JP3825560B2 - 太陽電池及びそれを用いた電子機器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、入射光の一部を光電変換し電力供給可能な太陽電池と太陽電池を搭載した装飾品、時計、電卓、ラジオ、小型携帯機器、ディスプレーに係わる。
【0002】
【従来の技術】
近年、小型携帯電子機器などに使用されるLSIの消費電力も少なくなってきたため電源として、従来の蓄電池から太陽電池に入れ替わるようになってきた。現在市場で、太陽電池を組み込んだ時計、電卓、ラジオ、などの小型携帯機器が販売されるに至っている。
【0003】
従来の太陽電池を組み込んだ小型携帯電子機器の構成を、以下に例をあげて説明する。図2にカード型の電卓の外観図を示す。図中14は反射型LCD、13は太陽電池部、12は入力キー部、11はケースである。
【0004】
一般に良く使用される太陽電池として、アモルファスシリコン太陽電池がある。その構成は、図3に示すようにガラス基板15に透明電極16を形成後、P型17、i型18、N型19のアモルファスシリコン層を連続製膜して最後に金属電極20を形成する。実用的には、セル形成の際に電極パターンの設計によりセルを直列接続することで機器に必要な電圧を得ている。
【0005】
また、太陽電池を電子機器の前面に配置したにも関わらず、太陽電池の存在が外から見たのでは分からなくする方法としは、特開平5−29641号公報に記載されている。その構成は、太陽電池の前面に、太陽電池の発電に寄与する光の少なくとも―部の波長を領域を透過し、他の波長波長領域を反射する着色層が設けられる。着色手段層としては、コレステリツク液晶をマイクロカプセル化したものをバインダーに分散して塗布したもの、あるいはコレステリツクポリマーシートなどを用いいられる。これらは、可視域の特定波長の光を選択散乱し、残余の光を透過する。太陽電池時計に用いた場合、文字板はコレステリツク液晶の選択散乱色が見え、その背後に隠されている太陽電池の存在を外から見たのでは見分けられなくなる。
【0006】
また、特開昭60−147718号公報には太陽電池の前面に液晶パネルを配置した電子機器の例が開示されている。表示体層は散乱モードを用いた液晶パネルに,必要なセグメントパターンが形成されている。表示体層の背後に選択反射フィルタが設けられ,更にフィルタの背後に光吸収層、例えば黒色の紙が設けられる。入射光は,表示体層の透明モードの部分Aでは表示体層を透過し,フィルタで特定波長の色,例えば青色が反射されるが斜め方向に向けて反射されるので観察者には黒く見える。表示体層の散乱モ−ドの部分Bでは散乱して透過しフィルタで青色が反射され,再び表示体層によつて散乱される。フィルタを透過した光は光吸収層で吸収され,部分Bは青色に見える。光吸収層は太陽電池としてもよく,明るく見やすいカラー表示ができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の太陽電池を組み込んだ小型携帯電子機器の構成には以下の様な欠点が存在する。例えば、図2のカード型電卓の場合、表示を読みやすくするために表示部の面積を大きくすると、太陽電池部の面積が小さくなってしまい、カード型電卓を動作させる電力が十分得られなくなる。また、同様に入力操作がしやすいようにキー入力部の面積を大きくすると太陽電池部の面積が小さくなって、カード型電卓を動作させる電力が十分得られなくなる。
【0008】
また、表面パネルに大きく黒ずんだ太陽電池があるので、デザインが武骨になり、重要なデザイン性が貧弱となり、商品価値を著しく低下させている。この様な課題は、電卓以外にも時計やその他の携帯機器でも同様である。
【0009】
上記の課題に対して、特開平5−29641の開示の方法は、コレステリックポリマーの選択反射によって太陽電池の表面を着色し、太陽電池を電子機器の前面に配置したにも関わらず、太陽電池の存在が外から見たのでは分からなくする方法を提案している。
【0010】
しかし、図4に示すように、直列接続した太陽電池は透明電極からの反射光25とアモルファスシリコンからの反射光26との分光反射率が異なる。よって、色合いや反射光量に差が生じるこのため、図2の太陽電池部13のように直列接続したセルのパターンが見える。このパターンは特開平5−29641号公報の開示の方法でも完全に消し去ることは不可能であった。アモルファスSi太陽電池以外にも、単結晶Si太陽電池、多結晶Si太陽電池、CdS/Cu2S 太陽電池、CdS/CdTe太陽電池、GaAs系太陽電池などでも類似の課題がある。
【0011】
もう一つの課題であるに太陽電池を電子機器の前面に配置した場合のスペースの問題に対しては、特開昭60−147718号公報の開示の方法がある。しかし、表示素子と太陽電池を積層し、太陽電池に光りを吸収させて黒表示しても、セルパターン見えの問題は解決出来ない。このセルパターン見えは、液晶表示パネルの表示品質を低下させた。
【0012】
以上説明した様に、従来の技術では、太陽電池を電子機器の前面に配置したにも関わらず、太陽電池のセルパターンを外から見たのでは分からなくする事が困難であった。また、液晶表示パネルと太陽電池を積層して電子機器の前面に配置しスペースを有効活用しても、液晶表示パネルの表示に太陽電池のセルパターンが見えてしまい、表示品質とスペースの有効活用を両立させることが困難であった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、入射する光のうち所定の方向の直線偏光成分を透過させ前記所定の方向と直交する直線偏光成分を反射させる機能を有する反射偏光子と、その反射偏光子の光が入射する面とは反対の面側に設けられた位相差板とで構成される円偏光フィルターを、前記円偏光フィルターの位相差板側が太陽電池の光入射面側になるように設置した円偏光フィルター付き太陽電池でセルパターン見えの問題を解決した。
【0014】
さらに、上記の反射偏光子と位相差板と太陽電池で構成される円偏光フィルター付き太陽電池の反射偏光子の光が入射する面側に光拡散層を配置したので、太陽電池表面が白く見えしかもセルパターン見えが生じない太陽電池を実現した。
【0015】
さらに、上記の反射偏光子と位相差板と太陽電池で構成される円偏光フィルター付き太陽電池の反射偏光子の光が入射する面側に液晶表示パネルを積層し、電子機器の前面に配置したので、電子機器の前面のスペースを有効活用し、液晶表示パネルの表示に太陽電池のセルパターンが見えない、電子機器を実現した。
【0016】
さらに、上記の光拡散層と反射偏光子と位相差板と太陽電池で構成される円偏光フィルター付き太陽電池の前記光拡散層の光が入射する面側に液晶表示パネルを積層配置したので、偏光板を使用するSTNセルやTNセル、二色性色素を使用するGHセルを用いても太陽電池で発電でき、しかも、電子機器の前面に配置して、電子機器の前面のスペースを有効活用し、液晶表示パネルの表示に太陽電池のセルパターンが見えない電子機器を実現した。
【0017】
さらに、上記の液晶表示パネルと円偏光フィルター付き太陽電池で構成される電子機器において、液晶表示パネルの光が入射する面側にタッチパネルを配置したので、電子機器の前面から入力キー部を無くして、電子機器の前面を液晶表示パネルと円偏光フィルター付き太陽電池で構成でき、表示面積の拡大と太陽電池面積の拡大を可能とした。
【0018】
【発明の実施の形態】
上記のように構成された円偏光フィルター付き太陽電池でセルパターン見えが生じないその動作原理を図5の本発明の原理説明図で説明する。
【0019】
図5において、反射偏光子1は、無偏光状態の入射光5を所定の方向の直線偏光成分のみ透過させ所定の方向と直交する直線偏光成分のみ反射させ、吸収はほとんどない。よって、入射光5は、反射偏光子からの反射光6と反射偏光子からの透過光27に2分される。透過光27は、位相差板2に入射し透過することで、偏光状態を変化させる。ここで位相差板2の位相差量を1/4λに設定するば、円偏光となる。また、波長分散を考慮して位相差板を設計すれば可視光域の光をほぼ円偏光に変換できる。
【0020】
円偏光状態の太陽電池への入射光7は、太陽電池で吸収され発電に寄与する。しかし、図4に示す太陽電池の構成材料の違いにより各部からの反射光が、太陽電池からの反射光8として反射される。反射による偏光状態の変化はない。太陽電池からの反射光8は再び位相差板2を透過する。このとき、偏光状態は円偏光から直線偏光に変換され、位相差板を透過する直線偏光28となる。この直線偏光の方位角は、反射偏光子からの透過光27の直線偏光の方位角と直交している。よって、位相差板を透過する直線偏光28は反射偏光子1で反射され、反射偏光子で反射される光9となる。この時、反射偏光子を透過する光10はほとんど存在しない。
【0021】
以上の原理により、円偏光フィルター付き太陽電池は、太陽電池からの反射光を再び反射偏光子を透過して戻らせなので、太陽電池のセルパターン見えが解決出来る。
【0022】
また、円偏光フィルター付き太陽電池の反射偏光子からの反射光6は、50%弱の反射率を有し鏡面である。アルミの鏡の反射率が70〜80%であるのと比較するとやや暗いが、鏡としての使用にも耐えうるものである。
【0023】
さらに、円偏光フィルター付き太陽電池において、反射偏光子の光が入射する面側に光拡散層を配置すると、反射偏光子からの反射光6が光拡散層で拡散されるので、白色に見える。拡散層の拡散度を強くすると拡散層からの後方散乱が強くなり発電に寄与する反射偏光子を透過する光が減少するので拡散層は後方散乱を少なくするのが望ましい。
【0024】
さらに、円偏光フィルター付き太陽電池において、反射偏光子の光が入射する面側に液晶表示パネルを積層すると、反射偏光子が液晶表示パネルの反射板あるいは反射偏光板の代わりになり、反射光6を利用した反射型液晶表示パネルとして機能する。この場合反射偏光子が鏡面なので、利用できる液晶表示モードは、散乱型液晶モード、前方散乱板を使用したSTNモードやTNモードやGHモードである。
【0025】
さらに、光拡散層と反射偏光子と位相差板と太陽電池で構成される円偏光フィルター付き太陽電池の前記光拡散層の光が入射する面側に液晶表示パネルを積層配置した場合、光拡散層と反射偏光子が拡散性の反射偏光板として機能する。この場合、液晶表示パネルの光が入射する面側に偏光板を1枚使用するSTNセルやTNセル、偏光板を必要としない二色性色素を使用するGHセルを使用できる。表示モードは、ネガ表示にすることで、反射偏光子を透過する光がより多くなるので太陽電池で発電する量が多くなる。
【0026】
【実施例】
以下に、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は、円偏光フィルター付き太陽電池の基本構成を表す断面図である。反射偏光子1と位相差板2は透明粘着剤で一体化し、円偏光フィルター3を構成する。反射偏光子1を透過する直線偏光の方位角に対して位相差板2の光学軸がほぼ45°となるように配置している。太陽電池4は位相差板2の背後に空気層あるいは透明粘着剤を介して配置した。
【0027】
反射偏光子としては、住友スリーエム株式会社のDBEF(Dual Brightness Enhancement Film)を使用した。位相差板には、日東電工株式会社の広帯域波長フィルム1/4λ板を使用した。太陽電池は4セル直列接続型のアモルファスSi太陽電池を用いた。反射偏光子としては、DBEF以外にコレステリックポリマーの選択反射フィルムと位相差フィルムを組み合わせた反射偏光板を使用してもよい。位相差板には、波長分散を補償した1/4λ板を用いることが望ましい。これにより太陽電池から戻ってくる反射光を可視域全域で阻止できる。太陽電池はアモルファスSi太陽電池以外にも、単結晶Si太陽電池、多結晶Si太陽電池、CdS/Cu2S太陽電池、CdS/CdTe太陽電池、GaAs系太陽電池などを使用してもよい。
【0028】
図1の構成の円偏光フィルター付き太陽電池を置き時計に使用してみた。図7は、円偏光フィルター付き太陽電池を実装したミラー付き置き時計の外観図である。支持台34によって支えられるミラー面33は図1の構成の円偏光フィルター付き太陽電池より構成されている。このミラー面は、背後にある太陽電池の存在を確認できないほど太陽電池からの反射光を戻らなくしているので、通常の手鏡のように顔や姿を見ることができる。また、時計表示部32の駆動に必要な電力は背後の太陽電池で発電された電力でまかなうことが出来る。必要に応じて二次電池を使用してもよい。また、太陽電池は、ガラス基板を使用したものを用い円偏光フィルターをこのガラス基板に密着することで、鏡として歪みのない鏡を得ることが出来る。
【0029】
図1の構成の円偏光フィルター付き太陽電池を時計の文字盤に使用してみた。図6は、円偏光フィルター付き太陽電池を実装した時計の外観図である。時計ケース30に時計の針31を駆動する軸を通すために穴空き加工を施した円偏光フィルター付き太陽電池の反射偏光子の光が入射する面側に光拡散層を配置すると、拡散層で拡散されるので、白色に見える。この白い文字盤は背後の太陽電池の存在を完全に見えなくしているので太陽電池を搭載していない時計と同様のデザインを可能としている。光拡散層としては、大日本印刷株式会社のIDS−21を貼っている。必要に応じて着色や印刷も可能である。
【0030】
(実施例2)
本例においては、図8をもちいて、円偏光フィルター付き太陽電池と散乱型液晶パネル積層した電子機器を説明する。円偏光フィルター付き太陽電池の上に散乱型液晶パネル35を積層し反射型液晶表示装置として使用する。円偏光フィルター付き太陽電池は実施例1と同じ構成で製作した。
【0031】
散乱型液晶パネルは、2枚のガラス基板にITO膜を製膜後、パターニングして配向膜形成後、2枚の基板を、8ミクロンのスペーサを介して貼りあわせた。この空パネルに、液晶材料としてロディック社製ポリマーネットワーク液晶「PNM−156」を前記空セルを30℃の温度を保持しながら、真空注入した。これを25.5℃の温度に保持しながら、メタルハライドランプで75mW/平方センチメータの紫外線を20秒間照射し散乱型液晶パネルを作製した。
【0032】
使用する散乱モード液晶は、ポリマーネットワーク液晶以外に、コレステリック・ネマティック相転移型液晶モード、強誘電性液晶散乱モード、高分子分散液晶モード、動的散乱液晶モード(DSM)、熱書き込みモードを使用してよい。また、MIMやTFT等のアクティブ素子と組み合わせて、高分子分散液晶モード、動的散乱液晶モード(DSM)、熱書き込みモードなどを使用してもよい。
【0033】
次に、散乱型液晶パネル35の背面と円偏光フィルターの反射偏光子側の面を透明粘着材を介して密着した。一方、太陽電池4は円偏光フィルターの位相差板2の背面に空気層を介して配置した。太陽電池としては、アモルファスSi太陽電池を用いた。この太陽電池は、200lxの蛍光灯照明下で、動作電圧1.5Vで3μA/cm2 の出力が得られる。アモルファスSi太陽電池以外にも、単結晶Si太陽電池、多結晶Si太陽電池、CdS/Cu2S 太陽電池、CdS/CdTe太陽電池、GaAs系太陽電池などを使用してもよい。
【0034】
この様にして制作された円偏光フィルター付き太陽電池と散乱型液晶パネル積層した状態で、200lx蛍光灯照明の条件で観察した。すると、駆動電圧が十分に印加されていない領域では、入射白色光が散乱されて明るい白色に観測された。駆動電圧が十分に印加されている領域では、入射白色光が太陽電池に吸収され黒く見えた。また、太陽電池のセルパターン見えもまったくなかった。
【0035】
同様の条件で、太陽電池での発電能力を検証した。
OFF時において動作電圧1.5Vで1.1μA/cm2 の出力が得られた。ON時においては動作電圧1.5Vで1.2μA/cm2 の出力が得られた。
【0036】
次に、電子機器として、デジタル時計に本発明の円偏光フィルター付き太陽電池と散乱型液晶パネルを積層した状態で実装した。表示部の面積が大きくなり、表示は見やすくなった。また、表面パネルから黒ずんだ太陽電池が無くなったのでデザイン面での無骨さは解消された。真にペーパーホワイトな明るい白地に黒の表示はデジタル時計に気品を与え、太陽電池のセルパターン見えもまったくなかった。
【0037】
(実施例3)
本例においては、図9をもちいて、円偏光フィルター付き太陽電池とSTN型液晶パネルを積層した電子機器を説明する。円偏光フィルター付き太陽電池の上に光拡散層29を配置しさらにその上にSTNセル38をさらにその上に位相差フィルム37をさらにその上に上偏光板36を積層し反射型液晶表示装置として使用する。円偏光フィルター付き太陽電池は実施例1と同じ構成で製作した。
【0038】
STN型セルは、2枚のガラス基板にITO膜を製膜後、パターニングして配向膜形成配向処理後、2枚の基板を、6.2ミクロンのスペーサを会して貼りあわせた。この空セルに、STN液晶材料を真空注入した。
【0039】
使用する液晶モードは、STN型液晶以外に、TN型液晶モード、強誘電性液晶モードを使用してよい。また、MIMやTFTなどのアクティブ素子と組み合わせて使用してもよい。
【0040】
次に、上偏光板36、位相差フィルム37、STNセル38、円偏光フィルターの反射偏光子を透明粘着材を介して密着した。ただし、ノーマリーブラックの表示になるようにそれぞれ角度調整し密着した。光拡散層29は透明粘着材の中に拡散粒子を混合し、出来るだけ後方散乱を少なくした。太陽電池4は円偏光フィルターの位相差板2の背面に空気層を介して配置した。太陽電池としては、アモルファスSi太陽電池を用いた。この太陽電池は、200lxの蛍光灯照明下で、動作電圧1.5Vで3μA/cm2 の出力が得られる。アモルファスSi太陽電池以外にも、単結晶Si太陽電池、多結晶Si太陽電池、CdS/Cu2S太陽電池、CdS/CdTe太陽電池、GaAs系太陽電池などを使用してもよい。
【0041】
この様にして制作された円偏光フィルター付き太陽電池とSTN型液晶パネルを積層した状態で、200lx蛍光灯照明の条件で観察した。すると、選択電圧が印加されている領域では、入射白色光が散乱されて白色に観測された。非選択電圧が印加されている領域では、入射白色光が太陽電池に吸収され黒く見えた。また、太陽電池のセルパターン見えもまったくなかった。
【0042】
同様の条件で、太陽電池での発電能力を検証した。
OFF時において動作電圧1.5Vで0.8μA/cm2 の出力が得られた。全面ON時においては出力が得られなかった。たたし、通常の表示においては、全面ONすることはなく、ON表示の面積の割合により発電量は変動する。
【0043】
次に、電子機器として、デジタル時計に本発明の円偏光フィルター付き太陽電池とSTN型液晶パネルを積層した状態で実装した。表示部の面積が大きくなるため、表示は見やすくなった。また、表面パネルから黒ずんだ太陽電池が無くなったのでデザイン面での無骨さは解消された。太陽電池のセルパターン見えもまったくない黒い背景に白の表示はデジタル時計に気品を与えた。
【0044】
(実施例4)
本例においては、図10をもちいて、円偏光フィルター付き太陽電池とGH型液晶パネルを積層した電子機器を説明する。円偏光フィルター付き太陽電池の上に光拡散層29を配置しさらにその上にGH型液晶パネル38を積層し反射型液晶表示装置として使用する。円偏光フィルター付き太陽電池は実施例1と同じ構成で製作した。
【0045】
GH型液晶パネルは、2枚のガラス基板にITO膜を製膜後、パターニングして配向膜形成アンチパラ配向処理後、2枚の基板を、6.2ミクロンのスペーサを会して貼りあわせた。この空セルに、ホスト液晶として、低粘性のEN−31G(チッソ株式会社)を用い、ゲスト染料としては、三井東圧染料株式会社製のS−344(黒色)混合して真空注入した。また、N型の液晶に本ゲストを混合しても良い。
【0046】
使用するゲストホストモード液晶は、HM型ゲストホスト液晶以外に、強誘電性液晶ゲストホストモード、高分子分散液晶ゲストホストモード、相転移ゲストホストモードを使用してよい。また、MIMやTFTなどのアクティブ素子と組み合わせることもできる。
【0047】
次に、GH型液晶パネル39と円偏光フィルターの反射偏光子を透明粘着材を介して密着した。ただし、GH型液晶パネル39の配向方向と反射偏光子の透過直線偏光方向が直交するようにそれぞれ角度調整し密着した。光拡散層29は透明粘着材の中に拡散粒子を混合し、出来るだけ後方散乱を少なくした。太陽電池4は円偏光フィルターの位相差板2の背面に空気層を介して配置した。太陽電池としては、アモルファスSi太陽電池を用いた。この太陽電池は、200lxの蛍光灯照明下で、動作電圧1.5Vで3μA/cm2 の出力が得られる。アモルファスSi太陽電池以外にも、単結晶Si太陽電池、多結晶Si太陽電池、CdS/Cu2S 太陽電池、CdS/CdTe太陽電池、GaAs系太陽電池などを使用してもよい。
【0048】
この様にして制作された円偏光フィルター付き太陽電池とGH型液晶パネルを積層した状態で、200lx蛍光灯照明の条件で観察した。すると、非選択電圧が印加されている領域では、入射白色光の一部が色素で吸収され残りが太陽電池で吸収されて黒色に観測された。選択電圧が印加されている領域では、入射白色光の約半分が反射され白く見える。残りの半分は太陽電池に吸収され発電に寄与する。また、太陽電池のセルパターン見えもまったくなかった。
【0049】
同様の条件で、太陽電池での発電能力を検証した。
OFF時において動作電圧1.5Vで0.9μA/cm2 の出力が得られた。また、全面ON時においては動作電圧1.5Vで1.1μA/cm2 の出力が得られた。これは、GH型液晶パネル39の配向方向と反射偏光子の透過直線偏光方向が直交するように配置されたことによる。
【0050】
次に、電子機器として、デジタル時計に本発明の円偏光フィルター付き太陽電池とGH型液晶パネルを積層した状態で実装した。表示部の面積が大きくなり、表示は見やすくなった。また、表面パネルから黒ずんだ太陽電池が無くなったのでデザイン面での無骨さは解消された。太陽電池のセルパターン見えもまったくない。
【0051】
(実施例5)
本例においては、図11を用いて、円偏光フィルター付き太陽電池とSTN型液晶パネルとさらにその上にタッチパネルを積層した電子機器を説明する。円偏光フィルター付き太陽電池とSTN型液晶パネルを積層した反射型液晶表示装置を、実施例3と同様に製作した。さらにその上にタッチパネルを重ねあわせて、タッチパネル40が携帯電話の前面なるように実装した。
【0052】
タッチパネルとしては、抵抗膜方式を用い、図11に示すようにSTN型液晶パネルの表示でスイッチを表示し、タッチパネルのスイッチレイアウトをそれに合わせて変更することで、スイッチと表示を一体化した。これにより、携帯電話の前面から通常の押しボタン式のスイッチを取り除くことがてき、前面いっぱいに、円偏光フィルター付き太陽電池とSTN型液晶パネルを積層した反射型液晶表示装置を配置できた。
【0053】
その結果、限られた携帯電話の前面に大きくて見やすい表示部と大きな面積の太陽電池を配置可能となった。また、タッチパネルとしては、抵抗膜方式以外にも透明性が確保できれば他の方式を用いても良い。また、液晶パネルも散乱型液晶やGH型液晶を使用して良い。
【0054】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように、吸収のない反射偏光子と位相差板とで構成される円偏光フィルターを太陽電池の前面に配置したので、従来解決できなかった太陽電池のパターン見えがまったく気にならなくなった。しかも、外観は、鏡として機能したり、反射偏光子の前面に拡散層を設けると白色となり、これまでの太陽電池の外観を一新するデザイン性に富んだ太陽電池を提供できるようになった。
【0055】
さらに、この発明は、吸収のない反射偏光子と位相差板とで構成される円偏光フィルターを太陽電池の前面に液晶表示パネルを配置し、発電効率を実用レベルに維持した状態で液晶表示パネルの外観に生ずる太陽電池のパターン見えを解決した。さらに、吸収のない反射偏光子を使用しているのでで、TN、STNモードの偏光板を使う方式で実現できなかったLCDと太陽電池の積層による一体化を実現した。
【0056】
以上のように、本発明の円偏光フィルター付き太陽電池は従来の方法では実現できなかった高い光発電能力を維持し、しかも太陽電池のパターン見えがなく、さらに美的ポテンシャルに優れた鏡面や白色の表示能力を持つ。したがって、時計、その他の携帯電子機器用ディスプレー、装飾品として利用した場合、従来にないデザインや電子機器前面の操作性、表示能力を差別化するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を表す断面図である。
【図2】従来の太陽電池を組み込んだカード型電卓の一例の外観図である。
【図3】従来の太陽電池の構成概略図である。
【図4】従来の直列接続した太陽電池の構造断面図である。
【図5】本発明の原理を説明した図である。
【図6】本発明の円偏光フィルター付き太陽電池を実装した時計の外観図である。
【図7】本発明の円偏光フィルター付き太陽電池を実装したミラー付き置き時計の外観図である。
【図8】本発明の円偏光フィルター付き太陽電池と散乱型液晶パネル積層した電子機器をの構成図である。
【図9】本発明の円偏光フィルター付き太陽電池とSTN液晶パネル積層した電子機器をの構成図である。
【図10】本発明の円偏光フィルター付き太陽電池とGH型液晶パネル積層した電子機器をの構成図である。
【図11】円偏光フィルター付き太陽電池と液晶表示パネルとタッチパネルを積層した電子機器の実施例である携帯電話の外観図である。
【符号の説明】
1 反射偏光子
2 位相差板
3 円偏光フィルター
4 太陽電池
5 入射光
6 反射偏光子からの反射光
7 太陽電池への入射光
8 太陽電池からの反射光
9 太陽電池からの反射光が反射偏光子で反射される光
10 太陽電池からの反射光が反射偏光子を透過する光
11 ケース
12 入力キー部
13 太陽電池部
14 反射型LCD
15 ガラス基板
27 反射偏光子を透過する直線偏光
28 位相差板を透過する直線偏光
29 光拡散層
30 時計ケース
31 針
35 散乱型液晶パネル

Claims (5)

  1. 入射する光のうち所定の方向の直線偏光成分を透過させ前記所定の方向と直交する直線偏光成分を反射させる機能を有する反射偏光子と、その反射偏光子の光が入射する面とは反対の面側に設けられた位相差板とで構成される円偏光フィルターを備えるとともに、前記円偏光フィルターの位相差板側が太陽電池の光入射面側になるように設置されたことを特徴とする太陽電池。
  2. 前記反射偏光子の光が入射する面側に光拡散層を配置したことを特徴とする請求項1記載の太陽電池。
  3. 入射する光のうち所定の方向の直線偏光成分を透過させ前記所定の方向と直交する直線偏光成分を反射させる機能を有する反射偏光子と、その反射偏光子の光が入射する面とは反対の面側に設けられた位相差板とで構成される円偏光フィルターを備えるとともに、前記円偏光フィルターの位相差板側が太陽電池の光入射面側になるように設置された太陽電池と、
    前記反射偏光子の光が入射する面側に配置された表示素子と、を備えることを特徴とする電子機器。
  4. 前記太陽電池は前記反射偏光子の光が入射する面側に光拡散層を有するとともに、
    前記表示素子が前記光拡散層の光が入射する面側に配置されたことを特徴とする請求項3記載の電子機器。
  5. 前記表示素子の光が入射する面側にタッチパネルを配置したことを特徴とする請求項3または4に記載の電子機器。
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