繊維材料以外にも、ガラス板やガラス製品、金属板や金属製品等、撥水性や防汚性が要求されるのその他の材料を処理することも可能である。
【0030】
本発明の共重合体を塗布するための手段としては、例えば浸漬法、ロールコーティング法、スプレー法など従来より公知の手段を用いればよい。もちろん、必要に応じてはけ、くし等の器具を適宜用いることができる。
本発明において最も簡単な処理方法の一つは、例えば本発明の共重合体溶液を被処理材料に浸漬あるいはスプレーし、場合によっては絞って自然乾燥又は加熱する方法が挙げられる。また、シャツなどの衣類においてはアイロン掛けの前に該共重合体溶液をスプレーし、その後アイロンやスチームアイロンをかける方法も好適である。
【0031】
本発明の共重合体は被処理材料上にて架橋処理を行うことにより、撥水性、防汚性に優れる架橋体被膜を形成する。また、この被膜により、しわ伸ばし・防しわ性、糊付け性等も付与することができる。そして、該被膜は水や洗剤によっても非常に落ちにくいため、これらの効果が持続して発揮される。また、この架橋被膜はフレーキングがなく、繊維材料に適用した場合には使用感にも非常に優れているので、特に繊維処理剤、繊維用糊剤、防シワ剤として好適である。また、各種材料用の撥水剤、防汚剤としても用いることができる。
【0032】
このような効果が発現する作用機作としては次のように考えられる。図1に本発明にかかる共重合体の架橋反応の一例を模式的に示す。すなわち、本発明にかかる共重合体はモノマー(A)に由来する三官能性シリル基−SiR3R4R5を有している。この三官能性シリル基は水、酸、アルカリ等により容易に加水分解され、トリヒドロキシシリル基−Si(OH)3となる。このトリヒドロキシシリル基は別のトリヒドロキシシリル基と反応して安定なシロキサン結合Si−O−Siを形成し、その結果、共重合体分子間が三次元網目状に架橋された架橋共重合体(本発明中、架橋体ということがある)となる。
従って、該共重合体を塗布後、加水分解することにより、塗布部分で架橋が起こって架橋体が被処理材料を網目状に強固且つ均一に被覆し、撥水性、耐洗浄性に優れる被膜を形成するものと推察される。
【0033】
なお、予めこの架橋体を合成してこれを塗布しようとしても、架橋体がゲルもしくはプラスティックとなるので塗布することは非常に困難である。
以下に具体例を挙げて、さらに本発明を詳述する。まず、本発明で用いた試験方法を説明する。
【0034】
撥水性
各共重合体の5%エタノール溶液を木綿のシャツにスプレーし、自然乾燥させた。このシャツに水を数滴滴下し、その撥水性を視覚にて評価した。さらにこのシャツを市販の家庭用洗剤を用いて洗濯機で洗濯、自然乾燥を10回繰り返し行い、その後の撥水性についても同様に評価した。
評価基準
◎:極めて良好。
○:良好。
△:やや不良。
×:不良。
【0035】
なめらかさ
各共重合体の5%エタノール溶液2gを木綿布1枚(10g)に塗布し、自然乾燥した。この布のなめらかさを手触りにて専門パネル20名により官能評価した。
評価基準
◎:15名以上が良好と回答した。
○:10〜14名が良好と回答した。
△:5〜9名が良好と回答した。
×:4名以下が良好と回答した。
【0036】
糊付け性
被験共重合体の5%エタノール溶液を木綿のシャツにスプレーし、スチームアイロンをかけることにより硬化させた。アイロン直後の状態を手触りにより官能評価した。さらに、前記撥水性試験と同様10回洗濯乾燥後の糊付け性についても評価した。
評価基準
◎:極めて良好。
○:良好。
△:やや不良。
×:不良。
【0037】
しわ伸ばし・防しわ性
前記糊付け性試験と同様にして、アイロン後及び10回洗濯乾燥後のしわの状態を視覚にて判定し、しわ伸ばし・防シワ性を評価した。
評価基準
◎:極めて良好。
○:良好。
△:やや不良。
×:不良。
【0038】
防汚性
前記撥水性試験と同様に処理したシャツにコーヒー液を1滴滴下し、別布でふき取った後の汚れの付着度を視覚判定し、防汚性を評価した。
評価基準
◎:極めて良好。
○:良好。
△:やや不良。
×:不良。
【0039】
ぬめり感
各共重合体の5%エタノール溶液2gを木綿布1枚(10g)に塗布し、自然乾燥した。この布のぬめり感を手触りにて専門パネル20名により官能評価した。
評価基準
◎:15名以上が良好と回答した。
○:10〜14名が良好と回答した。
△:5〜9名が良好と回答した。
×:4名以下が良好と回答した。
【0040】
また、以下で用いた各モノマーの構造は次の通りである。
モノマーA1:
【化17】
モノマーB1:
【化18】
モノマーC1(分子量422):
【化19】
モノマーC2(平均分子量12,000):
【0041】
【化20】
モノマーC3(平均分子量5,000):
【化21】
モノマーC4:
【化22】
モノマーD1:
【化23】
【0042】
【表1】
【0043】
表1から解るように、モノマー(A)のみからなる共重合体aでは撥水性や防汚性は低く、使用感も悪い。また、フレーキングも生じる。
一方、モノマー(A)とモノマー(B)からなる共重合体bではこれらの効果が向上するものの十分でない。
これに対してモノマー(A)〜(C)からなる共重合体では、非常に優れた撥水性、防汚性を発揮することができ、その使用感はなめらかでべたつきもなく非常に良好であった。なお、共重合体中のモノマー(A)の割合が少なすぎたり多すぎる場合には撥水性、耐洗濯性が低下する傾向があるので、モノマー(A)の割合としては、共重合体中25〜85重量%、さらには40〜75重量%の範囲であることが好適である。
【0044】
また、モノマー(C)については撥水性を著しく高めることができ、また、繊維に対してなめらかな感触を与えることができる。このような効果を得るためには、共重合体中のモノマー(C)の割合としては、1重量%以上、好ましくは5重量%以上である。
なお、モノマー(B)については、モノマー(A)とモノマー(C)からなる共重合体cの場合にはべたつきが著しく、使用が非常に困難であったことから、モノマー(B)の存在がモノマー(C)によるべたつきを抑え、適度な被膜性を与えていることが示唆された。共重合体中、モノマー(B)の割合は5重量%以上、好ましくは10重量%以上である。
【0045】
【表2】
表2から解るように、モノマー(C)がモノマーC1、C3またはC4である共重合体の場合にも、モノマーC2である共重合体の場合と同様の効果が得られた。
【0046】
【表3】
【0047】
表3から解るように、モノマー(A)〜(D)からなる共重合体は、繊維に対してぬめり感を与え、しっとりとした感触を付与することができる。なお、モノマー(D)の割合が高くなると架橋体被膜の親水性が高くなって、撥水性、耐洗濯性が低下する傾向にある。従って、モノマー(D)の割合としては、共重合体中のモノマー(A)〜(C)の総重量に対して1〜100重量%、好ましくは5〜50重量%である。
【0048】
【表4】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
共重合体 未処理
4 10 11 13 15
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
糊付け性 (処理直後) ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ×
(洗濯後) ◎ ◎ ◎ ○ ○ ×
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
しわ伸ばし(アイロン直後) ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ×
・防しわ性(洗濯後) ◎ ○ ◎ ○ ○ ×
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
表4からわかるように、本発明にかかる共重合体15は繊維に対する糊付け性、しわ伸ばし・防しわ性においても優れた効果を発揮する。
【0049】
【表5】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
共重合体 未処理
4 10 11 13 15
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
撥水性(処理直後) ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ×
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
防汚性 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ×
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
表5は木綿シャツの代わりに紙を用いて同様に撥水性試験、防汚性試験を行った結果である。これより、本発明の共重合体15を紙に処理した場合にも、高い撥水性、防汚性が得られることが理解される。
【0050】
【表6】
【0051】
表6は、木綿シャツの代わりにガラス板を用い、前記撥水性試験と同様に処理して、ガラスの疎水化度を調べた結果である。なお、疎水化度は水に対する接触角ならびに傾斜角により評価した。接触角は、ガラスに水を1滴滴下し、その接触角を計測した。また、傾斜角は少しずつガラスに角度をつけて傾けていき、水滴が動き出した時の角度を計測した。接触角は大きいほど、傾斜角は小さいほど疎水化度は大きいと評価できる。
その結果、本発明にかかる共重合体15を処理したガラス板は、未処理のガラス板に比し水に対する接触角が非常に大きく、一方傾斜角は非常に小さい。これより、本発明にかかる共重合体はガラス板に対しても非常に高い疎水化能を付与することができることが示された。
【0052】
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例18〜23
モノマー(A)〜(D)がそれぞれ表7に記載の割合となるよう、モノマー混合物を各仕込量にてエタノール100mlに溶解し、窒素気流下、70℃で1時間加熱攪拌した後、過硫酸カリウム0.05gを加え、一晩反応させて共重合反応を完結した。反応液を室温まで冷却し、減圧濃縮した。残渣をエタノール10mlに溶解し、n−ヘキサン500ml中に添加した。沈殿物を分取し、目的とする共重合体を得た。
【0053】
【表7】
─────────────────────────────────――――───
合成例 モノマー[重量部] 仕込み量 収率
A1 B1 C1 C2 C3 C4 D1 (g) (%)
─────────────────────────────────――――───
18 12 7 − − − 1 2 20 99.5
19 12 7 − − − 1 4 22 90.9
20 12 2 − − − 6 2 22 91.4
21 12 2 − − − 6 4 24 96.7
22 12 4 − − − 4 2 22 90.0
23 12 4 − − − 4 4 24 91.3
─────────────────────────────────――――───
【0054】
図2は上記合成例18で得られた共重合体のNMRスペクトルデータを示している。この共重合体はそのNMRスペクトルデータ(溶媒DMSO−d 6 )において、6〜7ppm付近に見られる原料モノマー由来のCH2=Cの水素原子のピークが認められず、このことから共重合体の生成が確認された。なお、その他の共重合体についても同様にして共重合体の生成を確認した。
【0055】
【発明の効果】
本発明にかかる共重合体を被処理材料に塗布後、加水分解することにより、その表面に強固な架橋体被膜が形成され、優れた撥水性、防汚性、糊付け性、防しわ性、良好な使用感等を付与することができる。また、これらの効果は水や洗剤によっても低下せず、高い耐久性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる共重合体の架橋反応の一例を示す図である。
【図2】 本発明の一実施例にかかる共重合体のNMRスペクトル図である。
Claims (7)
- 下記一般式(I)で示されるモノマー(A)と、
下記一般式(II)で示されるモノマー(B)と、
下記一般式(III)で示されるモノマー(C)と、
下記一般式( VII )で示されるモノマー(D)と、
を構成モノマーとして有することを特徴とする共重合体。
- 請求項1記載の共重合体において、モノマー(A)の割合が、共重合体中25〜85重量%であることを特徴とする共重合体。
- 請求項1又は2記載の共重合体において、モノマー(B)の割合が共重合体中5重量%以上、モノマー(C)の割合が共重合体中1重量%以上であることを特徴とする共重合体。
- 請求項1〜3の何れかに記載の共重合体において、モノマー(D)の割合が、共重合体中のモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)の総重量に対して1〜100重量%の範囲であることを特徴とする共重合体。
- 請求項1〜4の何れかに記載の共重合体からなる繊維処理剤。
- 請求項1〜4の何れかに記載の共重合体からなる撥水剤。
- 請求項1〜4の何れかに記載の共重合体を被処理材料に塗布後、加水分解せしめ、該共重合体分子間を架橋することを特徴とする該共重合体の処理方法。
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