JP4333179B2 - 振動アクチュエータの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性体の摺動面の形状を改良した振動アクチュエータ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の振動アクチュエータは、圧電体等の電気機械変換素子の伸縮を利用して、弾性体の駆動面に進行性振動波を発生させ、この進行波によって、駆動面には楕円運動が生じ、楕円運動の波頭に加圧接触した移動体が駆動される(例えば、特許文献1)。
【0003】
弾性体は、断面略矩形の円環形状となっており、電気機械変換素子が接合される反対側の面には、溝が切ってあり、突起部(溝がない箇所)の先端面が駆動面となり、移動子に加圧接触される。この溝を切る理由は、進行波の中立面をできる限り電気機械変換素子側に近づけ、これにより、駆動面の進行波の振幅を増幅させるためである。
【0004】
このような振動アクチュエータは、低回転でも高トルクを有するという特徴があるため、駆動装置に搭載した場合に、その駆動装置のギアを省略することができるので、ギア騒音をなくしたり、位置決め精度が向上できる、という利点がある。
【0005】
一方、振動体の突起体の四隅稜線部を円弧形状部とした超音波モータが提案されている(例えば、特許文献2)。
また、振動体の突部のエッヂ部を面取りした振動波モータも提案されている(例えば、特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】
特公平1−17354号公報
【特許文献2】
特開平8−47270号公報
【特許文献3】
特許第2563325号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の振動アクチュエータは、駆動時に弾性体の突起部の角部が移動体に接触し、その移動体の接触面又は弾性体の角部を、損傷させる可能性があった[図6(B)参照]。
【0008】
また、突起部の角部にR面取り部を設けても、そのRが小さい場合には、移動体の接触面又は弾性体のR面取り部を傷めてしまう。
【0009】
一方、突起部のある弾性体は、駆動面を研磨したり、R面取り部を形成する場合に、精度よく加工しなければならず、生産性が悪かった。
【0010】
本発明の課題は、耐久性に優れ、エージング時間が短くなり、コストが下がり、しかも、異音の発生を抑えられると共に、生産性がよい振動アクチュエータ及びその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、駆動信号により励振される電気機械変換素子が接合され、前記励振により先端面に進行性振動波が発生する複数の突起部を有する円環型の弾性体を加工する振動アクチュエータの製造方法であって、前記複数の突起部の先端面に、研磨板を接触させて所定の加圧力で押し付けて、前記電気機械変換素子に前記駆動信号を印加して前記複数の突起部に進行性振動波を発生させながら、前記複数の突起部の先端を研磨して、前記先端面を連続した滑らかな面にする研磨工程を備えること、を特徴とする振動アクチュエータの製造方法である。
【0012】
請求項の発明は、請求項に記載の振動アクチュエータの製造方法であって、前記研磨工程では、前記振動アクチュエータの駆動時よりも大きい振動振幅を前記弾性体に発生させること、を特徴とする振動アクチュエータの製造方法である。
【0013】
請求項の発明は、請求項1または請求項2に記載の振動アクチュエータの製造方法であって、前記研磨工程は、前記先端面を半径方向から見て略円弧形状の面に研磨すること、を特徴とする振動アクチュエータの製造方法である。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3に記載の振動アクチュエータの製造方法であって、前記研磨工程では、前記先端面の前記略円弧の半径を、前記突起部の周方向の幅の半分以上とすること、を特徴とする振動アクチュエータの製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面等を参照して、本発明の実施の形態をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による振動アクチュエータの実施形態を示す斜視図である。
この振動アクチュエータ10は、圧電体11と、弾性体12と、移動体13と、フレキシブルプリント基板14と、振動吸収材15と、支持体16等とから構成されている。
圧電体11は、ピエゾ素子等の電気機械変換素子の1つであって駆動信号の供給により励振されるものであり、フェルト等の振動吸収材15を介して、カメラのレンズ鏡筒等の支持体16に固定されている。
弾性体12は、導電性を有する接着剤等により圧電体11と接着され、圧電体11の励振により進行性振動波を発生させるものである。弾性体12は、ステンレス材料,インバー材料等の鉄合金から形成される。
移動体13は、弾性体12に圧接され、前記進行性振動波により摩擦駆動されるものである。
フレキシブルプリント基板14は、圧電体11に駆動信号を供給するためのものであり、圧電体11の所定の電極部と電気的に接続されている。
【0016】
図2は、本実施形態による振動アクチュエータの弾性体を展開して示した図である。
弾性体12は、複数の突起部12aを有する円環型の部材である。複数の突起部12aは、移動体13との摺動面12bが、半径方向から見て略円弧形状の面になっている。
【0017】
略円弧形状の摺動面12bは、中央部の高さから一端部の高さを引いただれ量δが、この突起部12aの先端の摺動面垂直方向の使用範囲内の最大の両振幅に対して、1/10〜1/1であることが望ましい。
例えば、突起部12aの幅w1が約2.0mm、溝部の幅w2が約1.0mm、摺動面垂直方向の最大振幅が約±2.0μmの場合に、だれ量δが、0.4μm〜4.0μm程度になる。
【0018】
また、略円弧形状の摺動面12bは、略円弧の半径rが、突起部12aの周方向の幅w1の半分以上である。
例えば、突起部12aの周方向の幅w1が約2.0mmの場合には、略円弧の半径rは、約1.0〜400.0mm程度である。
このように、突起部12aの移動子13との接触面を曲面にして、突起部12aの角部が移動子13に接触しないようにする。本実施形態では、角部にRを設けるのではなく、接触面全体を、円弧形状に研磨加工してある。
【0019】
図3から図6は、本実施形態による振動アクチュエータの弾性体(突起部の接触面)の加工方法を示した説明図である。
本実施形態の弾性体の加工方法は、圧電体11に駆動信号を印加しながら、弾性体12の複数の突起部12aの先端を研磨して、移動体13との接触面を半径方向から見て略円弧形状の摺動面12bにする研磨工程を備えるものである。
【0020】
この研磨工程では、図3に示すように、弾性体12の接触面12cを研磨板20に接触させて、所定の加圧力Pで研磨板20を押し付ける。この実施形態では、研磨板20は、弾性体12と略同じ大きさであり、移動体13のように、同軸に取り付けて研磨するようにした。
弾性体12の圧電体11に駆動信号を与えて、弾性体12に進行波を発生させながら、研磨板20と弾性体12を相対運動させ、研磨する。
【0021】
弾性体12は、図4に示すように、その突起部12aの先端が楕円運動しているため、接触面12cは、図5(A)に示すように、略円弧形状の摺動面12bに研磨される[図5(B)の従来例参照]。
この研磨工程では、製品として使用する振動振幅より大きい振幅を発生させて研磨することが望ましい。そうすることで、接触面12cの両側の除去量12dが増え、製品使用時に、図6(A)に示すように、略円弧形状の摺動面12bと突起部12の側面からなる角部12eが移動体13と接触することがなくなる[図6(B)の従来例参照]。
【0022】
このように、本実施形態によれば、突起部12aの摺動面12bが略円弧形状の面となった弾性体12を備えた振動アクチュエータであるから、移動体13と接触する面が連続した滑らかな面であるため、弾性体12及び移動体13が傷つきにくく、耐久性に優れる。また、エージング時間も短くなる。さらに、弾性体12及び移動体13の接触部の曲率が大きくなるため、接触する場合の衝撃力が小さくなり、異音の発生を抑えられる、という利点もある。
【0023】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
上述した研磨工程は、弾性体12と略同じ大きさの研磨板20を、移動体13のように同軸に取り付けて研磨する例で説明したが、大きな研磨板に複数の振動体をセットして、同時に研磨してもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上の通り、本発明は、弾性体の突起部の摺動面が略円弧形状の面となっているので、耐久性に優れ、エージング時間が短くなり、コストが下がるとともに、異音の発生を抑えられる、という効果がある。
また、電気機械変換素子に駆動信号を印加しながら、弾性体の複数の突起部の先端を研磨して、接触面を略円弧形状の面にするので、突起部の角部が移動体と接触することがなくなる摺動面を、容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による振動アクチュエータの実施形態を示す斜視図である。
【図2】 本実施形態による振動アクチュエータの弾性体を展開して示した図である。
【図3】 本実施形態による振動アクチュエータの弾性体の加工方法(突起部の接触面)を示した説明図である。
【図4】 本実施形態による振動アクチュエータの弾性体の加工方法(弾性体突起部の動き)を示した説明図である。
【図5】 本実施形態による振動アクチュエータの弾性体の加工方法(弾性体の研磨除去部分)を、従来例と比較して示した説明図である。
【図6】 本実施形態による振動アクチュエータの弾性体の加工方法(弾性体と移動体の接触状態)を、従来例と比較して示した説明図である。
【符号の説明】
10 振動アクチュエータ
11 圧電体
12 弾性体
13 移動体
14 フレキシブルプリント基板
15 振動吸収材
16 支持体

Claims (4)

  1. 駆動信号により励振される電気機械変換素子が接合され、前記励振により先端面に進行性振動波が発生する複数の突起部を有する円環型の弾性体を加工する振動アクチュエータの製造方法であって、
    前記複数の突起部の先端面に、研磨板を接触させて所定の加圧力で押し付けて、前記電気機械変換素子に前記駆動信号を印加して前記複数の突起部に進行性振動波を発生させながら、前記複数の突起部の先端を研磨して、前記先端面を連続した滑らかな面にする研磨工程を備えること、
    を特徴とする振動アクチュエータの製造方法。
  2. 請求項に記載の振動アクチュエータの製造方法であって、
    前記研磨工程では、前記振動アクチュエータの駆動時よりも大きい振動振幅を前記弾性体に発生させること、
    を特徴とする振動アクチュエータの製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の振動アクチュエータの製造方法であって、
    前記研磨工程は、前記先端面を半径方向から見て略円弧形状の面に研磨すること、
    を特徴とする振動アクチュエータの製造方法。
  4. 請求項3に記載の振動アクチュエータの製造方法であって、
    前記研磨工程では、前記先端面の前記略円弧の半径を、前記突起部の周方向の幅の半分以上とすること、
    を特徴とする振動アクチュエータの製造方法。
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