JP3828480B2 - 高靭性高張力非調質鋼板およびその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築構造物や橋梁などの大型構造物用として有用な、引張強さが590MPa以上の高張力鋼板(以下、「590MPa級鋼板」と称する場合がある)に関し、殊に靭性に優れ、しかも非調質でも高強度を示す高靭性高張力非調質鋼板およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記の様な大型構造物用として用いられる590MPa級鋼板では、高強度に加えて、高靭性が要求されるが、これらの特性を満足する鋼板を製造する際には、圧延後に焼入れ焼戻しの調質処理を行なうのが一般的である。ところがこの方法では、圧延後に再加熱処理工程が必要となるので、工期が長くなると共にコスト高になっていた。そこで、再加熱処理を省略して工期の短縮とコストダウンを図る鋼板の製法が望まれており、近年、著しい発展をみた技術として制御圧延がある。この技術によれば、圧延時の温度や圧下率などを適切に制御することによって結晶粒を微細化し、圧延ままでも高強度・高靭性の鋼を得ることができ、この様な鋼は一般に非調質鋼と呼ばれている。
【0003】
こうした非調質鋼の製法として、例えば特許文献1には、C量を極低レベルまで低減すると共に適量のNbやBを添加し、組織をベイナイト化することによって空冷ままでも高い強度を確保する技術が提案されている。しかし、この種の技術では、強度確保のためにマイクロアロイ元素(例えば、TiやNb、Bなど)を比較的多量含有させているのでベイナイト組織が粗大化し、母材靭性が却って劣化するという問題がある。また、マイクロアロイ元素は比較的高価な元素であり、コスト高となる。
【0004】
また、特許文献2には、MoやNb,Ti,Bなどを添加した鋼に対して制御圧延と制御冷却を組み合わせることによって、板厚方向に均一組織でかつ強度や低温靭性に優れた高張力鋼板を製造する技術が提案されている。しかし、この技術では、圧延後の冷却速度が遅く、例えば水冷した場合は、水冷完了後の鋼板形状確保の観点から矯正工程が必要となることが多く、工期の短縮は難しくなる。また、本発明者らが検討したところ、板厚を更に厚くすると安定した強度や靭性を確保し難くなることが分かった。
【0005】
【特許文献1】
特開平8-144019号公報(「特許請求の範囲」参照)
【特許文献2】
特開2001-152248号公報(「特許請求の範囲」、段落[0009]参照)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、靭性に優れた非調質型の高張力鋼板を提供することにある。また、他の目的は、本発明に係る高靭性高張力非調質鋼板を効率良く製造できる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係る高靭性高張力非調質鋼板とは、質量%で、C:0.02〜0.06%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1〜1.6%、Al:0.02〜0.07%、Ti:0.005〜0.02%、Nb:0.010〜0.030%、B:0.0010〜0.0030%、N:0.003〜0.0050%、を夫々含み、固溶Nb量:0.010〜0.025%、固溶B量:0.0010〜0.0025%、を満足する点に要旨を有する。
【0008】
なお、上記Nb含量とB含量は、夫々固溶Nb量と固溶B量を含む意味である。
【0009】
更に、他の元素として、Cu:0.3〜1.2%、Ni:0.3〜1.2%、Cr:0.5〜1.2%、Mo:0.03〜0.3%よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0010】
上記課題を解決することのできた本発明に係る高靭性高張力非調質鋼板を効率良く製造には、上記化学成分の要件を満たす鋼片を、1000〜1150℃に加熱した後、980〜890℃の温度域を圧下量20%以上で圧下し、引き続いて、860〜780℃の温度域を圧下量30%以上で圧下すれば良く、この製法を採用することによって、固溶Nb量:0.010〜0.025%、固溶B量:0.0010〜0.0025%、を満たす高靭性高張力非調質鋼板を得ることができる。
【0011】
本発明では、前記860〜780℃の温度域で圧下した後、更に、780℃以下で圧下量20〜35%の圧下を行い、最終圧延温度を770〜730℃とすることが推奨される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、様々な角度から検討してきた。その結果、鋼板の成分組成を厳密に規定すると共に、鋼板中に含まれる固溶Nb量と固溶B量を夫々適切に制御してやれば、上記課題が見事に解決されることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明の作用効果について説明する。
【0013】
本発明の鋼板は、基本成分として、質量%で、C:0.02〜0.06%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1〜1.6%、Al:0.02〜0.07%、Ti:0.005〜0.02%、Nb:0.010〜0.030%、B:0.0010〜0.0030%、N:0.003〜0.0050%、を含有するものである。この様な範囲に限定した理由は次の通りである。
【0014】
C:0.02〜0.06%
Cは、母材強度を確保するために重要な元素であり、少なくとも0.02%以上含有させねばならない。しかし、0.06%を超えると高冷却速度側で低温変態ベイナイトが生成せずにマルテンサイトが生成し易くなり、満足のいく母材靭性が得られなくなる。C含量の好ましい下限は0.03%であり、好ましい上限は0.05%である。
【0015】
Si:0.05〜0.5%
Siは、脱酸剤として有用な元素であり、この効果を有効に発揮させるには、0.05%以上含有させる必要がある。しかし、0.5%を超えて過剰に含有させると母材靭性が低下するので、上限は0.5%とする。より好ましくは0.1%以上、0.3%以下とするのが良い。
【0016】
Mn:1〜1.6%
Mnは、圧延後の空冷時における焼入れ性を高めて高強度化に寄与すると共に、ベイナイトブロックを微細化して母材靭性を高める作用も有しており、これらの作用を有効に発揮させるには、Mnを1%以上含有させる必要がある。好ましい下限は1.3%である。しかし、Mn含量が過剰となって1.6%を超えると、焼入れ性が高くなり過ぎて母材靭性を著しく劣化させるので、1.6%以下に抑制すべきである。
【0017】
Al:0.02〜0.07%
Alは、脱酸剤として有用な元素である。また、AlはNと化合し易く、鋼中のNを固定することによって固溶Bや固溶Nbの増大に寄与し、更には、Bによる圧延後の空冷時における焼入れ性を向上させる作用も有する。これらの効果を有効に発揮させるには0.02%以上含有させる必要があり、好ましくは0.03%以上である。その効果はAl含量が多くなるにつれて増大するが、0.07%を超えて過剰に含有させるとアルミナ系非金属介在物量が多くなって清浄度が低下し母材靭性が劣化する。より好ましくは0.06%以下とするのが良い。
【0018】
Ti:0.005〜0.02%
Tiは、Nと化合して窒化物を形成し易く、鋼中Nの固定に有用な元素であり、結果的に固溶Bや固溶Nbを増加させる。また、γ粒の粗大化を抑えて、母材靭性の劣化を防ぐ。こうした効果を発揮させるには、0.005%以上含有させる必要があるが、Ti含量が0.02%を超えて過剰に含有させると、却って母材靭性の低下を招く。Ti含量の好ましい下限は0.01%である。
【0019】
Nb:0.010〜0.030%
Nbは、Bと共に含有させることによって、圧延後の空冷時における焼入れ性を高め、母材の強度と靭性の向上に寄与する。また、本発明で規定する固溶Nb量を確保するためにも、Nbは0.010%以上含有させる必要がある。しかし、0.030%を超えて過多に含有させると、ベイナイトブロックが粗大化して、母材靭性が低下するので上限は0.030%とする。Nb含量の好ましい下限は0.015%であり、好ましい上限は0.025%である。なお、本発明においてNb含量とは、析出しているNbのみならず、固溶Nbも含む意味である。
【0020】
B:0.0010〜0.0030%
Bは、Nbと併せて含有させることにより圧延後の空冷時における焼入れ性を高め、母材の強度と靭性を高める。また、本発明で規定する固溶B量を確保するためにも、Bは0.0010%以上含有させる必要がある。しかし、0.0030%を超えて過多に含有させると、母材靭性が劣化するので、B含量は0.0030%以下に抑えるべきである。B含量の好ましい下限は0.0015%であり、好ましい上限は0.0025%程度である。なお、本発明においてB含量とは、析出しているBのみならず、固溶Bも含む意味である。
【0021】
N:0.003〜0.0050%
Nは、AlやTiと化合して窒化物を形成し、組織の微細化による母材靭性の向上に有効に作用する。これらの効果を有効に発揮させるには0.003%以上含有させる必要がある。但し、NはNbやBとも窒化物を形成し易く、Nを過剰に含有させると、本発明で規定する固溶Nb量や固溶B量を確保できなくなるので、N含量は0.0050%以下に抑える必要がある。より好ましくは0.0040%以下であり、N含量はできるだけ少ない方が良い。
【0022】
本発明の鋼板においては、上記成分組成を厳密に規定するだけではその目的を達成できず、鋼板中に含まれる固溶Nb量と固溶B量を夫々適切に制御する必要がある。すなわち、後述する実施例を含めて種々の実験を繰り返し、鋼板中に含まれる固溶Nb量と固溶B量が母材強度や母材靭性に及ぼす影響を調べた結果、これらの間には良好な相関関係が認められ、鋼板中の固溶Nb量や固溶B量が過剰になると、母材の靭性を確保できなくなることが明らかになった。これは過剰量の固溶Nbや固溶Bがベイナイト組織を粗大化するためと考えられる。また、NbやBは比較的高価な元素であり、これらの元素の過剰添加はコスト高となる。但し、固溶Nb量や固溶B量が不足すると、圧延後の空冷時における焼入れ性が低下し、母材の強度を確保できなくなる。
【0023】
この様な観点から、本発明では、固溶Nb量を0.010〜0.025%、固溶B量を0.0010〜0.0025%、に夫々定めている。固溶Nb量のより好ましい上限は0.020%であり、固溶B量のより好ましい上限は0.0020%である。なお、前述したNb含量とB含量とは、固溶Nb量と固溶B量を夫々含むもので、NbやBの一部はNなどと化合して析出するので、上記Nb含量やB含量の上限値よりも固溶Nb量や固溶B量の上限値を若干少なめに抑えている。
【0024】
本発明において、鋼板に含まれる固溶Nb量(または固溶B量)とは、化学分析によるNb含量(またはB含量)の測定値から析出Nb量(または析出B量)の測定値を引いた値である。
【0025】
本発明に係る鋼板における上記基本成分以外の、残部成分は実質的にFeであるが、これら以外にも微量成分を含み得る。こうした微量成分としては、不純物、特にPやSなどの不可避不純物が挙げられ、これら不可避不純物は本発明の効果を損なわない限度で許容される。具体的には、不可避不純物として許容されるPやSの量は下記の通りである。
【0026】
P:0.015%以下(0%を含む)
Pは、母材靭性に影響を与える元素であり、0.015%を超えると母材靭性が著しく劣化するので、上限を0.015%とした。より好ましくは0.008%以下とするのが良い。
【0027】
S:0.006%以下(0%を含む)
Sも母材靭性に影響を与える元素であり、含量が0.006%を超えると粗大な硫化物が生成して母材靭性を劣化させるので、上限を0.006%とした。より好ましくは0.003%以下とするのが良い。
【0028】
本発明の鋼板には、必要によって、Cu,Ni,CrおよびMoよりなる群から選ばれる1種以上を含有させることも有効である。これらの元素は、いずれも圧延後の空冷時における焼入れ性を高める元素であり、これにより母材の強度や靭性を一層高めることができる。これらの元素の好ましい含有量を定めた理由は次の通りである。
【0029】
Cu:0.3〜1.2%
Cuは、固溶強化および析出強化によって母材強度を向上させる元素であり、0.3%以上含有させることによってその効果を発揮する。より好ましくは0.5%以上含有させるのが望ましい。但し、1.2%を超えて含有させると大入熱HAZ靭性が低下し易いため、その上限は1.2%とすることが好ましい。より好ましくは1.0%以下にするのが良い。
【0030】
Ni:0.3〜1.2%
Niは、母材靭性の向上に有用な元素であり、0.3%以上含有させることによりその効果を発揮する。より好ましくは0.5%以上とするのが良い。しかし、1.2%を超えて添加するとスケール疵が発生し易くなるため、その上限は1.2%とすることが好ましい。より好ましくは1.0%以下にするのが良い。
【0031】
Cr:0.5〜1.2%
Crは、ベイナイトブロックの微細化を増進し、母材靭性の一層の向上に寄与する。Cr含量が0.5%未満では、これらの効果が発揮され難く、1.2%を超えると、特に大入熱溶接を行なったときのHAZ部の耐溶接割れ性が劣化し易くなる。Cr含量のより好ましい下限は0.8%であり、好ましい上限は1.0%である。
【0032】
Mo:0.03〜0.3%
Moは、NbやBと併せて含有させることにより圧延後の空冷時における焼入れ性を向上させ、母材の強度と靭性を高める元素である。こうした効果を発揮させるには0.03%以上含有させるのが好ましいが、過剰に含有させるとHAZ部の耐溶接割れ性が劣化するので、0.3%を上限とする。Mo含量のより好ましい下限は0.10%であり、好ましい上限は0.20%である。
【0033】
本発明の鋼板を製造する方法は特に限定されず、上記成分組成を有する鋼を用い、通常採用されている高張力鋼板の製造工程および製造条件(温度や時間など)に従って操業して、鋼板中に所定量の固溶Nbと固溶Bを確保すれば本発明の目的が達成されるが、次に示す方法を採用すれば、より確実に且つ効率良く本発明の高靭性高張力非調質鋼板を製造できる。
【0034】
鋼板中に所定量の固溶Nbと固溶Bを存在させるには、NbとBの析出量の変動を最小限に抑えれば良い。すなわち、圧延後再加熱処理を行なわない非調質鋼板では、制御圧延を行なうことで母材の強度と靭性を確保しているが、圧延材(鋼板)はその寸法(つまり鋼板の厚みや長さ)や圧下率によって熱履歴に変動を生じやすく、制御圧延条件によっては、所定の固溶Nb量や固溶B量が確保し難くなる。
【0035】
例えば、圧延材の厚みが異なれば、制御圧延によって圧延材が受ける熱収支は異なるので、特定温度域での圧下量も変動する。その結果、NbとBの加工誘起析出の程度にも差を生じ、この差によってNbとBの析出量が変化する。そして、NbとBの析出量の変動が大きくなると、固溶Nb量と固溶B量の変動も大きくなり、所定量を確保できない。また、制御圧延では複数回の圧下を繰り返すことによって所定厚みまで薄肉化していくが、このとき、圧延材の長さが異なると、圧下の間隔が変化して圧延材の温度低下量にも差を生じてくる。すなわち、圧延材が長くなると、圧下間隔が広がるので、この間に圧延材は冷却されて降温する。その結果、圧延材の受ける熱収支が変化して特定温度域での圧下量が変動し、最終的に得られる圧延材として所定量の固溶Nbと固溶Bを確保できなくなることがある。
【0036】
これらの理由も考慮して、所定量の固溶Nbと固溶Bを含む本発明の高靭性高張力非調質鋼板を効率良く製造するには、上記化学成分を満たす鋼片を使用し、これを1000〜1150℃に加熱した後、980〜890℃の温度域における圧下量を20%以上とすると共に、860〜780℃の温度域における圧下量を30%以上とすれば良く、この製法を採用することによって、固溶Nb量:0.010〜0.025%、固溶B量:0.0010〜0.0025%、を満たす高靭性高張力非調質鋼板を効率良く製造できる。好ましくは前記860〜780℃の温度域で圧下した後、更に780℃以下での圧下量を20〜35%とし、最終圧延温度を770〜730℃とするのがよい。
【0037】
この様な条件を推奨する理由は、次の通りである。
【0038】
加熱温度:1000〜1150℃
NbとBの窒化物を固溶させるには、鋼片を1000℃以上に加熱するのが良く、より好ましくは1050℃以上に加熱することが望ましい。しかし、加熱温度が1150℃を超えると、γ粒が粗大化して母材の靭性が劣化するので、上限は1150℃とした。より好ましくは1100℃以下である。
【0039】
980〜890℃の温度域における圧下量:20%以上
980〜890℃の温度域では、Nbの窒化物が生成し易いので、この温度域における圧下量を20%以上、より好ましくは30%以上とすると、Nb窒化物の加工誘起析出が促進されて析出時間が短縮され、Nbの析出量が安定化する。つまり、この温度域における圧下量が20%未満では、Nbの析出量が不安定となり、本発明で規定する固溶Nb量を確保することが困難になる。この温度域における圧下量の上限は特に限定されず、次工程でなされる圧下温度域での圧下量を確保できる範囲であれば良い。
【0040】
860〜780℃の温度域における圧下量:30%以上
860〜780℃の温度域では、Bの窒化物が生成し易いので、この温度域における圧下量を30%以上、より好ましくは40%以上とすると、B窒化物の加工誘起析出が促進されて析出時間が短くなり、Bの析出量が安定化する。つまり、この温度域における圧下量が30%未満では、Bの析出量が不安定となり、本発明で規定する固溶B量を確保することが困難になる。この温度域における圧下量の上限も特に限定されず、次工程でなされる圧下温度域での圧下量を確保できる範囲であれば良い。
【0041】
780℃以下での圧下量:20〜35%
780℃以下の温度域で、20%以上の圧下を行なうと組織の微細化が促進され、母材の靭性を一段と向上させることができる。しかし、この温度域での圧下量が過剰になると、加工変態が促進されてフェライトが析出し、母材の強度確保が困難になるので、圧下量の上限は35%とした。
【0042】
最終圧延温度:770〜730℃
最終圧延温度を770℃以下にすることによって組織の微細化が促進され、母材の靭性を確保できる。しかし、最終圧延温度が730℃を下回ると、フェライト変態が促進されて母材強度の確保が困難になるので、最終圧延温度は730℃以上にすることを推奨する。
【0043】
なお、本発明で好ましく採用される上記各温度は、厚板(t)方向に対してt/4の位置での温度である。また、本発明において圧下量とは、各温度域における入側温度での板厚に対する、入側温度での板厚と出側温度での板厚の差の割合である。例えば980〜890℃の温度域における圧下量は、下記(1)式で算出できる。
【0044】
【数1】
【0045】
但し、780℃以下での圧下量を算出するに際しては、出側温度における板厚として最終仕上圧延温度における板厚を用いる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0047】
下記表1に示す化学成分組成の鋼を通常の溶製法により溶製し、スラブとした後、下記表2に示す温度(加熱温度)まで加熱し、その後冷却しつつ表2に示す各温度域で熱間圧延して所定の板厚の鋼板を製造した。このときの圧延終了温度を表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
得られた各鋼板に含まれる固溶Nb量と固溶B量は、化学分析によるNb含量(またはB含量)の測定値から析出Nb量(または析出B量)の測定値を引くことにより算出した。但し、析出Nb量(または析出B量)は、電解液として10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロリド−メタノール溶液を用い、200A/m2以下の電流下で抽出したものを0.1μmのフィルターを用いて回収・測定している。なお、化学分析によるNb含量(またはB含量)は公知の方法で測定している。各鋼板に含まれる固溶Nb量と固溶B量を夫々表3に示す。
【0051】
次に、得られた各鋼板について、下記の要領で母材特性[引張強さ、0.2%耐力および靭性(vTrs)]を評価した。
【0052】
[母材特性試験]
▲1▼引張試験:各鋼板の板厚1/4部位からJIS4号試験片を採取し、引張試験を行なうことにより引張強さおよび0.2%耐力を測定した。引張強さ(TS)は600MPa以上、0.2%耐力(YS)は450MPa以上を夫々合格とした。
▲2▼衝撃試験:各鋼板の板厚1/4部位からJIS4号試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を行なうことにより延性破面率を求め、破面遷移温度を算出した。破面遷移温度(vTrs)は−20℃以下を合格とした。
【0053】
母材特性試験で得られた結果を表3に示す。また、固溶Nb量に対して引張強さ及び0.2%耐力を夫々プロットしたグラフを図1、固溶B量に対して引張強さ及び0.2%耐力を夫々プロットしたグラフを図2、固溶Nb量に対して靭性(vTrs)をプロットしたグラフを図3、固溶B量に対して靭性(vTrs)をプロットしたグラグを図4、として夫々示す。但し、図1および2中、□は引張強さ(TS)、■は0.2%耐力(YS)の結果を夫々示している。
【0054】
【表3】
【0055】
表3および図1〜4から明らかな様に、No.1〜8の鋼板は本発明で規定する要件を満足する例であり、靭性に優れた非調質型の高張力鋼板を実現できている。
【0056】
なお、No.2とNo.4は、本発明で規定する要件を満足しているけれども、その製造条件は本発明で推奨する条件から若干外れている。この理由は、鋼板に含有しているNbまたはB量が比較的少ないので、固溶Nbおよび固溶B量が本発明で規定する範囲を満足していると考えられる。
【0057】
これに対し、No.9〜14は本発明の要件を満足しない例であり、鋼板の化学成分組成が本発明で規定する範囲から外れており、特に固溶Nb量および/または固溶B量が本発明で規定する範囲から外れているので、強度または靭性のどちらかが劣っている。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、圧延後に再加熱処理工程を必要としない非調質鋼板であって、高靭性と高張力の両特性に優れた鋼板およびその製法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 固溶Nb量に対して鋼板の引張強さ及び0.2%耐力を夫々プロットしたグラフである。
【図2】 固溶B量に対して鋼板の引張強さ及び0.2%耐力を夫々プロットしたグラフである。
【図3】 固溶Nb量に対して鋼板の靭性をプロットしたグラフである。
【図4】 固溶B量に対して鋼板の靭性をプロットしたグラフである。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.02〜0.06%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:1〜1.6%、
Al:0.02〜0.07%、
Ti:0.005〜0.02%、
Nb:0.010〜0.030%、
B:0.0010〜0.0030%、
N:0.003〜0.0050%、
Cr:0.5〜1.2%(0.5%を除く)を夫々含み、
更に、他の元素として、
Cu:0.3〜1.2%、
Ni:0.3〜1.2%、
Mo:0.03〜0.3%よりなる群から選ばれる1種以上を含有し、
残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ
固溶Nb量:0.010〜0.025%、
固溶B量:0.0010〜0.0025%、
を満足することを特徴とする高靭性高張力非調質鋼板。 - 請求項1に記載された化学成分の要件を満たす鋼片を、
1000〜1150℃に加熱した後、
980〜890℃の温度域を圧下量20%以上で圧下し、引き続いて、
860〜780℃の温度域を圧下量30%以上で圧下し、
固溶Nb量:0.010〜0.025%、
固溶B量:0.0010〜0.0025%、
を満たす高靭性高張力非調質鋼板を得ることを特徴とする高靭性高張力非調質鋼板の製法。 - 前記860〜780℃の温度域で圧下した後、更に、780℃以下で圧下量20〜35%の圧下を行い、最終圧延温度を770〜730℃とする請求項2に記載の製法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002314932A JP3828480B2 (ja) | 2002-10-29 | 2002-10-29 | 高靭性高張力非調質鋼板およびその製法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002314932A JP3828480B2 (ja) | 2002-10-29 | 2002-10-29 | 高靭性高張力非調質鋼板およびその製法 |
Publications (2)
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