JP3825488B2 - 被覆施工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、被塗工面に水透過性、通気性の高い厚膜樹脂被覆を形成するための被覆施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市部等においては、道路等の地表面の舗装率が高くなり、道路や駐車場等の舗装された領域に降った雨水は、地面に浸透することなく路面上に溜まり、歩行や交通に支障となる。この対策として、道路等の舗装にあたって、透水性舗装、排水性舗装等の舗装方法が開発されている。
【0003】
一方、歩道、車道、駐車場等の舗装面を着色塗料で塗装して美観を高め、耐久性を向上させ、また、弾力性やスリップ防止性等を付与する方法が広く採用されている。このため、路面や床等に塗装する目的に適した各種の薄膜用塗料や厚膜用塗料が開発されている。このようなものとして、例えば、特開昭63−107775号公報には、ウレタン材料を噴霧状にしてエンボス仕上げ被覆を被塗工面に形成する技術が開示されている。
【0004】
しかし、このような技術においては、被覆自体の透水性が極めて小さいので、透水性舗装、排水性舗装等の舗装方法を施した舗装面、地面上に直接施工されたセメントモルタル面等に塗布した場合、地面から舗装層、セメントモルタル層等を透過してきた水分が被塗工面と被覆との間に溜まり、被覆の膨れが生じ、被覆の耐久性に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、薄膜用塗料を使用した場合には、被覆自体の耐久性が悪く、美観を維持するためには、絶えず塗装しなおす必要があり、更に、路面に微細なクラックが発生した場合、被覆にもクラックが及ぶので、美観が損なわれる不都合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の現況に鑑みてなされたものであり、水透過性、通気性に優れた耐久性の厚膜樹脂被覆であって、水透過性の高い舗装面、セメントモルタル面等に塗布して舗装面、セメントモルタル面等の美観、耐久性、スリップ防止性等を高めることができる厚膜樹脂被覆の被覆施工方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、被塗工面に厚膜樹脂被覆を形成するための被覆施工方法において、二液衝突混合型吹き付け工法によって、主剤成分(A)と硬化剤成分(B)とを、前記主剤成分(A)と前記硬化剤成分(B)とが混合塗工ガン中で衝突混合されてから、流動性を消失するまでの時間が15秒以内である条件下において被塗工面に吹き付け、その後さらに硬化させることにより、最狭窄部の直径が0.01〜1mmである貫通細孔を有する厚膜樹脂被覆を形成するところにある。以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明に係る厚膜樹脂被覆は、表面に多数の細かいエンボス形状が形成されており、上記エンボス形状の凹陥部分の一部が厚膜樹脂被覆を貫通してなる貫通細孔を有するものである。上記貫通細孔は、気体である水蒸気のみならず、液体である水をも通過させることができる。
本発明においては、上記厚膜樹脂被覆を、主剤成分(A)及び硬化剤成分(B)を用い、二液衝突混合型吹付装置によって、これら両成分を被塗工面に吹き付けることにより塗布し、硬化させて形成する。
【0008】
上記主剤成分(A)としては、イソシアネートプレポリマーを含有するものが好ましい。上記イソシアネートプレポリマーとしては、例えば、有機ポリイソシアネート若しくは有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基の一部を分子量200〜8000のポリオールと反応させて得られる部分プレポリマー又はこれらの混合物等を挙げることができる。
【0009】
上記有機ポリイソシアネートとしては特に限定されず、公知のポリイソシアネート等を使用することができ、例えば、芳香族ポリイソシアネート類、脂肪族ポリイソシアネート類等を挙げることができる。上記芳香族ポリイソシアネート類としては、例えば、カルボジイミド変性することにより得られる液状ジフェニルメタンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートの部分プレポリマー、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、これらの混合物(以下このものを「TDI」という)、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(以下このものを「MDI」という)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、これらのカルボジイミド化変性物、ビュレット化変性物等を挙げることができる。
【0010】
上記脂肪族ポリイソシアネート類としては、例えば、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、これらのイソシアヌレート化変性物、カルボジイミド化変性物等を挙げることができる。
【0011】
本発明においては、上記有機ポリイソシアネートは、そのまま使用することもでき、また、ポリオールと窒素気流中、70〜80℃で数時間加熱し、含有するイソシアネート基の一部をポリオールと反応させた部分プレポリマーとして使用することもできる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキシルグリコール、1,10−デカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のエポキシドの1種又は2種以上を付加重合して得たポリエーテルポリオール等を挙げることができる。本発明においては、上記ポリオールは、分子量200〜8000のものが好ましく、500〜5000のものがより好ましい。これらのポリオールは、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明においては、上記有機ポリイソシアネート及び上記部分プレポリマーを、混合して使用することもできる。
【0012】
上記硬化剤成分(B)としては、ポリアミンを含有するものが好ましい。上記ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリアミン(a)と、トルエンジアミンを除く、芳香核に電子吸引性基を有さず、かつ、アミノ基の隣接位置に炭素数5以下のアルキル置換基を有する活性芳香族ジアミン(b)とからなる混合物等を挙げることができる。上記ポリオキシアルキレンポリアミン(a)としては、例えば、平均分子量1000〜10000であって、1分子あたり2個以上の脂肪族的に結合されたアミノ基を含むもの等を挙げることができ、このようなものは、例えば、少なくとも2個以上の水酸基を有するポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基を、水素化−脱水素化触媒を用いて、高温高圧下にアンモニアと反応させる等の方法によって得ることができる。
【0013】
上記ポリオキシアルキレンポリアミン(a)としては、例えば、ポリオキシプロピレンジアミンとして、ジェファーミンD−2000(ハンツマン・スペシャリティー・ケミカルズ社製、アミン当量約1000);ポリオキシプロピレントリアミンとして、テックスリムTR−5050(ハンツマン・スペシャリティー・ケミカルズ社製、アミン当量約1930)、ジェファーミンT−403(ハイツマン・スペシャリティー・ケミカルズ社製、アミン当量約160)等を挙げることができる。
【0014】
また、上記ポリオキシアルキレンポリアミン(a)中の少なくとも一部の第一級アミノ基が、一般式
CH2 =C(R)−Y
(式中、Rは、水素又はメチル基を表す。Yは、電子吸引基を表す。)で表される不飽和炭化水素化合物とのマイケル付加反応によって第二級化された、変性ポリオキシアルキレンポリアミンも好適に使用することができる。
上記Yで表される電子吸引基としては、例えば、エステル残基、ケトン残基、シアノ残基、置換又は無置換のアミド残基、スルホン酸残基、スルホン酸エステル残基等を挙げることができる。
上記不飽和炭化水素化合物としては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸プロピル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸プロピル等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル;アクリルアミド;N,N′−ジメチルアクリルアミド;エチルビニルスルホン;メチルビニルスルホネート、エチルビニルスルホネート等を挙げることができる。
【0015】
上記トルエンジアミンを除く、芳香核に電子吸引性基を有さず、かつ、アミノ基の隣接位置に炭素数5以下のアルキル置換基を有する活性芳香族ジアミン(b)としては、例えば、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリプロピル−2,6−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン等を挙げることができる。これらは、2種以上を併用することができる。
また、上記トルエンジアミンを除く、芳香核に電子吸引性基を有さず、かつ、アミノ基の隣接位置に炭素数5以下のアルキル置換基を有する活性芳香族ジアミン(b)中の少なくとも一部の第一級アミノ基が、上記不飽和炭化水素化合物とのマイケル付加反応によって第二級化された変性ポリアミンも好適に使用することができる。
【0016】
上記硬化剤成分(B)において、ポリオキシアルキレンポリアミン(a)と、トルエンジアミンを除く、芳香核に電子吸引性基を有さず、かつ、アミノ基の隣接位置に炭素数5以下のアルキル置換基を有する活性芳香族ジアミン(b)との混合割合は、上記ポリオキシアルキレンポリアミン(a)100重量部に対して、上記トルエンジアミンを除く、芳香核に電子吸引性基を含まず、かつ、アミノ基の隣接位置に炭素数5以下のアルキル置換基を有する活性芳香族ジアミン(b)が15〜100重量部の割合が好ましい。配合割合が15重量部未満であると形成される厚膜樹脂被覆が極めて柔らかく、半粘着性を有するので、実用性に劣り、100重量部を超えると形成される厚膜樹脂被覆が極めて硬く、かつ、脆くなり、実用的ではない。より好ましくは20〜40重量部である。
【0017】
本発明においては、上記厚膜樹脂被覆を形成するための成分として、必要に応じて、更に、通常使用される可塑剤、難燃剤、充填剤、各種安定剤、着色剤等の助剤を用いることができる。
【0018】
本発明においては、上記主剤成分(A)及び硬化剤成分(B)を、二液衝突混合型吹き付け工法によって衝突混合させて噴霧し、ある程度硬化反応が進行した状態で被塗工面に塗布し、その後更に硬化させることにより、被覆施工を施す。上記主剤成分(A)及び硬化剤成分(B)は、使用温度において液状をたもつ必要がある。上記二液衝突混合型吹き付け工法においては、高圧二液衝突混合型吹付装置を使用することが好ましい。上記高圧二液衝突混合型吹付装置は、例えば、図1に示される。図1において、使用される塗剤の両成分を収容するタンク110、112が、送液ホース111、111で高圧メタリング装置120に接続されている。上記送液ホース111、111には、ドラムポンプ115、115が取り付けられており、塗剤の両成分を圧送できるようになっている。上記ドラムポンプ115、115には、駆動用のエアホース113が連結されていて、上記エアホース113は、図示しないエアコンプレッサーに接続されている。上記タンク110、112には、エアコンプレッサーからエアドライヤー114を経て、乾燥空気が送りこまれる。
【0019】
上記高圧メタリング装置120は、塗剤の各成分に充分な圧力をかけて所定の量だけ送り出すことができるようになっている。各成分の供給ホース122、124は、加熱ホース126及び手元ホース128を経て、塗剤散布用の混合塗工ガン130に連結されている。上記混合塗工ガン130は、例えば、図2に示されるように、その内部で塗剤の両成分を混合し、この混合液をその先端から送り出す塗剤通路133が設けられ、その先端部が外部に開口して塗剤散布口142となっている。上記塗剤通路133には、慴動弁134が挿入されている。上記慴動弁134が、図中上方に後退すると、塗剤の各成分が上記塗剤通路133に送り込まれて、通路の壁や液同士の衝突等により混合され、上記塗剤散布口142から噴霧樹脂が噴出される。上記塗剤散布用の混合塗工ガンとしては、機械的セルフクリーニング機構をそなえたものが、塗工作業が簡単かつ能率的に実施することができ、塗剤の目詰まりも良好に防止することができるので、好ましい。
【0020】
上記高圧二液衝突混合型吹付装置としては特に限定されず、例えば、プロポーションユニットとして、米国ガスマー社製H−2000、米国ガスマー社製H−3500、米国ガスマー社製FF−1600、東邦機械工業社製二成分高圧吐出混合マシンMODEL HF−100等を挙げることができる。また、機械的セルフクリーニング機構をそなえた高圧二液衝突混合型吹付装置用混合塗工ガンとしては、例えば、米国ガスマー社製「GX−7ガン」、米国ガスマー社製「GX−7−400ガン」等を、また、エアクリーニング機構をそなえたものとしては、米国グラスクラフト社製「プロブラーガン」等を挙げることができる。
【0021】
本発明においては、上記二液衝突混合型吹き付け工法を使用するに際して、塗剤の両成分である上記主剤成分(A)と上記硬化剤成分(B)とが、混合塗工ガン中で衝突混合された後、流動性を消失するまでの時間が15秒以内となる条件のもとに、上記主剤成分(A)と上記硬化剤成分(B)とを混合して吹き付ける。流動性を消失するまでの時間が15秒を超えると、吹き付けた際に樹脂が流動性を持ちすぎて硬化反応がある程度進行するまでに樹脂表面の凹凸が平滑化され、エンボス形状の凹陥部分に存在する空隙が埋められて貫通細孔が形成されないので、上記範囲に限定される。
上記混合の混合比は、イソシアネートプレポリマーを含有する主剤成分を使用する場合、上記主剤成分(A)中のイソシアネート基に対する上記硬化剤成分(B)中のアミノ基の当量比が、1/0.7〜1/1.5となる割合が好ましい。当量比が1/1.5未満であるか、又は、1/0.7を超えると、両成分が混合されてから流動性を消失するまでの時間が、通常使用する温度範囲において、15秒以下とならず、貫通細孔が形成されない。
【0022】
本発明においては、混合塗工ガン中で衝突混合された樹脂が、混合塗工ガンから噴出されたのち被塗工面に達するまでの滞空時間が、1〜10秒であることが好ましい。1秒未満であると衝突混合されて硬化反応が開始してから、硬化反応が殆ど進行しない間に被塗工面に到達するので、被塗工面に塗布された樹脂の流動性が大きく、平滑化が生じて貫通細孔が形成されず、10秒を超えると被塗工面に到達するまでに樹脂の硬化の程度が進み、良好な厚膜樹脂被覆が形成されない。
本発明においては、上記高圧二液衝突混合型吹付装置を使用するに際して、衝突混合圧力は、6〜15Mpaであることが好ましい。
また、被塗工面と混合塗工ガンとの距離は、約1〜5m程度とすることが好ましい。
上記使用圧力とし、被塗工面と混合塗工ガンとの距離を上記の条件とすることによって、混合塗工ガン中で衝突混合された樹脂が、混合塗工ガンから噴霧されたのち被塗工面に達するまでの滞空時間を1〜10秒とすることができ、ある程度硬化反応が進行した状態で被塗工面に到達するので、良好な貫通細孔を形成することができる。
【0023】
本発明においては、上記二液衝突混合型吹き付け工法を行うに際して、混合塗工ガン塗剤散布口から噴霧樹脂を、被塗工面の鉛直線に対して45°〜90°の角度で噴出することが好ましい。45°未満であるとエンボス形状の凹凸が充分深く形成されず、貫通細孔が形成されない。より好ましくは60°〜90°であり、更に好ましくは約75°である。
本発明においては、塗剤の両成分である上記主剤成分(A)と上記硬化剤成分(B)とを、厚膜樹脂被覆の凸部の膜厚が0.5〜10mmとなるように塗布することが好ましい。膜厚が0.5mm未満であると耐久性が劣り、10mmを超えると樹脂の使用量が多くなり、経済的に不利となる。
【0024】
かくして、本発明に係る多数の貫通細孔を有する厚膜樹脂被覆を形成することができる。本発明によって形成される上記貫通細孔は、厚膜樹脂被覆の表面に形成された細かいエンボス形状の中の凹陥部分の一部の空隙が被覆を貫通して形成されており、その断面形状は楔形状又は台形状であって、外部表面に大きい方の開口部を有している。上記貫通細孔の直径は、最狭窄部において、0.01mm〜1mmである。0.01mm未満であると、気体である水蒸気は透過しても、液体である水の透過は困難となり、1mmを超えると、水の透過量が多くなりすぎ、また、厚膜樹脂被覆の膜厚が小さい場合、貫通細孔の存在が目立って美観上好ましくない。好ましくは0.05〜0.8mmであり、より好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0025】
上記厚膜樹脂被覆における上記貫通細孔の存在量は、100cm2 当たり7〜700個である。100cm2 当たり7個未満であると水の透過量が充分とならず、700個を超えると水の透過量が多くなりすぎ、また、美観に悪影響を及ぼす。好ましくは30〜300個であり、より好ましくは70〜150個である。
【0026】
本発明によって形成された膜厚樹脂被覆は、気体である水蒸気のみならず、液体である水をも容易に通過させることができる大きさの貫通細孔が形成されており、被覆を単離してその裏面を観察すると、目視によって充分確認することができる大きさの貫通細孔を有する点で、水蒸気等の気体のみを透過することができる程度の分子レベルの間隙を有する従来の通気性塗膜とは全く異なるものである。
【0027】
本発明の被覆施工方法の被塗工面は特に限定されないが、なかでも、コンクリート、モルタル、アスファルト等の表面に好適に適用することができ、また、木材等にも使用可能である。これらの表面には、所望により、厚膜樹脂被覆とコンクリート等の表面との付着性を向上させるための下塗り塗料が、予め塗布されていてもよい。上記下塗り塗料としては、溶剤型湿気硬化型イソシアネート樹脂等を挙げることができる。また、本発明によって形成された膜厚樹脂被覆に、必要に応じて上塗り塗装を施すことも可能である。
【0028】
本発明の被覆施工方法の対象は特に限定されないが、なかでも、公園等のコンクリート施設等の美観の付与が要求される建造物、排水性又は透水性舗装道路、アスファルト舗装道路、コンクリート舗装道路、壁面の保護等が要求される駐車場、地面上に直接施工されたモルタル壁、公園や駐輪場の地面、グラウンド、陸上競技場、校庭、市場、球技場、遊園地の地面や施設等に好適に適用することができる。更に、本発明の方法によって形成された膜厚樹脂被覆は、適度な弾力性と多数のエンボス形状をも有するので、防音、耐衝撃性、耐スリップ性等が要求される体育館等の床面等にも好適に使用することができる。
【0029】
【作用】
本発明に使用される二液硬化型ポリウレア系スプレー材料又はポリウレタン/ポリウレア系スプレー材料は、指触硬化時間が2〜15秒と非常に短いので、被塗工面にスプレー塗布される場合、高圧衝突混合された材料が混合塗工ガンから被塗工面に到達するまでの滞空時間を上述の範囲に設定することによって、混合塗工ガンで混合されて硬化反応を開始し、ある程度硬化反応が進行した状態で被塗工面に到達した後、樹脂塊同士の相互融着はするが、充分な平滑化が生じない状態で更に硬化させることができる。このため、樹脂が付着しなかった領域の一部が、そのまま空隙として残存したまま厚膜樹脂被覆が形成されるので、被塗工面上に形成される厚膜樹脂被覆に貫通細孔を形成することができる。
【0030】
上記貫通細孔は、表面に多数存在するエンボス形状の凹凸部の凹陥部分に存在し、外観上は、貫通細孔そのものの存在は目立ちにくいので、美観に悪影響を及ぼすおそれがない。この貫通細孔は、その断面が楔形状又は台形状であって、最狭窄部においても0.01〜1mmの直径を有しているので、気体である水蒸気のみならず液体である水をも自由に透過させることが可能である。また、外部表面に大きい方の開口部を有するので、厚膜樹脂被覆であっても、貫通細孔に侵入した水が外部大気にすばやく接することができ、高い蒸散性を発揮することができる。更に、貫通細孔は、100cm2 当たり7〜700個存在するので、水の透過量を広い範囲で調節することができ、必要に応じて、充分な透過量を確保することが可能となる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
実施例1
前処理として水で充分に表面を洗浄し、24時間放置乾燥したモルタル面上に、湿気硬化型イソシアネート(NPプライマー、日本ポリウレタン工業社製)を、約150g/m2 の割合でローラー塗布し、約1時間放置した。ポリウレア被覆層形成のため、別に、イソシアネート成分(以下「A成分」という)として、粗MDI(ミリオネートMTL、日本ポリウレタン工業社製)57重量部、ポリプロピレンオキサイド(ニューポールPP−3000、三洋化成工業社製)55重量部を混合し反応させて得たイソシアネートプレポリマーを準備した。また、ポリアミン成分(以下「B成分」という)として、ポリエーテルトリアミン(ジェファーミンT−5000、ハイツマン・スペシャリティー・ケミカルズ社製)50重量部、ポリエーテルジアミン(ジェファーミンD−2000、ハイツマン・スペシャリティー・ケミカルズ社製)25重量部、芳香族ジアミン(エタキュアー100、アルベマール・コーポレーション社製)25重量部を混合して得た混合物を準備した。吹付装置として、二液衝突混合型スプレー装置(ガスマー社製)を用いた。この場合、A成分とB成分との衝突混合比は、体積比で約1/1であり、A成分中のイソシアネート基に対するB成分中のアミノ基の比であるNCOインデックスは、約1.05であった。混合塗工ガンは、ガスマー社製GX−7ガンを用いた。原料温度は、A成分、B成分とも55±5℃であり、原料供給圧力は、7〜12Mpaの条件で、上記プライマー塗布済みモルタル面を被覆した。モルタル面は、水平な地面に置いた。被塗工面と混合塗工ガンとの距離を約3mとし、樹脂の噴出方向を鉛直線に対して約75°とした。
【0033】
形成されたポリウレア材料の被覆厚みは、2〜3mmであった。被覆面は、細かい凹凸面となったが、しわ、むら、はがれ、われは無く、正常な表面であった。
形成された樹脂被覆の貫通細孔の有無を調べるために、別に、ポリプロピレン製平板上に、上記と同様にして樹脂被覆を形成した後、ポリプロピレン製平板から樹脂被覆を単離し、光源にかざして樹脂被覆を裏面から目視により観察したところ、細かい貫通細孔が密に存在していた。貫通細孔の存在密度は、約0.7個/cm2 であった。また、貫通細孔の大きさは、10×12cmの樹脂被覆を単離して通過光量を比較して目視により観察したところ、直径約0.5mmのものが3個、直径約0.2mmのものが26個、直径約0.05mmのものが55個であった。
【0034】
以上の結果から、本発明によって形成された厚膜樹脂被覆は、水や水蒸気を容易に透過させる程度の大きさの貫通細孔を有することが確認できた。
【0035】
比較例1
混合塗工ガンとモルタル面との距離を約50cmとし、樹脂の噴出方向を鉛直線に対して約30°の角度としたこと以外は、実施例1と同様にして厚膜樹脂被覆を形成した。単離した樹脂被覆を光源にかざして目視により観察したところ、貫通穴は存在しなかった。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成により、コンクリート、モルタル、アスファルト等の被塗工面に水透過性、通気性に優れた耐久性の厚膜樹脂被覆を形成することができ、水透過性の高い舗装面等に施工して舗装面の美観、耐久性、スリップ防止性等を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】吹き付け塗工装置の構造図。
【図2】混合塗工ガンの構造を表す断面図。
【符号の説明】
110 塗剤タンク
112 塗剤タンク
120 高圧メタリング装置
130 混合塗工ガン
133 塗剤通路
142 塗剤散布口

Claims (14)

  1. 被塗工面に厚膜樹脂被覆を形成するための被覆施工方法において、二液衝突混合型吹き付け工法によって、主剤成分(A)と硬化剤成分(B)とを、前記主剤成分(A)と前記硬化剤成分(B)とが混合塗工ガン中で衝突混合されてから、流動性を消失するまでの時間が15秒以内である条件下において被塗工面に吹き付け、その後更に硬化させることにより、最狭窄部の直径が0.01〜1mmである貫通細孔を有する厚膜樹脂被覆を形成させてなることを特徴とする被覆施工方法。
  2. 厚膜樹脂被覆はエンボス形状を有し、エンボス形状の凹凸における凸部の膜厚が、0.5〜10mmである請求項1記載の被覆施工方法。
  3. 貫通細孔が、最狭窄部の直径が0.05〜0.8mmのものである請求項1記載の被覆施工方法。
  4. 貫通細孔が、最狭窄部の直径が0.1〜0.5mmのものである請求項1記載の被覆施工方法。
  5. 厚膜樹脂被覆が、貫通細孔を100cm2 当たり7〜700個有するものである請求項1、2、3又は4記載の被覆施工方法。
  6. 厚膜樹脂被覆が、貫通細孔を100cm2 当たり30〜300個有するものである請求項1、2、3又は4記載の被覆施工方法。
  7. 厚膜樹脂被覆が、貫通細孔を100cm2 当たり70〜150個有するものである請求項1、2、3又は4記載の被覆施工方法。
  8. 主剤成分(A)が、イソシアネートプレポリマーを含有するものであり、硬化剤成分(B)が、ポリアミンを含有するものである請求項1記載の被覆施工方法。
  9. 二液衝突混合型吹き付け工法が、衝突混合圧力として6〜15MPaの条件を使用し、機械的セルフクリーニング機構を備えた混合塗工ガンを使用する高圧二液衝突混合型吹付装置を用いるものである請求項1記載の被覆施工方法。
  10. 二液衝突混合型吹き付け工法が、混合塗工ガン塗剤散布口から噴出された噴霧樹脂が被塗工面に到達するまでの時間が1〜10秒の条件で行うものである請求項1記載の被覆施工方法。
  11. 二液衝突混合型吹き付け工法が、混合塗工ガン塗剤散布口から噴霧樹脂を被塗工面の鉛直線に対して45°〜90°の角度に噴出して吹き付けるものである請求項1記載の被覆施工方法。
  12. 被塗工面が、排水性舗装面又は透水性舗装面である請求項1記載の被覆施工方法。
  13. 被塗工面が、地面上に直接施工されたセメントモルタル面である請求項記載の被覆施工方法。
  14. 被塗工面が、厚膜樹脂被覆との付着性を向上させるための下塗り塗料が予め塗布されたものである請求項1記載の被覆施工方法。
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