JP3830468B2 - 撮像装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は撮像装置に関し、特に耐環境性能を向上した撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、CCD(charge-coupled device)やCMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor)等の撮像素子の小型化等の性能向上に伴い、多様な用途、例えば屋外用途の撮像装置が実用化され、以下に示すような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1〜4には、レンズを収納・保持する樹脂材料で形成された鏡筒の周縁に形成した突起を1番目のレンズの前面側周縁部に被せるように熱溶着によりかしめる技術が開示されている。
また、特許文献5〜8には、レンズ系に対する広い視野範囲を確保するものとして、一番目の凸状レンズの凸状表面をケース等から突出させる技術が開示されている。
また、非特許文献1、特許文献8、及び、9には、水中カメラ等に用いられる技術であって、保護ガラスを用いずに1番目の広角レンズによって直接封止するようにした技術が開示されている。
更に、特許文献10〜12には、ケース開口を鏡筒で封止する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−1984903号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平11−313235号公報
【0006】
【特許文献3】
実開平4−101511号公報
【0007】
【特許文献4】
特許第2679784号公報
【0008】
【特許文献5】
実開平6−55871号公報
【0009】
【特許文献6】
特開平2−80107号公報
【0010】
【特許文献7】
特開平5−787272号公報
【0011】
【特許文献8】
実開平2−64927号公報
【0012】
【特許文献9】
特開平9−265035号公報
【0013】
【特許文献10】
特開2002−90603号公報
【0014】
【特許文献11】
特開平5−241227号公報
【0015】
【特許文献12】
特開平8−29851号公報
【0016】
【非特許文献1】
写真工業、Vol.50、1992年、No.7、P.11〜12、新商品紹介
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の提案の技術では、防水性能等の耐環境性能において必ずしも十分ではない場合があり、更なる技術改良が望まれていた。本発明はこうした現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐環境性能等を改良した撮像装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の撮像装置によれば、第1の開口を備えたカメラケースと、該カメラケースに内包される鏡筒と、該鏡筒に収納され、凸面を外側に向ける1枚目のレンズを含むレンズ群と、該1枚目のレンズの外周部に配置される弾性部材と、前記鏡筒に固定され、前記第1の開口と前記 1 枚目のレンズの外周部との隙間を埋める第2の開口を有する押え部材と、該押え部材に形成される前記1枚目のレンズの外周部を押圧する突起部と、前記押え部材に形成される前記弾性部材を押圧する押圧面と、前記カメラケースに収納される撮像素子と、を備え、
前記押え部材にて前記第 1 の開口を封止し、かつ前記押え部材を前記鏡筒に固定することで前記突起部にて前記1枚目のレンズを前記鏡筒に押圧するとともに、前記押圧面と前記 1 枚目のレンズまたは前記鏡筒にて前記弾性部材を押圧して前記押え部材の第 2 の開口を封止する構成であって、前記1枚目のレンズの外周部と前記押え部材の内壁面との間に所定の隙間を設けたことを特徴とする。
【0021】
本発明の他の撮像装置によれば、前記押え部材に設けた係止部と、前記鏡筒に設けた前記係止部を係止する凹部と、を備え、前記係止部を前記凹部に係止することにより、前記押え部材を前記鏡筒に固定することを特徴とする。
【0022】
本発明の他の撮像装置によれば、前記押え部材はねじ込み式の部材であって、前記鏡筒の外周と螺合することにより前記押え部材を前記鏡筒に固定することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本実施の形態に係る撮像装置の断面図、図2は撮像ユニットの斜視図、図3は撮像ユニットの正面図、図4は前ケースに撮像ユニットを組み込んだ斜視図である。
【0024】
図1に示す如く、本実施の形態の撮像装置1は前ケース2と後ケース3を備え、前ケース2と後ケース3との間にパッキン4を挿入して封止し、図2に示す如く、ケース内に撮像ユニット10を組み込んでいる。尚、前ケース2と後ケース3とは、前ケース2の図示しないボスに対して後ケース3の背面より後ケース3の図示しない孔を挿通したネジによるネジ止めにより固定される。
【0025】
図5、図6は撮像ユニット10の分解斜視図であり、図7は図3に示した撮像ユニット10の正面図のA−A線断面図である。撮像ユニット10は被写体側から順に、レンズアッシ20と、フォームリング40と、調整用リング42と、リング固定板44と、レンズホルダ46と、CCD基板48と、電源基板50とを備える。
【0026】
レンズアッシ20は、広角レンズ群として被写体側から順に第1レンズ23、第2レンズ24、絞り29、第3レンズ25、第4レンズ26、第5レンズ27、及び第6レンズ28を備える。なお、本実施の形態においては、絞り29と第3レンズ25の間にはマスクを設け、レンズの有効光線から入射する光線を遮っているが、これは実際のレンズ性能に鑑み、増減または移動させてもよい。
【0027】
第1レンズ23は、外周部分が段カット構造となっており、その部分にOリング34が配設される。鏡筒32の外周部分と嵌合するねじ込み式の押え部材30によって、第1レンズ23は略光軸OA方向に押えられる。このとき、Oリング34は、レンズ押え部材30と第1レンズ23の段カット部分によって押圧される。これによって、レンズ押え部材30の内壁と第1レンズ23の段カット部分で封止がされ、防水性能が得られる。
【0028】
第4レンズ26、第5レンズ27、及び第6レンズ28を保持するレンズ保持部材22には、3本のキー溝21が直線的に、かつ、レンズ保持部材22の外周を3等分する位置関係で設けられている。なお、本図ではキー溝21は1本で代表している。また、本実施の形態では3本に限定せず適宜に設けることができる。
【0029】
フォームリング40は、発泡ゴムを材料とし、環状の形状を有し、レンズアッシ20に内挿される。調整用リング42は、内側にねじ加工が施され、また、レンズアッシ20に対して自由に回転可能に嵌合される。
【0030】
リング固定板44は、調整用リング42を挟むように、第1及び第2タップタイトネジ80および82によって、レンズアッシ20に固定される。このとき、調整用リング42の回転自由度は維持されたまま、調整用リング42が脱落しないよう設計が配慮されている。
【0031】
レンズホルダ46は、その内側に、レンズ保持部材22に設けられた3本のキー溝21とキー嵌合する3本のキー47が直線的に設けられている。なお、本図ではキー47は1本で代表している。また、本実施の形態では3本に限定せず適宜に設けることができる。
【0032】
また、レンズホルダ46は、その外周に所定の長さだけ、雄ねじ加工が施され、調整用リング42の内側に施されたねじと螺合するように構成されている。したがって、調整用リング42が回転すると、キー嵌合がガイドとなって、レンズホルダ46は非回動のまま光軸方向に前後動する。
【0033】
なお、レンズホルダ46は、レンズアッシ20と嵌合し設計上のピント位置となる直前の所定の位置となると、レンズホルダ46の被写体寄りの端部は、フォームリング40に当接する。レンズホルダ46に押されてフォームリング40が圧縮された際に発生する予張力により、調整用リング42とレンズホルダ46とが嵌合するねじ部および調整用リング42の構造部全体が一方向に片寄せされ、ねじ部のバックラッシュや構成部品寸法ばらつきによる調整用リング42格納部の寸法変化の影響を受けない。
【0034】
リング固定板44には、調整用リング42の外周に対して平行となるような雌ねじ部45が形成されている。この雌ねじ部45にとがり先のリング固定ネジ56を組み付け、調整用リング42とリング固定板44が一体化することで、ピントが確実に固定される。また、ピントの固定の際に鏡筒32を直接固定しないため、レンズに負荷が直接かからない。したがって、レンズに歪みが生じず、撮像品位の低下が避けられる。
【0035】
レンズホルダ46には、第3及び第4タップタイトネジ84及び86によって、撮像素子であるCCDが設けられたCCD基板48が固定される。レンズホルダ46は、上述の通り、レンズアッシ20に対してキー嵌合しており、その位置の調整が調整用リング42で行われ、それぞれの部品の精度を適切に管理することにより、いわゆる「垂直出し」または「アオリ調整」とよばれる位置あわせが不要となる。CCD基板48がレンズホルダ46に対して垂直となるように取り付けることで、撮像面は、光軸方向に対して垂直となる。したがって、撮像面の調整は、光軸方向をZ軸方向とした場合、X及びY軸方向、及び回転方向(θ)のみでよい。なお、上記タップタイトネジは、場合により、タッピンネジや普通ネジでもよい。
【0036】
CCD基板48には、CCD基板48に電力を供給するとともに、CCD基板48が出力する信号を撮像ユニット10の外部に出力する機能を備える電源基板50が取り付けられる。撮像ユニット10は、レンズアッシ20に設けられる、第1及び第2外装止めネジ穴92及び94とで、前ケース2にねじ止めされる。
【0037】
以上の構成により、レンズ自体を調整することなくピント調整が可能となり、調整作業の効率が向上する。また、調整用リング42を用いることで、ピント調整、及び、レンズ光軸と撮像素子の所定の画素を一致させる、いわゆる「光軸調整」を独立して行うことが可能となる。さらに、ピント固定は、調整用リング42を固定することで実現できるので、レンズに直接負荷がかからず、レンズに歪みが発生することが回避できる。
【0038】
レンズアッシ20を詳述する。図8はレンズアッシ20の断面図、図9は前ケース2の開口を押え部材30と第1レンズ23で封止した断面図である。レンズアッシ20の被写体側には鏡筒32が配置され、この鏡筒32の被写体側には第1レンズ23が配置され、第1レンズ23の外周部分の段カット構造にシーリング材であるOリング34が配置され、第1レンズ23がOリング34を介して押え部材30によって略光軸OA方向に押さえられる。ここでは、Oリング34は、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR: Hydrogenated Nitrile-Butadiene Rubber)で形成される。一般に、ニトリルブダジエンゴム(NBR:Nitrile-Butadiene Rubber)は、その耐油性や耐候性により、防水カメラなどのシール材に用いられる。さらに、NBRの耐オゾン性や、耐熱性、耐候性を向上させ劣化寿命を延ばしたHNBRは、シーリング材としてより好適である。なお、第1レンズ23の像面側の所定の面と第2レンズ24の被写体側の所定の面とが当接することにより、第1レンズ23の光軸OA方向の位置を規定している。
【0039】
図9に示す如く押え部材30の周縁部には段55が形成されており、その段55に前述のものとは別のOリング54が配置される。前ケース2の開口に押え部材30を挿入する際、レンズアッシ20に設けた突起91(図2に記載)が前ケース2の背面に設けた図示しない凹部に位置決めされ、レンズアッシ20に設けた孔90に挿通したネジにより前ケース2の背面に設けた図示しないボスにネジ止めすることで前ケース2の開口は、押え部材30により封止される。
【0040】
図10、図11は、図8のレンズアッシ20の断面図に示す領域70を拡大した図であり、レンズアッシ20の開口を第1レンズ23にて封止する構造を説明する。
【0041】
第1レンズ23は鏡筒32の被写体側で保持、収納され、押え部材30の端部には、内側に向かう小さな爪状かつ環状の突起192が設けられている。この押え部材30を鏡筒32にねじ込むことで、第1レンズ23と押え部材30の間に配置されたOリング34が押圧変形し、押え部材30の開口は第1レンズ23により封止される。このとき、以下の設計的配慮をする。
【0042】
まず、Oリング34の内径は、第1レンズ23の外径より大きく、Oリング34の外径は、押え部材30の内径より小さく設計する。こうすれば、図10に示すように押え部材30を鏡筒32にねじ込む前のOリングは押圧変形することなく配置され、図11に示す押え部材30を鏡筒32にねじ込んだ後においても、Oリング34は、押え部材30の内壁面や、第1レンズ23のコバ部との間で、大きな摩擦力を発生するような接触が避けられる。その結果、Oリング34には不必要な回転方向の摩擦力やねじれの力が発生せず、ダメージを受けにくい。
【0043】
さらに、光学設計上、レンズ内部の乱反射や逆光によるゴースト、フレア等を防止するために被写体側の第1レンズに反射防止用のコーティングを施すことが設計常識として確立している。しかしながら、屋外用などの撮像装置であって、第1レンズの表面が露出し且つ風等によりゴミなどがレンズ表面に当たりうる悪環境下の場合、第1レンズの表面のコーティングが一部剥がれ、撮影される画質の低下を引き起こす可能性があった。また、熱膨張によるコーティングのクラック等も同様の問題を引き起こす。そこで、本実施の形態においては、悪環境下で用いる撮像装置の場合、従来の設計常識に反し、第1レンズの外側のコーディングを廃し、かつその場合においてもゴースト、フレア等が発生しにくいレンズ構成としている。
【0044】
尚、悪環境下で利用されない撮像装置であれば、当然ながら従来どおりコーティングを施してもよい。一方、屋内用であっても第1レンズに何らかの物体が当たる恐れがある場合、または環境温度の変化を受けやすい場合、第1レンズのコーティングを廃してもよい。
【0045】
前ケース2の開口を押え部材30により封止する構造を採用する本実施の形態の撮像装置は、例えば前述の特許文献10の図11に開示される、前ケースの開口を鏡筒により封止する構造のものと比較し、以下の作用効果上の違いを奏する。
【0046】
(1)温度特性
屋外用のカメラでは、露出部分が直接外気に晒されたり、直射日光を受けるため、温度変動が大きい。鏡筒がケース外に露出する構造だと、レンズ鏡筒に温度変動による歪み、捩れ、変形が生じ、レンズの取り付け位置精度が落ちる。鏡筒は本来、1/100mm以下のずれで光学性能に影響がでるほど精妙である。
【0047】
一方、本実施の形態のように鏡筒がケースより露出しない構成であれば、押え部材30が多少変形してもレンズの取り付け位置精度に影響がない。レンズの取り付け位置精度は鏡筒により補償されている。なお、レンズ押え部材30をアルマイト加工したアルミ材やステンレス材等の金属材料で構成することにより熱による変形をさらに防止できる。
【0048】
(2)強度
屋外用のカメラ、特に車載カメラは洗車やメンテナンスの際にカメラ部分に力が加わることがある。鏡筒が外部に露出していると、鏡筒に直接力が加えられ変形し、レンズ取り付け位置精度に影響しうる。一方、本実施の形態のように鏡筒がケースから露出しない構成であれば、力はむしろ押え部材30に加わり、鏡筒に加わる力が抑えられ、鏡筒の変形が抑えられる。そのため、レンズの取り付け位置精度に影響がでにくい。なお、レンズ押え部材30を前述の金属材料で構成すれば、外部からの衝撃による変形をより防止できる。
【0049】
(3)薬品耐性
屋外用のカメラ、特に搭載カメラ等では、ワックス等の油脂、オイルに晒され易く、ポリマー等の腐食性のある薬品により腐食されうる。鏡筒が露出する構成では鏡筒の腐食によるレンズ取り付け位置精度の低下が懸念されるが、本実施の形態では鏡筒がケースから露出しないので、鏡筒の腐食は防止され、レンズの取り付け位置精度が維持できる。なお、レンズ押え部材30を前述の金属材料で構成すれば、腐食をより防止できる。
【0050】
(4)耐タンパー性
屋外用のカメラ、特に車載カメラ等は、外部からのいたずらを想定する必要がある。鏡筒が露出する構成だと、鏡筒に直接力が加わり、レンズずれが生じる。また、熱溶着の部分をカッター等で切り込んだり、はがされたりすることにより第1レンズが外れるおそれがある。一方、本実施の形態では鏡筒がケースから露出しないので、ケースを開けない限り第1レンズは外れず、耐久性に優れる。なお、レンズ押え部材30を前述の金属材料で構成すれば、さらに耐タンパー性能が高まる。
【0051】
(5)経時特性
経時変化により装置の各部材は劣化する。特に外部に露出している部分の劣化は内部の部材に比べて速い。鏡筒が露出し、熱溶着によりレンズを鏡筒に押えている構成では、押え部分がクリープ破壊し、レンズが外れる懸念がある。一方、本実施の形態では鏡筒がケースから露出せず、第1レンズが外れにくく、経時変化に強い。なお、レンズ押え部材30を前述の金属材料で構成すれば、さらに経時変化に強くなる。
【0052】
(6)保守性
レンズが鏡筒に熱溶着によりかしめられる構成では、保守整備の際、レンズと鏡筒を一体交換しなければならずコストがかかるが、本実施の形態では鏡筒に一体的に第1レンズを固定していないので、レンズ、鏡筒及び押え部材を別個に交換することができ、コスト面で有利である。
【0053】
(7)製造容易性
鏡筒にレンズを熱溶着により押さえる構成では、熱溶着で固定する部品すべての寸法ばらつきが重なるため、レンズかしめを行うべきレンズの高さにばらつきが出て、かしめ強度を一定に保つことが困難であるが、本実施の形態の構成であれば、鏡筒へのレンズの固定が熱によらないため、レンズの取り付け位置は部品の寸法ばらつきに依存せず、工程管理や歩留まりで有利である。なお、レンズ押え部材30を前述の金属材料で構成すれば、さらにレンズの取り付け位置精度が向上する。
【0054】
(8)防水性能
一般にOリングによる封止、すなわちシーリングを行う際、Oリングが押圧変形された際の圧縮率を、下限として8%、上限として40%を目安にするが、使用するOリングの線径により圧縮率の管理値を変えていくのが好ましい。即ち、線径が小さい場合、密着面積を増大させるために圧縮率を大きくとり、逆に線径が大きい場合、必要以上の密着面積をとる必要がないため、圧縮率は小さくともよい。圧縮率は、一般には公差や経年劣化を考慮して設定される。
【0055】
一方、メーカー等の一般公表資料によれば、Oリングによる防水は、線径2mm以下では圧縮率が15%〜40%、線径2〜4mm未満では圧縮率10%〜30%、線径4mm以上では圧縮率8%〜20%がよいとされる。本実施の形態では、圧縮永久歪を考慮し、高圧縮側に5%のマージンを持たせ、圧縮率の管理値を15%〜35%としている。
【0056】
このように、Oリングによる封止の際、圧縮率を厳しく管理しなければならないが、レンズを熱溶着により鏡筒に押さえる構成では、前述のごとく、レンズ構成部品の寸法ばらつきにより、かしめ部分の高さが変動するため、熱溶着治具により一定のかしめ量が確保し辛く、結果としてOリングの圧縮率がばらつきを生じ、所望の防水性能を実現することが困難である。一方、本実施の形態の構成であれば、押え部材のねじ込み量やねじ込み力を管理することでOリングの圧縮率を極めて容易に管理できるため、歩留まりよく、所望の防水性能を備えることができる。
【0057】
なお、レンズ押え部材30を前述の金属材料で構成すれば、さらに厳密にOリングの圧縮率を管理できる。また、寸法精度も一般の樹脂成型品と較べ向上するので、圧縮率の管理もさらに容易となる。
【0058】
(9)小型化
レンズを熱溶着により鏡筒に押さえる構成では、上述のようにOリングの圧縮率の管理が困難であるため、Oリングの径が所定以上のものしか採用できず、小型化が困難である。一方、本実施の形態の構成であれば、極めて小径のOリングを採用でき、装置をより小型に設計できる。この場合も、レンズ押え部材30を前述の金属材料で構成すれば、さらに厳密にOリングの圧縮率が管理できるので、更なる小型化に寄与する。
【0059】
(10)耐振動性能
レンズを熱溶着により鏡筒に押さえる構成では、特に車載カメラ等の場合、車両その他の振動によりこの押えが外れる懸念がある。一方、本実施の形態の構成では、このような問題は生じない。
【0060】
(11)その他
本実施の形態の構成では、上記の他に、押え部材のみを変更することにより、異なる開口寸法を有するケースに対応できるため設計の自由度が高い。また、外に露出する押え部材を上述の金属等で形成することにより、押え部材に彫刻シルク印刷などを施すことができ、また装飾用の処理などを施すことにより、美観の向上が容易である。
【0061】
本実施の形態の撮像装置はさらに、例えば前述の特許文献10や特許文献5に開示の前ケースの開口を第1レンズにより封止する構造のものと比較し、以下の作用効果上の違いを奏する。
【0062】
上述の従来技術は、第1レンズが一般に樹脂で成形される前ケースにより取り付け位置精度が確保される。一方、第2レンズ以降のレンズは、同じく一般に樹脂で成形される鏡筒に保持、収納されてはいるが、この鏡筒自体が前ケースに取り付けられる構造のため、第2レンズ以降の位置精度は、鏡筒自体の精度に加えて、鏡筒と前ケースとの取り付け位置精度の分、悪化する。そのため、第1レンズと第2レンズ間の精度が悪化し、光学系の性能に改善の余地が認められる。一方、本実施の形態では、第1レンズと第2レンズ間がそれぞれのレンズの面精度で決定できるため、非常に光学系精度の高い撮像装置が実現する。
【0063】
以上が本発明のひとつの実施の形態である。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素やその組合せにいろいろな変形が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、変形例を挙げる。
【0064】
図12は、変形例に係るレンズアッシ20の断面図である。図10では、Oリング34が第1レンズ23と押え部材30の隙間に配置され、これらによって押圧されたが、図12ではOリング34は押え部材30と鏡筒95の隙間に配置され、これらによって押圧される。
【0065】
レンズアッシ20の被写体寄りには鏡筒95が配置され、この鏡筒95の被写体側には第1レンズ193が配置され、この鏡筒95の先端部であって、押え部材30の段カット構造によって生じる隙間にHNBR等の材質からなるOリング34が配置され、第1レンズ193が押え部材30によって略光軸OA方向に押さえられる。
【0066】
第1レンズ193は鏡筒95に保持、収納され、光軸OA方向の位置決めや中心の位置決めなどが行われる。押え部材30のねじ込みにより、第1レンズ193が光軸OA方向に押し付けられ、Oリング34が押圧変形する。第1レンズの外周部分でかつ鏡筒95の先端部分でOリング34により封止がされる。
【0067】
前述の実施の形態では、第1レンズ193の像面側の所定面と第2レンズ24の被写体側の所定面とが当接することにより、第1レンズ193の光軸OA方向の位置が規定されたが、ここでは、鏡筒95により光軸OA方向の位置が規定される。そこで、第2レンズ24の被写体側と第1レンズ193の像面側に生じるクリアランスに別のOリング194を介在させ、第2レンズを光軸OA方向で押え、第2レンズの取り付け位置を固定する。ただし、このための部材はOリング194に限定されず、板バネ等、いろいろな形状と素材による一般的な弾性体であってもよい。図12の第1レンズ193には、図10の第1レンズ23のようにレンズ外周面にツバを形成する必要がなくなり、簡易なレンズ構成になる。
【0068】
図13及び図14は、図12のレンズアッシ20の断面図に示す領域71を拡大した図である。レンズアッシ20の開口を第1レンズ193にて封止する構造を説明する。
【0069】
第1レンズ193は鏡筒95の被写体側で保持、収納され、押え部材30の端部には、内側に向かう小さな爪状かつ環状の突起192が設けられている。この押え部材30を鏡筒32にねじ込むことで、第1レンズ193は鏡筒95に押えられ光軸方向の位置を規定され、同時に第1レンズ93の外周部分でかつ鏡筒95の先端部分に配置されたOリング34が押圧変形して封止される。
【0070】
Oリング34の内径は、第1レンズ193の外径より大きく、Oリング34の外径は、押え部材30の内径より小さく設計することで、図13に示すように押え部材30を鏡筒32にねじ込む前のOリングは押圧変形することなく配置され、図14に示す押え部材30を鏡筒32にねじ込んだ後においても、Oリング34は、押え部材30の内壁面や鏡筒95の先端部分との間で大きな摩擦力を発生するような接触が避けられる。これによる効果は前述のとおりである。
【0071】
レンズの変形についても設計上の配慮が可能である。図15は、第1レンズ193の形状と第1レンズ193の外周部分に用いられるOリング34との位置関係を示す拡大断面図である。本図のごとく、このレンズアッシ20において、押え部材30がねじ込まれた際、Oリング34の圧縮によって第1レンズ193の径方向に生じる力の線上100には第1レンズ193の肉が連続的に存在する。したがって、Oリング34からの力によって、第1レンズ193の凹状部が変形しにくく、硬度の高いレンズを用いる必要がない。その結果、製造コスト面、レンズ設計の自由度の面で有利であり、特に外部からの衝撃が強い場合、この構成は有利である。
【0072】
図16及び図17は、レンズアッシ20の開口を封止するための構成の変形例を示す断面図である。ここで、押え部材30以外の構成は図13及び図14同様であるので説明を略す。
押え部材96は、Oリング34が配置される第1レンズ193の外周部分において、内壁面に溝120を有する。図16では、Oリング34を押え部材96に接する径で設け、図17では第1レンズ193に接する径で設けている。溝120により、Oリング34が押圧変形しても、押え部材96に対し、それが第1レンズ193から離れる方向への力がかかりにくくなり、良好に第1レンズ193を鏡筒95に押えることができる。
【0073】
図18は、図13及び図14に示す、レンズアッシ20の開口を封止した構成の変形例を示す断面図である。第1レンズ110は、像面側の径が小さくなるように外周部に段差を設け、その段差部にOリング34を配置する。押え部材113は先端に爪状の突起112をもち、Oリング34が配置される個所に溝120が掘られている。第1レンズ110の側に段差があるため、押え部材113は溝120の分しか段差を持っていない。そのため、突起112が図13及び図14に比べて大きくなっている。
【0074】
以上の構成において、押え部材30を鏡筒95にねじ込むことで、押え部材30により第1レンズ110が鏡筒95に押さえられ、同時にOリング34は鏡筒95の先端部分と第1レンズ110により押圧変形して封止がされる。
【0075】
次に、上述した図18の構成の変形例を図24乃至26にて説明する。図24乃至26は図18の変形例を示す断面図である。
【0076】
図24に示す如く、レンズ110bは光軸を中心とする径201を有する第1の径部と、径201より径の小さい径202を有する第2の径部と、径202より径の小さい径203を有する第3の径部とを設けた構成である、
また、第2の径部の外周部と第1の径部の撮像側外面300(以下、当接面300)と鏡筒95cの先端部の面(以下、当接面301)とに囲まれた領域にOリングを設けている。
【0077】
鏡筒95cは、前記レンズ110bに設けた第2の径部及び第3の径部と当接する段部303を設け、前記レンズ110bを位置決めする構成である。
【0078】
また、鏡筒95cの当接面301は前記第1の径部の当接面300より面積を大きく構成している。
【0079】
その他の構成は図18と同一の構成である。
【0080】
本実施例の構成によれば、レンズ110bに第2の径部及び第3の径部を設け、それに対応して鏡筒95cに段部303を設けたことで、レンズ110bと鏡筒95cとの当接面を広く設定でき、これにともないレンズ110bと鏡筒95cとの摩擦力が高くなるので、レンズ110bの外部から与えられる振動や衝撃によるずれを防止し、光軸ずれによる不良画像を得ることを防止できる。
【0081】
また、例えば鏡筒95cと前記第1の径部との当接面に隙間ができてガタがおきても、前記第2の径部と鏡筒95cとの当接面又は第3の径部と鏡筒95cとの当接面によって、レンズ110bを鏡筒95cの規定位置に収納することができ、レンズ110bを光軸のずれなく鏡筒95cに収納することができる。
【0082】
次に図25に示すレンズアッシの構成について説明する。
【0083】
係止部204を設けた押え部材113bと、この係止部204を係止する凹部205を設けた鏡筒30bとを設け、押え部材113bを鏡筒30bに押すことで前記係止部204を前記凹部205に係止して前記押え部材を前記鏡筒に固定している。その他の構成は図18を用いて説明したレンズアッシと同様な構成であるので説明を省略する。
【0084】
このように、押え部材113bに係止部204を設け、この係止部204に対応して鏡筒95dに凹部205を設けたことで、単に押え部材113bを鏡筒95dに押し込むだけで押え部材113bと鏡筒95dとを固定することができる。
【0085】
したがって、押え部材を鏡筒にすばやく固定することができるので、製造工程を短時間にでき、これにより製造コストを抑えることができる。
【0086】
また、押え部材及び鏡筒の金型を形成する際には、例えば本例で説明した押え部材を鏡筒にねじ込んで固定する方式に比べて、押え部材や鏡筒の形状を簡便化することができるので、金型製造コストも押さえることができる
次に図26に示すレンズアッシの構成について説明する。
【0087】
同図に示す如く、鏡筒95bの被写体側先端部をレンズ110の外周部側面においてのみ当接し、その最先端部にOリング34を配置した構成である。その他の構成は、図18の構成と同様である。
【0088】
このように鏡筒95bを簡便な構成とすることで、鏡筒95bを製造する金型の形状を複雑な形状にする必要がなくなり、金型を作成する際のコストを抑えることができる。
【0089】
また、レンズ110の撮像側の面304と鏡筒95bとが当接しないので、レンズ110から入射される光を鏡筒95bによって遮光されず、光の利用効率を向上させることができる。
【0090】
なお、上述した変形例は、図に示した構成に限定されず適宜他の実施例に組み入れることができる。
【0091】
図19及び図20は、図13及び図14の別の変形例を示す。ここでは、第1レンズ193の側面と押え部材114との間に隙間122を設けた点で構成が異なり、他の点は同一である。この隙間122により、Oリング34を押圧変形したことによる力を逃がすことができ、押え部材114が第1レンズ193から離れる方向に広がることを防止できる。
【0092】
同様に、図21及び図22は、図16及び図17の変形例を示し、図23は図18の変形例を示す。ここでも第1レンズ193、110の側面と押え部材115、116との間に隙間122を設けた点で構成が異なり、他の点は同一である。また、その効果は上述のとおりである。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、特に耐環境性能を向上した撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態に係る撮像装置の断面図である。
【図2】 実施の形態に係る撮像ユニットの斜視図である。
【図3】 実施の形態に係る撮像ユニットの正面図である。
【図4】 実施の形態に係る前ケースに撮像ユニットを組み込んだ斜視図である。
【図5】 実施の形態に係る撮像ユニットの分解斜視図である。
【図6】 実施の形態に係る撮像ユニットの他の分解斜視図である。
【図7】 実施の形態に係る撮像ユニットのA−A断面図である。
【図8】 実施の形態に係るレンズアッシの断面図である。
【図9】 実施の形態に係る前ケースの開口を押え部材で封止すると共に押え部材の開口を第1レンズで封止した断面図である。
【図10】 レンズアッシの開口を第1レンズにて封止した断面図であり、押え部材で押える前の状態である。
【図11】 レンズアッシの開口を第1レンズにて封止した断面図であり、押え部材で押えた後の状態である。
【図12】 実施の形態に係る他のレンズアッシの断面図である。
【図13】 図12のレンズアッシの所定領域を拡大した断面図である。
【図14】 図12のレンズアッシの所定領域を拡大した断面図である。
【図15】 第1レンズの構成と第1レンズの外周部分に用いられるOリングとの関係を示す断面図である。
【図16】 図13に示すレンズアッシの開口を封止した構成の変形例を示す断面図である。
【図17】 図14に示すレンズアッシの開口を封止した構成の変形例を示す断面図である。
【図18】 図13及び図14に示すレンズアッシの開口を封止した構成の他の変形例を示す断面図である。
【図19】 図13の他の変形例を示す断面図である。
【図20】 図14の他の変形例を示す断面図である。
【図21】 図16の変形例を示す断面図である。
【図22】 図17の変形例を示す断面図である
【図23】 図18の変形例を示す断面図である。
【図24】 図18の変形例を示す断面図である。
【図25】 図18の変形例を示す断面図である。
【図26】 図18の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 撮像装置
2 前ケース
3 後ケース
10 撮像ユニット
20 レンズアッシ
23、110、193 第1レンズ
30、96、113、114、115、116 押え部材
32、95 鏡筒
34、54、194 Oリング
Claims (3)
- 第1の開口を備えたカメラケースと、該カメラケースに内包される鏡筒と、該鏡筒に収納され、凸面を外側に向ける1枚目のレンズを含むレンズ群と、該1枚目のレンズの外周部に配置される弾性部材と、前記鏡筒に固定され、前記第1の開口と前記 1 枚目のレンズの外周部との隙間を埋める第2の開口を有する押え部材と、該押え部材に形成される前記1枚目のレンズの外周部を押圧する突起部と、前記押え部材に形成される前記弾性部材を押圧する押圧面と、前記カメラケースに収納される撮像素子と、を備え、
前記押え部材にて前記第 1 の開口を封止し、かつ前記押え部材を前記鏡筒に固定することで前記突起部にて前記1枚目のレンズを前記鏡筒に押圧するとともに、前記押圧面と前記 1 枚目のレンズまたは前記鏡筒にて前記弾性部材を押圧して前記押え部材の第 2 の開口を封止する構成であって、前記1枚目のレンズの外周部と前記押え部材の内壁面との間に所定の隙間を設けたことを特徴とする撮像装置。 - 前記押え部材に設けた係止部と、前記鏡筒に設けた前記係止部を係止する凹部と、を備え、
前記係止部を前記凹部に係止することにより、前記押え部材を前記鏡筒に固定することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。 - 前記押え部材はねじ込み式の部材であって、該押え部材を前記鏡筒に螺合して、前記押え部材と前記鏡筒とを固定することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
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