JP3827084B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は燃料噴射弁に関し、特に気筒内に燃料を直接噴射する筒内燃料噴射用の燃料噴射弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の燃料噴射弁は、弁座の下流側に設けられた燃料噴射孔と、燃料を燃料噴射孔より噴出させる弁体とを備え、弁体の開閉を制御することによって燃料の噴射量を制御する燃料噴射弁において、流路側に凸型となり連続した縦断面形状をもつ弁座、および直線の燃料流路側の縦断面形状の弁体先端部を備えたものであり、弁体先端部に噴射口よりも直径の小さな突起を設けたものである。(例えば特許文献1参照)
【0003】
また、別の従来の燃料噴射弁に於いては、弁座の上流側に設けられ、供給された燃料に旋回力を与える燃料旋回部材と、弁座の下流側に設けられた燃料噴射孔と、燃料を燃料噴射孔より噴出させる弁体とを備え、弁体の先端に、燃料噴射孔の形より直径が小さい突起を形成したものである。(例えば特許文献2参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平5−113163号公報、図5、6
【特許文献2】
特許第3079794号公報、図7〜9
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の燃料噴射弁に於いては、弁座と弁体との接触部から噴射口に至るまでの環状燃料流路の流路断面積が、弁体本体と突起部との間の立ち上がり変曲点から下流側で急激に増大するため、燃料の流速が低下して変曲点部分によどみが生じ、カーボンデポジットの付着の原因となるという問題があった。
【0006】
従って、この発明の課題はカーボンデポジットの少ない燃料噴射弁を得ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、この発明の燃料噴射弁は、燃料の流れの方向に沿って次第に直径が小さくなる先細り流路を形成する弁座面および先細り流路と同軸に整列して下流側で連通したほぼ円筒形の噴出口を有する弁座と、弁座面に接触部で離接して噴出口への燃料の供給を制御する弁体であって、接触部を形成する球面部および球面部から変曲部で立ち上がったほぼ円錐形の突起を有する弁体と、弁体を作動させる作動装置とを備えた燃料噴射弁であり、弁体の突起は、弁座面と弁体との間に形成される環状流路の断面積が、少なくとも接触部と噴射口との間では、燃料の流れ方向に沿ってほぼ一定となるようにした突起であり、もって燃料の流速の変化を抑制した燃料噴射弁である。
【0008】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1乃至図4には本発明の燃料噴射弁の第1の実施形態を示し、図1は燃料噴射弁の断面図、図2および図3は弁体先端部と弁座との関係を示す拡大断面図、図4は弁体先端部と弁座との間の燃料流路とデポジットの付着状態とを示す断面図である。
【0009】
図1に示す如く、燃料噴射弁1はソレノイド装置2を備えており、ソレノイド装置2は磁気回路のヨーク部分でもあるハウジング3と、磁気回路の固定鉄心部分であるコア4と、コイル5と、磁気回路の可動鉄心部分であるアマチュア6と、アマチュア6を附勢するばね13と、アマチュア6を摺動可能に保持するホルダ14とを備えている。このようなソレノイド装置2には弁装置7が連結されていて弁装置7の開閉動作をさせるので、ソレノイド装置2は作動装置である。弁装置7はアマチュア6に連結された弁体8と、ハウジング3にホルダ14を介して連結された弁本体9と、弁本体9内に設けられて燃料流れに旋回運動を与えるスワラ10と、弁体8が離接して噴射口15を開閉し、燃料の流れを制御する弁座11と、弁体8の移動を制限するストッパ12とを備えている。このような燃料噴射弁自体の動作は周知のものと同様であるのでここでは説明しない。
【0010】
図2乃至図4にはこの発明の燃料噴射弁1の弁体8と弁座11との関係を拡大して示してある。これらの図に於いて、図2および図3は燃料噴射弁1が閉位置の状態を示し、図4は燃料噴射弁1が開位置の状態を示している。燃料は弁本体9と弁体8との間に形成される管状の流路を通り、スワラ10の外周と弁本体9との間の軸方向流路を通り、スワラ10と弁座11との間の流路を径方向内向きに流れ、弁体8の先端部の接触部16と弁座11の弁座面17との間の環状の隙間を通って噴射口15に到達する。このとき燃料は、スワラ10によって径方向内向きおよび周方向の方向成分を持つ旋回運動を与えられているので、噴射口15内を旋回しながら軸方向に進んで噴射口15の出口から噴霧状態で外部へ噴射される。
【0011】
このように、燃料噴射弁1の弁座11は、燃料の流れの方向に沿って次第に直径が小さくなる先細り流路を形成する弁座面17と、弁座面17に対して同軸に整列して燃料流れの下流側で連通したほぼ円筒形の噴出口15とを備えている。図示の例では弁座面17は、全体として円錐台形で先細り流路を形成しており、図3に示す如く弁体8の接触部16が離接する第1の円錐面18と、第1の円錐面18の下流側で遷移部19を介して接続され、軸心に対する角度がより小さい第2の円錐面20とで構成されている。このように、弁座11の円錐面が、燃料の流れ方向で下流側に向かって軸心に対する角度が小さくなる2段の円錐面18、20で構成されている。第2の円錐面20は第1の円錐面18と噴出口15との間に設けられているので、第1の円錐面18と噴出口15との間の角部に施した面取りであると言うこともできる。
【0012】
弁体8は、弁座面17の円錐面18に接触部16で離接して噴出口15への燃料の供給を制御するものであって、その先端部に接触部16を形成する球面部21と、球面部21から変曲部22で立ち上がった円錐面23を持つほぼ円錐形の突起24とを備えており、作動装置であるソレノイド装置2により開閉動作される。弁体8の突起24は、弁座面17と弁体8との間に形成される環状流路25の断面積が、少なくとも接触部16と噴射口15との間では、燃料の流れ方向に沿って急激に増大しないようにするものである。流路断面積が急激に増大しないと燃料の流速が急激に小さくならず、よどみの発生が抑制される。
【0013】
円錐形の突起24の底面即ち変曲部22の直径D1は、噴射口15の直径Dよりも大きくしてある。接触部16の直径よりも小さいことは勿論である。また、弁体8の変曲部22の位置は弁座面17の遷移部19の近くで上流側に設けるのが望ましい。変曲部22の直径D1が噴射口15の直径Dよりも小さいと環状流路25の断面積が急激に大きくなりすぎて、燃料を適切に案内でない。接触部16は燃料をシールするため球面形状としてあるが、変曲部22より下流側には円錐形状の突起24を設けて、全体として弁座面17のテーパにほぼ沿った形としてある。特に、弁体8と弁座面17との間に形成される環状の流路25の流れ方向に垂直な面に於ける断面積が、遷移部19と変曲点22とを結ぶ位置での流路断面積A1(図3にテーパした輪帯A1として示してある)は、遷移部19を通る軸方向の円筒面での流路断面積A(図2に輪帯Aとして示してある)と等しく、かつ噴射口15の入口を通り突起24の円錐面23に垂直な面での流路断面積A2とほぼ等しくされている。このようにすると、弁体8の先端の突起24による流路断面積の減少(流量のチョーク)を抑制することができる。
【0014】
突起24の先端部は球面に近いドーム状であり、最先端は鈍角として気筒内部側に先端部が近づかないようにし、同時に噴射口15の壁面近くに燃料流れのよどみが発生しないようにしてある。突起24の先端は噴射口15の長さの半分以下として、あまり噴射口15内に突き出さないようにし、突起24の先端にカーボンデポジットが付着しないようにしてある。図4の右半分には球面状の先端を持つ突起24を弁座11と共に用いた場合を示し、左半分には先端まで連続した円錐面25を持ち、頂点が鋭い突起部26を用いた場合を示す。
【0015】
先端の鋭い突起部26の場合、矢印で示すように、弁座面17と弁体8の円錐面23との間の流路を流れて来た燃料は、円筒形の噴射口15に入った後にも突起部26の円錐面23に沿って流れ続けようとするので、噴射口15の入口付近の壁面近傍に流れのよどみが発生してこの部分にカーボンデポジット27が付着する傾向がある。先端が鈍い突起24の場合、燃料は図4の右半分に矢印で示すように円筒形の噴射口15に入るのと殆ど同時に突起24から離れて噴射口15の壁面に沿って流れて、流れのよどみが発生しないので、噴射口15にはカーボンデポジットは付着しない。燃料流量の低下の主な原因は座面および噴射口近傍にカーボンデポジットが付着することであるが、この部分は、突起24により燃料の流れが案内されて洗浄効果が高くなるためカーボンデポジットの付着を抑制できる。また、弁体の突起部により燃料流がガイドされるので、流体ロスが低減でき、燃料流が多くの運動エネルギを持つことにより、微粒化が促進できる。
【0016】
実施の形態2.
図5および図6に示す本発明の第2の実施の形態に於いては、全体の構成は図1乃至図4に示す燃料噴射弁1と同様であるが、突起28が円錐面29を持つ円錐台形部分30と、円筒面31および平坦な端面32を持つ円筒形部分33とで構成されている。この例に於いても弁体8の突起28は、弁座面17と弁体8との間に形成される環状流路の断面積が燃料の流れ方向に沿って急激に増大しないようにするものである。また、円筒形部分33の直径を噴射口15内に形成される燃料流の空洞の直径の最大値と同等にするのが良く、円筒形部分33の直径は噴射口15の直径の例えば0.7倍とするのが望ましい。その他の構成は第1の実施の形態の燃料噴射弁1と同様である。
【0017】
図6の左半分には円錐形の弁体を用いた場合の燃料流れを矢印で示し、右半分にはこの実施の形態の突起28を用いた場合の燃料流れを矢印で示す。円錐形の弁体の場合、燃料の流れが円錐に沿って流れて噴射口15の壁面から離れて流れがよどみ、カーボンデポジット27付着の原因となる。また、主な燃料流より噴口中心方向になるにつれ、流速の遅い燃料流となり、この燃料流が閉弁時の後だれの原因となる。図の右半分の突起28を用いた場合には、燃料流れが下方向になる部分まで突起28の先端の円筒形部分33の円筒面31によって案内されるので、デポジット付着の原因となる燃料流の乱れ、よどみを抑制できる。また、従来構造では燃料流の占有率が少ない噴口中心に突起28が形成されているので、余分な燃料流路をなくすことができ、閉弁時の後だれを抑制でき、また弁体の突起部により燃料流が案内されるので、流体ロスが低減でき、燃料流が多くの運動エネルギを持つことにより、微粒化が促進できる。
【0018】
このような燃料噴射弁によれば、突起が弁体と弁座面との間の燃料の流れを案内して、燃料の運動エネルギを減殺するよどみ、剥離、渦などの流れの乱れを抑制できる。このため、カーボンデポジットの付着を防止できる。また噴射口出口までに余分な燃料が流れなくなり、閉弁時の後だれが抑制でき、更に、流体ロスが低減できて燃料の流れの大きな運動エネルギが維持されるので、燃料噴霧の微粒化が促進できる。
【0019】
【発明の効果】
本発明の燃料噴射弁の弁体に設ける突起は、弁座面と弁体との間に形成される環状流路の断面積が、少なくとも接触部と噴射口との間では、燃料の流れ方向に沿ってほぼ一定となるようにし、もって燃料の流速の変化を抑制したのであり、従って、燃料噴射弁のカーボンデポジットが少量に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の燃料噴射弁の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】 図1の燃料噴射弁の弁体先端部と弁座との関係を示す拡大断面図である。
【図3】 図2の燃料噴射弁の弁体先端部と弁座との関係の詳細を示す拡大断面図である。
【図4】 図2の燃料噴射弁の弁体先端部と弁座との間の燃料流路とカーボンデポジットの付着状態とを、突起先端が鋭い場合と丸い場合とで比較して示した断面図である。
【図5】 本発明の燃料噴射弁の第2の実施の形態の弁体先端部と弁座との関係を示す拡大断面図である。
【図6】 図2の燃料噴射弁の弁体先端部と弁座との間の燃料流路とカーボンデポジットの付着状態とを、弁体先端が鋭い場合と円筒部分を持つ場合とで比較して示した断面図である。
【符号の説明】
1燃料噴射弁、2 ソレノイド装置(作動装置)、17 弁座面、15 噴出口、11 弁座、16 接触部、8 弁体、21 球面部、22 変曲部、24、28 突起、25 環状流路、18、20、23 円錐面、33 円筒形部分。
Claims (6)
- 燃料の流れの方向に沿って次第に直径が小さくなる先細り流路を形成する弁座面および上記先細り流路と同軸に整列して下流側で連通したほぼ円筒形の噴出口を有する弁座と、
上記弁座面に接触部で離接して上記噴出口への燃料の供給を制御する弁体であって、上記接触部を形成する球面部および上記球面から変曲部で立ち上がったほぼ円錐形の突起を有する弁体と、
上記弁体を作動させる作動装置とを備えた燃料噴射弁に於いて、
上記弁体の上記突起は、上記弁座面と上記弁体との間に形成される環状流路の断面積が、少なくとも上記接触部と上記噴射口との間では、燃料の流れ方向に沿ってほぼ一定となるようにした突起であり、もって燃料の流速の変化を抑制したことを特徴とする燃料噴射弁。 - 円錐形の上記突起の底面の直径が、上記噴射口の直径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
- 上記弁座面が円錐台形であって上記先細り流路が円錐面で形成されたことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の燃料噴射弁。
- 上記弁座の上記先細り流路の円錐面が、下流側に向かって軸心に対する角度が小さくなる少なくとも2段の円錐面で構成されてなることを特徴とする請求項3に記載の燃料噴射弁。
- 円錐形の上記突起の先端部がほぼ球面状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
- 円錐形の上記突起が先端部に、燃料噴射口内に形成される燃料流の空洞直径の最大値とほぼ等しい直径の円筒形部分を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
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