JP3824836B2 - アクチュエータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、カーボン芯の全周にSiCを蒸着したSiC蒸着繊維を発熱体として用いた、変位応答特性を有するアクチュエータに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
アメリカTextron Specialty Materials社製のSiC蒸着繊維は、従来より、高強度・高剛性等の優れた力学特性を有する代表的な強化用セラミックス繊維として知られており、Ti系またはAl系の金属基複合材料に用いられている。このSiC蒸着繊維は、直径約30μmのカーボン芯にSiCをCVD法で蒸着させて製造したもので、繊維表面にカーボンリッチ層を有している。また、これまでにもSiCおよびカーボンは、それぞれ単独で力学特性以外にも多くの機能特性に優れていることが知られており、半導体等として利用されてきている。
【0003】
しかしながらSiC蒸着繊維については優れた力学特性にのみ関心が集中し、熱や電気等の機能性については未だに明らかにされていなかった。
【0004】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、SiC蒸着繊維の熱および電気持性を明らかにし、SiC蒸着繊維からなる細くしなやかで高温でも使用することができる発熱体を用いたアクチュエータを提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、以下の通りの発明を提供する。
【0006】
すなわち、まず第1には、2枚の金属母材の一方にU字溝が複数本平行に設けられ、U字溝にカーボン芯の全周にSiCを蒸着した蒸着繊維からなる発熱体が配設され、その金属母材に発熱体の上方から他方の金属母材が重ね合わされて成形されたアクチュエータにおいて、2枚の金属母材が厚さが異なるものであることを特徴とするアクチュエータを提供する。
【0007】
また、第2には、この出願の発明は、上記第1の発明の金属母材が、Al、Ti、Niからなる群から選択される1種類以上の元素を含む合金であることを特徴とするアクチュエータを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0012】
まず、この出願の発明のアクチュエータに使用される発熱体は、カーボン芯の全周にSiCをCVD法やプラズマCVD、レーザーCVD、スパッタリング法等の気相蒸着の手段で蒸着したSiC蒸着繊維であり、通電により発熱されることを特徴としている。
【0013】
このSiC蒸着繊維は、カーボン芯の表面をSiC層で被覆したものであり、一種の複合材料である。カーボン芯の半径とSiC層との寸法比は、各種であってよいが、好ましくは、例えば、3:4〜1:2程度とすることができる。その一例として、半径15μmのカーボン芯の表面にSiCを厚さ(a)55μmおよび(b)20μmでCVD蒸着したこの発明のSiC蒸着繊維の横断面図を、それぞれ図1(a)(b)に示した。SiC蒸着繊維の表面には、カーボンリッチ層が形成されている。
【0014】
SiC蒸着繊維の結晶構造については、X線回折分析の結果を図2に例示した。この場合のSiC蒸着繊維試料には、上記のSiC層厚さが55μm、すなわち直径が140μmのSiC蒸着繊維を用いた。また、試料としては、SiC蒸着繊維をX線入射方向と平行に一方向配列して固定したもの、垂直に一方向配列して固定したもの、およびSiC蒸着繊維を破砕したものの3種について分析し、結果をそれぞれ図中にアルファベットA、BおよびCで示した。図2の例では、SiC蒸着繊維は、β−SiC(3C)およびC(graphite)から構成され、繊維方向において結晶構造の異方性がないことがわかる。
【0015】
SiC蒸着繊維の物性のうち力学特性については、それぞれ単独で優れた特性を有するカーボン繊維やSiC繊維よりも優れていることが従来より知られている。また、SiC蒸着繊維は、高温での使用にも耐え、耐食性にも優れた繊維である。
【0016】
SiC蒸着繊維の電気抵抗特性については、カーボン繊維とSiC繊維との間の特性を示し、主に電気抵抗の小さいカーボン芯に依存していることが明らかとなった。また、SiC蒸着繊維においては、カーボン芯へのSiCの蒸着時にSiC被覆層の表面に主としてカーボンを含有するカーボンリッチ層が形成されることがある。このカーボンリッチ層は電気抵抗が小さく良導性であるが、約500℃以上の温度においてはカーボンリッチ層はその一部または全部が焼失することになる。
【0017】
この出願の発明のアクチュエータに使用される発熱体としては、このカーボンリッチ層は無い方がよく、発熱体あるいは加熱体としてSiC蒸着繊維を使用する場合、予め500℃以上への加熱によってカーボンリッチ層を焼失させておくことが望ましい。もちろん、500℃未満の条件下での使用を前提としてカーボンリッチ層を残存させておいてもよい。カーボンリッチ層を良導部として利用することも可能となる。
【0018】
以上のことから、500℃以上、たとえば、550〜700℃の温度範囲においてはSiC蒸着繊維の表面にあるカーボンリッチ層の一部または全部が焼失するため、カーボンリッチ層の有無で電気抵抗特性は異なる。なお、カーボン芯については、SiC層に被覆されているために焼失することはない。
【0019】
具体的には、SiC蒸着繊維の電気抵抗率は、温度の上昇と共に低下し、カーボンリッチ層が焼失する間のみ電気抵抗率が上昇する。カーボンリッチ層が焼失したSiC蒸着繊維については、1000℃までの温度範囲において温度上昇にほぼ比例して電気抵抗率が低下することが確認された。
【0020】
SiC蒸着繊維の電気抵抗の温度係数については、やはり550〜700℃のカーボンリッチ層が焼失する範囲において大きく変動するが、それ以外の温度範囲ではほぼ一定の値をとり、例えば、上記の直径が140μmのSiC蒸着繊維の場合では、−4.1×10-4/℃である。カーボンリッチ層が焼失したSiC蒸着繊維の電気抵抗の温度係数については、1000℃までの温度範囲において、例えば、上記の直径が140μmのSiC蒸着繊維の場合では、−5.2×10-4/℃のほぼ一定の値をとる。
【0021】
カーボンリッチ層が焼失したSiC蒸着繊維は電気抵抗特性が安定するため、再現性があり、安定したの熱電気抵抗特性を有するSiC蒸着繊維を得ることができる。
【0022】
以上のようなSiC蒸着繊維の熱電気抵抗特性を利用することで、高温等の酸化雰囲気でも使用でき、耐食性に優れた高温発熱体が実現される。発熱は、1300℃程度まで可能となる。また、この発熱体は、強度もさることながら細くしなやかなため、その特性を活かした局部的な加熱が可能な発熱体が実現される。
【0024】
上記のようなこの発明の発熱体を多数組み合わせることで、任意の形状の加熱体が実現できる。具体的には、例えば複数本のSiC蒸着繊維を径の小さいアルミナ管等の外面に密に配列させて、アルミナ等の保護管内に設置することで、内部に挿入した物体を加熱する加熱体が実現される。この時、SiC蒸着繊維の通電のための端子部を銅箔等で固定すると接触抵抗を軽減することができる。
【0025】
これは、たとえば、ワイヤ状サンプルの高温試験等に有用である。さらに、この発明の発熱体は、たとえば、高速で1000℃まで加熱できるため、対象物を瞬時に昇温させるなどの用途には最適な加熱体が実現される。
【0026】
この出願の発明のアクチュエータは、2枚の金属母材の一方にU字溝が複数本平行に設けられ、U字溝にカーボン芯の全周にSiCを蒸着したSiC蒸着繊維からなる発熱体が金属母材内に配設され、その金属母材に発熱体の上方から他方の厚さの異なる金属母材が重ね合わされて成形されたアクチュエータであって、通電により発熱体が発熱されることによって金属母材が熱膨張されて、金属母材の変形を促すことを特徴としている。
【0027】
金属母材としては、線膨張率が大きい金属や合金、ヤング率の小さな金属および合金などが使用できる。例えば、Al、Ti、Ni等の金属、あるいはこれらを一種以上含む合金等が例示される。たとえば、温度300℃程度までの使用条件では、Alを使用することが示される。
【0028】
この発明の発熱体の線膨張率は小さいことから、発熱体が通電により発熱されると線膨張率が大きい金属母材内に不均一温度分布が生じ、金属母材の高温となった部分が膨張する。これによって、金属母材の変形を促すことができる。
【0029】
また、SiC蒸着繊維からなるこの発明の発熱体は、発熱機能の他に、従来より知られている優れた力学特性を有し、強化繊維としても機能させることができる。
【0030】
これによって、この複合材料にアクチュエータとしての機能を付与することができる。アクチュエータの変形は、金属母材内に配置する発熱体の位置、数量あるいは発熱体への通電の仕方によって制御することが可能となる。例えば、金属母材内に平行かつ等間隔に複数本の発熱体を配置することや、発熱体の間隔を変化させること等が例示される。また、金属母材内に複数の発熱体を等間隔で配置した場合にも、発熱体への通電方向を変化させることや、出力を変化させる等して変形形状を調節することができる。
【0031】
より具体的に、例えば、Al母材内に複数の発熱体を等間隔で配置した場合には、アクチュエータの温度は電気出力とほぼ比例して上昇することが例示される。また、アクチュエータの変位および曲率についても、ほぼ温度に比例して増大することが例示される。
【0032】
また、この出願の発明のアクチュエータは、たとえば、2枚の金属母材の一方に発熱体の直径と同じ幅のU字溝を複数本平行に設けてU字溝内に発熱体を配置し、その金属母材に発熱体の上方から他方の金属母材を重ねあわせて成形し、次いで得られた成形体をアルカリ溶液に浸漬させて成形体内にある発熱体の先端が露出するように金属母材を溶かし、露出した発熱体を通電端子とすることで製造することができる。
【0033】
この場合の2枚の金属母材は、様々な大きさ、厚さ及び形状のものを使用できる。所望のアクチュエータの形に準じてもよいし、予め大きなアクチュエータを作成してから小さく切り出すこともできる。
【0034】
2枚の金属母材に、使用する発熱体の直径と同じ幅のU字溝を複数本平行に設ける。U字溝の位置および深さによって、金属母材内の発熱体を任意の位置に配置させることが可能となる。また、U字溝を設けることで、極めて細い発熱体を整然かつ容易に配置することができる。発熱体を配置した金属母材に、発熱体を挟み込む形で他方の金属母材を重ねあわせて成形する。成形は、例えば、ホットプレスを施すことなどが示される。
【0035】
この成形体を、アルカリ溶液に浸漬させて金属母材を溶かし、成形体内部発熱体の先端を露出させる。アルカリ溶液は母材金属を溶解するものであればよく、濃度についても適宜選択できる。例えば、母材にAlを使用した場合には、5%のNaOH溶液を用いることなどが例示される。露出させる発熱体の長さは、アクチュエータの電気抵抗に影響を与えるため、通電のための端子として利用できる長さがあればよい。例えば、約10mm程度とすることができる。露出させた発熱体は、例えば銅箔などの抵抗の低い材料で束ねて端子とする。
【0036】
これによって、この発明のアクチュエーターを製造することができる。
【0037】
なお、端子は、アクチュエーターの両端に設けてもよいし、片端のみに設けてもよい。アクチュエーターの両端に端子を設けた場合は、それぞれ露出した発熱体を全て束ねて端子を設ける。一方、アクチュエーターの片端のみに端子を設けた場合は、例えば、真ん中に配置させた発熱体を切断し、その左右に残された発熱体をそれぞれで束ねて2つの端子とすること等が示される。
【0038】
また、金属母材を、例えば厚さの異なる2枚の薄板としすると、アクチュエータ内の発熱体の位置を、容易に厚さ方向の中心から均一にずらすことができる。このようなアクチュエータに通電して発熱体を発熱させると厚さ方向で不均一な温度分布が生じ、発熱体位置に近い面の金属母材の膨張量が大きく、反対面の膨張は小さくなるため、アクチュエータを弓状に変形させることができる。
【0039】
さらに、アクチュエータ内に発熱体を等間隔かつ平行に配置することで、均質な変形を実現することができる。
【0040】
もちろん、金属母材の形状は板状のものに、溝もU字溝に限定されることはない。棒状、その他異形状の母材であってもよい。
【0041】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0042】
【実施例】
参考例1)
<A> SiC蒸着繊維には、繊維A:SCS−2(φ140μm、アメリカTextron Specialty Materials社製)および繊維B:SCS−9(φ70μm、同社製)を用いた。これらの繊維Aおよび繊維Bの電気抵抗を、それぞれ繊維の長さを変化させて、大気中にて測定した。
【0043】
電気抵抗の測定には、5桁の数値表示が可能なデジタルマルチメーターを用いた。その測定結果を図3に示した。図3より、繊維Aおよび繊維Bともに電気抵抗と繊維長さとが良い線形関係を示すことがわかった。繊維Aおよび繊維Bについて、電気抵抗:R(Ω)と繊維長さ:L(mm)との関係を線形回帰解析した結果は、それぞれ次の通りとなった。
【0044】
A=12.39×L+64.98
B=11.76×L+337.28
式中、繊維長さがゼロのときの電気抵抗は、主に接触電気抵抗によるものと思われる。
【0045】
図4に電気抵抗率と繊維長さとの関係を示した。両繊維とも電気抵抗率はほぼ一定であり、繊維Aの電気抵抗率は繊維Bのほぼ4倍となって、それぞれの繊維の横断面積の比と同じであった。両繊維とも繊維長さが600mm以下になると、電気抵抗率が一定でなく上昇しているが、これも主に繊維長さと関係しない接触電気抵抗によるものと考えられる。
【0046】
なお、繊維Aおよび繊維Bの電気抵抗率は、カーボン繊維とSiC繊維との間の値をとり、それぞれ191.8Ωmおよび46.6Ωmであった。
<B> 上記繊維Aについて、測定温度を室温から1000℃までの間で変化させた際の電気抵抗値を測定した。繊維Aは長さ720mmのものを用い、同一の繊維Aに対して室温から1000℃までの昇温を4回繰り返して行った。繊維Aは、ループ状に曲げて箱型加熱炉の中に導入し、両端を加熱炉の上にある円孔から炉外に出してセッティングした。この際、加熱炉の中にある繊維Aの長さは約40mmであった。室温以上での測定は、所定の温度にまで加熱した後に5分間保持してから実施した。
【0047】
測定温度を変化させた際の繊維Aの電気抵抗値を、図5に示した。繊維Aの電気抵抗は、ほぼ温度の上昇と共に低下しているが、1回目の加熱においては550〜700℃の範囲で上昇した。これは繊維Aの表面にあるカーボンリッチ層が焼失したことによるものと考えられる。カーボンリッチ層が焼失した後および2〜4回目の測定では、繊維Aの電気抵抗はより高い値を示すが、再現性よく、温度の上昇にほぼ比例して低下することが確認された。
【0048】
以上の結果から、SiC蒸着繊維の電気抵抗率は、ほぼ温度の上昇と共に低下することがわかった。
<C> 繊維Aを(a)室温と、(b)500℃および(c)1000℃に加熱した際とについて、繊維の横断面の直径線上における元素Cおよび元素Siの成分分布をEPMAにより分析した。その結果を、それぞれ図6(a)(b)(c)に示した。
【0049】
(a)室温状態では、繊維Aの表面にカーボンリッチ層が存在しており、(b)500℃の加熱でも、依然としてカーボンリッチ層が存在していることが確認できた。しかしながら、(c)1000℃にまで加熱すると、繊維Aの表面のカーボンリッチ層がほぼ焼失していることが確認された。
【0050】
以上のことから、上記<B>の1回目の加熱において、550〜700℃の範囲で電気抵抗が上昇したのは、繊維Aの表面のカーボンリッチ層が焼失したためであるといえる。
<D> 次いで、上記<B>の結果を用い、次式によって繊維Aの電気抵抗の温度係数αを求めた。
【0051】
α=2×(R1−R2)/[(R1+R2)×(T1−T2)]
ここで、R1とR2はそれぞれT1とT2における電気抵抗値であり、αは平均温度:(T1+T2)/2における抵抗の温度係数を表す。
【0052】
図7は、繊維Aの電気抵抗の温度係数を示したものである。1回目の加熱において、550〜700℃の温度範囲で繊維Aのα値は大きく変動しているが、それ以外の温度範囲ではα値はほぼ一定であり、−4.1×10-4/℃となった。また、2回目以降の加熱では、1000℃までの温度範囲において繊維Aのα値はほぼ一定であり、−5.2×10-4/℃であった。
【0053】
一方で、SiC蒸着繊維の構成材であるカーボンおよびSiCの電気抵抗の温度係数αは、その組成や製法によって異なってくるが、カーボンについては(−5〜−2)×10-4/℃でほぼ一定であり、SiCについては変動があって600℃までは負の値をとり、600℃以上では正の値に転じると報告されている。
【0054】
以上のことから、SiC蒸着繊維は、電気抵抗率についてはカーボン繊維とSiC繊維との間の値をとること、電気抵抗の温度係数についてはカーボン芯に依存していることが確認された。
参考例2)発熱体としてアメリカTextron Specialty Materials社製のSiC蒸着繊維(SCS−2、φ140μm)を用い、図8に示したような小型の加熱体を作製した。小型加熱体は、φ2×100mmのアルミナ管の外周に、70mmに切断したSiC蒸着繊維48本を密に配列して、φ5mmのアルミナ保護管内にセッティングした。電気出力には容量30Vの直流電源を、小型加熱体の発熱温度の計測には小型加熱体のアルミナ管中に設置したCA熱電対を用いた。小型加熱体のSiC蒸着繊維と電源とを繋ぐ端子部は銅箔で固定し、接触抵抗の軽減を図った。なお、この小型加熱体の電気抵抗は30Ωであった。
【0055】
図9に、電気出力と小型加熱体の中心部の発熱温度との関係を示した。発熱温度の計測は、一定の温度で5分間保持した後に行った。発熱温度が700℃までの範囲では、小型加熱体の発熱温度と電気出力は比例していた。発熱温度が700℃以上の範囲では熱の輻射放出により、小型加熱体の発熱温度は電気出力との比例関係より低い温度となった。また、28Wの出力を与えたときの発熱温度は、約1000℃にも達した。
【0056】
これらの結果から、この参考例のSiC蒸着繊維を発熱体とした小型加熱体は、良好な加熱体として機能することが確認された。この参考例の小型加熱体は高温等の酸化雰囲気でも使用できるため、ワイヤ状のサンプル等の高温試験などにも使用できることが示された。
(実施例)母材としては、厚さ0.2mmおよび0.4mmの純Al板(A1050P)をそれぞれ30×69.5mmに切断したものを、発熱体としては、φ140μmのSiC蒸着繊維(SCS−2、アメリカTextron Specialty Materials社製)を用いた。
【0057】
予め、厚さ0.2mmのAl板の片面に直径140μmのU字溝を0.25mm間隔で設け、その溝にSiC蒸着繊維を配列し、その上から0.4mmのAl板を載せて、大気中、温度893K、圧力56MPa、保持時間40分の条件でホットプレスし、厚さ約0.5mmの単層一方向SiC/Al複合材料を得た。
【0058】
このSiC/Al複合材料から、30本のSiC蒸着繊維を含む10×70mmの試験片を採取して、温度573Kで10分間の焼きなましを行った。この試験片の一端および両端を5%NaOH水溶液に約12時間浸してAl母材を溶かし、SiC蒸着繊維を約10mm露出させたものを、それぞれアクチュエータ1およびアクチュエータ2とした。図10(a)(b)は、それぞれアクチュエータ1およびアクチュエータ2を示し、図11にはアクチュエータの横断面のSEM写真を示した。アクチュエータ中にSiC蒸着繊維が等間隔に配列し、横断面厚さ方向の中心から一定に離れた位置にあることが確認できた。
【0059】
アクチュエータのSiC蒸着繊維露出部は、通電加熱のための電極とした。アクチュエータ1の場合は、露出した30本のSiC蒸着繊維のうち中心から4本を切断し、左右に残った13本ずつのSiC蒸着繊維を束ねてそれぞれ幅3mmの銅箔を巻き付けたものを電極とした。アクチュエータ2の場合は、両端に露出した30本のSiC蒸着繊維をそれぞれ束ねて幅3mmの銅箔を巻き付けたものを電極とした。
【0060】
これらのアクチュエータの、通電加熱に対する応答特性を調べた。通電加熱には、30Vまで定圧出力可能な直流電源装置を用いた。
【0061】
図12(a)(b)に、それぞれアクチュエータ1およびアクチュエータ2の通電加熱に対する応答特性を計測する装置の概略図を示した。
【0062】
アクチュエータ1の場合(a)は、電極を避けてSiC蒸着繊維露出部(12)を固定して通電加熱し、他端の応答特性を計測した。応答は、他端の変位Xを定規(13)の目盛りで読み取り、変位する際に発現した力(以下、変位の際の出力という)をバネはかり(14)で測定した。また、電極端付近の測定点(I)、中央部の測定点(II)および他端の測定点(III)の3個所の温度を熱電対(15)で同時に測定した。
【0063】
アクチュエータ2の場合(b)は、電極を避けて両端のSiC蒸着繊維露出部(22)を固定して通電加熱し、中央部の応答特性を計測した。応答は、中央部の変位Xを定規(23)の目盛りで読み取り、変位の際の出力をバネはかり(24)で測定した。また、両端付近の測定点(I)および測定点(III)と中央部の測定点(II)の3個所の温度を同時に測定した。
【0064】
測定結果からアクチュエータの曲率:r-1を、固定部から変位の読み取り部までの距離をY、変位をXとして、次式から算出した。
【0065】
-1 = 2X/(X2+Y2
<A> アクチュエータ1の電気出力と温度との関係は、図13(a)に示したように、ほぼ比例していることが分かった。電圧9.5Vで電流1.0Aのとき、測定点(I)は200℃以上の高温に達したが他端の測定点(III)はそれほど高温にはならず、両測定点間の温度差は50℃以上となった。
【0066】
アクチュエータ2の電気出力と温度との関係についても、図13(b)に示したように、ほぼ比例しており、電圧7.6Vで電流1.5Aのとき、測定点(I)が250℃以上の高温に達した。アクチュエータ2の場合は、三つの測定点における温度差は10℃以下で、アクチュエータ1の場合と比較すると極めて差の小さいことが確認された。
【0067】
各々のアクチュエータについて3回まで繰り返し通電を行い、再現性があることを確認した。
<B> アクチュエータ1およびアクチュエータ2の平均温度と曲率および変位との関係を、それぞれ図14(a)および(b)に示した。平均温度は3つの測定点における温度の算数平均とした。
【0068】
アクチュエータ1およびアクチュエータ2の曲率および変位は、平均温度にほぼ比例して増大していることが分かった。しかし、アクチュエータ1の場合は変位が大きく250℃で変位が12.5mmとなったのに対し、アクチュエータ2の場合は250℃で変位が3.5mmであり、アクチュエータ1の変位がアクチュエータ2の変位の3.5倍にもなることが分かった。
<C> アクチュエータ1の平均温度および曲率と、変位の際の出力との関係をそれぞれ図15(a)に、アクチュエータ2についてはそれぞれ図15(b)に示した。
【0069】
アクチュエータ1については、変位の際の出力は、約8kgfまでの範囲では平均温度および曲率と比例して増大するが、それ以上の範囲では比例した場合よりも小さくなる。これは、Al母材が塑性変形するためであると考えられる。アクチュエータ2については、計測範囲全般で変位の際の出力が平均温度および曲率に比例して増大している。
【0070】
以上の結果から、アクチュエータ1およびアクチュエータ2は通電加熱アクチュエータとして機能できることが確認された。
【0071】
また、この発明のアクチュエータ1およびアクチュエータ2は異なる変位応答や出力応答を示すため、それぞれの特性に応じた利用ができることが示された。
【0072】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0073】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、細くしなやかで高温でも使用することができる発熱体用いた変位応答特性を有するアクチュエータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】直径30μmのカーボン芯の表面に厚さ(a)55μmおよび(b)20μmでSiCを蒸着した場合のSiC蒸着繊維を例示した横断面図である。
【図2】SiC蒸着繊維のX線回折分析の結果を例示した図である。
【図3】繊維Aおよび繊維Bの電気抵抗と繊維の長さとの関係を例示した図である。
【図4】繊維Aおよび繊維Bの電気抵抗率と繊維の長さとの関係を例示した図である。
【図5】繊維Aの電気抵抗値と温度との関係を例示した図である。
【図6】繊維Aを(a)室温と、(b)500℃および(c)1000℃に加熱したときの成分分布をEPMAにより分析した結果を例示した図である。
【図7】繊維Aの電気抵抗の温度係数を温度とともに例示した図である。
【図8】この出願の発明の加熱体を例示した概略図である。
【図9】この出願の発明の加熱体の中心部の発熱温度と電気出力との関係を例示した図である。
【図10】この出願の発明の(a)アクチュエータ1および(b)アクチュエータ2を例示した図である。
【図11】この出願の発明のアクチュエータの横断面のSEM写真を例示した図である。
【図12】この出願の発明の(a)アクチュエータ1および(b)アクチュエータ2の通電加熱に対する応答特性を計測する装置を例示した概略図である。
【図13】この出願の発明の(a)アクチュエータ1および(b)アクチュエータ2の電気出力と温度との関係を例示した図である。
【図14】この出願の発明の(a)アクチュエータ1および(b)アクチュエータ2の平均温度と曲率および変位との関係を例示した図である。
【図15】この出願の発明の(a)アクチュエータ1および(b)アクチュエータ2の平均温度と曲率および変位の際の出力との関係を例示した図である。
【符号の説明】
11、21 アクチュエータ
12、22 SiC蒸着繊維露出部
13、23 定規
14、24 バネばかり
15、25 熱電対
16、26 電源
17、27 温度記録計

Claims (2)

  1. 2枚の金属母材の一方にU字溝が複数本平行に設けられ、U字溝にカーボン芯の全周にSiCを蒸着した蒸着繊維からなる発熱体が配設され、その金属母材に発熱体の上方から他方の金属母材が重ね合わされて成形されたアクチュエータにおいて、2枚の金属母材が厚さが異なるものであることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 金属母材が、Al、Ti、Niからなる群から選択される1種類以上の元素を含む合金であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
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