本発明の画像形成装置の一例を図2に示す。図2は画像形成装置の組立展開図であり、代表的な構成部材が示されている。1は製品内部を埃などから保護する金属や樹脂等から形成された前カバーで、2は製品内部を埃などから保護すると共に、低反射処理が施された樹脂やガラスから構成された光透過性の前面保板で、組立時に前カバー1の内部に適当な固定手段により固定される。3は左上板、4は右上板で、それぞれ後述の画像表示パネル7を挟み支持するための剛性を有する金属板等で構成されている。5は左前面断熱部材、6は右前面断熱部材で、それぞれ後述の画像表示パネル7を挟み支持する部分の断熱性と緩衝性を目的に、発泡性の樹脂またはゴムで形成されている。7は画像表示パネルでSEDと呼ばれる自発光型の画像表示装置で、2枚のガラス板と枠で真空容器を形成し、周辺部に複数のフレキシブルケーブルが設けられている。8は左後面断熱材、9は右後面断熱材で、画像表示パネル7を後面側から挟み支持する。これらの断熱材は、先の左右の前面断熱部材5及び6と同じ材料から構成することができる。
10は左下板、11は右下板で、夫々が後面側から画像表示パネル7を挟み支持する。これら左下板10、右下板11は、それぞれ左上板3、右上板4と同じ材質で構成されており、左下板10は左上板3と、右下板11は右上板4と互いにねじなどの固着手段により固定されている。
上記左上板3、左下板10、右上板4、右下板11、および断熱材5,6,8,9により挟持部が構成されている。
表示パネルは、詳しくは後述するが、蛍光体等の発光部材を有するフェースプレート(画像形成基板または蛍光体基板)と、複数の電子放出素子から構成された電子源を有するリアプレート(電子源基板)とを対向させて配置したものである。リアプレートは、前記電子源を駆動するための配線などの取り出し部を必要とするため、フェースプレートよりも大きい。このため、上記挟持部はリアプレートのみを挟持することが好ましい。さらには、挟持部の脱着の簡便性から、リアプレートのフェースプレートと重なり合わない部分を挟持するのが好ましい。
また、リアプレートには、前述したように、駆動配線の取り出し部が配されている。さらには、駆動回路と接続するためのフレキシブルケーブルが上記取り出し部に取り付けられている。このため、前記挟持部はリアプレートと共に、前記フレキシブルケーブルを挟持することが好ましい。
12はフレキシブルケーブルの左押え、13は右押えで、夫々が画像表示パネル7を挟み支持するとともに、左上板3と左下板10、右上板4と右下板11とを接続固定する。これらの押さえ12、13は、剛性を有する金属等の材料から形成されており、画像表示パネル7のフレキシブルケーブルを通すための貫通部が千鳥状に設けられている。14は、X字状のフレーム(Xフレーム)で、その材質は所定の剛性を有するアルミニウムなどの金属よりなる。このXフレームには、先の前カバー1のねじ固定部、左下板10と右下板11の固定部、更には後述のスタンドユニット15やボード取付け板16の固定部が設けられている。
15は内部が剛性と重量のある金属からなり、外部が外観性の良い樹脂または金属の薄板からなるスタンドユニットで、画像形成装置全体を支持する目的でXフレーム14にねじで固定される。16はボード取付け板で、複数のプリント基板固定部が設けられた樹脂または金属等の薄板からなり、先のXフレーム14にねじ等の固定手段で固定される。17は、画像表示パネル7に画像を表示するための電気回路等を備える電気実装ボード類で、電源部、信号入力部、信号制御部、パネル駆動部などからなり、各部はプリント基板に電子素子を実装し、互いに電気ケーブルなどで接続されている。18は、先の画像表示パネル7や電気実装ボード類17から発生する熱を筐体外部へ放熱するためのファンユニットで、ファンと固定部材で構成され、先のXフレーム14にねじ等の固定手段で固定される。19は後カバーで、放熱用の開口部を有する金属または樹脂等の薄板で形成されており、製品内部を埃などの異物から保護する。
図3に表示パネル部の一例の展開図を、図4に組み立てた状態の図を示す。501はガラス板等からなるリアプレート、502はパネル内を真空に真空排気するための排気管、503は画像形成部に高圧を印加するための高圧端子、5044はパネルの外周部を支持する外枠(枠部材)、505はパネル内のガスを吸着するゲッタ、506は外枠と画像形成部間の大気圧支持をする周辺支持体、507は画像形成部内へかかる大気圧に対する耐性を持たせるためのスペーサ、508はガラス板からなるフェースプレート、509は画像形成部であり、取り出し電極、ブラックストライプ(低抵抗部材で作成したマスク部材)、蛍光体、メタルバック(金属膜)からなり、510は電子放出素子が複数形成された電子源基板、511は電子源領域からY方向配線を外部への取り出すためのY取り出し配線、512は電子源領域からX方向配線を外部へ取り出すためのX取り出し配線、513は排気管及び高圧端子を接着するためのシート状に仮焼成されたフリットであるシートフリット、514は外枠とリアプレート及びフェースプレートを接着するためのフリットである。
図5は図4におけるフェースプレート508の平面図で、高圧端子取り出し部を説明するための図である。図6は図4のA−A断面図で、高圧端子部を説明するための図である。509aは、フェースプレート508に形成される取り出し部である。503aは絶縁部材、503bは導電性材料よりなる導入線で、これらにより高圧端子503が構成されている。この高圧端子503の導入線503bは、フェースプレート508に形成された取り出し部509aと電気的に接続されている。
図7は図4のB−B断面図で、ゲッタ及び周辺支持体を説明するための図である。505aはゲッタ支持体、505bは支持線、505cはゲッタ材料、505dはゲッタフレーム、505eはゲッタループであり、これらによりゲッタ505が構成されている。
図8は、表示パネルに設けられるスペーサの配置の一例を模式的に示した図で、図8(a)は表示パネルをフェースプレート側から見た上面図、図8(b)は側面図である。この例では、多数のスペーサが平行に配列されている。
図9は、表示パネルに設けられるスペーサの配置の他の例を模式的に示した図で、図9(a)は表示パネルをフェースプレート側から見た上面図、図9(b)は側面図である。この例では、スペーサが千鳥状に配置されている。
図10に、線状ゲッタ及び周辺支持体506が設けられた外枠を示し、図17に、線状ゲッタの構成を示す。この線状ゲッタ515の設置は、まずBa等からなる線状のゲッタを所定の長さに切断してゲッタ線515を作製し、その非蒸着方向にゲッタ線と加工後の長さが等しくなるように折り曲げ加工などにより成形された例えばNi線(フレーム線518)を適当な間隔でスポット溶接し、Ni線とゲッタ線515とで複数のループを形成する。このループ構造の固定は、細長い柱状のガラス製などの支持部材に、支持部材に埋め込まれそこから突き出させた金属線への溶接によって行うことができる。図17の例では、線状ゲッタ515はGM支持体(リブ)517に支持線516により固定されている。
また、図11は表示パネルにおけるスペーサの長手方向に直交する断面図であり、4−1はフェースプレート基板、4−2はリアプレート基板、4−3は行方向配線(上配線)、4−4は電子放出部、4−5は導電性フリット、4−6はリアプレート側スペーサ電極、4−7は高抵抗膜、4−8はスペーサ基板、4−9はリアプレート側スペーサ電極、4−10はブラックストライプ、4−11は緑色蛍光体である。フェースプレート基板4−1に形成されたメタルバック(図示せず)に印加された加速電圧により、電子放出部4−4より電子放出した電子は加速され、電子放出部4−4の直上に配置された、蛍光体4−11に衝突し、蛍光体を緑色に発光させる。
図12は表示パネルのスペーサの長手方向に平行な方向の断面図であり、5−1はフェースプレート基板、5−2はリアプレート基板、5−3は列方向配線(下配線)、5−4は負側の素子電極、5−5は正側の素子電極、5−6ブラックストライプである。5−7は青色蛍光体、4−8は赤色蛍光体、4−9は緑色蛍光体である。この断面方向にはフェースプレート基板5−1に形成されたメタルバック(図示せず)に印加された加速電圧により、電子放出部(図示せず)より電子放出した電子は加速され、5−7〜9の各色の蛍光体に衝突し、蛍光体を発光させる。このとき、電子は正側の素子電極5−5の方向に偏向するため、蛍光体は素子電極間に形成される放出部の直上からシフト(d)させた位置に配置する。
なお、図11で示すスペーサは、高抵抗膜の外側にスペーサ電極が設けられているものであるが、このスペーサ表面の構成としては、図62に示される構成も好適に用いられる。図62に示すスペーサ1320は、絶縁性基体1321のフェースプレートと接する部分(上部端面)とリアプレートと接する部分(下部端面)にそれぞれ低抵抗膜1325が形成され、さらに、基体側面全体を覆うように高抵抗膜1322が形成されている。
図13(a)〜図13(e)及び図14は電子源基板への電子放出素子の形成工程を示すものである。以下、これらの図面を参照しながらこの基板の製造方法を説明する。
最初に図13を参照して、本発明の電子放出基板パネルの製造方法の一例を説明する。まず、よく洗浄された基板529上に金属材料からなる導電性薄膜を形成し、そのパターンをフォトリソグラフィーによって微細加工し、一対の素子電極521,522を多数形成する。ここで、基板529としては、石英ガラス、Naなどの不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法あるいはCVD法などにより形成したSiO2を積層した基板など、及びアルミナ等のセラミック等が挙げられる。
素子電極521、522の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマSVD法等の真空系を用いて成膜した後にリソグラフィー法でパターニングしてエッチングする方法や、有機金属を含有するMOペーズトをガラス凹板を使ってオフセット印刷する方法を選択することができる。素子電極521、522の材料としては導電性を有するものであればどのようなものでもあってもかまわないが、例えば、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属あるいは合金、及びPd、Ag、Au、RuO2、Pd−Ag等の金属あるいは金属酸化物とガラスなどから構成される印刷導体、及びポリシリコン等の半導体材料、及びIn2O3−SnO2等の透明導電体等が挙げられる(図13(a))。
次にY方向配線524として導電性ペーストを印刷形成する。この時Y方向配線524は素子電極522と接続するように形成する。配線は膜厚が厚いほうが電気抵抗を低減できるため有利である。そのため厚膜印刷法、特にスクリーン印刷法を用いるのが好ましく、銀、金、銅、ニッケル等の導電性ペーズトを用いることができる。より高精細なパターニングが要求された場合には、感光性ペーストを用いて大まかなパターンをスクリーン印刷によって形成た後に、露光、現像することによって良好な配線が得られる。なお、所望のパターンを形成した後にはペースト中のビヒクル成分を除去するために、そのペースト、使用ガラス基板の熱特性に応じた温度(400〜650℃)で焼成される(図13(b))。
次に、層間絶縁膜525をX方向配線とY方向配線の交差部に形成する。この層間絶縁膜は、例えば酸化鉛を主成分とするガラス物質、例えば、PbO、B2O3、ZnO、Al2O3、SiO2等から適宜選ばれる成分の混合物で形成される。厚さは、絶縁性を確保できれば特に制限はないが、通常は10〜100μm、好ましくは20〜50μmである。この層間絶縁膜の形成は、酸化鉛を主成分とするフリットガラス、エチルセルロースなどの適当なポリマー及び有機溶剤からビヒクルとを混合してなるペーストをスクリーン印刷等により所定位置塗布した後焼成して行う(図13(c))。なお、層間絶縁膜は、少なくともY方向配線とX方向配線の交差部を被覆すればよいので、その形状は図13に示すものに限るものではない。
次に、X方向配線526を層間絶面膜上に形成する。この配線も電気抵抗を低減したほうが有利であるため、膜厚を厚く形成できる厚膜印刷法を用いるのが好適である。そこでY方向配線形成と同じようにしてスクリーン印刷法で導電ペーストを用い、配線を形成した後焼成する。なお、このとき各配線を素子電極522と接続する(図13(d))。次に、導電性薄膜523を形成する。材料の具体例を挙げるならば、Pt、Ru、Ag、Au、Ti、In、Cu、Cr、Fe、Zn、Sn、Ta、W、Pd等の金属、PdO、SnO2、In2O3、PbO、Sb2O3等の酸化物、HfB2、ZrB2、LaB6、CeB6、YB4、GdB4等のホウ化物、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WC等の炭化物、TiN、ZrN、HfN等の窒化物、Si、Ge等の半導体、カーボン、AgMg、NiCu、Pb、Sn等であり、微粒子膜からなる。なお、ここで述べる微粒子膜とは複数の微粒子が集合した膜であり、その微細構造として、微粒子が個々に分散配置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接、あるいは重なり合った状態(島状も含む)の膜を指す。
これらの電子放出部形成用は薄膜を形成する手段としては良くバブルジェット方式が用いられる。これは原理・構成として非常に簡単であり、高速化、液滴の微小化が容易であるなどの多くの利点を持つ為である。実際には、前述の導電性材料を含む有機金属化合物の溶液を所定の位置にのみ液滴として付与し乾燥させた後、加熱処理により有機金属化合物を熱分解することにより、金属あるいは金属酸化物などの微粒子からなる導電性薄膜が形成される(図14)。
本発明で用いた電子放出素子としては、低実効仕事関数物質の層、例えばカーボンを含む層であるカーボン層を有するものが好ましい。これは、例えば米国特許第5,591,061号、日本特許第2854532号などに開示された活性化工程によって得ることができる。特にはSP2が好適に用いられる。
また、その他の低実効仕事関数物質の層としては、例えば米国特許第5,679,043号、同第5,763,997号に開示されたアモルフィック・ダイヤモンド膜、CVDダイヤモンド膜を用いることもできる。これらもカーボン膜の一種である。
図15はフェースプレートをリアプレート側から見た平面図であり、図16は図15のA−A’で断面である。これらに図示されたフェースプレートは例えば次のようにして得ることができる。まず、耐大気圧強度を持ったソーダライムガラス(青板ガラス)、あるいは青板ガラスと熱膨張率のほぼ等しい高歪点ガラスからなる基板61上に、まず、無機の黒色含量を含むガラスペーストを用いて、格子状のブラックマトリクス62をスクリーン印刷により形成する。ブラックマトリクスの材料は、カーボン含有ペーストなど、導電性を有する材料を用いても良い。次に、ブラックマトリクス62の開口部分にR、G、Bの3原色蛍光体パターン(63−R、63−G、63−B)をスクリーン印刷により形成する。次に、印刷ペースト中の有機バインダを焼失(例えば430℃)させた後、CRTなどで通常用いられているフィルミング処理(蛍光体上にアクリル系薄膜を形成する処理)を行い、例えば厚さ1000Å〜2000Åのアルミニウム薄膜を蒸着により成膜する。その後、430℃で焼成し、アルミニウム薄膜と蛍光体間にあるアクリル系薄膜を焼失させ、1000Å〜2000Åのアルミニウム薄膜からなるメタルバック64が形成される。
上記の画像形成装置における画像表示パネルとしては、種々の構成のものが利用できるが、例えば、図18に示す構成のものを挙げることができる。この表示パネルは、表面伝導型電子源基板を、耐大気圧強度を持ったガラス材からなるリアプレート4005、支持枠(枠部材)4007、フェースプレート4000の中に収め、各部材の所定の接合部を接着して、リアプレート4005とフェースプレート4000の間に形成された空間を密閉した構成を有する。この密閉には例えば、フリットガラス等が用いられる。フェースプレート4000の内側には、メタルバック4006(詳細は不図示)と、蛍光体4008が配置してあり、メタルバック4009に接続された高圧端子4011が画像形成装置外部に引き出され、高圧端子には高圧電源4010が接続されている。また表面伝導型電子源基板4001上に形成された列方向配線4003、行方向配線4004は、画像形成装置外部に延びるX方向端子DX1等、Y方向端子DY1等にそれぞれ接続されており、これらの配線により電子放出素子4002からの電子の放出を画像情報に応じて制御してフェースプレートでの画像表示が行われる。なお、電子源基板の強度等が十分なものであれば、電子源基板にリアプレートの機能を兼用させることができる。
以下、本発明で用い得る各部の構成における実施例等について説明する。
(第1の構成)
表示パネルの内部は上記のように所定の真空度が維持されるように外界に対して密封された状態にある。更に、この内部の真空度を維持する目的でゲッタが配置されるのが一般的である。また、この内部が真空となることで表示パネル自体の大気圧に対する十分な耐性を確保するための各種の手段や方法をとる必要が生じる場合がある。そのような場合においては、例えば、リアプレートとフェースプレートとの間に構造上の強度を高める目的でスペーサーを配置することで、大気圧に対する強度を向上させることができる。
まず、このスペーサと電子放出素子から放出された電子との関係を図26を用いて説明する。図26において、30はフェースプレート、20はスペーサ、41はスペーサ電極、113は配線、111は電子放出部、31は電子源の形成されたリアプレート基板、112は電子軌道、25は等電位線を示す。スペーサ20の帯電により電子はスペーサ側に吸引される。これを、補正するために、スペーサ電極41をスペーサ20に形成し、スペーサ近傍の電子放出部111付近の電位を補正することにより、電子放出部付近での電子の軌道をスペーサ20から反発する方向にし、電子をフェースプレート30の正規の位置に到達させることが可能である。
そこで、本構成では、そのようなスペーサーとゲッタとの配置における一例としては、ゲッタ材が配線電極上に配置される構成であって、且つ支持部材をゲッタの上に配置させない構成をとるものである。その参考例について以下に述べる。
(参考例1)
第1の構成の第1の参考例を図19を用いて説明する。図19において、42はスペーサと接続される配線、22はスペーサ基体側面全体を覆うように形成された高抵抗膜、23はスペーサとフェースプレート30とが接する部分(上部端面)に形成された低抵抗膜よりなるスペーサ電極、46は接続部である。同図中、フェースプレート(蛍光体、メタルバック等は省略してある)30、スペーサ20、電子源基板側形成されたスペーサ電極41、配線113、電子放出部111、電子源の形成されたリアプレート基板31、電子軌道112、等電位線25、ゲッタ101は上述の図26に示したものと同様の構成のものである。スペーサ20の帯電により吸引される電子の電子軌道補正するために、スペーサ上に形成された電極41の高さaをゲッタ上面までの高さbよりもより大きくする。aの大きさは、ゲッタ上面までの高さb、画像形成装置の構造、駆動条件、高抵抗膜の帯電除去の能力により任意に選択することが可能であるが、帯電で電子がスペーサ20側に引き寄せられることに対する電子軌道補正を行うには、少なくともa>bであることが必要である。更に0≦a−b≦100μmであるのが好ましい。ただし、スペーサの帯電を除去できる状況ではaとbは略等しい値を選択することが可能である。また、ゲッタ上面までの高さbについても任意の値を選択することが可能である。また、スパッタ形成、溶射形成等の各種製法を適用することができる。
この構成においては、ゲッタをスペーサの配置する部分に形成しないことにより、表面をスペーサで覆われることなく、単位長さ当たりの露出面積が増大し原料の使用効率をあげることができる。また、ゲッタ101にスペーサから力が加わらないため、スペーサ組立工程時や真空排気後にゲッタの破壊、欠落が起こりにくい効果がある。また、一般に電子軌道はスペーサの電子源基板側の電場の影響を強く受けるため、スペーサの下にゲッタを形成しないことにより、ゲッタの製法において、精密な高さ制御を行いにくい製法も適用できる効果もある。
この構成により、ゲッター膜を画像形成装置の表示領域内に、スペーサ近傍の電子軌道の乱れを生じることなく形成することが容易となり、輝度の経時的変化(経時的低下)が少なくかつビームずれが少ない高品質の画像形成装置の提供が可能となった。
電子放出部付近の電子軌道補正は各種の方法を適用することが可能である。上述のスペーサ電極の高さを大きくする方法の他、スペーサと接続する配線の高さを大きくすることも可能である。配線は、電子源基板にフォトリソグラフィ法を用いたパターニングやスクリーン印刷等の精度の高い形成方法を用いて一括形成することが可能であり、この方法を用いた場合には、電子放出部に対しての位置ずれをより小さくすることが可能である。
配線材料としては、各種導電材料を適用することができる。例えば、スクリーン印刷法を用いて配線を形成する場合には、金属とガラスペーストと混合させた塗布材料、また、めっき法を用いて金属を析出させる場合には、めっき浴材料が適用可能である。スペーサと接続する部分近傍の高くなった配線部は、高さ補正する部分とその下に形成された部分が電気的に接続されていれば、他の配線と同じ高さ分は他配線と同様の方法を用いて一括形成し、高さ補正する分のみ他の製法を適用可能である。また、スペーサの形状としては、板状の他に円柱等の各種形状を適用することが可能である。
図20は、この参考例を適用した表示パネルの斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。図中、前述の図18に示した構成と同じものには同じ符号を付している。この例でも、リアプレート4005、側壁4007、フェースプレート4000により表示パネルの内部を真空に維持するための気密容器を形成している。
図19の構成は例えば以下のようにして得ることができる。列方向配線(図示せず)および絶縁層(図示せず)を電子源基板31に形成した後、Agペーストをスクリーン印刷法により塗布し、配線113(行方向配線)を形成した。各配線幅は300μmとして形成した。また、スペーサ20の厚みは220μmにし、スペーサ電極41をその厚みが0.2μmとなるように形成した。
また、本参考例に用いたゲッタ101は以下の様にして形成した。ゲッタ形成は、配線形成後に行っており、マスクを用いて、行方向配線113の上に、減圧プラズマ溶射法により非蒸発型ゲッターを成膜した。なお、成膜は、低圧アルゴン雰囲気中で行い、ゲッター材料は日本ゲッターズ株式会社製のZr−V−Mn−Alの組成の合金であるHS−405(325mesh)粉末を用いた。本参考例において形成されたゲッター材の膜厚は、平均して40μ程度である。また、ゲッタ101の形成領域はスペーサの幅と同程度もしくは、若干小さく形成することが望ましい。これは、配線からはみ出して、電子軌道が大きく偏向されるのを防ぐためであり、任意の値を選択することが可能である。
なお、この例では、スペーサの長さと略同じ長さでゲッタを形成したが、スペーサが配置される配線上のスペーサのない部分にもゲッタを形成することも可能である。この様子を図21に示す。図21に於いて、前述の図18に示した構成と同じものには同じ符号を付している。この表示パネル例では、行方向配線および列方向配線が形成された表面伝導型電子源基板4001上の所定の部分にスペーサ20が配置されている。スペーサ20の下にはゲッタは形成されていない。この例は、より大容量のゲッタが必要な場合に適用される。
(参考例2)
本参考例のパネルの断面図を図22に示す。この例では、スペーサ20の電子源基板側の電極42はスペーサの端面のみに形成し、スペーサの配置される配線42の高さを高くすることにより、電子軌道の補正を行っている。なお、他の構成は上記の第1の例と同様である。
ここで、行方向配線42の形成方法について説明する。この例では、列方向配線(図示せず)および絶縁層(図示せず)を電子源基板31形成した後、Agペーストをスクリーン印刷法により塗布し、行方向配線113を形成した。また、スペーサと接続される行方向配線42は、他の行方向配線113と同様に形成したあと、さらにスクリーンを変えて、配線部のみに多層印刷することにより形成した。本例においては、20μmの厚さで各行方向配線113を形成した後、さらに3回の印刷を行うことにより行方向配線42を形成した。この場合、25μmの高さの補正量を得られた。また、各配線幅は300μmとして形成した。また、スペーサ20の厚みは250μmにし、端部に形成したスペーサ電極41の厚みは1μmの厚で形成した。なお、端面への電極塗布はディスペンサを用いて行い、約150μm幅でAgペーストを塗布し、450℃で焼成することによりスペーサ電極41を形成した。
なお、本例においては、素子ピッチの大きさは行方向配線間方向には680μm、列配線方向には300μmピッチとした。また、a、bは列方向配線及び絶縁層の厚みを含む高さであり、本例においては、aの大きさは95μm、ゲッタ101の厚みは35μmとしてbの大きさを65μmとした。
(参考例3)
図23に第1の構成の第3の参考例を示す。本例の構成は、スペーサ20の表面22に高抵抗膜を設けなかった点を除けば、第1の参考例と同じ構成のものである。なお、本例においては、素子ピッチの大きさは行方向配線間方向には800μm、列配線方向には600μmピッチとした。スペーサ電極41、23の高さはいずれも180μmとし、aの大きさは230μm、ゲッタ101の厚みは50μmとしてbの大きさを100μmとした。
(参考例4)
図24に第1の構成の第4の参考例を示す。本例の構成は、第1の参考例と同じ構成においてスペーサ20に高抵抗膜とフェースプレート側のスペーサ電極を設けなかった点が異なる。また、本例において、接続部46は導電性フィラーを有しない絶縁性のフリットを用いている。また、本例に於いては、スペーサに隣接する行方向配線113の上に形成されたゲッタの形成厚を他の配線より高くしてある。本例の構成により、スペーサに隣接する電子源、及びその隣の電子源から放出される電子の電子軌道を補正することが可能である。
なお、本例においては、素子ピッチの大きさは行方向配線間方向には800μm、列配線方向には450μmピッチとした。スペーサ電極41の高さはいずれも600μmとし、aの大きさは650μm、スペーサに隣接するゲッタの厚みは100μmとしてbの大きさを150μm、その他のゲッタの厚みは50μmとしてcの大きさを100μmとした。
(参考例5)
図25に第5の参考例を示す。本例の構成は、上述の第1の参考例と同じ構成においてスペーサに円柱形状スペーサ102を用いたものである。図示はしていないが、スペーサ102はスペーサ電極及び高抵抗膜を備えており、以下の様に形成した。
まず、スペーサ電極の製法であるが、Agペーストを平板上にバーコータを用いて均一な厚みに展開する。次に、この展開したAgペーストに円柱スペーサの端面を略垂直に押し当てることにより、円柱側に電極材であるAgペーストを転写した。この円柱を120℃で乾燥させた後、円柱の上下を逆転させて同様にAgペーストを転写し、乾燥後450℃で2時間焼成して円柱の上下に電極を形成した。また、第1の参考例の場合と同様なスパッタを2回行うことによりスペーサ102の全面に高抵抗膜を形成した。なお、ゲッタ101等の他の構成材料の形成は第1の例と同様な方法を用いた。
本例においては、素子ピッチの大きさは行方向配線間方向には550μm、列配線方向には250μmピッチとした。電子源基板側およびフェースプレート側スペーサ電極(図示せず)の高さはいずれも60μmとし、ゲッタの厚みは40μmとした。
パネル内厚dを1.4mm、加速電圧を6kVとして、上述した構成の画像形成装置を駆動したところ、特性劣化が少なく色ずれのない非常に高品位な画像の提供が本例において可能となった。
以上説明した第1の構成では、ゲッタを画面領域内に配置しゲッタのない位置にスペーサを配置することにより、特性劣化が少なく且つ輝度にむらを生じず、色ずれの少ない高品位の画像装置を提供することが可能となった。また、電子被照射体は特定せず、マルチ平面電子源を成す電子発生装置においても同様の効果を発揮できる。
(第2の構成)
上述した第1の構成は更に以下に示す構成とすることができる。
図27は、第2の構成を適用する表示パネルの斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。また、図28は図27のA−A’断面の模式図である。図28において、各部に付されている番号は図27のものとそれぞれ対応している。図中、1015はリアプレート、1016は側壁(支持枠)、1017はフェースプレートであり、リアプレート1015、側壁1016およびフェースプレート1017により、表示パネルの内部を真空に維持するための外囲器(気密容器)を形成している。また、気密容器内部には、大気圧を支えるためのスペーサ1020が設けられている。
フェースプレート1017には蛍光膜1018及びメタルバック1019が形成されている。リアプレート1015には基板1011が固定されているが、この基板1011上には冷陰極素子1012がN×M個形成されており、M本の行方向(X方向)配線1013とN本の列方向(Y方向)配線1014により結線されている。
1021はスペーサ1020が設置される行方向配線1013上に形成された非蒸発型ゲッタ、1022はメタルバックを介してフェースプレート1017とスペーサ1020を接着する接着剤、1101はスペーサ近傍の電子放出素子1012から放出された電子の電子軌道、1102はスペーサ近傍の等電位線を示す。
スペーサ1020は、薄板状の絶縁性部材1201の表面に高抵抗膜1211を成膜し、かつフェースプレート1017の内側(メタルバック1019)及び基板1011の表面(行方向配線1013)に面したスペーサの当接面1203に低抵抗膜1221を成膜した部材からなる。薄板状のスペーサ1020は、行方向(X方向)に沿って配置されている。高抵抗膜1211は、基板1011側では低抵抗膜1221及び非蒸発型ゲッタ1021を介して行方向配線1013と電気的に接続されており、フェースプレート1017側では低抵抗膜1221及び接着剤1022を介してメタルバック1019と電気的に接続されている。
上記スペーサが配置された行方向配線間には、少なくとも、5〜50本の行方向配線が配置されることが好ましい。
非蒸発型ゲッタ1021及び接着剤1022は、スペーサ1020が配線1013またはメタルバック1019と機械的な当接及び電気的接続を成すに際して、配線1013、メタルバック1019及びスペーサ1020間の緩衝機能を有している。
この構成によれば、非常に薄いメタルバック1019が剥がれたり破れてしまうのを防止する効果や、小さな比抵抗が要求される配線1013にクラックが入って抵抗が大きくなるのを防止する効果や、脆弱性のある材料からなるスペーサの場合でスペーサが破損するのを防止する効果などがある。
なお、非蒸発型ゲッタ1021と接着剤1022は、フェースプレート1017側或いは電子源をなす基板1011側のどちらに対して用いても上記の緩衝効果を得ることが出来る。
また、上記緩衝効果は、画像表示のなされる領域以外(例えば、配線の引出し部など)においても当然有効である。
さらにまた、スペーサ近傍での電子軌道制御の観点からは、スペーサ1020の正帯電により吸引される電子の軌道補正をするために、スペーサ1020上に形成された電極1221の高さaをゲッタ上面(ゲッタのない場合は配線上面)までの高さbよりもより大きくする。aの大きさは、ゲッタ上面までの高さb、画像形成装置の構造、駆動条件、高抵抗膜の帯電除去の能力により任意に選択することが可能であるが、帯電で電子がスペーサ1020側に引き寄せられることに対する電子軌道補正を行うには、少なくともa>bであることが必要である。ただし、スペーサの帯電を除去できる状況ではaとbは略等しい値を選択することが可能である。また、ゲッタ上面までの高さbについても任意の値を選択することが可能である。
ここで、スペーサ1020に形成された電極1221の上端の高さは、電子放出素子の電子放出部の上面よりも高いことが好ましい。一方、該電極の高さの上限は、電子放出素子から電子を放出している時の電子放出素子の電位と加速電極の電位との間の電位分布が均等に分布しているとした時に、電子放出部から加速電極側に向けて電子放出部の電位よりも2kV電位が高くなる高さに制御するとよい。ここで、電子を放出している時の電子放出部の電位とは、電子放出素子に印加される電位のうちの高い方の電位をいう。また、該スペーサに形成される電極1221としては、図28に示すような、スペーサの側面に回り込むものに限るものではなく、配線側に当接する端部のみ電極を形成したものであってもよい。この場合、上述したスペーサに形成する電極の上端の高さとは、スペーサに形成する電極を形成する基体との接触面の高さである。スペーサに以上のような電極(抵抗膜)を形成した後に、該電極よりもシート抵抗の高い高抵抗膜を形成する場合であっても、上述の条件は好適に適用できる。
この構成により、ゲッター膜を画像形成装置の表示領域内に、スペーサ近傍の電子軌道の乱れを生じることなく形成することが容易となり、輝度の経時的変化(経時的低下)が少なくかつビームずれが少ない高品質の画像形成装置の提供が可能となる。また、スペーサの形状としては、板状の他に円柱等の各種形状を適用することが可能である。また、材質としてガラスが適している。また、スペーサの高さは、0.5mm〜5mmが適している。
また、図28に示されるように外囲器内に、外囲器内を真空に保つための補助ポンプとして補助ゲッター1023を配置する場合がある。この場合、ゲッター材が画像表示領域中に飛散し、電極間の電気的短絡を防ぐ目的で、補助ゲッター1023と電子放出素子1012、配線群1013、1014及び及びアノード電極をなす膜厚500Å〜5000Åのメタルバック1019(アルミニウム、銅、銀などの金属膜を用いる)を含む領域との間に、遮蔽体1024を設けておく場合がある。尚、画像表示領域に形成されたゲッター1021のみで、外囲器内を十分に真空に保つことができる場合は、補助ゲッター1023並びに遮蔽体1024を形成しておかなくともよい。メタルバック1019の膜厚は電子を透過するのに十分に薄く設定される。
(参考例1)
ここで、本構成のもっとも特徴的な部分であるゲッタとスペーサの詳細について説明する。図29、30は上述した第2の構成の参考例を説明するための図であり、電子線装置をなす表示パネルの断面図である。スペーサ1020の低抵抗膜1221は、マスク治具を用いてスパッタ法によりアルミニウムを約0.1μmの厚みだけ成膜し、フェースプレート1017側および電子源基板1011側に形成した。電子源基板1011側の低抵抗膜1221は電子源基板1011に当接される面1203のみに形成した。次に、高抵抗膜1211として、WとGeの合金窒化膜をアルゴンガスと窒素ガスの混合ガス中でWターゲットとGeターゲットを同時スパッタする反応性スパッタ法により、約0.2μmの厚さに形成した。このとき、高抵抗膜1211のシート抵抗値は、約10の10乗[Ω/□]であった。導電性を有するWとGeの合金窒化膜は我々の研究により帯電防止性に優れていることが確認されている。
なお、本参考例では、全ての行方向配線1013上に行方向配線の長さと略同じ長さで非蒸発型ゲッタ1021(幅200μm、厚み40μm)を形成した。
また、本参考例では、列方向配線(図示せず)および絶縁層(図示せず)を電子源基板1011上に形成した後、Agペーストをスクリーン印刷法により塗布し、行方向配線1013(厚み20μm)を形成した。各配線幅は300μmとして形成した。なお、電子放出素子1012の行方向配線方向のピッチは630μm、列方向配線方向には305μmピッチとした。
さらに、本参考例においては、スペーサ1020は接着剤1022にて、フェースプレート1017に固定した後、電子源基板1011とフェースプレート1017とを組み立てることにより配置した。なお、接着剤1022には、球状のガラス製絶縁性フィラーに金属めっきを施したものをフリットガラス中に分散させたものを用い、フェースプレート1017とフェースプレート側低抵抗膜1221との電気的接続とスペーサ1020の固定を行った。
(参考例2)
本参考例では、参考例1の行方向配線を列方向配線の幅よりも広くし、図14に示した構成とした。そして、スペーサを行方向配線上に配置した。
行方向配線には、画像表示する際には、走査信号が入力される。このため、より低抵抗なものとするために、本参考例では、行方向配線の幅を列方向配線よりも広く設定した。また、スペーサのアライメントに要求される精度も参考例1よりも低くできた。
また、本参考例で形成した画像形成装置のフェースプレートの蛍光膜の構成としては、図15に示したものを用いた。各色の蛍光体は、図に示した様に、縦長矩形状とした。また、3原色の配列としては、図に示したように、列方向(図のY方向)に同色の蛍光体が配列され、行方向(図のX方向)に3原色の蛍光体が赤、緑、青の順で繰り返し配列されている。遮光部材としてブラックマトリクスを用い、隣接する同じ色の蛍光体間方向(図のY方向)のピッチを、隣接する異なる色の蛍光体間方向(図のX方向)のピッチよりも広くし、リアプレート側の配列と同様にした。つまり、幅の広い遮光部材の領域の直下に前記行方向配線が配置される。そして、スペーサは、幅の広い遮光部材の領域に当接する。上記以外の構造は上述の第2の構成の第1の参考例と同様である。
以上の構成とすることで、本参考例の画像形成装置は、より大面積で、より高輝度なものが実現できた。
(第3の構成)
スペーサの固定については以下に示す構成をとることができる。
(リアプレートにスペーサを固定する場合)
リアプレート上には素子を駆動するためにマトリックス状、またははしご状に配線が形成される。スペーサをリアプレートに固定するときは、フリットガラス等を用いて、配線の上に固定される。このとき、スペーサとフェースプレートとの接点はブラックストライプを介して行われる。
(フェースプレートにスペーサを固定する場合)
また、スペーサがフェースプレートに固定されるときは、ブラックストライプに、リアプレートと同様フリットガラス等で固定される。リアプレートとの接触は、配線を介して行われる。
(配線、ブラックストライプの断面)
配線、ブラックストライプは、印刷、フォトリソなどの手法で形成され、断面は扇状、蒲鉾状、矩形、などの形状を呈し、スペーサとは、頂点、ライン上、平面で接する。
(スペーサの位置ずれの許容範囲)
配線、ブラックストライプが凸状の断面を有する場合において、以上で述べたように、スペーサはリアプレート、フェースプレートと両者、あるいはいずれかと、配線、ブラックストライプを介して接続されるが、スペーサが設置される配線、ブラックストライプとスペーサの位置ずれが生じてしまうことがある。その結果、スペーサのずれ量によってスペーサの角と設置台が当たってしまうため、ずれの許容範囲は図31に示すような以下のようなものとした。
リアプレート1230(またはフェースプレート)に設けられた設置台1231の頂部(ここでは、スペーサ1020と設置台1231との接点1233)から引いた法線1235とスペーサ中心軸1234との位置ずれをx 、スペーサ1020の厚みをtとするとき、
x<t/2
とする。
(スペーサの傾きの許容範囲)
スペーサ1020は、位置ずれだけでなく、傾きも問題となる。設置台1231に対して、スペーサ1020の傾きによっては、角に荷重がかかって破損の可能性が生じる。そのため、図32に示すような以下のような許容範囲に傾きを限定した。
スペーサ1020の厚みをt、曲率中心1236を有する設置台1231の曲率半径をR、スペーサ1020の傾きθとするとき、
Rsinθ<t/2
となる。
(スペーサの位置ずれと傾きの許容範囲)
さらに、位置ずれ、傾きの両方が生じることがある。そのような場合は、図33に示すような以下のような許容範囲に傾きを限定することが望ましい。
スペーサ1020の厚みをt、曲率中心1236を有する設置台1231の曲率半径をR、スペーサ1020の傾きをθ、フェースプレート1017(またはリアプレート)の平面に対するスペーサ1020の傾き方向をX軸としたとき、設置台1231でのスペーサ1020の位置ずれをxとすると、スペーサ1020と設置台1231の接点1233がスペーサ1020の厚み中央よりもX軸方向に大きいとき、
Rsin|θ|<x+t/2
であれば、スペーサの角が設置台に接することはない。
なお、スペーサ1020の厚みをt、設置台1231の曲率半径をR、スペーサ1020の傾きをθ、リアプレート1230の平面に対するスペーサ1020の傾き方向をX軸としたとき、設置台1231でのスペーサ1020の位置ずれをxとすると、スペーサ1020と設置台1231の接点1233がスペーサ厚み中央と設置台1231の頂点の間にあるとき、
Rsin|θ|>x―t/2
を満たせば、スペーサの角が設置台に接するのを避けることができる(図34参照)。
(スペーサにRをつける方法)
スペーサ1020のずれ、傾きを抑えるほかに、図35に示すように、スペーサ1020の角を丸くし、荷重の集中を小さくすることも可能である。スペーサ1020の角のRの大きさは、小さくとも10μmが望ましく、スペーサ1020の強度、配線、ブラックストライプなどの幅、曲率によって好適なRを使用することが望ましい。
(スペーサより広い幅の平面を有する設置台の場合)
スペーサ1020に接触する接触部に、スペーサ1020より広い幅の平面を有する設置台1231において、スペーサ1020が垂直に設置されているとき、スペーサ1020の厚みをt、スペーサ1020の位置ずれをx、設置台1231の平面部の幅をwとすると、スペーサ1020の中央が設置台1231からはずれる場合は
x<w/2+t/2
の条件によって、スペーサ1020の角と設置台1231との干渉を抑えることができる。(図36参照)
以上述べたような条件を満たすことにより、大気圧によるスペーサの破損を抑えることができる。
以上のような第3の構成の参考例を以下に示す。
(参考例1:傾きと位置ずれの許容範囲の設定)
本参考例では、前述した図27に示した表示パネルを作製した。
(1)電子源作製
まず、あらかじめ基板1011上に行方向配線1013、列方向配線1014、電極間絶縁層および表面伝導型電子放出素子1012の素子電極と導電性薄膜を形成した(図27参照)。
(2)スペーサ基板の作製
次に、ソーダライムガラスからなる絶縁性部材からなるスペーサ1(40mm×2mm×0.2mm)を作製した。
(3)スペーサの高抵抗膜と電極成膜
スペーサ表面のうち、気密容器の画像領域内にかかる4面(40×2、40×0.2の各表裏面)に後述の高抵抗膜1211を成膜し、フェースプレート、リアプレートに当接する2面(40×0.2の2面)および、40×2の面のフェースプレート、リアプレートに接する辺から0.1mmの高さまでの領域(40×0.1)に導電性膜を形成した。高抵抗膜としては、CrおよびAlのターゲットを高周波電源で同時スパッタすることにより形成したCr− Al合金窒化膜(200nm厚、 約1×109[Ω/□])を用いた。導電性膜は、スペーサに成膜された高抵抗膜とフェースプレート、高抵抗膜とリアプレートの電気的接続を確保する目的のほかに、スペーサ周辺の電場を制御し電子放出素子からの電子線の軌道制御を行う目的がある。
(4)フェースプレートとスペーサ組み立て
フェースプレートとスペーサ組み立てについて図37を参照して説明する。フェースプレート1017のスペーサ1020が配置される個所にフリット1022aを塗布した。その後、スペーサ1020が配置される位置にスペーサよりわずかに大きな溝1022bを有する治具1022cと、フェースプレート1017との位置合わせを行う。そしてスペーサ1020を治具1022cの溝1022bに挿入し、熱工程を施すことによって、フリット1022aによってスペーサ1020を固定する。ここで使った治具の溝は、スペーサの幅、スペーサの表面の膜の厚みなどを考慮し、幅250μmとしてある。
(5)フェースプレートとリアプレートの封着
次に、スペーサの固定されたフェースプレート1017をリアプレート1015に固定する。リアプレート1015と側壁1016の接合部およびフェースプレート1017と側壁1016の接合部に、フリットガラスを塗布した。そしてリアプレート1015を、フェースプレート1017に側壁1016を介して配置し、大気圧中で400℃乃至500℃で10分以上焼成することで封着した。
(6)封着するリアプレートとスペーサの関係
本参考例では、図38に示すように、スペーサ1020の厚みが0.2mm、高さが2mm、治具の溝1022bの幅が0.25mm、リアプレート1015の配線が幅0.3mm、配線の曲率がR=0.5mmとなっている。ゆえに、スペーサ1020の最大ずれ幅は0.025mm、最大傾きは0.025radである。このとき、最大のずれのとき、傾きは0であるので、
x<t/2
を満たし、最大傾きのときも、スペーサと設置台の接点がスペーサ厚み中央よりもX軸方向に大きい条件で、
Rsin|θ|<x+t/2
を満たす。よって、スペーサの角が配線に当たることはない。
(7)電子源プロセス、封止
以上のようにして完成した気密容器内を排気管を通じ真空ポンプにて排気し、十分な真空度に達した後、容器外端子Dx1〜DxmとDy1〜Dynを通じ、行方向配線電極1013及び列方向配線電極1014を介して各素子に給電して前述の通電フォーミング処理と通電活性化処理を行うことによりマルチ電子源ビーム源を製造した。次に、1×10-6[Torr]程度の真空度で、不図示の排気管をガスバーナーで熱することで溶着して外囲器(気密容器)の封着を行った。最後に、封止後の真空度を維持するために、ゲッター処理を行った。
(8)画像形成
以上のように完成した表示パネルにおいて、各冷陰極素子(表面伝導型電子放出素子)1012に容器外端子Dx1〜DxmとDy1〜Dynを通じて走査信号および変調信号を不図示の信号発生手段によりそれぞれ印加することにより電子を放出させるとともに、メタルバック1019に高圧端子Hvを通じて高圧を印加することにより放出電子ビームを加速し、蛍光膜1018に電子を衝突させ、各色蛍光体を励起・発光させることで画像を表示した。なお、高圧端子Hvへの印加電圧Vaは3[kV]〜10[kV]、各配線1013、1014間への印加電圧Vfは14[V]とした。
このとき、スペーサ1020に近い位置にある冷陰極素子1012からの放出電子による発光スポットも含め、二次元上に等間隔の発光スポット列が形成され、鮮明で色再現性の良いカラー画像表示ができた。
以上述べたように、配線上でのスペーサの位置ずれと、傾きの最大値を設定し、その設定範囲内で組み立てを行うことにより、スペーサの角が他の部分にあたることなく、大気圧によるスペーサの破損を防止することができる。
(参考例2:スペーサより幅のある平面を持った配線)
本参考例では、図39に示すように、スペーサより幅のある平面を持った配線でのスペーサの配置にいて述べる。スペーサおよび組み立ての条件は、上述の第3の構成の第1の参考例のものと同じである。すなわち本参考例では、スペーサ1020の厚みが0.2mm、高さが2mm、治具の溝の幅が0.5mm、リアプレートの配線が幅0.3mm、配線の平面の幅がW=0.2mmであった(スペーサのずれの許容範囲)
この条件は、
x<W/2+t/2
を満たす。ゆえにスペーサの角が配線に当たることなく、大気圧によるスペーサの破損を抑えることができる。
以上述べたように、本構成に基づいた条件を適用した表示パネルにおいては、スペーサ破損を生じることがないため、構造上の強度の低下を防止可能となり、真空度の維持が確保できた。ゆえに、高輝度高画質である画像表示可能となった。
(第4の構成:実施例)
表示パネル内部の構成としては以下の構成をとることもできる。
本構成も基本的には前述した図27の構成をとる。本構成を適用した画像表示装置の表示パネル内部の構成における表面伝導型電子放出素子から放出されている電子ビームは、前述の図23に示した軌道をとる。図40(a)にカソード基板とアノード基板の断面図を模式的に示し、図40(b)に表面伝導型電子放出素子から放出された電子ビームのアノード基板上における電子ビームの形状を模式的に示し、図40(c)に図40(b)のA−A’上での強度分布を示す。
各電子放出素子は行方向、列方向に間隔Px、Pyで行列状に配列し、電圧印加の方向は全て行方向に平行で、図40の例では、電極1102を高電位側にしてVf印加している。該電子放出素子(素子長:L)から放出した電子ビームのアノード基板上でのビーム径Sx、Syに関して、以下の関係式(I)(II)を満たす。
Sx=Kx×2d(Vf/Va)1/2 [ Kx:0.8≦Kx≦1.0 ] …(I)
Sy=L+2Ky×2d(Vf/Va)1/2 [ Ky:0.8≦Ky≦0.9] …(II)
このとき、該電子ビームの強度分布は、図40(b)、図40(c)に示す通り、電圧印加方向の高電位側に偏向して、ビーム形状は電子放出部から遠い部分の強度が強い楕円形状となる。このため、電子ビームの蛍光体への照射量を最大にし、また均一性を良くするためには、電子源とそれに対応する蛍光体の位置関係を、電子放出部とそれに対応する蛍光体の電子放出部から遠い方の端とをSxだけの距離をもって配置することが最良であることが分かった。これにより、放出電子の一部がブラックストライプ1010によりけられても、蛍光体を照射する電子量は最大にすることができ、結果、高輝度化が可能となり、さらに位置ずれに対する変動も小さくなり均一性も良くなる。
また、電子源とそれに対応する蛍光体の位置関係を上記のように配置することによって、柱状スペーサはブラックストライプ上に配置されることとなる。この構成によれば、柱状スペーサが発光の障害となることはないため、高画質な表示が可能となる。
(柱状スペーサの位置と形状)
図41を用いて、柱状スペーサの位置に関して説明する。図41(a)はアノード基板の上面図、図41(b)は画像形成装置内部の側面図、図41(c)はカソード基板の上面(真空側)図である。ここでは、スペーサ1020は柱状形状であり、電子放出素子から放出された1次電子ビームの非照射部位に設置されている。具体的には、電子放出部から放出される電子ビームは、電圧印加方向の高電位側に偏向して、真空中を徐々に広がりながらアノード基板に到達するため、柱状スペーサはアノード基板上で電子ビームが照射しない位置に配置されれば、1次電子ビームに直接さらされないことになる。これによって、円柱状スペーサが電子ビームから受ける影響を最小にすることができる。この構成によれば、スペーサが表示画像に影響を及すことはないので、高画質を実現できることになる。ここで、電子放出素子から放出された1次電子ビームの非照射部位とは、Y方向に隣り合う電子放出素子のほぼ中間領域である。特に、それぞれの素子から等距離の場所は、高精細化を実現する上で好ましい位置である。
また更に、Y方向に隣り合う電子放出素子と同一直線上にほぼ位置していると、X方向に隣り合う電子放出素子から放出された2つの電子ビームの間に柱状スペーサは配置することになる。このため、スペーサは4つの電子ビームの囲まれても、全ての電子ビームを妨げることなく存在できる。この構成によれば、電子線による帯電の影響も少なくでき、スペーサの歩留りが向上することになる。また、画素間での輝度の均一性が向上し、高画質な画像表示が可能となる。
電子放出部1105の直上のアノード基板上にはブラックストライプ1010があり、柱状のスペーサ1020はアノード基板とブラックストライプ1010上に設けられている。これにより、柱状スペーサ1020は、アノード基板とブラックストライプ1010を介して接続されるとともに、カソード基板とX方向配線を介して接続されることになり、しかも、表側からは見えないように、かつ、強固に固定できることになる。また、スペーサ表面に形成した場合の帯電防止用の高抵抗膜を流れる微小電流を逃がすことができる。結果、柱状のスペーサが画像に影響することがなくなり、高画質な画像を提供することができる。
Y方向の互いに隣り合う電子放出素子の間隔Pyが電子ビームのアノード基板上でのY方向ビーム径Syよりも大きい場合を図42に示す。図42(a)は、カソード基板の上面図であって、マルチ電子源が示されている。図42(b)は、図41(a)のマルチ電子源から放射された電子ビームがアノード基板上に当たって発光した際の可視光形状を示す模式図である。これらの図に示すように、垂直方向で電子ビームがピクセルの中に十分おさまり、垂直方向で電子ビームの届かない領域ができる場合には、(Py−Sy)の幅の電子ビームの届かない領域に柱状のスペーサ1020を配置させる。この場合、柱状のスペーサ1020のカソードとの接合面は、Y方向において隣り合う電子放出部と同一直線上に存在することが最も良い。
図43に電子の飛翔領域の他の例を示す。この図43は、Y方向の互いに隣り合う電子放出素子の間隔Pyが電子ビームのアノード基板上でのY方向ビーム径Sy以下の場合について、マルチ電子源から放射された電子ビームがアノード基板上に当たって発光した可視光形状を模式的に示したものである。この場合には、Y方向で隣り合う該電子放出素子からの電子ビームが蛍光体上で重なり合うため、スペーサ形状は柱状が望ましい。また、Y方向に隣り合う電子放出素子と同一直線上にほぼ位置している場合は、X方向に隣り合う電子放出素子から放出された電子ビームのちょうど間に柱状のスペーサを配置することで、電子ビームを妨げることがなくなり、その結果として高画質の画像を表示することができる。
(スペーサ被覆層:共通)
図40に示した本構成における柱状スペーサ近傍の構造において、スペーサ1020は絶縁性部材1201の表面に帯電防止を目的とした高抵抗膜1211を成膜し、かつフェースプレート1017の内側(メタルバック1019等)及び基板1101の表面(行方向配線1013または列方向配線1014)に電気的接合がとれるように低抵抗膜1221を成膜した部材からなる。このスペーサ1020は、上記目的を達成するのに必要な数だけ、かつ必要な間隔をおいて配置され、フェースプレートの内側および基板1101の表面に接合材1041により固定される。また、高抵抗膜1211は、絶縁性部材1201の表面のうち、少なくとも気密容器内の真空中に露出している面に成膜されており、柱状のスペーサ1020上の低抵抗膜1221および接合材1041を介して、フェースプレート1017の内側(メタルバック1019等)及び基板1101の表面(行方向配線1013または列方向配線1014)に電気的に接続される。ここで説明される態様においては、柱状のスペーサ1020は、行方向配線1013に電気的に接続されている。
柱状のスペーサ1020としては、基板1101上の行方向配線1013および列方向配線1014とフェースプレート1017内面のメタルバック1019との間に印加される高電圧に耐えるだけの絶縁性を有し、かつスペーサ1020の表面への帯電を防止する程度の導電性を有する必要がある。
柱状のスペーサ1020の絶縁性部材1201としては、例えば石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、ソーダライムガラス、アルミナ等のセラミックス部材等が挙げられる。スペーサ1020の断面形状は、多角形状、円形状等スペーサの長さ(カソード基板とアノード基板の間隔を支える方向の距離)に比べて十分小さい対角距離の断面形状であれば良い。ここで、断面形状の対角距離とスペーサ1020の長さの比(アスペクト比)は、1:10〜1:1000程度が良い。例えば、長が1mm、断面形状が100μm×50μmの長方形のスペーサとか、長さが2mmで断面が直径100μmの円形状のスペーサが適している。
スペーサ1020の断面形状としては、図44(a)に示すような正方形、長方形、菱形、六角形等の多角形状や、円形状等、十分な強度が確保でき、カソード基板とアノード基板と設置できる面積を有するものであればよい。
望ましくは、図44(b)に示すような断面形状が曲線で囲まれているような角を丸めた多角柱、図44(c)に示すような円や楕円等の円柱が、電界集中するような部分をもたないために適当である。特に、円柱は形状が対称であるために作製が容易で、また配置の際の接合方向や位置ずれに対しての許容範囲が広くなり、特に望ましい。
スペーサ1020を構成する高抵抗膜1211には、高電位側のフェースプレート1017(メタルバック1019等)に印加される加速電圧Vaを帯電防止膜である高抵抗膜1211の抵抗値Rsで除した電流が流れる。そこで、スペーサ1020の抵抗値Rsは、帯電防止および消費電力からその望ましい範囲に設定する必要がある。帯電防止の観点から表面抵抗[R/□]は10の12乗Ω以下であることが好ましい。十分な帯電防止効果を得るためには10の11乗Ω以下がさらに好ましい。表面抵抗の下限は、スペーサ形状とスペーサ間に印加される電圧により左右されることから、10の5乗Ω以上であることが好ましい。絶縁材料上に形成された帯電防止膜の厚みtは、10nm〜1μmの範囲が望ましい。特に、材料の表面エネルギーおよび基板との密着性や基板温度によっても異なるが、成膜時間、再現性、膜応力等の観点から、膜厚は50〜500nmであることが望ましい。表面抵抗[R/□]はρ/tであり、以上に述べた[R/□]とtの好ましい範囲から、帯電防止膜の比抵抗ρは0.1[Ωcm]〜10の8乗[Ωcm]が好ましい。さらに表面抵抗と膜厚のより好ましい範囲を実現するためには、ρは10の2乗Ωcm〜10の6乗Ωcmとするのが良い。
帯電防止特性を有する高抵抗膜1211の材料としては、例えば金属酸化物を用いることが出来る。金属酸化物の中でも、クロム、ニッケル、銅の酸化物が好ましい材料である。その理由はこれらの酸化物は二次電子放出効率が比較的小さく、冷陰極素子1012から放出された電子がスペーサ1020に当たった場合においても帯電しにくいためと考えられる。金属酸化物以外のものとして、炭素は二次電子放出効率が小さく、好ましい材料である。特に、非晶質カーボンは高抵抗であるため、スペーサ表面の抵抗を所望の値に制御しやすい。
柱状のスペーサ1020を構成する低抵抗膜1221は、高抵抗膜1211を高電位側のフェースプレート1017(メタルバック1019等)及び低電位側の基板1101(配線1013、1014等)と電気的に接続する為に設けられたものであり、以下に列挙する複数の機能を有することが出来る。
(1)高抵抗膜1211をフェースプレート1017及び基板1101と電気的に接続する。
既に記載したように、高抵抗膜1211はスペーサ1020表面での帯電を防止する目的で設けられたものであるが、高抵抗膜1211をフェースプレート1017(メタルバック1019等)及び基板1101(配線1013、1014等)と直接或いは接合材1041を介して接続した場合、接続部界面に大きな接触抵抗が発生し、スペーサ表面に発生した電荷を速やかに除去できなくなる可能性がある。これを避ける為に、フェースプレート1017、基板1101及び接合材1041と接触する柱状のスペーサ1020の当接面或いは側面部に低抵抗層21を設けた。
(2)高抵抗膜11の電位分布を均一化する。
陰極素子1012より放出された電子は、フェースプレート1017と基板1101の間に形成された電位分布に従って電子軌道を成す。柱状のスペーサ1020の近傍で電子軌道に乱れが生じないようにする為には、高抵抗膜1211の電位分布を全域にわたって制御する必要がある。高抵抗膜1211をフェースプレート1017(メタルバック1019等)及び基板1101(配線1013、1014等)と直接或いは接合材1041を介して接続した場合、接続部界面の接触抵抗の為に、接続状態のむらが発生し、高抵抗膜1211の電位分布が所望の値からずれてしまう可能性がある。これを避ける為に、柱状のスペーサ1020がフェースプレート1017及び基板1101と当接するスペーサ端部の全長域に低抵抗層を設け、この低抵抗層に所望の電位を印加することによって、高抵抗膜1211全体の電位を制御可能とした。
(3)放出電子の軌道を制御する。
冷陰極素子1012より放出された電子は、フェースプレート1017と基板1101の間に形成された電位分布に従って電子軌道を成す。スペーサ近傍の冷陰極素子から放出された電子に関しては、スペーサを設置することに伴う制約(配線、素子位置の変更等)が生じる場合がある。このような場合、歪みやむらの無い画像を形成する為には、放出された電子の軌道を制御してフェースプレート1017上の所望の位置に電子を照射する必要がある。フェースプレート1017及び基板1101と当接する面の側面部に低抵抗層を設けることにより、柱状のスペーサ1020近傍の電位分布に所望の特性を持たせ、放出された電子の軌道を制御することが出来る。
低抵抗膜1221は、高抵抗膜1211に比べ十分に低い抵抗値を有する材料を選択すればよく、Ni,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,Pd等の金属、あるいは合金等より適宜選択される。
接合材1041は、柱状のスペーサ1020が行方向配線1013およびメタルバック1019と電気的に接続するように、導電性をもたせる必要がある。すなわち、導電性接着材や金属粒子や導電性フィラーを添加したフリットガラスが好適である。
柱状のスペーサ1020の巨視的な配列方法を図45(a)〜図45(c)に示す。図44(a)の例では、スペーサが規則的に格子点状に配列されている。図44(b)の例では、Y方向に隣接するスペーサ列がX方向に半ピッチだけずれている。図45(c)の例では、スペーサは規則的に配列されているが所々に抜けがある。この他、スペーサをランダムに配列していても良い。重要な点は、スペーサによって大気圧が支持され、電子ビームを妨げずに輝点の均一性が保たれていれば良い。
(第5の構成)
表示パネルとしてスペーサを用いる場合、そのスペーサの配置については以下の各参考例の構成をとることができる。
(参考例1)
図46〜図50はこの第5の構成を適用した真空容器の参考例を説明する図である。図4646は、平板型ディスプレイの真空容器の概略図であり、図47は図46のA−A断面図であり、図48は図46のB−B断面図であり、図49は図47のC−C断面図であり、図50はスペーサの斜視図である。
各図46〜図50において、531は前面基板(厚さT1=2.8mm)であり、532は前面基板531に対向した位置に配置された背面基板(厚さT2=2.8mm)であり、533は2枚の基板の間に配置され、気密に接着された枠部である。2枚の基板間距離Dは2mmである。枠部533の内側の大きさは、x方向長さW1=112mm、y方向長さW2=52mmであり、枠部533と前面基板531および背面基板532とはフリットガラス(不図示)により気密に接着されている。534は2枚の基板の間に配置され、断面円形状の円柱スペーサ(半径R=0.1mm、高さH=2mm)であり、間隔P1=P2=12mmにて正方格子点状に配置されており、その本数は50本である。
前面基板531、背面基板532、枠部533および円柱スペーサ534の材質は青板ガラスである。これらの構成部材によって真空容器536が構成されている。
背面基板532上には、電子を放出する素子である表面伝導型の電子放出素子539が搭載されており、前面基板532には、電子を照射することで発光し、画像を表示する蛍光体538が設けられている。537は画像表示領域(120mm×67mm)であって、この領域に蛍光体538の発光による画像が表示される。
図49において、Aは図47のC−C断面図における枠部533の内側の面積であり、A=W1×W2であるから、5824mm2である。Sは50本分の円柱スペーサ534の断面積の和であるスペーサ総断面積であり、S=50×π×R2であるから、S=1.57mm2である。ここで、支持効率ηは比S/Aであり、0.027%である。
上記のS/Aは0.018%〜7.8%の範囲が好ましい。本参考例のS/Aは0.027%であるので、好ましい範囲に入る。
次に、真空容器536を用いた平板型画像表示装置の作製手順を説明する。
まず、電子放出素子539などが搭載された背面基板532を、電子放出部533を上側に向けてホットプレート上にセットし、円柱スペーサ534を配置する位置にフリットガラスをディスペンサを用いて塗布する。そして、専用治具にて円柱スペーサ534をフリットガラス上に配置し、加熱することでスペーサ534を背面基板532に接着する。
続いて、背面基板532の上に、あらかじめz方向の上下にフリットガラスを塗った枠部533をセットし、さらに、蛍光体538などが設けられた前面基板531を、蛍光体538が電子放出素子539と対向するように位置合わせして固定する。さらにその上に、ホットプレートをのせ、荷重をかけながらフリットガラスの接着温度まで加熱し、その後冷却することで気密な真空容器を製造する。
なお、本参考例では不図示であるが、背面基板532または前面基板531には排気管を接着する。その後、排気管を利用して外部の真空ポンプによって内部の空気を排除して、10-6torr程度の真空とする。そして、電子放出素子539と外部駆動基板等を接続して通電処理を行い、電子を放出する機能を与える。さらに、電子放出素子539に駆動電圧を印加して電子を放出させるとともに、蛍光体538と電子放出素子539の間に3kV〜15kVの高電圧を印加して放出電子を加速して蛍光体538へ照射し、発光させる。その光は、前面基板531を透過する。外部からこの前面基板531を見ると、画像表示領域537に従来のものより高画質な画像が表示され、目標の達成を確認した。
(参考例2)
図51および図52は、本第5の構成を適用する真空容器の他の参考例を説明する図である。図51は平板型ディスプレイの真空容器を横方向から見た断面図であり、上述の第5の構成の第1の参考例の図49に相当する。図52はスペーサの斜視図である。
図51に示す真空容器536は、円柱スペーサ534に代えて板スペーサ535が設けられた以外は図49に示した構成とほぼ同様の構成のものである。背面基板(厚さT2=2.8mm)532は、前面基板531(厚さT1=2.8mm)に対向して基板間隔D=2mmの位置に配置されている。両基板の間には、気密に接着された枠部533が配置されている。枠部533の内寸は、x方向がW1=820mm、y方向がW2=500mmである。枠部533と前面基板531および背面基板532とはフリットガラス(不図示)により気密に接着されている。板スペーサ535は、断面長方形状である長手スペーサの一つであって、x方向長さL=40mm、y方向長さT=0.2mm、高さH=1.8mmであり、2枚の基板の間に配置されている。この板スペーサ535の配列は、x方向に間隔0.1mm以下(ほぼ連続)で、間隔y方向に間隔P3=27.072mmで、均一に連続配置されており、その本数は288本である。なお、図51中、板スペーサ535の本数は省略されている。これらの構成部材によって真空容器536が構成されている。前面基板531、背面基板532、枠部533および板スペーサ535の材質は青板ガラスである。
背面基板532上には、電子を放出する素子である表面伝導型の電子放出素子539が設けられており、前面基板532には、電子を照射することで発光し、画像を表示する蛍光体538が設けられている。画像表示領域537の大きさは720.792mm×406.08mmであり、この領域において蛍光体538が発光することにより画像が表示される。
図51中、Aは前述の図47に相当するC−C断面図における枠部533の内側の面積であり、A=W1×W2=4.10×105mm2である。Sは288本(=n)分の板スペーサ535のスペーサ総断面積で、S=n×T×L=2.30×103mm2である。ここで、支持効率ηは0.56%であり、望ましい構成の真空容器である。
次に、この真空容器536を用いて平板型画像表示装置を製造した。
まず、電子放出素子539などが搭載された背面基板532を、電子放出部533を上側に向けてホットプレート上にセットし、板スペーサ535を配置する位置にフリットガラスをディスペンサを用いて塗布する。そして、専用治具にて板スペーサ535をフリットガラス上に配置し、加熱することで板スペーサ535を背面基板532に接着する。
次に、背面基板532の上に、あらかじめz方向の上下にフリットガラスを塗った枠部533をセットし、さらに、蛍光体538などが設けられた前面基板531を、蛍光体538が電子放出素子539と対向するように位置合わせして固定する。さらにその上にホットプレートをのせ、荷重をかけながらフリットガラスの接着温度まで加熱し、その後、冷却することで気密な真空容器を製造する。
なお、本例では不図示であるが、背面基板532または前面基板531には排気管を接着する。この排気管を利用して外部の真空ポンプによって真空容器内部の空気を排除して、10-6torr程度の真空とする。そして、電子放出素子539と外部駆動基板等を接続して通電処理を行い、電子を放出する機能を与える。さらに、電子放出素子539に駆動電圧を印加して電子を放出させるとともに、蛍光体538と電子放出素子539間に3kV〜15kVの高電圧を印加することによりその放出電子を加速して蛍光体108へ照射し、発光させる。その光は、前面基板531を透過する。外部から前面基板531を見ると、画像表示領域537に、従来より高画質な画像が表示され、目標の達成を確認した。
なお、板スペーサ535の配置は千鳥配置とすることもできる。この場合、スペーサの本数は256本が必要であり、スペーサの総断面積Sは256本分の板スペーサ535の断面積の和で、S=2.05×103mm2である。この場合の支持効率ηは0.50%であり、望ましい構成の真空容器である。
また、真空容器は図53及び図54に示すような構成とすることができる。図53において、背面基板532(厚さT2=2.8mm)は、前面基板531(厚さT1=2.8mm)に対向して基板間隔2mmの位置に配置されている。両基板間には、気密に接着された枠部533が設けられている。枠部533の内寸は、x方向方向がW1=820mm、y方向がW2=500mmである。枠部533と前面基板531および背面基板532とはフリットガラス(不図示)により気密に接着されている。2枚の基板の間には、さらに断面長方形状である板スペーサ535(x方向長さ40mm、y方向長さ0.2mm、z方向長さ=1.8mm)が設けられている。この板スペーサ535は、x方向に間隔0.1mm以下(ほぼ連続)で、y方向に間隔P3=27.072mmで均一に連続配置されており、その本数は288本である。なお、図53において、板スペーサ535の本数は省略されている。前面基板531、背面基板532、枠部533および板ペーサ535の材質は青板ガラスである。
図54に示すものは、図53の構成において板ペーサ535の配置を千鳥配置としたものである。この場合、x方向間隔は2.55mm、y方向間隔は27.072mmであり、スペーサの本数は256本である。
図53及び図54のいずれの構成においても、枠部533の角部は面取りした湾曲状とされている。その曲率は、例えば内径10mm±1.0mm、外径18mm±1.0mmである。このような径での湾曲状の角部を有する枠部533は、対角10インチから30インチなどの大画面のものにまで適用可能である。
(第6の構成)
枠部材の構成としては、種々の構成を採ることができる。ここでは、枠部材の特徴について説明する。
図55にその一例を示す。枠部533は、前面基板531及び背面基板532と実質的に同様な熱膨張率をもつ材料で形成され、これら前面基板531、背面基板532及び枠部533で基本的な容器が構成される。枠部533の隅部の形状は、容器内側、外側の両方とも円弧形状であることがもっとも好ましいが、内側もしくは外側のみ円弧形状であっても良く特に限定されるものではない。また、円弧形状の曲率は内、外側とも限定されるものではないが、特に内、外同心円で曲率半径は1〜50mmが強度的に好ましい。また、枠部533は、くり貫き加工、研削加工、加熱プレス加工、棒材からの折り曲げ加工、打ち抜き加工などの各種形成方法により形成することができる。
この構成において、有効表示エリアを対角30インチとする縦、横比3:4のカラー画像形成装置を作成できた。
図56に枠部材の他の例を示す。この例では、枠部533の隅部の形状が、容器内側のみ円弧形状になっている。この枠部533は、青板ガラス板材から研削加工にて厚さ3.6mm、幅7mm、隅部内側曲率半径2±0.5mmとすることで形成することができた。更に、背面基板532との封着面にディスペンサによって低融点ガラスペーストを塗布し、乾燥後、380℃で10分間前処理(仮焼成)することで低融点ガラス層を形成した。低融点ガラスは前面基板531同様、日本電気硝子社製LS-3081をペーストとして用いた。
上述の枠部材を適用する画像表示パネルの一例を図57に示す。この例では、リアプレート542に、複数の表面伝導型の電子放出素子545がマトリクス状に配列された電子源が形成されているとともに、それら電子放出素子545からの電子の放出を制御するための列方向配線、行方向配線が形成されている。ガラス基板の内面に蛍光膜549と加速電極であるメタルバック548が形成されたフェースプレート543が、絶縁性材料からなる支持枠543を介してリアプレート542の電子源と対向配置されており、電子源とメタルバック548との間には、不図示の電源により高電圧が印加されるようになっている。画像表示パネル外部に延びるX方向端子Dx1〜Dxm、Y方向端子Dy1〜Dynは、それぞれ列方向配線、行方向配線と接続されており、これらの配線により電子放出素子545からの電子の放出を画像情報に応じて制御してフェースプレート541上に画像が表示される。これらフェースプレート541、リアプレート542および支持枠543は互いにフリットガラス等で封着され、これにより外囲器が構成されている。フェースプレート541とリアプレート542の間にはスペーサ544が所定の間隔で設けられている。枠部543の隅部の形状は、容器内側、外側の両方とも円弧形状である。
上記の表示パネルの構成を適用して有効表示エリアを対角10インチとする縦、横比3:4のカラー画像表示装置を作成することができる。この場合の枠部は、青板ガラス板材からくり貫き加工にて厚さ1.6mm、幅13mm、隅部内側曲率半径10±1.0mm、隅部外側曲率半径18±1.0mmのものとして作製できる。尚、隅部の円弧形状は内、外とも同一中心を持つものとしている。更にリアプレートとの封着面にディスペンサによって低融点ガラスペーストを塗布し、乾燥後、380℃で10分間前処理(仮焼成)することで低融点ガラス層を形成した。低融点ガラスはフェースプレート同様、日本電気硝子社製LS-3081をペーストとして用いた。
本第6の構成によれば、フェースプレートとリアプレートとの間にあってこれらプレートの間隔をその外周部において支持する枠部材の隅部の形状を少なくとも容器内側もしくは外側において円弧形状にする事により、枠部材を一体型で成形することが容易になり、分割枠部材構成で見られていた隅部でのスローリークの発生や封着後の容器の破損(剥がれ)を低減する事ができ、歩留まりの良い信頼性の高い画像形成装置が得られる。さらに枠部材自体の強度が向上することにより取り扱いも安易になり、装置等の簡略化により生産性を向上させる事ができる。
(第7の構成)
フェースプレート、支持枠、リアプレートの接合部の構成としては以下の各参考例の構成をとることができる。
(参考例1)
本参考例は、画像表示装置の大画面化における課題に対して、目標を達成した例である。図58および図59は、その構成の一例を示す図である。図58は気密容器の概略断面図であり、図59は気密容器の分解斜視図である。
図58および図59において、551は前面基板(厚さ2.8mm)であり、552は前面基板551に対向した位置に配置された背面基板(厚さ2.8mm)であり、553はフリットガラス555によって前面基板551と背面基板552と気密に接着された外枠である。外枠553の幅Wは3mm、厚さTは1mmであり、縦横比Aは3である。また、フリットガラス555の厚みは0.2mmである。556は前面基板551と背面基板552と外枠553によって構成された気密容器であり、550は気密空間である。気密容器556の大きさは、x方向900mm、y方向580mm、z方向7mmである。
554は気密容器556の内部を真空にした時に外部から印加される大気圧に対して、気密容器の変形を抑制するためのスペーサ554である。スペーサ554の大きさは、x方向長さ0.2mm、y方向長さ40mm、z方向長さ1.2mmであり、フリットガラス557(厚さ0.2mm)にて片側固定されている。図58および図59では、スペーサは3本しか記載されていないが、実際は250本である。また、前面基板551と背面基板552と外枠553とスペーサ554の材質は青板ガラスである。
559は背面基板552上に搭載された表面伝導型電子放出素子であり、558は前面基板上に搭載され、表面伝導型電子放出素子559で発生した電子を照射することで発光する蛍光体である。表面伝導型電子放出素子559についての詳しい技術は特開平7−235255号公報等で開示されている。
次に、この気密容器の製造方法を説明する。
まず、前面基板551に蛍光体558等を形成する。次いで、背面基板552上に表面伝導型電子放出素子559などを設け、その後、背面基板552の上にフリットガラス555と外枠553を積層配置して、さらにスペーサ554とフリットガラス557を治具にて位置決めして配置し、外枠553とスペーサ554に荷重を加えながらホットプレートにてフリットガラス555の接着温度まで加熱し、接着させ、冷却する。続いて、外枠553の上に、フリットガラス555と前面基板551をのせ、治具等で適切な位置で固定した後、ホットプレートでフリットガラス555の接着温度まで加熱し、フリットガラス555に荷重を加えながら、気密に接合する。そして、降温してホットプレートから取り出し、気密空間550を具備する気密容器556を完成した。
次に、気密容器556を用いた画像表示装置の作製方法について説明する。
まず、排気管(不図示)を介して気密空間550の空気を排出して真空にする。その後、表面伝導型電子放出素子559と外部の駆動回路(不図示)等を接続し、表面伝導型電子放出素子559に通電することで電子放出部としての性能を与える。さらに、外部の駆動回路より画像を表示するべく通電することで、表面伝導型電子放出素子559より電子を放出させて、その放出電子を蛍光体558に照射する。結果、蛍光体558が発光することで画像表示に成功し、画像表示装置の製造を完了した。
次に、能力最大である前面発光の状態で駆動を行い、前面基板551および背面基板552の温度がそれぞれ上昇しても、外枠553およびフリットガラス555においてスローリークは発生せず、安定した気密容器と画像表示装置を得ることができた。その後、排気管(不図示)を切断除去した。
続いて、図58に示す厚さTを、1mmを対象にして上述した第一の条件で、ある外枠553の幅W=3mmを中心として、幅W=1,2,5,30,40mmの範囲で外枠のFEM解析を行った。この解析では、引き剥がし応力σがスローリークにつながるクラックが発生しないと考えられる12MPa以下であることを判定基準とした。さらに幅W=2,5,30,40mmの外枠553を用いて気密容器を作製して画像表示装置を作製した。そして、能力最大の駆動を行い、ヘリウムリークディテクタを用いてスローリークチェックを行い、スローリークがないことを確認した。
また、外枠の幅Wが大きくなると、それに伴って、気密容器を製造する際にフリットガラス555を用いて外枠と前面基板および背面基板を加熱接合するために必要な荷重が大きくなり、製造装置の消耗等が激しくなり、製造コストが高くなってしまう。従って、実用的には、幅Wは30mm以下であることが適当である。
以上の結果を表1に示す。
本参考例では、大画面を有する気密容器およびそれを用いた画像表示装置において、外枠553の縦横比Aが、枠幅Wが2≦W≦30であり、2≦A≦30であれば、実用的な範囲で、スローリークが発生しにくいことを検討および製造を行うことで示した。
また、上記W/Tの比は、1.5〜30の範囲が好ましい。
また、本参考例ではスペーサ554として長さ40mm、厚さ0.2mmの形状を用いたが、形状および大きさをこれに限定するものではない。例えば、長さが200mm、厚さ0.1mmでもよく、また、半径が0.1mm程度の円柱形状でもよい。
なお、30インチ角の大画面に適用する場合は、例えばW=13mm、T=1.
3mm、フリット厚み0.3mm、A=10mm、スペーサZ方向1.8mm、容量大きさ7.5mmとすることができる。
(参考例2)
本参考例では、上述の第7の構成の第1の参考例と同じく、画像表示装置の大画面化における課題に対して、目標を達成した例である。本参考例は、外枠553とスペーサ554のサイズが異なるだけで、その他の構成部材のサイズは第1の参考例と同じである。
本参考例では、外枠553の幅Wは12mmであり、厚さTは3mmであり、外枠の縦横比Aは4である。それにともない、スペーサ554のz方向の長さは3.2mmである。フリットガラス555の厚みは0.2mmである。前面基板551、背面基板552、外枠553およびスペーサ554の材質は、高歪点ガラスである。
これらの部材を用いて、上述の第7の構成の第1の参考例と同じ方法で気密容器を作製して画像表示装置を作製し、最大能力における駆動においてスローリークがないことを確認した。
さらに、外枠の幅W=12に対して、厚さTを、T=3mmを中心としてT=2,4mmと振って気密容器を作製して画像表示装置を作製し、上述の第7の構成の第1の参考例と同様の検討、確認を行った。その結果を表2に示す。なお、厚さTを変化させるにあたり、スペーサ554のz方向の長さも、それぞれ、2.2mm,4.2mmと変更した。
本参考例では、大画面を有する気密容器およびそれを用いた画像表示装置において、外枠553の外枠の幅WがW=12であり、縦横比Aが、3≦A≦6であれば、実用的な範囲で、スローリークが発生しにくいことを検討および製造を行うことで示した。
なお、例えば、30インチの表示部の場合は、A=10、W=13、T=1.3、また10インチの表示部の場合は、A=8.6、W=12、T=1.4とすることができる。
(第8の構成)
フェースプレート、枠部材、リアプレートの接合部周辺については以下のような構成をとることができる。本構成は、フェースプレートの画像形成部材(蛍光体)領域の周辺から、枠部材との接合面にかけて第1の導電性膜を有し、枠部材上のフェースプレートとの接合面から、枠部材上のリアプレートとの接合面にかけて第2の導電性膜を有するものである。また、本構成ではリアプレート側の電子源基板中の複数の電子放出素子と配線の周辺に第3の導電性膜を有してもよい。更に、第1の導電性膜と第2の導電性膜との接合部に、第1の導電性膜と第2の導電性膜とを電気的に接合する導電性材料が形成されていてもよく、フェースプレートと枠部材との間が、導電性のフリットまたは接着剤により接合されてもよい。
図60に本第8の構成の一例を示す。この例では、フェースプレート(前面基板)567上の画像形成部材566の周辺から枠部569との接合部にかけて、第1の導電性膜570が形成されている。枠部569上には、前面基板567との接合部からリアプレート(背面基板)564との接合部にかけて第2の導電膜571が形成されている。また、第1の導電膜570と第2の導電膜571は接合部分で電気的に接続しており、電気的接続を確保するための導電性材料572を形成しても良い。また、導電性材料572を用いずに、接合材574にAuやAg等の導電性のフィラーを混合させた導電性フリットガラスを用いて、電気的接続を確保することもできる。
第2の導電膜571の背面基板564との接合部分は、電子源562を駆動する時の電位と近い電位になるように維持するのが好ましく、例えば図60に示すように、枠部569の背面基板564との接合端面に導電膜と接触するように電極573を形成してもよい。この場合、電極573を例えばグランド電位に接続する。
第1の導電膜570は、表面抵抗Rs(シート抵抗)が1011Ω/□以下となるように形成する。なおシート抵抗Rsは、厚さがt、幅がwで長さがlの薄膜の長さ方向に測定した抵抗値RをR=Rs(l/w)とおいたときに現れる値で、抵抗率をρとすれば、Rs=ρ/tである。シート抵抗Rsを上記範囲に設定する理由は、先述したイオンなどによる帯電を除去するためにはRsが1011Ω/□以下であることが好ましいからである。第2の導電膜571のシート抵抗は、108Ω/□〜1011Ω/□とするのが好ましい。これも、イオンなどによる帯電を除去するためにはRsが1011Ω/□以下であることが好ましいからであり、また、画像形成部材566に高電圧が印加された時に第2の導電膜571を電流が流れることにより消費される電力を抑えるためにはRsが108Ω/□以上であることが好ましいからである。
枠部569の周囲の構造パラメータを考慮し、第1の導電膜570および第2の導電膜571のシート抵抗を上記範囲内で適宜設定することで、枠部周囲の電界の乱れを制御することも可能である。ここで、画像形成部材566に印加する高電圧の値をVaとし、画像形成部材566の端部から枠部との接合部との距離をLとし、枠部の高さをH、第1の導電膜と第2の導電膜のシート抵抗をそれぞれRs1,Rs2とする。例えば、Va/2となる電位が前面基板と枠部との接合部位に来るようにするためには、Rs1/Rs2=H/Lとすれば良い。また、Rs1/Rs2が極力小さくなるように設定すれば、図60に示すように、画像形成部材566と電子源562との間の平衡電界を枠部近傍まで継続させることができる。
また、図60に示した様な、前面基板と背面基板に対し、略平行な等電位面を形成すると、見かけ上、放出された電子の軌道に影響を与えずに枠部と画像形成部との距離を詰めることができる。この結果、表示装置全体に占める画像表示部の割合を大きくとることができ、より好ましい。この様な、等電位面を形成するには、前述した様に、Rs1/Rs2が極力小さくなる様に設定することで実現できる。
さらに、前面基板と背面基板との間に、表面のシート抵抗が制御されたスペーサを配置した場合には、表面のシート抵抗がスペーサと同様のシート抵抗を有する枠部とする。さらに、第一の導電膜をメタルバックを枠部まで延長する。この様にすることで、スペーサの前面基板側の端部(上端)および、枠部の前面基板側の端部(上端)にメタルバックに印可される電位が与えられる。
さらに、枠部のリアプレート側の端部(下端)およびスペーサの背面基板側の端部(下端)とを略同一の電位に設定することで、枠部表面とスペーサ表面の電位分布は略等しくなる。
以上の様に設定することで、駆動時に、前面基板と背面基板に対し、略平行な等電位面を形成することが可能となる。
なお、上述の導電膜の形成用材料としては、炭素材料や酸化錫、酸化クロム、ITOなどの金属酸化物や、導電性材料が酸化シリコン等に分散されたものなどを用いることができる。これらの材料の使用は、容易にかつ大面積にわたり均一な膜を形成できるため好適である。
導電膜570、571の成膜方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法、電子ビームによる重合法、プラズマ法、CVD法等が挙げられる。これらのいずれの方法によっても、安定した導電膜を容易に得られる。
次に、本構成の表示プレートの第2の形態を図61に示す。図61中、図60と同じ符号を付けた部材は同じ物を示す。図61で示した画像形成装置と、図60で示した画像形成装置との相違点は、ガラス等の絶縁性基体上に形成された電子源562と配線563の、少なくとも周囲の絶縁基板上に第3の導電性膜576を有している点にある。
この構成によれば、上記背面板内の電極もしくは導電性薄膜が形成されていない領域、例えば、各X方向配線の間、各Y方向配線の間、それぞれの電子放出素子間に存在する基板561の表面等に、第3の導電膜が形成される。この第3の導電膜は、電子放出素子の駆動電圧に近い電位となるように、電極電位やグランド電位などに電気的に接続されているため、これらの領域が帯電することにより発生する電子ビーム軌道の歪みや揺らぎを抑えることができる。第3の導電膜のシート抵抗は、帯電を防止する観点から1011Ω/□以下であることが好ましく、また、各配線や電極間の絶縁を確保し、リーク電流による無効な消費電力を抑える観点から108Ω/□以上であることが好ましい。第3の導電膜を構成する材料や成膜方法は、第1の導電膜や第2の導電膜と同じ材料や成膜方法を用いることができる。
第3の導電膜576は、各配線や電極間の絶縁を確保するような抵抗値に設定してあるため、電子源を形成した背面基板全体に成膜しても良く、また、予め基板561上に第3の導電膜を成膜し、その上に電子源562や配線563群を形成しても良い。
次に、本構成の、例えば図60または61に示す構成における接合部の作製について説明する。まず、画像表示部分となる前面基板567を作製した。前面基板567には、予めガラス基板565の片側全面にITOからなる透明電極を設けておいた。ITO膜は本構成における第1の導電膜としての機能を備えており、シート抵抗は2×103Ω/□とした。
画像形成部材であるところの蛍光膜566は、カラーを実現するためにストライプ形状の蛍光体とし、先にブラックストライプを形成し、その間隙部にスラリー法により各色蛍光体を塗布して蛍光膜566を作製した。ブラックストライプの材料として通常良く用いられている黒鉛を主成分とする材料を用いた。また、蛍光膜566の電子源に対向する面側にはメタルバックを設けた。メタルバックは、蛍光膜566の作製後、蛍光膜566の内面側表面の平滑化処理(通常、フィルミングと呼ばれる)を行い、その後Alを真空蒸着することで作製した。
次に、枠部569を作製した。枠部569はソーダライムガラスからなり、電子ビーム蒸着により酸化クロムからなる第2の導電膜を成膜した。シート抵抗は3×1010Ω/□とした。また、枠部569の背面基板と接合される接合面と第2の導電膜端部にかけて、Alの蒸着膜からなる電極を形成した。
以上のようにして多数の表面伝導型電子放出素子を作製した背面基板の3mm上方に、先ほど作製した前面基板567を枠部569を介して配置し、前面基板567と枠部569との接合部にはAu微粒子のフィラーを混合させた導電性フリットガラスを塗布し、枠部569と背面基板564との間には通常の(絶縁性の)フリットガラスを塗布して、大気中で410℃で10分間焼成することで封着した。
更に、第3の導電膜を用いた構成においては、まず、RFマグネトロンスパッタによって、上記背面基板の電子源が形成された側の前面に、第3の導電膜を形成する。使用したターゲットは炭素であり、膜厚は約2nmである。このときのシート抵抗値は5×108Ω/□程度であった。次に、蛍光膜566とメタルバックからなる画像形成部材を形成後、画像形成部材周辺のガラス基板上に、炭素系薄膜からなる第1の導電膜570を形成した。第1の導電膜570の形成は、粒径0.1μmの炭素分散材料を有機溶剤に分散した溶液をスプレーコートすることにより行った。炭素分散材料は黒鉛を主成分として、導伝率を下げるためにTiO2を添加されているものを用いた。また、塗布後に、上記炭素系薄膜を安定化するために200℃で熱処理を行った。このように作製された第1の導電膜の膜厚は約1μmであり、シート抵抗は2×107Ω/□であった。
更に、枠部569を作製した。枠部569はソーダライムガラスからなり、電子ビーム蒸着により酸化錫からなる第2の導伝膜を成膜した。シート抵抗は2×1010Ω/□とした。また、枠部569の背面基板と接合される接合面と第2の導電膜端部にかけて、Alの蒸着膜からなる電極を形成した。このような操作によって第1〜第3の導電膜を用いた構成を得ることができた。
(第9の構成)
スペーサ自体の構成として種々の構成が取り得るが、例えば図62に示した構成のものを用いることができる。なお、このようなスペーサは以下のような特徴を有する。
PDガラスは、真空容器の外囲器をなすフェースプレート、リアプレート及び枠部材などに使用しているソーダライムガラスと熱膨張率が近いので、表示パネル組立や真空プロセス中の熱工程で表示パネルの破壊や歪みを生じにくい。また、高電界(数kV/mm)以下での電荷移動がソーダライムガラスに比べ格段に少ないので、フェースプレート上のアノード電極及びリアプレート上の電子源間に印加される高電圧下においても、スペーサ沿面での放電やスペーサ部材の劣化が生じにくい。以上から、スペーサ部材及び表示パネルの信頼性が格段に向上する。
スペーサの、フェースプレート及びリアプレートに接する2面及び/または接続する側面部の一部への、電極の形成は以下の工程により行うことができる。
(a)スペーサ電極形成部に開口を有する成膜マスクをスペーサに位置合せ・密着させた後、スパッタリング成膜装置内にセットする。
(b)スパッタリング成膜装置内を排気し、所望の真空度に達した後、所望のターゲット材を所望のイオン化ガスによりスパッタし、スペーサ表面に所望の材料を成膜する。
(b−1)下引き層としてのTiを、チタンターゲットをアルゴンガス中でスパッタリングして成膜する。
(b−2)スペーサ電極としてのPtを、プラチナ−ターゲットをアルゴンガス中でスパッタリングして成膜する。
下引き層としてのチタンは、スペーサ基板をなすガラス(酸化物を含む)と酸化しにくいプラチナとの密着性を強化する機能を有する。低抵抗膜(スペーサ電極)としてのプラチナは、高抵抗膜と接するので、表示パネル作製工程(特に熱工程)や高電圧印加工程において、高抵抗膜及びその境界部での変質を起こしにくい材料であることとして選択したものである。
上記低抵抗膜(スペーサ電極)は、スペーサとフェースプレート上のアノード及びリアプレート上の配線との電気的導通をスペーサ全体にわたって保つ機能と、スペーサ近傍を飛翔する電子軌道に対し所望の制御を行う機能と、2次電子放出係数の小さい低抵抗部材によりスペーサ表面で2次電子放出を制御してスペーサ帯電を抑制する機能とを合せ持つ。
次に、スペーサの真空容器をなす表示パネル内に表出する面に、帯電防止機能を有する高抵抗膜を形成する。この高抵抗膜形成では、まず、スパッタリング成膜装置内を排気し、所望の真空度に達した後、所望のターゲット材を所望のイオン化ガスによりスパッタリングし、スペーサ表面に所望の材料を成膜する。例えば、下引き層として窒化アルミニウムをアルミニウムターゲットを窒素ガス中でスパッタリングして成膜(200〜500Å)する。次に、タングステンターゲットとゲルマニウムターゲットを窒素ガス中で同時スパッタリングすることにより、高抵抗膜としての窒化タングステン・ゲルマニム合金化合物(WGeN)を成膜(500〜3000Å)する。
この高抵抗膜は、リアプレート上の電子源から放出された放出電子あるいはフェースプレート上のアノードから反射した反射電子、あるいはその他のイオン化物質、あるいは紫外線やX線の衝突によりスペーサ表面で発生する2次電子の量を高抵抗膜の2次電子放出特性及び表面構造により制御し、帯電の発生を抑制する機能を有する。また、高抵抗膜の抵抗値を適度に制御することにより、発生した帯電荷を速やかに除去し、かつ高電界下においても電流による発熱を適度に抑制することができる。
(第10の構成)
スペーサを用いた表示パネルの真空容器内の真空度を維持する手段としてゲッタを容器内に配置する場合には、スペーサとスペーサの間に少なくとも1種のゲッタが配設された構成をとることができる。そのような構成の1例を図63に示す。図63(a)は画像形成装置の斜視図、図63(b)はゲッタとスペーサの配置を示す模式図、図63(c)は図63(b)のC−C’断面図である。
図63において、581は電子源で、複数の電子放出素子を基板上に配置し、適当な配線を施したものである。582はリアプレート、583は支持枠、584はフェースプレート、589、594はゲッタ、595は板状スペーサである。リアプレート582、支持枠583、フェースプレート584、板状スペーサ595は、それぞれの接合部においてフリットガラスなどを用いて互いに接着され、これにより外囲器が形成されている。フェースプレート584の内側には、メタルバックと、蛍光体587が配置されている。
上記のようにして形成されたフェースプレートと電子源基板に対し、ゲッタ589を設置する位置としては、スぺーサとスペーサの間でフェースプレート側ではメタルバック上あるいは黒色導電材上、電子源基板上ではX方向配線上があげられる。ゲッタ設置はいずれか一方に行ってもよいし、双方に行ってもよい。またゲッタ設置領域は、画像表示領域内全域に、まんべんなく分散して配置されることが望ましい。さらに、ゲッタ589の設置面積は、板状スペーサ595と電子源581および画像形成部材との設置面積より大きくなるようにすることが望ましい。
一方、ゲッタ594を配置する位置としては、画像形成装置内でかつ画像表示領域外でメタルバック、電子源に対して絶縁されていれば、フェースプレート584上またはリアプレート582上のいずれにでもよいし、また両プレート上に設置しても良い。
スペーサは、その占有面積および、電子光学的な観点から、配線上に配置することが好ましい。この様にすることで、電子放出素子の配置に影響を与えなくて済む。また、ゲッタ589を電子源基板側に配置する場合においても、スペーサと同様、配線上に配置することが好ましい。また、ゲッタを配線上に配置する場合には、例えば図63に示すように、スペーサが配置された領域を除いた領域に配置することが好ましい。その理由は、配線上に配置されたゲッタ上に、さらにスペーサを配置した場合には、ゲッターの一部がスペーサによって覆われることで、ゲッターの面積が低減してしまうからである。
また、スペーサが複数配置される場合には、ゲッターの一部がスペーサによって覆われない様に、複数のスペーサ間の配線上に配置することが好ましい。
上記配線が行方向配線と列方向配線のようなマトリクス配線の場合には、ゲッターの配置される配線は、行方向配線、列方向配線のどちらか一方でも良いし、また双方に配置しても良い。
ゲッタ589、594は、その材料としてTi、Zr、Cr、Al、V、Nb、Ta、W、Mo、Th、Ni、Fe、Mnのうちから選ばれる一種以上の金属、またはその合金からなるものを用いることができる。あるいは、そのようなゲッタは、Baを使用し、適当なマスクをのせて真空蒸着法またはスパッタリング法、ゲッタフラッシュ法によって製造可能である。以下にゲッタの配置に特徴を有する参考例を示す。
(参考例1)
図63(a)〜図63(c)の構成において、メタルマスクを用いて画像表示領域内の上配線1402上に、スパッタリング法によりZr-V-Fe合金よりなるゲッタ層1409を形成する。ゲッタ層589は、厚さを2μmとなるように調整し、幅を400μmとなるように調整して、板状スペーサの幅200μmより太く、かつ長く形成した。本参考例では、非蒸発型ゲッタを形成した。使用したスパッタリングターゲットの組成は、Zr;70%、V;25%、Fe;5%(重量比)である。
(参考例2)
更に、図64に本構成の他の例を示す。図64(a)は画像形成装置の斜視図、図64(b)はゲッタとスペーサの配置を示す模式図、図64(c)は図64(a)のC−C’断面図である。図64中、図63に示した構成と同じものには同じ符号を付してある。
この例では、フェースプレート584の全てのブラックマトリクス592上にスパッタリング法によりTi-Al合金よりなるゲッタ層589を形成した。Ti-Al合金のゲッタ層1409の厚さは5μmとし、幅は板状スペーサの幅150μmより太く、長く形成した。スパッタリングに用いたターゲットの組成は、Ti85%、Al15%の合金である。
(参考例3)
図65に本構成の他の例を示す。図65(a)は画像形成装置の斜視図、図65(b)はゲッタとスペーサの配置を示す模式図である。図65中、図63に示した構成と同じものには同じ符号を付してある。
ここでは、蒸発型ゲッタがワイヤー状のものであることと、ゲッタフラッシュを抵抗加熱で行った以外は、上述の本構成の第1の参考例と同様に画像形成装置を作成した。
(参考例4)
図66に本構成の他の例を示す。図66(a)は画像形成装置の斜視図、図66(b)はゲッタとスペーサの配置を示す模式図、図66(c)は図66(b)のC−C’断面図である。図66中、図63に示した構成と同じものには同じ符号を付してある。
本参考例では、長さ20mmの板状スペーサを50mmおきに千鳥状に画像表示領域の全ての上配線上に配置し、ゲッタ589を各スペーサ間に形成した以外は、上述した本構成の第1の参考例のものと同様に画像形成装置を作製した。
(参考例5)
図67に本構成の他の例を示す。図67(a)は画像形成装置の斜視図、図67(b)は画像形成装置の断面構造図である。
本参考例では、上述した本構成の第1および第2の参考例の工程を併用して上配線1402上とブラックマトリクス592上にゲッタ589を形成した以外は、第1の参考例のものと同様に画像形成装置を作製した。
以上説明した本第10の構成によれば、ゲッタ材の設置面積は板状スペーサと電子源基板および画像形成部材との設置面積より大きく配設されているので、広い面積で、しかも、最もガスを放出する部分の近傍にゲッタ材を配置することができる。その結果、外囲器内に発生したガスがゲッタ材に速やかに吸着され、外囲器内の真空度が良好に維持されて、電子放出素子からの電子放出量が安定するので、特性の劣化を抑制でき、長時間動作させた場合の輝度の低下、とりわけ、画像表示領域の外側付近での輝度の低下、および輝度むらを抑制することができる。
(第11の構成)
ゲッタの配置については更に以下の構成を利用することができる。
すなわち、
(1)第一に、外囲器内に、複数の電子放出素子が、基板上にマトリクス状に配置され、対向する電極と配線で結線された電子源基板と、上記基板に対向して設けられた蛍光膜を有する画像形成部材とを有する表示パネルにおいて、電子源基板の配線上に非蒸発ゲッタが形成され、かつ連続する該非蒸発ゲッタの任意の二点間の電気抵抗が、同二点間の該非蒸発ゲッタが形成される配線の電気抵抗より高いことを特徴とする構成、
(2)第二に、上述の電子源基板の結線方法が、対向する電極の一方を結線した走査側配線ともう一方を結線した信号側配線で形成された単純マトリクス配線において、上述の非蒸発ゲッタが形成される配線が、該電子源基板の走査側配線であることを特徴とする構成を挙げることができる。
この構成によれば、非蒸発型ゲッタ(NEG)を形成した配線部分とNEGを形成しなかった配線部分が混在する場合において、配線部分毎の電圧降下ばらつきを小さく抑えることができ、その結果、非蒸発ゲッタを形成することによる輝度ばらつきを小さく抑えることができるので、ガスを放出する部分の近傍の配線上にもゲッタ材を配置することができる。これにより、封着工程後に外囲器内に発生したガスはゲッタ材に速やかに吸着され、外囲器内の真空度が良好に維持されるので、電子放出素子からの電子放出量が安定する。単純マトリクス配線の電子源基板の場合、ゲッタ材は、走査側配線、信号側配線の両方の配線上に形成しても、片側の配線のみに形成しても構わないが、片側のみに形成する場合、走査側配線上に形成することが好ましい。その理由は、単純マトリクス駆動の場合、信号配線であるY方向配線より走査配線であるX方向配線の方が電流容量が大きいことが好ましいことから、必然的にX方向配線の幅が広くなり、結果的に、NEGの形成面積を大きくできるからである。
図68、図69は、2次元的に配置された電子源を、マトリクス配線で接続した構成を模式的に示したものである。図68は平面図、図69は図68のA−A’断面図である。1502は、X方向配線(走査側配線、上配線)、1503はY方向配線(信号側配線、下配線)で、それぞれ素子電極1505,1506を介して電子放出素子1508に接続されている。Y方向配線1503とX方向配線1502の交差部は、Y方向配線1503の上に絶縁層1504が形成され、その上にX方向配線1502が形成されている。X方向配線1502、Y方向配線1503、素子電極1505,1506、電子放出素子1508は、フォトリソプロセスと真空蒸着法を組み合わせたもの、メッキ法、印刷法、金属を溶液に溶かし液滴で付与し焼成する方法等で形成される。
この電子源基板の配線上に非蒸発型ゲッタ(NEG)1509,1510を形成する。X方向(走査側配線、上配線)、Y方向(信号側配線、下配線)の両方向とも非蒸発型ゲッタを形成してもよいし、片側のみに非蒸発型ゲッタを形成してもよい。片側の場合、好ましくはX方向配線上に形成することが望ましい。これは、単純マトリクス駆動の場合、信号配線であるY方向配線より走査配線であるX方向配線の方が電流容量が大きいことが好ましいことから、必然的にX方向配線の幅が広くなり、NEGの形成面積を大きくできるからである。また、画像表示領域内全域に、まんべんなく分散して配置されることが望ましい(この意味より、本ゲッタは面内ゲッタと称す)。
配線上に形成する非蒸発型ゲッタ(NEG)は、その材料としてTi、Zr、Cr、Al、V、Nb、Ta、W、Mo、Th、Ni、Fe、Mnのうちから選ばれる一種以上の金属、またはその合金からなるものが使われ、フォトリソプロセスによるパターニングと真空蒸着法やスパッタリング法によって製造可能である。また、非蒸発型ゲッタ(NEG)は、上記ゲッタ材のうちから選ばれる一種以上の金属、またはその合金からなるものや、それらに他の金属、非金属材料を混ぜ、スクリーン法やオフセット法の印刷法、メッキ法等を用いても製造可能である。
非蒸発ゲッタの連続する任意の二点間の電気抵抗は、非蒸発ゲッタの下部にある配線の同二点間の電気抵抗より高くする。これは非蒸発ゲッタを形成した配線部分と形成しなかった配線部分がある画像形成装置において、後述する素子形成工程のフォーミング工程や活性化工程、さらには駆動時に配線に電流を流す際に、その上部の主成分が金属である非蒸発ゲッタにも電流が流れてしまい、配線よりも非蒸発ゲッタの抵抗が低い場合には、非蒸発ゲッタに配線より大きい電流が流れて、電圧降下が大きく変わり、画像形成装置の輝度ばらつきを生じさせてしまうことがあるからである。非蒸発ゲッタの連続する任意の二点間の電気抵抗が、非蒸発ゲッタの下部にある配線の同二点間の電気抵抗より高い場合には、非蒸発ゲッタの形成された配線部分と形成されていない配線部分の電圧降下のばらつきが小さく、輝度ばらつきを少なくすることが出来る。
以下、本第11の構成における参考例を挙げる。
(参考例1)
図70は本第11の構成を適用する画像形成装置の構成を説明するための図で、図70(a)は斜視図、図70(b)は上面図である。図中、前述の図68の構成と同じ部分には同じ符号を付している。
621は電子源で、複数の電子放出素子を基板上に配置し、適当な配線を施したものである。622はリアプレート、623は支持枠、624はフェースプレートで、これらがそれぞれの接合部においてフリットガラスなどを用いて互いに接着され、これにより外囲器が形成されている。フェースプレート624の内側には、メタルバックと、蛍光体が配置されている。
本参考例の表示パネルは、図70(a)および図70(b)に模式的に示すように、X方向配線(上配線)、Y方向配線(下配線)上に一本おきに非蒸発型ゲッタ(NEG)が配置されている。また、本参考例の表示パネルは、基板上に、複数(100行×300列)の表面伝導型電子放出素子が、単純マトリクス配線された電子源を備えている。この電子源の一部平面図は前述の図68および図69に示したとおりである。
電子源基板1501には、Dox1〜oxnに対応して設けられたX方向配線(上配線、走査側配線とも呼ぶ)1502、Doy1〜oynに対応して設けられたY方向配線(下配線、信号側配線とも呼ぶ)1503、電子放出素子1508、素子電極1505,1506、層間絶縁層1504、非蒸発ゲッタ1509,1510が形成されている。各非蒸発ゲッタ1509,1510の厚さは、2μmとなるように調整した。この膜厚により、連続した非蒸発ゲッタの膜上の任意の二点間の非蒸発ゲッタの抵抗値は、その下部の同二点間の配線の抵抗より高くなる。
ここで下配線、上配線ともに抵抗率(体積抵抗率)は5×10-8Ωmであり、一方のゲッタの体積抵抗率は4.1×10-7Ωmである。ある点における下配線の断面積は1000μm2、そこでのゲッタ断面積は100μm2であり、1cmの間隔における抵抗値はそれぞれ0.5Ω、20.5Ωである。この構成により、下配線の抵抗値よりもゲッタの抵抗値を十分大きくすることができた。また、ある点での上配線の断面積は1500μm2、そこでのゲッタの断面積は100μm2であり、1cmの間隔における抵抗値はそれぞれ0.33Ω、20.5Ωである。この構成により、上配線の抵抗値よりもゲッタの抵抗値を十分に大きくすることができた。
なお、本参考例では非蒸発型ゲッタの形成方法にフォトリソプロセス、スパッタ成膜法を用いたが、これに限るものでなく、メタルマスクを用いたパターニング方法や、ディスペンサーや印刷で接着剤を描画し非蒸発型ゲッタの粉末を接着したもの、メッキ法等を用いても同様の効果が得られる。また、本参考例のようにNEGを配線一本おきに形成するのでなく、任意のパターンに形成する場合においても作成方法は同様であり、後述する同様の効果が期待できる。
(参考例2)
図71は本第11の構成を適用する画像形成装置の他の例を示す図で、図71(a)は斜視図、図71(b)は上面図である。図中、前述の図68および図70(a)、図70(b)の構成と同じ部分には同じ符号を付している。この例のものと、上述の本構成例の第1の参考例との相違点は、X方向配線(上配線)上にのみ非蒸発ゲッタを一本おきに形成したことである。
以上説明した第11の構成によれば、複数の電子放出素子が基板上にマトリクス状に配置され結線された電子源基板と、上記基板に対向して設けられた蛍光膜を有する画像形成装置において、画像形成装置の電子源基板の配線上に非蒸発ゲッタを形成することにより、広い面積で、しかも、最もガスを放出する部分の近傍にゲッタ材が配置されることになる。この場合は、配線上方にゲッタ材の蒸発源を設ける必要がないので、駆動時の電子軌道に影響を及ぼすことがなく、また、封着工程後に外囲器内に発生したガスはゲッタ材に速やかに吸着されて、外囲器内の真空度が良好に維持されるので、電子放出素子からの電子放出量が安定し、特性の劣化を抑制できる。よって、長時間動作させた場合の輝度の低下、とりわけ、画像表示領域の外側付近での輝度の低下、および輝度むらを抑制することができる。
また、非蒸発ゲッタを形成する際、非蒸発ゲッタの電気抵抗を配線の電気抵抗より高くする事により、非蒸発ゲッタの形成された配線部分と形成されていない配線部分がある場合でも、電圧降下のばらつきが小さく抑えられ、その結果、画像形成装置の輝度ばらつきが小さく抑えられる。
さらに、ゲッタの活性化工程において、蒸発型ゲッタを組み込む工程およびゲッタフラッシュ工程を必要とせず、主に熱工程でできるので歩留まり良く画像形成装置を製造することができる。
(第12の構成)
ゲッタの配置態様としては更に以下の構成を取り得る。すなわち、複数の電子放出素子を配列した電子源基板と、画像形成部材を有する発光表示基板と、が対向に配置されて外囲器が形成される表示パネルにおいて、該電子源基板に形成される配線上に、非蒸発型ゲッタ(NEG)が断続的に設置されることを特徴とする構成である。
この構成によれば、配線上などに設置されるNEGの長さが、1つの連続対としては短くなるため、膜に発生する応力が大きくなることはない。このためNEGの膜剥れが抑制され、画像表示領域内全域でNEGの均一分布の崩れるところがなくなり、その結果、画像表示装置内の圧力分布を均一に保つことができる。また、NEGだけでなくその下に配置された配線ごと剥れ、断線が生じる確率を減らすことができる。さらに、剥れたNEGや、完全には剥れていないが部分的にNEG膜が浮いてしまった箇所がきっかけとなり、放電やショートを発生させるといったことも抑制できる。これにより、画像表示装置の形成の歩留まりを高めることも可能となる。
また、断続的に設置されるNEGの長さが、電子放出素子の画素ピッチよりも短いこと、または電子放出素子の画素ピッチと同じである構成も取り得る。
表示パネルは2次元に電子放出素子を配置するため、電気エネルギーや信号を供給する配線は、マトリクス配線に代表されるように積層配線が多くの交差部分を持つこととなる。交差部分は、意図的に平坦化処理を施さなければ段差を持ち、例えば図72(a)に示すような、下配線21bと上配線(NEGを含む)21aの交差部分にある21部には、膜応力による断線が発生しやすくなる。また、逆に、図72(b)に示すような、下配線22bと上配線(NEGを含む)22aの交差部分にある22部のような接点でない部分での絶縁が損なわれる危険もある。特に、交差部に導電性の材料を厚みを増やして積み重ねる場合にその危険が大きい。NEGは金属であり、できるだけ厚みを稼ぐことが望ましいので、配線交差部上のNEGの設置は断線や、上下配線間のショートの危険を高める。
また、NEG膜作製プロセス上、配線のような細長いパターン上にNEGを連続的に設置する場合には、特にメタルマスクを使ったマスクデポを想定すると、NEG材の回り込みなども予想される(図73(a)参照)。図73(a)中、Aはマスクの浮き、Bはマスクの歪みである。
本構成では、NEGの長さを画素ピッチと同じ、もしくは短くすることとするため、上記配線の交差部を避けて設置することができ、断線やショートの危険は回避しやすくなる。またメタルマスクを使う場合についても、NEG膜の不連続部にマスクの補強パターンを付けたのと同じ効果を発揮することとなり、NEG材の回り込みが避けられる(図73(b)参照)。その結果、画像形成装置形成の歩留まりを向上することが可能となる。以下本構成の参考例を挙げる。
(参考例1)
図74は、本第12の構成を適用する画像形成装置の一例を模式的に示す斜視図である。641は電子源で、複数の電子放出素子を基板上に配置し、適当な配線を施したものである。642はリアプレート、643は支持枠、644はフェースプレートである。これらがそれぞれの接合部においてフリットガラスなどを用いて互いに接着され、外囲器を形成している。652はゲッタである。NEG膜649は、画像表示領域内の、X方向配線(上配線)上のほぼ全面に分割配置されている。フェースプレート644の内側には、メタルバックと、蛍光体が配置されている。
電子源641の一部平面図を図75に示し、図75のB−B’断面図を図76に示す。但し、図75、図76で、同じ記号を付したものは同じ物を示す。
81は電子源基板、82は図74のDox1〜Doxnに対応するX方向配線(上配線とも呼ぶ)、83は図74のDoy1〜Doynに対応するY方向配線(下配線とも呼ぶ)、88は電子放出部を含む導電性膜、89は電子放出部、85,86は素子電極、84は層間絶縁層、87は素子電極85と下配線83とを電気的に接続するのためのコンタクトホールである。
ここでは、X方向配線(上配線)に沿うように、各行に複数個の開口が形成されたメタルマスクを、位置合わせを行いながら電子源基板81上に被せて固定する。開口は、長さが6.7mm、幅が240μmで、0.89mm間隔でX方向配線の全長に渡って設けられている。このマスクを被せた電子源基板81をスパッタリング装置内に設置する。ターゲットにZr-V-Fe=70wt%:25wt%:5wt%の合金を用い、スパッタリング法により、厚さ1μmの合金層を形成し、NEG膜810とした。
(参考例2)
この例では、X方向配線(上配線)に沿うように、各行に複数個の開口が形成されたメタルマスクを、位置合わせを行いながら電子源基板81上に被せて固定する。開口は、長さが490μm、幅が240μmで、200μm間隔でX方向配線の全長に渡って設けられている。このマスクを被せた電子源基板81をスパッタリング装置内に設置する。ターゲットにZr-V-Fe=70wt%:25wt%:5wt%の合金を用い、スパッタリング法により、厚さ1μmの合金層を形成し、NEG膜1210とした(図77参照)。
(参考例3)
以下の工程により、図74に示す構成に基づく表示パネル用の電子源を作製した。
工程−A:
まず基板641を洗剤、純水および有機溶剤を用いて十分に洗浄した。ここにスパッタ法によりPtを0.1μm堆積し、フォトリソグラフィー技術を用いて加工し、基板641上に電極間隔L=2μm、長さW=300μmの素子電極を形成した。
工程−B:
次に、Agペーストインキを印刷、焼成して幅270μm、厚さ8μmのY方向配線1503を形成した。
工程−C:
続いて、ガラスペーストを印刷、焼成(焼成温度550℃)して、厚さ20μmのSiO2層間絶縁膜を形成した。
工程−D:
さらに Agペーストを印刷、焼成して幅340μm、厚さ12μmのX方向配線1502を形成した。
工程−E:
上述の本構成の第1の参考例の工程と共通。
工程−F:
電子源基板641にホトレジスト(AZ4620ヘキスト社製)をスピンナーで回転塗布後、X方向配線(上配線)、及びY方向配線(下配線)に沿うように、各行及び各列に複数個の開口が形成されたメタルマスクを、位置合わせしながら電子源基板641上に被せ、仮固定する。メタルマスクの開口は、長さが6.7mm、幅が240μmで、0.89mm間隔でX方向配線の全長に渡るよう設けられている。90℃で30分ベークした後、メタルマスクをつけたまま電子源基板641を露光、現像し、開口部のレジストを除去した。
工程−G:
このマスクを被せた電子源基板641をプラズマ溶射装置内に設置する。この装置の粉末供給部(ホッパー)にZr-V-Fe=70wt%:25wt%:5wt%の合金からなるゲッタ粉末ST707(サエス社製)を装填し、フローガスをArとしてパワー15kWのArプラズマ中に粉末を供給し、厚さ50μmのNEG層を形成した。
工程−H:
NEG膜を成膜した電子源基板641を、レジスト剥離液(マイクロポジットリムーバ)中に入れ、メタルマスクごと開口部以外のNEGをリフトオフで除去し、NEGパターニングを行った。
以上により、面内ゲッタを備えた電子源641を形成した。
(参考例4)
電子源基板にホトレジスト(AZ4620ヘキスト社製)をスピンナーで回転塗布後、X方向配線(上配線)に沿うように、各行に複数個の開口が形成されたメタルマスクを、位置合わせしながら電子源基板上に被せ、仮固定する。メタルマスクの開口は、X方向は、長さ490μm、幅240μm、間隔200μm、Y方向は、長さ250μm、幅100μm、間隔440μmである。90℃で30分ベークした後、メタルマスクをつけたまま電子源基板を露光、現像し、開口部のレジストを除去した。
以上説明した第12の構成によれば、いずれの場合も膜剥れや上下配線間ショートが殆どなく、画像形成領域内の輝度のばらつきが抑えられた。また放電などによる不良の発生も低減され、表示パネルの歩留まりが向上した。
(第13の構成)
ゲッタの配置態様の他の例について述べる。本構成は、非蒸発型ゲッターの断面形状がアーチ状であることを特徴とする。好ましくは非蒸発型ゲッターが、電子放出素子に電圧を印加するための走査側配線上あるいは信号側配線上に配置されることを特徴とするものであり、いずれの配線巾よりも短い範囲に配置されることを特徴とする。また、非蒸発型ゲッターが、走査側配線(上配線)と信号側配線(下配線)とを絶縁するために両者の間に介在する絶縁層よりもアノード側に位置することを特徴とするものであり、非蒸発型ゲッターが外囲器内でアノードよりも下部にあることを特徴とするものである。
本構成によれば、電子放出素子およびその近傍から放出されるガスと、電子が衝突する際に画像形成部材から放出されるガスを効率よく吸収できるため、局所的な圧力の上昇を防ぐことが出来る。加えて、配置する非蒸発型ゲッターの断面形状のために、電子ビームの軌道の物理的な障害となることがなく、また、非蒸発型ゲッターの帯電による電子ビームの軌道への影響も最小限にとどめることが出来る。さらに、非蒸発型ゲッターの配置に微妙な位置ずれがあった場合でも、電子ビームの軌道への影響を低減することが出来る。
また、ゲッタの断面形状をアーチ状とすることで、ゲッタ表面の突起部を低減できるので、ゲッタ表面への局所的な電界集中を緩和する作用をも有するので好ましい。
さらには、断面形状がアーチ状のゲッターに加え、ゲッターが配置された配線の断面形状をもアーチ状にすることが好ましい。
この様に、ゲッタおよび配線の断面形状をアーチ状とすることで、ゲッタおよび配線表面の突起部を低減できるので、ゲッタおよび配線表面への局所的な電界集中を緩和する作用が更に増すので好ましい。
また、この様に断面形状を制御する上で、用いるゲッターとしては、成形性の優れる非蒸発型ゲッタを用いることが好ましい。
また、ゲッターの幅は、配線の幅よりも狭くすることが好ましい。これは、配線を形成した後にゲッターを形成するため、ゲッターのアライメント精度を緩和することができるためである。
ここでは、電子源基板の電子放出素子を駆動するために電圧印加するための配線に、Zrを主成分とする合金から成る非蒸発型ゲッターを配置し、その断面形状をアーチ状にしたものを説明する。
以下、図78を用いてその構成を具体的に説明する。図78(a)は、本第13の構成が適用された画像形成装置の構成の一例を模式的に示す斜視図である。661は電子源基板(リアプレートともいう)で、複数の電子放出素子をガラス等の絶縁性基板上に配置し、後述する配線を施したものである。662はX方向配線(下配線)で、663はY方向配線(上配線)である。664は電子放出素子で、素子電極665、666との間に形成されている。667は上配線上に配置した非蒸発型ゲッターである。フェースプレート676の内側には、メタルバックと、蛍光体が配置されている。
電子源基板661について、図78(b)を用いて詳述する。図78(b)は図78(a)の電子源基板を模式的に記した平面図である。X方向配線662とY方向配線663の間に、両者を絶縁するための層間絶縁層6688が配置されていることが示されている。
図79(a)は図78(b)のA−A’面の断面図を示したものである。また、図79(b)は、電子放出素子の駆動時にフェースプレート676に加速電圧を印加した場合の電子ビームの軌道を、X方向配線662を相対的に陽極として駆動した場合を想定して示した模式図である。電子放出素子664の電子放出部669より放出した電子は、プラス信号電圧を印加するX方向配線に引き寄せられ、図79(b)のような曲線軌道を描くことが知られている。この時、非蒸発型ゲッター667の断面形状が矩形であれば、ゲッターのエッジで電子ビームの軌道が妨げられ、フェースプレート676に到達して蛍光膜674を発光するのに適当でない。また、非蒸発型ゲッター667の断面形状が矩形であれば、電子ビームの軌道とプラス電位である非蒸発型ゲッター667の距離がエッジ部分で接近し、電子ビームの軌道を電気的に曲げ、フェースプレート676に到達して蛍光膜674を発光するのに適当でない。さらに、複数の電子放出素子が配置された電子源基板661においては、すべての素子から放出される電子ビームの軌道が非蒸発型ゲッター667により障害を受けるのを避けなければならない。製造工程において、同時に非蒸発型ゲッター667を作製する場合、1ヶ所の非蒸発型ゲッター667の配置位置にずれが生じれば、すべての非蒸発型ゲッター667の配置がずれることになり、製造の精度を出すことが困難となる。従って、非蒸発型ゲッター667の断面形状がアーチ状であれば、矩形である場合に比べて、製造の歩留まりが上がることになる。
X方向配線およびY方向配線上には、非蒸発型ゲッターが配置される。その非蒸発型ゲッターの断面形状は図79(a)に記したようにエッジ部分が丸みを帯びたアーチ状である。非蒸発型ゲッターとしては、市販のZr系合金(例えば、HS-405パウダー(日本ゲッターズ製)、St-707(SAES製)など)が適用でき、製造時に断面がアーチ状になるよう作製する。
(参考例1)
本参考例の画像形成装置は、図78(a)に模式的に示された装置と同様の構成を有し、印刷法で形成したX方向配線(下配線)662、Y方向配線(上配線)663上に非蒸発型ゲッタ(NEG)が配置されている。
上配線および下配線の形状に開口を持つメタルマスクを準備し、十分な位置合わせをした後、スパッタリング法によりZr-V-Fe合金を成膜した。準備したマスクの開口部は、逆テーパー加工し、作製する非蒸発型ゲッターの断面形状がアーチ状になるようにした。なお、ゲッタ667の厚さは50μmとなるように調整した。以上により、非蒸発型ゲッタを備えた電子源661を形成した。使用したスパッタリングターゲットの組成は、Zr;70%、V;25%、Fe;5%(重量比)である。
本参考例では、幅280μmの配線上に幅240μmの非蒸発ゲッタを配置した。ここで、該ゲッタと最近接の電子放出素子の電子放出部のうちの一点と交差する接線を有するゲッタ表面の点Aにおいて、半径を2.4μm(ゲッタ幅の1%)である円とゲッタの交点B、Cを求め、B−A−Cがなす角である内角をはかったところ、174度であった。また、半径を12μm(ゲッタの幅の5%)として前述の内角をはかったところ、150度であった。本参考例では、前記点B、Cはゲッタの断面と交差する点であったが、ゲッタ層が薄く、点B、Cがゲッタと交差しない時には、ゲッタ端の接線と前記半径を有する円の交点とを点B、Cとして内角を求めればよい。
なお、本参考例では非蒸発型ゲッタの形成方法にメタルマスクを用いたプロセスで説明したが、これに限るものでなく、フォトリソグラフィーを用いたパターニング方法と斜方向から蒸着を組み合わせたものや、ディスペンサーや印刷で接着剤を描画し非蒸発型ゲッタの粉末を接着したもの、メッキ法等を用いて、断面形状をアーチ状に加工しても良い。
(参考例2)
図79(a)の構成について以下の手順でゲッタを作製した。
上配線の形状に開口を持つメタルマスクを準備し、十分な位置合わせをした後、スパッタリング法によりZr-V-Fe合金を成膜した。準備したマスクの開口部は逆テーパー加工し、作製する非蒸発型ゲッターの断面形状がアーチ状になるようにした。なお、ゲッタ層の厚さは2μmとした。使用したスパッタリングターゲットの組成は、Zr;70%、V;25%、Fe;5%(重量比)である。
(参考例3)
本参考例では、図67(a)に示した画像形成装置を作成した。尚、本参考例のゲッタの断面形状は、上述の本第13の構成の第2の参考例と同様アーチ状であり、その製造方法も第2の参考例と同様にして行った。また、本参考例の画像形成装置は、スペーサを有している。また、各電子放出素子を駆動するための配線は、上配線と下配線がマトリクス状に配置されたものである。そして、ゲッターおよびスペーサは、共に、上配線上に配置されている。また、その配線上に配置したゲッターと同様の製法および形状のゲッターを、フェースプレート側にも配置した。フェースプレート側のゲッタは、各色の蛍光体間混色などを防ぐための黒色部材上に配置した。一方、スペーサは、フェースプレートとも接触しており、スペーサの接触位置が、黒色部材上になる様に配置してある。尚、ゲッターおよびスペーサの配置位置は、フェースプレート上およびリアプレート上のどちらにおいても、その配置領域が重ならない様にした。
本参考例の様に、スペーサを配置することで、より大面積の画像形成装置が実現できる。スペーサが配置された領域を除いた領域にゲッタを配置した理由の一つは、配線上に配置されたゲッタ上に、さらにスペーサを配置した場合には、ゲッターの一部がスペーサによって覆われることで、ゲッターの面積が低減してしまうからである。
さらに、本構成のスペーサの形状は、図35に示したように、角がまるまった形状とした。これは、スペーサの角部での電界集中や、角部への応力集中などによる不慮の破損を防止するためである。
以上のような構造をした本参考例の画像形成装置を駆動し、画像を表示させたところ、高輝度で長期にわたり良好な画像が得られた。
(第14の構成)
図80(a)は、本第14の構成の特徴である配線構造を示す模式図で、図80(b)は図80(a)のA−A’断面図である。基板(リアプレート)1600上に、互いが交差するように下配線1601と上配線1603が形成されている。上配線1603は層間絶縁膜1602上に形成されており、下配線1601とは絶縁されている。
電子源基板に設ける行(横)方向配線(上配線1603)及び列(縦)方向配線(下配線1601)は、その交差部に絶縁層(層間絶縁膜1602)を介した積層構造を有する。縦方向配線(下配線1601)及び横方向配線(上配線1603)が良好な表面形状を有していないと、下配線に生じている凸部が層間絶縁膜を貫通して上配線とショートしたり、フェースプレートとリアプレート間の所望としない放電が発生するという問題が発生する恐れが生じる。そこで、上配線と下配線の表面形状を、Raで表わされる表面粗さで、0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.2μm以下とし、かつRzで表わされる表面粗さが5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下となるように形成するのが望ましい。
本発明者らの検討によると、下配線と上配線との交差部における層間絶縁不良(上下ショート)及びフェースプレートとリアプレート間の放電現象は、配線の表面において大きな突起があればその発生の可能性があることがわかった。しかし、数百万個所にも及ぶ交差部の全てにわたって突起の有無を検査することは実質的には不可能である。そこで、代わりに何らかの代表的なパラメータを用いた検査方法で代用することを目的としてさまざまな検討を行ったところ、電極が上記の表面粗さを満たしていることで、これらの問題の発生が有意に低減されることを発見した。なお、Raは工業製品の表面粗さを表わす中心線平均粗さであり、Rzは工業製品の表面粗さを表わす10点平均粗さを表わすパラメータである。
このような表面粗さを満たすには、導電性ペーストに用いられる導電性微粒子の粒子サイズはおよそ0.1μm〜2μm程度、更に望ましくは0.3μm〜1.0μm程度の粒子サイズで、なるべく球状の形状をしたものを使うことが望ましい。
表3にここで用いたペーストを示す。
配線の形成には、スクリーン印刷方法を用いた。スクリーン版には、SX300メッシュを使った。これは、乳剤の厚さが15μmの東京プロセスサービス制作のものである。作製したパターンの縦方向配線のピッチは230μm、110μm幅で720本、横方向配線のピッチは690μm、240μm幅で480本形成し、その後400〜520℃の焼成温度で焼成した。
層間絶縁層としては、ノリタケカンパニーリミテッド社製NP−7730ペーストを用い、3回印刷、焼成を繰り返した。配線間の交差部においては膜厚がおよそ16〜20μmであった。このようにして作製した配線構造では、縦方向配線と、横方向配線の交差部の数は34万5600個所である。絶縁層の信頼性、すなわち上下ショートのチェックには自作のマトリックスチェッカーを用いてすべての交差部における上下ショートの有無を約30分でスキャンしてチェックできる装置を用意した。表に示したとおり、Raが0.3μm以下、Rzが3μm以下の場合に上下ショートが非常に少なく、更にRaが0,2μm以下、Rzが2μm以下の場合上下ショートが全くなくなっており、配線の層間絶縁の信頼性が向上しているのがわかる。
一方、白金で素子電極がフォトリソグラフィー方法によって形成されたガラス基板を用意し、これに所定のペーストを使用して縦方向配線、層間絶縁層、横方向配線をこの順に形成した。このときに得られた縦方向配線及び横方向配線のRaは0.211、Rzは2.286であった。
このような配線の表面粗さを制御する構成によれば、電子放出素子を駆動するために配線の信頼性を高める、すなわち上下配線間でのショートをなくして製造歩留まりを向上させることができた。また、表示パネルの輝度を上げるために安定したアノード電圧(Va)を上げることができる。
(第15の構成)
電子源基板に設けられる電子放出素子としては、対向する1対の素子電極間を連絡する導電性薄膜に電子放出部を形成した構成のものが好適に利用され、この一対の素子電極がそれぞれの配線、例えばその一方が列方向配線と、他方が行方向配線と接続される。そのような電子源基板の構成として、全ての電子放出素子が行方向配線及び列方向配線により囲まれた構成をとることができ、この構成によって電子源基板における帯電量をより均一化することができる。
ここでは、行方向配線が複数本の列方向配線により囲まれ、かつ列方向配
線が複数本の行方向配線により挟まれる領域を交差領域と定義する。
各素子を列方向配線および行方向配線で囲む構成に加え、上記交差領域外に配置された行方向配線または列方向配線の少なくとも一方の配線幅を、上記交差領域内の行方向配線または列方向配線の幅よりも広くすることで、電子源基板の帯電量をより一層均一化することができる。
また、後述の図98,99などに示すように、上記交差領域外の行方向配線および列方向配線の双方の幅を上記交差領域内の行方向配線または列方向配線の幅よりも広くすることがさらに好ましい。
図81に示す様に、本構成の電子源は、表面伝導型電子放出素子を複数並べ、マトリクス状の配線で各々接続された構成(ここでは不特定の9つの電子源のみを図示。)とする電子源である。
本構成では、行配線X1および列配線Y1に接続する電子放出素子において、その外側の基板面露出部の帯電量が、内側となるX2,X3及びY2,Y3に接続する電子放出素子と同等となるよう冗長の行方向配線X0、列方向配線Y0および電極1612、1613を設け、すべての電子放出素子が行方向配線、及び、列方向配線で囲まれた構成としたことが特徴となっている。ここで、好ましくは冗長配線に接続した電極には電子放出部を有する導電性薄膜は設けない構成とする。これは、不必要な素子電流を浪費しないためである。更に好ましくは、冗長配線Y0は、隣接した電子放出素子から放出された電子の軌道が他の2素子と同じになるよう、配線Y1,Y2,Y3と同一の形状とすることで素子周囲の電位分布を同等となるようにする。同様に、冗長配線X0についても配線X1,X2,X3と同一形状とする。
以下、図面を参照しながら本構成の製造手順の一例を説明する。
図82(a)〜図82(f)は、本構成の製造工程図である。この製造工程では、不図示の基板上に対して電子源を3×3個、計9個を行列状にマトリクス配線した例を示す。図中、202,203は一対の素子電極、204は電子放出部形成用の膜、206は第一の配線層である列方向配線、207は第二の配線層である行方向配線、208は列方向配線206と行方向配線207との間に設けられた層間絶縁膜である。209は層間絶縁膜208に形成された窓で、第二の配線層207と電極202とを接続するためのものである。
先ず、予め洗浄された基板に、オフセット印刷法を用いて素子電極のパターンを印刷し、続いて焼成することにより、一対の素子電極202,203を形成する(図82(a))。本素子電極は、電子放出部薄膜と配線とのオーム接触を良好にするために設けられるものである。通常、電子放出部薄膜は、配線用の導体層と比べて著しく薄い膜であるために「ヌレ性」、「段差保持性」等の問題を回避するために設けているものである。素子電極の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法等の真空系を用いる方法や、触媒に金属成分及びガラス成分を混合した厚膜ペーストを印刷、焼成することにより形成する厚膜印刷法がある。ここで、電子放出部形成用の導電性薄膜を電極上に形成する場合、電極エッジのステップカバレッジを良くするために、電子放出部近傍の素子電極は膜厚が薄い方が望ましい。そこで、厚膜印刷法を用いる場合はその際、使用するペーストとして、有機金属化合物により構成されたMODペーストを使用することが望ましい。もちろん、これ以外の成膜方法を用いても差し支えなく、また構成材料として、電気伝導性のある材料であれば、特に限定されるものではない。
ここで、本構成の特徴である第一の配線層206と、下配線である第一の配線層206の取り出し部(列端子部)と、上配線である第二の配線層207の取り出し部(行端子部)とを同時に形成する(図82(b))。第一の配線層206の形成で、列方向配線は電子放出素子の電極203に接続形成されるもの以外に、端の素子で片側に配線が形成されていない領域(ここでは左端の素子列)に冗長配線Y0および冗長電極202’,203’を設ける。この冗長配線は1列だけに限るものではなく複数設けても構わない。
尚、配線層の形成方法には、素子電極部分とは異なり、膜厚が厚い方が電気抵抗を低減することができ有利である。特に、電子放出素子数が多く形成される画像形成装置においては、単層で比較的厚い膜が得られる、厚膜ペーストを用いた厚膜印刷法を用いるのが適当である。もちろん、電子放出素子の数、密度等により薄膜配線の適用も可能である。厚膜印刷法としてスクリーン印刷法を用いた場合、好ましくは上記冗長の列配線Y0の下に、上記素子電極で列配線Y0に接続する側の電極を、連結させて1列に連続した線状形状に形成することもできる。
次に、層間絶縁膜208を形成する(図82(c))。この層間絶縁膜208は、列方向配線と行方向配線の交差する部分に形成した。この層間絶縁膜208の構成材料としては、通常絶縁性を保てるものであれば良く、例えば、SiO2薄膜や金属成分を含まないPbOを主成分とした厚膜ペーストによる膜等である。
次に、本構成の特徴である第二の配線層を形成する(図82(d))。第二の配線層207の形成で、行方向配線は電子放出素子の電極203に接続形成されるもの以外に、端の素子で片側に配線が形成されていない領域(ここでは上端の素子列)に冗長配線X0および冗長電極を設ける。この冗長配線は1行だけに限るものではなく、複数設けても構わない。更に、後述するように行列状にマトリクス配線された表面伝導型電子源群を一行ずつ順次駆動する走査信号が印加される方法で電子源を駆動する場合、少なくとも上記冗長配線は隣接する配線X1以外の配線と接続する。
次に、各電極202,203間をつなぐ様に、導電性膜204を形成して(図82(e))、図82(f)に示すような電子源基板を得る。導電性膜は、有機金属錯体溶液をインクジェット法により付与し、焼成することで形成する。かかるインクジェット法による付与は、例えば特開平8−273521号公報、特開平8−277294号公報、特開平9−69334号公報などに開示されている。
以上の工程でフォーミング前の電子源基板が形成される(図177参照)。図177では、図82に示さなかった、行方向配線取り出し部205aおよび列方向配線取り出し部205bが示してある。この様に、電子源基板に形成される各部材を印刷法により形成することで、より低コストで形成することができる。
本構成の冗長配線X0は、上述のDox1〜Doxmのいずれか1つと接続し、冗長配線Y0は上述のDoy1〜Doynのいずれか1つと接続する場合もあるし、外部端子Dox0、Doy0として外部で電位規定する場合もある。
更に、図83に示すように、各電子放出素子を配線で区画される領域に配置し、更に、X方向配線の取り出し部をY方向配線と同時に印刷形成し、絶縁層を交差部に設けた後、X方向配線の1つおきの所定配線(図ではX0とX2)を結線する配線162’をX方向配線の印刷形成時に同時形成することもできる。この場合、配線162’と配線X1は、絶縁層161’により絶縁されている。
以上の様に、図81(a)に示した冗長電極102’、103’、或いは図83に示した、各配線を表示装置外部の駆動回路に接続するための取り出し部(引き出し電極)などの電位規定部材を、交差領域外の基板表面に配置することが基板表面の電位を規定する上で好ましい。
しかも、上記電位規定部材を各配線に接続すれば、電位規定部材専用の電源を用意しなくて済むのでより好ましい。
以下、本構成の参考例等について説明する。
(参考例1)
本構成の第1の参考例として、平面型の表面伝導型放出素子を多数単純マトリクス配置した図84のような電子源基板の構成を用いて、電子源を構成した。本参考例では、行方向配線(X配線)72の1ライン毎に120個の素子74が並び、また、列方向配線(Y配線)73の1ライン毎に80個の素子74が並んでいる電子源基板71を用い、画像形成装置を作製した。そのため、後述する「Dxm」のmは80、 「Dyn」のnは120である。図84中、75は素子電極を示す。
本参考例にかかる複数の電子放出素子74がマトリクス配線された基板の一部の平面図を、85図に示し、この図85のA−A'断面図を86図に示す(図中、電子放出部75は省略する)。また、本参考例にかかる電子源の製造工程を、図87(a)〜図87(g)に示す。但し、これらの図中で同じ符号を付したものは同じ部位を示す。各図において、141は層間絶縁層、142はコンタクトホール、52,53は素子電極、54は導電性薄膜である。以下に当該工程を説明する。
工程−a:
清浄化した青板ガラス上に、厚さ0.5μmのシリコン酸化膜をスパッタ法で形成した基板上に、真空蒸着法により、厚さ5nmのCr、厚さ600nmのAuを順次積層した後、フォトレジスト(AZ1370/ヘキスト社製)をスピンナーにより回転塗布する。ベークした後、フォトマスク像を露光、現像して、下配線72のレジストパターンを形成し、Au/Cr堆積膜をウェットエッチングして、所望の形状の下配線72を形成した(図87(a))。
ここで本構成の特徴となる冗長配線としてY0を設けておく。
工程−b:
次に、厚さ1.0μmのシリコン酸化膜からなる層間絶縁層141をRFスパッタ法により堆積した(図87(b))。
工程−c:
上記工程−bで堆積したシリコン酸化膜にコンタクトホール142を形成するためのフォトレジストパターンを作り、これをマスクとして層間絶縁層141をエッチングしてコンタクトホール142を形成した。エッチングには、CF4とH2ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法を用いた(図87(c))。
工程−d:
その後、素子電極52、53と素子電極間ギャップとなるべきパターンをフォトレジスト(RD−2000N−41/日立化成社製)で形成し、真空蒸着法により、厚さ5nmのTi、厚さ100nmのNiを順次堆積した。上記フォトレジストパターンを有機溶剤で溶解し、Ni/Ti堆積膜をリフトオフし、素子電極間隔Lが20μm、幅Wが300μmの素子電極52、53を形成した(図87(d))。
工程−e:
素子電極52、53の上にX方向配線となる上配線73用のフォトレジストパターンを形成した後、厚さ5nmのTi、厚さ500nmのAuを順次真空蒸着により堆積し、リフトオフにより不要な部分を除去して、所望の形状の上配線73を形成した(第87図(e))。ここで、本構成の特徴となる冗長配線X0を設けておく。
工程−f:
膜厚100nmのCr膜を真空蒸着により堆積・パターニングし、そのうえに有機Pd(ccp4230奥野製薬(株)社製)をスピンナーにより回転塗布して300℃で10分間の加熱焼成処理をした。こうして形成された導電性薄膜54の膜厚は10nm、シート抵抗値は5×104Ω/□であった。その後、Cr膜および焼成後の導電性薄膜54を酸エッチャントによりエッチングして所望のパターンを形成した(第87図(f))。
工程−g:
コンタクトホール142部分以外にレジストパターンを形成し、真空蒸着により厚さ5nmのTi、厚さ500nmのAuを順次堆積した。リフトオフにより、不要な部分を除去する事により、コンタクトホール142を埋め込んだ(第87図(g))。
次に、以上のようにして作製した未フォーミングの電子源を用いて電子源を構成した。以下、図84を用いて説明する。
まず、基板71上に下配線72、層間絶縁層(不図示)、上配線73、素子電極75導電性膜74を形成した。上述のようにして多数の表面伝導型電子放出素子74を設けた電子源基板を真空容器に装着した。
工程―h:
本参考例のフォーミング工程では、図88に模式的に示した真空処理装置を用いた。真空ポンプ1406により減圧可能な真空容器1405内に、基板51上に素子電極52、53および導電性薄膜54、さらにはX・Y方向配線が形成された電子源が配置されている。Y方向配線はグランドに接続した共通電極に接続されており、X方向配線(上配線)のそれぞれに電源1410から所定の電圧パルスが印加される。この電源1410による電圧パルスの供給は、スイッチ回路1401によって制御される。
ここでは、電源1410からX方向配線(上配線)のそれぞれに印加される電圧パルスのパルス幅が1msec、パルス間隔が240msecとなるようにした。パルス幅1msec、パルス間隔3.3msecのパルスを生成し、スイッチング装置により、1パルス毎に、電圧を印加するX方向配線を1ラインずつ隣に切り替えることを繰り返した。
パルス波高値は11V、パルス波形は矩形波とした。また、フォーミング処理中、表示パネル全体を50℃に保持し、パルス印加を行うとともに、H2とN2よりなる混合ガスを導入した。
このフォーミング処理では、導電性薄膜54を通電(電流If)させることで、導電性薄膜54の一部に亀裂が生じる。この亀裂部が、電子を放出するた電子放出部55となる。
工程―I:
次に、活性化工程を行う。雰囲気を形成する有機物質のガスとしてはベンゾニトリルを用い、分圧としては1×10-6Torrに制御し、パルスの印加の仕方は上記フォーミング工程と同じであるが、全てのX方向配線に対して同時に処理を行うことができないので、X方向配線10ラインを1ブロックとし、1ラインに1パルスずつ順番に10回の印加を行うことを繰り返し、1ブロックを活性化終了し、これを残りのブロック分順次処理を行って完了した。ラインに印加されるパルス幅は1msec、パルス間隔は10msecとし、パルス波形は矩形波とし、16Vの波高値とした。
その後、基板全体を300℃に保持しながら排気を続け、真空チャンバー内の圧力が1×10-5Pa以下で室温に降温し、高圧端子を通じてアノード電極に1KV印加し、各素子に15Vの駆動パルスを印加して電子放出量Ieとバラツキの標準偏差σを、特に注目する冗長配線と隣接する配線に接続する素子について測定したところ以下の結果となった。
(比較例1)
この比較例では、上記冗長配線X0,Y0が設けられていないこと以外は同じ構成で、同じ工程を用いて電子源を作製した。
以上の結果から、冗長配線により電子放出量の均一性が向上した。
(参考例2、3)
本構成の第2、3の参考例として、平面型の表面伝導型放出素子を多数単純マトリクス配置した図18のような電子源を印刷配線用いて形成し、これを画像形成部材と組み合わせて画像形成装置を構成した。
以下、図89を参照して本参考例の構成、製造手順を説明する。
まず、第2の参考例について説明する。
図89(a)〜図89(f)に本参考例の製造手順を表わす工程図を示す。(図89(a)〜図89(f)は、不図示の基板上に対して電子源の一部として画像形成領域の角に位置する3×3個、計9個を行列状にマトリクス配線した部分を示す。図中、212,213は一対の素子電極、214は電子放出部形成用の導電性薄膜、216は第一の配線層、217は第二の配線層、218は第一の配線層216と第二の配線層217との間に設けられた層間絶縁膜である。全体の素子は行方向に720、列方向に240並んだ構成とした。
先ず、予め洗浄された基板(ここでは、ソーダライムガラス基板を使用)に、素子電極の印刷、焼成を行い、一対の素子電極212,213を形成する(第89図(a))。本参考例では、膜の成膜方法として厚膜印刷法を使用した。ここで使用した厚膜ペースト材料は、MODペーストで金属成分はAuである。印刷の方法はスクリーン印刷法を用いた。所望のパターンに印刷した後、70℃で10分乾燥した後、本焼成を実施する。焼成温度は550℃で、ピーク保持時間は約8分である。印刷、焼成後のパターンは、一方の素子電極213を350×200ミクロン、他方の素子電極212を500×150ミクロンとする、左右非等長のパターンを形成し、膜厚は〜0.3ミクロン、各素子電極212,213の間隔は20μmとした。
次に、第一の配線層を形成する(図89(b))。第一の配線層216の形成では、Y方向配線を全パターン形成する。Y方向配線は、素子電極213に接続形成される。本参考例では、第一の配線層216の形成方法として厚膜スクリーン印刷法を用いた。ペースト材料は、酸化鉛を主成分とするガラスバインダーに導電性材料の微粒粉を混合したものを用いた。また、導電性材料として、Agのペーストを使用した。所望のパターンでスクリーン印刷を行い、110℃で20分の乾燥を行った後、550℃、ピーク保持時間15分の焼成を行って、第一の配線層216である幅100ミクロン、厚み12ミクロンのY方向配線を得た。ここで本構成の特徴である第一の配線層216を形成する(第89図(b))。第一の配線層216の形成で、列方向配線は電子放出素子の電極213に接続形成されるもの以外に、端の素子で片側に配線が形成されていない左端の素子列に隣接して冗長配線Y0および冗長電極212’、213’を設けた。
さらに、上記冗長の列配線Y0の下に、上記素子電極で列配線Y0に接続する側の電極が連結し、図89(a)に示したように1列連続した線状に形成しておいた。
ここで、層間絶縁膜218を形成する(第89図(c))。この層間絶縁膜218は、X方向配線とY方向配線の交差する部分に形成した。この層間絶縁膜218の構成材料としては、金属成分を含まないPbOを主成分とした厚膜ペーストを用いた。
層間絶縁膜218の形成には、厚膜スクリーン印刷法を用いた。所望のパターンでスクリーン印刷を行い、110℃で20分の乾燥を行った後、550℃、ピーク保持時間15分の焼成を行って500×500ミクロン、厚み〜30ミクロンの層間絶縁膜218を得た。
次に、第二の配線層217を形成する(第89図(d))。第二の配線層217の形成では、第一の配線層216とは逆にX方向配線を全パターン形成した。X方向配線は、素子電極212に各々接続形成される。この配線形成には、第一の配線層216と同様の厚膜スクリーン印刷法を用いた。使用した厚膜ペースト材料は、第一の配線層216と同じAgペーストで、金属成分はAgである。所望のパターンでスクリーン印刷の後、110℃で20分の乾燥を行った後、550℃でピーク保持時間15分の焼成を行って、第一の配線層216上に第二の配線層217である幅100ミクロン、厚み12ミクロンのX方向配線を得た。このように第二の配線層の形成により、X方向配線とY方向配線が互いに絶縁された複数(2層)の層からなるマトリクス配線が完成した(図89(d))。
以上で、マトリクス配線の部分が完成したわけであるが、ペースト材料、印刷方法等はここに記したものに限るものではない。
最後に電子放出部形成用の導電性薄膜214(表面伝導型電子源)を形成する(第89図(e))。導電性薄膜214の形成には、以下に説明する液滴付与方法を用いた。
液滴を液滴付与装置により素子電極上に付与するわけであるが、液滴の基になる溶液は水、金属化合物および有機溶媒からなり、液滴を生じさせる粘度のものが用いられる。本参考例では、金属化合物の金属成分としてPdを用いた。液滴付与装置としては、インクジェット装置またはバブルジェット方式の装置をもちいた。焼成は300℃で10分間行い、膜厚としては100Åとなるよう吐出液滴量を調整し、シート抵抗は、4×104となる膜を形成した。
図89(a)〜図89(b)では、9個の素子部分のみを図示したが、これをX方向720列、Y方向240列に同時に形成する事で複数層から成る単純マトリクス方式による電子源基板の構成が完成した。
次に、以上のようにして作製した表面伝導型電子源を有する電子源基板を用いて表示パネルを構成した。更に、本構成の特徴である冗長の行配線X0、列配線Y0は容器外端子Dx0、Dy0を通じて接地し、電位を規定した。
次に第3の参考例について説明する。
本例では、図90に示したように冗長の配線を2ラインもうけ、印刷断線の影響を少なくしたもので、製造の工程、構成部材は上記本構成の第2の参考例の場合と同じにした。ただし、冗長配線の下の電極を連結して線状のパターンを設けることはしなかった。冗長配線X0、X0’およびY0、Y0’は容器内で接続させ、容器外端子Dx0、Dy0を通じて接地し、電位を規定した。
(比較例2)
この比較例は、冗長配線を設けずに構成した画像形成装置で製造工程は上記の本構成の第2の参考例と同じ条件としたものである。
以上の第1および第2の参考例および比較例の構成を用いた場合に得られた結果を以下に表5に示す。
上記表5から分かるように、素子近傍に冗長配線を設けることで電子源としての均一性が向上し、輝度のバラツキも減少した。ここで、輝度の平均値が減少したのは電子ビームの形状が電位分布により変形し、それによりフェースプレートのブラックストライプに照射される割合が増加し、光に変換される効率が低下したためである。
(参考例4)
上述した本構成の各参考例では冗長配線を容器外端子を通じて電位規定していたが、この参考例では、容器内部で行方向の冗長配線は、電子放出素子に接続する行配線のいずれか1つ、ここでは一つ置いて隣の配線と接続し、列方向の冗長配線は、隣接する列配線と接続したことが特徴である。図91に示すように冗長行配線X0と隣接する行配線の一部に絶縁層161を形成し、その後、第三の配線として該冗長配線X0と1つ置いて隣の行配線X2とを接続する形で162を形成した。
以上の構成を採用することにより、上記冗長配線を設けたことで配線に挟まれていない電子放出素子がなくなり、素子周辺の帯電状態がすべての素子で同等となったため、上記現象と対応して電子源として以下ような効果が得られた。
(1)電子放出特性の均一性が向上。
(2)電子ビームの形状の均一性が向上。
(3)電子放出特性および電子ビームの形状の時間的変動が減少。
(4)帯電量が減少し、電極、配線との放電による電子源の劣化が無くなった。すなわち、上記電子源を用いた画像形成装置では輝度の均一性が増し、より高画質な特性が実現できた。
(第16の構成)
表示パネルにおける配線取り出し部の構成としては以下の構成をとることができる。すなわち、本例は、行方向又は、列方向の取り出し配線部の長さを最適化し、画像表示部の周辺部をできる限り狭くした構成を提供するものである。以下、この構成における参考例を挙げる。
(参考例1)
図92は、本第16の構成を適用する表示パネル(画像表示装置)の一部分を示す平面図である。この図92に示す表示パネルは、本第16の構成の一形態である表面伝導型放出素子を用いた表示パネルであって、図中には、取り出し配線部の長さを具体的に説明するためにフレキシブルケーブルを実装する前のパネルの一部分が示されている。
図92において、3001は、画像表示装置の表面伝導型放出素子と、行方向と列方向の配線が印刷配線によって形成されている素子基板、3002は、素子基板3001に対して対向する位置に配置されて、蛍光体とアノード電極が平面上に配置されたフェイスプレート、3003は、表面伝導型放出素子がマトリクス配線上の交点に配置された画素部、3004は、列方向配線を複数のブロックに分割してフレキシブルケーブル(不図示)と圧接するために印刷配置された列方向側の一ブロックの取り出し配線、3005は、取り出し配線3004と同様に行方向配線を複数のブロックに分割してフレキシブルケーブル(不図示)と圧接するための印刷配置された一ブロックの取り出し配線、3006は、画像表示を行った時に画素部から放出されるガスを吸着するためのゲッタ部材、3007は、フェイスプレート3002と素子基板3001とを真空封止するために用いられる枠を示す。
Lは、本参考例で求められた取り出し配線長を示し、3011は、画素部3003からの沿面放電に対して考慮されて配置されたゲッタ3006までの距離、3012は、真空封止を行うために構成された枠の幅である。枠の外形部がフェイスプレート3002の外形部となる。3013は、フレキシブルケーブルと圧接実装するためのフレキ接合部の長さ、3014は、素子基板の外形部から印刷配線がされている部分までの距離、3015は、素子基板上に印刷配線される時の印刷角度と、取り出し配線を複数のブロックに分割した時の一ブロック内での長さ3017とブロック間とのクリアランス量3016から決定される長さである。
取り出し配線長を最適化するにあたって、本例では行方向配線側と列方向配線側との取り出し配線長を同じとした。その理由として、画素部3003から素子基板3001までの幅を同じにすることで、フレキシブルケーブルの実装後のパネル組み立て部材等が同一仕様で構成することができるため、コスト等の低減につながるためである。従って、取り出し配線長の説明については、列方向配線側で行うこととする。なお、行方向配線側、列方向配線側の取り出し配線長は、同じ長さに限定されるものではなく、パネル設計上、それぞれの長さを変えても良い。
次に、取り出し配線長Lの決定の仕方について詳細に説明する。配線長Lは、3011〜3017によって決定される。
まず、3011である。3011は、前述したように画素部3003からゲッタ3006までの距離である。ゲッタ3006は、画像表示を行った時に画素部から放出されるガスを吸着するための部材であり、表示駆動を行った場合に、フェイスプレート3002の蛍光体に表面伝導型放出素子からの放出電流による電子が衝突した際に発生するガスを吸着する。これにより、パネル内は常に一定の真空度(約1×10-5torr近辺)が維持される。ゲッタ部材は、一般的には金属材料等で構成されており、例えば、素子基板3001上の取り出し配線上とフェイスプレート3002の空間上に配置されたワイヤ状の形状で構成される。パネル内に金属部材が配置されていることに対する問題点として、フェイスプレート3002に印加されている高圧電圧(アノード電圧)との沿面放電がある。沿面放電は、ゲッタ部材を画素部3003に近接するほど起こりやすく、又アノード電圧値に依存する。従って、最低限沿面放電を回避するためにはある程度画素部3003からの距離をとることが必要とされる。本参考例では、3011は実験的に確認された値を用いており、少なくとも4mm以上(アノード電圧12kV)の距離をおいている。
次に、3012である。まず、フェイスプレート3002と素子基板3001とを真空封止するために用いられる枠3007について説明する。枠3007は、パネル内の真空度に対して、外部(大気中)からのスローリークを防止する目的と、パネル作製工程において工程中に行われるベーキング等に熱処理時でのパネルの熱応力による変形を防止するためのものである。枠部材は、主として接着材系が用いられている。スローリークは、フェイスプレート3002と接着材との界面状から起こるものと考えられており、スローリークを回避するためには枠部の幅を約3mm〜10mm程度にする必要があることが判っている。従って、本参考例では、熱応力による変形防止をも考慮して、枠3007の幅3012を少なくとも5mm以上とした。
次に、フレキシブルケーブルとのフレキ接合部である3013について説明する。表示装置として外部の表示回路との接続を行うためのフレキ接合部は、フレキシブルケーブルとの接触抵抗が重要となってくる。特に、行方向配線側では表面伝導型放出素子が複数接続されていることから数Aの電流値が流れる。従って、取り出し配線とフレキシブルケーブルとのアライメント不良によって接触位置のずれが生じ、接触抵抗が不安定となったり、接触抵抗値が高くなったりした場合には、断線や接触部での電圧降下という問題がおき、表示駆動に対して画質の低下やライン欠陥を及ぼすことになる。以上のような問題を無くし、信頼性を高めるために、本参考例では、ACF(異方性導線膜)などの技術を用いてフレキシブルケーブルとのコンタクトを行っている。
更に、本参考例では、フレキ接合部3013上には、パネル作製工程のなかでプローブ等を使用したプロセスにも対応できる様にしている。このようにすることにより、例えば、図2の形態での作製工程が終了した時点で、行、列の各配線の隣接間ショートをチェックする場合には、フレキ接合部上のいずれかの位置にプローブ等の接触部針をコンタクトして計測を行うことが可能となる。以上の様にフレキ接合部3013は、フレキシブルケーブルとの接触安定性と他の工程でのチェック用のコンタクト部も含めて、5mmと設定した。3014は、素子基板の外形部から印刷配線がなされているところまでのクリアランス量で、これは印刷装置で決定されてくる量である。本参考例では、3014は2mmとなっている。
3015は前述したように、取り出し配線の一ブロック内の長さ3017、ブロック間とのクリアランス量3016、印刷配線での印刷方向における印刷角度θによって決まる。これらを具体的に説明するために、図93(a)および図93(b)を参照する。
図93(a)は、図92のパネルの一部を列方向配線部に対して拡大した図で、特に列方向の取り出し配線3004の部分でフレキシブルケーブルが実装された状態が示されている。また、わかりやすくするため、フレキシブルケーブルの実装図を省き、左側の取り出し配線の2ブロック間でのクリアランス部分の拡大図を図93(b)に示した。図93(a)、図93(b)において、3008は、取り出し配線の1ブロックに対応したフレキシブルケーブル、3018は画素部の列方向の全長、3019は列方向のフレキ接合部の全長、3110は3018の画素部の長さに対して3019のフレキ接合部がはみ出す場合の片側の長さである。又、3111はフレキシブルケーブル3008が取り出し配線3004に対してアライメントマーク3009によって位置あわせ後、圧接されたときの片側のはみ出し量である。本参考例では、はみ出し量3111を2.5mmとした。3112は、ブロック間に圧接されたフレキシブルケーブルのマージン量を示す。このマージン量は、フレキシブルケーブル実装時での装置からある程度決められてしまうもので、数mm程度必要とされる。本参考例では、マージン量3112を3mm以上と設定した。通常、フレキシブルケーブルによって配線の接合を行う場合、フレキ接合部は、画素内の配線ピッチよりも配線ピッチを細くし、実装密度をあげているのが一般的である。又、フレキ接合部の全長3019は、フレキ接合部とブロック間ごとのフレキシブルケーブルのクリアランス3016によって決まるため、高精細のXGA等の表示装置では、3019>3018となり、比較的画素数が少ない場合は、3019<3018になる場合が多い。図9393(a)、図93(b)では、3019>3018とした場合での接合部を示した。
3015を求めるにあたって、まず、3019および3018を求める必要がある。3019は以下のようにして求めることができる。
1ブロック間のピッチBpは、1ブロック間内の本数Xとし、配線ピッチPとした時に、
Bp=X*P+l6 ・・(i)
として求められる。列方向配線数Dynとした時の全ブロック数Bnは、
Bn=Dyn/X・・・(ii)
として求められる。上記(i)、(ii)式により、3019はBn×Bp(ブロック数×ブロック間ピッチ)によって求められる。
また、3018は次のようにして求めることができる。画素部3003内の画素ピッチPnと列方向配線数Dynから、3018は、Pn×Dynとして求められる。
次に、上記に示した計算により3110を求める。3110は、
3110=3019−3018/2
により求められる。3110がプラスとなる場合には、フレキ接合部の両端は画素部3003からはみ出し、マイナスとなる場合にはフレキ接合部の両端は画素部3003内に配置されることとなる。
通常、ブロック間内の配線ピッチPは,画素内でのピッチPnよりも高精細に形成されているため、フレキ接合部の長さ3017を長くすることによって、3018と3019をほぼ同じ長さもしくはそれ以下で構成することが可能である。実際には、フレキシブルケーブルのピッチ間精度、フレキシブルケーブルの圧接時でのアライメント精度、又圧接を行う装置の問題、更にはフレキシブルケーブルを表示回路系に接続する場合に用いるコネクタ等のピン数の制限などを考慮すると、3017の長さは実際にはある程度限定されるのが現状である。
上記計算から、3110の値が極端にプラスもしくはマイナスとなった場合、すなわちフレキ接合部のトータルの長さが、画素部3003の長さに対して差が大きくでるような条件で配線ピッチが設定された場合には、クリアランス3016の値を変えたり、1ブロック内の本数Xを変えて最適値となる3015を計算し、3018と3019との差をできる限り近づける様に設定にするのが望ましい。
次に、3015は、印刷配線での印刷方向における印刷角度θと前述した3110によって求めることができる。印刷角度θは、印刷時に使用されるメッシュの角度で決定される。例えばメッシュ角度に対してそれより大きい角度を持った配線パターンを印刷しようとした場合、メッシュ上からのペーストの吐出不良や干渉によって配線の断線が発生する。本参考例では、上記の条件より印刷角度θは約25度とされている。以上より、3015は、以下の計算によって求めることができる。
3015=3110/tanθ (θ=25度)・・・(iii)
上記示した(i)〜(iii)の式において、(i)においてはフレキ接合部の1ブロック間の配線数Xとブロック数とブロック間のクリアランス量3016、(ii)においては画像表示装置の大きさと画素数等が支配的であることから、以下に示す表で、各画像表示装置の仕様と取り出し配線部の仕様を変えたときの3015の最適値を求めた。尚、3015の値は、ここでは列方向配線側で算出するが、行方向配線側についても同様な計算によって求められるものである。θは、45度未満に設定することができる。
上記の表6は、30インチ、42インチ、60インチでの画像表示サイズに対して、フレキ接合部間のクリアランス量3016を8mm、15mmとした時の3015の値を求めたものである。実際に、上記の表から3015を決定する場合には、例えば60"のHD仕様をみると、クリアランス3016を8mmに設定し、ブロック間本数を320本にしたときの3015が30mmとなり、最も小さくなることが判る。逆に、30"のVGAの場合には、クリアランス3016を15mmに設定し、ブロック間本数を160本とした時に、3015が11mmとなり、最小になることが判る。以上の様に、各画像表示サイズごとに、フレキ接合部でのブロック間本数等を変えた場合での計算を行い、最適値の3015を設定することが可能となる。尚、1ブロック間の配線本数は上記の値に限定されるものではなく、必要に応じて変えてよい。更に、3015がマイナス値を示すのは、フレキ接合部の全長が画素部3003の全長に対し短くなるためであって、3015を決定するにあたっては特に問題にはならない。
次に、沿面距離3011と枠の幅3012の加算された値(l1=4mm、l2=5mmでl1+l2=9mm)と、決定された3015の値に対しての比較を行う。つまり、上記各表より求められた最適値3015に対して、本参考例ではゲッタ3006配置用の沿面距離3011とフェイスプレート3002上に設けた枠の幅3012は最低限必要とされる。従って、3015の値が9mm以下であった場合、すなわち、「3011+3012>3015」の場合には、3015の替わりに「3011+3012」の値となり、「3011+3012<3015>の場合には、3015が取り出し配線長L値を決める値とされる。
又、「3011+3012>3015」となった場合は、沿面距離3011のすぐ近傍に幅3012の枠を設置してよい。3013、3014に上記で決定された3015もしくは「3011+3012」の値を加算して、取り出し配線長Lが求まる。
以上、本参考例では、取り出し配線数の距離Lをゲッタ3006、フェイスプレート部の枠3007で構成された場合での最適値を示した。それにより、画像表示パネルの狭額縁化を目指したパネルを実現することが可能となった。
(参考例2)
図94に、本第16の構成を適用する第2の参考例の表示パネルの一部を示す。図中、図92に示した構成と同じものには、同じ符号を付している。
本参考例のものは、上述の本構成の第1の参考例と比較して、ゲッタを排除し、画素部3003内のマトリクス配線上にゲッタが形成されている点が大きく異なる。マトリクス内のゲッタは、非蒸発型ゲッター材料を使用した第1の参考例と同様に、画像表示をおこなった時での画素部からの放出ガスを吸着するための部材として使われる。図94において、3001、3002、3003、3004、3005、3007、3012、3013、3014、3015は第1の参考例と同様であることから説明は省略する。3011は、フェイスプレートの枠3007を構成する時の画素部3003からの距離で、図93における3011と同様に高圧電圧(アノード電圧)との沿面放電を回避するための距離である。ここでは、3011を4mmとした。取り出し配線長Lは、本構成の第1の参考例と同様に、配線長3015の値をどのように設定するかで決まる。3015は、本構成の第1の参考例に示したごとく、取り出し配線の一ブロック内の長さ3017と1ブロック間のクリアランス3016等により決まり、取り出し配線を求めるための計算式等はすべて第1の参考例と同じでよい。また、本参考例においても3015の値は、第1の参考例で示した表をもとに決定されてよい。さらに、印刷配線の角度θも第1の参考例と同じでよい。
次に、沿面距離3011と枠の幅3012の加算された値(l1=4mm、l2=5mmでl1+l2=9mm)と、決定された3015に対しての比較を行う。つまり、上述した本構成の第1の参考例と同様な理由により、「3011+3012>3015」の場合には、3015の替わりに「3011+3012」の値が決定され、「3011+3012<3015」の場合には、3015が取り出し配線長Lの値を決める値とされる。そして、3013、3014に上記で決定された3015もしくは「3011+3012」の値を加算して、取り出し配線長Lが求まる。又、本参考例においても、取り出し配線Lを決めるにあたっては、「3011+3012」の値が最低限必要である。
以上、取り出し配線数の距離Lをフェイスプレート部の枠3007で構成した場合の最適値を示した。それによって、画像表示パネルの狭額縁化を目指したパネルを実現することが可能となった。
以上説明したように、本第16の構成では、画像表示装置で画像を表示する場合での取り出し配線の長さを決定するにあたって、取り出し配線部の長さをいくつかの設定条件をもとに算出できることを可能としている。従って、表示パネルの大型化や、配線数の増加に伴った場合においても画像表示装置の狭額縁化に対応したパネルを実現することができる。又、狭額縁化によってパネルの計量化も図ることができる。
(第17の構成)
電子源基板の配線の取り出し部については、更に以下の構成を採用することができる。すなわち、X方向配線とY方向配線の幅が、上記画像形成領域内よりも該画像形成領域に近接する画像形成領域の外側で、広く形成された領域を有する構成(後述の第1の例)とすることができる。更に、該画像形成領域に近接する画像形成領域の外側の4角で、上記X方向配線ないしはY方向配線の幅が広く形成された領域を有する構成をとることもできる。
図95および図96は、電子放出素子がマトリックス状に配置された電子源基板を用いた、本第17の構成を適用する画像形成装置の第1の例を示す概略構成図(平面図)である。図95は画像形成領域の左端の周辺部分、図96は画像形成領域の上端の周辺部分をそれぞれ拡大して示したものである。なお、これら図95、図96では、画像形成領域の右端および画像形成領域の下端がそれぞれと対称な形態となっている。
3202および3203は素子電極、3206および3207は配線、3208は層間絶縁膜である。配線3206、3207は、それぞれ画像形成領域の外側、すなわち電子放出素子の形成されていない場所まで引き出されており、その場所におい配線幅が太くなるように形成されている。これは、画像形成領域の外側において基板表面の露出面積を減じるためで、この部位における帯電を生じにくくしている。
図97は、図95および図96に示した配線構造を備える画像形成装置の断面図である。図97において、3231は電子源を形成した基体であるリアプレート、3232は透明な基体の内面に蛍光膜3233とメタルバック3234等が形成されたフェースプレートである。リアプレート3231とフェースプレート3232は、枠3235により一定の間隔で支持されている。
本第1の例においては、上述したように、配線3006、3007が、それぞれ、画像形成領域の外側、すなわち電子放出素子の形成されていない場所まで引き出されており、かつ、その場所においてその幅を太く形成している。このように構成することにより、画像形成領域外側の電気抵抗の高い面の露出面積を減じることができ、画像形成領域端部における画像の乱れを防止できる。
図98〜100は、第2の例を示す概略構成図(平面図)で、画像表示領域の4角のうち、左上端部分を拡大して示したものであるが、他の3つの角も同様の形態を有する。なお、これらの図において、上述の図96、図97中に示した構成と同じものには同じ符号を付している。
配線3207は、m本のX方向配線DX1,DX2…DXm、配線3206は、n本のY方向配線DY1、DY2…DYnからなる。本第2の例では、これら配線3206、3207は、図98に示すように、左上端の角において、DX1とDY1の形状を広く変形させている。これは、画像形成領域の外側の角の部分で基板表面の露出面積を減じるためで、この部位における帯電を生じにくくしている。これと同様に、左下端(不図示)では、DXmとDY1、右上端(不図示)ではDX1とDYn、右下端(不図示)ではDXmとDYnをそれぞれ広く変形させており、画像形成領域の外側の角の部分で基板表面の露出面積を減じている。
本第2の例では、画像形成領域の外側の角の部分で基板表面の露出面積を減じることが目的であるため、図99に示す様に、X方向配線(左上端ではDX1)のみを広く変形させても良く、また図100に示す様に、Y方向配線(左上端ではDY1)のみを広く変形させても良い。
図101は、それぞれ、電子放出素子がマトリックス状に配置された電子源基板を用いた、第3の例を示す概略構成図(平面図)である。同図では、画像表示領域の4角のうち、左上端部分が拡大して示されているが、他の3つの角も同様の形態を有する。なお、図101において、図中の番号は、それぞれ図98〜100中の同じ番号で示したものと同一である。
図101中、3209は、画像形成領域の外側の角部に配された導電部材である。導電部材3209は、画像形成領域の角の部分の基板表面の露出面積を減じるために配されたものであり、配線3206、3207と同じ材料を用いることができる。ここで、導電部材3209は、配線3206、3207のいずれか一本と電気的にほぼ等電位となるよう接続することで、電位を規定することができる。
次に、上述した本第17の構成の参考例を挙げる。
(参考例1)
本参考例にかかわる基本的な画像形成装置の構成は、前述の図98〜100のものと同様である。配線3206の幅は、画像形成領域内部で約70μmとし、配線3206間の距離は約220μmとした。また、画像形成領域の外側、すなわち、最も端に位置する素子電極の外側の領域において、配線3206の幅を150μmに広げ、配線3206間の距離、すなわち基板表面の露出する幅は約140μmとした。なお、配線3206は、そのまま引き出し電極となるよう、基体の端まで形成した。
配線3207の幅は画像形成領域内部で約280μmとし、配線3207間の距離は約340μmとした。また、画像形成領域の外側、すなわち、最も端に位置する素子電極の外側の領域において、配線3207の幅を440μmに広げ、配線3207間の距離、すなわち基板表面の露出する幅は約180μmとした。なお、配線3207は、そのまま引き出し電極となるよう、基体の端まで形成した。
(参考例2)
本参考例においても、上述の本第17の構成の第1の参考例と同様に、配線3206を形成する。なお、ここで、配線3206のうち、DY1とDYnは、画像形成領域の外側の4角において、図98と同様になるように、形を広げて形成した。次に、第1の参考例と同様に、層間絶縁層3208を形成し、更に上配線3207を形成する。なお、ここで、配線3207のうち、DX1とDXmは、画像形成領域の外側の4角において、図98と同様になるように、形を広げて形成した。ここで、形を広げて形成した領域でのDY1とDX1との距離は、約200μm以下となるように形成した。
以上の様な構成を有する表示パネルでは、4角の部分において、画像の乱れの無い、長時間にわたって安定な高品質な画像が得られた。
(参考例3)
本参考例では、上記本第17の構成の第2の参考例と同様にして配線を形成するが、配線3207については図99の様に形成した。本参考例の表示パネルでも、4角の部分において、画像の乱れの無い、長時間にわたって安定な高品質な画像が得られた。
(参考例4)
本参考例では、上記本第17の構成の第2の参考例と同様にして配線を形成するが、配線3206については図100の様に形成した。本参考例の表示パネルでも、4角の部分において、画像の乱れの無い、長時間にわたって安定な高品質な画像が得られた。
(参考例5)
本参考例にかかわる基本的な画像形成装置の特徴は、前述の図97、図101と同様にスクリーン印刷で配線を構成した点にある。本参考例における画像形成装置の製造法の一手順を図102(a)〜図102(d)に示す。以下、これら図97、図100、図102R>2(a)〜図102(d)を参照して、本参考例にかかる画像形成装置の基本的な構成及び製造法を説明する。
工程−a:
本第17の構成の第1の参考例と同様に、清浄化したガラス基体上に、素子電極3202、3203を形成する(図102(a))。
工程−b:
本第17の構成の第1の参考例と同様に、配線3206を形成する。ここで、導電部材3209を所定の位置、すなわち、画像形成領域の外側の4角の位置に、同時に形成する(図102(b))。なお、導電部材3209と配線3206との間の距離は、約200μm以下とした。
工程−c:
次に、本第17の構成の第1の参考例と同様に、層間絶縁層3208を形成する。ここで、導電部材3209が、次の上配線形成時に、最近接の上配線と接続しないように、導電部材3209の上にも層間絶縁層3208を形成する(図102(c))。
工程−d:
本第17の構成の第1の参考例と同様に、上配線3207を形成する。ここで、導電部材3209が、最近接の次の配線3207と接続するように形成される(図102(d))。なお、導電部材3209と配線3207の最近接の配線との間の距離は、約200μm以下とした。
以上の工程により、素子電極3202、3203が配線3206、3207によってマトリックス状に結線された、基板を形成することができる。
工程−e:
この工程以降は、本第17の構成の第1の参考例と同様に、電気的外部取り出しを、配線を異方性導電膜(ACF)で接続する形で行って、本参考例における画像形成装置を作製し、画像表示を行なった。その結果、テレビジョンとして十分満足できる輝度(約150fL)で良好な画像を長時間にわたって安定に表示でき、4角の部分においても、画像の乱れの無い高品質な画像が得られた。
この構成によれば、電子源基板表面に露出した、電気抵抗の高い表面における帯電を抑制し、電子放出素子からの放出電子の軌道に対する影響を排除することができるので、良好な画像を長時間にわたり保持し得る大画面の平面型の画像形成装置、例えば、カラーフラットテレビを実現することができる。
(第18の構成)
フェースプレートに設けられた蛍光体層、メタルバック及びブラックマトリックスなどの表示部について、表示パネル(画像表示装置)の薄型化を実現するためには、画像表示パネルの厚さを薄くしなければならず、その場合、図18で示したリアプレート4005とフェイスプレート4000の距離を小さくしなければならない。そのような構成の場合、リアプレート4005とフェイスプレート4000の間にはかなり高い電界が生じる事になる。ここで、メタルバック4006は、蛍光体膜全体に高電圧Vaを印加し、また蛍光体の帯電を防止し、また蛍光体から後方(リアプレート方向)に出た光を鏡面効果により前方に取り出すという目的を持つため、連続膜であるのが好ましい。また、メタルバック4006は、加速された電子がメタルバック4006を通して蛍光体を励起しなければならないので、薄い膜状であるのが好ましい。しかしながら、蛍光体は一般に粉体であり、したがって蛍光体膜はポーラスになり、その表面にはかなりの凹凸が存在する。また、蛍光体の混色防止のため、ビーム位置が多少ずれても色ずれを起こさないようにするため、さらには外光を吸収し画像のコントラストを向上するためなどの理由で設けられるブラックマトリクスにも、上記蛍光体膜と同様、かなりの凹凸が存在する。そのため、蛍光体膜上に直接金属を成膜したのでは連続膜にならないので、一般的にメタルバック作製の工程としてフィルミング工程が用いられている。
メタルバックはフェイスプレートと接触しており、メタルバックのいずれの場所にも20μm×20μmの範囲内に、これらの接触部分が2点以上存在する、もしくは接触面積が5割以上とする構成を採用することができる。かかる構成を採用することで、表示パネル(画像表示装置)のリアプレートとフェイスプレートの間の電界強度が1kV/mm以上となっても、メタルバックとフェイスプレートとの接触部が適度に存在するため、クーロン引力が働いた時に接触部にかかる力が小さくなり、メタルバックがはがれる可能性が著しく減少し、耐久性・信用性に優れたものとなる。
また、上記メタルバックのいずれの場所にも20μm×20μmの範囲内に、上記接触部分が3点以上存在する、もしくは接触面積が5割以上とすることにより、クーロン引力により接触部にかかる力が更に小さくなり、メタルバックがはがれる可能性が著しく減少し、耐久性・信用性に優れたものとなる。
以上のように、フェイスプレートがブラックマトリクスを有することにより、外光を吸収し、コントラストを向上させ、隣の画素の蛍光体が混色する事を防ぐことができる。加えて、メタルバックがブラックマトリクスと接触しているために、広い範囲でメタルバックが浮くことがない。したがって、クーロン引力が働いた際の、メタルバックと蛍光体およびブラックマトリクスの接触部にかかる力を小さくすることができ、クーロン引力によりメタルバックがはがれる可能性が小さくなる。
また、メタルバックを作製する工程において、蛍光体膜およびブラックマトリクスの高さの差が大きいと、フィルミング工程の際に樹脂材料が蛍光体もしくはブラックマトリクスの低い部分に多く溜まって、フィルムの膜厚が厚くなってしまう。この上に金属膜を作製した後に焼成して樹脂材料を除去しようとすると、熱分解により生じるガスの量がフィルムの膜厚の厚い部分で多くなり、メタルバックの浮きが発生してしまう。これを防止するため、ここでは、一画素中の蛍光体膜の平均厚さをtp(μm)、そこに隣接するブラックマトリクスの平均厚さをtb(μm)、蛍光体の平均粒径をrp(μm)とした時に、ブラックマトリクスの平均厚さtbを、
tp−rp<tb<tp+rp
とする。これにより、蛍光体もしくはブラックマトリクスの低い部分に樹脂材料が溜まることがなくなり、メタルバックの浮きが生じてクーロン力ではがれる可能性が低くなる。
また、上記フェイスプレートの蛍光体膜作製領域のガラス基板を凹ませ、そこに蛍光体を充填するようにして、一画素あたりの蛍光体膜の上面の平均高さとそこに隣接するブラックマトリクスの平均高さの差が、蛍光体の平均粒径以下であるようにすることにより、蛍光体膜およびブラックマトリクスの低い部分に、フィルミング工程の際に樹脂材料が溜り、フィルムが厚くなり、焼成の際にメタルバックが浮くといった問題が起こりにくくなる。
さらに、上記フェイスプレートはブラックマトリクスを有し、該ブラックマトリクス上に、ブラックマトリクスとは異なる材料の物質が積層され、それをメタルバックと接触させた構成としてもよい。この構成によれば、メタルバックがブラックマトリクス上に設けられた材料と接触しているために、広い範囲でメタルバックが浮くことなくなる。したがって、クーロン引力が働いた時にメタルバックと蛍光体およびブラックマトリクスの接触部にかかる力が小さくなるので、クーロン引力によりメタルバックがはがれる可能性が小さくなる。
また、メタルバックを作製する工程において、金属膜が作製されたフィルムが、バルクもしくは非常に粒径の小さい粒子からなるスクリーン上に接していると、焼成の際に熱分解により発生したガスが抜け難く、メタルバックの浮きを発生し易くなる。また、逆に金属膜が作製されたフィルムが、非常に粒径の大きな粒子からなるスクリーンに接していると、フィルムの平坦度が高い場合に、焼成後にメタルバックとフェイスプレートの接触部が非常に少なくなり、クーロン引力によりメタルバックがはがれ易くなってしまう。そこで、上記ブラックマトリクス上に積層される材料の平均粒径をrz(μm)とし、蛍光体の平均粒径をrp(μm)としたときに、
rp÷2<rz<3rp÷2
とする。これにより、焼成の際にメタルバックの浮きが発生し難くなり、しかもメタルバックとフェイスプレートの接触部が少なくならないので、クーロン引力がかかった際にメタルバックがはがれ難くなる。
また、上記ブラックマトリクス上に積層される材料の拡散反射率を70%以上とすることにより、蛍光体から出た光がブラックマトリクス上の材料に吸収されず、前方に効率よく取り出す事ができる。結果、画像表示装置の輝度が向上する。
また、上記ブラックマトリクス上に積層される材料は、上記蛍光体とする事により、本構成の本質である接触部の多いメタルバックを作製し易くなり、さらにフェイスプレートの作製工程が単純となり、製造コストを削減する事が出来る。
また、上記フェイスプレートにはカラー画像を表示するため3色の蛍光体が塗り分けられており、上記ブラックマトリクス上に積層される蛍光体はそのうち1色の蛍光体が8割以上を占めるようにする事により、本構成の本質である接触部の多いメタルバックを作製し易くなり、さらにフェイスプレートの作製工程が単純となり、製造コストを削減する事が出来る。
また、上記フェイスプレートにはカラー画像を表示するため3色の蛍光体が塗り分けられており、上記ブラックマトリクス上に積層される蛍光体は、両隣の2色の蛍光体とすることにより、本構成の本質である接触部の多いメタルバックを作製し易くなり、さらにフェイスプレートの作製工程が単純となり、製造コストを削減する事が出来る。
また、上記ブラックマトリクスに積層される2色の蛍光体のブラックマトリクスの領域を占める面積比を(4〜6):(6〜4)とすることにより、本構成の本質である接触部の多いメタルバックを作製し易くなり、さらにフェイスプレートの作製工程が単純となり、製造コストを削減する事が出来る。
また、上記ブラックマトリクスに積層される2色の蛍光体のブラックマトリクスの領域を占める面積比を(9.5〜6):(0.5〜4)とすることにより、本構成の本質である接触部の多いメタルバックを作製し易くなり、さらにフェイスプレートの作製工程が単純となり、製造コストを削減する事が出来る。
また、上記フェイスプレートのブラックマトリクス作製領域のガラス基板が凹んでおり、そこにブラックマトリクスの材料を充填するようにして、蛍光体膜の上面の平均高さとブラックマトリクスの部分の平均高さの差を、蛍光体の平均粒径以下とすることにより、本構成の本質である接触部の多いメタルバックを作製し易くなる。
また、メタルバックの凹凸の差が大きい場合は、接触部1ヶ所に対するメタルバックの表面積が大きくなり、接触部にかかるクーロン引力が大きくなる。そこで、上記メタルバックのいずれの場所でも20μm×20μmの範囲内のメタルバックの凹凸の差を蛍光体の平均粒径以下とする。これにより、メタルバックにクーロン引力がかかった際に、接触部にかかる力が小さくなり、メタルバックがはがれる可能性が少なくなる。
以下、本構成の参考例を挙げる。
(参考例1)
図103、図104(a)〜図104(d)、図107(a)および図107(b)を参照して、本構成の主題であるフェイスプレートおよびメタルバックの構成について説明する。
厚さ2.8mmのソーダライムガラス(基体1300)を洗浄・乾燥させた後、ガラスペーストおよび黒色顔料を含んだ黒色顔料ペーストを用い、図107(a)のように、縦方向に幅100μm、ピッチ290μmのストライプを240本、横方向に幅300μm、ピッチ650μmのストライプを720本有するパターンを、縦・横共に20μmの厚さでスクリーン印刷法により作製し、ブラックマトリクス1301とした(図104(a))。本参考例では、スクリーン印刷法によりブラックマトリックスを作製したが、もちろんこれに限定されるものではなく、たとえばフォトリソグラフィー法をもちいて作製してもよいが、膜厚が厚い事とコストの関係上スクリーン印刷法を用いる事が好ましい。また、ブラックマトリクスの材料として、ガラスペーストと黒色顔料を含んだ黒色顔料ペーストを用いたが、もちろんこれに限定されるものではなく、たとえばカーボンブラックなどを用いてもよい。ここでは、スクリーン印刷で作製する事や、膜厚が20μmと厚いため上記黒色顔料ペーストを用いた。また、ブラックマトリクスは、本参考例では図107(a)のように、マトリクス状に作製したが、もちろんこれに限定される訳ではなく、ストライプ状配列やデルタ状配列やそれ以外の配列であっても良い。
次に、図107(a)に示すように、ブラックマトリクス1301の開口部に、赤色・青色・緑色の蛍光体ペースト1302を用いてスクリーン印刷法により、3色の蛍光体を1色づつ3回に分けて作製する(図104(b))。本参考例では、スクリーン印刷法を用いて蛍光体膜を作製したが、もちろんこれに限定される訳ではなく、たとえばフォトリソグラフィー法などにより作製しても良い。また蛍光体はCRTの分野で用いられているP22の蛍光体とし、赤色(P22−RE3; Y2O2S:Eu3+)、青色(P22−B2; ZnS:Ag,Al)、緑色(P22−GN4;ZnS:Cu,Al)のもので平均粒径はメジアン径Dmedで7μmのものを用いたが、もちろんこれに限定される訳ではなく、その他の蛍光体を用いても良い。また、蛍光体の膜厚は、平均して20μm程度になるように作製した(図104(c))。ここで、蛍光体の膜厚が十分平坦にならないような場合には、充分な平坦度をもつ平板ガラスにイソプロピルアルコール(IPA)を吸収させた不織布をもうけ、これによりフェースプレート上の蛍光体膜およびブラックマトリクスを加圧し平坦度を増してもよい。次いで、この基板を450℃で4時間焼成する事により、ペースト中に含まれる樹脂分を熱分解除去し、対角画面サイズ10インチ、アスペクト比4:3、ドット数720×240からなるフェイスプレートを得た。ここで、蛍光体およびブラックマトリクスの厚さを蝕針式表面粗さ測定器をもちいて測定したところ、一画素中の蛍光体膜の平均厚さとそこに隣接するブラックマトリクスの平均厚さの差が、蛍光体の平均粒径である7μmをこえるような場所は観測されなかった。
次に、このフェイスプレート上にメタルバックを作製する方法について説明する。
上記のようにして作製したフェイスプレートをスピンコーター上に配置し、純水にコロイダルシリカを溶解させた溶液を、基板を回転させながら塗布し、蛍光体層の凹凸部を湿潤させた。続いて、ポリメタクリレートをトルエンに溶解した溶液を、基板を回転させながら全面に均一になるようにスプレーにより塗布し、温風を基板に吹きかける事により乾燥させ、蛍光体層およびブラックマトリクス上に、樹脂フィルムを作製する事によって、表面の平坦化を行なった。ここでは、平坦化のための工程として、蛍光体膜を湿潤した後にポリメタクリレートをトルエンに溶解した溶液を塗布したが、もちろんこれに限定されるものではなく、他の溶剤系ラッカー液を用いても良いし、その他の方法としてたとえばアクリルエマルジョンを蛍光体に塗布し乾燥させるという工程を行なっても良い。この後、平坦化されたフェイスプレートに1000オングストロームのアルミニウム膜を真空蒸着法により作製した。そして、このフェイスプレートを焼成炉内に搬入し、450℃まで加熱する事により樹脂フィルムを熱分解除去した。
このようにして得られたフェイスプレートのメタルバック1303(図104(d))と蛍光体およびブラックマトリクスとの接触部を、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。この際、高加速電圧で観察すると、厚さ1000オングストロームのメタルバックが観察しにくいので、加速電圧2kVで観察した。SEMでメタルバックを観察すると、接触部のメタルバックは蛍光体もしくはブラックマトリクスに沿った形状になっており、上記接触部が良好に観察する事が出来る。SEMの観察により、20μm×20μmの範囲にある接触部の数および接触面積を測定した。測定は、選択したブラックマトリクスの開口部からそこに隣接する8箇所のブラックマトリクス開口部とそれらに囲まれた範囲で行ない、その測定をフェイスプレートの全面から無作為に10箇所取り出して行なった。その結果を表7に示す。観察の結果、メタルバックの接触部が20μm×20μmの範囲で2ヶ所未満のところはなく、フェイスプレートに良好に接触している事が観察された。
また、上記のフェイスプレートを真空チャンバ中でフェイスプレートより十分大きい電極に対向して一定のギャップをあけて固定し、メタルバックにDCで高電圧を印加し、徐々に印加電圧を上昇させ、放電を開始した電圧を測定して電界強度(以後、放電開始電界強度と呼ぶ事にする。)を求めた。ただし、ここで電界強度は、メタルバックに印加した電圧をリアプレートとフェイスプレートのギャップ距離で割ったものとする。測定の結果、放電開始電界強度は7.7kV/mmであった(結果を表7に示す)。このようにして、メタルバックが良好に接触しているフェイスプレートを得る事が出来、それにより画像表示装置の信頼性を向上する事が出来た。
なお、ブラックマトリクス1301は図107(b)に示すような円形の開口を有するパターンとしてもよい。
(参考例2)
図106(a)〜図106(d)、図107(a)および図107(b)を参照して、本第18の構成を適用する第2の参考例について説明する。
上述の本第18の構成の第1の参考例と同様の厚さ2.8mmのソーダライムガラス(基体1300)を洗浄・乾燥させた後、第1の参考例と同様な方法で、厚さ3μmのブラックマトリクス1301を作製した(図106(a))。次に、第1の参考例と同様に、ブラックマトリクス1301の開口部に3色の蛍光体を用いて、図107(a)にあるような配置で厚さ20μm蛍光体膜を作製した(図106(b))。ここで、ブラックマトリクス上に蛍光体が多少積層されても、ブラックマトリクスが光を吸収するので混色はおこらない。
次に、ブラックマトリクス上にフェイスプレートの凹凸を減らすために、積層物を設ける工程について説明する。フェイスプレートの凹凸が存在すると、メタルバックの浮きが発生し易くなるため、凹凸を減らす必要がある。この積層物の主目的は、そのような凹凸を減らすために、メタルバックの接触部を増やす事に有る。また、積層物を設ける工程では、積層物の表面が平滑すぎると、フィルミング工程において、フィルム焼成後にブラックマトリクスとメタルバックの密着性が悪くなる可能性が有り、また逆に凹凸が大きすぎるとメタルバックの接触部が減る事や、メタルバックが連続膜にならない可能性があるため、積層物に用いる材料の平均粒径を考慮したほうが好ましい。また、積層物が光吸収性をもつと、蛍光体から発せられた光が吸収され、前面に取り出される光の効率が低下するので、上記材料の拡散反射率が70%以上あるのが好ましい。
本参考例では上記の理由を考慮し、平均粒径4μmの酸化マグネシウム粉末を用いた。これを樹脂バインダーに分散し、酸化マグネシウムペーストを作製し、ガラス基板上に厚さ20μmの膜を作製し、拡散反射率を測定したところ85%程度の良好な値を示した。本参考例では上記積層物の材料として平均粒径4μmの酸化マグネシウム粉末を用いたが、もちろんこれに限定される訳ではなく、上記のような要求を満たすものならどのような材料を用いてもよく、たとえば窒化ボロンなどを用いても良い。上記酸化マグネシウムペーストを用いて、ブラックマトリクス上にスクリーン印刷法により積層物1304を作製した(図106(c))。本参考例では、スクリーン印刷法により上記積層物を作製したが、もちろんこれに限定される訳ではなく、たとえばフォトリソグラフィー法などにより作製しても良い。ここで、上述の本構成の第1の参考例と同様に、蛍光体および積層物の膜厚が十分平坦にならないような場合には、充分な平坦度をもつ平板ガラスにイソプロピルアルコール(IPA)を吸収させた不織布をもうけ、これによりフェイスプレート上の蛍光体膜およびブラックマトリクス状の積層物を加圧し平坦度を増してもよい。ついで、この基板を450℃で4時間焼成する事により、ペースト中に含まれる樹脂分を熱分解除去しフェイスプレートを得た。作製したフェイスプレートの膜厚・表面粗さを蝕針式表面粗さ測定器により測定したところ、一画素中の蛍光体膜の平均高さと、そこに隣接するブラックマトリクスの平均高さの差が、蛍光体の平均粒径である7μmを超えるような場所は観測されなかった。
次に、上述の本構成の第1の参考例と同様な方法で、フェイスプレート上にメタルバック1303を作製し、フェイスプレートを得た(図107(d))。
このようにして作製したフェイスプレートを、上述の本構成の第1の参考例と同様にSEMで観察し、20μm×20μmの範囲にある接触部の数および接触面積を測定した。その結果を表7に示す。観察の結果、メタルバックの接触部が20μm×20μmの範囲で2ヶ所未満のところはなく、フェイスプレートに良好に接触している事が観察された。また、第1の参考例と同様に、放電開始電界強度を測定したところ、7.3kV/mmであった。
上記のフェイスプレートと前述の本構成の第1の参考例で用いたものと同様のマルチ電子ビーム源を備えたリアプレートを用いて画像表示装置を作製したところ、画像表示装置の耐久性および信頼性を向上する事が出来た。また、ブラックマトリクス上に酸化マグネシウムの積層物を設け光の利用効率を向上させた事により、画像表示装置の輝度が10%程度向上した。
なお、ブラックマトリクス1301は図107(b)に示すような円形の開口を有するパターンとしてもよい。
(参考例3)
次に、図108(a)〜図108(d)、図107(a)および図107(b)を参照して、本第18の構成を適用する第3の参考例について説明する。
前述の本第18の構成の第1の参考例と同様の厚さ2.8mmのソーダライムガラス(基体1300)を洗浄・乾燥させた後、第1の参考例と同様な方法で、厚さ3μmのブラックマトリクス1301を作製した(図108(a))。次に、ブラックマトリクスの開口部に、図107(a)に示すような配列で、3色の蛍光体膜を作製した。蛍光体膜の作製は、スクリーン印刷法により行い、3色の蛍光体を1色づつ3回に分けて作製する。ここで、2色目(蛍光体膜1302a)までは上述の第1の参考例と同様に作製した(図10808(b))。3色目(蛍光体膜1302b)は、フェイスプレートの凹凸が少なくなるように、ブラックマトリクス上にも積層した(図108(c))。ここで、第1の参考例と同様に、蛍光体の膜厚が十分平坦にならないような場合には、充分な平坦度をもつ平板ガラスにイソプロピルアルコール(IPA)を吸収させた不織布をもうけ、これによりフェイスプレート上の蛍光体膜を加圧し平坦度を増してもよい。
ついで、この基板を450℃で4時間焼成する事により、ペースト中に含まれる樹脂分を熱分解除去し、フェイスプレートを得た。このようにして作製したフェイスプレートの膜厚・表面粗さを蝕針式表面粗さ測定器により測定したところ、一画素中の蛍光体膜の平均高さと、そこに隣接するブラックマトリクスの上の蛍光体の平均高さの差が、蛍光体の平均粒径である7μmを超えるような場所は観測されなかった。また、このフェイスプレートを光学顕微鏡により観察したところ、ブラックマトリクス上には最後に印刷した蛍光体が8割以上の面積を占めて存在していた。
次に、前述の本構成の第1の参考例と同様な方法で、フェイスプレート上にメタルバック1303を作製し、フェイスプレートを得た(図108(d))。
このようにして作製したフェイスプレートを、前述の本構成の第1の参考例と同様にSEMで観察し、20μm×20μmの範囲にある接触部の数および接触面積を測定した。その結果を表7に示す。観察の結果、メタルバックの接触部が20μm×20μmの範囲で2ヶ所未満のところはなく、フェイスプレートに良好に接触している事が観察された。また第1の参考例と同様に、放電開始電界強度を測定したところ、6.5kV/mmであった。
本参考例のフェイスプレートと、前述の第1の参考例で用いたものと同様のマルチ電子ビーム源を備えたリアプレートを用いて画像表示装置を作製したところ、画像表示装置の耐久性および信頼性を向上する事が出来た。
なお、ブラックマトリクス1301は図107(b)に示すような円形の開口を有するパターンとしてもよい。
(参考例4)
次に、図105(a)〜図105(d)、図107(a)および図107(b)を参照して、本第18の構成を適用する第4の参考例について説明する。
前述の本第18の構成の第1の参考例と同様の厚さ2.8mmのソーダライムガラス(基体1300)を洗浄・乾燥させた後、第1の参考例と同様な方法で、厚さ3μmのブラックマトリクス1301を作製した(図105(a))。
次に、ブラックマトリクスの開口部に、図107(a)に示すような配列で、3色の蛍光体膜を作製した。蛍光体膜の作製は、スクリーン印刷法により行い、3色の蛍光体を1色づつ3回に分けて作製する。また、蛍光体を印刷するパターンはブラックマトリクスの開口部の位置にドットとして印刷するのではなく、蛍光体が図107(a)に示す縦ストライプ状になるように印刷する。まず、一色目の蛍光体1302aを印刷する際に、そこに隣接するブラックマトリクスの縦ブラックストライプ(ブラックマトリクスの縦パターン)上にも、略半分程度はみだすように印刷を行なった(図106(b))。続いて2色目の蛍光体1302cを印刷する際に、隣接する縦ブラックストライプのうち、一色目の蛍光体1302aが乗っている部分に関しては、2色目の蛍光体1302cを重ねるようにし、もう一方の縦ブラックストライプ上には略半分程度はみだすように印刷を行なった(図106(c))。続いて3色目の蛍光体1302bを印刷する際には、隣接する縦ブラックストライプ状に乗っている隣接画素の蛍光体に重ねるようにして印刷した(図106R>6(d))。ここで、上述の第1の参考例と同様に蛍光体の膜厚が十分平坦にならないような場合には、充分な平坦度をもつ平板ガラスにイソプロピルアルコール(IPA)を吸収させた不織布をもうけ、これによりフェイスプレート上の蛍光体膜を加圧し平坦度を増してもよい。
ついで、この基板を450℃で、4時間焼成する事により、ペースト中に含まれる樹脂分を熱分解除去し、フェイスプレートを得た。このようにして作製したフェイスプレートの膜厚・表面粗さを蝕針式表面粗さ測定器により測定したところ、一画素中の蛍光体膜の平均高さと、そこに隣接するブラックマトリクスの上の蛍光体の平均高さの差が、蛍光体の平均粒径である7μmを超えるような場所は観測されなかった。また、このフェイスプレートを光学顕微鏡により観察したところ、ブラックマトリクス上は両隣の画素の蛍光体に覆われていた。
次に、参考例1と同様な方法でフェイスプレート上にメタルバック1303を作製し、フェイスプレートを得た(図105(e))。
以上のようにして作製したフェイスプレートを、前述の本構成の第1の参考例と同様にSEMで観察し、20μm×20μmの範囲にある接触部の数および接触面積を測定した。その結果を表7に示す。観察の結果、メタルバックの接触部が20μm×20μmの範囲で2ヶ所未満のところはなく、フェイスプレートに良好に接触している事が観察された。また、第1の参考例と同様に、放電開始電界強度を測定したところ、6.7kV/mmであった。
上記のフェイスプレートと前述の本第18の構成の第1の参考例で用いたものと同様のマルチ電子ビーム源を備えたリアプレートを用いて画像表示装置を作製したところ、画像表示装置の耐久性および信頼性を向上する事が出来た。
なお、ブラックマトリクス1301は図107(b)に示すような円形の開口を有するパターンとしてもよい。
(第19の構成)
表示パネルにおける真空容器部を構成するフェースプレート、枠部材、リアプレートの接合に、ポリフェニル化合物を含む高分子系熱可塑性接着剤を用いることができる。以下本構成の参考例を挙げる。
(参考例1)
図109(a)は、本第19の構成を適用する第1の参考例の表示パネルの概略構成を示す斜視図、図109(b)は図109(a)のC−C’断面図である。図109において、5001は電子源で、複数の電子放出素子を基板上に配置し、適当な配線を施したものである。5002はリアプレート、5003は外枠、5004はフェースプレート、5009、5014は接着剤である。5010は行選択用端子、5011は信号入力端子、5102は上配線、5103は下配線、5104は絶縁膜である。
図109(b)のC-C'断面図に示す様に、ポリフェニル化合物を有する高分子系熱可塑性の接着剤5009、5014を介して、リアプレート5002及びフェースプレート5004は、外枠5003との接合部において、それぞれ接合されている。フェースプレート5004の内側には、メタルバックと、蛍光体膜5007が配置してあり、さらにメタルバックが施されている。
接着剤を用いた接着は、ポリエーテルケトンを主成分とする高分子系熱可塑性のシート状の接着材5009,5014(テクノアルファ(株)製品名 ステイスティック451)を外枠の形状に成型し、設置した後、Arなどの不活性ガス(inert gas)中で350℃の加熱処理により接着剤を軟化させ、圧着(0.3kg/cm2)し、降温過程で接着剤を硬化することによって接着を行った。電子源5001などの内部構造体の固定も同様に行う。また、リアプレート5002とフェースプレート5004を配置する際には、同時に画像表示領域外にBaを主成分とする蒸発型ゲッタのリング状ゲッタ5016配置した。
なお、接着剤に含有させるポリフェニル化合物としてはポリビスフェノール−A、カーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルケトンなどを挙げることができる。
(参考例2)
本参考例は、上述の本第19の構成の第1の参考例の接着剤として、ポリスルホンを主成分とする高分子系熱可塑性のシート状の接着材5009,5014(テクノアルファ(株)製品名 ステイスティック415)を用い、加熱処理温度を300℃とした。この点が、第1の参考例とは異なる。
(参考例3)
本参考例は、上述の本第19の構成の第1の参考例の接着剤として、ポリエーテルを主成分とする高分子系熱可塑性のシート状の接着材5009,5014(テクノアルファ(株)製品名 ステイスティック401)を用い、加熱処理温度を250℃とした。この点が、第1の参考例とは異なる。
(参考例4)
本参考例は、上述の本第19の構成の第1の参考例の接着剤として、ポリスルホンを主成分とする高分子系熱可塑性のペースト状の接着材5009,5014(テクノアルファ(株)製品名 ステイスティック301)を用い、ディスペンサ塗布法で任意の形状にガラス部材にコーティングし、脱法し、150℃で溶剤を蒸発させたのち、加熱処理温度300℃で処理した。この点で、第1の参考例と異なる。
以上のように、外囲器の形成のための部材の接合部にポリフェニル化合物を含む接着剤を用いると、接着工程が熱処理温度が350℃以下の1回の接着工程となるので、低電力コストの、画像表示装置をはじめとする真空外囲器を提供することができる。
(第20の構成)
外囲器形成のための接合においては、接着部を2種の接着剤から形成することもできる。例えば、外囲器を主にシールする機能を有する材料と接着機能を有する材料とで接合部を接着形成することができる。このような目的において、接合部のシール機能を有するシール材としては、In、Al、Cu、Au、Ag、Pt、Ti、Ni等の金属あるいは合金、および表面にIn、Al、Cu、Au、Ag、Pt、Ti、Ni等の金属あるいは合金をコーティングした有機接着剤や無機接着剤等の材料等から選択することができ、接着機能を有する接着剤としては、ポリフェニル化合物を有する高分子系熱可塑性の接着材、ポリベンゾイミダゾール樹脂を主成分とする接着剤、ポリイミド樹脂を主成分とする接着剤等の有機接着剤、アルミナ、シリカ、ジルコニア、カーボンを主成分とする無機接着剤等があげられる。
シール材としてはIn、接着剤としてはジルコニアとシリカを主成分とする無機接着剤が最も好ましいものの一つとして用いられる。シール材としてInワイヤーを用いると、Inワイヤーを任意の形状に成型し、160℃以上で加熱することによりInを軟化させ、圧着し、降温過程でシールした後、アルミナを主成分とするペースト状の接着剤をディスペンサー等でシール材周辺に塗布し、100℃以下で水分を蒸発させてから150℃程度で接着することで、後述する(1)〜(6)の条件を満たすことができる。Inとアルミナを主成分とする無機接着剤を用いた接合材は、他の接合部に比べて特に最高熱処理温度が低い点が好ましい。
また、シール材としてジルコニアとシリカを主成分とするペースト状の無機接着剤をディスペンサー等で任意の形状に成型し、100℃以下で水分を蒸発させた無機接着剤表面上に、EBやスパッタ等の公知の真空蒸着法によりInよりなるコーティング膜を形成した後、160℃以上で加熱することによりInを軟化させ、圧着し、降温過程でシールした後、アルミナを主成分とするペースト状の接着剤をディスペンサー等でシール材周辺に塗布し、100℃以下で水分を蒸発させてから150℃程度で接着することで、下記(1)〜(6)の条件を満たすことができる。
(1)耐熱性:真空中ベーク(高真空形成)工程における耐熱性。
(2)シール性:高真空維持(真空リーク極小、ガス透過極小)可能(但し、真空維持が必要な個所のみ)。
(3)接着性:ガラス部材との接着性。
(4)放出ガス特性:低放出ガス(高真空維持)特性。
(5)熱処理温度:最高熱処理温度がフリット接着(封着)工程のおよそ400℃よりも低温である。
(6)成型性:任意の外枠形状に適合させやすく、接着温度付近で流動化しない。
さらに、シール材としてはAl、接着剤としてはポリエーテルケトンを主成分とする高分子系熱可塑性の有機接着剤を用いることができる。シール材であるAl、接着剤であるポリエーテルケトンを主成分とする、高分子系熱可塑性のシート状の有機接着剤を任意の形状に成型し、330℃以上まで加熱することにより接着剤を軟化させ、圧着し、シールさせ、降温過程で接着剤を硬化することによってに接着させることで、前述の(1)〜(6)の条件を満たすことができる。
上記のシール機能を有するシール材と接着機能を有する接着剤の少なくとも2つの部材を用いた接合部は、最高熱処理温度が400℃以下の接着工程であるので、低電力コストで、輝度低下や寿命短縮が少なく、さらには表示品位が高く、ゲッタ効果も充分な、画像表示装置をはじめとする真空外囲器を提供することができる。
また、接合部とガラス基板との密着性の向上のために、予め接合面へシール材と同様の金属または合金を真空蒸着し、あるいは同様の金属または合金を含んだ塗布材をスクリーン印刷、ディッピング、スプレー、ディスペンサ等の公知のコーティング法でコーティングしておくことは有効である。
以下本構成の参考例を挙げる。
(参考例1)
図110(a)は、本第20の構成を適用する第1の参考例の表示パネルの概略構成を示す斜視図、図110(b)は図110(a)のC−C’断面図である。本参考例のものは、外枠とフェースプレートおよびリアプレートとの接続構造が異なる以外は、前述の図10909(a)および図109(b)に示したものと同様の構成のものである。図中、同じ構成部には同じ符号を付している。
図110において、5214はシール材、5209は接着剤であり、これらにより、外枠5003とリアプレート5002及びフェースプレート5004とがそれぞれの接合部において接合されている。
接合は、Inワイヤーをシール材5214とし、Inワイヤーを任意の形状に成型し、160℃以上で加熱することによりInを軟化させ、圧着し、降温過程でシールした後、接着剤5209として、ジルコニアとシリカを主成分とするペースト状の接着剤((株)スリーボンド 製品名3715)を外枠の形状にディスペンサーでシール材周辺に塗布し、100℃以下で水分を蒸発させてから150℃程度で接着を行った。電子源5001などの内部構造体の固定も同様に行う。また、リアプレート5002とフェースプレート5004を配置する際には、同時に画像表示領域外にBaを主成分とする蒸発型ゲッタのリング状ゲッタ5016配置した。
(参考例2)
接合部のシール材として、ジルコニアとシリカを主成分とするペースト状の無機接着剤((株)スリーボンド 製品名3715)をディスペンサー等で任意の形状に成型し、100℃以下で水分を蒸発させた無機接着剤表面上にInをEBやスパッタ等の公知の真空蒸着法により蒸着してコーティング膜5015を形成したものを用いた。次に、シール材を160℃以上で加熱することによりInよりなるコーティング膜5015を軟化させ、圧着し、降温過程でシールした後、接着剤5009として、ジルコニアとシリカを主成分とするペースト状の接着剤((株)スリーボンド 製品名3715)を外枠の形状にディスペンサでシール材5214周辺に塗布し、100℃以下で水分を蒸発させてから150℃程度で接着を行った。
(参考例3)
本参考例は、リアプレート5002とフェースプレート5004と外枠5003のシール材と接触する部分に、EBやスパッタ等の公知の真空蒸着法によりInを蒸着し、前述した本第20の構成の第1の参考例の接合部として以下の接合部を用いた以外は、第1の参考例の工程と同様に行った。すなわち、本参考例の接合部として、シール材としてはAl、接着剤としてはポリエーテルケトンを主成分とする高分子系熱可塑性の有機接着剤が用いられる。シール材であるAl、接着剤であるポリエーテルケトンを主成分とする高分子系熱可塑性のシート状の有機接着剤を任意の形状に成型し、330℃以上まで加熱することにより接着剤を軟化させ、圧着し、シールさせ、降温過程で接着剤を硬化することによって接着させた。この手法によっても、前述の(1)〜(6)の条件を満たすことができる。
(参考例4)
本参考例は、前述した本第20の構成の第1の参考例の接合部として、以下の接合部を用いた以外は第1の参考例の工程と同様に行った。すなわち、本参考例の接合部は、シール材としてIn、接着剤としてポリスルホンを主成分とする高分子系熱可塑性のペースト状の接着材(テクノアルファ(株)製品名 ステイスティック301)が用いられる。Inワイヤーをシール材5214とし、Inワイヤーを任意の形状に成型し、160℃以上で加熱することによりInを軟化させ、圧着し、降温過程でシールした後、接着剤5209として、ポリスルホンを主成分とする高分子系熱可塑性のペースト状の接着材(テクノアルファ(株)製品名 ステイスティック301)を用い、ディスペンサーで任意の形状にガラス部材にコーティングし、脱法し、150℃で溶剤を蒸発させたのち、300℃以上まで加熱し、圧着し、降温過程で接着剤を硬化することによってに接着させて。この手法によっても、前述の(1)〜(6)の条件を満たすことができる。
(第21の構成)
フェースプレートに設けられたメタルバックは、通常ブラックマトリクスを介して隣接する多数の蛍光体層を覆うように設けられており、フェースプレートとリアプレートとの間隔が比較的狭いために、表示パネルの構成や駆動条件によってはメタルバックがリアプレート側へ引っ張られて剥離するという問題が生じる場合があった。そこで、本構成では、フェースプレートの外側部分に透明電極を設けることにより、そのような問題を回避している。
図111は、本構成を用いた表示パネルの斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。図111中、各構成部には、図27に示した符号と同じ符号を付している。
リアプレート1015、側壁1016、フェースプレート1017により表示パネルの内部を真空に維持するための気密容器を形成している。気密容器を組み立てるにあたっては、各部材の接合部に十分な強度と気密性を保持させるため封着する必要があるが、たとえばフリットガラスを接合部に塗布し、大気中あるいは窒素雰囲気中で、摂氏400〜500度で10分以上焼成することにより封着を達成した。また、上記気密容器の内部は10のマイナス6乗[Torr]程度の真空に保持されるので、大気圧や不意の衝撃などによる気密容器の破壊を防止する目的で、耐大気圧構造体として、スペーサ1020が設けられている。フェースプレート1017の下面には、蛍光膜1018が形成されている。本実施態様はカラー表示装置であるため、蛍光膜1018の部分にはCRTの分野で用いられる赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体が塗り分けられている。各色の蛍光体は、たとえば図112(a)に示すようにストライプ状に塗り分けられ、各色の蛍光体のストライプの間には黒色の導電体1010’が設けてある。
尚、本参考例では、各色の蛍光体(発光部材)の平均膜厚は20μm、黒色の導電体(黒色部材または非発光部材)の平均膜厚は6μmとした。
黒色の導電体1010’を設ける目的は、電子ビ−ムの照射位置に多少のずれがあっても表示色にずれが生じないようにする事や、外光の反射を防止して表示コントラストの低下を防ぐ事、電子ビームによる蛍光膜のチャージアップを防止する事などである。黒色の導電体1010’には、黒鉛を主成分として用いたが、上記の目的に適するものであればこれ以外の材料を用いても良い。また、3原色の蛍光体の塗り分け方は図112(a)に示したストライプ状の配列に限られるものではなく、たとえば図112(b)に示すようなデルタ状配列や、図114に示すような孔子状の配列であってもよい。
尚、フェースプレートの断面形状を、図175に模式的に示した。この様に、発光部材である各色の蛍光体の平均膜厚と、非発光部材である黒色部材1010’の平均膜厚とは異なる。
なお、モノクロ−ムの表示パネルを作製する場合には、単色の蛍光体材料を蛍光膜1018に用いればよく、また黒色導電材料は必ずしも用いなくともよい。
また、蛍光膜1018のリアプレート側の面には、CRTの分野では公知のメタルバック1019を設けてある。メタルバック1019には、蛍光膜1018が発する光の一部を鏡面反射して光利用率を向上させる事や、負イオンの衝突から蛍光膜1018を保護する事や、電子ビ−ム加速電圧を印加するための電極として作用させる事や、蛍光膜1018を励起した電子の導電路としての作用がある。メタルバック1019の作製は、蛍光膜1018をフェースプレート基板1017上に形成した後、蛍光膜表面を平滑化処理し、その上にAlを真空蒸着する方法により形成した。なお、Al以外の材料であっても、上記機能を有するものであればよい。
フェースプレートの上面(大気側面)には、図114に示すように、少なくとも、メタルバックが存在する領域に、ITOを材料とする透明電極1022を設けてある。この、透明電極1022は接地してある。これによって、マルチビーム電子源とフェースプレート1017上のメタルバック1019との間に数kV以上の高電圧(即ち、2kV/mm以上の高電界)を印加しても、メタルバックには、フェースプレート上面の透明電極1022からのクーロン力が働くので、メタルバックが剥れなくなり、画像表示時の放電が防止され、良好な表示画像を得ることができる。
また、図111及び図115に示されるような表示パネルを用いた画像表示装置において、各冷陰極素子(表面伝導型放出素子)1012には、容器外端子Dx1〜Dxm、Dy1〜Dynを通じ、走査信号及び変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加することにより電子を放出させ、メタルバック1019には、高圧端子Hvを通じて高圧を印加することにより放出電子ビームを加速し、蛍光膜1018に電子を衝突させ、各色蛍光体(R、G、B)を励起・発光させることで画像を表示した。各配線1013、1014間への印加電圧Vfは14[V]とした。高圧端子Hvへの印加電圧Vaは10[kV]である。
フェースプレートの表面に上述したような接地構造を持たない表示パネルにおいては、フェースプレートとリアプレートの距離が2mm、高圧端子Hvへの印加電圧Vaが8[kV]ないし10[kV]の条件で、メタルバックががれる例があった。
このように、本第21の構成によれば、メタルバックの目的である、電位の低下の防止、加速電極としての働き、蛍光体からの発光を鏡面反射することによる輝度の向上、蛍光体が負イオンの衝突によってダメージを受けることを防ぐ等を良好に果たすことができる。さらに加えて、フェースプレートの表面は透明電極を介して接地されているため、メタルバックがフェースプレートから剥れるのを防ぐことができた。
また、特に、フェースプレートの最表面に透明導電材料を露出させることにより、不要な帯電を抑制することができる。この様な透明導電材料としては、膜状の透明電極を用いればよい。この透明導電材料は、不要な帯電を抑制できる電位を与えればよいが、特に好適には、図114に示したように透明導電材料を接地する構成がよい。
(第22の構成)
フェースプレートからの高圧電源への引出し線にかかる構成としては以下の構成を利用できる。本構成を図116〜図119を用いて説明する。図116は、本第22の構成を適用する画像形成装置の構成の一例を模式的に示す分解斜視図である。図117は、図116のA矢視方向からみたアノード端子部の断面を示した部分断面図である。図118(a)〜図118(e)は、リアプレート基板の作製手順を模式的に示す工程図で、電子源領域の一部分を示している。図119は、リアプレートのアノード端子部周辺部を示した平面図である。
7001は電子源を形成するための基板を兼ねるリアプレート、7002は電子源領域で、電界放出素子、表面伝導型電子放出素子などの電子放出素子を複数配置し、目的に応じて駆動できるように素子に接続された配線を形成したものであり、電子源を駆動するために引き出した駆動用配線引き出し部7031,7032により画像形成装置の外部に取り出され、電子源の駆動回路(不図示)に接続される。7011は画像形成部材が形成されたフェースプレート、7012は電子源領域7002より放出された電子により発光する蛍光体よりなる画像形成部材、7100は画像形成部材7012に電圧を供給するために引き出されたAg等の引き出し配線、7004はリアプレート7001とフェースプレート7011に狭持される外枠であり、電子源駆動用配線引き出し部7003は外枠7004とリアプレート7001の接合部で、例えば低融点ガラス(フリットガラス201)に埋設されて外部に引き出される。リアプレート7001及びフェースプレート7011及び外枠7004の材料には、青板ガラス、表面にSiO2被膜を形成した青板ガラス、Naの含有量を少なくしたガラス、石英ガラスなど、条件に応じて各種材料を用いる。7101は外部の高圧電源より供給された電圧を導入するための導入線、7102は導入線7101をあらかじめAg−Cu、Au−Niなどのろう材料を使用し気密シール処理を施して柱状形状の中心に一体形成した絶縁部材である。絶縁部材7102の材料には、アルミナ等のセラミック、Na含有量の少ないガラスなどのリアプレート1材料の熱膨張係数に近い材料で、かつ、高電圧に耐える絶縁性を有する材料を用いる。これにより、高温度になった場合の熱膨張差による絶縁部材7102とリアプレート7001との接合部での割れを防止する。なお、このような構成をもつ高圧端子以外の構成でもよく、この構成に限定されるものではない。また、導入線7101と引き出し配線7100との接続を確実にするために、導入線7101と引き出し配線7100との間にAgペーストや機械的なばね構成などの接続部材を配置構成してもよい。7104は、気密導入端子7103を貫入するリアプレート7001に形成された孔である。気密導入端子7103とリアプレート7001に形成した貫通孔7104との間は、フリットガラス7201などの気密化が可能な接着部材にて固定する。なお、貫通孔7104は、リアプレートの駆駆動用引き出し配線7031,7032の形成されていない4隅で、かつ、外枠7004の内側に形成する。さらに、数kVの高電圧が導入線7101を通して印加された時の放電対策として、ガード配線7105を駆動用引き出し配線7301,7032の外側に形成することで、内部で放電が発生しても、ガード配線7105でガードされるため、駆動用引き出し配線7031,7032を通じて電子源領域へ放電電流が流れ、素子が劣化するなどのダメージが起こらない構成とすることができる。ただし、ガード配線からの導入線7101までの沿面距離を、1mm以上離した構成とするべきである。極端に、ガード配線との距離が近いと逆に放電の発生頻度を増加させることになるからである。
7005は真空化するための排気孔、7006は排気孔7005に対応する位置に配置されたガラス管で、不図示の外部真空形成装置に接続され、電子放出素子を形成する真空処理が終了後封止するためのものである。なお、真空装置内で画像形成装置を組立てる方法をとれば、上述のガラス管7006並びに排気孔7005は不要となる。
次に、図118を参照しながら本構成のマルチ電子ビ−ム源製造方法の一例を説明する。
まず、よく洗浄された基板上に金属材料からなる導電性薄膜を形成し、そのパターンをフォトリソグラフィーによって微細加工し、一対の素子電極221、222を多数形成する(図118(a))。次いで、列方向配線224を形成し(図118(b))、さらに切り欠き224cを有する層間絶縁膜224を形成する(図118(c))。続いて、行方向配線225を形成し(図118(d))、最後に導電性薄膜226を形成する(図118(e))。
以下本構成の参考例を挙げる。
(参考例1)
上述した本第21の構成を適用する第1の参考例を説明する。
画像形成部材7012を搭載した青板ガラス材料よりなるフェースプレート7011の一部に、画像形成部材7012の1隅から引き出したAg材料からなり、印刷により形成した引き出し配線7100を形成する。この引き出し配線7100の形成位置は、リアプレート7001に形成した貫通孔より導入される高圧端子の導入線と当接可能な位置とする。引き出し配線7100は、画像形成部材7012に重なるように印刷形成することで、電気的導通を確保した。また、画像形成部材7012は、ストライプ状の蛍光体、ブラックストライプ、メタルバックから構成され、蛍光体、ブラックストライプは、印刷により形成し、その後これらの上にAl膜を真空蒸着法によりメタルバックとして形成した。
リアプレート1とフェースプレート11に間には青板ガラス材料よりなる外枠7004が挟持されている。駆動用配線引き出し部7031,7032は、外枠7004とリアプレート7001の接合部で、日本電気硝子製のLS3081のフリットガラス201に埋設して外部に引き出した。導入線7101は426合金材料より形成した。導入線7101をあらかじめAg−Cuにてろう付けし、真空気密シール処理を施して柱状形状の中心にアルミナセラミック製の絶縁部材7102を一体形成した。貫通孔7104は、導入線7101を一体気密形成した絶縁部材102を導入するためのもので、この貫通孔7104の配置場所については、後述する。
リアプレート7001は、図116及び図119に示すように、4隅のみ配線が形成されない領域を有し、その1隅の、駆動用配線引き出し部7031,7032の一番外側の部分に、ガード配線7105が配置され、ガード配線7105から7mm離れたところに貫通孔7104が設けられている。この貫通孔7104と対向する位置にフェースプレート7011の引き出し配線7100が位置するように構成する。その組立てに際しては、フェースプレート7011の画像形成部材7012の不図示の蛍光体とリアプレート7001の電子放出素子とが相互に対応するように注意深く位置合わせする。また、気密導入端子7103及びガラス管7006を設置し、かつ上述の位置合わせがなされた状態で、不図示の加熱炉へ投入し420度の温度を付与し、フェースプレート7011とリアプレート7001と外枠7004の当設位置に配置したフリットガラス7201を溶解させる。その後、冷却させて組立てが終了する。この状態で、フェースプレート7011、リアプレート7001、外枠7004、ガラス管7006、気密導入端子7103が気密化可能なパネルとして形成できた。この後、ガラス管7006を介して不図示の真空排気装置に接続し、パネル内を排気し、フォーミング処理、活性化処理を各導電性薄膜226(微粒子膜)に対して行う。つづいて、パネル内の排気継続し、ベーキング処理を行い、真空パネル内に残留した有機物質分子を除去する。最後に、ガラス管7006を加熱溶着して封止する。以上の工程にて、真空パネルは完成する。
次に、駆動用配線引き出し部7031,7032を駆動基板と、又、ガード配線7105を外部のグランド端子とそれぞれ接続するために、FPC(フレキシブルプリンティッドサーキット)7401を、図119に示すような位置で外部のFPC実装装置を用いて電気的な接続及び固定を行う。この後、真空パネルの筐体への組み込みと電気ボードとFPCとの接続作業などを行い、画像形成装置が完成する。この際、気密導入端子7103の導入線7101と高圧電源との配線引き廻し処理は、真空パネルの裏面の隅から出ているために、FPC7401との干渉もなくスムーズに実装可能であった。
以上の画像形成装置にて、高電圧を供給し画像駆動回路と外部映像を入力し画像表示させたところ、長い時間放電などの影響もなく安定に画像表示できることを確認した。
以上の構成により、
(1)真空パネルを筐体モジュール化する際の高圧端子のケーブル処理(配線引き廻し)がしやすい。真空パネルの背面側に、駆動用の電気ボードを配置する時、高圧ケーブルの配置において、放電を考慮し空間距離をとる工夫を施す必要性があるが、隅にあると、空間を確保しやすいとともに、設計上の自由度も向上することができる。
(2)リアプレートにMTX配線を構成する際、対称設計が可能となるため、設計が行いやすいとともに、それを構成するための装置においても好都合である。
(3)隅には、駆動用の配線などがないたいことと、ガード配線を配置したことで、放電に対して有利である。
以上の長所をもつ画像形成装置を提供できた。
(参考例2)
図120〜図123を参照して本第2の参考例を説明する。図120は、本第22の構成を適用する画像形成装置の構成例を模式的に示す分解斜視図である。図121(a)〜図121(c)は、フェースプレートの引き出し配線の形成例を示す模式図である。図12222は、高電圧を供給する高圧電源部の構成を示すブロック図である。図123(a)〜図123(c)は、筐体の内部構造を説明する図である。図120および図121(a)〜図121(c)において、各構成部には、図116に示した符号と同じ符号を付している。
本参考例は、高圧端子を複数配置したものである。図120に示すように、2隅のリアプレート7001の貫通孔7104から2個の気密導入端子7103を配置して構成した。この場合のフェースプレート7011の構成は、図121(a)に示すように引き出し配線を2隅から引き出したパターンとなる。また、2隅の引き出し配線パターンはこれに限るものではなく、例えば図121(b)、図121(c)に示すように3隅ないし4隅に配置構成してもよい。なお、図120に示す構成において、前述した参考例と同様なものについては、その説明とそれらの構成、製造方法などを省略する。
上述の気密導入端子7103に高電圧を供給して画像を形成するためには、高圧電源が必要であり、それについての説明を図122および図123を参照して説明する。
図122において、701は高圧電源、702は制御回路、703は駆動回路、704はトランス、705は出力電圧を安定化するための電圧フィードバックを示す。図123は、筐体構造を説明する図であり、図123(a)は図121、図122に示した部材を装置内部へ組み込んだ表示パネルの外観図、図123(b)は、その表示パネルのA矢視方向からみた筐体内部の構成を示す断面図、図123(c)は、その表示パネルの筐体の背面板を取り除いてB矢視方向からみた構成図である。802は図122による表示デバイスの真空パネル、803は真空パネル802を駆動する駆動ボード、804は真空パネル802と駆動ボード803とを電気的に接続するFPC、805は高圧電源701と気密導入端子7103とを接続する高圧配線である。
画像形成装置内の不図示のDC電源から、高圧電源701内のトランス704へ電圧を入力する。入力DCはトランス704にて所望の電圧値に昇圧され、トランス704から高電圧が出力される。この電圧出力の際の電圧変動を抑制するために、電圧をフィードバック(705)し、制御回路702にて電圧を制御し、その制御された電圧が駆動回路703を通してトランス704へ送られる。本参考例で用いた電圧は、10kVで10mAの電圧出力とし、この電圧値を出力する高圧電源701を作製すると、高圧電源701のトランス704を1つのトランスで構成した場合、コアの直径で50mm程度のものになってしまうが、これを複数トランスで構成するとコアの直径を小さくすることが可能である。例えば、トランス704を2つのトランスで構成すれば、1つのトランスがうけもつ電流値を1/2とすることができるため、コアの外形直径寸法を30mm程度まで小さくすることができる。同様に、4つのトランスで構成すれば、1つのトランスがうけもつ電流値は1/4となり、その直径は25mm程度になる。すなわち、コアの直径を小さくすることで、トランス704、高圧電源701の薄型化が可能になる。例えば、図123(b)に示す画像形成装置801の断面構造では、高圧電源701が薄型化すれば、画像形成装置全体の奥行きを薄型化することができる。高圧電源701の配置場所は、筐体801の隅に気密導入端子7103を配置構成しているので、配線の引き廻しを考慮する必要がある。ここでは、図123(b)および(c)に示すように、筐体801の隅の気密導入端子7103の近傍に高圧電源701を配置構成した。
以上説明したように、高圧端子を複数真空パネルの隅に配置構成し、さらに高圧電源を複数構成したことにより、装置全体の薄型化に寄与することができた。また、複数の気密導入端子を配置したことで、輝度の勾配が減少した。このことは、大面積化に有利な構成といえる。
(参考例3)
図124(a)および(b)を用いて、本第22の構成を適用する第3の参考例を説明する。図124(a)は、フェースプレート側からみた真空パネルの平面図であり、図12424(b)は、図124(a)のA−A’方向からみた高圧端子構造部周辺の断面構造図である。なお、前述した各参考例と同様な各部には同一符号を付して、ここではその説明とそれらの構成、製造方法などは省略する。
本参考例では、フェースプレート側に高圧取り出し部を形成した構成となっており、図12424(a)および(b)に示すように、引き出し配線7100の配線幅中央部の位置においてフェースプレート900に直径1mmの貫通孔を形成し、引き出し配線7100と電気的導通を確保すると同時に、貫通孔の内周に導電部材901であるAgペーストを塗布し、その後、シール材料902となるフリットガラスで埋め込むことで真空気密性を確保した。この構成によれば、リアプレート7001側に形成される印刷配線などの電極体との沿面距離を確保できるため、放電に対して有利である。
(第23の構成)
高圧電源用の引出しの構成については、放電が発生した場合に高圧引き出し線との接続部分の抵抗が高いと発熱により、脱ガスして2次的な放電が起るという問題がある。この問題に対しては、接続部分の抵抗を低くすることにより発熱が抑えられ、2次放電を抑制できる。高圧引き出し配線と中継導電膜との接続長、またメタルバックと中継導電膜との接続長を長く取る、あるいは中継導電膜のシート抵抗をさげることにより、接続部分の抵抗を下げることができる。接続長を変えて2次的な放電の起る頻度を評価したところ、中継導電膜層と高圧引き出し配線との接続長W1[mm]、および中継導電膜層とメタルバック層の接続長W2[mm]の何れも、中継導電膜層のシート抵抗r[Ω/□]に対して
W1、W2>(2.5×r)1/2(1)
を満たす接続長を採ることにより、2次放電を抑えられた。
以下本構成の参考例を示す。
(参考例1)
図125(a)〜(g)に高圧電源用の引出し配線の作製工程を示す。
まず、引き出し配線4021を印刷法により作製する(図125(a))。配線は銀ペーストによる配線でシート抵抗が0.1Ω/□以下となるように作製した。次に、中継導電膜4025を同じく印刷法により作製した(図125(b))。導電膜にガラスペーストにカーボンを混合したものを用い、厚さ2μmとなるように作製した。その際の中継導電膜4025のシート抵抗は50Ω/□であった。中継導電膜の接続長Wは式(1)を充分満たすようにW=150mmとした。次に、絶縁性のブラックストライプ4022を同じく印刷法により作製した(図125(c))。ブラックストライプ4022の厚さは3μmとした。次に、RGBの蛍光体層4008を同じく印刷法により作製した(図125(d))。用いた蛍光体はP22系の蛍光体で、RGB共に平均粒径5μmのものを用いて、厚さ15μmの蛍光体層4008とした。次に、コロイダルシリカ、界面活性剤などを含んだ水溶液を蛍光面上に塗布し、まず蛍光体層4008の凹凸部を湿潤させ、ついでポリメタクリレートを主成分とした樹脂を可塑剤とともにトルエン、キシレン等の非極性溶媒中に溶解させ、これを蛍光面上にスプレーし、蛍光体凹凸上にo/w型の小滴を載せ、スピンコートにより延伸させた後、水分と溶剤成分を乾燥除去して厚さ3μmのフィルミング膜4028を作製した(図125(e))。次に、画像領域のみに開口を持ったアルミ蒸着用マスク4029を被せて、1000Å厚のアルミをフィルミング膜4028上に蒸着した(図125(f))。最後に、この基板を焼成炉内で450℃まで1℃/minの昇温速度にて昇温させ、30分間この温度を維持した後、−2.5℃/minの降温速度で冷却させ、樹脂中間層を熱分解除去した(図125(g))。フィルミング樹脂4028除去後に、メタルバック層4009は蛍光体層4008、ブラックストライプ層4022、中継導電膜層4025に覆い被さるようにして接触する。
(参考例2)
図126(a)は電極部の平面図、図126(b)は図126(a)のF−F’断面図である。図中、前述の図125(a)〜(g)に示した構成と同様のものには同じ符号を付している。
中継導電成膜4025は膜厚3μmの黒色銀系配線で、そのシート抵抗は0.5Ω/□である。中継導電膜4025とメタルバック4009との接続長W2は、式(1)を十分満たすように5mmの長さを採っている。高圧引き出し配線4021は直径2mmのタングステンワイヤで、電子源基板4004を貫通して、中継導電膜4021に押し当てて接触をとっている。接触部分の直径は1.8mmであるので、高圧引き出し線4021と中継導電膜4025との接続長W1はその円周5.7mmとなり、式(1)を十分満たす。画像領域およびスペーサ4020から中継導電膜4025までの距離Lを12mmとした。
中継導電膜4025、絶縁性ブラックストライプ4022、蛍光体層4008、メタルバック層4009の作製方法は上述の本第23の構成の第1の参考例と同様である。
(参考例3)
次に、別の参考例について説明する。本参考例では中継導電膜4025を白色銀配線で作製した。また、本参考例では、中継導電膜4025の下地膜として絶縁性ブラックストライプ4022を中継導電膜まで延長した。これにより、白色銀配線を用いても、画像表示面側からは黒色帯の縁取りしか見えず、画像への妨害感は感じられなかった。中継導電膜材料としては、上述した参考例で使用したもの以外に、酸化ルテニウムを含む導電膜を使用することもできる。
(参考例4)
本参考例では、前述の本第23の構成を適用する第1の参考例と同様にして形成したフェースプレートを、基板上に複数の電子放出素子を配列形成した電子源と対向させた画像形成装置を作製した。図176(a)は本参考例の電極部の平面図、図176(b)は図17676(a)のF−F’断面図である。図中、前述の図125(a)〜(g)に示した構成と同様のものには同じ符号を付している。
本参考例では、透明基板4023上に形成される中継導電膜4025を帯状とし、メタルバック4009の1辺とほぼ同等の長さに形成した。W1は引き出し配線4021と中継導電膜4025との接続長、W2はメタルバック4009と中継導電膜4025との接続長である。図176(a)から分かるように、本参考例では、中継導電膜4025とメタルバック4009との接続長W2を長くとった。その結果、放電を発生させた場合においても、中継導電膜付近での2次的な放電はみられなかった。
(第24の構成)
フェースプレートとリアプレート、特に電子源基板との関係については以下の構成を用いることができる。
まず、これらの関係については、以下のような課題があった。従来の画像形成装置においては、電子源から放出される電子が画像形成部材の蛍光体に衝突することによって発光する現象を利用しているが、これに伴う以下のような問題点が発生していた。
問題点(1):陰極周辺領域の電極配置に伴う電界集中。
問題点(2):陽極周辺領域の絶縁部材の帯電(反射電子による帯電)。
問題点(3):陰極周辺領域の絶縁部材の帯電(正電荷粒子による帯電)。
以上の撹乱作用により、周辺の領域に局所的な帯電が生じ、ビーム軌道に歪みを与えたり、放電を誘発し電子線放出素子の絶縁耐圧を低下させる原因となっていた。上記問題点を以下に具体的に説明する。
問題点(1):
電子線放出装置は、巨視的にみて一組の陰極、陽極からなる平行平板キャパシタとみることができる。陰極陽極間間隙の周囲を除いた大部分は平行電場が形成され、電界分布は、基本的に均一であるが、陰極陽極の周辺領域は、平行電場が崩れ、電界集中点が、金属、絶縁境界すなわち電位基底部と基板境界に発生する。
電界計算結果によると、陽陰極が同一面積構成では、陽陰極間隙の内部空間の電界に対して、電位基底部と基板の境界の電界は約1.3倍の大きさとなる。電界放出は、一般的に、陰極・陽極で対称ではなく、陰極側からの電子放出がより発生しやすい。このため、上記の幾何学的配置に伴う電界集中は、陰極・基板境界からの電子の電界放出として捉えられる。上記電界放出が誘発された場合は、電子線放出装置の基板帯電にともなうビーム軌道ずれと局所的放電の発生原因の一つとなるが、この境界領域の電界集中は、陰極上の電子線放出素子の放出・非放出とは独立に、陽極への加速電圧の印加により生じるため、電子源の非選択期間により緩和することができないなどの問題も生じていた。
問題点(2):
問題点(2)を図127を参照して説明する。図127において、画像形成装置は、陽極としてメタルバック610が形成されており、画像形成領域には蛍光体とブラックストライプからなる画像形成部材606が形成された構成となっている。このような平板型電子線放出素子の画像表示装置においては、図127に示したように電子線の衝突により可視光を発する蛍光体とブラックストライプからなる画像形成部材606と光反射層であるアルミ製のメタルバック610に照射された電子ビームのうちおよそ5〜20%が後方散乱(後方散乱電子線e-)され、電界により高圧印加されたメタルバック610に再突入する。さらに、この後方散乱電子線の一部は、ガラス等の絶縁物からなるフェースプレート605、側壁部609を衝撃し、二次電子放出や吸着ガス脱離によるガス放出が生じる。絶縁物の二次電子放出効率にしたがって、入射電子電流量に対して(δ−1)倍の正電荷が絶縁体であるガラス中に発生する。絶縁体の低い導電性により発生した電荷が蓄積され、フェースプレートの局所的帯電となり、電界を撹乱してしまう。この電界の撹乱により、所望の電子線軌道が得られなくなってしまい、色ずれ等を生じる場合が合った。また、吸着ガスが放出されると、電子なだれにより放電が生じやすくなり、リアプレート601側の電極や配線など(603、604)、更には電子放出素子602へ損傷を与えることがあった。
問題点(3):
電子の画像形成部材への衝突の際の反応や、装置内部の雰囲気ガスを電離することにより正イオンが発生する。この正イオンは、加速電極により電子源と画像形成部材との間に生じた電界により電子源から放出された電子とは反対方向に加速され、電子源上に到達する。一方、電子源には、電子放出素子の素子電極のパターニングに必要な絶縁部分が多く存在している。そのため、電子源に到達した正イオンが電子源の絶縁部分に帯電すると、電子放出素子から放出される電子は、帯電した絶縁部分の方向に曲げられて軌道がずれ、発光位置のずれなどの問題が生じる。また、帯電電荷によって放電等が引き起こされる確率が高くなり、装置の信頼性や寿命も損なわれてしまう。
以上のような問題点より発生する電界の撹乱や放電は、平板型画像形成装置において、高精細化/高色純度、さらには信頼性に関わる大きな問題点であった。
本出願人は、表面伝導型電子放出素子を用いた画像形成装置をより簡単な構成で実現する方法として、複数本の行方向配線と複数本の列方向配線とによって、表面伝導型電子放出素子の対向する1対の素子電極をそれぞれ結線することで、行列状に、多数個の表面伝導型電子放出素子を配列した単純マトリクス型の電子源を構成し、行方向と列方向に適当な駆動信号を与えることで、多数の表面伝導型電子放出素子を選択し、電子放出量を制御し得る系を考案している。このような、表面伝導型電子放出素子を用いた単純マトリクス型の画像形成装置においても、同様に絶縁性部材の表面に帯電が生じ、電子軌道に影響が出るおそれがある。上述した電子の軌道がずれるという問題は、電子被照射部材として蛍光体を用いていない電子線放出装置においても画像形成装置と同様に発生する。
そこで、本構成では、最小限の範囲を電位規定することで、陰極側絶縁部の帯電および周辺部の電界放出および陽極絶縁部の帯電を防止し、放出電子軌道の安定と放電を抑制した高耐圧な電子線放出装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
以下に述べる構成を用いることにより、最外周部の陰極・第2基板境界部の電界放出が抑制され、局所的な帯電もなく、さらには、最外周縁部の電子放出素子を駆動した際にも、蛍光体等の画像形成部材にて後方散乱された電子線が絶縁物であるフェースプレート、側壁部等の画像形成部外に入射することもない。さらに加えて、加速電極下の蛍光体から正電荷粒子の離脱にともなう陰極の帯電も抑制される。これらにより、電界に撹乱を与える帯電や電極や電子放出素子に損傷を与える放電等が激減し、平板型画像形成装置の、高精細/高色純度、さらには信頼性/安全性が向上する。
本構成の一例を、図128を参照して説明する。図128は、本構成の電子線放出装置を応用した画像形成装置の斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。図129は、図128に示した画像形成装置をY方向から見た断面を模式的に示した図である。
図129において、リアプレート11002には、複数の表面伝導型の電子放出素子11015がマトリクス状に配列された電子源11001が固定されている。電子源11001には、ガラス基板11006の内面に蛍光膜11007と加速電極であるメタルバック11008が形成された、画像形成部材としてのフェースプレート11003が、絶縁性材料からなる支持枠11004を介して対向配置されており、電子源11001とメタルバック11008との間には、不図示の電源により高電圧が印加される。これらリアプレート11002、支持枠11004およびフェースプレート11003は互いにフリットガラス等で封着され、リアプレート11002と支持枠11004とフェースプレート11003とで外囲器を構成する。
また、陰極側基板すなわち電子源11001の表面には、各電子放出素子11015およびそれらを電気的に接続する配線を除く部位の所定の範囲(図128中、破線で示した範囲)にSnO2膜からなる電位規定膜が形成され、この範囲内が電位規定部11009となっている。陰極側の電位規定部11009は、図129に示すように、メタルバック11008と電子源11001との間の距離をdとし、陽極側の電位規定部であるメタルバック11008上において各電子放出素子11015から放出された電子が実際に照射される最大の領域をA、陽極側電位規定部すなわちメタルバックの敷設された領域をB、陰極側電位規定領域をCとしたとき、この領域Bの最外郭から電子源11001に向かって垂線を下ろし、この垂線で囲まれた領域よりも電子源11001の面に平行ないずれの方向にもdだけ大きい領域Cに位置する。すなわち、図129に示した領域E(領域A、B、C、E、Fは、それぞれ図128におけるX方向の線分で示されているが、Y方向についても同様に考える)のX方向およびY方向の長さがdということである。さらには、陽極側の電位規定部11008は、各電子放出素子11015から放出された電子が実際に照射される最大の領域である領域Aの最外郭から、陽極として電位規定された面に平行ないずれの方向にも2αdだけ大きい領域に位置する。すなわち、図129に示した領域FのX方向およびY方向の長さが2αdということである。本参考例では、電子源11001とメタルバック11008との間の距離dを5mmとし、αは0.6mmとした。
次に、本参考例の動作について説明する。
各電子放出素子11015に、容器外端子Dox1〜DoxmとDoy1〜Doynを通じて電圧を印加すると、電子放出素子11015から電子が放出される。それと同時にメタルバック11008(あるいは不図示の透明電極)に高圧端子Hvを通じて5kVの高電圧を印加して、電子放出素子11015から放出された電子を加速し、フェースプレート11003の内面に衝突させる。これにより、蛍光膜11007の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示される。
蛍光膜11007は、例えば、図130(a)に示すように、赤(R)、緑(G)、青(R)の各色が順次配置されてなるストライプパターンの蛍光体11007aを有し、これらの間に黒色導電材11007bを配した構成としてもよい。また、図130(b)に示すように、千鳥状に円形開口が設けられた黒色導電材11007bの各開口に赤(R)、緑(G)、青(R)の各色に対応する蛍光体11007aが配置された構成としてもよい。
ところで、本参考例を含む陽極に加速電極を備えた平面型の画像形成装置においては、発光輝度を確保するために加速電圧を大きくすることが要求される。したがって、陽極のメタルバック11008と陰極の電位規定部11009の間に印加される電圧は、大きい場合には20kV程度にもなり、陽極陰極の間隙の平行電場が形成されている領域の電界は1kV/cm〜数十kV/cmにも達する。しかしながら、こうした、陽極陰極の最外殻領域は、両電極の間隙のような空間的な対称性が崩れるため、電場が平行からずれ曲げられた状態となる。とくに、陽極陰極と絶縁部材との境界領域は電界集中がおこり、局所的に内部の間隙のほぼ1.3倍の電界の集中が生じる。また、通常電界集中に伴う電界放出が問題となるのは、ほとんどの場合、陰極側からの電子放出である。したがって、陰極終端側からみた陽極の電圧印加部分が直上になく、陽極が相対的に陰極よりも小さい構成をとれば、陰極側終端の電界集中が緩和する。さらには、陽極終端部が陰極終端部よりも陰極への射影面内において内側すなわち電界印加領域側に少なくとも陽陰極間距離dだけ引き込んだ構成をとれば、終端部の陽極陰極間距離は実質的に1/√2だけ抑制され、陰極側の電界集中が問題とならないレベルまで緩和させることが可能となる。もちろん、陽陰極の終端部の投影境界の差として、dよりおおきく確保しても陰極側の電界集中が緩和されていれば差し支えない。
次に、本参考例の陽陰極の配置のより好ましい構成を図131を参照して説明する。図13131は、フェースプレートの主要部の拡大断面図である。図131において、12005は導電性向上のため設けられた透明導電膜であるITO膜12011とアルミニウム薄膜のメタルバック12010で覆われた蛍光体12006がパネル内側に設置された青板ガラスからなるフェースプレートである。最外周縁部の電子放出素子12002から放出された一次電子が入射方向からθの角度で後方散乱され、後方散乱電子が平行電界により再加速されている様子を模式的に表している。dはフェースプレート12005とリアプレート12001の間隔であり、実質的に陽極・陰極間の距離に等しい。Fは一次電子線が照射される蛍光体12006の周縁部から、導電体であるメタルバック12010とITO膜12011の端部までの距離を表している。
図131に示すように、一次電子線が入射するアルミメタルバック12010上の点を原点にとり、x軸、y軸を図の通りに考えると、後方散乱角θで後方散乱した電子線の軌道は、
となる。ここに、v0は後方散乱電子線の後方散乱直後の速度の絶対値、e、mはそれぞれ、電子の電荷、質量である。Ey、tはy方向電界強度と時間である。なお、ここでは平行電場を仮定しており、x方向の電界強度Exは0としている。
次に、電子線が電界に再加速されて、着地(y=0)するまでの距離x(θ)=Fを求める。そのために、次の関係を用いて、上式に代入、変形すると、
となる。ここで、α、Vaはそれぞれ、一次電子線と後方散乱電子線のエネルギー比、フェースプレートに印可された一次電子線の加速電圧である。αは一次電子線が入射する部材の材質、形状、構成等に大きく依存し、一般にα=0.6〜1である。Fはθ=π/4にて、次式で表される最大値をとり、F=2αdすなわち、周縁部で生じた後方散乱電子線は周縁部から、最大2αdの距離に再着地することがわかる。
以上の考察に基づき、画像形成部の周縁部から2αd以上に導電体を配し、さらにその外側に側壁部を配置することにより、後方散乱電子線が画像表示エリア外のガラス等の絶縁部や側壁部に衝突することがなくなる。そして、二次電子放出やガス放出等に伴う帯電や放電が減少し、平板型画像形成装置の高精細化/高色純度化、そしてデバイスとしての信頼性が向上する。
次に、本構成の陽陰極の配置のさらなる好ましい構成の説明のために、リアプレート構成の拡大詳細図として図131を用いて説明する。電子放出部12002から放出された電子がフェースプレート12005の内面に衝突することにより蛍光体12006が発光するが、この発光現象以外に、蛍光膜12006やメタルバック12010に付着した粒子が電離・散乱される現象が生じる。この散乱粒子のうち、正イオンはメタルバック12010に印加される電圧により電子源12003側に向かって加速され、電界に対して垂直方向の初速度に応じて放物線軌道をとって飛翔する。
ここで、電子源12003とメタルバック12010との間の電位差をVa、正イオンの水平方向の初期運動エネルギーの最大値をeVi[eV]、正イオンの質量m[kg]電荷量+q[C]垂直方向への初速度をVin、水平方向のへの初速度をVitとしたとき、メタルバック12010の表面に発生した正イオンが距離dだけ離れた電子源12003に到達するまでに要する時間tと電子源12001の面に平行な方向への移動距離ΔSは、
で表わされる。このとき、正イオンの条件としての最大到達範囲は、下記条件(4)、(5)で与えられ、
このとき、
となる。なお、本参考例では、メタルバック12010と蛍光体12006とをあわせた厚さは約50μm以下であるので、電子源12001とメタルバック12010との距離dを、リアプレート12001とフェースプレート12005との距離としても実用上は差し支えない。
仮に、メタルバック12010の表面で発生した正イオンが、メタルバック12010に印加された電圧によるエネルギーの全てを受けて電子源12003の面と水平な方向に飛び出したとすると、この正イオンが電子源12003に到達するまでの移動距離ΔSは、(6)式においてViにVaを代入し、
ΔSmax=2d(7)
となる。
すなわち、メタルバック12010の、実際に電子が衝突する位置から電子源12003の面に対する垂線を延ばし、電子源12003の内面上において、この垂線の電子源12003との交点を中心とする半径2dの範囲内が、メタルバック12010の表面で発生した正イオンが到達する可能性のある部位である。
したがって、少なくとも(7)式を満たす範囲内を電位規定しておけば、メタルバック12010の表面で発生した正イオンの飛翔方向に電位不定面が存在せず、電子源12001が帯電することがなくなる。本参考例では、上述したように陰極側電位規定部を陽極側電位規定部から水平にかつ外側に少なくともd、さらに、陽極側電位規定部を電子被照射領域から同じく水平にかつ外側に少なくとも1.2d離れた所まで配置しているため、陰極側電位規定部は被照射領域から2.2d外側にまで形成されていることになり、結果的に、この電位規定部の範囲は(7)式を満たしている。もちろん、電位規定部の大きさを上述した範囲よりも大きくしても、(7)式を満たす範囲内が電位規定されていることになるので差し支えない。
また、電位規定部を構成する電位規定膜の抵抗値は比較的高いが、電位規定部全体に対する電位規定膜の面積の比率は30%以内であり、他の部分は金属からなる電極等、抵抗値が十分に低い導電材で覆われているため、電位を規定するには十分である。すなわち電位規定部は、その全てが抵抗値が低い導電材で構成される必要はなく、抵抗値が低いものと高いものとを組み合せて構成してもよい。この場合、電位規定部の面積のうち50%以上を表面抵抗値が1×10の5乗Ω/□以下の導電材で構成し、残りの部分を表面抵抗値が1×10の12乗Ω/□以下の導電材で構成することが好ましい。
以上説明したように陰極側基板上に電位規定部を設けることで、フェースプレート12005の内面の帯電が発生しなくなるので、電子放出部12002から放出された電子の軌道が安定し、位置ずれのない良好な画像が得られた。また、放電等が引き起こされる確率も極めて低くなり、信頼性の高い画像形成装置が得られた。
通常、電子放出素子の対の素子電極12016、12017間の印加電圧は12〜16V程度、メタルバック12010と電子源12001との距離dは2mm〜8mm程度、メタルバック12008の印加電圧Vaは1kV〜10kV程度である。本参考例では、対の素子電極12016、12017間の印加電圧は14V、メタルバック12010と電子源12001との距離は上述したように5mm、メタルバック12008の印加電圧Vaは5kVとした。
なお、本構成における電位規定部は、例えばX方向及びY方向での素子電極の配置ピッチからなる微小領域中の基板よりも抵抗が小さく電位が規定されている部分の割合が30%以上の領域として認識することができる。
(第25の構成)
フェースプレートとリアプレートとの関係については、フェースプレートよりもリアプレートを大きくする構成をとることができる。例えば、リアプレートのサイズは、900mm×580mm、フェースプレートサイズ850mm×530mmを使用することができる。
表面伝導型電子放出素子を、基板を兼ねるリアプレート上に複数形成し、マトリクス状に配線して電子源を形成し、これを用いて画像形成装置を作製した。図132は、その一例である画像表示装置の正面図である。図132において、13101は電子放出素子を構成した青板ガラスからなるリアプレート、13105は電子放出部、13109はメタルバック及び蛍光体が形成された青板ガラスからなるフェースプレート、13111は外枠、13403はX方向配線、13406はY方向配線、13316は画像表示装置を駆動するための駆動用プリント基板、13206はX、Y方向配線13403,13406とプリント基板13316とを接続するFPCである。なお、配線の取り出しは、例えば画像表示部が10インチ角の場合は3方向から、30インチ角の場合は4方向からとすることができる。次に、本構成の参考例を挙げる。
(参考例1)
図132には、画像表示装置にFPCとプリント基板を接続した状態で、FPCを分割した状態が示されているが、一括FPCとしてもよい。
まず、リアプレート13101の外部取出し配線であるX方向電極配線13403のFPC13206を接続する位置にACFを貼り付ける。次に、リアプレート13101のX方向電極配線13403とそこからプリント基板までを接続するのに必要なFPC13206を、接合する位置にセットし、X方向電極配線13403の位置合わせを行い一致させる。FPC13206のFPC電極13207とリアプレート13101のX方向電極配線13403が一致したところで、FPC13206と画像表示装置を熱圧着ツールの下に移動させる。その後、熱圧着ツールを降ろしてFPC13206とX方向電極配線13403をACFによって熱圧着させ、FPC13206とX方向電極配線13403の接合を完了した。このように、FPC13206とX方向電極配線13403の接合を完了し1辺の接合を行った。それをリアプレート13101のX方向電極配線13403、Y方向電極配線13406の必要な4辺について行った。その後、リアプレート13101に接合されたFPC13206についているコネクタ(不図示)を、プリント基板13316のコネクタ部にさし込み、リアプレート13101とプリント基板13316の接続が完了した。この画像表示装置のX方向配線には14Vの任意の電圧信号を、Y方向配線には7Vの電位を与え、フェースプレートのメタルバックに5kVのアノード電圧を印加したところ、放電のない任意の良質な画像を表示することができた。
以上のように作製した画像表示装置は、リアプレートのみに外部取出し電極を持つため、通電処理時にリアプレートのみにプローバー等を上から落して処理することができるため、容易に電極に電圧や電流を流すことができる。この手法によれば、電極部の接触不良がほとんどなくなるため、均一な画像を作製することができる。
また、FPCの接合時に、画像表示装置を反転することなく接合ができるため、反転による画像表示装置の保持方法の煩雑や割れの危険がなく、接合時の時間が短縮できる。また、反転無しの接合と比較して、接合装置が単純で容易なため不良がほとんどない接合ができる。
(参考例2)
本第25の構成を適用する第2の参考例を以下に説明する。
本参考例のフェースプレートサイズは、900mm×580mm、リアプレートサイズは850mm×530mmを使用した。このフェースプレート、外枠、リアプレートを使用してパネルを作製するが、一部のパネルの作製方法については前述の本構成の第1の参考例と同様であるので、ここでは異なる部分のみを述べる。
図133は、その一例である画像表示装置の正面図である。図中、図132の構成と同じものには同じ符号を付している。図133において、13201は電子放出素子を構成した青板ガラスからなるリアプレート、13105は電子放出部である。
まず、基板に前述の電子放出部13105を形成しておく。また、画像表示装置のフェースプレートの内側表面には、あらかじめ蛍光体を塗布し、さらに蛍光体の表面に導電性を持たせたメタルバックを形成しておく。
このフェースプレート、外枠、リアプレート13201、排気管(不図示)等に低融点ガラスを塗布し、フェースプレートの位置とリアプレートとの位置合わせを行なった後、治具等により固定して電気炉にいれて低融点ガラスの融点以上の温度に加熱し、接合し機密容器を完成させる。その後、配線を通してプローバーによって通電処理を行い、最後に排気管を封止する。
次に、上記のようにして作製した画像表示装置の外部取出し配線とFPCとを接続させる方法を説明する。
図133には、画像表示装置にFPCとプリント基板を接続した状態が示されている。まず、フェースプレートを下にして、圧着装置上にセットする。次に、リアプレート13201の外部取出し配線であるX方向電極配線13403にACFを、FPC13206を接続する位置に貼り付ける。次に、リアプレート13201のX方向電極配線13403とそこからプリント基板までを接続するのに必要なFPC13206を、接合する位置にセットし、X方向電極配線13403の位置合わせを行い一致させる。FPC13206のFPC電極13207とリアプレート13201のX方向電極配線13403が一致したところで、FPC13206と画像表示装置を熱圧着ツールの下に移動させる。その後熱圧着ツールを降ろして、FPC13206とX方向電極配線13403をACFによって熱圧着させ、FPC13206とX方向電極配線13403の接合を完了した。このように、FPC13206とX方向電極配線13403の接合を完了し1辺の接合を行った。それをリアプレート13201のX方向電極配線13403、Y方向電極配線13406の必要な4辺について行った。その後、リアプレート13201に接合されたFPC13206についているコネクタ(不図示)を、プリント基板13316のコネクタ部にさし込み、リアプレート13201とプリント基板13316の接続が完了した。この画像表示装置のX方向配線には14Vの任意の電圧信号を、Y方向配線には7Vの電位を与え、フェースプレートのメタルバックに5kVのアノード電圧を印加したところ、放電のない任意の良質な画像を表示することができた。
以上のように作製した画像表示装置は、上述の本構成の第1の参考例と異なり、通電処理時、FPC接合時にフェースプレートを下にしてセットして処理を行うことになるが、セットする時にリアプレートを下かフェースプレートを下にするかの違いだけで、特に工程に差が生じることはない。このように、フェースプレートのみに外部取出し電極を持つため、通電処理時にフェースプレートのみにプローバー等を落して処理を行うことができるため、容易に電極に電圧や電流を流すことができる。この手法によれば、電極部の接触不良がほとんどなくなるため、均一な画像を作製することができる。
また、FPCの接合時に、画像表示装置を反転することなく接合ができるため、反転による画像表示装置の保持方法の煩雑や割れの危険がなく、接合時の時間が短縮できる。また、反転無しの接合と比較して、接合装置が単純で容易なため不良がほとんどない接合ができる。
(参考例3)
本第25の構成を適適用する第3の参考例を以下に説明する。
本参考例のフェースプレートサイズは300mm×250mm、リアプレートサイズは350mm×300mmとした。まず、前述の本第25の構成の第1の参考例と同様に、リアプレート13101に電子放出部13105や電極を形成しておく。また,画像表示装置のフェースプレート13109の内側表面には、あらかじめ蛍光体を塗布し、さらに蛍光体に表面に導電性を持たせたメタルバックを形成しておく。このフェースプレート13109、外枠13111、リアプレート13101、排気管(不図示)等に低融点ガラスを塗布し、フェースプレート13109の位置とリアプレート13101との位置合わせを行なう。リアプレートとフェースプレートの1辺又は2辺の端面を一致させるように位置合わせを行い、治具等により固定する。リアプレートとフェースプレートの1辺の端面を一致させた状態を図134(a)に示し、リアプレートとフェースプレートの2辺の端面を一致させた状態を図134(b)に示す。治具等により固定した後、電気炉にいれて低融点ガラスの融点以上の温度に加熱し、接合し機密容器を完成させる。
次に、このフェースプレート、外枠、リアプレートを使用してパネルを作製するが、一部のパネルの作製方法については、前述の本第25の構成の第1の参考例と同様であるので、ここでは異なる部分のみを述べる。
図135は、その一例である画像表示装置の正面図である。図中、前述の各参考例で述べた構成と同様のものについては、同じ符号を付している。各構成部を前述の本第25の構成の第1の参考例と同様にして作製した後、配線を通してプローバーによって通電処理を行い、最後に排気管を封止する。この作製した画像表示装置の外部取出し配線とFPCとの接続を以下のようにして行う。
図135には、画像表示装置にFPCとプリント基板を接続した状態が示されている。まず、フェースプレート13201の外部取出し配線であるX方向電極配線13403にACFをFPC13206を接続する位置に貼り付ける。次にリアプレート13101のX方向電極配線13403とそこからプリント基板までを接続するのに必要なFPC13206を、接合する位置にセットし、X方向電極配線13403の位置合わせを行い一致させる。FPC13206のFPC電極13207とフェースプレート13201のX方向電極配線13403が一致したところで、FPC13206と画像表示装置を熱圧着ツールの下に移動させる。その後、熱圧着ツールを降ろしてFPC13206とX方向電極配線13403をACFによって熱圧着させ、FPC13206とX方向電極配線13403の接合を完了した。
このように、FPC13206とX方向電極配線13403の接合を完了し1辺の接合を行った。それをフェースプレート13201のX方向電極配線13403、Y方向電極配線13406の必要な3辺について行った。このFPC接合は、図136に示すように、X方向電極配線13403、Y方向電極配線13406の各1辺のみ(合計2辺)をFPC接合してもよい。その後、フェースプレート13201に接合されたFPC13206についているコネクタ(不図示)をプリント基板13316のコネクタ部にさし込み、フェースプレート13201とプリント基板13316の接続が完了した。
この画像表示装置のX方向配線に14Vの任意の電圧信号を、Y方向配線に7Vの電位を与え、フェースプレートのメタルバックに5kVのアノード電圧を印加したところ、放電のない任意の良質な画像を表示することができた。
以上のようにして作製した画像表示装置は、フェースプレートのみに外部取出し電極を持つため、フォーミング、活性化工程時にフェースプレートのみにプローバー等を落して処理を行うことができるため、容易に電極に電圧や電流を流すことができる。このため、電極部の接触不良がほとんどなくなり、均一な画像を作製することができる。また、接合辺が2辺又は3辺のため電極部の接触部が少なくなるため前述の本構成の第1および第2の参考例より、さらに接触不良が低減する。
また、FPCの接合時に、画像表示装置を反転することなく接合ができるため、反転による危険がなくなり、接合時の時間が短縮できる。また、反転無しの接合と比較して、接合装置が単純で容易なため、不良がほとんどない接合ができる。また、接合辺が2辺又は3辺のため、前述の本構成の第1および第2の参考例より接合時間をより短縮できる。
以上説明した本構成によれば、作製プロセスが容易となり、FPC接続時での接続信頼性が高く、またFPCの接合方向が一緒なのでFPC処理が容易となり、基板回転がないので安全性も向上し、製造時間の短縮となる。このように作製時の接続不良の減少により均一な画像を効率よく得られ、信頼性の高い画像表示装置を安定に供給することが可能になるので、生産性のよい画像表示装置を提供することができる。
(第26の構成)
前述の図2に示したような画像表示装置全体の組立にかかる構成としては、以下のような構成をとり得る。
(参考例1)
図137に、本第26の構成を適用する画像表示装置の斜視図を示す。同図において、121はマルチ電子ビーム源を形成した電子源基板、122は電子線照射により発光する蛍光体を備えし表示用基板、123は電子源基板121の配線端部に直接接続された駆動ICである。図138は、この駆動ICを配線端部に接続する部分の断面を示した図である。126は電子源基板121上に形成された行又は列配線の一部である取り出し電極部、123aは駆動ICチップ、124は駆動ICチップ123aの接続端子として形成された金属(例えば金)によりなるバンプ、125は導線性接着材、127は封止材である。
行または列配線126は、導電性ペーストを印刷形成する。配線は膜厚が厚い方が電気抵抗を低減できるため有利である。そのため、厚膜印刷法、特にスクリーン印刷法をもちいるのが好ましく、銀、金、銅、ニッケル等の導電性ペーストを用いることができる。なお、より高精細なパターンニングが要求された場合には、感光性ペーストを用いて大まかなパターンをスクリーン印刷によって形成した後に、露光、現像することによって良好な配線形状が得られる。なお、所望のパターンを形成した後には、ペースト中のビヒクル成分を除去するために、そのペースト、使用ガラス基板の熱特性に応じた温度(400〜650℃)で焼成される。
また、厚膜配線を形成する技術としては、例えば、特開平8―227656号公報に開示されている技術を用いることができる。すなわち、基板上に、無電解メッキによって下地金属層を形成し、この下地金属層上に所定パターンで絶縁層を形成し、この絶縁層の隙間部分、すなわち、下地金属層が露出している部分に電気メッキにより金属層を形成し、絶縁層を除去した後、露出している下地金属層をエッチング除去して、所望の導電パターンを形成する。
さて、図138のような構成は、いわゆるCOG(チップ・オン・グラス)と呼ばれる実装形態であり、同図に示した行又は列配線に駆動ICを実装する工程は、以下のようにしてなされる。
駆動ICチップ123a上のバンプ124に導線性接着剤125を転写し、電子源基板121上に配設した取り出し電極部126とのアライメントを行った後、電子源基板121上に駆動ICチップ123を下降させてマウントする。その後、加熱・紫外線照射等によって導電性接着剤を硬化させ、適当な樹脂材料によってICチップ123の保護コート127を行い、実装を完成する。
上述のような実装形態を電子源基板121に行うための具体的な取り出し電極部のレイアウトを図139に示す。同図において、126aは列側配線の取り出し電極部であり、126bは行側配線の取り出し電極部である。また、128、129は、駆動ICとこれに接続される他の駆動回路部との接続を行う電極部である。同図において、破線による四角で囲った部分の内側の電極部は、駆動ICとの接続部分に相当し、またM部はマトリクス部である。
図140に、電極部128(または129)の実装例を示す。121、123から128は、前述の図138の駆動IC実装部と同様である。131は、駆動IC123と他の駆動回路部とを接続するためのフレキシブルケーブルの導電材料による電極部、132は樹脂フィルムである。フレキシブルケーブルの電極131と電極部128とは、駆動ICと同様に導電性接着剤で接続される。
尚、取り出し電極の接続部の接続面の大きさは、行側と列側で異なる。すなわち、行側の場合には、行選択した場合の総素子数分の駆動電流が流れるため、FE型の電子放出素子で0.05Aから0.2A程度、表面伝導型電子放出素子で1〜10A程度の瞬時電流が流れる。一般的な導電性接着材の電流容量0.5A/mm2からすれば、接続部の面積は、0.1mm2から20mm2の領域を取る必要がある
一方、列側の場合には、当該素子分の駆動電流が流れるため、FE型の電子放出素子で5μAから20μA程度、表面伝導型電子放出素子で0.2mA〜2mA程度の実効電流が流れる。同様に、接続部の面積は、0.00001mm2から0.04mm2の領域を取る必要がある。但し、導電性接着剤の導電フィラの大きさなどによる最小実装面積に限界があるため、0.00001mm2という実装面積は実際には40ミクロン角程度、すなわち0.00016mm2程度が限界と考えられる。
さて、このマルチビーム電子源の配線交差部による容量成分をLCRメータにより測定したところ、交差部当たり0.05pFで、n=3072とすると154pFとなった。一方、約30mmの取り出し電極部での誘導成分は、30nHとマトリク部での誘導成分は320nHと測定された。従って、共振周波数は、22MHzと求められた。一方、VsおよびVeの立ち上がり時間を調べたところ、それぞれ約60nsecおよび80nsecで、最高周波数成分としては約17MHzとなる。したがって、共振周波数を駆動信号の最高周波数よりも高くすることができ、リンギングの発生を十分低減することができた。尚、取り出し電極部と駆動IC部とをフラットケーブルでつなぐ従来の実装方法の場合、前記取り出し電極部、80mmのフラットケーブル部及び駆動ICまでの電気回路パターンでの誘導成分は約170nHあり、共振周波数は18MHzとなり、共振周波数に近い周波数となりリンギングの発生の懸念が生じる。
以上説明したように、行および列配線端部に駆動ICを直接実装することにより、配線取りだし部及び駆動ICとの接続部の誘導成分を最小限とすることができ、マトリクス配線に形成される容量成分とによる共振周波数を十分高くとることができ、駆動信号にリンギング波形が加算されることが回避され高品位な画像表示を行うことができた。
(参考例2)
本参考例は、行側配線端部での駆動IC実装は上述の本構成の第1の参考例と同様であるため、ここではその説明を省略する。本参考例の列側配線端部での駆動ICの実装部を図139および図141(a)および(b)を参照して説明する。本参考例は、図139におけるA部の列側配線端部の構成が上述の第1の参考例と異なる。その部分の拡大図が図141である。図141(a)は、上述の第1の参考例におけるA部の拡大図である。136は厚膜配線による取り出し電極部、137は駆動ICとの接続部である。図141(b)は、本参考例におけるA部の拡大図である。136aは厚膜配線による取り出し電極部であり、136bは薄膜配線による補助電極部である。138は補助電極部136b上に設けられる駆動ICとの接続部である。
次に、補助電極部136bの役割について説明する。一般に、厚膜配線はスクリーン印刷やめっきなど、低抵抗配線の形成は容易に行うことが出来るが、表面の平面性を十分に取る事は難しく、研磨や或いは接続部の面積を十分にとる必要でてくる場合がある。一方、薄膜配線は、フォトリソグラフィーを用いる場合やオフセット印刷を用いる場合など、微細な領域にわたり十分平滑性の良い電極部を形成することができる。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法等の真空系を用いて成膜した後に、リソグラフィー法でパターニングしてエッチングする方法や、有機金属を含有するMOペーストをガラス凹版を使ってオフセット印刷する方法を選択することができる。電極部136bの材料としては導電性を有するものであればどのような物であっても構わないが、例えば、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属あるいは合金、及びPd、Ag、Au、RuO2、Pd−Ag等の金属あるいは金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体、及びポリシリコン等の半導体材料、及びIn2O3-SnO2等の透明導電体等があげられる。従って、必要最小限の接続部の面積で駆動ICの実装を行うことができる。尚、本参考例においてはマルチ電子ビーム源には青板ガラスを用い、電極部136bにはオフセット印刷によるNi薄膜を用いた。電極部136bの厚さは0.1μm、幅は100μm、長さは400μmとした。
また、前に述べたように、リンギングの発生に寄与する可能性のある誘導成分Lは、Lc+(Lc/n)で示される。これは行選択駆動を行った場合のうち多くの電子放出素子が電子放出動作状態のときに相当する。一方、特定の画像を表示する場合であり、選択行の内わずかの素子数しか電子放出状態になる場合には、Lの式のうち実質的にnが小さい数字をとりLcの成分が無視できない状態が発生する。この場合、先にL=30nHと見積ったところを最大2倍のL=60nHと見積られる場合も生じてくる。この対策として、LCRの直列共振回路におけるR成分として、補助電極14に実効的に減衰定数ζ=2R/√(L/C)が1以上となるような配線抵抗を(この場合10Ω以上の値)積極的に与えてやることにより、リンギングの発生を抑制する、いわゆるダンピング効果を得ることが出来る。
また、何らかの原因で配線に異常電位が加わった場合には、列側の駆動ICにも印加されてしまい、駆動ICを壊してしまう可能性がある。この問題に対しても、上に述べたのと同様に積極的に補助電極136bに抵抗を与えることで保護抵抗の役割を与える事が出来る。仮に、3Vの異常電位を配線側で起こした場合には、駆動ICの流入可能電流を10mAとして、補助電極での抵抗を300Ωとすると、駆動ICへの印加は全く起こらない。前述したオフセット印刷により形成された補助電極部136bは、圧膜配線端部から駆動IC実装部138までの抵抗値として、約300Ωが得られた。
以上説明した様に、本参考例では、取り出し電極部に薄膜による補助電極を設けることにより、より高密度に、また、より安定駆動を行うことができる。
(第27の構成)
装置の組立にかかる構成としては以下の構成を更に挙げることができる。
(参考例1)
図142に、本第27の構成を適用する画像表示装置の駆動電気回路部を構成する電気回路基板の基板レイアウトを示す。この図142は、画像表示装置を画像表示側の反対側から見たときのレイアウトを示している。
本参考例の画像表示装置は、フェースプレート14101とリアプレート14102からなる画像表示部14103、画像表示のための駆動電気回路部14104、それらを支持する支持構造部材14105、更に外装部材(カバー:不図示)と電源ユニット14110で構成されている。14000は、フレキシブルケーブルである。
駆動電気回路基板14104は、大きく分けると、走査回路基板(14106a、14106b)、変調回路基板(14107a、14107b)、画像データ発生回路基板14108、入力インターフェース(I/F)基板14109からなる。走査回路基板は、画像表示部14103のリアプレート14102基板の走査配線を順次選択するパルス走査信号を発生する。この走査回路基板は、リアプレート14102の走査配線を左右同時に駆動するため、走査回路基板14106a、走査回路基板14106bからなる。変調回路基板は、リアプレート14102の走査配線と直交した変調側配線からマルチ電子源をパルス幅変調駆動するためのパルス変調信号を発生する。本参考例においては画像表示装置のサイズが大きいため、変調回路基板は、2枚の変調回路基板14107a,14107bに分割して構成した。
画像データ発生回路基板14108は、画像情報を変調回路基板(14107a,14107b)への変調データに変換する。入力インターフェース(I/F)基板14109は、入力画像信号AからR・G・Bコンポーネント信号を出力するデコーダ部と入力画像信号に重畳されている同期信号(SYNC)を分離し、各種タイミング信号を発生する。
本参考例において、駆動電気回路部14104を構成する電気回路基板のなかで、発熱が大きな変調回路基板(14107a,14107b)を上方にレイアウトし、この変調回路基板への信号を出力する画像データ発生回路基板14108をその下方にレイアウトした。また1対の走査回路基板(14106a、14106b)は、画像表示装置の左右端にレイアウトした。
図143に、本参考例の画像表示装置の駆動電気回路の機能ブロック図を、図144にそのタイミングチャート図を示す。P2000は表面伝導型電子放出素子を単純マトリクス構成したマルチ電子源を配した、リアプレートとフェースプレートで構成された画像表示部(以下表示パネルと略す)であり、本参考例においては480×2556個の表面伝導型素子P2001が垂直480行の行配線と水平2556列の列配線によりマトリクス配線され、各表面伝導型素子P2001からの放出電子ビームが高圧電源部P30から印加される高圧電圧により加速され、不図示のフェースプレート側蛍光体に照射されることにより発光を得るものである。この不図示の蛍光体は用途に応じて種々の色配列を取ることが可能であるが、ここではRGB縦ストライプ状の色配列とする。
本参考例においては、以下、水平852(RGBトリオ)×垂直480ラインの画素数を有する表示パネルに、HDTV相当のテレビ画像を表示する応用例を示すが、HDTVに限らずNTSCのような高精細な画像やコンピュータの出力画像など、解像度やフレームレートが異なる画像信号に対しても、ほぼ同一の構成で容易に対応できる。
本参考例において、走査回路(14106a、14106b)が選択した行P2002上の素子をパルス幅変調して駆動することで、パルス幅に応じた期間だけ各素子から電子が放出される。この走査回路が選択するラインを順次走査することで2次元画像が形成される。
以下、画像信号の流れに従って説明する。画像信号は、まず、入力I/F基板14109に入力する。入力I/F基板14109は、P1、P2ブロックからなる。P1は、HDTVのコンポジットビデオ入力を受けRGBコンポーネント信号(図144のT101)を出力するHDTV−RGBデコーダ部である。このユニット内にて入力ビデオ信号に重畳されている同期信号(SYNC、図144のT102)を分離し、またサンプリングCLK信号(CLK1)を生成し出力する。P2は、P1にてデコードされたアナログRGB信号を、表示パネルを輝度変調するためのデジタル階調信号に変換するために必要な以下のタイミング信号を発生するためのタイミング発生部である。
(a)P1からのRGBアナログ信号をアナログ処理部P3にて直流再生するためのクランプパルス、
(b)P1からのRGBアナログ信号にアナログ処理部P3にてにブランク期間を付加するためのブランキングパルス、
(c)アナログRGB信号をA/D部P6にてデジタル信号に変換するためのサンプルパルス(不図示)、
(d)ラインメモリP10、輝度ラインメモリP22を書き込み、読み出しするタイミング信号、
(e)走査制御信号Yscan、
RGBコンポーネント信号は、画像データ発生回路基板14108に入力される。画像データ発生回路基板14108は、P3〜P10のブロックからなる。P3は、P1からの出力原色信号それぞれに備えられるアナログ処理部であり、主に以下の動作をする。
(a)P2からクランプパルスを受け直流再生を行なう。
(b)P2からブランキングパルスを受けブランキング期間を付加する。
(c)P1から入力された原色信号の振幅制御やP1から入力された原色信号の黒レベル制御を行なう。
LPFP5は、A/D部P6の前段に置かれるプリフィルタ手段である。A/D部P6はLPFP5を通過したアナログ原色信号を必要階調数で量子化するA/Dコンバータ手段である。逆γテーブルP7は、入力されるビデオ信号を表示パネルが有する発光特性に変換するために備えられた階調特性変換手段である。本参考例のようにパルス幅変調により輝度階調を表現する場合、輝度データの大きさに発光量がほぼ比例するリニアな特性を示すことが多い。一方ビデオ信号は、CRTを用いたTV受像機を対象としているため、CRTの非線形な発光特性を補正するためにγ処理を施されている。このため本実勢例のようにリニアな発光特性を持つパネルにTV画像を表示させる場合、P7のような階調特性変換手段でγ処理の効果を打ち消す必要がある。P10は、各原色信号毎に備えられる水平ラインメモリ手段であり、RGB其々の輝度データを変調回路基板107へ出力する(図144のT105)。
走査回路基板14106a,14106bは、Yシフトレジスタ部P1002、プリドライバP1003、スイッチトランジスタから構成される。Yシフトレジスタ部P1002は、水平周期のシフトクロック及び行走査開始トリガを与えるための垂直周期のトリガ信号を受け行配線P2002を逐次、走査するための選択信号を各行配線毎に備えられるプリドライバ部P1003に順に出力する。各行配線を駆動する出力部は、例えば、FET手段P1004、P1006から構成される。プリドライバ部P1003は、この出力部を応答良く駆動するためのものである。FET手段P1004は、行選択時に導通するスイッチ手段で選択時に−Vss=−7v電位を行配線に印加する。FET手段P1006は行非選択時に導通するスイッチ手段で、非選択時にGND電位を行配線に印加する。図144のT112が行配線駆動波形の一例である。
次に、画像データ発生回路14108からのラインメモリ出力P10であるRGB輝度データが変調回路基板14107に入力された後の信号の流れを説明する。1水平期間の間に、RGB輝度信号は其々、水平方向の素子数2556個(R1−R852、G1−G852、B1−B852)が出力される。これを1水平期間の間に変調側配線に接続した2556個のドライバに転送すると、各変調ドライバはパルス幅変調出力を発生する必要がある。そこで、高速に変調側ドライバへのデータ転送を行うためにラインメモリP10をいったん、16ブロックからなる輝度ラインメモリP22に転送し、各ラインメモリP22が其々160個の変調ドライバデータを同時に転送するようにした。すなわち、P10のRGBラインメモリの出力をP2003で接続されたパネルの蛍光体色に応じた順番に並べ替えて直列信号に変換し、輝度信号用ラインメモリP22に転送する。
シフトレジスタ・ラッチ回路P1101は、ラインメモリP22からの水平周期毎の2556個の列配線数の輝度データ列(画像情報)をシフトクロック(図144のT107)により読み込み、図144のT108のようなLDパルスによりシフトレジスタ・ラッチ回路P1101内のラッチ回路P11101bに並列にラッチし、PWMジェネレータ部P1102に2556個の1水平列分のデータを一度に転送する。
各列配線毎に備えられるPWMジェネレータ部P1102はシフトレジスタ・ラッチ回路P1101内のラッチ回路からの輝度データ(画像情報)を受け、図144のT110に示す波形のように水平周期毎にデータの大きさに比例したパルス幅を有するパルス信号を発生する。
P1104はトランジスタなどで構成されるスイッチ手段であり、+Vs=7V電圧出力をPWMジェネレータ部P1102からの出力が有効な期間列配線に印加し、PWMジェネレータ部P1102からの出力が無効な期間は列配線を接地する。図144のT111に列配線駆動波形の一例を示す。
このような方法により、順次行配線を走査し、それに対応する画像情報でパルス幅変調された値で列配線を駆動し表示パネルP2000に画像を形成する。変調回路基板14107のうち、輝度ラインメモリからパルス幅変調駆動信号を発生するドライバ段はIC化されている。即ち、ドライバICは160ch分の変調ドライバと、各ドライバのパルス幅変調データを転送、ラッチするシフトレジスタ回路とラッチ回路およびPWMジェネレータを有している。本参考例では、水平2556列の列配線に対して、輝度データを160個ずつシフトするシフトレジスタを使用しているため、シフト数としては、320×8=2560個であり、PWMジェネレータ部等もそれぞれ2560個で構成されている。ただし、スイッチ手段P1104の2560個の出力端のうち左右それぞれ2ラインは、列配線に接続していない。
次に、各ボードにおける発熱量を見積もってみた。算出するにあたって、水平852(RGBトリオ)×垂直480ラインの素子数を想定し、また入力信号としては60Hzプログレシブスキャンの画像信号を仮定した。素子特性に関しては、14V駆動時に1素子に流れる素子電流は1mAとした。
(1)変調回路基板;
変調回路基板においての発熱は、A:出力トランジスタにおける電力損出と、B:ロジック部における電力消費に起因する。
A:出力トランジスタにおける電力損出であるが、1トランジスタのON抵抗を100Ωとすると、全白画面表示を行うと、
PlosA=Ron × (If)2 × 2556
=100×(1mA)2 ×2556
=0.3W。
B:ロジック
前述の様に、1H(走査線480本、60Hzプログレシブスキャンにおいては〜30μs)期間の間に、2556個のPWMジェネレータP1102に8bit輝度データを転送する必要がある。この時のデータ転送時のロジック消費電力が最も多い。即ち、ドライバIC内で消費されるロジック消費電力が最も多い。
即ち、ドライバIC1個あたりに、160個の8bitデータを転送するシフト動作とPWMカウンタ回路が動作する。一般に、一ロジックの消費電力は、
Plogic=(1/2)×f×C × (Vlogic)2
ここで、fは動作周波数、Cはロジックゲート容量、Vlogicはロジック動作電圧である。本参考例において、シフトカウンタ、PWMカウンタクロック=9MHzで動作させたところ、ドライバIC1個あたり、1Wの消費電力が消費された。全部でドライバICは
PlosB=1w × 16 =16W
の電力損出になった。
(2)走査回路基板;
変調回路基板においての発熱は、A:出力トランジスタにおける電力損出と、B:ロジック部における電力消費に起因する。B:走査回路基板の、ロジックの動作周波数は、低くほとんど問題にならなかった。
A:出力トランジスタによる損出(1トランジスタのON抵抗を0.2Ω、一つ
の基板当り)は次の通りである。
PlosA=Ron × (ラインIf/2)2
=0.2 × (2556mA / 2)2
=0.3W。
(3)画像データ発生回路;
変調回路基板においての発熱は、主に、B:ロジック部における電力消費に起因する。ロジック部の消費電力は、ロジック動作電圧を3.3V動作させると10W程度だった。
上述の(1)〜(3)の結果より、最も発熱の多い変調回路基板14107を画像表示部の上端に配し、また画像データ変換回路基板が変調回路基板の下に配した。また、一対の走査回路基板を画像表示部の右または左端に配した。これにより画像表示装置は、駆動電気回路部からの発熱を効率よく放熱し、安定した動作をした。
本参考例によれば、駆動電気回路部を構成する電気回路基板からの発熱を、外装部材の上下に設けた空気取り入れ口から自然対流で充分に放熱することができた。
これにより、ファンレスが実現され、静粛性の高い画像表示装置が実現された。特に、画像表示装置の解像度が増加した場合は、変調回路基板のロジック部の発熱が大きく本参考例のようなレイアウトが効果が高い。例えば水平方向画素数1920(×3素子数)、走査線1080本、60Hzプログレシブスキャンにおいては、前述のPWMカウンタやシフトクロックを>20MHzで動かす必要がある。この場合、ロジックの動作電圧を下げることはできても、ICの出力電圧で決まるロジックICのサイズは変えられないため、ロジックゲート容量が変わらず、ドライバIC1個あたり2Wの消費電力が消費され、変調回路基板の発熱が増えた。
(第28の構成)
装置の組立にかかる構成としては以下の構成を更に挙げることができる。
図145は、本第28の構成を適用する表示パネルのリアプレート側のコネクタの配置を示す模式図である。15001は真空封止された表示パネルである。表示パネルの詳しい構造および製造方法は後述する。15002は列配線端子となるフレキシブルケーブルおよびコネクタである。15003は行配線端子となるフレキシブルケーブルおよびコネクタである。15004は加速電圧端子である。
図146は、上記表示パネルに制御部、駆動部、電源部等を実装した場合の配置図である。15005は変調駆動部である。15006は走査駆動部である。15007は加速電圧発生部である。15008は装置全体の制御部である。15009は加速電圧用配線である。15010は装置の電源部である。
図150は、上記加速電圧端子の取り付け構造および行配線、列配線、加速電極との位置関係を示す斜視図である。15101はリアプレートで、表示パネル15001の裏面の構造部材である。15111はフェイスプレートで、表示パネル15001の表面の構造部材である。15104は支持枠であり、フェイスプレート15111とリアプレート15101を支持する構造部材である。15131は加速電圧を供給するケーブルである。15116は加速電圧端子である。15132はゴムキャップである。15122はリアプレートに開けられた貫通穴である。15121は加速電圧端子領域を支持する中空部材である。15120は加速電圧の取り出し配線である。15112は加速電極であり、フェイスプレート15111上に形成されており、取り出し配線15120を通じて加速電圧端子15116と電気的に接続されている。15102は電子源領域であり、行配線、列配線、電子源が配置されており、リアプレート15101上に形成されている。
図149は、画像を表示するための処理を行う部分の概略構成を示すブロック図である。15031は映像入力部である。15032はA/Dコンバート部である。15033はタイミング制御部である。15034は信号処理部である。S1は入力された複合映像信号である。S2は同期分離された映像信号である。S3は複合映像信号S1から分離された同期信号である。S4はデジタル化された映像信号である。S5は変調信号である。S6は変調駆動部に対するタイミング信号である。S7は走査信号である。S8は走査駆動部に対するタイミング信号である。S8は加速電圧である。
映像信号入力部31は複合映像信号S1を入力し、映像信号S2と同期信号S3に分離する。A/Dコンバート部15032は映像信号S2をデジタル化しデジタル映像信号S4を出力する。タイミング制御部15033は同期信号S3を基に、装置全体の動作タイミング信号を出力する。映像信号処理部15034はデジタル映像信号S4を処理し、走査信号S7および変調信号S5を出力する。走査駆動部15006は走査タイミング信号S8と走査信号S7に従い、行配線端子15003を経由して、表示パネル15001の行配線を±10V以下の低電圧で駆動する。変調駆動部は変調タイミング信号S6と変調信号S5に従い、列配線端子15002を経由して表示パネル15001の列配線を±10V以下の低電圧で駆動する。加速電圧発生部15007は、高電圧を発生し、表示パネル1に加速電圧S8を供給する。表示パネル15001の不図示の行配線と列配線の交点には不図示の電子源が配置されており、行配線と列配線の単純マトリックス駆動により電子ビームが発生し、表示パネル15001内の不図示の蛍光体を発光させて画像を表示する。表示パネル15001の構造および電子源の詳細については後述する。
加速電圧発生手段15007の高電圧発生方法としては、フライバック方式あるいはフォワードコンバータ方式等が用いられる。
行配線端子15003は表示パネル1内の不図示の行配線の両側に接続されており、2組の走査駆動部15006によって全く同じ信号によって駆動される。こうする事により、行配線に流れる電流が両側に分散され、行配線の部分的な電圧降下が小さくなる。
この装置の内、加速電圧端子15004、電源部15007、加速電圧用配線15009は数kV〜20kV程度の高電圧部、その他の部分は5V〜15V程度の低電圧部である。高圧部と低圧部との距離Lは、1mm/kV以上離れている事が放電耐圧による安全上は望ましい。図146のように各部をレイアウトする事により低電圧部と高電圧部の距離Lを容易に20mm以上離して配置する事が可能となり、放電耐圧が向上し装置の安全性が高まる。
さらに、高電圧部は高電圧発生回路によるノイズの輻射が大きいため、装置の制御部15008や駆動部15005、15006などの低電圧部を、高電圧部より離れた場所に配置可能となり、これにより高電圧部の輻射ノイズによる回路の誤動作の可能性も低減できた。
図151は、上記表示パネルのリアプレートを正面から見た図である。この図では、不図示のフレキシブルケーブル(図145および図146の15002、15003)は、列配線15105、行配線15106の端の電極部にACFによって熱圧着接続される。リアプレートにおいても、列配線15105、行配線15106、不図示の電子源等からなる低電圧部の電子源領域15102と高電圧部の加速電圧端子の中空部15122との間の距離Lは0.5mm/kV以上離れている事が放電耐圧による安全上あるいは表示パネル15001の性能維持のためには望ましく、1mm/kV以上離れていればさらに望ましい。行配線端子、列配線端子、加速電圧端子を図145のように配置する事によって、図151に示すように低電圧部の電子源領域と高電圧部の加速電圧端子の中空部15122を容易に20mm以上離して配置する事が可能となり、表示パネル15001内部での放電耐圧が向上して、装置の安全性が高まるとともにパネルの性能を長時間維持する事が容易となる。
また、以上で述べた安全上望ましい高圧部と低圧部との距離(高圧部と低圧部が20mm以上離れている)を満たしていれば、図147に示すように、加速電圧端子15004は必ずしも表示パネル15001の辺の中央に配置される必要はない。さらに、図示はしていないが、同様に列配線端子15012および行配線端子15013も、辺のどの部分に配置されてもよい。
また、本構成を縦形の表示装置に適用する場合もほぼ同様の構成で実現できる。装置の重心が下方になるように、図148に示すようにしてもよい。このレイアウトでは、電源部15007、15010を装置の下方に配置し、装置内のレイアウトを多少変化させた点を除いては上述の参考例と同様である。
特に、高圧電源は重量が嵩むため、表示パネルの重心よりも、下方に配置することにより、表示装置を設置した際の安定性が増すので好ましい。
また、各電源などの発熱部材は、表示パネルを構成するリアプレートには直接接触しない様に配置することが好ましい。これは、電源からの熱が表示パネルに意図しない応力を与えるのを避けるためである。
(第29の構成)
画像形成装置からの除電を行う場合には以下の構成が利用できる。
(参考例1)
図152は、本第29の構成を適用する第1の参考例の画像表示装置の構成を示すブロック図である。ここでは、実際に画像表示装置として駆動させた場合においての除電駆動を行う時の方法を述べる。
画像表示部16001は前述の参考例と同じである。駆動方法としては、走査方法を線順次とし、表示画像に階調をつけるために、一水平走査時間(1H)内の電子放出期間を変調信号の時間幅で制御することにより、蛍光体の発光総量を制御し、階調表現することを基本としている。
図152において、信号分離回路16012はNTSCなどの映像信号S1から、水平同期信号S2、垂直同期信号S3、ディジタル映像信号S4等を生成するための回路である。この中には、映像中間周波数回路、映像検波回路、同期分離回路、ローパスフィルター、A/D変換回路、タイミング制御回路等が含まれている。16014は、画像表示部の行方向配線を駆動するための走査信号側ドライバーであり、信号分離回路16012で分離生成された水平同期信号S2に基づいて、走査信号を出力する。16013は画像表示部の列方向配線を駆動するための変調信号側ドライバであり、信号分離回路16012で分離生成された水平同期信号S2、垂直同期信号S3、ディジタル映像信号S4などから変調信号を出力する。
16016は、本画像表示装置の電源状態を検知する回路で、電源SWのON/OFFに応じた信号S5を出力する。更に、16017は、SWのOFF信号をもとに、表示装置の除電駆動を行うための信号S6をコントローラ16011に出力しているタイマ回路である。タイマ回路16017からの信号S6がアクティブ状態の時には、Va=0vに対応した信号が出力されることとなる。この他、高圧電源16008とアノード電流検出回路16007を備える。これら高圧電源16008とアノード電流検出回路16007は前述した構成例を適用することができる。
図157は、本参考例の画像表示装置の画像表示部の駆動タイミングを示す図である。この図157には、行方向配線(すなわち走査信号を供給する側の配線)、列方向配線(すなわち、変調信号を供給する側の配線)の引き出し線に印加する電圧の駆動タイミングの一例が示されている。同図のタイミングチャートは、上述の画像表示装置のある行I,I+1、I+2を順々に駆動している時のI、I+1、I+2行の行方向配線に印加している電圧と、変調信号側である列方向配線J、J+1、J+2列の列方向配線に印加している電圧を表したものである。ここで、1<I<M−2、1<JN−2、Mは行方向配線本数、Nは列方向配線本数である。同図を参照すると、ある1水平走査期間Kでは、I行目の表示、K+1ではI+1行目の行を表示K+2ではI+2行目の行を示している。線順次走査する際の走査側である、行方向配線は1水平走査期間(以降1Hとする)ごとに順番に選択され、選択された行の行方向配線には、1Hに相当するパルス幅を持つ波高値−1/2Vf(Vfはここでは駆動電圧であり、およそVf=2Vth)の走査信号が順番に印加されている。走査は、全方向配線に付いて行われた後は、又始めの行から順番に繰り返される。列方向配線には、行方向配線に印加する走査信号と同期して、選択された行に表示する映像信号に対応した1/2Vfの波高値を有する。変調信号が全列方向配線に印加される。変調信号は、操作信号の立ち上がりに同期して立ち上がり、映像信号に対応した時間だけ波高値1/2Vfの状態を維持した後立ち上がる(以後、変調信号が立ち上がってから、次に立ち上がるまでの期間を単に変調信号のパルス幅と呼ぶ)。変調信号のパルス幅は、選択された行に表示する映像信号のRGBの3色に分解した時のそれぞれの輝度に対応しているが、実際には高品位な画像を表示するためにさまざまな補正をかけるため単純な比例関係ではない。このように、電圧印加することにより、選択された行の表面伝導放出型素子には、変調信号のパルス幅だけ駆動電圧Vfが印加される。表面伝導放出型素子の放出電流IeはVfに対して上述したような明確な閾値特性をもっているため、この結果として選択された行には、所望の映像信号に対応した画像が表示される。さらに、線順次に操作を行っていくことにより、画像表示部内の全表面伝導型放出素子にわたって画像の表示が行われる。
次に、本参考例の除電作用について説明する。画像表示装置においての除電駆動を行う方法としては、画像表示中に例えば、Ieの変化率を検知してVaをある時間停止しておくことは画像表示装置として不可能である。そのため、電源状態の変化を検知するための検知回路16016を設けて、画像表示装置のSWがOFFされたことを検知し、その信号をタイマ回路16015に出力する。タイマ回路16015はSW信号のOFFを認識し、コントロール回路16011に除電駆動を行うための指示信号S6(Va=0v)を一定時間出力する。そして、コントロール回路16011は、タイマ回路16015の信号をもとに、高圧コントロール信号によって高圧電源16008のVa制御を0Vに設定する。
図153に、上記の制御に対応したタイミングチャートを示す。まず、画像表示装置がT1なる時間においてSWがOFFされた場合には、SW ON/OFF検知回路よりOFFのロジックレベルの信号が出力される。タイマ回路16015は、OFF時での信号の変化、例えば本参考例ではHレベルからLレベルへの信号の立ち下がりをとらえ、タイマカウンタを作動させる。タイマカウンタは、タイマ回路内部で設定されたカウンタ回路によって決定され、コントローラ回路16011に対してVa=0に対応したロジック信号(本参考例では「L→H」レベル)をTaなる時間だけ出力する。コントローラ回路16011はタイマ回路16013の信号の変化をとらえ、除電駆動を開始する。
除電駆動は、Taの間行われ、コントロール回路16011から高圧コントロール信号Va=0の設定が高圧電源16008に対してなされ、一方素子駆動のみを行うために、走査側ドライバ16014と変調信号側ドライバ16013はそのまま駆動される。そして、タイマカウンタによりTaの時間が終了する場合には、タイマカウンタの出力信号はHレベルからLレベルとなり、コントローラ回路16011はその信号の変化をとらえることで、除電駆動の解除を行い素子駆動も停止される。以上の制御では、アノード電流検出回路16007からのアノード電流Ieの検出を行わずに除電駆動を行ったが、アノード電流値Ieの値を取り込んで除電駆動を行ってもよい。具体的には、例えばTaなる時間のタイマカウンタの信号が出力された時点で、コントローラ回路16011がアノード電流Ieの値を検知し、その値に対して除電駆動を行うかどうかの判断をしてもよい。判断方法としては、コンパレータ回路等を用いてIeとの比較を行い、コンパレータ回路に設定された設定Ie値以上のIeであれば除電駆動を行うものとする。そして、Ta時間内でIeが設定値以下になれば、その時点で除電駆動は完了する。又Taの時間が経過してもIeの値が設定値以上であれば、引き続き除電駆動を継続する。この場合、アノード電流Ieは、電気的な信号として変換されて(アナログ信号または、ADコンバータを通してのデジタル信号)コンパレータ回路に入力される。更に、コンパレータ回路で設定される設定Ie値は、画像表示装置で表示駆動される時に印加されるVaの値に応じて変更される。
更に、別の方法としては、SWの状態時間に応じて、Taの時間設定を行ってもよい。その場合には、タイマ回路16013がSW ON/OFF検知回路16016からの信号をもとにON時間の計測する。画像表示装置のON時間が短い場合には、Taの時間を短くし、ON時間が長い場合には、Taの時間を長くする。又、この時にもアノード電流Ieを検知して前述したようなコンパレート回路を用いた制御を行ってもよい。それにより、画像表示の駆動時間に応じた除電駆動を行うことが可能である。
更に、別の方法として、コントローラ内部にCPUあるいはシーケンサ等を備え、シーケンス処理によって除電駆動を行ってもよい。図154に、シーケンスで行う場合のフローチャートを示す。同図を参照して以下にその動作を説明する。
ステップS10にて、SWのON/OFF状態の判定がされる。SWがOFF状態えあればステップS11にて、アノード電流Ieの値を検知して除電駆動が必要か否かの判断がされ、許容値以上であればステップS12に進む。次に、除電駆動を行う場合には、ステップS12にてタイマの設定を行う。除電時間は前述したTaの時間に相当する。次に、ステップS13で除電駆動を行う。除電駆動はVa=0v、素子駆動ONの状態としてステップS12で設定された時間だけ除電を行う。ステップS14にて除電駆動が完了したことが判断されると、ステップS15で再度Ieの値を検知し、除電駆動の停止かどうかの判断がおこなわれる。そして、除電駆動停止の場合には、ステップS16で素子駆動がOFFされる。
以上、本参考例では、SWのON/OFF信号を検知し除電駆動の制御を可能とした。本参考例によれば、画像表示装置の表示時間に応じて除電駆動を行うことができ、除電効果も向上し、真空放電の要因の一つである表面電位上昇をふせぎ、表示装置の信頼性も向上した。又、短時間の間でSWのON/OFFが繰り返される場合(例えばTVからゲームに切り替える時)などにも本参考例の方法によって除電駆動が可能である。
(参考例2)
次に、本第29の構成を適用する第2の参考例を説明する。本参考例は、除電駆動を画像表示中にも行う様にしている。画像表示回路の構成及び、画像表示の制御回路等はすべて上述の本構成の第2の参考例と同じであるため、ここではその説明は省略する。本参考例の制御方法では、アノード電流検出回路16007によって検知されたIeの値が、設定値Ieをこえた場合にタイマ回路によって除電駆動を行う時間Taが設定される。設定されたTaの信号の開始から、水平同期信号に同期させて数フレームに1回の割合でVa=0の高圧コントロール信号が出力され除電を行う。図155にそのタイミングチャートを示す。以下同図を参照してその動作を具体的に説明する。
まず、アノード電流検出回路16007より、常時アノード電流Ieがコントローラ回路16011に取り込まれる。コントローラ回路16011内では、上述の本構成の第1の参考例と同様にコンパレータ回路が用いられ、設定値Ieに対して、検出されたIeが設定値以上の場合には、コンパレータ回路からコントローラ回路16011を通してタイマ回路16015にその信号が入力される。タイマ回路16015は入力された信号を検知することで、タイマ信号Taを出力する。Taの出力方法は、上述の本構成の第1の参考例と同様である。タイマ信号Taが出力されると、コントローラ回路16011では、その信号の変化(LレベルからHレベルへの変化)をとらえて、水平同期信号と同期をとりながらVa=0の信号を出力する。水平同期信号は、NTSC信号である場合には、60Hzの周期で同期信号が出力されることから、例えば、本参考例では水平同期信号をカウントするカウンタと、Taの信号と水平同期信号との同期をとる同期回路によって、2フィールド(1フレーム)に1回の割合でVa=0vの信号を高圧電源16008に対して出力されるように、上記カウンタの設定を行うようにしている。
それによって、高圧電源16008への制御は、約16msecの間、Va=0vとなり、素子駆動のみを行う除電駆動の期間が1フレームに1回存在することになる。以上の様な制御を行うことで、画像表示中においても、表示装置への除電駆動が実現できる。また、除電駆動の設定に関しては、水平同期信号をカウントするカウンタの設定値を変えることで可能である。本参考例で設定した除電駆動周期によって画像の表示に対してフリッカ等の影響がある場合には、カウンタの設定値を増やして除電駆動周期を長くしてもよい。その場合には、Taの設定時間も長くしたほうがよい。更に、本参考例においても、Ieの値を検知し、設定されているTaの時間内にIeの値が設定Ie以下になった場合には、除電駆動を解除することも可能である。また、Taの時間が終了してもIeの値が設定Ie値以上の場合には、引き続き除電駆動を継続する。更に、上述の本構成の第1の参考例と同様に、別の方法として、コントローラ内部にCPUあるいはシーケンサ等を備え、シーケンス処理によって除電駆動を行ってもよい。
図156に、シーケンス処理で行なった場合のフローチャートを示す。以下、同図を参照してその動作を説明する。
まず、ステップS17でアノード電流Ieの判断が行われ、設定Ie値以上である場合には、ステップS18で除電駆動のタイマ設定Taがおこなわれる。次に、ステップS19で、水平同期信号から予め設定されているカウント値をもとにして所定の水平同期信号をカウントした後、ステップS20にてVa=0で素子駆動のみの除電駆動を行う。除電駆動制御は、前述した制御と同じである。次に、ステップS21で、設定時間Taが終了したか否かの判断がなされる。設定時間が終了であれば、ステップS22で再度アノード電流Ieの検知を行い、設定値以下であれば、ステップS23でVaを所定の電圧で設定し、水平同期カウンタをディセーブル状態にして、通常の画像表示駆動を行う。Ieの値が設定以上で、除電駆動が必要であれば、設定値以下になるまで引き続き除電駆動が継続される。
以上、本参考例では、画像表示中においても除電駆動を行うことを可能とし、前述の本構成の第2の参考例と同様に、真空放電の要因の一つである表面電位上昇をふせぎ、表示装置の信頼性も向上した。
(第30の構成)
画像表示面を分割駆動する構成について、以下に参考例を挙げて説明する。
(参考例1)
図158は参考例に用いた表示パネルの斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。図中、1005はリアプレート、1006は側壁(支持枠)、1007はフェースプレートであり、リアプレート1005、側壁1006およびフェースプレート1007により、表示パネルの内部を真空に維持するための外囲器(気密容器)を形成している。
フェースプレート1007には、蛍光膜1008及びメタルバック1009が形成されている。リアプレート1005には基板1001が固定されているが、この基板1001上には冷陰極素子1002がN×M個形成されている。このN×M個の表面伝導型放出素子は、M本の行方向配線1003と電気的に2つの区画に分割したN本の列方向配線1004により単純マトリクス配線されている。
次に、上記表示パネルに用いたマルチ電子ビ−ム源の製造方法について説明する。
本参考例の画像表示装置に用いるマルチ電子ビ−ム源は、表面伝導型放出素子を単純マトリクス配線した電子源であれば、表面伝導型放出素子の材料や形状あるいは製法に制限はない。しかしながら、発明者らは、表面伝導型放出素子の中では、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形成したものが電子放出特性に優れ、しかも製造が容易に行えることを見いだしている。したがって、高輝度で大画面の画像表示装置のマルチ電子ビ−ム源に用いるには、最も好適であると言える。そこで、ここでは、上記の表示パネルにおいて、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形成した表面伝導型放出素子を用いた。
以下、図159を参照しながら本参考例のマルチ電子ビーム源製造方法の一例を説明する。図159(a)〜図159(e)は、マルチ電子ビーム源製造の一手順を示す工程図である。同図には、電子源の一部分の拡大図が模式的に示しある。
まず、よく洗浄された基板2309上に金属材料からなる導電性薄膜を形成し、そのパターンをフォトリソグラフィーによって微細加工し、一対の素子電極2301、2302を多数形成する。ここで、基板2309としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法あるいはCVD法等により形成したSiO2を積層したガラス基板等、及びアルミナ等のセラミック等があげられる。電極2301、2302の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法等の真空系を用いて成膜した後に、リソグラフィー法でパターニングしてエッチングする方法や、有機金属を含有するMOペーストをガラス凹版を使ってオフセット印刷する方法を選択することができる。素子電極2301、2302の材料としては、導電性を有するものであればどのような物を用いても構わないが、例えば、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属あるいは合金、及びPd、Ag、Au、RuO2、Pd−Ag等の金属あるいは金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体、及びポリシリコン等の半導体材料、及びIn2O3-SnO2等の透明導電体等があげられる。本参考例においては、基板2309には青板ガラスを用い、素子電極2301、2302には、Ni薄膜を用いた。素子電極の厚さは1000[オングストロ−ム]、電極間隔は2[マイクロメーター]とした(図159(a))。
次に、列方向配線2304として、導電性ペーストを印刷形成する。この時、列方向配線2304は素子電極2301と接続する様に形成する。配線は、膜厚が厚い方が電気抵抗を低減できるため有利である。そのため厚膜印刷法、特にスクリーン印刷法をもちいるのが好ましく、銀、金、銅、ニッケル等の導電性ペーストを用いることができる。図159(b)には、電子源の中央部で列方向配線を断線し、電気的に2つの区画に分割してある様子を示している。この断線個所の列方向配線の先端は、図に示すように円形の形状にパターンニングを施した。このようにすることで、メタルバックに印加されている高電圧による電位分布が断線部分のエッジ部分において急峻になることを避けることができ、配線の断線部からメタルバックへの放電を起こすことを防ぐことができた。なお、より高精細なパターンニングが要求される場合には、感光性ペーストを用いて大まかなパターンをスクリーン印刷によって形成した後に、露光、現像することによって良好な配線形状が得られる。なお、所望のパターンを形成した後には、ペースト中のビヒクル成分を除去するために、そのペースト、使用ガラス基板の熱特性に応じた温度(400〜650℃)で焼成する(図159(b))。
次に、層間絶縁膜2305を、行方向配線と列方向配線の交差部に形成する。この層間絶縁膜2305は、例えば酸化鉛を主成分とするガラス物質、例えばPbO、B2O3、ZnO、Al2O3、SiO2等から適宜選ばれる成分の混合物で形成される。厚さは、絶縁性を確保できれば特に制限はないが、通常は10〜100μm、好ましくは20〜50μmである。この層間絶縁膜の形成は、酸化鉛を主成分とするフリットガラス、エチルセルロースなどの適当なポリマーおよび有機溶剤等からビヒクルとを混合してなるペーストをスクリーン印刷等により所定位置塗布した後、焼成して行う。尚、層間絶縁膜は、少なくとも列方向配線と行方向配線の交差部を被覆すればよいので、その形状は図示したものに限るものではなく、適宜選択することができる(図159(c))。
次に、行方向配線2306を層間絶縁膜上に形成する。この配線も電気抵抗を低減したほうが有利であるため、膜厚を厚く形成できる厚膜印刷法を用いるのが好適である。そこで、列方向配線形成と同じようにしてスクリーン印刷法で導電性ペーストを用い、配線を形成した後に焼成する。なお、このとき、各配線を素子電極2302と接続する様に形成する(図159(d))。最後に、表面伝導型電子放出素子の導電性薄膜2303を形成する(図159(e))。
次に、マルチ電子ビーム源の駆動方法について詳しく説明する。
ここでは、表面伝導型電子放出素子群を列方向に上下二分割し、同時にライン走査して画像を形成する、所謂、画面分割駆動法により画像形成を行う駆動方法について詳しく説明する。
図160は、表示パネルを駆動する駆動回路の構成例を示すブロック図である。同図において、表示する画像データ17000は、例えばNTSC信号などのテレビジョン信号から、あるいはパーソナルコンピュータなどで生成されて入力され、画像メモリ17109に格納される。なお、説明を簡単にするため、画像メモリ17109はVRAMとして一般的なデュアルポートRAMであるとし、不図示のCPUなどにより画像が展開されている間でも、その格納内容を読取ることができるものとする。また、表示パネル17108の上半分の素子を駆動制御するためにラインメモリ17105a、変調信号発生器17107a、走査回路17102aを設け、下半分の素子を駆動制御するためにラインメモリ17105b、変調信号発生器17107b、走査回路17102bを設ける。
制御回路17103は、上画面、下画面の順に画像メモリ17109から一ライン分の画像データを取出すためのアドレス信号を生成するとともに、画像メモリ17109に対してはリード信号を出力し、ラインメモリ17105a、17105bに対しては交互に書込信号を出力する。画像メモリ17109からラインメモリ17105a、17105bヘのそれぞれの接続は共通になっているので、ラインメモリ17105a、17105bへの書込みは交互に行う必要がある。制御回路17103は、それぞれ一ライン分のデータがラインメモリ17105a、17105bに格納されると、メモリロードタイミング信号Tmry-aおよびTmry-bを出力するとともに、次ラインのデータの読出しを行う。
変調信号発生器17107aは、ラインメモリ17105aに格納されたデータに対応する駆動信号を列方向配線端子Dy1〜Dynへ出力し、また走査回路17102aは、制御回路17103から入力されたTscan-a信号により、端子Dx1〜Dx(m/2)に接続された行方向配線のうち表示すべきラインの配線へ駆動信号を出力する。これと同時に、変調信号発生器17107bは、ラインメモリ17105bに格納されたデータに対応する駆動信号を列方向配線端子Dz1〜Dznへ出力し、また走査回路17102bは、制御回路17103から入力されたTscan-b信号により、端子Dx((m/2)+1)〜Dxmに接続された行方向配線のうち表示すべきラインの配線へ駆動信号を出力する。すなわち、表示パネル17108の二ラインを同時に駆動制御しながら、画像を表示する。
このように、画面分割駆動法により表示パネル17108を駆動制御することにより、表示パネル17108の二ラインを同時に発光することができ、ラインの走査周波数を1/2にすることができるので、一ライン当りの発光時間を二倍にして二倍の輝度を得ることができる。
以上説明した本参考例の列側を分割配線としたマルチ電子ビーム源を用いて駆動する事により、不要な電子放出を起こさない高輝度で、かつ、品質の良い画像表示を行う事ができた。
(参考例2)
本参考例においても、列方向配線を電気的に2つの区画に分割したマルチ電子ビーム源を適用した例を説明する。本参考例は、上述の本構成の第1の参考例とは列方向配線の断線部分の構成が異なるのみであるので、以下第1の参考例と異なる部分のみについて説明する。
以下、図161を参照しながら本参考例のマルチ電子ビーム源製造方法の一例を説明する。図161(a)〜図161(c)は、マルチ電子ビーム源製造の一手順を示す工程図である。同図には、電子源の一部分の拡大図が模式的に示しある。
図161(a)には、素子電極2301、2302および列方向配線2304’を作製した時点での電子源が示めされている。素子電極2301、2302は前述の本構成の第1の参考例で説明したものと同じ素材および構成の素子電極である。列方向配線2304’は、第1の参考例で説明したものと同じ素材の列方向配線である。第1の参考例と異なるのは、断線部分にパターンニングの処理していないことである。図161(b)には、層間絶縁膜2305’を行方向配線と列方向配線の交差部に形成した時点での電子源が示めされている。第1の参考例と異なるのは、列方向配線2304’の断線部を覆うように層間絶縁膜2305’を形成していることである。このようにすることで、断線部のエッジがフェースプレートの高電圧に対して電気的に露出することがなくなる。つまり、断線部のエッジ部分での電界集中に伴う、断線部分からフェースプレートへの放電を防ぐことができる。さらに、本参考例の列方向配線の断線部分の構成では、形状をパターンニングする工程を省くことができる点が有利である。
また、配線交差部に断線部分を設けたために、マトリクス配線上の配置が単純となり、高画質化の対応でさらに配線密度を上げる場合にも容易に達成できる。
なお、層間絶縁膜2305’の素材および形成方法は上述の第1の参考例と同じである。図161(c)には、行方向配線2306’を層間絶縁膜2305’上に形成した様子が示されている。列方向配線の素材および形成方法についても上述の第1の参考例と同じである。
表面伝導型放出素子の導電性薄膜の作製方法、通電フォーミング処理、活性化処理、マルチ電子ビーム源の駆動方法等々は、上述の第1の参考例と同じ物を採用した。
以上、説明した本構成の列側を分割配線としたマルチ電子ビーム源を用いて上述の第1の参考例と同様の駆動を行う事により、不要な電子放出を起こさない高輝度で、かつ、品質の良い画像表示を行う事ができた。
(第31の構成)
実装部と配線取り出しからの接続の構成としては以下の構成が挙げられる。
(参考例1)
図162(a)は、本第31の構成を適用する第1の参考例の配線接続構造を示す斜視図、図162(b)その断面図である。2321はマルチ電子ビーム源を形成した電子源基板、2322は電子線照射により発光する蛍光体を備えた表示用基板、2323は電子源基板2321の配線部と駆動電源とを接続するケーブル、2324は駆動電源である。本参考例では、行配線側のフラットケーブル長、列配線側のフラットケーブル長を、それぞれ約100mm、50mmとした。また、それぞれの誘導成分は約100nH、約50nHとした。
このマルチビーム電子源の配線交差部による容量成分をLCRメーターにより測定したところ、交差部当たり0.04pFで、n=3072とすると154pF(=c)となった。図163に表示パネルのマルチ電子ビーム源の等価回路図を示す。図163において、25002は行方向配線25004に対してパルス信号Vsを供給するための電源、25003は列方向配線25005に対してパルス信号Veを供給するための電源である。行方向配線25004と列方向配線25005のそれぞれの交差部には素子25009があり、各交差部毎にキャパシタCm、インダクタンスLmを有する。Lrは、行配線の取り出し部及び電源25002との接続ケーブル部の誘導成分、Lcは、列配線の取り出部及び電源25003との接続部の誘導成分である。本参考例では、誘導成分Lrは、約30mmの取り出し電極部での誘導成分約30nH、駆動電極と取り出し電極部を接続するフラットケーブル(約100mm)での誘導成分約100nHからなる。誘導成分Lrは、130nHと見積もられる。マトリックス部での誘導成分(素子間を接続する配線の誘導成分Lm×n)は約280nHである。列配線の取り出部及び電源との接続部の誘導成分Lcは、約30mmの取り出し電極部での誘導成分約30nH、駆動電源と取り出し電極部を接続するフラットケーブル(約50mm)での誘導成分約50nHからなる。Lc/nは0.08nHと見積もられる。従って、
L=130+280+0.08
=410.08nH、
C=154pF
となり、パネル特性周波数は22MHzと求められた。
一方、図163におけるVsおよびVeの立ち上がり時間を調べたところ、それぞれ約60nsecおよび80nsecで、最高周波数成分として約17MHzとなる。したがって、共振周波数を駆動信号の最高周波数よりも高くすることができ、リンギングの発生を十分低減することができた。以上は行選択駆動を行った場合のうち多くの電子放出素子が電子放出動作状態のときに相当する。
特定の画像を表示する場合、つまり、選択行のうちのわずかの素子数しか電子放出状態になる場合は、Lの式のうち実質的にnが小さな数字となるため、Lc成分は無視できなくなる場合がる。最大、Lc/n成分が80nH(列配線1列分の誘導成分)となり、共振周波数18.3MHzと求められる。この場合も共振周波数を駆動信号の最高周波数よりも高くすることができ、リンギングの発生を十分低減することができた。
本参考例では、行・列配線端部と駆動電源の接続部としてフラットケーブルとしたが、これに限定されるものではなく、タブやフレキシブル配線などを用いてもよい。
(参考例2)
本参考例では、マトリクスは配線部を2つの群に分割した電子源基板を用いた例を示す。N×M個の表面伝導型電子放出素子は、2つの群に分割され、各群をM/2本の行方向配線とn本の行方向配線により単純マトリックス配線されている。図164に、本参考例の表示パネルの斜視図を示す。図164中、前述の図158に示した構成と同様のものには同じ符号を付している。各構成部は、図158において説明したとおりであるので、各構成部の説明はここでは省略し、特徴点のもを以下に説明する。
本参考例では、行配線のフラットケーブル長、列配線のフラットケーブル長を、それぞれ約100mm、約50mmとした。また、それぞれの誘導成分を約100nH、約50nHとした。この場合、行配線側のフラットケーブル長、列配線側のフラットケーブル長を、このマルチビーム電子源の配線交差部による容量成分をLCRメーターにより測定したところ、交差部当たり0.04pFで、n=3072とすると154pF(=c)となった。また、図163に示した、行配線の取り出し部及び電源25002との接続ケーブル部の誘導成分Lrは、約30mmの取り出し電極部での誘導成分約30nH、駆動電極と取り出し電極部を接続するフラットケーブル(約100mm)での誘導成分約100nHからなる。Lrは、130nHと見積もられる。マトリックス部での誘導成分(素子間を接続する配線の誘導成分Lm×n)は約280nHである。列配線の取り出部及び電源25003との接続部の誘導成分Lcは、約30mmの取り出し電極部での誘導成分約30nH、駆動電源と取り出し電極部を接続するフラットケーブル(約50mm)での誘導成分約50nHからなる。Lc/nは、0.08nHと見積もられる。従って、
L=130+280+0.08
=410.08nH、
C=154pF
となり、パネル特性周波数は22MHzと求められた。
一方、図163におけるVsおよびVeの立ち上がり時間を調べたところ、それぞれ約60nsecおよび80nsecで、最高周波数成分として約17MHzとなる。したがって、共振周波数を駆動信号の最高周波数よりも高くすることができ、リンギングの発生を十分低減することができた。以上は行選択駆動を行った場合のうち多くの電子放出素子が電子放出動作状態のときに相当する。
特定の画像を表示する場合、つまり、選択行のうちのわずかの素子数しか電子放出状態になる場合は、Lの式のうち実質的にnが小さな数字となるため、Lc成分は無視できなくなる場合がる。最大でLc/n成分が80nH(列配線1列分の誘導成分)となり、共振周波数18.3MHzと求められる。この場合も、共振周波数を駆動信号の最高周波数よりも高くすることができ、リンギングの発生を十分低減することができた。
本参考例では、行・列配線端部と駆動電源の接続部としてフラットケーブルとしたが、これに限定されるものではなく、タブやフレキシブル配線などを用いてもよい。
以上のように、マトリクスが上記のように分割されている場合にも、本構成は有効である。
(第32の構成)
画像装置内における各部材の配置については以下の構成を採ることができる。
(参考例1)
本第32の構成を適用する第1の参考例の画像表示装置を図165を参照して説明する。図165は、画像装置の構成を模式的に示す断面図である。
この画像表示装置は、外装ケース4115中に表示パネル4100を収容して構成されている。表示パネル4100は、蛍光体を配したフェースプレート4107と、電子放出素子を配したリアプレート4105とを対向させて構成されている。4101はパネル内の暖った空気を自然対流によって流し出す空気取り出し口であり、同じく4102は空気導入口である。また、4103はフェースプレート4107を外部から防護し、破壊することを防ぐため設置してある透明な樹脂などで造られた前面板である。前面板4103には、光学的なフィルターを入れてコントラスト改善などの機能を付加しても良い。4104は、表示パネル4100を電気的に駆動するための駆動回路部であり、フレキシブル配線(不図示)などによって表示パネルの取り出し配線に電気的に接続されている。
本例における表示パネル4100を構成するフェースプレート4107、リアプレート4105の温度制御について、図165及び図166を用いて以下に説明する。
まず、前述のようにリアプレート4105の電子源から放出された電子ビームがフェースプレート4107上のメタルバックに印加された高電圧(アノード電圧:Va)によって加速され、フェースプレート4107上に設けられた蛍光体に衝突する。この衝突では、蛍光体の一部は発光するが、大部分は熱に変わる。その発熱量は、画像の種類などによっても変わるが、時間的に平均するとほぼ一定と考えられ、これを単位面積あたりでQf(W/m2)とする。一方、リアプレート4105上においては、マトリクス配線を通って駆動回路4104に戻り、その間にリアプレート上に配線、素子電極、電子放出部で熱に変わる。フェースプレートと同様に、この発熱量も時間的に平均するとほぼ一定と考えられ、これをQr(W/m2)とした。
駆動回路部4104では、リアプレート4105上の電子源を駆動するために、電流を出している。こちらの電流を駆動するに当たって、電気回路上に内部損失が発生するために、これらが発熱源となる。これについても、時間的に平均するとほぼ一定に考えられ、Qd(W/m2)とした。これらの関係を模式的な回路図で表わしたのが、図166である。本参考例の場合は、Qf=100(W/m2)、Qr=20(W/m2)、Qd=40(W/m2)であり、この時、d=5mmとした際に、フェースプレート4107とリアプレート4105の温度がほぼ同じになることがわかった(周辺温度20℃の時、約40℃)。すなわち、フェースプレート4107とリアプレート4105は、それぞれ異なる発熱量をもっているため、これらだけの関係で温度が決まる場合は、それぞれ異なる温度になるのは自明であるが、別の発熱源である駆動回路部4104をd=5mmの位置に配置することで、特にリアプレート4105の温度に影響を与え(より具体的には暖める)、フェースプレート4107とリアプレート4105の温度が同じになったと考えられる。これにより、両プレートの熱膨張量の差が減少して熱歪みが減少し、画像歪みや色ずれが実質的には生じなくなる。本参考例のような構成は、ファンなどの可動部分が無いため、静粛性が要求される家庭用デスプレイやコンピュータ用デスプレイとして好適といえる。
(参考例2)
本参考例における外装ケースを含めた構成は、上述の本構成の第1の参考例と同様である。本参考例において異なる点は、表示パネルの設計としてVaを下げ、同じ輝度を確保するために素子長を大きくして素子電流(If、Ie)を大きく取れるようにしたことである。本参考例の場合は、Qf=100(W/m2)、Qr=80(W/m2)、Qd=40(W/m2)であり、この時、d=30mmとした時、フェースプレート4107とリアプレート4105の温度がほぼ同じになることがわかった(周辺温度が20℃の時、約40℃)。このように、表面伝導型電子放出素子を用いたデスプレイの場合、パネルの設計値を変えることでフェースプレートでの発熱とリアプレートでの発熱との比率が変わってしまう。これにより、上述の第1の参考例と同様に両プレートの熱膨張量の差が減少して熱歪みが減少し、画像歪みや色ずれが実質的に生じなくなる。
(参考例3)
本参考例の構成を図167に示す。図167において、上述の本構成の第1の参考例(図165参照)と異なる点は、外装ケース4115に開けられた空気口4101、4102内に、強制対流用のファン4301、4302を設けたことである。ファン4301は、空気取り出し用ファンで、図面の上方向に軸流が発生するようになっている。他方、ファン302は、空気取り込み用ファンで、同じく上方向に軸流が発生するものである。これら2つのファンで、外装ケース内横断面積に平均して0.9m/sの流速が得られた。
各発熱量は、Qf=100(W/m2)、Qr=20(W/m2)、Qd=40(W/m2)であり、この場合d=10mmにした時にフェースプレート4107と4105の温度が同じになった(周辺温度が20℃のとき、約30℃)。この理由については、強制対流にすることでフェースプレート側の温度がより大きく下がり、駆動回路部4104の発熱のリアプレート4105への影響が小さくなる配置にした結果であると考えられる。
以上のように、本参考例においても、上述の第1の参考例と同様、両プレートの熱膨張量の差が減少して熱歪みが減少し、画像歪みや色ずれが実質的になくなる。本参考例のような構成は、周辺温度が上がるような環境下においてもパネル温度を上げないようにできるため、工場や野外と外気が遮断されないような場所での使用に好適といえる。
(参考例4)
本参考例の構成を図168に示す。図168において、上述の本構成の第1の参考例(図167参照)と異なる点は、外装ケース4115の空気口に防塵フェルタ4401を付加したことである。
本参考例においては、各発熱量は、上述のの本構成の第1の参考例と同様、Qf=100(W/m2)、Qr=20(W/m2)、Qd=40(W/m2)である。フェルターを設けたため、コンダクタンスが悪くなり、平均流速は約0.45m/sと参考例3の半分程度に下がった。この場合、d=7.5mmとした時、フェースプレート4107とリアプレート4105の温度がほぼ同じになることがわかった(周辺温度が20℃の時、約35℃)。これにより、上述の第1の参考例と同様、両プレートの熱膨張量の差が減少して熱歪みが減少し、画像歪みや色ずれが実質的に生じなくなる。
本参考例のような構成は、環境に多少の塵埃があってもフィルタでブロックされるため、屋外に近い場所での使用に好適といえる。
以上説明した参考例以外にも、種々の設計のディスプレイを実際に作製したり、あるいは実測のデータに基づく熱シミュレーションを行い、フェースプレート4107とリアプレート4105の温度差がなくなるような駆動回路部4104の配置を検討したところ、画像面積30インチ〜100インチの大きさの画像形成装置において、dの値を5mm〜30mmに配置することで、概ね温度差がなくなることが判明した。
(第33の構成)
以下に、本構成に係る装置の駆動の一態様例を説明する。
図169に、SEDパネルの駆動回路のブロック図を示す。H100は表示パネルであり、複数個の電子放出素子が行配線と列配線によりマトリクス配線され、電子放出素子からの放出電子ビームが高圧電源部H103から印加される高圧電圧により加速され、不図示の蛍光体に照射されることにより発光を得るものである。この不図示の蛍光体は、用途に応じて種々の色配列を取ることが可能であるが、ここでは、赤色・緑色・青色(以下RGBと記す)の3色の縦ストライプ状の色配列とする。
本例においては、ビデオ信号入力を表示する構成を示すが、ビデオ信号に限定されず、例えばコンピュータの出力信号など種々の画像信号に対しても同様の構成で対応できる。
H104はあるTV方式で変調されたビデオ信号入力を受けデコード信号とビデオ信号入力に重畳されていた同期信号を分離し出力するデコーダー部である。種々のTV方式に対応する場合は対応するTV方式毎に専用デコーダーを備えれば良い。
H105は走査線変換部であり、ビデオ信号入力の有効走査線数と表示パネルH100のライン数に応じて走査線信号の調整を行い表示パネルH100のライン数と同数の有効走査線信号を発生させる。例えば、入力信号がNTSC方式のビデオ信号であり、表示パネルのライン数が480本であった場合は、走査線変換部H105は、1フィールドあたり約240本の有効走査線数を有しており、2フィールドで1フレームを構成するNTSC信号から、ノンインターレース(非飛び越し)方式の線順次駆動が可能となるように、1フィールド=1フレームである有効走査線数480本の信号を出力する。
本参考例では、走査線変換部としてインターレース信号のプログレッシブ信号への変換の際に、フレームレートも変換する構成のインターレース−プログレッシブ変換(IP変換)回路を用いた。
本例では、入力信号がインターレース信号である場合、この回路を用いてプログレッシブ信号に変換を行う。そのIP変換のための具体的な構成を図178に示す。この参考例においては、インターレース信号をプログレッシブ信号に変換する際の走査線補完信号の発生に、フィールド間補完とフィールド内補完の両方を用いるように構成している。図17878において、17801は、信号の動き検出部である。画像信号の動きが大きい時は、フィールド内補完を行うのが好適であり、画像信号の動きが小さい時は、フィールド間補完を行うのが好適であるため、動き検出部17801において画像信号の動きを検出し、フィールド間補完信号とフィールド内補完信号の合成の比率を決定している。17807は、フィールド間補完回路であり、前のフィールド、例えば直前のフィールドの走査信号により、一つおきの走査線信号の間の走査線信号を決定する回路である。より具体的には、一つおきの走査線信号の間の走査線信号として、直前のフィールドの該当走査線の信号を用いるものである。17802は遅延回路であり、フィールド間補完を行うために画像信号を遅延させて出力する。17803は補完回路であり、遅延回路17802から出力される遅延された前のフィールドの信号により、補完すべき走査線信号を生成する。17808はフィールド内補完回路であり、一つおきの走査線信号の間の走査線信号を他の複数の走査線信号、例えば前記一つおきの走査線信号を合成演算することによって生成する回路である。17804は遅延回路であり、フィールド内補完を行うために画像信号を遅延させて出力する。17805は補完回路であり、遅延回路17804から出力される前の走査線信号と、遅延量の異なる走査線信号、例えば遅延されずに入力される走査線信号とを合成することにより、補完すべき走査線信号を生成する。17806は合成回路であり、動き検出部17801からの信号により、補完回路17803と補完回路17805からの補完信号の合成比率を決定して、プログレッシブ信号を出力する。この変換を行う際に、信号はデジタル信号であってもよく、遅延回路としてはメモリを用いることができる。また、このIP変換のための構成は、ハードウエア構成によるものに限らず、演算回路を用いてソフトウエアで行ってもよい。また、フィールド間補完、フィールド内補完のいずれか一方のみを行うものであってもよい。
また、本参考例では、走査線変換部H105は、デコード信号を蛍光体発光色であるRGB原色信号に変換するマトリクス回路も含んでいる。
輝度データサンプル部H106は、走査線変換部H105からのRGB原色信号を受け、走査線毎にRGB3系統並列に表示パネルH100の1ラインあたりの画素数と同数の輝度データをサンプリングする。本例では、蛍光体の色配列をRGB縦ストライプとしたので、表示パネルH100の1ラインあたりの画素数は、列配線数の1/3の本数である。
ガンマ変換部H107は、RGB3系統並列に備えられた階調特性の補正手段であり、ビデオ信号入力があらかじめ持つ非線型性(CRTのガンマ補正など)をリニアな特性にもどしたり、列配線変調部が発生する輝度変調信号と表示パネルH100の発光量の非線型性を補正する。補正量がRGB3系統で同じで良い場合は、必ずしも3系統備える必要はなく、後述する列配線変調部H101への輝度データなど1系統の信号のところで補正すればよい。
原色データ並び替え部H108は、ガンマ変換部H107から3系統並列に送られてくるRGB3原色毎の輝度データを表示パネルH100の蛍光体の色配列順に並び替え、1系統の輝度データとして列配線変調部H101に出力する。この列配線変調部H101への輝度データ出力では、システム制御部H111からの制御信号EN0により出力するか否かのON/OFF制御がなされる。
画像信号を表示させるために、本例においては、表示パネルH100を線順次走査駆動する。すなわち、画像信号の一走査線期間(前記走査線変換部で、表示パネルH100のライン数と同数に変換された後の走査線期間をいい、以下、水平1周期と呼ぶ)に、列配線変調部H101が備える列配線と同数のレジスタからなるシフトレジスタに輝度データを転送し、次の水平1周期の輝度データ転送が始まる前に、各列配線毎に備える列配線ドライバがシフトレジスタから輝度データを読み出し、次の水平1周期で全列配線同時に輝度データに対応する大きさの駆動量を各列配線に印加する。
このシフトレジスタ手段により、シリアル輝度データを並列に各列配線ドライバに伝えるためのいわゆるシリアル−パラレル変換を行っている。
輝度データのシフトレジスタへの読み込みは、タイミング発生部H110からのシフトクロックTM1により行われ、列配線ドライバ部へのデータの読み込み及び列配線への出力タイミングの制御は、シフトレジスタへの輝度データ転送タイミングを避けた位相に設定されているトリガ信号TM2により行われる。また、行配線走査部H102は、ほぼ水平1周期に等しい選択電圧パルスを、タイミング発生部H110からの水平周期クロックTM3および走査開始トリガであるTM4を受けて1行配線ずつ順に与えていく。これは、例えば行配線数と同数の1ビットシフトレジスタを備えれば実現できる。
タイミング発生部H110は、行配線走査部H102・列配線変調部H101の動作タイミング信号を発生するほか、不図示であるが走査線変換部H105や輝度データサンプル部H106などが動作するのに必要なタイミング信号を発生する。ビデオデコーダー部H104からの同期信号により、入力ビデオ信号に同期した各種タイミング信号を発生することができる。
行配線選択電圧パルスを印加されたラインの電子放出素子が列配線から印加される駆動量に応じた電子ビームを放出することになるので、列配線変調部H101へ入力される一水平周期の輝度データと行配線選択電圧パルスの位相が合うように走査開始トリガTM4を設定することで、良好な画像表示が可能となる。
輝度データに対応する大きさの駆動量を各列配線に印加する方法として下記4つの手段で実施できる。
(1)定電圧源印加・印加時間を輝度データに応じてパルス幅変調する。
(2)定電流源印加・印加時間を輝度データに応じてパルス幅変調する。
(3)電圧源印加・輝度データに応じて電圧源出力を振幅変調する。
(4)電流源印加・輝度データに応じて電流源出力を振幅変調する。
以下、この4手段について説明する。
(1)の方法は、各列配線毎に列配線駆動電位を印加するための電圧源手段と、各列配線毎に輝度データに応じて前記駆動電位が印加される時間の長さが変わるようにパルス幅変調手段(以下PWM手段と記す)を備えるものである。
PWM手段は、例えばダウンカウンタなどで構成され、ほぼ一水平周期以下の時間を所望の階調数で区切った時間を一周期とするカウントクロックでシフトレジスタから読み込んだ輝度データの大きさだけ計数し、カウントスタートからカウント終了までのパルスを出力することで実現できる。
このPWM手段からの出力パルスの間電圧源を列配線に接続し、それ以外の期間は接地することにより、輝度データに対応する大きさの駆動量を各列配線に印加することができる。
電圧源をある直流電位を印加するかしないかのSW手段で構成すれば駆動ドライバ部を簡単な回路で実現でき、安価な駆動回路を提供することができる。
(2)の方法は(1)の各列配線毎の電圧源手段を電流源手段に置き換えたものであり、PWM手段からの出力パルスの間電流源を列配線に接続し、それ以外の期間は接地することにより、輝度データに対応する大きさの駆動量を各列配線に印加することができる。
この方式は、表示パネルH100が高解像度化されたり大画面化されたときに有効な方法である。高解像度化されると電子放出素子の数も増えるため、線順次走査駆動を前提としている駆動方法では、選択時の行配線には大きな電流(1ライン分の電子放出素子の駆動電流の総和)が流れる。行配線の抵抗値によっては、この電流による電圧降下が発生することがある。すなわち、電圧源による駆動では、この配線電圧降下の影響で電子放出素子に印加される駆動電圧が減少し、結果、輝度低下する恐れがある。電流源による駆動の場合は、配線電圧降下が起きても、電子放出素子に印加される駆動電圧は変わらないため、輝度変動しないという長所がある。
(1)の方法では輝度階調をPWM手段で実現していたが、(3)の方法では、パルス幅を輝度データに応じて変えるのでなく、列配線に電圧源が接続される時間(パルス幅)を一定に設定し、輝度データに応じて電圧源の出力電圧振幅を変える。
出力電圧振幅を変える手段としては、例えば各列配線毎にD/A変換器を備え、水平周期毎にシフトレジスタに転送される輝度データをそのD/A変換器に伝え出力すればよい。
PWM手段の場合、約一水平周期期間を輝度階調数で割った周波数で出力パルス幅を計数していたが、表示パネルH100の大画面/高解像度化が進み、ライン数が増えた場合、一水平周期は短くなり、PWM動作周波数が高くなる。また、画質向上のために、階調数を増加させる場合にも、やはりPWM動作周波数が高くなる。
一方、輝度データに応じて出力電圧振幅を変える方法においては、列配線を駆動する時間は一定なので、列配線変調部の動作周波数は格段に遅くすることが出来る。
(4)の方法は、(3)の各列配線毎の電圧源手段を電流源手段に置き換えたものであり、輝度データに応じて電流源の出力電流振幅を変えるものである。(2)の方法同様、行配線の電圧降下が懸念させる場合に有効な方法である。
上述した(1)〜(4)の駆動方法では、それぞれ輝度データに応じた駆動量と表示パネルH100の発光量の関係が変わる場合があるので、それぞれの駆動方法の発光特性に応じてガンマ変換部H107の変換特性を変える必要がある。
例えば、PWM変調の場合は、輝度データと発光量は、ほぼリニアな関係となり、あらかじめビデオ信号につけられているガンマ特性をキャンセルするような変換特性をガンマ変換部H107は持てば良い。
また、表示パネルH100の電子放出素子は、図173に示されるような駆動電圧−電子放出量特性を有しており、駆動電圧−発光量特性もほぼ同様となる。したがって、(3)の電圧振幅変調で輝度階調を表現する場合には、この特性を考慮した変換特性をガンマ変換部H107は持てば良い。
なお、図173に示した特性図は、電子放出素子の(放出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、及び(素子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例である。放出電流Ieは素子電流Ifに比べて著しく小さく、同一尺度で図示するのが困難であり、また、これらの特性は素子の大きさや形状等の設計パラメータを変更することにより変化するものであるため、2本のグラフは各々任意単位で図示した。
表示装置に用いた素子は、放出電流Ieに関して、以下に述べる3つの特性を有している。
第1に、ある電圧(これを閾値電圧Vthと呼ぶ)以上の大きさの電圧を素子に印加すると急激に放出電流Ieが増加するが、閾値電圧Vth未満の電圧では放出電流Ieはほとんど検出されない。すなわち、放出電流Ieに関して、明確な閾値Vthを持った非線形素子である。
第2に、放出電流Ieは、素子に印加する電圧Vfに依存して変化するため、電圧Vfで放出電流Ieの大きさを制御できる。
第3に、素子に印加する電圧Vfに対して、素子から放出される電流Ieの応答速度が速いため、電圧Vfを印加する時間の長さによって素子から放出される電子の電荷量を制御できる。
以上のような特性を有するため、表面伝導型電子放出素子を表示装置に好適に用いることができた。例えば、多数の素子を表示画面の画素に対応して設けた表示装置において、第1の特性を利用すれば、表示画面を順次走査して表示を行うことが可能である。すなわち、駆動中の素子には、所望の発光輝度に応じて閾値電圧Vth以上の電圧を適宜印加し、非選択状態の素子には、閾値電圧Vth未満の電圧を印加する。駆動する素子を順次切り替えてゆくことにより、表示画面を順次走査して表示を行うことが可能である。また、第2の特性または第3の特性を利用することにより、発光輝度を制御することができるため、階調表示を行うことが可能である。
また、(1)〜(4)のいずれかの駆動方法だけでなく、これらを組み合わた駆動方法も当然実現できる。例えば、階調表現として、PWM手段と振幅変調手段の両方を備え、階調表現の一部を振幅変調で行うことで表現可能な階調数を増やしたり、PWMクロック周波数を遅くしたりすることが出来る。あるいは、PWM手段と振幅変調手段の両方を備え、輝度データに応じた階調表現はPWM手段で行い、明るさ調整や色調整などを振幅変調で行ってもよい。逆に、階調表現を振幅変調で行い、明るさや色調整をPWM変調で行うようにしてもよい。さらに、電圧源出力と電流源出力の両方を備え、電圧源出力電圧で決まるある電位までは電圧源で駆動し、そこから電流源で駆動することも実現できる。この駆動により、駆動印加時の過渡的な立ち上がり特性を改善することができる。
また、本参考例は、自動明るさ制御機能(以下ABLと呼ぶ)を実現するために、平均輝度レベル検出部H109を備える。この機能は、画像表示装置の消費電力抑制や発光面の温度上昇抑制のために、表示パネルの平均輝度があるレベルを超えないように制御するものである。平均輝度レベル検出部H109は、ガンマ変換部H107からの輝度データ出力から表示パネルH100に表示される一フレーム期間の平均輝度レベルを検出し、検出信号DT5をシステム制御部H111に伝える。システム制御部H111は、図169に示されるパネル駆動部のシステム制御を司る部分であり、CPU、CPUの動作を規定するプログラムが格納されているROM、CPUを安定に立ち上げるためのリセット手段、例えば列配線変調部H101の出力をON/OFF制御するなど各部動作状態を2値で規定したり、ユーザーI/Fからの指示情報をCPUに取り込むためのIO手段、各部の動作状態を広範囲の中から規定するためのD/A変換手段やそのデータを保存するためのRAM、電源OFF時もデータを保持し、次の電源ON時に読み出し前の状態を再現させるためのバックアップメモリ、ABLや各部動作状態監視のためのA/D変換手段などからなる。
本例においては、システム制御部H111は、列配線変調部H101からの各列配線駆動量の大きさを可変する制御信号CNT1を出力する。また、列配線駆動出力を出力するか否かを制御するON/OFF信号であるEN1を出力する。列配線変調部H101は、この列配線駆動量が印加された結果列配線に生じるパルス電圧の振幅値を検出し、検出信号DT1をシステム制御部H111に伝える。
この場合、制御信号CNT1は、列配線に電圧源を接続する場合は、電圧源の出力電圧を全列配線同時に変化させ、電流源が接続される場合は、電流源の出力電流を全列配線同時に変化させる。あるいは、全列配線同時でなく、CNT1を3原色RGB毎に3系統持ち、Rの列配線、Gの列配線、Bの列配線ごとに変化させてもよい。
また、システム制御部H111は、行配線変調部H102からの各行配線選択電位を可変する制御信号CNT2を出力する他、行配線選択電圧パルスを出力するか否かを制御するON/OFF信号であるEN2を出力する。行配線変調部H102は、この行配線選択電位を検出し、検出信号DT2をシステム制御部H111に伝える。この場合、制御信号CNT2は、選択時の行配線に印加される電位を制御するが、CNT2を2系統持ち非選択時の行配線の電位を制御することもできる。
また、システム制御部H111は、高圧電圧発生部H103からの高圧出力電圧の大きさを可変する制御信号CNT3を出力する。高圧電圧発生部H103は、この高圧出力電圧を検出し、検出信号DT3をシステム制御部H111に伝える。ABL動作は、列配線駆動量を可変するCNT1を利用して実現できる。すなわち、システム制御部H111が平均輝度レベル検出部H109からの検出信号DT5をモニタして、平均輝度レベルが低いときは、列配線駆動量は制御せず、ある平均輝度レベル以上になったときにCNT1により列配線駆動量を小さくしていくことで表示パネルH100の平均発光量を抑制する。
また、列配線駆動部が電圧源により構成される場合は、行配線選択電位を可変する制御信号CNT2を利用して同じようにABL動作が実現できる。
ここまで、ABL動作のために平均輝度レベル検出部H109からの検出信号DT5を利用する説明をしたが、これに限定される訳でなく、例えば高圧電圧発生部H103から表示パネルH100に流れる平均電流の検出値を用いても良い。
また、輝度抑制手段として、表示パネルH100の電子放出素子の駆動量を制御する例で説明したが、これに限定される訳でなく、例えば高圧電圧発生部H103の出力を制御したり、あるいは列配線変調部に入力される輝度データの大きさを制御したりしても実現できる。
図169に示す画像表示装置においては、さらに主電源部H121、S電源部H122、K電源部H123を備える。主電源部H121は、不図示であるが電源スイッチ手段を備え、このスイッチ手段がONのときにAC入力を受けS電源部H122、K電源部H123、高圧電圧発生部H103に電力供給するための電源出力PS0を出力する。この電源出力PS0は、システム制御部H111からの制御信号PCN0により出力するか否かのON/OFF制御がなされる。また、主電源部H121は、AC入力を監視する検出信号DT4を出力し、システム制御部H111に伝える。
主電源部H121は、システム制御部H111とユーザーI/F部H112からなるブロックSへの電力供給ラインの一つである電源出力PSSを出力する。電源出力PSSは、ユーザーI/F部H112とユーザーI/F部H112からの入力を受け、処理できるシステム制御部H111の最小部分のみが動作するために給電する。ここでは、電源出力PSSのみで動作している状態をスタンバイモードと呼ぶ。スタンバイモードでは、ユーザーI/F部H112内に含まれるリモコン受信部が生きており、ユーザー指示により、システムが立ち上がることが出来る。
S電源部H122は、ビデオデコーダ部H104、走査変換部H105、輝度データサンプル部H106、ガンマ変換部H107、原色データ並び替え部H108、平均輝度レベル検出部H109、タイミング発生部H110からなるブロックB1とブロックSへの電力供給ラインである電源出力PS1を出力する。この電源出力PS1は、システム制御部H111からの制御信号PCN1により出力するか否かのON/OFF制御がなされる。
K電源部H123は、列配線変調部H101、行配線走査部H102からなるブロックB2への電力供給ラインである電源出力PS2を出力する。この電源出力PS2は、システム制御部H111からの制御信号PCN2により出力するか否かのON/OFF制御がなされる。
高圧電圧発生部H103からの出力PS3は、システム制御部H111からの制御信号PCN3により出力するか否かのON/OFF制御がなされる。
システム制御部H111は、電源立ち上がり時の動作手順や電源立ち下げ時の動作手順、異常時の動作手順を規定する。表示パネルH100は、高圧電圧印加定格値および表示パネルH100内の電子放出素子の印加電圧定格値を有する。これらの定格値を超えると、表示パネルH100が破損してしまう恐れがあるため、電源立ち上げ時や電源立ち下げ時、あるいは予期せぬ故障などが起こってもこれらの定格値を超えることがないようにする。
電源立ち上げ時の処理手順を図170に示す。
電源立ち上げ時は、主電源部H121内の電源SWがONされることでスタートするモードと、スタンバイモードから立ち上がるモードとがある。電源SWがONされると、主電源部H121にAC電源が給電され、主電源部H121は電源出力PSSをブロックSに給電する。システム制御部H111内のリセット手段が、電源出力PSSの安定後CPUを動作させる。CPUは、動作プログラムが格納されているROMからプログラムをダウンロードし、以降プログラムに従いシステムを初期化する。
この初期化時に、さらにシステム制御部H111は、電源出力コントロール信号PCN0〜3をOFF状態に設定し、列配線変調部H101への輝度データ出力イネーブル信号EN0・列配線変調部H101からの駆動量出力イネーブル信号EN1・行配線走査部からの選択パルス出力イネーブルEN2をOFF状態にし、高圧電圧出力値や列配線駆動量・行配線選択電位を制御する信号CNT1〜3を出力最小値の状態に設定する(ステップS100)。
スタンバイモードにおいては、初期化はすでに終了している。初期化が終了したら、システム制御部H111はブロックS、ブロックB1を起動するために、電源出力コントロール信号PCN0、PCN1をONにする。これにより、主電源部H121よりメイン給電ラインPS0が出力され、S電源部H122から電源出力PS1が出力される。PS1が給電された後、システム制御部H111は内蔵されているバックアップメモリから、表示パネルH100の駆動条件データ(高圧電圧出力値設定データや列配線駆動量設定データ・行配線選択電位設定データなど)を読み出す。PS1がブロックB1に給電されることで、入力されたビデオ信号を処理する部分が動作を開始する(ステップS101)。
システム制御部H111は、ブロックB1の動作が安定するのを待った後、ブロックB2を起動するために電源出力コントロール信号PCN2をONにする。また、列配線駆動量・行配線選択電位の出力準備のために、列配線駆動量設定データ・行配線選択電位設定データを内蔵するD/Aコンバータ手段に転送することでCNT1,CNT2信号を出力する。また、列配線変調部H101や行配線走査部H102内のシフトレジスタのデータがすべて0になるよう初期化する(ステップS102)。
列配線電位異常監視信号DT1、行配線電位異常監視信号DT2により正常に列配線駆動量・行配線選択電位の出力準備が行われたことを確認した後、システム制御部H111は、列配線変調部H101への輝度データ出力イネーブル信号EN0を出力状態にし、次に、列配線変調部H101からの駆動量出力イネーブル信号EN1を出力状態にし、次に、行配線走査部からの選択パルス出力イネーブルEN2を出力状態にする(ステップS103)。
システム制御部H111は、電源出力コントロール信号PCN2をONにし、所望の高圧電圧を出力するために高圧電圧出力値設定データを内蔵するD/Aコンバータ手段に転送し、CNT3を所定値に設定する。高圧電圧の立ち上げをソフトスタートにするために、いきなり所定値をCNT3に出力するのでなく最小値からある時定数でゆるやかに所定値に達するようにD/Aコンバータ手段へのデータ転送を段階的に行う(ステップS104)。
以上の手順により、立ち上げは完了する。あとDT1〜4を監視し、異常があれば異常処理モードに移る(ステップS105)。また、電源OFF要求があれば、電源OFFモードに移る(ステップS106)。図170においては、電源立ち上がりシーケンスの説明のみを行っているので、上記内容しか説明していないが、システム制御部H111が、例えばユーザー要求に応じて画質調整できるなど、他の機能があることは言うまでもない。
図171に立ち下げ時の処理手順を示す。ユーザーI/F部H112経由で、システム制御部H111がリモコンなどによるユーザーからの電源OFFの指示信号を受け取ると、システム制御部H111は電源OFFモードに入る。まず高圧電源を立ち下げるために高圧電圧出力値設定制御信号CNT3を最小にし電源出力コントロール信号PCN3をOFFにする(ステップS200)。
システム制御部H111は 行配線走査部からの選択パルス出力イネーブルEN2をOFF状態にし、次に列配線変調部H101からの駆動量出力イネーブル信号EN1をOFF状態にし、その次に列配線変調部H101への輝度データ出力イネーブル信号EN0をOFF状態にする(ステップS201)。
次に、ブロックB2を立ち下げるために、システム制御部H111は、列配線駆動量・行配線選択電位制御信号CNT1,CNT2信号を最小に設定し、電源出力コントロール信号PCN2をOFFにする(ステップS202)。
高圧電源、表示パネル駆動部の立ち下げ指示の後、スタンバイモードに入るために、システム制御部H111は、電源出力コントロール信号PCN1、電源出力コントロール信号PCN0をOFFにする(ステップS203)。そして、電源ON要求があれば、電源ONモードに移る(ステップS106)
以上の手順により、ユーザーのリモコンなどからの再起動信号のみを受けつけるだけのスタンバイモードに入る。
図172に、異常時の処理手順を示す。ここで、異常時とは、下記3種を想定している。
(A)AC入力がなくなる場合。
(B)高圧電源異常。
(C)電子放出素子の駆動電圧異常。
以上のような異常の確認をまず行う(ステップS300)。以下、各異常に対する動作を順次説明する。
(A)AC入力がなくなる場合の処理手順について:
本来、画像表示装置は、ユーザーからの電源OFF指示により前述のようにして規定のシーケンスにより立ち下がることが望ましいが、停電やACケーブルが抜けてしまうなど望まない状況で立ち下がる場合がある。
図169においては、システム制御部H111が主電源部H121からの入力AC電位検出信号DT4により、AC入力変動を監視している。そして、入力AC電位が想定値より低下した場合は、主電源H121の動作を停止する前に、DT4により異常状態であることを判別し、システム制御部H111がスタンバイモードへの移行を指示する。
まず、システム制御部は、高圧電源を緊急OFFするために電源出力コントロール信号PCN3をOFFにし(ステップS301)、行配線走査部・列配線部からの出力を緊急OFFするためにイネーブル信号EN0〜2を同時にOFF状態にする(ステップS302)。
次に、高圧電圧発生部H103およびブロックB2の立ち下げ処理の残りである高圧電圧出力値設定制御信号CNT3を最小にし、列配線駆動量・行配線選択電位制御信号CNT1、CNT2信号を最小に設定する。そして、電源出力コントロール信号PCN2をOFFにする(ステップS303)。
ここで、システム制御部H111は、スタンバイモードに移行する前に、再度入力AC電位を確認する(ステップS304)。そして、入力ACが正常状態に復帰したならば再起動処理を行い(ステップS305、S306)、主電源部H121へのAC入力が復帰していないならスタンバイモードへ移行する(ステップS307)。この場合は、再びON状態になるためにはユーザーが再起動を要求する必要がある。
(B)高圧電源異常の場合の処理手順について:
図169においては、システム制御部H111が高圧電圧発生部H103からの高圧電位検出信号DT3により、高圧電位変動を監視している。そして、高圧電位が想定値より上昇した場合、あるいはCNT3による指示値との差が大きくなった場合は、高圧電圧発生部H103が異常状態であると判定し、システム制御部H111は異常処理を行う。
まず、システム制御部は、高圧電源を緊急OFFするために、電源出力コントロール信号PCN3をOFFにし(ステップS308)、行配線走査部・列配線部からの出力を緊急OFFするためにイネーブル信号EN0〜2を同時にOFF状態にする(ステップS309)。
次に、高圧電圧発生部H103およびブロックB2の立ち下げ処理の残りである高圧電圧出力値設定制御信号CNT3を最小にし、列配線駆動量・行配線選択電位制御信号CNT1,CNT2信号を最小に設定する。そして、電源出力コントロール信号PCN2をOFFにする(ステップS310)。
この異常は、故障であるためシステム制御部H111はスタンバイモードに移行する前に、高圧電圧発生部H103が異常になった旨の異常モードデータをバックアップメモリに書き込む(ステップS311)。そして、スタンバイモードへ移行する。このことにより、修理する場合に故障モードを、バックアップメモリを確認することにより知ることが出来る。
(C)電子放出素子の駆動電圧異常:
電子放出素子の駆動電圧異常は、行配線選択電位(非選択時の電位を規定する場合は非選択電位も含む)及び列配線印加電位(非印加時の電位を規定する場合は非印加時電位も含む)のいずれかの異常が考えられる。
図169においては、システム制御部H111が、列配線変調部H101からの列配線に生じるパルス電圧の振幅値検出信号DT1および行配線変調部H102からの行配線選択電位検出信号DT2により駆動電圧異常を監視している。
そして、列配線駆動電圧振幅値が想定値より上昇した場合あるいはCNT1による指示値との差が大きくなった場合は、列配線変調部H101が異常状態であると判定し、システム制御部H111が異常処理を行う。
また、行配線選択電位が想定値より上昇した場合あるいはCNT2による指示値との差が大きくなった場合は、行配線走査部H102が異常状態であると判定し、システム制御部H111が異常処理を行う。列配線変調部H101の異常・行配線走査部H102の異常の場合、異常処理手順は同じであり、システム制御部は行配線走査部・列配線部からの出力を緊急OFFするためにイネーブル信号EN0〜2を同時にOFF状態にし(ステップS312)、高圧電源を緊急OFFするために電源出力コントロール信号PCN3をOFFにする(ステップS313)。
次に、高圧電圧発生部H103およびブロックB2の立ち下げ処理の残りである高圧電圧出力値設定制御信号CNT3を最小にし、列配線駆動量・行配線選択電位制御信号CNT1,CNT2信号を最小に設定する。そして電源出力コントロール信号PCN2をOFFにする(ステップS310)。
この異常は、故障であるためシステム制御部H111は、スタンバイモードに移行する前に、列配線変調部H101もしくは行配線走査部H102が異常になった旨の異常モードデータをバックアップメモリに書き込む(ステップS311)。そして、スタンバイモードへ移行する。このことにより、修理する場合に、故障モードを、バックアップメモリを確認することにより知ることが出来る。
以上説明した電源立ち上がり時の動作手順・電源立ち下げ時の動作手順・異常時の動作手順により、表示パネルH100への定格外の高圧電圧印加および表示パネルH100内の電子放出素子への定格外駆動印加電圧を防止することができる。
(第34の構成)
以下に、本発明の各種装置への応用例について説明する。
図174は、前述の各構成の説明の表面伝導型電子放出素子を電子ビーム源として用いたディスプレイパネルに、例えばテレビジョン放送を初めとする種々の画像情報源より提供される画像情報を表示できるように構成した多機能表示装置の一例を示すブロック図である。図中、2100はディスプレイパネル、2101はディスプレイパネルの駆動回路、2102はディスプレコントローラ、2103はマルチプレクサ、2104はデコーダ、2105は入出力インターフェース回路、2106はCPU、2107は画像生成回路、2108、2109及び2110は画像メモリーインターフェース回路、2111は画像入力インターフェース回路、2112及び2113はTV信号受信回路、2114は入出部である。
なお、本表示装置は、例えばテレビジョン信号のように映像情報と音声情報の両方を含む信号を受信する場合には、当然、映像の表示と同時に音声を再生するものであるが、音声情報の受信、分離、再生、処理、記憶などに関係する回路やスピーカーなどは、当該分野で使用されているものが適用可能である。
以下、画像信号の流れに沿って各部の機能を説明する。
まず、TV信号受信回路2113は、例えば電波や空間光通信などのような無線伝送系を用いて伝送されるTV画像信号を受信するための回路である。受信するTV信号の方式は、特に限られるものではなく、例えば、NTSC方式、PAL方式、SECAM方式などの諸方式でもよい。また、これらよりさらに多数の走査線よりなるTV信号(例えばMUSE方式をはじめとする、いわゆる高品位TV)は、大面積化や大画素数化に適した前記ディスプレイパネルの利点を生かすのに好適な信号源である。TV信号受信回路2113で受信されたTV信号はデコーダ2104に出力される。
TV信号受信回路2112は、例えば同軸ケーブルや光ファイバーなどのような有線伝送系を用いて伝送されるTV画像信号を受信するための回路である。前記TV信号受信回路2113と同様に、受信するTV信号の方式は特に限られるものではなく、また本回路で受信されたTV信号もデコーダ2104に出力される。
画像入力インターフェース回路2111は、例えばTVカメラや画像読み取りスキャナーなどの画像入力装置はから供給される画像信号を取り込むための回路で、取り込まれた画像信号はデコーダ2104に出力される。画像メモリインターフェース回路2110は、ビデオテープレコーダー(以下、VTRと略す)に記憶されている画像信号を取り込むための回路で、取り込まれた画像信号はデコーダ2104に出力される。画像メモリーインターフェース回路2109は、ビデオカメラに記憶されている画像信号を取り込むための回路で、取り込まれた画像信号はデコーダ2104に出力される。
画像メモリーインターフェース回路2108は、いわゆる静止画ディスクのように、静止画像データを記憶している装置から画像信号を取り込むための回路で、取り込まれた静止画像データはデコーダ2104に出力される。入出力インターフェース回路2105は、本表示装置と、外部のコンピュータもしくはコンュータネットワーク、あるいはプリンターなどの出力装置とを接続するための回路である。画像データや文字、図形情報の入出力を行うのはもちろんのこと、場合によっては、本表示装置の備えるCPU2106と外部との間で制御信号や数値データの入出力などを行うことも可能である。
画像生成回路2107は、入出力インターフェース回路2105を介して外部から入力される画像データや文字、図形情報や、あるいはCPU2106より出力される画像データや文字・図形情報に基づいて表示用画像データを生成するための回路である。本回路の内部には、例えば画像データや文字・図形情報を蓄積するための書き換え可能メモリーや、文字コードに対応する画像パターンが記憶されている読み出し専用メモリーや、画像処理を行うためのプロセッサーなどをはじめとして、画像の生成に必要な回路が組み込まれている。本回路により生成された表示用画像データは、デコーダ2104に出力されるが、場合によっては、入出力インターフェース回路2105を介して外部のコンピュータネットワークやプリンターに出力することも可能である。本例に用いた画像情報処理回路は、デコーダ2104、マルチプレクサ2103及び画像生成回路2107によって構成される。
CPU2106は、主として本表示装置の動作制御、表示画像の生成、選択及び編集等に関わる作業を行う。例えば、マルチプレクサ2103に制御信号を出力し、ディスプレイパネルに表示する画像信号を適宜選択したり組み合わせたりする。また、その際には、表示する画像信号に応じてディスプレイパネルコントローラー2102に対して制御信号を発生し、画面表示周波数や走査方法(例えばインターレースかノンインターレースか)や一画面の走査線の数など表示装置の動作を適宜制御する。また、CPU2106は、画像生成回路2107に対して画像データや文字・図形情報を直接出力したり、あるいは入出力インターフェース回路2105を介して外部のコンピュータやメモリーをアクセスしたりして画像データや文字・図形情報を入力する。
なお、CPU2106は、むろんこれ以外の目的の作業にも関わるものであってもよい。例えば、パーソナルコンピュータやワードプロセッサなどのように、情報を生成したり処理する機能に直接関わってもよい。あるいは、前述したように入出力インターフェース回路2105を介して外部のコンピューターネットワークと接続し、例えば数値計算などの作業を外部機器と協同して行ってもよい。
入力部2114は、CPU2106に使用者や命令やプログラム、あるいはデータなどを入力するためのものであり、例えばキーボードやマウスのほか、ジョイスティック、バーコードリーダー、音声認識装置など多様な入力機器を用いることが可能である。
デコーダ2104は、2107ないし2113より入力される種々の画像信号を3原色信号、または輝度信号とI信号、Q信号に逆変換するための回路である。なお、同図中に点線で示すように、デコーダ2104は内部に画像メモリーを備えるのが望ましい。これは、例えばMUSE方式を初めとして、逆変換するに際して、画像メモリーを必要とするようなデレビ信号を扱うためである。また、画像メモリーを備えることにより、静止画の表示が容易になる、あるいは画像生成回路2107及びCPU2106と協同して画像の間引き、補完、拡大、縮小、合成をはじめとする画像処理や編集が容易に行えるようになるという利点が生まれるからである。
マルチプレクサ2103は、CPU2106より入力される制御信号に基づき表示画像を適宜選択するものである。すなわち、マルチプレクサ2103は、デコーダ2104から入力される逆変換された画像信号のうちから所望の画像信号を選択して駆動回路2101に出力する。その場合には、一画面表示時間内で画像信号を切り替えて選択することにより、いわゆる多画面テレビのように、一画面を複数の領域に分けて領域によって異なる画像を表示することも可能である。
ディスプレイパネルコントローラー2102は、CPU2106より入力される制御信号に基づいて駆動回路2101の動作を制御するための回路である。まず、ディスプレイパネルの基本的な動作に関わるものとして、例えばディスプレイパネルの駆動用電源(図示せず)の動作シーケンスを制御するための信号を駆動回路2101に対して出力する。ディスプレイパネルの駆動方法に関わるものとして、例えば画面表示周波数や走査方法(例えばインターレースかノンインターレースか)を制御するための信号を駆動回路2101に対して出力する。また、場合によっては、表示画像の輝度、コントラスト、色調、シャープネスといった画質の調整に関わる制御信号を駆動回路2101に対して出力する場合もある。
駆動回路2101は、ディスプレイパネル2100に印加する駆動信号を発生するための回路であり、マルチプレクサ2103から入力される画像信号と、ディスプレイパネルコントローラ2102より入力される制御信号に基づいて動作するものである。
以上、各部の機能を説明したが、図174に例示した構成により、本表示装置においては、多様な画像情源より入力される画像情報をディスプレイパネル2100に表示することが可能である。すなわち、テレビジョン放送をはじめとする各種の画像信号は、デコーダ2104において逆変換された後、マルチプレクサ2103において適宜選択され、駆動回路2101に入力される。一方、ディスプレイコントローラー2102は、表示する画像信号に応じて駆動回路2101の動作を制御するための制御信号を発生する。駆動回路2101は、画像信号と制御信号に基づいてディスプレイパネル2100に駆動信号を印加する。これにより、ディスプレイパネル2100に画像が表示される。これらの一連の動作は、CPU2106により統括的に制御される。
また、本表示装置においては、デコーダ2104に内蔵する画像メモリや、画像生成回路2107及びCPU2106が関与することにより、単に複数の画像情報の中から選択したものを表示するだけでなく、表示する画像情報に対して、例えば、拡大、縮小、回転、移動、エッジ強調、間引き、補間、色変換、画像の縦横比変換などをはじめとする画像処理や、合成、消去、接続、入れ換え、はめ込みなどをはじめとする画像編集を行うことも可能である。
また、本例の説明では、特に触れなかったが、上記画像処理や画像編集と同様に、音声情報に関しても処理や編集を行うための専用回路を設けてもよい。従って、本表示装置は、テレビジョン放送の表示機器、テレビ会議の末端機器、静止画像及び動画像を扱う画像編集機器、コンピュータの末端機器、ワードプロセッサはじめとする事務用末端機器、ゲーム機などの機能を一台で兼ね備えることが可能で、産業用あるいは民生用として極めて応用範囲が広い。
なお、図示した例は、表面伝導型電子放出素子を電子ビーム源とするディスプレイパネルを用いた表示装置の構成の一例を示したものにすぎず、これのみに限定されるものではない。例えば、図示した構成要素のうち、使用目的上必要のない機能に関わる回路は省いても差し支えない。また、これとは逆に、使用目的によっては、更に構成要素を追加してもよい。例えば、本表示装置をテレビ電話機として応用する場合には、テレビカメラ、音声マイク、照明機、モデムなどを含む送受信回路などを構成要素に追加するのが好適である。
本表示装置においては、とりわけ表面伝導型電子放出素子を電子ビーム源とするディスプレイパネルは容易に薄型化できるため、表示装置全体の奥行きを小さくすることが可能である。加えて、表面伝導型電子放出素子を電子ビーム源とするディスプレイパネルは、大画面化が容易で輝度が高く視野角特性にも優れるため、本表示装置は臨場感にあふれる迫力に富んだ画像を視認性よく表示することが可能である。