JP3827923B2 - 造血および栄養状態改善用アミノ酸組成物 - Google Patents

造血および栄養状態改善用アミノ酸組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のアミノ酸を特定の割合で含有する造血および栄養状態の改善に有効なアミノ酸組成物、すなわち、L−アルギニン、L−グルタミン、L−バリン、L−イソロイシンおよびL−ロイシンの5種のアミノ酸を、それぞれ、10〜40重量部、10〜40重量部、5〜20重量部、8〜30重量部および10〜35重量部の割合で含有することを特徴とする造血および栄養状態改善用アミノ酸組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般の人々及び運動選手は様々なサプリメントを日常的に摂取している。例えば、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、ハーブ、プロテイン、抗酸化剤、クレアチン等を摂取している。これらの中でも最近、後述の理由から特にアミノ酸が着目されている。
【0003】
オリンピックを目指すトップアスリートはもちろんのこと、スポーツ愛好家、ウォーキングなどを楽しむ中高年まで幅広い層においてアミノ酸サプリメントが愛用されるようになってきた。
【0004】
なぜ、今アミノ酸なのかについて考えてみると、第1の理由として、アミノ酸は、我々が日常的に摂取しているタンパク質の成分であり、安全であるということである。アミノ酸サプリメントに記載されている推奨摂取量(4〜12g程度)であれば、1日あたりに必要なタンパク質量約70gの10〜15%程度の量にすぎず問題は無いと考える。なぜなら、たとえアミノ酸を多く摂取したとしても必要な量だけ体内に吸収され、余分なアミノ酸は腎臓で尿素に代謝され、水溶性ビタミンと同様尿中に排泄されてしまうからである。
【0005】
第2の理由として、アミノ酸は医薬品として幅広く利用されており数々の薬理作用が確認されていること、すなわち効くということである。例えば、分岐鎖アミノ酸(BCAA)のバリン、イソロイシンおよびロイシンにはタンパク質同化作用があり肝臓疾患の治療薬として用いられており、アルギニンには高アンモニア血症、免疫力の改善や尿素サイクル活性化、グルタミンには胃潰瘍の予防や治療に効果が認められ薬の主成分となっている。そして、アミノ酸20種類の混合物は、アミノ酸の輸液や経腸栄養剤として、術前および術後の栄養管理に欠かせないものとなっている。以上、日本必須アミノ酸協会「アミノ酸資料集I」(平成8年度改訂版)参照。
【0006】
第3の理由として、長期に安定性を確保できるサプリメントの製造技術や苦味のマスキング技術が開発されさらに安価になったということである。
【0007】
以上に示す様に「安全である」、「効果が体感できる」、「おいしくて安くなった」ことが、最近アミノ酸サプリメントが急速に普及してきた理由と考える。
【0008】
次に、スポーツにおけるアミノ酸ということでレビューをしてみる。
【0009】
アミノ酸が「パフォーマンスの向上」、試合やハードなトレーニング後の「早期筋力回復」や日常の良好な「コンディションを維持」等に有効であるという研究が報告されている(Antonio J他; Can J Appl Physiol 24: 1-14 (1999)、Applegate E; Int J Sport Nutr 9: 229-239 (1999)、Kobayashi K; 食の化学: 225,83-88 (1999)、およびWilliams MH; Clin Sports Med 18: 633-649 (1999))。
【0010】
これまでスポーツとの関連では、アミノ酸の中でも中枢性の疲労の軽減が期待できるBCAA(Blomstrand E他; Acta Physiologica Scandinavica 133: 115-121 (1988))や運動時に大切な作用をする各種ホルモンの分泌刺激性があるアルギニン(Maccario M他; Metabolism 43: 223-226 (1994)およびVan Haeften TW他; J Clin Endocri Metab 69: 1059-1064 (1989))、さらにアシドーシスや免疫力低下の予防やオーバートレーニングとの関連が報告されているグルタミン(Castell LM他; Eur J Appl Physiol 73: 488-490 (1996)、Castell LM他;Eur J Appl Physiol 75: 47-53 (1997)、Newsholme EA他; Nutr 13:728-730 (1997)、Rowbottom DG他; Sports Med 21: 80-97 (1996)およびWelbourne TC; Am J Physiol 253: F1069-1076 (1987))などが主に検討されてきた。
【0011】
これらの報告は、単品のアミノ酸を単回あるいは短期的に摂取したときのパフォーマンスや生理学的パラメーターの変化をとらえた研究が主体である。しかし、単品のアミノ酸を継続して摂取することは、アミノ酸のインバランス(Harper AE他; Physiol Rev 50: 428-558 (1970))を生じる危険性があり好ましいことではない。
【0012】
一方、アミノ酸混合物を栄養視点からアスリートが長期的摂取した研究は少ない。例えば、高所トレッキング時にBCAAを10g/日で21日間摂取したところ体重減少や体タンパク質の分解を抑制できたという報告(Schena F他; Eur J Appl Physiol 65: 394-398 (1992))がある一方で、高齢者がBCAAを6g/日で6週間摂取して運動を負荷しても筋肉組織の形態学的変化は認められなく(Freyssenet D他; Arch Physiol Biochem 104: 157-162 (1996))、またBCAAを2.9g/日で1〜6週間摂取しても疲労困憊までの運動時間に差が認められなかったなどの報告(Vukovich MD他; Int J Sport Nutr 7: 298-309 (1997))がある。
【0013】
アルギニンの長期摂取に関しては、30g/日で2週間摂取したところマラソンのタイムがかえって悪くなったという報告(Buchman AL他; Int J Sports Med
20: 315-321 (1999))がある。
【0014】
しかし、何種類のアミノ酸をどれくらいの量でどれくらいの期間摂取するとがアスリートにとって有用なのかについて調べた研究は殆ど無い。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、アスリートがアミノ酸混合物を栄養学的視点から摂取することにより、どのような効果が見られるのかについて検討し、延いては特にアスリートに適するアミノ酸組成物を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前項記載の目的を達成すべく鋭意研究の結果、特定のアミノ酸を特定の割合で経口摂取することにより造血および栄養状態の改善に効果のあることを見出し、このような知見に基いて本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明は、L−アルギニン、L−グルタミン、L−バリン、L−イソロイシンおよびL−ロイシンの5種のアミノ酸を、それぞれ、10〜40重量部、10〜40重量部、5〜20重量部、8〜30重量部および10〜35重量部の割合で含有することを特徴とする造血および栄養状態改善用アミノ酸組成物に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明のアミノ酸組成物の調製には特別の制限や困難はなく、所定のアミノ酸を所定の割合で含有せしめることを除いては、適宜常法に準ずることができる。
【0020】
本発明のアミノ酸組成物は、上記所定の5種のアミノ酸を上記所定の割合で単に混合して調製する他に、適宜の添加剤を使用して常法により調製することもできる。このような添加剤としては、味を調整改良する果汁、デキストリン、環状オリゴ糖、糖類(果糖ぶどう糖液糖、ショ糖)、酸味料、香料、抹茶粉末など、テクスチャーを改善する乳化剤、コラーゲン、全脂粉乳、増粘多糖類や寒天(ゼリー飲料の場合)など、更には前記5種のアミノ酸以外のアミノ酸、ビタミン類、卵殻カルシウム、パントテン酸カルシウム、その他のミネラル類、ローヤルゼリー、プロポリス、蜂蜜、食物繊維、アガリクス、キチン、キトサン、漢方生薬、コンドロイチン、カプサイシンなどの通常健康食品の成分として使用されているものを挙げることができる。
【0021】
本発明のアミノ酸組成物の製品形態には特別の制限はなく、経口摂取(摂食)できる形態であればいずれの形態でもよい。このような形態としては、適当な賦形剤を使用した粉末、顆粒、タブレット、液体(飲料、ゼリー飲料など)、キャンディ(チョコレートなど)等を挙げることができる。製品形態の極端な場合としては、上記5種のアミノ酸の上記割合の単なる粉体混合物(粉末)を挙げることができる。粉末の場合は、直接粉薬のようにそのまま水で飲んでもよいし、またオブラートに包んで飲むこともでき、あるいは水、牛乳、ジュースなどに溶解して飲むこともできる。
【0022】
本発明による造血や栄養状態の改善効果は、後記実験例1の結果を考慮して、必須成分である5種のアミノ酸を上記割合で1日当りの合計で4g以上(平均的成人男性)摂取することで奏せしめ得る。これより少量では目的の効果が奏されない。一方、過剰に摂取しても効果の向上は見込まれないので、1日当りの摂取量は最大約12gとすることができる。このような範囲に含まれる量として、例えば、後掲実験例1にみられる4〜7g程度/日を好ましい量として挙げることができる。従って、本発明のアミノ酸組成物の製品における必須成分であるアミノ酸の含有量は、1日当りの摂取回数も考慮して、適宜このような摂取量を満足せしめることのできる量とすればよい。
【0023】
【実施例】
以下、実験例により本発明を更に詳細に説明する。
【0024】
実験例1(5種類のアミノ酸によるドーズレスポンス実験)
(1)供試アミノ酸と実験の概要:
現在、着目されている3種のBCAA(branched-chain amino acids)バリン、イソロイシンおよびロイシン(以上、必須アミノ酸)ならびにアルギニンおよびグルタミン(以上、非必須アミノ酸)の合計5種のアミノ酸の混合物(以下、MMAと略称することがある)を、大学陸上部に所属するアスリートが30日毎に摂取量を変化させた場合に、各種血液パラメーターがどのように変化するかについて調べる。
【0025】
(2)被験者のプロフィール:
大学陸上部に所属する13名を被験者とした(年齢、21.0±0.5才;身長、172.5±0.4cm;体重、60.4±1.0kg、1500mの記録、4分0秒±5秒;5000mの記録、14分58秒±11秒。以上、値は全て平均値±SEM)。
【0026】
(3)実験プロトコール:
(a)実験期間中、被験者は各人、通常の食事を摂取し、普段どおりの生活をし、病気、怪我等の特別なことがあった場合は申し出るように指示した。
【0027】
(b)6ヶ月の実験期間中は、Washout期間(洗い流す期間という原義からアミノ酸を飲まない期間を云う)中も含めてアミノ酸及びその他のサプリメント類の摂取を行わないように指示した。
【0028】
(c)6ヶ月間にわたる毎月の練習量(走行距離および運動強度)はほぼ一定になるように事前に設定し、事前設定練習量に対して実際に達成できた割合を5%の単位で記した。
【0029】
(d)採血前日は、ハードなトレーニングを行わないようにし、採血は早朝(7:00〜9:00)に空腹状態で行った。
【0030】
(4)MMAの摂取及び採血手順:
以下に示すように、MMAの経口摂取量を後掲「アミノバイタル」のスティック1本/日(2.2g/日)から3本/日(6.6g/日)まで3段階に変化させた。MMAを30日間摂取する前および後で採血を行った。Washout期間として30日を設定した。
【0031】
(a)1〜2ヶ月目(最初の60日間)
実験開始のためのWashout(最初の30日間)後、MMAを摂取する前、と毎夕食後にMMAを2.2g(1日当たり合計2.2g)、30日間摂取した後に採血を行った(MMA1)。
【0032】
(b)3〜4ヶ月目(次の60日間)
同様にWashout後、MMAを摂取する前、と毎朝、昼、夕食後に2.2gずつ(1日当たり合計6.6g)を30日間摂取した後に採血を行った(MMA3)。
【0033】
(c)5〜6ヶ月目(その次の60日間)
Washout後、MMAを摂取する前、と毎朝、夕食後に2.2gずつ(1日当たり合計4.4g)を30日間摂取した後に採血を行った(MMA2)。
【0034】
(5)MMAの組成:
必須アミノ酸3種類(バリン、イソロイシンおよびロイシン)と非必須アミノ酸2種類(アルギニンおよびグルタミン)を合計2,200mg(MMA)と糖類、酸味料、香料、甘味料等2,300mgとを無地アルミスティック(1本あたり4,500mg)に含有する特別組成のアミノ酸製剤「アミノバイタル」(味の素株式会社販売)を使用した。因みに、上記MMAにおける5種のアミノ酸の割合は、L−アルギニン24%、L−グルタミン24%、L−バリン14%、L−イソロイシン17%、そしてL−ロイシン21%である(合計100%)。
【0035】
(6)血液分析項目及び分析法:
(a)肘静脈血10mlを採血して遠心分離後生化学分析用とし、さらに2mlをEDTA−2Na入り真空管に一般末梢血(CBC)分析用として採血した。
【0036】
(b)総コレステロール、高比重リポ蛋白、低比重リポ蛋白、アルプミン、尿素窒素、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ、クレアチンフォスフォキナーゼおよびラクテートでヒドロゲナーゼは日立製作所製「自動分析装置7170型」で分析し、一般末梢血の白血球、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、および血小板は、「東亜医用電子K−4500型」で分析した。フェリチンは酵素イミュノアッセイ法で分析した。
【0037】
(c)血中乳酸、血中アンモニアおよび血糖値は、ランセットを用い指先末梢血を数十μlサンプリングし、それぞれ、京都第一科学社製の「ラクテートプロ」(Makita S他; J Clin Sport Med 14: 815-819 (1997))、「アミチェックメーター」(Matsunaga T他; 小児科臨床 51:303-310 (1998))および「グルテストエース」(Kuwajima M他; 日本臨床 56: 11-18 (1998))を用いて測定した。
【0038】
(7)統計処理方法:
wash out後、すなわちアミノ酸5種混合物(MMA)を摂取した前および後を比較した(ペア−ドt検定)。有意差検定の結果、p<0.05の場合に*マーク、そしてp<0.01の場合に**を記した。数字は平均値±SEMである。
【0039】
(8)結果:
結果を下記第1表に示す。6ヶ月の実験期間中に病気や怪我等で実験を中断する被験者はいなかった。
【0040】
【表1】
Figure 0003827923
【0041】
この実験期間中における被験者の体重は60.4〜61.3kgであり、練習量は70〜80%であった。そして、各アミノ酸摂取量の前と後との間で有意差は認められなかった。
【0042】
以下にMMA摂取量と血液パラメーターの変化とについての結果を示す。
【0043】
(a)有意差が認められた貧血関連パラメーターを図1に、そして栄養関連パラメーターを図2に示す。
【0044】
(b)1日当たり6.6gのMMA摂取(MMA3)により総コレステロール、アルブミン、高比重リポ蛋白、およびヘマトクリットは有意(p<0.05)に増加した。一方、血中尿素、白血球、および血小板は有意(p<0.05)に減少した。
【0045】
(c)1日当たり4.4gのMMA摂取(MMA2)では、赤血球、ヘモグロビン、およびヘマトクリットは有意(p<0.05,0.01)に増加し、そしてLDHは有意(p<0.05)に減少した。
【0046】
(d)1日当たり2.2gのMMA摂取(MMA1)では、すべての項目において変化は認められなかった。
【0047】
(9)考察:
本実験では、被験者の体質、年齢、運動鍛錬度、生活環境等をできるだけ均質になるように設定した。被験者は、週に5日間、一日2〜3時間運動をするレベルの大学陸上部に所属するアスリートを選定した。
【0048】
一般的に血液量は、季節による温度変化、持久運動量の変化などで変動すると報告(Convertimo VA; Med Sci Sports Exerc. 23: 1338-1348 (1991)およびDavy KP他; J Appl Physiol 76: 2059-2062 (1994))されているが、今回の実験期間が秋から春の涼しい季節であり血液濃縮が起きやすい夏をはずしていること、被験者の持久運動負荷量に有意差が認められず、体重がほぼ一定であったことなどから、血液濃縮は無視できるレベルと推定する。これはMMA1〜3におけるMMA摂取前(washout後)の各種データ間で有意差が認められなかったことからも支持される。このようにwashout後のデータは、ほぼ一定であったことから、30日間のwashout期間は充分であり、MMAの摂取前と後とのデータ比較を行うことに問題は無いと考える。
【0049】
MMA3のデータからMMAを6.6g/日摂取することで、造血作用(ヘマトクリットの増加(p<0.05)と赤血球の増加傾向)および栄養状態の改善(総コレステロール、高比重リポ蛋白およびアルブミンの増加(p<0.05))が見られたことについて考察する。
【0050】
まず、造血作用について見るとMMA2でも、ヘモグロビン、赤血球およびヘマトクリットが有意(p<0.05、p<0.01)に増加し、同様の傾向が得られたことから、MMAには造血を促進作用があると考えられる。
【0051】
このようにアミノ酸を長期間にわたり経口摂取することで、造血作用が認められたという報告は、医療分野においていくつかある。例えば、肝臓病の患者にBCAAあるいはBCAAが多く含まれるアミノ酸混合物を経口投与したところ、ヘモグロビン、赤血球およびヘマトクリットが増加したと言う報告(Muto Y他; JJPEN: 11,1119-1134 (1989)およびSuga M他; JJPEN 16: 221-226 (1994))である。
【0052】
次に、栄養状態が改善したことについては、同様に肝臓病の患者にBCAAあるいはBCAAが多く含まれるアミノ酸混合物を経口投与したところ、アルブミンの増加(Muto Y他; JJPEN: 11,1137-1154 (1989)、Muto Y他; JJPEN: 14,369-393 (1992)、Ohashi H他; 日消誌: 8,1645-1653 (1989)およびWatanabe A; JJPEN 11: 105-107(1989))、さらにアルブミンの低下を遅延できたという報告(Yamada N他; 北里医学: 16,268-277(1986))などがある。
【0053】
以上のことから、本実験でみられた、造血および栄養状態の改善効果は、BCAAが関与するところが大きいと推定される。しかし、これらの報告はいずれも肝臓病の患者に対してであり、アミノ酸の経口摂取量は12〜18g/日で、期間は1〜6か月であった。
【0054】
本実験の様に、4.4〜6.6g/日という少量のMMAを持久運動アスリートが摂取することで、上述する効果が見られたことは初めての知見である。
【0055】
アミノ酸ではなくて、タンパク質を摂取することで同じような効果が得られるかについてChengらが検討している(Cheng AHR他; Am J Clin Nutr 31: 12-22(1978))。タンパク質の摂取量を体重1kg当たり0.4g、0.8gおよび1.6gと3段階に変化させながら血液分析を実施したが、造血(ヘモグロビン、赤血球およびヘマトクリットの増加)作用は見られず、血糖値およびアルブミン値も変化しなかった。そして、マイナス面として、血中尿素が有意(p<0.05〜0.001)に増加したと報告している。このようにタンパク質を多く摂取しても、造血作用や栄養状態の改善は認められず、かえって血中尿素が増加し、腎臓の窒素代謝に負担がかかることが判った。
【0056】
本実験で得られたように4.4g〜6.6g/日という少量の5種類のアミノ酸混合物(MMA)を摂取することで上述の効果が得られる方が、タンパク質を多く摂取するよりも腎臓にも負担かけないという点で好ましいと言える。
【0057】
以上示すように、持久運動アスリートが、1日値当たり4.4g〜6.6gのMMAを30日間摂取することは、造血作用および栄養状態の改善が見られ有用であることが明らかになった。このように造血効果が得られるということは、持久運動を行うアスリートにとり有酸素能力の向上につながり、パフォーマンスアップが期待できる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、造血および栄養状態の改善効果に優れ、特に持久運動アスリートに有用なアミノ酸組成物を容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例1において有意差が認められた貧血関連パラメーターを示す。
【図2】実験例1において有意差が認められた栄養関連パラメーターを示す。

Claims (2)

  1. アミノ酸としては、L−アルギニン、L−グルタミン、L−バリン、L−イソロイシンおよびL−ロイシンの5種のみを、しかもこれら5種のアミノ酸を、それぞれ、10〜40重量部、10〜40重量部、5〜20重量部、8〜30重量部および10〜35重量部の割合で含有し、かつ、含有総アミノ酸量換算で1単位包装当り4〜12gを含有することを特徴とするアスリート用の造血および栄養状態改善用アミノ酸組成物。
  2. 該含有総アミノ酸量換算で1日当り4〜12gの摂取量であることに加え、少なくとも30日間摂取されることを特徴とする請求項1記載のアスリート用の造血および栄養状態改善用アミノ酸組成物。
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