JP3825662B2 - 熱型赤外線イメージセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外線を熱として感知する熱型赤外線検出器(画素)を2次元配置した赤外線イメージセンサに係わり、特に複数個のダイオード素子を直列接続して熱型赤外線検出器を構成した熱型赤外線イメージセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、赤外線を熱として感知する熱型赤外線検出器の中で、検出部に半導体接合素子を含むpn接合ダイオード型熱型赤外線検出器がある。この検出器では、pn接合の順方向電流を固定した際の順方向電圧の温度依存性から、検出器に照射された赤外線強度を計測することができる。従って、複数の検出器を2次元配置しておくことによって、被写体の温度分布を知ることが可能となる。
【0003】
図6は、Siダイオード103を検出部に用いた従来例のpn接合ダイオード型熱型赤外線検出器の概略図を示す。この検出器は、Siの製造ラインを用いて全て作製できるので、製造コストを安価にできるという利点がある。また、pn接合ダイオード型の利点として、検出器を2次元に配置したイメージセンサにおいては非選択時にはダイオードには逆電圧が印加されるが、そのときのリーク電流を極めて小さくすることができる。
【0004】
ところで、pn接合ダイオード型の熱型赤外線検出器では、赤外線受光感度が直列に接続したダイオード数に比例するので、感度を増すためにはダイオード数を増やす必要がある。ダイオード数の増加により検出部の駆動電圧も増加することになり、例えば図7の順方向電圧印加時の電流−電圧特性に示すように、ダイオード8個では8V程度の電圧が必要となる。このような駆動電圧の上昇により周辺回路部(駆動部、信号読み出し部)の耐圧が必要となるために、周辺回路部の高速動作が困難となり、結果としてイメージセンサの画素数が制限されてしまう。また、消費電力の増大を招き、周辺回路部での発熱増加のためにペルチェなどの温調機構が必要となる。
【0005】
上記の問題を解決するために、図6のpn接合ダイオードをMOSFETからなるダイオードに置き換えた検出器もある。特に、MOS構造では、チャネル濃度を変えることにより電圧しきい値を低減することができ、駆動電圧を低く設定することが可能である。しかしながら、電圧しきい値を低くすると、イメージセンサにおいて非選択時の逆電圧印加によるリーク電流が増大し、選択画素の検出感度の低下の原因となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来、赤外線検出部にpn接合ダイオードを用いる場合には、感度向上のために多数のダイオード数が必要となり、高い駆動電圧となってしまう。また、pn接合ダイオードの替わりにMOSFETからなるダイオードを用いて駆動電圧を下げることはできるが、この場合は非選択時のリーク電流も増大してしまい高感度化が困難となる。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮して成されたもので、その目的とするところは、検出部の駆動電圧を低減すると共に、非選択時の検出部におけるリーク電流を低減することを可能とした熱型赤外線イメージセンサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(構成)
上記課題を解決するために本発明は次のような構成を採用している。
【0009】
即ち本発明は、複数の半導体素子を直列接続して形成された熱型赤外線検出画素を2次元配置してなる熱型赤外線イメージセンサであって、各々の検出画素における複数の半導体素子のうちの1つはpn接合ダイオードからなり、動作電圧が高くリーク電流が小さいダイオード素子で、残りはゲートとドレインを接続したMOSFETからなり、動作電圧が低くリーク電流が大きいダイオード素子であることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、複数の半導体素子を直列接続して形成された熱型赤外線検出画素を2次元配置してなる熱型赤外線イメージセンサであって、各々の検出画素における複数の半導体素子のうちの1つは、ゲートとドレインを接続したEタイプのMOSFETからなり、動作電圧が高くリーク電流が小さいダイオード素子で、残りは、ゲートとドレインを接続したDタイプのMOSFETからなり、動作電圧が低くリーク電流が大きいダイオード素子であることを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明の望ましい実施態様としては次のものが挙げられる。
【0014】
(1) 各検出画素を構成する複数のダイオード素子は、当該検出画素の検出信号を読み出す際の選択時に順バイアスされ、当該検出画素の非選択時には逆バイアスされるものであること。
【0015】
(2) 各検出画素は、Si基板上に熱的に分離して形成された島状の半導体領域に形成されること。
【0016】
(作用)
本発明によれば、リーク電流は大きいが動作電圧の低いダイオードを複数個直列接続することにより、駆動電圧の上昇を抑えながら検出感度を稼ぐことができる。そして、直列接続する複数のダイオードのうちの一部(又は一つ)を動作電圧は高いがリーク電流の小さいものとすることにより、全体のリーク電流を低減することができる。これにより、リーク電流を減らしながら感度の向上をはかることが可能となる。
【0017】
たとえば、直列接続する複数のダイオードのうちの一部(又は一つ)をpn接合ダイオードで形成し、残りをゲートとドレインが接続されたMOSFETで形成することにより、MOSFETからなるダイオードで感度を稼ぎ、pn接合ダイオードでリークの低減をはかることができる。同様に、直列接続する複数のダイオードのうちの一部(又は一つ)をEタイプのMOSFETで形成し、残りをDタイプのMOSFETで形成することにより、DタイプMOSFETで感度を稼ぎ、EタイプのMOSFETでリークの低減をはかることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる熱型赤外線イメージセンサの全体構成を示す回路図である。図では、説明を簡単にするために2行2列の2×2画素構成を示しているが、より多数行,多数列のm×n画素構成に適用できるのは勿論のことである。
【0020】
入射赤外線を電気信号に変換する赤外線検出画素1が半導体基板上に2次元的に配置されて撮像領域3を構成している。撮像領域3の内部には、複数本の行選択線4(4−1,4−2)と複数本の垂直信号線5(5−1,5−2)が配置されている。
【0021】
画素選択のために、行選択回路40と水平アドレス回路6が撮像領域3の行方向と列方向に各々隣接配置され、行選択回路40には行選択線4が接続され、水平アドレス回路6には水平選択線7(7−1,7−2)が接続されている。画素出力電圧を得るための定電流源として、各列の垂直信号線5には負荷MOSトランジスタ8(8−1,8−2)が接続されている。負荷MOSトランジスタ8のソースには基板電圧Vsが印加されている。
【0022】
行選択回路40により選択された行選択線4には電源電圧Vdが印加され、行選択回路40により選択されない行選択線にはVsが印加される。その結果、選択された行の赤外線検出画素1内部のpn接合が順バイアスとなりバイアス電流が流れ、画素内部のpn接合の温度と順バイアス電流とにより動作点が決まり、各列の垂直信号線5に画素信号出力電圧が発生する。このとき、行選択回路40によって選択されない画素1のpn接合は逆バイアスとなる。即ち、画素内部のpn接合は画素選択の機能を持っている。
【0023】
垂直信号線5に発生する電圧は、極めて低電圧でありこの信号電圧を読み出すために、列毎に増幅読み出し回路9が配置されており、各列の垂直信号線5は各列の増幅トランジスタ10のゲートに接続されている。増幅トランジスタ10のドレイン側には、電流増幅した信号電流を積分し蓄積するための蓄積容量12が接続されている。信号電流を積分する蓄積時間は、行選択回路40により行選択線4に印加される行選択パルスにより決定される。蓄積容量12には、該蓄積容量12の電圧をリセットするためのリセットトランジスタ13が接続され、水平選択トランジスタ14による信号電圧の読み出しが完了した後にリセット動作を行うようになっている。
【0024】
図2(a)は、本実施形態に係わる熱型赤外線イメージセンサの1画素構成を示す断面図である。赤外線検出部にゲートとドレインを接続したn型MOSFET(以下、単にn型MOSFETと記す)とpn接合ダイオードを用いた例である。
【0025】
Si基板100上に酸化膜101を介してSi層を形成したSOI基板が用いられ、酸化膜101上に選択的に残したSi層にはn型MOSFET102及びpn接合ダイオード103が配置されている。n型MOSFET102は、n型拡散層102a,ゲート電極102b及びp型ウェル層102cにより形成され、pn接合ダイオード103は、n型拡散層103a及びp型拡散層103bにより形成される。また、これらのダイオードを形成した基板上には絶縁酸化膜105が形成されている。そして、n型MOSFET102,pn接合ダイオード103,酸化膜101及び絶縁酸化膜105によって、画素となる検出部104が構成されている。
【0026】
検出部104は絶縁酸化膜105と酸化膜101からなる支持脚107によりSi基板100に接続しており、分離溝106及び空洞108によりSi基板100とは熱的に分離されている。このように、検出部104及び支持部107が中空構造108上に設けられることにより、入射赤外線による検出部104の温度の変調を効率良く行う構造になっている。
【0027】
図2(b)は、検出部104を正面から見た図である。一例としてn型MOSFET102を3個、pn接合ダイオード103を1個配置した場合を示している。各々のダイオードは配線109で直列に接続されている。pn接合ダイオード103のp型拡散層103bは前段のn型MOSFET102のn型拡散層103aに接続されており、n型拡散層103aは次段のn型MOSFET102のn型拡散層102a及びゲート電極102bに配線109を介して接続されている。
【0028】
上記の構造を回路図で示したのが図3であり、1個のpn接合ダイオード103と複数個のMOSFET102が直列接続されている。また、ダイオードを例えば8個(当該MOSFET7個とpn接合ダイオード1個)を用いた場合の、温度T1,T2(T1<T2)のときの検出部における電圧−電流特性を図4に示す。この図から分かるように、ダイオードを8個用いた場合でも、必要な電圧は4V程度となる。
【0029】
ここで、動作時の電流を一定にした際のn型MOSFETの電圧降下をVm 、MOSFETの数をNm 、pn接合ダイオードの電圧降下をVd とした時の、総電圧降下Vddは次のようになる。
【0030】
Vdd=Vd +Nm ×Vm …(1)
感度向上のためにはNm を増やす必要があるが、その際にはn型MOSFETのp型ウェル濃度を調整することによりVm を低下させればよい。その際には飽和電流値は低減してしまうが、動作電流がそれ以下の場合には問題ない。また、非選択時のリーク電流はpn接合ダイオードの逆電圧特性のように極めて少ない値となるので、選択画素の感度には影響を及ぼさない。
【0031】
図5にトータルのダイオード数が8個で、pn接合ダイオードとMOSFETの割合を変えた場合の特性を示す。なお、pn接合ダイオードの電圧降下を1V、MOSFETの電圧降下を0.3Vとした。
【0032】
図5の(a1)に示すように、全てがpn接合ダイオードである場合(図6の従来例と同じ)、(a2)に示すように動作電流Io での動作電圧は、1×8=8Vである。また、(b1)に示すように、半数をpn接合ダイオードにした場合、(b2)に示すように動作電流Io での動作電圧は、1×4+0.3×4=5.2Vとなる。さらに、(c1)に示すように、1つのみがpn接合ダイオードの場合、(c2)に示すように動作電流Ioでの動作電圧は、1+0.3×7=3.1Vとなる。
【0033】
また、図5から分かるように、動作電流Io での傾きはどのケースにおいても同様となる。即ち、感度は一定であり、pn接合ダイオードの数が少ないほど動作電圧が低くなる。従って、本実施形態のようにpn接合ダイオードを1個、他をMOSFETで構成することにより、高い感度を保持しながら動作電圧の低減が可能となる。
【0034】
一方、複数のダイオードを直列接続した場合、全体のリーク電流は最もリーク電流が小さいダイオードで規定されることになる。図5の例では、(a)の場合も(c)の場合も全体のリーク電流はpn接合ダイオードに1Vを印加したときの電流となり、何れの場合も同じとなる。従って、本実施形態のように1個のpn接合ダイオードと多数のMOSFETを用いた場合、リーク電流の大きいMOSFETを用いているにも拘わらず、逆バイアスによるリーク電流を十分に小さくすることができる。
【0035】
このように本実施形態によれば、Si基板上に熱分離して配置される検出部104を、1個のpn接合ダイオード103と複数個のMOSFET102で構成することにより、検出部104の駆動電圧を低減すると共に、非選択時の検出部104におけるリーク電流を低減することができる。これにより、高感度,高精度の検出器104を用いて熱型赤外線イメージセンサを実現できることになり、製造コストの低減をはかることもできる。
【0036】
また、検出器104にしきい値の異なる複数の半導体素子を含んでいるので、感度検出の役割であるMOSFET102での電圧降下を減少することにより検出部104の駆動電圧を低減でき、同時に非選択時のリーク電流を減少する役割を持つpn接合ダイオード103によって選択している検出部の感度低下を防ぐことができる。
【0037】
また、検出部104を構成する半導体素子としてMOSFETを用いているので、ウェル濃度及びチャネル濃度の調節により検出部104の駆動電圧の設定が容易となる。さらに、検出部を構成する半導体素子は複数のMOSFETと1つのpn接合ダイオードであり、素子構成は極めて簡単であり、その製造に特殊な工程を要することもない。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。実施形態では、動作電圧が高くリーク電流の小さい素子としてpn接合ダイオードを用いたが、この代わりに、しきい値の高いゲート・ドレイン短絡のn型MOSFETを用いることにより非選択時のリーク電流を低減することも可能である。このときの作用は、pn接合ダイオードを用いた場合と同様である。MOSFETのみで構成する場合、動作電圧が高くリーク電流の小さい素子としてゲート・ドレイン短絡のEタイプのMOSFETを用い、動作電圧が低くリーク電流の大きい素子としてゲート・ドレイン短絡のDタイプのMOSFETを用いればよい。
【0039】
また、実施形態では、動作電圧が低くリーク電流の小さい素子としてゲート・ドレイン短絡のn型MOSFETを用いたが、この代わりにゲート・ドレイン短絡のp型MOSFETを用いてもよい。さらに、温度により電気特性が変化し、構造を変えることによりある動作電流における電圧降下が変化する素子であれば用いることが可能である。また、非選択時の低リーク素子としてはpn接合ダイオードを用いたが、低リーク素子であるならば同じ方法でこの検出器に使用可能である。
【0040】
また、実施形態では、動作電圧が高くリーク電流の小さい素子を1つ、残りを動作電圧が低くリーク電流の大きい素子としたが、動作電圧が高くリーク電流の小さい素子はかならずしも1個に限るものではなく、2個又はそれ以上にしてもよい。但し、動作電圧が高くリーク電流の小さい素子が多くなるほど本発明の効果が小さくなるので、あまり多くすることは望ましくない。
【0041】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、赤外線検出画素を構成する複数の熱型赤外線検出器のうちの一部を他よりも動作電圧が高くリーク電流が小さい半導体素子で構成することにより、検出部の駆動電圧を低減すると共に、非選択時の検出部におけるリーク電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係わる熱型赤外線イメージセンサの全体構成を示す回路図。
【図2】図1の熱型赤外線イメージセンサの1画素構成を示す断面図と平面図。
【図3】図1の熱型赤外線イメージセンサに用いた赤外線検出部の回路構成を示す図。
【図4】温度T1,T2(T1<T2)をパラメータとしたときの検出部における電圧−電流特性を示す図。
【図5】実施形態における動作電圧低減の様子を説明するための図。
【図6】従来の熱型赤外線イメージセンサの一例の回路構成を示す図。
【図7】温度T1,T2(T1<T2)をパラメータとしたときの従来の検出部における電圧−電流特性を示す図。
【符号の説明】
1…赤外線検出画素
2…半導体基板
3…撮像領域
4…行選択線
5…垂直信号線
6…水平アドレス回路
7…水平選択線
8…負荷MOSトランジスタ
9…増幅読み出し回路
10…増幅トランジスタ
12…蓄積容量
13…リセットトランジスタ
40…行選択回路
100…Si基板
101…酸化膜
102…n型MOSFET
102a…n型拡散層
102b…ゲート電極
102c…p型ウェル層
103…pn接合ダイオード
103a…n型拡散層
103b…p型拡散層
104…検出部
105…絶縁酸化膜
106…分離溝
107…支持脚
108…空洞
109…配線
Claims (3)
- 複数の半導体素子を直列接続して形成された熱型赤外線検出画素を2次元配置してなる熱型赤外線イメージセンサであって、
各々の検出画素における複数の半導体素子のうちの1つはpn接合ダイオードからなり、動作電圧が高くリーク電流が小さいダイオード素子で、
残りはゲートとドレインを接続したMOSFETからなり、動作電圧が低くリーク電流が大きいダイオード素子であることを特徴とする熱型赤外線イメージセンサ。 - 複数の半導体素子を直列接続して形成された熱型赤外線検出画素を2次元配置してなる熱型赤外線イメージセンサであって、
各々の検出画素における複数の半導体素子のうちの1つは、ゲートとドレインを接続したEタイプのMOSFETからなり、動作電圧が高くリーク電流が小さいダイオード素子で、
残りは、ゲートとドレインを接続したDタイプのMOSFETからなり、動作電圧が低くリーク電流が大きいダイオード素子であることを特徴とする熱型赤外線イメージセンサ。 - 前記各検出画素を構成する前記複数のダイオード素子は、当該検出画素の検出信号を読み出す際の選択時に順バイアスされ、当該検出画素の非選択時には逆バイアスされるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱型赤外線イメージセンサ。
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