JP3827757B2 - 磁気記録媒体のヘッドバニッシュ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は一般的に記録用媒体のヘッドバニッシュ及び評価に関し、更に詳しくは、回転駆動される記録(例えば磁気記録)のための媒体上にヘッドを浮上させるときの限界グライドハイトを求める方法と、媒体上の突起をヘッドにより削り取るヘッドバニッシュの方法と、媒体及びヘッドの耐久性の加速評価方法と、減圧可能なチャンバ内に収容されたディスクエンクロージャ内の塵埃数を測定する装置とに関する。
【0002】
近年、コンピュータシステムにおいて取り扱うデータ量が増大したことに伴い、磁気ディスク装置においても小型で大容量の装置が要求されてきている。そのため、単位面積あたりの記録密度を大きくするために、ヘッドと媒体間のスペーシングを小さくすることが必要になってきている。そこで、スペーシングが小さい状況下でのヘッドと媒体の接触の回避、ヘッドと媒体の間のスペーシングの最適化及び耐久性のあるヘッド・媒体の開発のための評価装置又は方法が要望されている。
【0003】
【従来の技術】
磁気ディスク装置において、ヘッドと媒体の接触を回避するための技術として、ヘッドバニッシュにより媒体の突起を削り取る方法が特開平6−052543号公報等に開示されている。いずれの方法においても、バニッシュ用に特別に設計された専用ヘッドを用い、バニッシュされた媒体を磁気ディスク装置に実装することにより、磁気ディスク装置の製造が行われる。
【0004】
一方、ヘッド・媒体の耐久性評価に関しては、実機のランニングによる評価では評価に時間がかかるため、耐久性評価用に特殊なヘッド・媒体を製作し、加速試験により評価期間を短くする試みがなされている。
【0005】
また、減圧することによりヘッド浮上量を小さくし、ヘッド・媒体の耐久性を評価する方法が特開平2−80975号公報、特開平3−52177号公報に開示されているが、いずれの方法も評価を行う気圧条件の設定が明確ではなかった。
【0006】
他方、ヘッド・媒体の磨耗状態を知る方法として、磁気ディスク装置内の塵埃測定が一般に行われているが、装置を減圧チャンバ内に収容している場合には、塵埃測定のためのパーティクルカウンタ側の吸引力が減圧チャンバの真空ポンプに負けてしまい塵埃測定のための吸引を行うことができず、減圧下でのランニング評価に際しては、ランニング後に一旦気圧を大気圧まで戻してから塵埃測定を行う必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、記録媒体のヘッドバニッシュ及び評価を良好に行い得るようにするところにある。
【0008】
具体的には、本発明の第1の目的は、記録媒体のヘッドバニッシュ及び評価に適用可能な限界グライドハイトを求める方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、媒体上の突起をヘッドにより良好に削り取るヘッドバニッシュの方法を提供するところにある。
【0009】
本発明の第3の目的は、媒体及びヘッドの耐久性の良好な加速評価方法を提供することにある。
本発明の第4の目的は、減圧可能なチャンバ内に収容されたディスクエンクロージャ内の塵埃数を測定する装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、磁気記録媒体上の突起をヘッドにより削り取るヘッドバニッシュの方法であって、(a)上記磁気記録媒体を減圧可能なチャンバ内で回転させて上記ヘッドを上記磁気記録媒体上に浮上させるステップと、(b)上記チャンバ内を上記ヘッドの所定の浮上量が得られるまで減圧して、回転している上記磁気記録媒体に上記ヘッドを接触させるステップとを備え、上記ヘッドは上記磁気記録媒体と共にディスクエンクロージャ内に収容されて記録/再生のために用いられる磁気ヘッドであることを特徴とする磁気記録媒体のヘッドバニッシュ方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳細に説明する。
図1は本発明方法に適用可能な装置の基本構成を示す図である。この装置は、磁気ディスク装置に組み込む前の媒体(記録媒体;例えば磁気ディスク)を単独で処理するのに適している。
【0017】
媒体2はスピンドルモータ4により回転駆動される。スピンドルモータ4は基板6上に設けられている。
符号8は架台10により媒体2の径方向に移動可能(即ちシーク動作可能)に支持されるヘッドであり、このヘッド8はディスク2が静止している状態にあっては媒体2上に接触し、媒体2が回転駆動されているときには、媒体2上に浮上する。そのときの浮上量は、媒体2の回転における周速及び気圧等によって決定される。
【0018】
媒体2、スピンドルモータ4、基板6、ヘッド8及び架台10は減圧可能なチャンバ12内に収容されており、このチャンバ12内は真空ポンプ14によって減圧することができるようになっている。
【0019】
図2は本発明方法に適用可能な装置の他の基本構成を示す図である。この装置は、磁気ディスク装置に組み込まれた媒体を処理するのに適している。尚、全図を通して実質的に同一の部分には同一の符号が付されている。
【0020】
媒体2は、密閉可能なディスクエンクロージャ16を有する磁気ディスク装置18内に実装されている。磁気ディスク装置18は、ディスクエンクロージャ16内に設けられた媒体2、スピンドルモータ20、ヘッド22、アクチュエータ24及び循環フィルタ26を有している。
【0021】
スピンドルモータ20は媒体2を回転駆動するためのものであり、ヘッド22は図1のヘッド8に対応している。ヘッド22は磁気記録/再生に用いられるという点においてのみヘッド8(図1参照)に対して限定的である。
【0022】
アクチュエータ24はヘッド22を媒体2の半径方向に移動可能に支持するためのものである。また、循環フィルタ26はディスクエンクロージャ16内の塵埃をトラップするためのものである。
【0023】
磁気ディスク装置18は、真空ポンプ14に接続される減圧可能なチャンバ12内に収容されている。ディスクエンクロージャ16内の気圧は、ディスクエンクロージャ16に設けられた図示しない呼吸フィルタの作用によって、チャンバ12内の気圧と等しい。
【0024】
図1及び図2においては、媒体及びヘッドがそれぞれ1つずつ図示されているが、複数の媒体及びヘッドが用いられていてもよい。
図1又は図2に示される装置を用いて本発明において特徴的な限界グライドハイトを求める方法について説明する。
【0025】
図3は、媒体上におけるヘッドの浮上高さの気圧依存性を示すグラフである。縦軸はヘッドの浮上高さ(nm)、横軸は媒体の径方向におけるヘッドの位置を示している。横軸において、R1,R2,R3,R4は、それぞれ、ヘッドがCSSゾーン、データゾーンの最も内側、データゾーンの中央、データゾーンの最も外側に位置していることを表す。CSSゾーンは、媒体におけるデータゾーンよりも内側に設定されており、ヘッドは通常媒体の静止時にこのCSSゾーンに位置する。
【0026】
図3のグラフから明らかなように、気圧を減少させていくのに従って、媒体の径方向のどの位置においてもヘッドの浮上高さが減少していることが明らかである。従って、媒体の径方向の位置を特定すれば、気圧からヘッドの浮上高さを知ることができる。
【0027】
次に図4によりヘッドの媒体に対する接触頻度の測定方法の一例を説明する。この測定方法では、ヘッドの媒体に対する接触頻度は、ヘッドに生じる弾性波の検出によって測定される。具体的には、図4に示されるように、ヘッド8(又は22)の近傍にAE(アコースティック・エミッション)センサ等の弾性波検出手段28を設けておき、その出力信号に基づき接触頻度の測定が行われる。
【0028】
弾性波検出手段28は架台10(又はアクチュエータ24)に設けられていてもよい。接触頻度は弾性波検出手段28の出力パルスのカウント値に対応するので、カウンタを含む通常のデジタル回路を用いることによって、接触頻度を測定することができる。また、弾性波検出手段28の出力信号をRMSメータ(実効値計)に入力し、出力信号の実効値により接触頻度を測定してもよい。
【0029】
図4において、符号Pは媒体の突起を表しており、その高さはF1〜F5で表されている。F5は最大突起高さを表し、この例ではF2が後述する限界グライドハイトを表している。
【0030】
図5は限界グライドハイトを求める方法の説明図である。図5の(A)において、上側部分の縦軸は浮上量(nm)及び気圧(atm)を表し、下側部分の縦軸は接触頻度を表し、それぞれ横軸は経過時間を表している。また、図5の(B)において、縦軸は接触頻度の変化率(%)、横軸は気圧及び浮上量を表している。
【0031】
図1又は図2の装置を用いた限界グライドハイトを求める方法について、順を追って説明する。
(1)大気圧(1.0atm)状態でヘッドを媒体のCSSゾーンにロードする。
【0032】
(2)媒体を回転させてヘッドを浮上させる。
(3)ヘッドを媒体のデータゾーンの外側(アウタ)から内側(インナ)へ往復動作させながら、チャンバ12内を徐々に減圧してヘッドの浮上量を下げてゆく。
【0033】
(4)弾性波検出手段28によりヘッドと媒体の接触し始めを検知し、そのときの気圧a5を記録しておく。
(5)ヘッドと媒体の接触し始めの気圧a5を基準として段階的に気圧を減少させながらヘッドを媒体上で往復動作させ、そのときの気圧と接触頻度を記録していく。気圧は例えばa5からa4,a3,a2,a1のように段階的に減少する。
【0034】
(6)ヘッドが媒体に少なくとも間欠的に接触する条件の下で、例えば、気圧a1よりも小さい気圧a0の下で、ヘッドをデータゾーンのアウタからインナへ往復動作させることにより媒体をヘッドバニッシュする。
【0035】
(7)気圧をa5に戻す。
(8)再度気圧a5を基準として段階的に気圧を減少させながら、ヘッドを媒体上で往復動作させ、そのときの気圧と接触頻度を記録していく。
【0036】
(9)(5)と(8)のデータから各気圧での接触頻度の変化率を求め、隣り合う気圧条件で接触頻度の変化率の差が最も大きい低い方の気圧(この例ではa2気圧)に相当する浮上量の値を媒体の限界グライドハイトとする。
【0037】
尚、気圧a0,a1,a2,a3,a4及びa5にそれぞれ対応するヘッドの浮上量f0,f1,f2,f3,f4及びf5は、図3のグラフ等に基づき容易に知ることができる。
【0038】
従って、図示された例では、限界グライドハイトはf2となる。
このようにして求められた限界グライドハイトは、ヘッドクラッシュが生じる状態であるか生じない状態であるかを判別する上で、極めて有用である。ここで、ヘッドクラッシュとは、媒体及びヘッドの少なくともいずれか一方が損傷することを言う。
【0039】
例えば図5において説明すると、浮上量がf5よりも大きい状態は、ヘッドが完全浮上しておりヘッドが媒体に接触することがない第1モードに対応しており、浮上量がf2からf5の範囲にある状態は、ヘッドが媒体に間欠的に接触するがヘッド又は媒体の損傷は進行しない第2モードに対応し、浮上量が限界グライドハイトf2よりも小さい状態は、ヘッドが媒体に間欠的に接触し、ヘッド又は媒体の損傷が進行し、ヘッドクラッシュに至る第3モードに対応している。
【0040】
従って、ヘッドの浮上量を限界グライドハイトに設定してヘッドバニッシュを行うことによって、媒体上の突起を良好に削り取ることができ、あるいはヘッドの浮上量を限界グライドハイトに設定して媒体及びヘッドの耐久性の加速評価を行うことによって、磁気ディスク装置の実機に即した耐久性の評価を行うことができる。
【0041】
図6は限界グライドハイトを求める他の方法の説明図である。まず、媒体の回転速度を増大させてゆき、ヘッドに生じる弾性波の大きさと回転速度との関係を表すアバランシュカーブを得る。図6の上側部分において、縦軸は弾性波の大きさに対応するAE出力(mVrms)を表し、横軸は媒体の回転速度(rpm)を表している。
【0042】
媒体の回転速度を増大させてゆくと、まずAE出力が増大していき、最大になった後次第に低下し、ある回転速度(この例では1620rpm)以上の領域では一定になる。この領域をアバランシュカーブの平坦領域と称する。
【0043】
図6の下側部分において、縦軸は媒体の径方向におけるヘッドの位置を表し、横軸は媒体の回転速度に対応して算出されるヘッドの浮上高さを表している。符号32は媒体の径方向における最大突起高さの分布を示しており、符号34は限界グライドハイトの分布を示している。
【0044】
図6の上側部分及び下側部分の対応関係から、限界グライドハイトは、アバランシュカーブ30において平坦領域を与え始める回転速度によって決定されることがわかる。この方法によって求められた限界グライドハイトは、図5により説明した方法によって求められた限界グライドハイトと同様、第2モードと第3モードの間の境界に相当する。
【0045】
次に、図1の装置を用いたヘッドバニッシュの方法について説明する。まず、図1のように、媒体2及びヘッド8をチャンバ12内に収容し、スピンドルモータ4を回転させることで、ヘッド8を浮上させる。この状態で、チャンバ12内の気圧を真空ポンプ14によって低下させて、ヘッド8の浮上高さを所定の浮上量に設定し、ヘッド8を媒体2に接触させることによって、媒体2上の突起をヘッド8により削り取るようにする。
【0046】
このヘッドバニッシュに際しては、架台10によりヘッド8を媒体2の径方向に往復動作させることによって、データゾーンの突起を均一に削り取るようにする。ヘッド8の媒体2の径方向における移動範囲は、例えばデータゾーンの最インナから最アウタである。
【0047】
この方法では、バニッシュ専用のヘッドを用いてもよいが、実機に使用するヘッドも採用可能である。チャンバ12内の気圧を変化させてヘッド8の浮上量を変化させることによって、バニッシュ条件を種々設定することができるので、簡単に最適な条件で媒体2をヘッドバニッシュすることができる。所定の浮上量を図5又は図6の方法により求めた限界グライドハイトに設定することによって、ヘッドクラッシュに至らせることなく良好にヘッドバニッシュを行うことができる。
【0048】
図2の装置を用いたヘッドバニッシュの方法は次の通りである。この方法では、ディスクエンクロージャ16内に収容されて記録/再生のために用いられる磁気ヘッド22によってヘッドバニッシュが行われる。
【0049】
この方法では、まずチャンバ12内に磁気ディスク装置18を収容し、真空ポンプ14によってチャンバ12内の気圧を低下させることによって、磁気ディスク装置18におけるヘッド22の浮上高さを所定の浮上量に設定して、ヘッド22が媒体2に接触するようにする。そしてこの状態で、アクチュエータ24によりヘッド22を媒体2の径方向に移動させることによって、媒体2がヘッドバニッシュされる。バニッシュにより生じた媒体2の磨耗粉は、循環フィルタ26にトラップされる。
【0050】
この方法では、磁気ディスク装置を組み立ててから減圧状態でバニッシュを行うので、この磁気ディスク装置の実使用環境ではヘッド22は媒体2に接触しなくなる。また、磁気ディスク装置を組み立ててからバニッシュを行うようにしているので、磁気ディスク装置の製造が容易になる。
【0051】
ヘッド22及び媒体2がそれぞれ複数ある場合には、一回のバニッシュ動作により同時に各媒体についてのバニッシュが完了するので、全体でのバニッシュに要する時間を短縮することができる。
【0052】
更に、図1の装置を用いた方法におけるのと同様に、ヘッド22の所定の浮上量を図5又は図6の方法により求めた限界グライドハイトに設定しておくことによって、ヘッドクラッシュを生じさせることなく良好にバニッシュを行うことができる。
【0053】
次に、図1又は図2の装置を用いた媒体及びヘッドの耐久性の加速評価方法について説明する。この方法は例えば次の順序で行われる。
(1)図5又は図6の方法により限界グライドハイトを求める。
【0054】
(2)真空ポンプ14によってチャンバ12内の気圧を低下させ、ヘッド8又は22の浮上高さが(1)で求められた限界グライドハイトにほぼ等しくなるようにする。
【0055】
(3)この限界グライドハイトにて媒体2の回転を開始し、媒体及びヘッドの少なくともいずれか一方が損傷するまでの時間を測定する。
従来方法では、減圧によりヘッド浮上量を下げる量が適切に設定されていなかったので、加速評価における損傷するまでの時間の測定結果と実機の評価結果との間に相関が取れないという問題があったものであるが、本実施形態の方法では限界グライドハイトが得られるようにチャンバ内の気圧を制御しているので、加速評価に最適なヘッドの浮上高さを得ることができ、実機のランニング評価と十分相関の取れる加速評価が可能になる。
【0056】
尚、この加速評価方法においては、ヘッドを媒体の径方向に移動させながら試験を行ってもよいし、ヘッドを媒体の径方向の予め定められた位置に固定して試験を行ってもよい。
【0057】
損傷するまでの時間は、ヘッドの媒体との接触頻度の変化、媒体に対するリード/ライト特性の変化、或いはディスクエンクロージャ内の塵埃数の変化により測定することができる。
【0058】
図7は図1の装置の実施形態を示す図である。チャンバ12は、評価対象物が収容されるチャンバ本体36と、チャンバ本体36に対して開閉可能な扉38と、チャンバ本体36及び扉38間に介在する密閉用のパッキン40とからなる。
【0059】
チャンバ12内は、バキュームバルブ42を介して真空ポンプ14により吸引可能であり、これによりチャンバ12内を減圧することができるようになっている。又、チャンバ12には、減圧されたチャンバ12内を大気圧に戻す等の動作を行わせるために、リークバルブ44が設けられている。
【0060】
チャンバ12内の気圧は圧力センサ46によって検出され、その検出信号は制御装置48へ供給される。制御装置48は、圧力センサ46からの信号及び予め記憶されたプログラムに従って真空ポンプ14の動作並びにバキュームバルブ42及びリークバルブ44の開閉を制御する。
【0061】
符号50はヘッド8の媒体2に対する接触数又は接触頻度を測定するためのタッチカウンタを表し、このタッチカウンタ50には、弾性波検出手段28の出力信号がタッチ信号線52によって入力される。
【0062】
ドライバ54は、制御信号線56を介してスピンドルモータ4の回転と架台10の媒体径方向の動作とを制御する。
タッチ信号線52及び制御信号線56はいずれもハーメチック端子58を介してチャンバ12から引き出されており、これによりチャンバ12内の密閉が保たれることになっている。
【0063】
制御装置48はこれまでに説明した本発明方法を実行するようにプログラムされており、重複を避けるためにその説明は省略する。
図8は図2の装置の実施形態を示す図である。この装置は、図7の実施形態と対比して、チャンバ12内に組み立てが完了した磁気ディスク装置18を収容するためのいくつかの変更が施されている点で特徴付けられる。
【0064】
磁気ディスク装置18におけるヘッドの媒体に対する接触回数又は接触頻度を示すタッチ信号は、タッチ信号線52を介してタッチモニタシステムへ供給される。また、媒体上におけるヘッドの円周方向及び径方向の位置情報は、DE制御信号線62を介してタッチモニタシステムへ供給される。タッチモニタシステム60は、例えば、信号線52及び62により供給された信号に基づき演算を行い、ヘッドが媒体のどの位置に接触したかを明らかにするためのタッチマップを作成する。
【0065】
シークテスタ64は、インタフェースケーブル66を介して磁気ディスク装置18を制御するためのものである。信号線52及び62並びにインタフェースケーブル66はハーメチック端子58を介してチャンバ12から引き出されており、これによりチャンバ12内の密閉が保たれるようになっている。
【0066】
組み立てが完了した磁気ディスク装置18においてヘッドバニッシュを行う場合には、制御装置48が圧力センサ46から得られる情報に基づいて真空ポンプ14、バキュームバルブ42及びリークバルブ44を制御してチャンバ12内の気圧を必要な値に維持しながら、シークテスタ64が磁気ディスク装置18を動作させる。そして、その時のタッチ信号をタッチモニタシステム60で検出しながら、ヘッドバニッシュが実行される。
【0067】
また、限界グライドハイトを求める方法を実施する場合にも、チャンバ12内の気圧の制御により、ヘッドバニッシュとタッチ検出とを行う。
媒体及びヘッドの耐久性の加速評価方法を実施する場合には、ヘッド浮上量が限界グライドハイトと等しくなるような気圧条件を基準にしてランニングを行う。この場合、タッチモニタシステム60は動作させなくてもよい。
【0068】
図9は本発明方法を実施する場合に有用な塵埃数測定装置の実施形態を示す図である。チャンバ12はバキュームバルブ42を介して真空ポンプ14に接続される。チャンバ12にはリークバルブ44が設けられている。
【0069】
チャンバ12内に収容される磁気ディスク装置18は、媒体2及びヘッド22等が収容されるディスクエンクロージャ16を有しており、このディスクエンクロージャ16にはディスクエンクロージャ16の内外の気圧を等しくするための呼吸フィルタ68が設けられている。
【0070】
ディスクエンクロージャ16内の塵埃数を測定するための粒子カウンタ70は、通過する空気中の単位時間あたりの塵埃数を測定するための光散乱タイプ或いは凝縮核タイプのセンサ72と、単位時間あたりの空気流量が一定になるように吸引を行うマスフローコントローラ74と、流通空気中の塵埃をトラップするためのフィルタ76とを含む。
【0071】
ディスクエンクロージャ16内の塵埃を含む空気は、吸入側チューブ78を介してセンサ72へ取り込まれる。センサ72の空気出力はマスフローコントローラ74へ供給され、マスフローコントローラ74の空気出力はフィルタ76へ供給される。そして、フィルタ76の空気出力が排出側チューブ80を介してチャンバ12内に戻される。
【0072】
マスフローコントローラ74は、センサ72及び吸入側チューブ78を介してディスクエンクロージャ16内を吸引するためのブラシレスDCブロア82と、ブロア82の空気出力を2分岐するためのフローバイパスエレメント84と、分岐空気出力の一方の単位時間あたりの空気流量を測定するためのマスフローセンサ86と、マスフローセンサ86の出力レベルが一定になるようにブロア82を制御するPWMスピードコントローラ88とからなる。そして、フローバイパスエレメント84の他方の分岐空気出力がフィルタ76へ供給される。
【0073】
排出側チューブ80の空気出力は、ディスクエンクロージャ16内に供給されてもよい。
この構成によると、チャンバ12内の気圧の変化により一時的に空気流通経路内に圧力勾配が発生したとしても直ちに吸引流量を一定にすることができるので、減圧下においても塵埃数を良好に測定することができる。また、吸入側チューブ78及び排出側チューブ80を用いて閉じた径を構成しているので、ブラシレスDCブロア82として容量の小さいものを用いることができる。
【0074】
尚、本発明は磁気ディスクだけでなく、光ディスク、光磁気ディスク等の記録媒体にも適用可能である。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、磁気記録媒体上の突起を磁気ヘッドにより良好に削り取ることが可能な磁気記録媒体のヘッドバニッシュ方法の提供が可能になるという効果を生ずる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に適用可能な装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明方法に適用可能な装置の他の基本構成を示す図である。
【図3】ヘッドの浮上高さの気圧依存性を示すグラフである。
【図4】ヘッドの媒体に対する接触頻度の測定方法の説明図である。
【図5】限界グライドハイトを求める方法の説明図である。
【図6】限界グライドハイトを求める他の方法の説明図である。
【図7】図1の装置の実施形態を示す図である。
【図8】図2の装置の実施形態を示す図である。
【図9】塵埃数測定装置の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
2 媒体
4 スピンドルモータ
8,11 ヘッド
10 架台
12 チャンバ
14 真空ポンプ
16 ディスクエンクロージャ
24 アクチュエータ
28 弾性波検出手段
Claims (1)
- 磁気記録媒体上の突起をヘッドにより削り取るヘッドバニッシュの方法であって、
(a)上記磁気記録媒体を減圧可能なチャンバ内で回転させて上記ヘッドを上記磁気記録媒体上に浮上させるステップと、
(b)上記チャンバ内を上記ヘッドの所定の浮上量が得られるまで減圧して、回転している上記磁気記録媒体に上記ヘッドを接触させるステップとを備え、
上記ヘッドは上記磁気記録媒体と共にディスクエンクロージャ内に収容されて記録/再生のために用いられる磁気ヘッドであることを特徴とする磁気記録媒体のヘッドバニッシュ方法。
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