JP3830310B2 - データ処理方法および装置、記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はデータ処理方法および装置、更にはこれらをソフトウェアの機能で実現するためのプログラムを格納した記録媒体に関し、特に、LSI製造用のレチクル・マスクデータ(露光データ、検査データ、検証データ)を設計データより生成する装置および方法に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置等のLSIの製造工程では、まず製造する半導体装置の回路レイアウトをシンボリックに表した設計データをCAD(Computer-Aided Design )等により生成し、その設計データに基づいて、ウェハを作る原版となるレイアウトパターンを表したレチクル・マスクデータを生成する。そして、この生成したレチクル・マスクデータに従って感光材を露光することによってレチクル・マスクを作成し、そのレチクル・マスクを用いてウェハに焼き付けを行う。
【0003】
図6は、設計データからレチクル・マスクデータを生成する従来のデータ処理装置を示す図である。図6において、データ処理装置200は、回路レイアウトをシンボリックに表したCADデータ1に対してデータ処理を行うことにより、レチクル・マスクデータ2を生成する。生成されたレチクル・マスクデータ2に従って図示しない露光装置で露光を行うことにより、レチクル・マスク3が作成される。
【0004】
上記データ処理装置200では、まず最初に、装置グリッド情報算出部6において、入力されるレチクル精度情報4や処理パラメータ5に基づいてグリッド情報を算出する。グリッド情報とは、CADデータ1の回路レイアウトからレチクル・マスクデータ2を生成処理する際に使用される情報であり、レチクル・マスクデータ2のレイアウトパターンの基準寸法を設定するための情報である。
【0005】
このグリッド情報は、CADデータ1を生成したときの最小グリッドおよびレチクル・マスク3上でのパターン寸法精度等に従って、許容される最小の実寸法で生成される。すなわち、レチクル・マスクデータ2を構成する個々の回路要素のパターンデータが、グリッド情報で設定された基準寸法により細分化されるマトリクス上で、当該マトリクスの格子点上に回路要素の全てのエッジが乗るようにグリッド情報が生成される。
【0006】
上記レチクル精度情報4は、生成されるレチクル・マスク3によってウェハ上に焼き付けを行う際の誤差の許容範囲を示す情報である。また、上記処理パラメータ5は、以下に述べる層合成情報、サイジング情報、スケール情報などの各情報を含む。
【0007】
層合成情報は、半導体装置を構成する個々の回路パターンの役割や特性、プロセス技術、条件等に合わせて、各回路パターンを複数の層(レイヤ)に分けて形成していく場合に、各レイヤのグループ分けに関する情報、すなわち、どの回路パターンがどのレイヤに属するかを表した情報である。
【0008】
サイジング情報は、CADデータ1中に含まれる各回路パターンのサイズを表す情報である。また、スケール情報は、CADデータ1で表された半導体チップ全体の拡大率を表す情報である。すなわち、レチクル・マスクデータ2は、このスケール情報により示される拡大率に従ってCADデータ1が拡大されて生成される。なお、レチクル・マスクデータ2に基づき生成されたレチクル・マスク3を用いて焼き付けを行う際には、元のCADデータ1と同じ倍率となるように縮小して焼き付けが行われる。
【0009】
次に、内部フォーマット変換部7において、CADデータ1やレチクル精度情報4、処理パラメータ5、および装置グリッド情報算出部6により算出されたグリッド情報の中から必要なものを、データ処理装置200の内部フォーマットに従ったデータ8に変換する。さらに、論理演算処理部9において、上記変換された内部フォーマットデータ8に対して論理演算を行うことにより、処理パラメータ5で示される層合成、サイジング、拡大等の処理を実行し、これによって演算処理済内部フォーマットデータ10を生成する。
【0010】
そして、フォーマット変換/出力部11において、上記のように生成された演算処理済内部フォーマットデータ10を露光用のデータにフォーマット変換して出力することにより、レチクル・マスクデータ2を生成する。このようにして生成されたレチクル・マスクデータ2は、グリッド情報の基準寸法に基づき微細化された回路パターンデータである。このパターンデータの基準寸法の相違によって、露光する際などのプロセス技術が異なってくる。
【0011】
なお、上記データ処理装置200で生成するレチクル・マスクデータ2は、上述のような露光データの他に、検査データや検証データを含む。検査データは、露光データに基づいて基板上に形成された回路パターンがきちんとパターニングされているかどうかを検査するためのレイアウトデータであり、露光データと同様の手順に従って生成される。また、検証データは、基板上に焼き付けを行う前の段階で、生成されたレチクル・マスクデータ2がきちんとパターニングされているかどうかをデータ上で検証するためのレイアウトデータであり、これも露光データと同様の手順に従って生成される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
近年におけるLSIの開発は、CADツールの発達により、一層大規模になるとともに、開発期間の短縮が要求されてきている。それに伴い、品質の高いLSIを早くかつ大量に市場へ投入することが要求されてきている。そのため、チップを製造するための基となる高精度なレチクル・マスクを短時間で製造し、かつ、レチクル検査データや検証データの作成時間も短縮する必要が生じてきた。
【0013】
しかしながら、従来のレチクル・マスクデータ生成手法においては、マスク設計ルールに従って、許容される最小の実寸法でグリッド情報が生成される。よって、製造しようとする半導体チップ内にグリッドの精度をそれほど必要としない回路パターンがあっても、一律に細かい精度(小さい基準寸法)でグリッド情報が生成されてしまう。
【0014】
そのため、そのグリッド情報を用いてレチクル・マスクデータを生成する際の処理時間が長くなってしまうとともに、生成されたレチクル・マスクデータに基づいて実際に露光、焼き付け、比較検査、データ検証を行う際のプロセス処理時間も長くなってしまうという問題があった。
【0015】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、レチクル・マスクデータの生成時間、および生成されたレチクル・マスクに基づく露光、焼き付け、比較検査、データ検証の各プロセスの処理時間を短縮できるようにすることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明においては、設計データにより示される回路パターンの各レイヤ毎に最小グリッドと回路要素の存在領域とを求めるとともに、当該存在領域どうしの重なり領域を求め、その結果から、上記重なり領域を有する各レイヤを1つの共通グリッドに従って処理するか、異なるグリッドに従って各々処理するかを選択し、各レイヤ毎にグリッドを求めるようにしている。
【0017】
上記のように構成した本発明によれば、それぞれのレイヤに対してそのレイヤで最低限必要な精度のグリッドを割り当てることが可能となり、それほど細かい精度のグリッドが必要でない部分については必要以上に細かい精度のグリッドを使用しなくても済むようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の実施形態によるデータ処理装置の構成を示すブロック図、図2は、図1中の分析・分類部による動作を説明するための図である。以下、この図1および図2を参照しながら第1の実施形態を説明する。
【0019】
図1において、CADデータ1は、製造する半導体装置等の回路レイアウトをシンボリックに表した設計データである。また、レチクル精度情報4は、CADデータ1をもとに生成されるレチクル・マスクによってウェハ上に焼き付けを行う際の誤差の許容範囲を示す情報である。また、処理パラメータ5は、上述した層合成情報、サイジング情報、スケール情報などの各情報を含む。
【0020】
本実施形態のデータ処理装置100は、CADデータ1、レチクル精度情報4および処理パラメータ5に基づいて、ウェハを作る原版となるレイアウトパターンを表したレチクル・マスクデータを生成する。ここで生成するレチクル・マスクデータは、露光データ、検査データ、検証データである。
【0021】
上記データ処理装置100内の構成において、データ入力部21は、上述のCADデータ1、レチクル精度情報4および処理パラメータ5をデータ処理装置100内に入力するものであり、例えばコンピュータ端末のキーボードやマウス等の入力デバイスを備える。内部フォーマット変換部22は、入力されたCADデータ1やレチクル精度情報4、処理パラメータ5を、データ処理装置100の内部フォーマットに従ったデータに変換する。
【0022】
分析・分類部23は、本実施形態の最も特徴的な部分であり、上記CADデータ1で表される回路レイアウトや、上記レチクル精度情報4、処理パラメータ5で表されるマスク設計ルール等を分析して、最適なグリッド情報を算出する。以下に、この分析・分類部23の構成および動作を、具体例を用いて図2を参照しながら説明する。
【0023】
ここでは、CADデータ1により表される半導体チップの回路パターンが、図3のようになっているものとする。図3の例では、チップ内の各回路要素は処理パラメータ5の層合成情報によって4つのレイヤA〜Dに分けられている。すなわち、2つの回路要素41,42はレイヤAに属し、2つの回路要素43,44はレイヤBに属し、2つの回路要素45,46はレイヤCに属し、1つの回路要素47はレイヤDに属する。
【0024】
図1に示す分析・分類部23内のグリッド・パターン領域算出部24は、本発明の第1の演算手段に相当し、CADデータ1により示される図3のような回路パターンの各レイヤ毎に最小のグリッドを図形座標から算出するとともに、データ(回路要素)が存在する最小の矩形領域を各レイヤ毎に算出する。すなわち、ここでは、グリッド情報の基準寸法で細分化されるマトリクスの格子点上に回路要素のエッジが全て乗るためにはどれだけ細かいグリッドが必要かをレイヤ毎に算出するとともに、レイヤ内の各回路要素を含む矩形の最小領域(以下、存在領域と称する)の位置と大きさをレイヤ毎に算出する。
【0025】
図3に示す各レイヤA〜Dの存在領域は、48〜51の符号を付して示してある。また、これらの各レイヤA〜D毎に算出された最小グリッドおよび存在領域の大きさは、図2(a)および(b)に示してある。この例では、レイヤA〜Dの最小グリッドはその基準寸法がそれぞれ0.01μm、0.02μm、0.05μm、0.1 μm、存在領域の面積はそれぞれ6μm2 、10μm2 、2μm2 、2μm2 との算出結果が得られている。
【0026】
重なり領域算出部25は、本発明の第2の演算手段に相当し、上記グリッド・パターン領域算出部24で求められた各レイヤの存在領域の座標から、存在領域どうしの重なり領域の大きさを算出する。今の例では、図4に示すように、レイヤAの存在領域48とレイヤBの存在領域49との間に重なり領域Wが存在し、レイヤBの存在領域49とレイヤCの存在領域50との間に重なり領域Zが存在する。これらの重なり領域W,Zの大きさの算出結果は、図2(c)に示してある。この例では、重なり領域Wの面積は5μm2 、重なり領域Zの面積は1μm2 との算出結果が得られている。
【0027】
合成/分割最適化判断部26は、本発明の最適化判断手段に相当し、上記重なり領域算出部25で求められた重なり領域W,Zを有する各レイヤ(レイヤAとレイヤB、レイヤBとレイヤC)について、各レイヤを合成して1つのグリッド情報に従って処理する場合と、各レイヤを分割して異なるグリッド情報に従って各々処理する場合との何れが最適となるかをそれぞれの重なり領域毎に判断する。
【0028】
すなわち、生成されるレチクル・マスクに従って露光を行う場合、露光装置はチップの左端から横方向への走査を上から順次下方へと繰り返していくが、露光装置の特性上、1つの行内では露光の精度(グリッド精度)を切り換えることはできない。そのため、例えば重なり領域Wを有する2つのレイヤA,Bを露光する際に、それらをレイヤA,Bに対して共通に適用可能なグリッド情報に従って1回で露光する方が良いのか、レイヤA,Bについて算出されるそれぞれのグリッド情報に従って2回に渡って露光する方が良いのかを判断する必要がある。
【0029】
以下に、この合成/分割最適化判断部26による最適化判断の手法を、図2(d)〜(f)を参照しながら説明する。合成/分割最適化判断部26では、まず最初に、各レイヤA〜Dの存在領域の露光ピクセル数を算出する。これは、グリッド・パターン領域算出部24で求められた存在領域の大きさ(図2(b)参照)を、同じくグリッド・パターン領域算出部24で求められたグリッドの基準寸法(図2(a)参照)で割ることによって求まる。
【0030】
この露光ピクセル数の算出結果は、図2(d)に示してある。この例では、グリッド・パターン領域算出部24により各レイヤ毎に求められた最小グリッドだけでなく、そのレイヤに適用可能な他のグリッドについても、それを割り当てた場合の露光ピクセル数を算出している。例えば、レイヤAについては0.01μmのグリッドのみを適用可能であり、そのグリッドを割り当てた場合の露光ピクセル数が算出されている。また、レイヤBについては0.01μmのグリッドと0.02μmのグリッドが適用可能であり、それらのグリッドを割り当てた場合の露光ピクセル数が各々算出されている。他のレイヤC,Dについても同様である。
【0031】
次に、合成/分割最適化判断部26は、各レイヤA〜Dを適宜2つ組み合わせた場合(重なり領域が生じた場合)に共通に適用可能な最大グリッドを算出する。この算出結果は、図2(e)に示してある。この例では、レイヤAと他のレイヤB〜Dの何れか1つとを組み合わせた場合には、共通に適用可能な最大グリッドは何れも0.01μm、レイヤBとレイヤCとを組み合わせた場合には0.01μm、レイヤBとレイヤDとを組み合わせた場合には0.02μm、レイヤCとレイヤDとを組み合わせた場合には0.05μmとの算出結果が得られている。
【0032】
さらに、合成/分割最適化判断部26は、各レイヤA〜Dにおいて許容可能なグリッドを検出する。この許容可能グリッドの検出結果は、図2(f)に示してある。例えば、レイヤAについては、上記グリッド・パターン領域算出部24で求められた最小グリッドが0.01μmであり、これより細かいグリッドは存在しないため、許容可能なグリッドは0.01μmのみである。また、レイヤBについては、上記グリッド・パターン領域算出部24で求められた最小グリッドが0.02μmであるため、許容可能なグリッドは、当該0.02μmとそれより細かい公約数の0.01μmである。
【0033】
また、レイヤCについては、上記グリッド・パターン領域算出部24で求められた最小グリッドが0.05μmであるため、許容可能なグリッドは、当該0.05μmとその公約数である0.01μmである。また、レイヤDについては、上記グリッド・パターン領域算出部24で求められた最小グリッドが0.1 μmであるため、許容可能なグリッドは0.01μm、0.02μm、0.05μm、0.1 μmの全てである。
【0034】
合成/分割最適化判断部26は、上記図2(d)〜(f)に示す結果に基づいて、存在領域が重複している2つのレイヤ(レイヤAとレイヤB、レイヤBとレイヤC)について、それぞれを共通のグリッドで処理する場合と、個別のグリッドで処理する場合とのどちらの方が処理ピクセル数が少なくなるかを確認する。以下に、このことをレイヤA,Bの重なり領域Wを例にとって説明する。
【0035】
まず、レイヤAとレイヤBの重なり領域Wについて、両者の最大公約となるグリッドを用いた場合のピクセル数を算出する。図2(a)に示したように、レイヤAの最小グリッドは0.01μm、レイヤBの最小グリッドは0.02μmであるから、最大公約のグリッドは0.01μmである。また、図2(c)に示したように、重なり領域Wの面積は5μm2 であるから、この場合のピクセル数は、
5÷0.01=500ピクセル
である。
【0036】
また、レイヤA,Bをそれぞれ独自のグリッドで処理する場合と、レイヤA,Bを共通のグリッドで処理することとした場合とのピクセル数の差分(グリッド変更によるピクセル数の差分)を算出する。今の例の場合、レイヤA,Bに共通のグリッドは0.01μmであり、これはレイヤAの最小グリッドそのものであるから、レイヤAについてはグリッド変更がない。一方、レイヤBの最小グリッドは0.02μmでグリッド変更があるので、レイヤBにおけるピクセル数の差分のみを算出することになる。
【0037】
すなわち、レイヤBの面積は10μm2 であるから、このレイヤBを0.01μmの共通グリッドで処理した場合のピクセル数は、
10÷0.01=1000ピクセル
である。一方、レイヤBを0.02μmの独自の最小グリッドで処理した場合のピクセル数は、
10÷0.02=500ピクセル
である。したがって、両者の差分は500ピクセルとなる。
【0038】
合成/分割最適化判断部26は、上記のように算出した共通グリッドによる重なり領域Wのピクセル数と、グリッド変更によるピクセル数の差分とに基づいて、以下の1)〜3)に示すような判断基準に従って各レイヤA,Bを共通のグリッドで処理するのが良いか、各レイヤA,Bをそれぞれ個別のグリッドで処理するのが良いかを判断する。
【0039】
1)重なり領域のピクセル数>グリッド変更によるピクセル数の差分
→レイヤA,Bを組み合わせて共通グリッドで処理
2)重なり領域のピクセル数<グリッド変更によるピクセル数の差分
→レイヤA,Bを組み合わせず固別のグリッドで処理
3)重なり領域のピクセル数=グリッド変更によるピクセル数の差分
→どちらでも良い
【0040】
上述の例では、重なり領域のピクセル数、グリッド変更によるピクセル数の差分は何れも500ピクセルであるため、上記3)の場合に該当し、各レイヤA,Bを共通のグリッドで処理してもそれぞれ個別のグリッドで処理しても良いこととなる。なお、個別のグリッドで2回に渡って露光するより共通のグリッドにより1回で露光する方が効率的なので、共通のグリッドを採用するのが好ましい。今の例では、共通のグリッドで処理することを選択する。
【0041】
以上のような重なり領域を有する各レイヤを組み合わせるか分割するかの最適化判断を、レイヤB,Cの重なり領域Zについても同様に行う。この重なり領域Zについては、両者の最大公約となるグリッドを用いた場合のピクセル数は、
1÷0.01=100ピクセル
である。
【0042】
また、グリッド変更によるピクセル数の差分を算出する場合、レイヤB,Cに共通のグリッドは0.01μmであり、レイヤB,Cの最小グリッドはそれぞれ0.02μm、0.05μmであるので、レイヤB,Cは共にグリッド変更がある。よって、この場合はレイヤB,Cにおけるピクセル数の差分を算出することになる。
【0043】
レイヤBについてのグリッド変更によるピクセル数の差分は、上述したのと同様に500ピクセルとなる。また、レイヤCの面積は2μm2 であるから、このレイヤCを0.01μmの共通グリッドで処理した場合のピクセル数は、
2÷0.01=200ピクセル
である。一方、レイヤCを0.05μmの独自の最小グリッドで処理した場合のピクセル数は、
2÷0.05=40ピクセル
である。したがって、両者の差分は160ピクセルとなる。よって、レイヤB,Cにおけるグリッド変更によるピクセル数の差分は、660ピクセルである。
【0044】
この場合、重なり領域のピクセル数は100ピクセル、グリッド変更によるピクセル数の差分は660ピクセルであるため、上記2)の条件に合致し、各レイヤB,Cをそれぞれ個別のグリッドで処理する方が効率的となる。よって、この場合は、レイヤB,Cを個別のグリッドで処理することを選択する。以上のような処理により、図1に示した合成/分割最適化判断部26による重なり領域毎の最適化判断が終了する。
【0045】
最短スループット算出部27は、本発明の第3の演算手段に相当し、上記合成/分割最適化判断部26による最適化判断の結果と、図2(f)に示す許容可能なグリッドの検出結果とに基づいて、図2(g)に示すようなレイヤ組合せ表を作り、どの組合せの場合にスループットが最短になるかを算出する。
【0046】
すなわち、各レイヤA〜Dの重なり領域が複雑でない場合、例えば重なり領域がWもしくはZの1ヵ所だけのような場合は、合成/分割最適化判断部26で決定されたグリッドがそのまま最短スループットを実現する最適なグリッドとなる。しかし、今の例のように、重なり領域がW,Zの2ヵ所にあり、レイヤBがレイヤAだけでなくレイヤCとも重なっている場合、レイヤBのグリッドを最終的にはどのようにすれば良いのかを更に検討する必要がある。
【0047】
そこで、最短スループット算出部27は、上記合成/分割最適化判断部26による最適化判断の結果を生かしながら、図2(g)に示すようなレイヤ組合せ表を作る。すなわち、レイヤAとレイヤBに関しては、両者を組み合わせて0.01μmの共通グリッドを使用するのが良いとの最適化判断結果をそのまま生かしている(☆印)。
【0048】
また、レイヤBとレイヤCに関しては、両者を組み合わせずに個別のグリッドを使用するのが良いとの最適化判断結果が得られているので、レイヤCのグリッドに0.05μmの最小グリッドを使用するものとしている(左半分の×印)。このとき、レイヤCの相手であるレイヤBがその最小グリッド(0.02μm)に設定されていれば良いが、今の例ではレイヤAとの関係から0.01μmに設定されているので、このレイヤCに関しては念のために、他の許容可能なグリッドとして0.01μmのグリッドも考慮に入れている(右半分の☆印)。
【0049】
また、残りのレイヤDに関しては、他のレイヤとの重なり領域は存在しないため、図2(f)で示される許容可能なグリッドの組合せを全て考慮に入れて表を作っている。
最短スループット算出部27は、このようにして作成したレイヤ組合せ表に基づいて、各レイヤA〜Dのピクセル数の合計をそれぞれの組合せ毎に算出する。算出された総ピクセル数は、図2(g)の最下段に示してある。
【0050】
次に、最適化処理パターン群出力部28は、上記最短スループット算出部27により算出された最短スループットの処理パターンの組合せ、すなわち、各レイヤA〜Dの総ピクセル数が最小となるグリッドの組合せを、最適な処理パターンとして出力する。このとき、異なるグリッドによる処理パターンは、それぞれ異なるファイルとして出力する。今の例の場合、図2(g)の一番左に示したグリッドの組合せが最短スループットを実現するものなので、レイヤA,Bの共通グリッド(0.01μm)、レイヤCの最小グリッド(0.05μm)、レイヤDの最小グリッド(0.1 μm)の3つの処理パターンを最適化済内部フォーマット群29a〜29cとして出力する。
【0051】
なお、これまで述べた分析・分類部23の動作として、説明を分かりやすくするために図2(a)〜(g)のような表を用いたが、同様の処理を内部で行っていれば、分析・分類部23の実際のデータ処理において必ずしもこのような表自体を作成する必要はない。
【0052】
論理演算処理部30は、このように出力された最適化済内部フォーマット群29a〜29cに対して論理演算を行うことにより、処理パラメータ5で示される層合成、サイジング、拡大等の処理を実行し、これによって演算処理済内部フォーマット群31a〜31cを生成する。さらに、フォーマット変換/出力部32は、上記のように生成された演算処理済内部フォーマット群31a〜31cを露光用、検査用あるいは検証用のデータにフォーマット変換して出力することにより、レチクル・マスクデータである最適化済出力データ群33a〜33cを生成する。
【0053】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、CADデータ1により示される回路パターンの各レイヤ毎に最小グリッドと存在領域の重なり領域とを求め、その結果から各レイヤの総ピクセル数が最小となるように各レイヤ毎にグリッドを求めるようにしたので、細かい精度が必要でない部分については比較的粗い精度のグリッドを割り当てることができる。
【0054】
したがって、このようにして各レイヤ毎にグリッド情報が割り当てられた内部フォーマットデータに対して論理演算を行う際に、演算の負荷を従来と比べて軽減することができ、レチクル・マスクデータ(露光データ、検査データ、検証データ)の生成時間を短縮することができる。さらに、実際に露光、焼き付け、比較検査、データ検証を行う際にも、各レイヤを一律に細かい精度のグリッドで処理していた従来例に比べて、処理負担を大幅に軽減することができ、各プロセスにかかる時間を短縮することができる。以上のことから、半導体装置等のLSI製造期間を大幅に短縮することができるようになる。
【0055】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図5は、第2の実施形態によるデータ処理装置の構成を示すブロック図であり、図1に示したブロックと同じブロックには同一の符号を付している。上記第1の実施形態では、各レイヤ毎にグリッド情報を最適化した後に層合成、サイジング、拡大等の論理演算を行っていたのに対し、第2の実施形態では、グリッド情報の最適化を行う前に論理演算を実行する。
【0056】
すなわち、図5に示すように、データ入力部21により入力されたCADデータ1やレチクル精度情報4、処理パラメータ5に対して、論理演算処理部61にて論理演算を実行し、演算処理済の内部フォーマットデータ62を生成する。分析・分類部23は、この内部フォーマットデータ62に対して、図2〜図4を用いて説明したのと同様の処理を行う。また、フォーマット変換/出力部32は、分析・分類部23により生成された最適化済内部フォーマット群29a〜29cを露光用、検査用あるいは検証用のデータにフォーマット変換して出力する。
【0057】
このように構成した第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に細かい精度が必要でない部分については比較的粗い精度のグリッドを割り当てることができる。また、論理演算を行う際には、グリッド情報がまだ算出されていない状態であるので、CADによるシンボリックなレイアウトレベルで論理演算を行うことができ、演算負荷を軽減してレチクル・マスクデータの生成時間を短縮することができる。
【0058】
さらに、実際に露光、焼き付け、比較検査、データ検証を行う際にも、各レイヤを一律に細かい精度のグリッドで処理していた従来例に比べて、処理負担を大幅に軽減することができ、各プロセスにかかる時間を短縮することができる。
以上のことから、半導体装置等のLSI製造期間を大幅に短縮することができるようになる。
【0059】
なお、以上に説明した本実施形態のデータ処理装置は、コンピュータのCPUあるいはMPU、RAM、ROMなどで構成されるものであり、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。したがって、コンピュータが上記機能を果たすように動作させるプログラムを、例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、コンピュータに読み込ませることによって実現できるものである。上記プログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM以外に、フロッピーディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。
【0060】
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合や、供給されたプログラムの処理の全てあるいは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて上述の実施形態の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明の実施形態に含まれる。
【0061】
なお、以上に説明した各実施形態によるグリッド情報の最適化判断処理は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0062】
【発明の効果】
本発明は上述したように、設計データにより示される回路パターンの各レイヤ毎に最小グリッドと回路要素の存在領域とを求めるとともに、当該存在領域どうしの重なり領域を求め、その結果から、上記重なり領域を有する各レイヤを1つの共通グリッドに従って処理するか、異なるグリッドに従って各々処理するかを選択し、各レイヤ毎にグリッドを求めるようにしたので、それぞれのレイヤに対してそのレイヤで最低限必要な精度のグリッドを割り当てることが可能となり、必要以上に細かい精度のグリッド情報を使用しなくても済むようになる。すなわち、細かい精度が必要でない部分については比較的粗い精度のグリッドを割り当てることができ、レチクル・マスクデータ(露光データ、検査データ、検証データ)を生成する際の演算負荷や、実際に露光、焼き付け、比較検査、データ検証を行う際の処理負荷を大幅に軽減することができる。したがって、半導体装置等のLSI製造期間を大幅に短縮することができ、納期遵守率を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態によるデータ処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中に示した分析・分類部による動作を説明するための図であり、(a)は最小グリッドの算出、(b)は存在領域の算出、(c)は重なり領域の算出、(d)は露光ピクセル数の算出、(e)は組合せグリッドの算出、(f)は許容可能グリッドの検出、(g)は最短スループットの算出をそれぞれ説明するための図である。
【図3】CADデータによる回路レイアウトの例を示す図である。
【図4】各レイヤの存在領域および重なり領域の例を示す図である。
【図5】第2の実施形態によるデータ処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来のデータ処理装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 CADデータ(設計データ)
2 レチクル・マスクデータ
3 レチクル・マスク
4 レチクル精度情報
5 処理パラメータ
21 データ入力部
22 内部フォーマット変換部
23 分析・分類部
24 グリッド・パターン領域算出部(第1の演算手段)
25 重なり領域算出部(第2の演算手段)
26 合成/分割最適化判断部(最適化判断手段)
27 最短スループット算出部(第3の演算手段)
28 最適化処理パターン群出力部
29a〜29c 最適化済内部フォーマット群
30 論理演算処理部
31a〜31c 演算処理済内部フォーマット群
32 フォーマット変換/出力部
33a〜33c 最適化済出力データ群
61 論理演算処理部
62 演算処理済内部フォーマットデータ
100 データ処理装置

Claims (7)

  1. レチクル・マスクデータを設計データより生成する方法であって、
    上記設計データにより示される回路パターンの各レイヤ毎に最小グリッドと回路要素の存在領域とを求めるとともに、当該存在領域どうしの重なり領域を求め、その結果から、上記重なり領域を有する各レイヤを1つの共通グリッドに従って処理するか、異なるグリッドに従って各々処理するかを選択し、各レイヤ毎にグリッドを求めるようにしたことを特徴とするデータ処理方法。
  2. 上記各レイヤ毎に求められたグリッドに基づき上記設計データから生成した最適化済データに対して、処理パラメータに基づく論理演算処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  3. 上記設計データに対して処理パラメータに基づく論理演算処理を行ったデータに対して、上記最小グリッド、存在領域および重なり領域の算出処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  4. 上記重なり領域を有する各レイヤについて求められた最小グリッドの最大公約となるグリッドを用いて上記重なり領域のピクセル数を求めるとともに、上記各レイヤをそれぞれ独自の最小グリッドで処理する場合と、上記各レイヤを上記最大公約となるグリッドで処理する場合とのピクセル数の差分を求め、上記重なり領域のピクセル数と上記ピクセル数の差分とを比較することにより、上記重なり領域を有する各レイヤを1つの共通グリッドに従って処理するか、異なるグリッドに従って各々処理するかを選択することを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  5. 上記重なり領域が複数存在する場合に、それぞれの重なり領域毎に共通グリッドまたは異なるグリッドの何れを使用するかについて選択された結果と、各レイヤについて許容可能なグリッドとに基づいて、全レイヤの総ピクセル数が最小となるように各レイヤのグリッドを求めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理方法。
  6. レチクル・マスクデータを設計データより生成するデータ処理装置であって、
    上記設計データにより示される回路パターンの各レイヤ毎に最小グリッドおよび回路要素の存在領域を算出する第1の演算手段と、
    上記存在領域どうしの重なり領域を算出する第2の演算手段と、
    上記第2の演算手段で求められた重なり領域を有する各レイヤを1つの共通グリッドに従って処理するか、異なるグリッドに従って各々処理するかを判断基準に従って選択する最適化判断手段とを備えたことを特徴とするデータ処理装置。
  7. 設計データにより示される回路パターンの各レイヤ毎に最小グリッドと回路要素の存在領域とを求めるとともに、当該存在領域どうしの重なり領域を求める手順と、
    上記求めた最小グリッド、存在領域および重なり領域に基づいて、上記重なり領域を有する各レイヤを1つの共通グリッドに従って処理するか、異なるグリッドに従って各々処理するかを選択する手順と、
    上記選択した結果に基づいて各レイヤ毎にグリッドを求める手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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