JP3825162B2 - 炭素含有スライドゲートプレー卜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属の流量を制御するスライドゲートプレートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スライドゲートプレートは溶融金属の流量の有効な制御手段として広く採用されている。スライドゲートプレートは非常に高度な特性が要求される。たとえば、通常、スライドゲートプレートは、円形の開孔部を有した2枚あるいは3枚のプレートを互いに摺動させて溶融金属の流量制御を行うため、機械的強度はもちろん耐スポール性および耐食性が要求される。
【0003】
現在、スライドゲートプレートの材質として主流となっているのは、結合剤として添加している有機質の液状バインダーの炭化によるカーボンボンドを有する炭素含有のものである。このような炭素含有スライドゲートプレートは、さらなる耐用回数の向上を目的として、タールあるいはピッチなどを単独で使用するか両者を併用して、1回あるいは2回以上含浸処理をしているのが普通である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のようにスライドゲートプレートは一般に耐用向上を目的としてタールあるいはピッチの含浸処理を行っている。
【0005】
しかしながら、このような含浸処理は発煙などの問題が生じる。
【0006】
また、タールは発ガン性物質を含んでいることが知られている。近年、世界的に地球環境あるいは人の健康への影響を与える物質の低減が求められている中で、耐火物の技術分野においても、この種物質の含浸処理を無くすことは、今後非常に重要となってくるであろう。
【0007】
一方、従来から焼成後に含浸を行わない無含浸スライドゲートプレートは各耐火物メーカーで開発され、各社で使用されていた。
【0008】
しかしながら、従来の無含浸スライドゲートプレートは、プレートを構成する原料の化学成分に着目して製造されてきただけで、その粒度構成は着目されてこなかった。そのためもあって、従来の無含浸スライドゲートプレートは、見掛気孔率が15%以上と高く、耐食性に劣る。
【0009】
現在のように鋼種が多様化し、ますます使用条件あるいは操業条件が厳しくなることを勘案すると、従来の無含浸スライドゲートプレートは、所望の耐用回数が得られていない。
【0010】
そのため、現在では、含浸を行わないものとしては、低温熱処理により低気孔率としたスライドゲートプレートや、孔径の小さなスライドゲートプレートなどが一部で使用されているだけである。
【0011】
本発明の目的は、低気孔率で、耐食性に優れる炭素含有スライドゲートプレートを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決手段は、溶融金属の流量を制御するスライドゲートプレートにおいて、スライドゲートプレートを構成する原料が少なくとも耐火性無機原料、炭素質原料および金属質原料からなり、前記耐火性無機原料、炭素質原料および金属質原料は、粒子径が0.1μm以上4000μm以下である連続粒度分布系を構成し、前記連続粒度分布系が、最大粒子径より最小粒子径まで順に2の平方根で除して粒度分布に区分けしていき、互いに隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比r(すなわち大きい方の粒径範囲に含まれる粒子の体積%をそのすぐ下の粒径範囲に含まれる粒子の体積%で除した値)が、0.8〜1.4になるように調整した連続粒度分布系であって、最小粒子径は5μm以下とし、最大粒子径は1000μm以上とし、バインダーとしてフェノール樹脂を外掛けで1〜10wt%加えて、混練、成形および加熱処理をした後、非酸化性雰囲気で800〜1500℃で焼成し、かつ、含浸処理を行わないことを特徴とする炭素含有スライドゲートプレートである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明においては、スライドゲートプレートを構成する原料の粒度分布を調整し、たとえば最密充填曲線に近似させることにより低気孔率化を図っている。そうすることにより、従来の無含浸スライドゲートプレートの問題点である高気孔率による耐食性の低下を引き起こすことが回避される。しかも、含浸処理をしないにもかかわらず、含浸を行ったスライドゲートプレートと同等の耐用が得られるのである。
【0014】
本発明によるスライドゲートプレートは、最適の形態では、少なくとも耐火性無機原料、炭素質原料および金属質原料で構成する。これらの原料の粒子径は0.1μm以上4000μm以下である。しかも、耐火性無機原料、炭素質原料および金属質原料は、連続粒度分布系を構成している。
【0015】
その連続粒度分布系について説明すると、最大粒子径から最小粒子径まで順に2の平方根で除して多数の粒度分布に区分けしていき、それらの多数の粒度分布において互いに隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比r(すなわち大きい方の粒径範囲に含まれる粒子の体積%をそのすぐ下の粒径範囲に含まれる粒子の体積%で除した値)が、0.8〜1.4になるように調整した連続粒度分布系である。
【0016】
さらに好ましい連続粒度分布系の態様について説明すると、最大粒子径より最小粒子径まで順に2の平方根で除して多数の粒度分布に区分けしていったときに互いに隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比rがr±15%の範囲内になるように調整した連続粒度分布系である。
【0017】
本発明のより好ましい炭素含有スライドゲートプレートは、上記のように調整した連続粒度分布系である配合において、バインダーとしてフェノール樹脂を外掛けで1〜10wt%加えて混練、成形および加熱処理をした後、非酸化性雰囲気で800〜1500℃で焼成し、含浸処理を行わないものである。
【0018】
【実施例】
まず、本発明による炭素含有の無含浸スライドゲートプレートの製造方法の好適例を詳細に説明する。
【0019】
スライドゲートプレートを構成する原料の均一粒子径の一定体積当たりの空間率ε(0.3〜0.6)と使用原料の粒度範囲を特定することで、得られる最密充填曲線に限りなく近づける。そうすることによって、低気孔率化をはかり、無含浸での使用を可能にするものである。
【0020】
本発明による炭素含有の無含浸スライドゲートプレートの製造に使用する原料の連続粒度分布系の好適例を示すと、次のとおりである。
【0021】
図1〜図3は、連続粒度分布系の複数の例をグラフの形にして示している。図1は分布曲線A〜Dの例を示し、図2は適例1〜4を示し、図3は不適例1〜4を示す。
【0022】
図1は、各種条件(空間率、最大粒子径および最小粒子径)での理論的な最密充填曲線を示す。
【0023】
ここで、曲線Aは、使用原料の粒度範囲を4000μm〜5μmとし、空間率を0.3とした場合、多数の粒度分布において互いに隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比r(すなわち大きい方の粒径範囲に含まれる粒子の体積%をそのすぐ下の粒径範囲に含まれる粒子の体積%で除した値)が、1.11になるように調整した連続粒度分布系が採用されている。たとえば、4000μm〜2830μmの粒度の原料は2830〜2000μmの粒度の原料の体積比で1.11倍であり、順次、2830〜2000μmと2000〜1410μm、2000〜1410μmと1410〜1000μm、1410〜1000μmと1000〜700μm…というように、隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比が同じ比率(1.11倍)となる粒度分布であることを示す。
【0024】
曲線Bは、使用原料の粒度範囲を3000μm〜1μmとし、空間率を0.4とした場合、多数の粒度分布において互いに隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比r(すなわち大きい方の粒径範囲に含まれる粒子の体積%をそのすぐ下の粒径範囲に含まれる粒子の体積%で除した値)が、1.09になるように調整した連続粒度分布系が採用されている。たとえば、3100μm〜2120μmの粒度の原料は2120〜1500μmの粒度の原料の体積比で1.09倍であり、順次、2120〜1500μmと1500〜1060μm、1500〜1060μmと1060〜750μm、1060〜750μmと750〜530μm…というように、隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比が同じ比率(1.09倍)となる粒度分布であることを示す。
【0025】
曲線Cは、使用原料の粒度範囲を4000μm〜0.1μmとし、空間率を0.6とした場合、多数の粒度分布において互いに隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比r(すなわち大きい方の粒径範囲に含まれる粒子の体積%をそのすぐ下の粒径範囲に含まれる粒子の体積%で除した値)が、1.05になるように調整した連続粒度分布系が採用されている。たとえば、4000〜2830μmの粒度の原料は2830〜2000μmの粒度の原料の体積比で1.05倍であり、順次2830〜2000μmと2000〜1410μm、2000〜1410μmと1410〜1000μm、1410〜1000μmと1000〜700μm…というように、隣り合う粒度分布の粒度範囲に含まれる粒子の体積比が同じ比率(1.05倍)となる粒度分布であることを示す。
【0026】
曲線Dは、使用原料の粒度範囲を1000μm〜0.1μmとし、空間率を0.4とした場合、多数の粒度分布において互いに隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比r(すなわち大きい方の粒径範囲に含まれる粒子の体積%をそのすぐ下の粒径範囲に含まれる粒子の体積%で除した値)が、1.08になるように調整した連続粒度分布系が採用されている。たとえば、1000〜700μmの粒度の原料は700〜500μmの粒度の原料の体積比で1.08倍であり、順次700〜500μmと500〜350μm、500〜350μmと350〜250μm、350〜250μmと250〜170μm…というように、隣り合う粒度分布の粒度範囲に含まれる粒子の体積比が同じ比率(1.08倍)となる粒度分布であることを示す。
【0027】
本発明で用いる原料の粒度範囲を0.1μm以上4000μm以下とした理由は、次のとおりである。すなわち、最小粒子の粒子径が0.1μm以下の原料を任意の量使用するのは非常に困雛であり、かつコスト高になる。また、最大粒子の粒子径が4000μmを超えると、機械的強度が低下する。原料の粒度範囲が0.1μm以上4000μm以下であれば、最小粒子および最大粒子の粒子径は、通常の、スライドゲートプレートを構成する原料の粒子径であれば、特に制限するものではないが、最小粒子径は5μm以下とし、最大粒子径は1000μm以上とするのが好ましい。本発明の最小粒子径および最大粒子径は、そのような好ましい最小粒子径および最大粒子径である。
【0028】
均一粒子径の一定体積当たりの空間率は粒子形状・粒子径・充填状態などに依存するが、均一粒子径において空間率が0.6以上となることは事実上なく、0.3以下となるのは、均一粒子径の粒子が完全に球形でありかつ理論的に最密な充填(菱面体充填)の場合のみである。このようなものは、スライドゲートプレート用の原料においては事実上あり得ない。
【0029】
粒度分布を最大粒子径より最小粒子径まで順に2の平方根で除して区分けしていって、互いに隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比rを0.8〜1.4としたのは、0.8以下あるいは1.4以上では最密充填曲線に近似させて低気孔率化を図るという本発明の目的が達成できないからである。
【0030】
好ましい体積比rは、0.9〜1.3である。
【0031】
また、理論的に最密充填となるのは、体積比rがいずれの粒径範囲においても一定となるときである(図1参照)が、そのようなことはスライドゲートプレート用原料においては事実上難しく、r±15%の範囲であればよい。より好ましくはr±10%である。
【0032】
本発明で用いる耐火性無機原料は一般にスライドゲートプレートに使用されるものであれば特に限定されることはなく、アルミナ、マグネシア、ジルコニアなどの酸化物や、炭化珪素、窒化珪素、炭化硼素などの非酸化物があげられる。
【0033】
炭素質原料としては、土状黒鉛、鱗状黒鉛などの天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラックなどがあげられる。
【0034】
また、金属質原料としては、Al、Siなどの低融点の金属の粉末があげられる。
【0035】
また、これらの原料の配合割合は、必要とする特性に合わせて任意に調整するものであり、特に限定するものではない。ただし、炭素質原料を1〜30wt%とし、残部が耐火性無機原料および金属質原料などから成ることが好ましい。炭素質原料が1wt%未満では、溶融スラグに対して濡れ難い性質を十分に利用できないことがあり、30wt%を超えると、逆に耐火物の特性が低下してしまうことがある。
【0036】
本発明の無含浸スライドゲートプレートは、上述のような粒度分布を最密充填となるように調整した耐火性無機原料と炭素質原料および金属質原料などからなる配合物に、バインダーとしてフェノール樹脂を外掛けで1〜10wt%加えて混練して成形した後、加熱処理をし、800℃〜1500℃の非酸化性囲気中で焼成して製造される。
【0037】
なお、フェノール樹脂が1wt%未満であると、十分な強度の発現が得られず、15wt%を超えると、ガス発生量が多くなり、結果としてスライドゲートプレートの特性を低下させてしまう恐れがある。また、焼成温度を800℃以上としたのは、添加させた低融点金属が反応により気孔を充填し、低気孔率化を促進する効果を得るためである。焼成温度を1500℃以下とするのは、それ以上ではコスト増になるとともに、揮発する成分が増加して気孔率が増加する恐れがあるからである。
【0038】
以下に本発明の実施例と比較例を示すが、これらの実施例と比較例は本発明の実施を容易化あるいは促進化するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0039】
本発明品と比較品の各種特性値を表1および2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
なお、本発明品の特徴である粒度分布を最密充填曲線に近似させたることによる効果を明確にするために、記載してある本発明の実施例および比較例は、すべて化学成分は等しいものである。
【0042】
本発明の実施例1〜6は、比較例1〜3(従来の無含浸品)と比較して、見掛気孔率が低下し、耐食性が向上した。また、比較例7〜9(従來の含浸品)と比較して、ほぼ同等の特性を示した。
【0043】
粒度分布を調整した比較例4〜6においては、焼成温度が低いと、耐スポール性が低下し、亀裂が増加した。焼成温度が高いと、見掛気孔率が増加し、耐食性の向上が余り認められなかった。また、最大粒子径4.2mmの原料を使用すると、機械的強度が低下した。
【0044】
本発明の実施例2を200トン取鍋で使用したところ、従来の含浸品と同等の耐用回数(6回)を示した。また、本発明の実施例2は、亀裂および摺動面の面状態も、従来の含浸品とほぼ同等となった。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、スライドゲートプレートを構成する原料の粒度構成を最密充填曲線に近似させることにより、加圧焼成あるいは高温焼成などの特殊工程を必要とせず、従来と同じ製法で製造してもスライドゲートプレートの低気孔率化を図ることができ、従来の含浸を行ったスライドゲートプレートと同等の耐用を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 累積体積と粒子径との関係を示すグラフである。
【図2】 図1とは別の、累積体積と粒子径との関係を示すグラフである。
【図3】 図1とは別の、累積体積と粒子径との関係を示すグラフである。
Claims (1)
- 溶融金属の流量を制御するスライドゲートプレートにおいて、スライドゲートプレートを構成する原料が少なくとも耐火性無機原料、炭素質原料および金属質原料からなり、前記耐火性無機原料、炭素質原料および金属質原料は、粒子径が0.1μm以上4000μm以下である連続粒度分布系を構成し、前記連続粒度分布系が、最大粒子径より最小粒子径まで順に2の平方根で除して粒度分布に区分けしていき、互いに隣り合う粒度分布の粒径範囲に含まれる粒子の体積比r(すなわち大きい方の粒径範囲に含まれる粒子の体積%をそのすぐ下の粒径範囲に含まれる粒子の体積%で除した値)が、0.8〜1.4になるように調整した連続粒度分布系であって、最小粒子径は5μm以下とし、最大粒子径は1000μm以上とし、バインダーとしてフェノール樹脂を外掛けで1〜10wt%加えて、混練、成形および加熱処理をした後、非酸化性雰囲気で800〜1500℃で焼成し、かつ、含浸処理を行わないことを特徴とする炭素含有スライドゲートプレート。
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