JP3829104B2 - 焼却炉メンテナンス時の粉塵防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストーカ式あるいはキルン式焼却炉のメンテナンス時に発生する浮遊粉塵を減らすための粉塵防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
焼却炉では、運転を続けていると、焼却炉の炉壁にクリンカが付着して、焼却効率が低下する。また、焼却炉の炉壁を構成するレンガ、ボイラの壁面のレンガ、タイルといった耐火物が、高温に曝されて損傷する。そのため、定期的に運転を停止して、メンテナンスが行われる。
【0003】
防塵マスク等の保護具を着けた作業員が、炉内に入って、クリンカの除去、耐火物の補修、清掃等のメンテナンスを行う。このとき、粉塵が発生し、作業環境が悪化するので、作業現場に水を撒いて湿潤化を行って、浮遊する粉塵の発生を抑えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
散水によって、粉塵が舞い上がるのを抑制することはできるが、粉塵や灰が泥状化して、床面が滑りやすくなり、作業しにくくなるとともに、床面の清掃が困難となる。また、ダイオキシン等の有害な物質を含んだ廃水が生じるので、この処理が問題となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、焼却炉のメンテナンス時に浮遊する粉塵の発生を抑制できる粉塵防止方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による課題解決手段は、炉床および複数の火格子を備えた焼却炉において、前記焼却炉の炉壁に付着したクリンカを除去するとき、前記焼却炉の壁面に形成された開口を利用して噴霧ノズルを設置し、該噴霧ノズルから下方に向けて液体を吹き出し、前記焼却炉内にミストを形成して粉塵を捕捉するものである。
【0007】
焼却炉の炉壁の耐火物補修時には、前記焼却炉内に複数段の足場を組み立て、各段の足場毎に噴霧ノズルを装着し、該噴霧ノズルから液体を吹き出し、各段の足場の空間内にミストを形成して粉塵を捕捉するとともに、上流側の火格子上に噴霧ノズルを設置し、該噴霧ノズルから液体を前記火格子に沿って吹き出し、各火格子上を這うようにミストを流す。
【0008】
火格子の整備時には、上流の火格子上に幅方向に渡って複数の噴霧ノズルを設置し、各噴霧ノズルから液体を前記火格子に沿って吹き出し、上流から下流の順に火格子上を這うようにミストを流して、粉塵を捕捉する。なお、上流側の火格子より下流側の火格子に多くの燃えカス等の固着物があるので、上流側から清掃等の作業が行われるのが効率がよい。そのため、噴霧ノズルは上流側の火格子に設置するのが好ましい。
【0009】
ここで、ミストの大きさが5〜15μmとされ、噴霧量が噴霧ノズル1個当たり毎分50〜200mlとされる。
【0010】
上記の各作業に応じて、粉塵が発生する箇所に対して集中的に噴霧を行うことにより、ミストが粉塵を覆うように形成されることになる。これによって、粉塵がミストに捕捉され、周囲への拡散を防止できる。また、ミストは超微細な液体粒子であるので、床面や足場に水滴として付着することはない。そのため、床面や足場が濡れて、滑りやすくなるといったことを防止でき、作業性を損なうことはない。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態のストーカ式焼却炉は、図1に示すように、ホッパ1に投入されたごみを焼却する焼却炉2と、焼却炉2で発生した燃焼ガスの熱を回収するボイラ3とを備えている。焼却炉2には、乾燥段火格子4、燃焼段火格子5、後燃焼段火格子6が上流側から下流側に向けて階段状に配置される。
【0012】
ホッパ1から投入されたごみが、焼却炉2内で各火格子4〜6によって搬送されながら燃焼され、灰となってピットに回収される。ごみの燃焼によって発生した燃焼ガスは、焼却炉2の上方にあるボイラ3に導かれ、熱交換された後、排ガス処理によって有害物質が除去され、煙突から排出される。
【0013】
上記のごみ焼却炉のメンテナンスとして、クリンカ除去作業、焼却炉2の炉壁のレンガおよびボイラ3の壁面のレンガ、タイル等の解体、清掃といった耐火物補修作業、火格子整備作業が行われる。
【0014】
クリンカ除去作業では、焼却炉2の炉壁に付着したクリンカをチッパ等の器具により砕いて、除去する。耐火物補修作業では、足場7を組み立て、損傷した耐火物を解体して、新しい耐火物に交換したり、ボイラ3の水冷壁の清掃を行う。火格子整備作業では、火格子4〜6に付着した灰の除去、上記の作業によって火格子4〜6上に落下したクリンカや耐火物の破片の除去、清掃を行う。作業の順序としては、クリンカ除去作業、耐火物補修作業、火格子整備作業の順とされる。なお、各作業を連続して行うだけでなく、クリンカ除去作業、火格子整備作業の順に、あるいは耐火物補修作業、火格子整備作業の順に行うことや、それぞれ単独で行うようにしてもよい。
【0015】
これらの作業はいずれも、作業員が焼却炉2内に入って行う。そのとき、浮遊する粉塵を抑制して、作業環境をよくするために、焼却炉2内を湿潤化している。そのため、図2〜4に示すように、高圧ポンプ8を設置し、各作業においてそれぞれ適切な場所に噴霧ノズル9を配置する。
【0016】
噴霧ノズル9は、高圧ポンプ8に配管あるいはフレキシブルなホース10を介して接続され、高圧ポンプ8から圧送された水を噴霧して、ミストを形成する。噴霧ノズル9には、フィルタが組み込まれ、超微細な水粒子を噴出可能とされる。この噴霧ノズル9により形成されるミストの大きさ(直径)は、5〜15μmとされる。ミストの大きさがこれより大きすぎると、空気中の浮遊滞留時間が短くなり、すぐに落下して、粉塵の捕捉効率が悪くなる。また、床面や足場7に付着する水滴が多くなり、床面や足場7上の粉塵を濡らして、滑りやすくなる。ミストの大きさが小さすぎると、軽いため、粉塵を捕捉しても落下させることができない。
【0017】
そして、噴霧量としては、噴霧ノズル1個当たり毎分50〜200mlとされ、120ml程度が好ましい。噴霧量がこれより多いと、霧が立ち込めた状態となって、視界を遮り、作業性が悪くなる。また、床面や足場7上を濡らすため、粉塵が泥状となり、滑りやすくなって、足元が悪くなる。噴霧量が少ないと、十分な捕捉効率が得られなくなる。
【0018】
次に、各作業別の噴霧方法を説明する。クリンカ除去作業の場合、図2に示すように、焼却炉2の上方のボイラ3内に噴霧ノズル9を設置する。ボイラ3の壁面に点検孔等の開口が形成されているので、これを利用して、噴霧ノズル9が装着されたパイプを差し込むことによって、噴霧ノズル9が設置される。噴霧ノズル9の位置は、焼却炉2の炉壁に沿ってミストが流れるように壁面近傍とすることが好ましく、片側に2〜3個ずつ配置する。
【0019】
上記のように噴霧ノズル9を設置した後、給水源から給水された水を高圧ポンプ8によって噴霧ノズル9に圧送する。この作業中常時、噴霧ノズル9から水が焼却炉2内に向けて噴出され、ミストとなって焼却炉2内を上方から覆う。
【0020】
そして、作業員が炉壁に付着したクリンカを砕いて除去すると、クリンカの破片が火格子4〜6上に落下して、粉塵が焼却炉2内に舞い上がる。浮遊した粉塵が、上方から吹き下ろされてくるミストに捕捉され、落下していく。このように、粉塵が浮遊している焼却炉2内において、上方からミストで覆い尽くすことによって、粉塵が落下して、浮遊する粉塵が減り、粉塵の拡散が抑えられる。
【0021】
耐火物補修作業の場合、図3に示すように、焼却炉2からボイラ3内にかけて複数段の足場7が組み立てられる。上下の足場7の間が作業空間となるので、各段の足場7毎に1個または2個の噴霧ノズル9を設置する。噴霧ノズル9は、作業空間の上方からほぼ水平方向に向けて噴霧できるように足場7に取り付けられる。
【0022】
作業員が、各段の足場7においてボイラ3の壁面の耐火物を解体して除去し、新しいものへの交換、ボイラ3の水冷壁の清掃、焼却炉2の炉壁の耐火物を解体除去し、新しいものへの交換、炉壁の清掃といった作業を行う。これらの作業により、粉塵が発生し、舞い落ちる。
【0023】
そこで、各段の足場7毎に噴霧ノズル9から水をそれぞれの作業空間内に噴霧して、ミストを形成する。作業に伴って発生した粉塵がミストに捕捉され、落下していくので、作業空間の環境の悪化を防げる。
【0024】
なお、作業空間は狭いので、常時噴霧する必要はなく、適量のミストが形成できればよい。すなわち、間欠的な噴霧を行う。例えば、噴霧を1〜2分して、5〜15分間休止する。
【0025】
また、除去した耐火物の破片が火格子4〜6上に落下し、焼却炉2内に粉塵が舞い上がる。そこで、最上流にある乾燥段火格子4上に幅方向に渡って複数の噴霧ノズル9を等間隔に並べて設置する。
【0026】
噴霧ノズル9から下流の火格子5、6に向かって噴霧すると、ミストが上流の火格子4から下流の火格子5、6に向かって火格子4〜6上を這うように流れていく。火格子4〜6上に落下した破片により発生した粉塵は、火格子4〜6上を流れるミストに捕捉されるので、粉塵が焼却炉2内まで舞い上がることがなくなる。なお、火格子4〜6上での噴霧は、発生する粉塵の量が多くないので、間欠的に行うとよい。
【0027】
火格子整備作業の場合、図4に示すように、上記と同様に複数の噴霧ノズル9を最上流の火格子4上に設置する。そして、作業員が、上流の火格子4から順に下流の火格子6にかけて、火格子4〜6上に落下したクリンカや耐火物の破片を除去したり、火格子4〜6に付着した固形物を除去し、清掃する。
【0028】
このとき、粉塵が発生するが、噴霧ノズル9からの噴霧によって形成されたミストが作業員の足元を這うように流れるので、粉塵はミストに捕捉され、舞い上がることなくそのまま落下する。このように粉塵の発生箇所をミストで覆い尽くすことになり、粉塵の飛散を防止できる。また、床面にある粉塵が水分によって集結するので、清掃を迅速に行える。
【0029】
ここで、噴霧を作業中常時行うと、多量のミストが漂って足元の視界を遮り、作業性が悪くなるおそれがある。そのため、噴霧を間欠的に行う。例えば、噴霧を1〜5分して、5〜15分間休止する。休止期間が長くても、火格子4〜6や床面の近くにミストがあって、火格子4〜6や床面が湿潤化されるので、散水による効果と同じ効果が得られ、粉塵が舞い上がることはない。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。焼却炉としては、ストーカ式に限らずキルン式であってもよく、またボイラのない焼却炉でもよい。さらに、火格子が2段、各火格子が平坦、あるいは炉床が1段といった焼却炉でもよい。
【0031】
噴霧ノズルから吹き出す液体として、界面活性剤を添加した水を噴射してもよく、ミストと粉塵とのなじみがよくなり、捕捉効率が高まる。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り、本発明によると、作業する空間内の粉塵が発生する個所に集中的にミストを形成して、浮遊している粉塵を捕捉することにより、粉塵の飛散を防止でき、作業環境を改善できる。また、散水したときのように、粉塵が泥状化して、床面が滑りやすくなることを防止でき、しかも有害物質を含んだ廃水が生じないので、廃水処理が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼却炉の概略構成図
【図2】クリンカ除去作業時の噴霧状態を示す図
【図3】耐火物補修作業時の噴霧状態を示す図
【図4】火格子整備作業時の噴霧状態を示す図
【符号の説明】
2 焼却炉
3 ボイラ
4〜6 火格子
7 足場
8 高圧ポンプ
9 噴霧ノズル
Claims (4)
- 炉床および複数の火格子を備えた焼却炉において、
前記焼却炉の炉壁に付着したクリンカを除去するとき、
前記クリンカの除去によって発生する粉塵を捕捉するために、
前記炉壁の下方に向けて液体を吹き出すように噴霧ノズルを設け、
前記噴霧ノズルを前記炉壁近傍に配置し、
前記噴霧ノズルから液体を吹き出してミストを形成し、
前記ミストが前記炉壁に沿って流れることにより、前記焼却炉内の浮遊する粉塵を捕捉することを特徴とする焼却炉メンテナンス時の粉塵防止方法。 - 炉床および複数の火格子を備えた焼却炉において、
前記焼却炉の炉壁の耐火物補修時、
前記焼却炉内に複数段の足場を組み立て、
各段の足場毎に噴霧ノズルを装着し、
該噴霧ノズルから液体を吹き出し、
各段の足場の空間内にミストを形成して粉塵を捕捉するとともに、
上流側の火格子上に噴霧ノズルを設置し、
該噴霧ノズルから液体を前記火格子に沿って吹き出し、
各火格子上を這うようにミストを流すことを特徴とする焼却炉メンテナンス時の粉塵防止方法。 - 噴霧ノズルから液体を吹き出さない休止時間が、液体を吹き出す噴霧時間よりも長くなるように間欠的に噴霧することを特徴とする請求項2に記載の焼却炉メンテナンス時の粉塵防止方法。
- 炉床および複数の火格子を備えた焼却炉において、
前記火格子を整備するとき、
前記火格子に落下した廃棄物および付着した固形物を除去あるいは清掃によって発生する粉塵を捕捉するために、
上流から下流の火格子に向かって液体を吹き出すように噴霧ノズルを設け、
前記噴霧ノズルを上流にある火格子上に幅方向に渡って複数配置し、
前記噴霧ノズルから液体を間欠的に吹き出してミストを形成し、
前記ミストが上流から下流に向かって各火格子上を這うように流れることにより、前記各火格子上の粉塵を捕捉することを特徴とする焼却炉メンテナンス時の粉塵防止方法。
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