JP3830265B2 - 振動波アクチュエータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステータに発生した振動波によってロータやスライダ等の移動子を駆動する振動波アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の振動波アクチュエータの構造を図1に示す。振動波アクチュエータ1にあっては、4個のステータ2,2,3,3を略球面状をしたロータ4の最大外周円に沿って配置し、これらのステータ2,2,3,3によって合成樹脂製のロータ4を支持している。各ステータ2,2,3,3は、図2(a)(b)に示すように、金属等の弾性材料によって形成された皿状のステータ本体5の裏面にPZT等の圧電素子7を接合したものである。ステータ本体5の外周部には、円環状をした弾性部材10が設けられており、弾性部材10の表面には多数の接触子6が一定ピッチ毎に突設され、各接触子6間はスリット9によって分離されている。圧電素子7は弾性部材10の裏面に接合されている。ステータ2,2,3,3は、接触子6をロータ4と接触させるようにしてロータ4を支持しており、そのため接触子6の表面(接触駆動面8)にはロータ4の半径と同一の曲率半径を有する凹状のアールが施されている。
【0003】
しかして、ステータ2,2,3,3は超音波モータの原理によってロータ4を駆動するものであって、圧電素子7を振動させることによって弾性部材10の接触子6の接触駆動面8にたわみ振動や伸縮振動等の表面波振動を発生させるものである。各ステータ2,2,3,3は、ばね(図示せず)の弾性力によってロータ4に圧接しているので、ステータ2,2,3,3が駆動されていない場合には、ロータ4は回転できない。しかし、圧電素子7を所定の駆動モードで駆動すると、接触駆動面8で円周方向に進む進行波(たわみ進行波)により接触子6の表面の分子が楕円軌道を描いて運動し、ロータ4の表面がステータ2,2,3,3の円周方向に沿って移動する。この結果、ロータ4は駆動されているステータ2,2,3,3の軸心の回りに回転する。なお、進行波を発生させないステータ2,2,3,3には定在波を発生させてロータ4との摩擦を軽減する。
【0004】
また、図示しないが、振動波アクチュエータとしては、円板状のロータを1個のステータ上に接触配置し、ステータによってロータを回転させるようにした1自由度のものも知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような摩擦駆動の振動波アクチュエータでは、ロータから出力される出力パワーを向上させるためには、金属等の弾性体よりなるステータの接触駆動面と合成樹脂等で形成されたロータの表面との接触を均一にし、かつ広い面積で密着させることが非常に重要である。
【0006】
しかしながら、一方では、ステータを駆動して接触駆動面に進行波を励起させても、ロータが駆動しないという現象が確認されている。これは、ロータとステータの接触駆動面との密着によって摩擦抵抗が増大するためである。これを解決する方法としては、ステータの接触駆動面を狭くして密着面積を小さくすることが提案されている(特開昭63−136984号公報)。
【0007】
従って、従来にあっては、出力を高くするためにロータとステータの密着面積を大きくすると、摩擦が増大してロータを駆動できなくなり、摩擦抵抗を低減するために密着面積を小さくすると、振動波アクチュエータの出力が低下するという相反する問題があり、出力を向上させ、かつ、安定駆動させることは不可能であった。
【0008】
特に、球面体のロータを駆動する振動波アクチュエータの場合には、ロータを回転駆動していると、摩擦熱によってロータが熱膨張するので、出力が著しく低下したり、再起動時にロータが回転しないといった現象が生じている。これは、接触面がロータの凸湾曲面(表面)とステータの凹湾曲面(接触駆動面)で構成されるため、駆動による発熱でロータが膨張すると、ロータがステータの接触駆動面に食い込むためである。従って、ステータとロータの押し付け圧を大きくできず、出力トルクを効率的に取り出すことができなかった。あるいは、押し付け圧を大きくすると、ロータを再起動できなくなっていた。しかも、この再起動しないという現象は、ステータの接触駆動面の幅を狭くすることだけでは回避できないことが実験により確認されている。
【0009】
本発明は上記の従来例の欠点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロータ等の移動子を確実に起動させることができ、しかも大きな出力トルクを得ることができる振動波アクチュエータを提供することにある。
【0010】
【発明の開示】
本発明の振動波アクチュエータは、ステータの接触駆動面に移動子を接触させ、ステータに発生させた微少振動波で移動子を駆動する振動波アクチュエータであって、前記ステータと前記移動子との接触位置を通過し、かつ前記接触駆動面に発生する振動波の励起方向と垂直な断面において、前記接触駆動面と前記移動子表面とが、ほぼ相似形状の円弧又は楕円弧形状で、かつ同一形状でないことを特徴としている。ここで、接触駆動面と接触子表面とがほぼ相似形状であるとは、例えば、一方が真円弧で他方が楕円弧の場合を含む意味である。
【0011】
本発明の振動波アクチュエータにあっては、接触駆動面と移動子表面とが同一形状ではないが、ほぼ相似形状の円弧又は楕円弧形状となっているので、移動子が駆動されていない場合には、ステータの接触駆動面と移動子との接触幅が狭く、静止摩擦が小さくなっている。従って、振動波アクチュエータの起動トルクが小さくて済み、移動子の起動や再起動を確実に行わせることができる。一方、振動波アクチュエータの駆動中においては、励起された振動波のために、ステータの接触駆動面には数ミクロンの起伏が発生し、ステータの接触駆動面と移動子の接触幅は広がっている。従って、振動波アクチュエータの駆動中においては、ステータの接触駆動面と移動子の間の摩擦抵抗が大きくなり、出力を増大させることができる。
【0012】
本発明の適用にあたっては、移動子の曲率半径をステータの接触駆動面の曲率半径よりも小さくする場合が多いが、特に、移動子が球面体の場合には、ステータの接触駆動面の曲率半径に対する、移動子表面の曲率半径の比率を0.7以上1未満とするのが望ましい。ステータの接触駆動面の曲率半径に対する、移動子表面の曲率半径の比率を0.7よりも小さくすると、振動波アクチュエータの駆動中においても、ステータの接触駆動面とロータの接触面の幅が小さく、充分な出力が得られないからである。
【0013】
【発明の実施の形態】
(実施形態)
図3は本発明の一実施形態による振動波アクチュエータ21を示す正面側からの斜視図、図4はその断面図である。振動波アクチュエータ21は、ケーシング22内に取り付けられた4個のステータ23,23,24,24で球面状をした合成樹脂製のロータ25を保持した構造となっている。
【0014】
微小振動を発生する4個のステータ23,23,24,24は、ケーシング22内に取り付けられ、ロータ25の最大外周円に沿って配置されている。対向するステータ23,23又は24,24のうち、一方のステータ23,24はケーシング22内に板バネ26を介して取り付けられており、他方のステータ23,24は皿バネ27とバネ押さえ28を介してケーシング22内に取り付けられており、板バネ26と皿バネ27の弾性力によって両ステータ23,23,24,24をロータ25に押圧させると共に、調整ネジ29によってバネ押さえ28を動かすことで皿バネ27の弾性力を変化させ、ステータ23,23,24,24のロータ25への圧接力を調整できるようにしている。また、ステータ23,23,24,24及びロータ25等をケーシング22内に組み込んだ後、ケーシング22の正面及び背面にそれぞれカバー30,31を取り付けることによってロータ25等の脱落を防止している。正面のカバー29の窓からは、ロータ25と出力軸32等が露出している。なお、33は各ステータ23,23,24,24を駆動するための信号線を通すための孔である。
【0015】
図5は各ステータ23,24の形状を示す斜視図である。ステータ23,24は、金属等の弾性材料によって形成されたステータ本体34の裏面にPZT等の圧電素子35を接合したものである。ステータ本体34は、円環状をした弾性部材36の表面に多数の接触子37を一定ピッチ毎に突設したものであって、各接触子37間はスリット38によって分離されており、弾性部材36の内周側には、皿状をした支持部材39が連設されている。圧電素子35は接着剤によって弾性部材36の裏面に接合されている。各接触子37は略台形板状となっているが、その内周側に位置する面は球面状に加工された接触駆動面40となっている。
【0016】
さらに、このステータ23,24においては、図6に示すように、接触駆動面40の曲率半径Rが、球面状をしたロータ25の半径rよりもわずかに大きくなっている。具体的には、ロ一夕25の半径をr、ステータ23,24の接触駆動面40の曲率半径をRとするとき、
0.7≦r/R<1
とするのが望ましい。例えば、半径rが22.4mmのロータ25に対しては、ステータ23,24の接触駆動面40の曲率半径Rは22.5mmとする。
【0017】
この振動波アクチュエータ21のように、ステータ23,24の接触駆動面40とロータ25の表面とが、同一ではないが近似した(ほぼ相似な)形状となっていると、ステータ23,24及びロータ25が完全な剛体の場合には、理論上ロータ25とステータ23,24とは線接触することになる。しかし、実際にはステータ23,24及びロータ25は弾性体であるので、押し付け圧によってロータ25及びステータ23,24が弾性変形して面接触となる。しかも、その接触駆動面40は、全面にわたってロータ25と密着することはなく、一部で密着しながらその近傍では軽接触ないし極く近接し、接触駆動面40とロータ25の間の押圧力も最大圧の位置から両側へ向かって徐々に小さくなるように分布する。そして、振動波アクチュエータ21が駆動されておらず、ロータ25が静止している場合には、ステータ23,24の接触駆動面40とロータ25との接触幅が狭く、静止摩擦が小さくなっている。このため、振動波アクチュエータ21の起動トルクが小さくて済み、ロータ25の起動や再起動を確実に行わせることができる。一方、振動波アクチュエータ21が駆動されてロータ25が回転している場合には、接触子37に励起された振動波のため、ステータ23,24の接触駆動面40には数ミクロンの起伏(分子の運動)が発生し、ステータ23,24の接触駆動面40とロータ25の接触幅は広がっている。さらに、駆動中のロータ25の熱膨張によっても接触駆動面40とロータ25の接触幅が広がる。よって、振動波アクチュエータ21の駆動中においては、ステータ23,24の接触駆動面40とロータ25の間の摩擦抵抗が大きくなり、出力を増大させることができる。
【0018】
ただし、r/Rの値は、上記のとおり0.7以上1未満とするのが望ましい。r/Rが0.7未満の場合には、ロ一夕25が、完全にステータ23,24の中心を軸とする円周線上のみで接触駆動面40に線接触することになり、出力が低下するためである。また、r=Rにすると、従来例のようにステータの接触駆動面はロータに全面密着するからである。
【0019】
この結果、本発明の振動波アクチュエータ21にあっては、ロータ25の熱膨張によって駆動出力の低下が起きなくなり、常に安定した起動特性が得られる。さらに、押し付け圧を高めることができるので、出力トルクが一層向上する。しかも、起動特性を改善させるためにアクチュエータ起動時に印加電圧を大きくするなど、特別な制御回路や制御アルゴリズムを必要としない。また、ロ一夕25とステータ23,24の接触駆動面40の曲率が同一の場合に比べ、ロータ25が摩耗した際の接触面積変化が少ないので、振動波アクチュエータ21の寿命が向上する。さらに、駆動時の発生音も減少した。さらに、ロータ製作の際、ロータ25の曲率をステータ23,24の接触駆動面40の曲率に一致させる必要がなく、接触駆動面40の曲率をロータ25の曲率に対して変化させるだけであるので、加工精度が要求されず、コストダウンが可能になる。
【0020】
なお、ここでは、複数のステータにより球面状のロータを回転させる実施例について説明したが、本発明は、1つのステータにより円板状のロータを回転させるようにした振動波アクチュエータにも適用できる。また、直線状のステータに沿ってスライダを移動させるリニア型の振動波アクチュエータにも適用できる。
【0021】
(実験1)
つぎに、実験結果について説明する。サンプル1は、半径22.4mmのロータと、接触駆動面の曲率半径が22.5mmのステータを用い、両者の接触幅(接触駆動面の幅)を1.0566623mmとした振動波アクチュエータ(本発明品)である。サンプル2は、半径22.5mmのロータと、接触駆動面の曲率半径が22.5mmのステータを用い、両者の接触幅(接触駆動面の幅)を1.0566623mmとした振動波アクチュエータ(第1の従来品)である。サンプル3は、半径22.5mmのロータと、接触駆動面の曲率半径が22.5mmのステータを用い、両者の接触幅(接触駆動面の幅)を0.41217441mmとした振動波アクチュエータ(第2の従来品)である。これらのサンプル1〜3を用いて実験を行い、その起動特性、出力の大小、発生音、出力の変化、耐久性を測定した。この結果を表1に示す。ただし、出力の大小は、サンプル2を基準として(この出力の大きさを1とした)測定した。
【0022】
【表1】
【0023】
これより、ロータの半径とステータの接触駆動面の曲率半径を少し異ならせることにより、起動特性、出力、発生音、出力の変化、耐久性等が向上しているのが確認できる。
【0024】
(実験2)
つぎに、各サンプル1〜3について、それぞれの駆動時間と回転数変化率の関係を測定した。この結果を図7に示す。ただし、サンプル1〜3による差異が明確になるよう、この実験では、いずれのサンプルも摩耗の大きな素材で形成したロータを用いた。図7に示す曲線C1はサンプル1(本発明品)の場合、曲線C2はサンプル2又は3(従来品)の場合である。これより、従来品では、当初の回転数の約60%程度まで回転数が低下していたのが、本発明品では、当初の回転数の約94%の低下に抑えることができるのが分かる。
【0025】
なお、ステータの接触駆動面の摩耗状態の観察からは、サンプル1の振動波アクチュエータは、駆動中においては接触駆動面は全体でロータに接触していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の振動波アクチュエータの構造を示す一部破断した正面図である。
【図2】(a)(b)は同上の振動波アクチュエータに用いられているステータの正面図及び断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による振動波アクチュエータの斜視図である。
【図4】同上の振動波アクチュエータの断面図である。
【図5】同上の振動波アクチュエータに用いられているステータの斜視図である。
【図6】同上のステータとロータとの接触状態を説明する図である。
【図7】振動波アクチュエータの駆動時間とロータの回転数の変化との関係を示す図である。
【符号の説明】
23,24 ステータ
25 ロータ
34 ステータ本体
35 圧電素子
36 弾性部材
37 接触子
40 接触駆動面
Claims (3)
- ステータの接触駆動面に移動子を接触させ、ステータに発生させた微少振動波で移動子を駆動する振動波アクチュエータであって、
前記ステータと前記移動子との接触位置を通過し、かつ前記接触駆動面に発生する振動波の励起方向と垂直な断面において、前記接触駆動面と前記移動子表面とが、ほぼ相似形状の円弧又は楕円弧形状で、かつ同一形状でないことを特徴とする振動波アクチュエータ。 - 前記移動子と前記ステータの接触位置において、移動子の曲率半径がステータの曲率半径よりも小さくなっていることを特徴とする、請求項1に記載の振動波アクチュエータ。
- 前記移動子は球面体で、前記ステータの接触駆動面も球面によって構成されており、移動子表面の曲率半径の、ステータの接触駆動面の曲率半径に対する比が0.7以上1未満であることを特徴とする、請求項1に記載の振動波アクチュエータ。
Priority Applications (1)
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JP07311298A JP3830265B2 (ja) | 1998-03-06 | 1998-03-06 | 振動波アクチュエータ |
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JPH11252949A JPH11252949A (ja) | 1999-09-17 |
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JP07311298A Expired - Lifetime JP3830265B2 (ja) | 1998-03-06 | 1998-03-06 | 振動波アクチュエータ |
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Country | Link |
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-
1998
- 1998-03-06 JP JP07311298A patent/JP3830265B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
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JPH11252949A (ja) | 1999-09-17 |
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