JP3826487B2 - 蒸発燃料供給系の故障診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載されているエンジンの蒸発燃料供給系が故障しているか否かを診断する蒸発燃料供給系の故障診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平6−117332号公報に示されるように、大気圧を検出する大気圧検出手段と、エバポ系(パージ通路)の内部圧力を検出する圧力検出手段と、この圧力検出手段により検出された圧力値に基づいて上記エバポ系の内部圧力の変化状態を測定し、その測定値と判定値との比較結果からエバポパージシステム(蒸発燃料供給系)の故障の有無を判定する判定手段とを備えた故障診断装置において、大気圧検出手段により検出された大気圧に応じて上記判定手段の判定値、つまり故障判定用の基準圧力を可変し、あるいはエバポ系内の検出圧力を補正することにより、この判定値または圧力値から大気圧の影響を排除するとともに、上記大気圧検出手段により検出された大気圧が所定値以下であることが確認された場合等に、故障診断を中止することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように大気圧が所定値以下であることが確認された場合に故障診断を中止するように構成された上記故障診断装置は、吸気通路に導入される空気の密度が低いことに起因してエンジン回転数が低下傾向にある高地の運転時に、上記故障診断が行われないので、エンジン回転数の低下に応じて吸気通路内の負圧が減少した状態で、上記故障診断が行われることによる誤判定、つまり蒸発燃料供給系が正常であるにも拘らず、パージ通路の内部圧力が所定値まで低下しないために故障である誤判定されることを防止できるという利点を有する反面、高地の運転時には蒸発燃料供給系に故障が発生しているのにも拘らずこの故障を診断することができないという問題がある。
【0004】
また、スロットル開度等に応じてエンジン負荷を検出し、このエンジン負荷の検出値が所定の基準値よりも小さく、吸気通路に導入される空気量が少ないためにエンジンの負圧が大きいことが確認されたときに、上記故障判定手段によって蒸発燃料供給系の故障診断を行うように構成することにより、空気の密度が低いことに起因してエンジン回転数が低下した状態で、吸気通路内に多く空気が導入されてさらに吸気通路内の負圧が減少することによる故障の誤判定を防止し、上記高地の運転時においても蒸発燃料供給系の故障を適正に診断できるようにすることも考えられる。
【0005】
しかし、上記の構成によると、エンジン負荷が頻繁に変化する運転状態では、上記故障判定手段による故障判定が頻繁に中止されるという問題がある。特に、エンジン回転数が低下傾向にある高地の運転時には、アクセルペダルが平地に比べて大きく踏み込まれる傾向があるため、エンジン負荷が上記基準値よりも大きくなって故障診断が中止され易く、高地の運転状態における故障診断を適正に実行することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、高地の運転時等における誤判定を防止しつつ、蒸発燃料供給系の故障を適正に診断することができる蒸発燃料供給系の故障診断装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、燃料タンクから導出された蒸発燃料を吸着手段に供給して吸着させるとともに、この吸着手段に吸着された燃料をエンジンに供給するパージ通路と、このパージ通路を開閉する通路開閉手段と、上記パージ通路の内部圧力を検出する圧力検出手段と、蒸発燃料供給系の故障を診断する際に、上記パージ通路内に吸気通路の負圧を導入させるように上記通路開閉手段を制御する蒸発燃料系制御手段と、上記圧力検出手段の検出圧力に基づいて蒸発燃料供給系が故障しているか否かを判定する故障判定手段と、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段とを有する故障診断装置であって、上記エンジン負荷検出手段により検出されたエンジン負荷と軽負荷判定用の基準値とを比較してエンジン負荷が基準値以上であることが確認された場合に上記故障判定を禁止する判定禁止手段と、上記故障判定手段による故障判定中に、エンジン負荷が上記基準値未満の状態から基準値以上となったことが確認された場合に、この状態が予め設定された基準時間を経過するまで上記故障判定を継続し、この基準時間以上に亘って上記の状態が継続されたことが確認された時点で上記故障判定を中止する判定継続手段とを設けたものである。
【0008】
上記構成によれば、故障判定手段による蒸発燃料供給系の故障を判定する際に、上記判定禁止手段によりエンジン負荷が軽負荷判定用の基準値以上であると判定されてエンジン負圧が大きいことが確認された場合に、故障判定手段による蒸発燃料供給系の故障判定が禁止される。そして、上記故障判定手段による故障判定中に、エンジン負荷が上記基準値未満の状態から基準値以上となった場合には、この状態が予め設定された基準時間よりも長く継続されたことが確認されるまで、上記判定継続手段によって故障判定動作が継続され、その後に上記故障判定手段による故障判定が中止される。また、エンジン負荷が軽負荷判定用の基準値以上になった状態が早期に解消され、上記基準時間が経過する前にエンジン負荷が上記基準値未満に復帰した場合には、故障判定手段による蒸発燃料供給系の故障判定が実行されることになる。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の蒸発燃料供給系の故障診断装置において、大気圧を検出する大気圧検出手段と、この大気圧検出手段により検出された大気圧に応じて高地における運転状態にあるか否かを判別して、高地における運転状態にあることが確認された場合に、上記軽負荷判定用の基準値を平地における運転状態に比べて小さな値に設定する基準値設定手段とを設けたものである。
【0010】
上記構成によれば、吸気通路に導入される空気の密度が低いことに起因してエンジン回転数が低下し易く、パージ通路内に導入される負圧が減少傾向にある高地の運転時に、軽負荷判定用の基準値が平地における運転時に比べて小さな値に設定され、この基準値と、エンジン負荷の検出値とが比較されて上記故障判定手段による蒸発燃料供給系の故障判定を禁止または中止するか否かが判別されることにより、上記吸気通路内に多くの空気が導入されることによってパージ通路内に導入される負圧がさらに減少した状態で上記故障判定が実行されることによる誤判定が防止されることになる。
【0011】
請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2記載の蒸発燃料供給系の故障診断装置において、故障判定手段による故障判定を中止するか否かの判別基準となる基準時間を、パージ通路内に導入される負圧に基づく故障判定に影響を与えることなく、かつ上記故障判定が不必要に中止されることのない時間に設定したものである。
【0012】
上記構成によれば、判定継続手段により、エンジン負荷が一時的に大きくなって多くの空気がエンジンの燃焼室内に導入されて吸気通路内の負圧が減少傾向にある場合においても、パージ通路内に導入される負圧に基づく故障判定に影響を与えない程度の時間に設定された上記基準時間が経過する前にエンジン負荷が上記基準値未満に復帰したことが確認された場合には、上記故障判定手段による蒸発燃料供給系の故障判定が中止されることなく、この故障判定が実行されることになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明が適用される蒸発燃料供給系を備えたエンジン全体の概略構造を示している。この図において、1はシリンダを有するエンジン本体であり、そのシリンダの燃焼室2には吸気弁によって開閉される吸気ポート3および排気弁によって開閉される排気ポート4が開口している。上記吸気ポート3には吸気通路5が接続され、排気ポート4には排気通路13が接続されている。
【0014】
上記吸気通路5には、その上流側から順にエアクリーナ6、エアフローセンサ7、スロットル弁8およびサージタンク9が設けられるとともに、吸気ポート3の近傍に、燃料を噴射するインジェクタ10が設けられている。さらに、吸気通路5には、上記スロットル弁8をバイパスするISC通路11が設けられ、このISC通路11には、空気流量を調節してアイドル回転数制御を実行するISCバルブ12が設けられている。一方、排気通路13にはO2 センサ14および触媒装置15等が設けられている。
【0015】
また、吸気通路5には、スロットル弁8の開度を検出するスロットル開度センサ16からなるエンジン負荷検出手段が設けられ、エンジン本体1には、エンジン回転数を検出する回転数センサ17と、エンジンの冷却水温を検出するが水温センサ18とが設けられている。さらに、燃料タンク20内には、燃料の油面レベルを検出する油面センサ19からなる油面検出手段が設けられている。
【0016】
上記インジェクタ10に対して燃料を供給する燃料系は、燃料タンク20、燃料ポンプ21、燃料供給通路22およびリターン通路23を備え、上記燃料ポンプ21により燃料タンク20から燃料供給通路22を通してインジェクタ10に燃料が送られるようになっている。上記燃料供給通路22には、フューエルフィルタ24が介設されている。さらに上記リターン通路23には、吸気圧に応じて燃圧を調整するプレッシャレギュレータ25が設けられている。
【0017】
また、上記燃料タンク20とエンジン本体1との間には、燃料タンク20内で発生した蒸発燃料を吸気通路5に供給する蒸発燃料供給系が設けられている。この蒸発燃料供給系はパージ通路30を備えており、このパージ通路30は、上流端が燃料タンク20の上部に接続されるとともに、下流端が吸気通路5のサージタンク9に接続されている。上記パージ通路30の途中には蒸発燃料を吸着するキャニスタ31からなる吸着手段が介設され、このキャニスタ31には大気開放通路32が接続されている。
【0018】
上記燃料タンク20とキャニスタ31とを接続するパージ通路30には、チェックバルブ33が設けられるとともに、これと並列にソレノイドバルブからなる開閉バルブ(以下TPCVバルブと称する)34が設けられている。また、上記大気開放通路32には、エアフィルター35およびチェックバルブ36が設けられるとともに、ソレノイドバルブからなる大気開放バルブ(以下CDCVバルブと称する)37が設けられている。
【0019】
上記キャニスタ31とサージタンク9との間のパージ通路30には、蒸発燃料の供給量を調節するためのデューティソレノイドバルブからなるパージバルブ38が設けられている。さらに蒸発燃料供給系には、上記パージバルブ38よりも燃料タンク20側に位置するパージ通路30の内部圧力を検出する圧力検出手段としての燃料タンク内圧力センサ(以下FTPセンサと称する)39が設けられている。そして、上記CDCVバルブ37およびパージバルブ38により、燃料タンク20と吸気通路5との間でのパージ通路30を開閉する通路開閉手段が構成されている。
【0020】
上記パージバルブ38、TPCVバルブ34およびCDCVバルブ37は制御部としてのエンジン制御ユニット(ECU)40に接続されている。このエンジン制御ユニット40は、エアフローメータ7、O2 センサ14、スロットル開度センサ16、回転数センサ17、冷却水温センサ18、油面センサ19およびFTPセンサ39および大気圧を検出する大気圧センサ41等からの信号を受け、上記パージバルブ38、TPCVバルブ34およびCDCVバルブ37を制御し、さらにインジェクタ10の制御やISCバルブ12の制御等も行うようになっている。
【0021】
上記制御ユニット40には、図2に示すように、エンジンの特定運転領域で上記パージバルブ38を開いてキャニスタ31に吸着された燃料を吸気通路5に供給するとともに、上記蒸発燃料供給系の故障を診断する際に、パージ通路30内に吸気通路5の負圧を導入した後に、上記パージ通路30を密閉状態とするように上記通路開閉手段を制御する蒸発燃焼系制御手段42と、上記FTPセンサ39からなる圧力検出手段の検出圧力に基づいて蒸発燃料供給系が故障しているか否かを判定する故障判定手段43と、スロットル開度センサ16からなるエンジン負荷検出手段より検出されたエンジン負荷と軽負荷判定用の基準値とを比較して上記故障判定手段43による故障判定を禁止し、あるいは継続するか否かを判別する判定禁止手段44および判定継続手段45と、大気圧センサ41からなる大気圧検出手段の検出信号に応じて上記軽負荷判定用の基準値を設定する基準値設定手段46と、燃料タンク20内の油面の揺れ度合を判別する揺れ度合判別手段47とが設けられている。
【0022】
上記故障判定手段43は、パージ通路30内を吸気通路5の負圧を導入する際におけるパージ通路30の内部圧力の変化状態に基づいてこのパージ通路30の接続不良等に起因する重度の故障があるか否かを判定し、この故障を表示手段48において表示させる制御信号を出力するように構成されている。
【0023】
すなわち、蒸発燃料系制御手段42により上記TPCVバルブ34およびパージバルブ38を開放するとともに、CDCVバルブ37を閉止して燃料タンク20と吸気通路5との間で上記パージ通路30を開通させるとともに、大気側開放通路32を遮断することにより、上記パージ通路30内に吸気通路5の負圧を導入してパージ通路30内を負圧状態とした後に、このパージ通路30の内部圧力が予め設定された30秒程度の第1基準時間内に所定の基準圧力未満に低下するか否かを判別し、この第1基準時間が経過してもパージ通路30の内部圧力が上記基準圧力未満に低下せず、エンジン負荷が上記基準値未満の状態から基準値以上となった状態が所定時間に亘って継続したことが確認された場合に、上記重度の故障があると判断するように構成されている。
【0024】
また、上記故障判定手段43は、パージ通路30内に負圧を導入した後に上記パージバルブ38を閉止してパージ通路30を密閉した状態で、上記FTPセンサ39の検出圧力に基づいて所定の診断時間内(例えば25秒間)におけるパージ通路30の圧力上昇度合を演算し、この圧力上昇度合と、運転状態に応じて設定された基準値とを比較し、上記圧力上昇度合が基準値よりも大きいことが確認された場合に、パージ通路30内の負圧状態を適正に維持することができない故障、例えばパージ通路30に亀裂が形成される等の軽度の故障が発生したと判定するように構成されている。なお、上記パージバルブ38を閉止してパージ通路30を密閉した時点におけるFTPセンサ39の第1検出圧力と、運転状態に応じて設定された基準圧力とを比較して上記第1検出圧力が基準圧力よりも低いことが確認された場合に、上記パージバルブ38を全閉状態とすることができないバルブ故障が発生したと判定することもできる。
【0025】
上記判定禁止手段44は、故障判定手段43による故障判定を行う際に、スロットル開度センサ16により検出されたスロットル開度に対応するエンジン負荷と、軽負荷判定用の基準値とを比較してエンジン負荷がこの基準値以上であることが確認された場合に、上記故障判定手段43による故障判定を禁止するように構成されている。
【0026】
上記基準値設定手段46は、図3に示すように、大気圧センサ41からなる大気圧検出手段によって検出された大気圧に応じてエンジンが平地の運転状態にあることが確認された場合に、軽負荷運転状態に対応した25%程度のスロットル開度に上記軽負荷判定用の基準値aを設定し、かつ上記大気圧の検出値に応じて高地の運転状態にあることが確認された場合に、上記平地における運転状態よりも小さな値、例えば20%程度のスロットル開度に上記基準値aを設定するように構成されている。また、上記平地と高地との間には、大気圧の検出値に応じて上記軽負荷判定用の基準値aが次第に低下する中間領域が設けられている。
【0027】
また、上記判定継続手段45は、故障判定手段43による故障判定中に、エンジン負荷が上記基準値a未満の状態から基準値a以上となったことが確認された場合に、この状態が予め設定された第2基準時間を経過するまで上記判定禁止手段44の作動を停止させて故障判定を継続するように構成されている。上記第2基準時間は、エンジン負荷が一時的に大きくなって大量の空気がエンジンの燃焼室2内に導入されることにより吸気通路5内の負圧が減少した場合においても、パージ通路30内に導入される負圧に基づく上記故障判定に影響を与えない範囲内で、故障判定が不必要に中止されることのない時間、例えば1秒程度に設定されている。
【0028】
上記揺れ度合判別手段47は、上記診断時間内において所定のサンプリング時間毎にパージ通路30内の圧力変化量を演算してこの圧力変化量の最大値を求めた後、この最大値と、揺れ度合判別用のしきい値とを比較することにより、燃料タンク20内の油面の揺れ度合を判別し、圧力変化量の最大値が上記しきい値よりも大きく、油面の揺れが著しいために燃料の気化が促進され易い状態にあることが確認された場合に、上記判定禁止手段45に制御信号を出力して上記故障判定手段43による故障判定を中止させるように構成されている。なお、上記揺れ判別用のしきい値は、診断時間内におけるパージ通路30の圧力上昇度合と、所定の係数とを掛け合わせることにより、上記圧力上昇度合が増大するのに従って大きな値となるように設定される。
【0029】
また、上記揺れ度合判別手段47は、燃料タンク20内に設置された油面センサ19の出力信号に応じて油面の揺れ度合が大きいか否かを判別し、油面センサ19の出力レベルが顕著に変化していることが確認された場合に、燃料の気化が促進され易い状態にあると判断して上記故障判定手段43による故障判定を中止させる制御信号を上記判定禁止手段44に出力するように構成されている。
【0030】
上記構成を有する蒸発燃料供給系の故障診断装置によって行われる故障診断時の制御動作を、図4〜図6に示すフローチャートおよび図7に示すタイムチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、ステップS1においてエンジンが作動状態にあるか否かを判定し、YESと判定された時点で、ステップS2においてパージ通路30内を負圧状態とするための第1基準時間dをカウントする減圧タイマTpgonのカウント値を0にリセットする。
【0031】
次いで、ステップS3において図3に示すテーブルから大気圧センサ41の検出信号に対応した軽負荷判定用の基準値aを上記基準値設定手段46により読み出して設定した後、この基準値aと、スロットル開度センサ16によって検出されたスロットル開度tvoの検出値とを比較してこのスロットル開度の検出値tvoが、上記基準値aよりも小さいか否かを判別することにより、エンジンが所定の軽負荷運転状態にあるか否かを上記判定禁止手段44により判定する。
【0032】
上記ステップS3でNOと判定され、エンジンが高負荷運転状態にあることが確認された場合には、この状態で蒸発燃料供給系の故障判定を実行すると、吸気流量が多いことに起因して上記パージ通路30内を所定の負圧状態とすることができない場合があるため、ステップS4において上記CDCVバルブ37を開放した後、上記ステップS2にリターンすることにより、上記故障判定手段43による故障判定を禁止する。
【0033】
そして、上記ステップS3でYESと判定され、エンジンが軽負荷運転状態にあることが確認された場合には、ステップS5においてエンジンの運転状態を検出する各センサの検出値を入力した後、ステップS6において蒸発燃料供給系に重度の故障が生じているか否かの判定基準となる負圧の基準圧力bを、水温センサ18および大気圧センサ41の検出値に基づいて設定する。例えば上記大気圧センサ41によって検出された大気圧が平均的な値であれば、−130mmAq程度に設定され、上記大気圧の検出値が小さくなるのに応じて上記基準圧力bの絶対値が小さくなるように、つまり基準圧力bが高い値に設定されるようになっている。
【0034】
次ぎに、ステップS7において蒸発燃料供給系の故障判定条件が成立したか否かを判定し、NOと判定された場合には、上記ステップS4にリターンする。そして、上記ステップS7でYESと判定されて蒸発燃料供給系の故障判定条件が成立したことが確認された時点T1で、ステップS8において、上記CDCVバルブ37を閉止する。このCDCVバルブ37が閉止された後に、ステップS9において上記パージバルブ38を開放する。このようにCDCVバルブ37が閉止されるとともに、パージバルブ38が開放されることにより、吸気通路5内の負圧が上記パージ通路30内に導入され、図7に示すように、上記時点T1から、パージ通路30の内部圧力ftpが次第に低下し始めることになる。
【0035】
そして、パージバルブ38が開放された後に、ステップS10において上記減圧タイマTpgonのカウント値を1だけインクリメントするとともに、ステップS11において上記スロットル開度tvoの検出値が、上記基準値aよりも小さいか否かを再度判定する。
【0036】
上記ステップS11でNOと判定され、アクセルペダルが踏み込まれることによりスロットル開度tvoが上記基準値aよりも大きくなったことが確認された場合には、ステップS12において上記判定継続手段45によりスロットル開度ディレィ用のタイマTtvdによるディレィ時間のカウントを行った後、ステップS13において上記タイマTtbdのカウント値と、予め設定された1秒程度の第2基準時間cとを比較して上記タイマTtvdがタイムアップしたか否かを判定し、NOと判定された場合には上記ステップS3に戻って上記制御動作を繰り返す。
【0037】
そして、上記ステップS13でYESと判定され、上記タイマTtvdがタイムアップしたことが確認された場合には、スロットル開度tvoが上記基準値aよりも大きい状態が上記第2基準時間c以上に亘って継続され、この状態で蒸発燃料供給系の故障判定を実行すると、この故障が生じていないにも拘らず、パージ通路30内の負圧が十分に得られなくなる重度の故障が発生したと誤判定される虞があるため、ステップS14において上記タイマTtvdのカウント値を0にリセットした後、上記ステップS4にリターンして故障判定を中止する。
【0038】
また、上記ステップS11でNOと判定され、第2基準時間c内にスロットル開度tvoの検出値が基準値aよりも小さくなったことが確認された場合には、上記故障判定を中止することなく、ステップS15おいて上記FTPセンサ39によって検出されたパージ通路30の内部圧力ftpが上記ステップS6で設定された基準圧力bよりも低いか否かを判定する。上記ステップS15でNOと判定され、上記パージ通路30の内部圧力ftpが基準圧力bよりも高いことが確認された場合には、ステップS16において上記減圧タイマTpgonのカウント値が予め設定された30秒程度の第1基準時間d以上となったか否かを判定する。
【0039】
上記ステップS16でNOと判定された場合には、上記ステップS5に戻って上記制御動作を繰り返す。上記ステップS16でYESと判定され、上記第1基準時間dが経過した時点T2においてもパージ通路30の内部圧力が上記基準圧力bよりも低くならないことが確認された場合には、蒸発燃料供給系に重度の故障があるため、上記負圧が第1基準時間d内において−130mmAq程度の基準圧力bまで低下しなかったと判断し、ステップS17において表示手段48に上記故障が発生したことを表示させる信号を出力して制御動作を終了する。
【0040】
また、上記ステップS16でYESと判定される前に、上記ステップS15でYESと判定されてパージ通路30の内部圧力が上記基準圧力bよりも低くなったことが判断された場合には、ステップS18においてパージ通路30の圧力上昇度合を測定するための診断時間eをカウントする負圧保持タイマTpgofを0にリセットするとともに、上記FTPセンサ39の検出圧力に応じて算出されて記憶手段に記憶された圧力変化量の最大値ftpr maxの記憶値をステップS19において0にリセットする。
【0041】
次にステップS20において上記パージバルブ38を閉止してパージ通路30を密閉する。そして、上記パージバルブ38が閉止されたことが確認された時点T2で、ステップS21において上記FTPセンサ39により検出されたパージ通路30の内部圧力を第1検出圧力ftp1として記憶した後、ステップS22においてパージ通路30内の負圧が十分に得られなくなる重度の故障が発生したことを判定するための基準圧力P1を、水温センサ18および大気圧センサ41の検出値に基づいて設定する。通常の運転状態では、上記基準圧力P1が例えば−200mmAq程度の値に設定される。
【0042】
そして、ステップS23において上記第1検出圧力ftp1が基準圧力P1よりも小さいか否かを上記故障判定手段43によって判定する。このステップS23でNOと判定され、吸気通路5内の内部圧力が上記基準圧力P1未満に低下していないことが確認された場合には、ステップS24においてパージ通路30の内部圧力を所定の負圧に低下させることができない重度の故障が発生したことを表示させる信号を上記故障判定手段43から表示手段48に出力して制御動作を終了する。
【0043】
また、上記ステップS23でYESと判定された場合には、ステップS25においてエンジンの運転状態を検出する各センサの検出値を入力した後、ステップS26において蒸発燃料供給系に軽度の故障が生じているか否かの判定基準となる圧力上昇度合の基準値Prを、水温センサ18および大気圧センサ41の検出値に基づいて設定するとともに、ステップS27において蒸発燃料供給系の故障判定条件が成立したか否かを判定し、NOと判定された場合には、上記ステップS4にリターンして故障判定手段43による故障判定を中止し、故障判定制御を初めから開始することにより、確実に故障判定を行うようにする。
【0044】
そして、上記ステップS27でYESと判定されて蒸発燃料供給系の故障判定条件が成立したことが確認された場合には、ステップS28において上記減圧タイマTpgonのカウント値を1だけインクリメントした後、ステップS29において上記油面センサ41の検出信号に基づいて油面レベルの揺れ度合が大きいか否かを上記揺れ度合判別手段47により判別する。このステップS29でYESと判定され、上記油面レベルの揺れ度合が大きいことが確認された場合には、上記故障判定を実行すべき状態にないと判断し、ステップS4にリターンして上記故障判定手段43による故障判定を中止する。
【0045】
また、上記ステップS29でNOと判定された場合には、ステップS30において上記FTPセンサ39により検出されたパージ通路30の内部圧力ftpに基づいて所定のサンプリング時間内における圧力変化量ftprを演算により求めた後、この圧力変化量ftprに基づき、ステップS31において上記圧力変化量の最大値ftpr maxを選定して記憶手段に記憶させる。
【0046】
すなわち、上記FTPセンサ39により検出された現時点におけるパージ通路30の内部圧力ftpと、前回の制御動作時に検出されたパージ通路30の内部圧力ftp−1との偏差を求めることにより、今回の制御時における圧力変化量ftprを算出し、この値と記憶手段に記憶された圧力変化量の最大値ftpr maxの記憶値とを比較し、大きい方を最大値として記憶手段に記憶させることにより、下記の診断時間内eにおける圧力変化量の最大値ftpr maxを求める。
【0047】
次に、ステップS32において上記負圧保持タイマTpgofのカウント値と、予め設定された25秒程度の診断時間eとを比較することにより、上記負圧保持タイマTpgofがタイムアップしたか否かを判定し、NOと判定された場合には、上記ステップS25に戻って上記制御動作を繰り返す。そして、上記ステップS33でYESと判定され、上記診断時間eが経過したことが確認された時点T3で、上記FTPセンサ39により検出されたパージ通路30の内部圧力を、ステップS33において第2検出圧力ftp2として記憶した後、ステップS35においてこの第2検出圧力ftp2から上記第1検出圧力ftp1を減算することにより、上記診断時間e内におけるパージ通路30の圧力上昇度合(ftp2−ftp1)を演算によって求める。
【0048】
また、上記ステップS35において上記診断時間e内におけるパージ通路30の圧力上昇度合(ftp2−ftp1)の絶対値と、予め設定された係数kとを、上記しきい値設定手段46において掛け合わせることにより求めた値(k×|ftp2−ftp1|)を、燃料タンク内油面の揺れ度合判定用のしきい値Aとして設定する。
【0049】
次にステップS36において上記ステップS31で求めた圧力変化量の最大値ftpr maxが、上記揺れ度合判別用のしきい値Aよりも小さいか否かを判定する。上記ステップS36でNOと判定され、燃料タンク20内に収容された燃料の油面が大きく揺れて燃料の気化が促進されることにより、上記パージ通路30の内部圧力が短時間で大きく上昇し易い状態にあることが確認された場合には、上記故障判定を実行すべきではないと判断して上記ステップS4にリターンし、上記故障判定手段43による故障判定を中止して、故障判定制御を初めから再度開始することにより、確実に故障判定を行うようにする。
【0050】
また、上記ステップS36でYESと判定され、燃料タンク20内に収容された燃料の油面が大きく揺れていないことが確認された場合には、ステップS37において上記ステップS34で求めた圧力上昇度合の絶対値|ftp2−ftp1|と、上記ステップS26で求めた第2基準値Prとを比較して、上記圧力上昇度合の絶対値|ftp2−ftp1|が第2基準値Prよりも小さいか否かを判定する。
【0051】
上記ステップS37でNOと判定され、パージ通路30に形成された亀裂からパージ通路30内に空気が導入される等により、上記診断時間e内におけるパージ通路30の圧力上昇度合が上記第2基準値Pr以上に上昇したことが確認された場合には、ステップS24において故障判定手段43から表示手段48に上記故障が発生したことを表示させる制御信号を出力する。
【0052】
また、上記ステップS37でYESと判定され、パージ通路30の圧力上昇度合の絶対値|ftp2−ftp1|が上記第2基準値Prよりも小さいことが確認された場合には、蒸発燃料供給系が正常であるために上記診断時間eが経過するまでの間、上記パージバルブ30内の負圧が適正に維持されたと判断し、ステップS39において上記CVDVバルブ37を開放した後に制御動作を終了する。
【0053】
このようにパージ通路30の内部圧力を検出するFTPセンサ39からなる圧力検出手段の検出圧力に基づいて蒸発燃料供給系が故障しているか否かを判定する故障判定手段43を備えた故障診断装置において、上記スロットル開度センサ16からなるエンジン負荷検出手段により検出されたエンジン負荷(スロットル開度tvo)と軽負荷判定用の基準値aとを比較し、エンジン負荷が基準値a以上であることが確認された場合に、上記故障判定手段43による故障判定を禁止する判定禁止手段44と、上記故障判定手段43による故障判定中に、エンジン負荷が上記基準値a未満の状態から基準値a以上となったことが確認された場合に、この状態が予め設定された第2基準時間cを経過するまで上記故障判定を継続する判定継続手段45とを設けたため、高地の運転時等における誤判定を防止しつつ、蒸発燃料供給系の故障を適正に診断することができる。
【0054】
すなわち、上記故障判定手段43による故障判定を実行する際に、判定禁止手段44においてエンジン負荷に対応したスロットル開度tvoが上記基準値aよりも大きいと判定され、エンジンの燃焼室2内に大量の空気が導入されて吸気通路5内の負圧が減少し易い傾向にあることが判定禁止手段44において確認された場合、および上記故障判定手段43による故障判定中に、エンジン負荷が上記基準値a未満の状態から基準値a以上となった状態が、上記第2基準時間cよりも長く継続されたことが上記判定継続手段45において確認された場合に、上記故障判定を禁止または中止するように構成したため、高地等の運転状態において、空気の密度が低いこと等に起因してエンジン回転数が低下した状態で、吸気通路5内に多くの空気が導入されることにより、負圧が減少してパージ通路30の内部圧力を上記第1基準時間d内に所定値まで低下させられない状態で、上記故障判定が行われることによる誤判定を防止しつつ、エンジン負荷が上記基準値a未満のときに、パージ通路30の内部圧力に基づいてパージ通路30の接続不良等からなる重度の故障が発生しているか否かを適正に診断することができる。
【0055】
そして、上記判定継続手段45において、エンジン負荷が上記基準値a以上になった状態が早期に解消され、上記第1基準時間dが経過する前にエンジン負荷が上記基準値a未満に復帰した場合には、上記故障判定手段43による蒸発燃料供給系の故障判定が実行されるため、エンジン回転数が低下傾向にある高地の運転時に、アクセルペダルが一時的に大きく踏み込まれてエンジン負荷が上記基準値よりも大きくなった場合等に、上記故障診断が中止されるという事態の発生を防止し、これによって高地の運転状態等における故障判定を適正に実行することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、大気圧センサ16からなる大気圧検出手段と、その検出信号に応じて高地における運転状態にあることが確認された場合に、上記軽負荷判定用の基準値aを平地における運転状態に比べて小さな値に設定する基準値設定手段46とを設け、上記大気圧センサ16の検出値に対応した基準値aを設定するように構成したため、吸気通路5に導入される空気の密度が低いことに起因してエンジン回転数が低下し易く、パージ通路30内に導入される負圧が減少傾向にある高地の運転時に、平地における運転時に比べて小さな値に設定された基準値aと、エンジン負荷の検出値とを比較して上記故障判定手段43による蒸発燃料供給系の故障判定を禁止または中止するか否かを判別することができる。したがって、上記パージ通路30内に導入される負圧が減少傾向にある高地の運転状態おいて、吸気通路5内に大量の空気が導入されるエンジンの高負荷時に、上記故障判定が実行されてパージ通路30内に導入される負圧が、さらに減少することによる誤判定を確実に防止しつつ、上記高地の運転状態等における故障判定を適正に実行することができる。
【0057】
しかも、上記高地の運転時に比べて空気密度が高いためにエンジン回転数が低下しにくく、パージ通路30内に導入される負圧を十分に確保することができる平地の運転時には、上記軽負荷判定用の基準値aが高地の運転時に比べて大きな値に設定されるため、上記故障判定手段43による誤判定が生じにくい状態で、この故障判定が頻繁に中断されるという事態の発生を防止し、上記蒸発燃料供給系の故障を迅速かつ正確に判定することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、故障判定手段43による故障判定を中止するか否かの判別基準となる第2基準時間cを、パージ通路30内に導入される負圧に基づく故障判定に影響を与えない範囲の最大時間、例えば1秒程度に設定したため、上記第2基準時間cが長すぎることに起因してパージ通路30の内部圧力を所定値に低下させられなくなることによる誤判定を防止しつつ、上記第2基準時間cが短すぎることに起因して故障判定が不必要に中断されるという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0059】
さらに上記実施形態では、負圧状態で密閉された上記パージ通路30の圧力上昇度合(ftp2−ftp1)を、所定の診断時間e内において求めるとともに、この圧力上昇度合(ftp2−ftp1)に基づいて蒸発燃料供給系が故障しているか否かを判定する故障判定手段43を有する故障診断装置において、蒸発燃料供給系の故障診断時に、上記診断時間eよりも短い時間に設定されたサンプリング時間内におけるパージ通路30の圧力変化量の最大値ftpr maxをFTPセンサ39の検出信号に基づいて求め、この圧力変化量の最大値ftpr maxと、揺れ度合判別用のしきい値Aとを比較することにより燃料タンク内油面の揺れ度合を揺れ度合判別手段47において判別し、この判別結果に応じて上記故障判定手段43による故障判定を禁止するように構成したため、燃料タンク20内に収容された燃料の油面の揺れに起因した誤判定を防止しつつ、蒸発燃料供給系の故障を正確かつ迅速に診断することができる。
【0060】
すなわち、上記サンプリング時間内におけるパージ通路30の圧力変化量の最大値ftpr maxに基づいて燃料タンク20内に収容された燃料油面の揺れ度合を上記揺れ度合判別手段47において判定するように構成したため、上記油面センサ19の検出信号のみに基づいて油面の揺れを判定する場合のように、油面センサ19の設置部の油面レベルが略一定に維持された状態で燃料タンク20の側辺部等に生じる油面の揺れを検出することができないという事態を生じることなく、上記燃料タンク20内における油面の顕著な揺れを正確に検出することができる。したがって、燃料タンク20の側辺部等において油面の揺れが生じているにも拘らず、上記FTPセンサ39の検出圧力に基づいて蒸発燃料供給系の故障判定が実行されて、故障が生じていないのに故障していると誤判定されるのを効果的に防止することができる。
【0061】
また、上記実施形態に示すように、所定の診断時間e内におけるパージ通路30の圧力上昇度合(ftp2−ftp1)の絶対値と、所定の係数kとを掛け合わせる等により、上記圧力上昇度合(ftp2−ftp1)が増大するのに従って大きな値となるように変化する上記揺れ度合判別用のしきい値Aを演算により求めるように構成した場合には、このしきい値Aに基づいて上記油面の揺れ度合を正確に判別して、大きな揺れの発生時に上記故障判定を抑制することにより、誤判定の発生を効果的に防止することができるとともに、大きな揺れの非発生時に上記故障判定を適正に実行することができる。
【0062】
何故なら、上記パージ通路30に亀裂等が形成されることなく、このパージ通路30内の負圧を適正に維持できる状態で、油面の揺れが発生した場合には、図8に示すように、上記診断時間eが経過した時点における上記圧力上昇度合(ftp2−ftp1)は、比較的小さな値となって上記揺れ判別用のしきい値Aも小さな値となるため、この揺れ判別用のしきい値Aと、油面が揺れることに起因して生じるサンプリング時間S内における圧力変化量の最大値fptr maxとを比較することにより、この圧力変化量の最大値fptr maxが比較的小さい場合においても、上記油面の揺れを正確に判別することができる。
【0063】
これに対して上記パージ通路30に亀裂等が形成される等により、このパージ通路30の内部圧力が上昇し易い状態で、油面の揺れが発生した場合には、図9に示すように、上記診断時間eが経過した時点における上記圧力上昇度合(ftp2−ftp1)は、比較的大きな値となって上記揺れ判別用のしきい値Aも大きな値となる。このため、上記亀裂からパージ通路30内に空気が導入されるのに応じて生じるサンプリング時間S内における圧力変化量の最大値fptr maxと、上記揺れ判別用のしきい値Aとを比較した場合に、このしきい値Aよりも上記圧力変化量の最大値fptr maxが大きくなって油面の揺れが発生していると誤判定されるのを効果的に防止することができる。
【0064】
したがって、上記圧力上昇度合(ftp2−ftp1)が小さく、蒸発燃料供給系に故障が生じている可能性が低い状態で、油面の大きな揺れが発生した場合に、上記故障判定が実行されて、油面の大きな揺れに起因した燃料の蒸発に応じて故障が発生した誤判定されるのを効果的に防止することができるとともに、上記圧力上昇度合(ftp2−ftp1)が大きく、蒸発燃料供給系に故障が生じている可能性が高い状態で、油面の大きな揺れが発生していないにも拘らず、上記故障判定が禁止されて故障の検出が遅れるという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0065】
さらに上記実施形態では、燃料タンク20内に収容された燃料の油面レベルを検出する油面センサ19等からなる油面検出手段を設け、この油面検出手段の検出信号に基づいて油面の揺れ度合を揺れ度合判別手段47によって判別し、上記油面検出手段の検出信号に応じて油面の揺れが大きいと判別された場合、および上記圧力検出手段の検出圧力に基づいて求められた圧力変化量ftprが、油面の揺れ度合判別用のしきい値よりも大きいことが確認された場合に、それぞれ上記故障判定手段による故障判定を抑制するように構成したため、上記油面検出手段の設置部において油面の大きな揺れが発生している場合には、この油面検出手段の検出信号に応じて上記揺れ度合を迅速に判別することができるとともに、上記油面検出手段の設置部以外において大きな油面の揺れが発生している場合には、上記圧力変化量ftprに基づいて上記油面の揺れ度合を正確に判別することができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、スロットル開度センサ16によって検出されたスロットル開度tvo(エンジン負荷)が、軽負荷判定用の基準値a未満であることが確認された場合には、常に上記故障判定手段43による故障判定を実行するように構成した例について説明したが、上記スロットル開度tvoが0または0に近い値であることが確認された場合にも、上記故障判定を禁止または中止するように構成してもよい。このように構成した場合には、エンジンのアイドル運転時等に、上記キャニスタ31からなる吸着手段に吸着された燃料がパージされて運転状態が不安定になることを効果的に防止できるという利点がある。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、上記パージ通路の内部圧力を検出する圧力検出手段の検出圧力に基づいて蒸発燃料供給系が故障しているか否かを判定する故障判定手段と、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段とを有する故障診断装置であって、上記エンジン負荷検出手段により検出されたエンジン負荷と軽負荷判定用の基準値とを比較してエンジン負荷が基準値以上であることが確認された場合に、上記故障判定手段による故障判定を禁止する判定禁止手段と、上記故障判定手段による故障判定中に、エンジン負荷が上記基準値未満の状態から基準値以上となったことが確認された場合に、この状態が予め設定された基準時間を経過するまで上記故障判定を継続し、この基準時間以上に亘って上記の状態が継続されたことが確認された時点で上記故障判定を中止する判定継続手段とを設けたため、高地等の運転状態において、空気の密度が低いこと等に起因してエンジン回転数が低下した状態で、吸気通路内に多くの空気が導入されることにより、負圧がさらに減少してパージ通路の内部圧力を上記基準時間内に所定値まで低下させられないことによる誤判定を防止しつつ、エンジン負荷が上記基準値未満のときに、パージ通路の内部圧力に基づいてパージ通路の接続不良等からなる重度の故障が発生しているか否かを適正に診断することができる。
【0068】
そして、上記判定継続手段において、エンジン負荷が上記軽負荷判定用の基準値以上になった状態が早期に解消され、上記基準時間が経過する前にエンジン負荷が上記基準値未満に復帰した場合には、上記故障判定手段による蒸発燃料供給系の故障判定が実行されるため、エンジン回転数が低下傾向にある高地の運転時に、アクセルペダルが一時的に大きく踏み込まれてエンジン負荷が上記基準値よりも大きくなることにより、上記故障診断が頻繁に中断されるという事態の発生を防止し、これによって高地の運転状態等における故障判定を適正に実行できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る蒸発燃料供給系を備えたエンジンの一例を示す概略図である。
【図2】故障診断装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図3】軽負荷判定用の基準値と大気圧との関係を示すグラフである。
【図4】故障診断制御の第1工程を示すフローチャートである。
【図5】故障診断制御の第2工程を示すフローチャートである。
【図6】故障診断制御の第3工程を示すフローチャートである。
【図7】故障診断時の制御動作を示すタイムチャートである。
【図8】故障の非発生時におけるパージ通路の内部圧力の上昇状態を示すタイムチャートである。
【図9】故障発生時におけるパージ通路の内部圧力の上昇状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
5 吸気通路
20 燃料タンク
30 パージ通路
31 キャニスタ(吸着手段)
37 CDCVバルブ(通路開閉手段)
38 パージバルブ(通路開閉手段)
39 FTPセンサ(圧力検出手段)
40 エンジン制御ユニット
42 蒸発燃料系制御手段
43 故障判定手段
44 判定禁止手段
45 判定継続手段
46 基準値設定手段
47 揺れ度合判別手段
Claims (3)
- 燃料タンクから導出された蒸発燃料を吸着手段に供給して吸着させるとともに、この吸着手段に吸着された燃料をエンジンに供給するパージ通路と、このパージ通路を開閉する通路開閉手段と、上記パージ通路の内部圧力を検出する圧力検出手段と、蒸発燃料供給系の故障を診断する際に、上記パージ通路内に吸気通路の負圧を導入させるように上記通路開閉手段を制御する蒸発燃料系制御手段と、上記圧力検出手段の検出圧力に基づいて蒸発燃料供給系が故障しているか否かを判定する故障判定手段と、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段とを有する故障診断装置であって、上記エンジン負荷検出手段により検出されたエンジン負荷と軽負荷判定用の基準値とを比較してエンジン負荷が基準値以上であることが確認された場合に上記故障判定を禁止する判定禁止手段と、上記故障判定手段による故障判定中に、エンジン負荷が上記基準値未満の状態から基準値以上となったことが確認された場合に、この状態が予め設定された基準時間を経過するまで上記故障判定を継続し、この基準時間以上に亘って上記の状態が継続されたことが確認された時点で上記故障判定を中止する判定継続手段とを設けたことを特徴とする蒸発燃料供給系の故障診断装置。
- 大気圧を検出する大気圧検出手段と、この大気圧検出手段により検出された大気圧に応じて高地における運転状態にあるか否かを判別して、高地における運転状態にあることが確認された場合に、上記軽負荷判定用の基準値を平地における運転状態に比べて小さな値に設定する基準値設定手段とを設けたことを特徴とする請求項1記載の蒸発燃料供給系の故障診断装置。
- 故障判定手段による故障判定を中止するか否かの判別基準となる基準時間を、パージ通路内に導入される負圧に基づく故障判定に影響を与えることなく、かつ上記故障判定が不必要に中止されることのない時間に設定したことを特徴とする請求項1または2記載の蒸発燃料供給系の故障診断装置。
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