JP3824766B2 - オルガノポリシロキサン微粒子、その製造方法および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、オルガノポリシロキサン微粒子、その製造方法および該オルガノポリシロキサン微粒子を液晶セルの電極間にスペーサーとして介在させた液晶表示装置に関する。さらに詳しくは、散布性に優れたオルガノポリシロキサン微粒子とその製造方法、および該オルガノポリシロキサン微粒子を液晶セルの電極間にスペーサーとして介在させた液晶表示装置に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
液晶表示装置用液晶セルに備えられた一対の電極間にはスペーサーが介設され、かつ液晶物質が封入されて液晶層を形成しているが、この液晶層の厚さが均一でないと、液晶セルに表示された画像に色むらや点灯時のコントラストの低下を引き起こすことがある。また、高速で表示画像を切り替える場合、あるいは視野角の広い画像を表示する場合にも、液晶セル内部の液晶層の厚さが均一であることが要求されている。
【0003】
さらに、現在用いられているSTNモードの大画面液晶表示装置で色むらのない大画面を表示するためには、より一層液晶セル内部の液晶層の厚さを均一にすることが要求されている。
【0004】
この液晶セル内部の液晶層の厚さを均一にするため、従来より、粒径の揃った球状粒子を液晶セルの電極間に散在して介在させること、すなわち液晶セルの電極間スペーサーとして用いることが行われ、このような粒子としてポリスチレンなどのような有機樹脂粒子、シリカ微粒子などが用いられている。
【0005】
しかしながら、ポリスチレンなどのような有機樹脂粒子を液晶セルの電極間スペーサーとして用いた場合、これらの有機樹脂粒子は、柔らかすぎて液晶セル内部の液晶層の厚さを均一に保持することが困難であるという問題点があった。たとえば、液晶セル内部の液晶層に不均一な圧力が負荷されると、この圧力のばらつきに応じてスペーサーが変形し、液晶セル内部の液晶層の厚さを均一に維持することはできない。
【0006】
また、シリカ微粒子を液晶セルの電極間スペーサーとして用いた場合、シリカ微粒子の粒度分布がシャープでないと、シリカ微粒子の圧縮変形が小さいことに起因して、液晶セル内部の液晶層の厚さが不均一となるという問題もあった。さらに、液晶表示装置を低温に曝した場合、液晶セル内部で液晶層の熱膨張係数とスペーサーの熱膨張係数とが異なるため、液晶セルの電極と液晶層との間に空隙が生じて、所謂、低温気泡が発生するという問題もあった。
【0007】
上記のような問題点を解決するため、特開平6−250193号公報には、加水分解可能なシリコン化合物、例えばテトラエトキシシランなどを加水分解してシリカ微粒子を調製し、このシリカ微粒子表面のシラノール基を有機化合物でエステル化したシリカ微粒子を液晶セルの電極間スペーサーとして用いることが提案されている。
【0008】
この方法で製造したシリカ微粒子は、適度の硬さと機械的復元性とを有しているため、液晶セルの電極間スペーサーとして好適であるが、機械的復元性の点で液晶セルの電極間スペーサーとしては不充分であった。
【0009】
また、これらのような従来からスペーサー粒子として用いられてきた微粒子は、ポリスチレンなどの有機質からなる微粒子であるか、あるいはシリカなどの無機質であって、実質的に疎水性か親水性かのどちらかであり、このため、このような微粒子のなかには、電極用基板に湿式散布する際に、溶媒によっては微粒子が単分散せず、均一に散布することができないものがあった。また、このような微粒子には、電極用基板に乾式散布する際に、微粒子が帯電して均一に散布できないものもあり、さらにこのような微粒子が電極基板以外の部分に微粒子が付着しやすいといった問題があった。
【0010】
上記のように、粒径が均一で優れた弾性特性を有したスペーサー粒子であっても、均一に散布できない場合があり、その特性に基づく効果を充分発揮できない場合があった。
【0011】
ところで、特開平7−140472号公報には、R'mSi(OR2)4-m(式中のR'、R2は、それぞれ特定の有機基を表し、mは0〜3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物を加水分解、縮重合したのち、100〜1000℃の温度で熱処理して、特定の圧縮弾性率を有する液晶セル用スペーサー粒子を得ることが開示されている。このスペーサー粒子の圧縮弾性率は、熱処理工程で粒子内部に存在する有機基の一部を熱分解した後の残存有機基量で制御されている。
【0012】
しかしながら、粒子径が異なると上記熱処理工程後に粒子内部に残存する有機基量が異なるため、残存有機基量の制御は難しく、そのため、粒子毎の圧縮変形率のバラツキが大きく、したがって、粒子内部に残存する有機基量で液晶セル用スペーサー粒子の圧縮弾性率を制御するのは難しいといった問題点があった。また、粒子の表面と内部とでは、残存有機基量が異なることから粒子全体にわたって圧縮弾性率は一様ではなく、さらに、上記熱処理工程で熱分解された粒子内部の有機基部分にボイドが発生し、この結果、得られた液晶セル用スペーサー粒子の圧縮強度が低下するといった問題点があった。
【0013】
このため、本発明者らは、有機ケイ素化合物を用いて特定の方法でオルガノポリシロキサン微粒子を製造したところ、上記のような熱処理工程を経ないでも微粒子内部の有機基量が制御され、高い弾性復元率を有し、かつ粒径が揃ったオルガノポリシロキサン微粒子が得られることを見出し、提案している(特願平7−213800号)。
【0014】
しかしながら、得られたオルガノポリシロキサン微粒子は疎水性であるため、電極間スペーサーとして用いる際に、基材上に均一に散布できない場合があった。このため、用途によっては、得られた疎水性のオルガノポリシロキサン微粒子の一部を親水性化する必要があった。このため、新たな親水性化などの処理工程が必要であり、また処理によってはオルガノポリシロキサン微粒子の圧縮強度を損なう場合があった。
【0015】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決するものであって、基板に均一に散布することが可能であり、優れた弾性特性を有し、かつ、粒径の揃ったスペーサー用微粒子を提供することを目的とするとともに、該スペーサー用微粒子の製造方法、および該スペーサー用微粒子を液晶セルの電極間にスペーサーとして介在させた液晶表示装置を提供することを目的としている。
【0016】
【発明の概要】
本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子は、
粒子内に、珪素原子に直接結合した炭化水素基(a)と、珪素原子に直接結合したOH基(b)を有するポリシロキサンを主成分とするオルガノポリシロキサン微粒子であって、
(i) 珪素原子に直接結合した炭化水素基(a)中に含まれる炭素の量が、微粒子重量に対し5〜35重量%の範囲にあり、
(ii)珪素原子に直接結合したOH基(b)の量が微粒子に対して1〜8meq/gであり、
(iii) 10%圧縮弾性率が150〜900Kg/mm2、
(iv)平均圧縮変形率(Cr)m が20〜60%、
(v) 平均弾性復元率(Rr)m が60〜90%、
(vi)平均粒子径が0.5〜50μm、
であることを特徴としている。
【0017】
本発明に係るポリオルガノシロキサン微粒子の製造方法は、下記(a)〜(e)の工程からなることを特徴としている。
(a) 式(1):Si(OR1)4で表される有機ケイ素化合物と、式(2):R'Si(OR2)3で表される有機ケイ素化合物との混合物を、水と有機溶媒との混合溶媒中で加水分解、縮重合することによりシード粒子の分散液を調製する工程、
(式中、R1およびR2は、水素原子またはアルキル基、アルコキシアルキル基およびアシル基から選ばれる炭素数1〜10の有機基であり、R'は、置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の有機基である。)
(b) 前記シード粒子分散液にアルカリを添加してシード液を安定化させる工程、
(c) 前記シード粒子の分散液のpHを6〜9に維持しながら、分散液に下記式(3)または(4)で表される化合物の1種または2種以上、および必要に応じて(5)で表される化合物を加え、加水分解・縮重合してシード粒子を成長させて球状微粒子分散液を調製する工程、
R'Si(OR2)3 (3)
R'R"Si(OR3)2 (4)
【0018】
【化2】
【0019】
(式中、R2、R'は、前記と同様の基であり、
R"は、置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の有機基であり、
R3は、水素原子またはアルキル基、アルコキシアルキル基およびアシル基から選ばれる炭素数1〜10の有機基であり、
R4は、プロピルまたはブチル基であり、
Yは、メチル基、メトキシ基、エチル基およびエトキシ基から選ばれる有機基であり、
Mは、周期律表第2〜15族から選ばれる元素であり、
mは0〜3の整数であり、nは1〜4の整数であり、m+nは2〜4の整数である。)
(d) 前記球状微粒子の分散液を加熱して熟成する工程、
(e) 球状微粒子を水分含有雰囲気で、100〜600℃で処理する工程。
【0020】
前記方法により、前記物性を有するオルガノポリシロキサン微粒子を製造することができる。
本発明に係る液晶表示装置は、一対の電極を備えた液晶セルを有し、該電極間にスペーサーとして上記本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子が介在していることを特徴としている。
【0021】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子およびその製造方法について説明する。
【0022】
[オルガノポリシロキサン微粒子]
まず、本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子について具体的に説明する。
【0023】
本発明に係る微粒子は、粒子内に、珪素原子に直接結合した炭化水素基(a)とOH基(b)とを有するポリシロキサンを主成分とするオルガノポリシロキサン微粒子である。このようなオルガノポリシロキサン微粒子中のケイ素含有量は、SiO2換算で、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%であることが望ましい。このような微粒子は、所謂、ラダー構造を基本とした三次元網目構造を有していると考えられる。
【0024】
珪素原子に直接結合した炭化水素基(a)としては、炭素原子数1〜10の置換または非置換の炭化水素基が挙げられる。
非置換炭化水素基としては、アルキル基(鎖状アルキル基または環状アルキル基)、アルケニル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられ、置換炭化水素基とは、前記非置換炭化水素基の水素原子の一部または全部が非炭化水素基または水素以外の元素で置換された基で、具体的にはCH2Cl基、CH2F基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、アミノプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基、トリフルオロプロピル基などが挙げられる。このような炭化水素基(a)は、オルガノポリシロキサン微粒子を製造する際に原料として用いられるR'Si(OR2)3またはR'R"Si(OR3)2で表される有機珪素化合物における、珪素原子と直接結合したR'およびR"に由来する基である。このような有機珪素化合物については後述する。
【0025】
本発明では、このようなオルガノポリシロキサン微粒子中の珪素原子に直接結合した炭化水素基(a)中の炭素の量は、5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%であることが望ましい。
【0026】
炭素量が5重量%未満の場合は、充分な弾性特性を有する微粒子が得られず、後述する10%圧縮弾性率が900Kg/mm2を越えて高くなり、かつ平均弾性復元率が低いオルガノポリシロキサン微粒子となることがある。また炭素量が35重量%を越えて高い場合は、10%圧縮弾性率が150Kg/mm2より低くなり、かつ平均弾性復元率が低いオルガノポリシロキサン微粒子となることがある。
【0027】
このような炭素量の定量は、通常、原料として用いられるR'Si(OR2)3またはR'R"Si(OR3)2で表される有機珪素化合物に含まれているR'およびR"の量から算出される。
【0028】
また本発明では、珪素原子に直接結合したOH基(b)の量は、粒子に対して1〜8meq/g、好ましくは2〜6meq/gであることが望ましい。
OH基(b)の量が、1meq/g未満の場合は、乾式での散布性が低下し、8meq/gを越えると、微粒子の弾性特性が不充分になることがある。このようなOH基(b)量は、示差熱分析装置を用い、前記オルガノポリシロキサン微粒子における100〜350℃の重量減少をOH基の脱離による水の発生と仮定して算出される。
【0029】
このような本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子の10%圧縮弾性率は、150〜900Kg/mm2であり、好ましくは200〜700Kg/mm2の範囲にあることが望ましい。
【0030】
10%圧縮弾性率が150Kg/mm2未満では、粒子が柔らかいために、液晶セル内部の液晶層の厚さを均一に保持できないことがあり、また個々の粒子にかかる圧力を減少させて粒子の変形を抑制するために散布個数を増加させる必要が生じ、これに伴い品質および経済性が低下することがある。また、900Kg/mm2を超えて高い場合は前述した低温気泡が発生することがある。
【0031】
なお、10%圧縮弾性率の評価方法は下記の通りである。
10%圧縮弾性率は、測定器として微小圧縮試験機(島津製作所製 MCTM−200)を用い、試料として粒径がDである1個の微粒子を用いて、試料に一定の負荷速度で荷重を負荷し、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させ、10%変位時の荷重と圧縮変位(mm)を求め、粒径および求めた圧縮荷重、圧縮変位を次式に代入して計算によって求める。
【0032】
K=(3/√2)×F×S-3/2×D-1/2
ここで、 K:10%圧縮弾性率(Kg/mm2)
F:圧縮荷重(Kg)
S:圧縮変位(mm)
D:粒子径(mm) である。
【0033】
本明細書では、10個の粒子について、それぞれ10%圧縮弾性率を測定し、これらの平均値で粒子の10%圧縮弾性率を評価した。
また本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子は、平均弾性復元率(Rr)mが40〜90%であり、好ましくは70〜90%の範囲にあることが望ましい。平均弾性復元率が40%未満の場合は所定の液晶層を均一な厚さに保持することができず、画像ムラを起こすことがある。平均弾性復元率が90%を超えて高いと、液晶表示装置が衝撃を受け、振動した際などに表示ムラを起こしやすいなどの問題がある。
【0034】
さらに、本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子は、平均圧縮変形率(Cr)mが20〜60%であり、好ましくは25〜50%の範囲にあることが望ましい。平均圧縮変形率が20%未満の場合は、粒子が硬すぎるために前述した低温気泡が発生することがある。平均圧縮変形率が60%を超えて高い場合は、粒子が柔らかいために、液晶セル内部の液晶層の厚さを均一に保持できないことがあり、また個々の粒子にかかる圧力を減少させて粒子の変形を抑制するために散布個数を増加させる必要が生じ、これに伴い品質および経済性が低下することがある。
【0035】
平均弾性復元率および平均圧縮変形率は、以下のようにして求められる。
前記微小圧縮試験機(島津製作所製 MCTM−200)を用い、試料として粒径がDである1個の微粒子を用いて、試料に一定の負荷速度で所定の荷重値(反転荷重値)まで荷重を負荷し、粒子を変形させると、図1に示すように荷重が増加するにつれて曲線Aに従って変位がゼロから増大する。
【0036】
次いで、上記負荷速度と同じ除荷速度で一定の荷重値(原点用荷重値)まで除荷すると曲線Bに従って変位は徐々に減少する。
負荷時の原点用荷重値の変位量と反転荷重値の変位量との差をL1とし、負荷時と除荷時のそれぞれの原点用荷重値の変位量の差をL2とすると、試料の平均弾性復元率Rrおよび圧縮変形率Crは、次式:
Rr =〔(L1−L2)/L1〕×100
Cr =(L1/D)×100
で計算される。
【0037】
本明細書では、10個の粒子について、原点用荷重値を0.1g、反転荷重値を1.0gとしたときのそれぞれの粒子の弾性復元率および圧縮変形率を上記式に従って求め、これらの平均値で粒子の平均弾性復元率および平均圧縮変形率を評価した。
【0038】
また、上記反転荷重値を越えて荷重し、粒子が破壊した時の荷重値を圧縮強度とする。
また、本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子の平均粒子径は、0.5〜50μmであり、好ましくは1〜20μmの範囲にあることが望ましい。このような平均粒子径は、液晶表示装置の種類、必要とする液晶層の厚さ、および弾性特性を考慮して設定される。平均粒子径は走査型電子顕微鏡写真の観察によって測定される。
【0039】
また、このような粒子は、粒子径の変動係数CV値が、5%以下、好ましくは1〜3%の範囲にあることが望ましい。粒子径の変動係数が5%を超えると、液晶層の厚さを均一に保持することができないため、画像ムラなどを起こすことがある。なお、このような変動係数CV値は、下記式によって計算される。
【0040】
CV=(粒子径標準偏差(σ)/平均粒子径(Dn))×100
【0041】
【数1】
【0042】
Di:個々の粒子の粒子径
さらにまた、オルガノポリシロキサン微粒子の凝集率は、5%以下、好ましくは3%以下であることが望ましい。このような凝集率は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真の観察により、複数の粒子が凝集した粒子も1個の粒子として、合計100個の粒子中の凝集粒子の割合で表わされる。凝集率が5%より大きいと均一に散布することが困難となり、散布効率も低下し、均一なセルギャップのセルが得られないことがある。
【0043】
[オルガノポリシロキサン微粒子の製造方法]
次に、本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子の製造方法について説明する。
【0044】
本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子は、以下の工程で製造される。
(a) シード粒子分散液の調製工程
本発明では、まず、式(1):Si(OR1)4で表される有機ケイ素化合物(a-1)と、式(2):R'Si(OR2)3で表される有機ケイ素化合物(a-2)との混合物を、水と有機溶媒との混合溶媒中で加水分解、縮重合することによりシード粒子の分散液を調製する。
【0045】
このようなシード粒子の調製法としては、従来公知の方法が採用できる。
上記式中のR1およびR2は、水素原子またはアルキル基、アルコキシアルキル基およびアシル基から選ばれる炭素数1〜10の有機基を表す。有機ケイ素化合物(a-1)と、有機ケイ素化合物(a-2)とを、水と有機溶媒との混合溶媒中で同時に加水分解し、これら加水分解物を共縮重合させる点から、互いに同一の基であることが好ましい。
【0046】
また、上記式中のR'は、置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
このうち、非置換炭化水素基としては、アルキル基(鎖状アルキル基または環状アルキル基)、アルケニル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられ、置換炭化水素基とは、炭化水素の水素原子の一部または全部が非炭化水素基または水素以外の元素で置換された基で、具体的にはCH2Cl基、CH2F基、クロロメチル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、アミノプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基、トリフルオロプロピル基などが挙げられる。
【0047】
有機ケイ素化合物(a-1)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラメチルメトキシシラン、テトラエチルエトキシシラン、テトラアセトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
有機ケイ素化合物(a-2)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシランなどが挙げられる。
【0049】
工程(a)では、有機ケイ素化合物(a-1)と有機ケイ素化合物(a-2)との混合比率は、有機ケイ素化合物(a-1)1モル当り、有機ケイ素化合物(a-2)0.1〜3.0モルが混合されていることが好ましい。
【0050】
工程(a)では、溶媒として水と有機溶媒との混合溶媒が用いらる。水は、有機溶媒100重量部に対し、10〜100重量部の割合で含まれていることが好ましい。
【0051】
有機溶媒としては、水と相溶性の有機溶媒であれば特に制限されることなく使用することが可能であり、例えば、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、ケトン類などから選ばれる1種または2種以上が用いられる。
【0052】
工程(a)では、有機ケイ素化合物(a-1)および(a-2)の加水分解用触媒として溶媒中にアンモニアなどのアルカリが添加され、これら化合物の加水分解中に水と有機溶媒との混合溶媒がアルカリ性に保持されていることが好ましい。
【0053】
有機ケイ素化合物(a-1)および(a-2)は、水と有機溶媒との混合溶媒中で同時に加水分解し、これらの加水分解物が共重縮合してシード粒子が調製されるが、水と有機溶媒との混合溶媒がアルカリ性に保持されていると、これらの反応が促進される。
【0054】
上記反応温度は、約10〜20℃であることが好ましい。
また、上記のようにして得られるシード粒子分散液中のシード粒子の濃度は、SiO2換算で約0.05〜5重量%であることが好ましい。
【0055】
また、得られるシード粒子の平均粒径は0.05〜2.0μmであることが好ましい。
(b) シード粒子の安定化工程
本発明では、工程(a)で得られたシード粒子分散液に、アルカリを添加してシード粒子を安定化させる(なお、本明細書では、このようにアルカリを添加して安定化されたシード粒子の分散液をヒールゾルと称することがある)。
【0056】
このようにアルカリを加えて分散液の安定化を図ると、シード粒子同士の凝集による沈殿を防止できる。なお、シード粒子同士が凝集していると、後工程(c)で、凝集粒子の接合部分に有機ケイ素化合物の加水分解物が付着し、接合部分から粒子成長することがあり、均一な粒子径を有する粒子が得られないことがある。
【0057】
分散液の安定化を図るために添加されるアルカリとしては、アンモニアガス、アンモニア水、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、第四級アンモニウム塩、アミン類等が用いられる。これらは、単独であるいは組み合わせて使用することができる。また、分散液の安定化を図るため、分散液に超音波を照射してもよい。さらに、安定化した分散液は、陽イオン交換樹脂と接触させてアルカリおよびアンモニアを低減することが望ましく、このときのアルカリは、最終的に製造される微粒子中のアルカリ濃度が100ppm以下、好ましくは50ppm以下、特に好ましくは10ppm以下となるように低減されていることが望ましい。
【0058】
(c) シード粒子の成長工程
次いで、上記工程(b)で得られたヒールゾルに、アルカリと下記式(3)または(4)で表される有機ケイ素化合物の1種または2種以上、および必要に応じて下記式(5)で表されるアセチルアセトナトキレート化合物を加えて加水分解・縮重合することにより、シード粒子を成長させて任意の粒径を有する球状微粒子の分散液を調製する。
【0059】
式(3):R'Si(OR2)3
(式(3)中、R2、R'は、前記と同様の基であり、式(2)で表される有機ケイ素化合物を工程(c)では、有機ケイ素化合物(c-1)という。)
式(4):R'R"Si(OR3)2
(式(4)中、R'、R"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の基であり、R3は、前記R1と同様の基であり、式(4)で表される有機ケイ素化合物を、有機ケイ素化合物(c-2)という。)
式(5):
【0060】
【化3】
【0061】
(式(5)中、R4は、プロピルまたはブチル基であり、Yは、メチル基、メトキシ基、エチル基およびエトキシ基から選ばれる1種の有機基であり、Mは、周期律表第2〜15族から選ばれる元素であり、また、mは0〜3の整数であり、nは1〜4の整数であり、m+nは2〜4の整数である。)
この工程(c)で用いられる有機ケイ素化合物(c-1)および(c-2)中のR'、有機ケイ素化合物(c-2)中のR"は、いずれも炭素原子数が大きくなると、有機ケイ素化合物(c-1)および/または(c-2)をシード粒子分散液に添加した際にシード粒子分散液にゲルが生じ易く、また、シード粒子の成長が困難になる。
【0062】
このため、R'およびR"は、いずれもメチル基、ビニル基、トリフルオロメチル基、フェニルアミノ基などの炭素原子数の少ない基であることが好ましい。
有機ケイ素化合物(c-1)としては、前記工程(a)で用いられる有機ケイ素化合物(a-2)を用いることができる。
【0063】
有機ケイ素化合物(c-2)の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルアセトキシシランなどが挙げられる。
【0064】
また、上記式(5)で表されるアセチルアセトナトキレート化合物の具体例としては、ジブトキシ−ビスアセチルアセトナトジルコニウム、トリブトキシ−モノアセチルアセトナトジルコニウム、トリイソプロポキシ−モノアセチルアセトナトチタン、ジブトキシ−ビスアセチルアセトナトチタン、ビスアセチルアセトナト鉛、トリスアセチルアセトナト鉄、ジブトキシ−ビスアセチルアセトハフニウム、トリブトキシ−モノアセチルアセトナトハフニウムなどが挙げられる。
【0065】
工程(c)では、シード粒子分散液に有機ケイ素化合物(c-2)のみを添加してもよいが、少なくとも約50モル%以上の有機ケイ素化合物(c-1)を添加することが好ましい。
【0066】
また、工程(c)では、上記(3)〜(5)の化合物の他に、前述した式(1):Si(OR1)4で表される有機ケイ素化合物を少量添加してもよい。
上記工程(c)で、ヒールゾルに前記化合物を添加する際、化合物の添加速度が速すぎると、ヒールゾル中でシード粒子同士が凝集したり、あるいはシード粒子の成長が不均一になり、最終的に粒径分布がシャープなオルガノポリシロキサン微粒子が得られないことがある。このため、化合物の添加速度は、分散媒に含まれている水1g当り0.001〜0.05g/時間とすることが好ましい。
【0067】
本発明では、工程(c)において、シード粒子分散液のpHを6〜9の範囲に維持しながら、前記化合物を添加してシード粒子を成長させる。分散液のpHが6未満、または9を超えて高い場合は、得られた微粒子の散布性が低下することがある。
【0068】
このようなpHの調整には、通常、アンモニアなどのアルカリが用いられる。本発明では、とくに、このような成長段階でのpHの変動を、化合物添加初期のpHに対して、±30%、好ましくは±10%の範囲にすることが望ましい。このため、シード粒子分散液に、前記化合物を添加する際、アルカリ水溶液を同時に、かつ連続的に添加することが望ましい。
【0069】
このようにしてシード粒子分散液にアルカリと上記式(3)または(4)で表される化合物の1種または2種以上、および必要に応じて上記式(5)を添加すると、これらの化合物が加水分解し、次いでこの加水分解物あるいは加水分解物同士が縮重合したものが、シード粒子表面に重縮合して積層し、これによりシード粒子が成長する。
【0070】
工程(c)の反応温度は、上記工程(a)における反応温度よりも低く、好ましくは約−10〜20℃の範囲にあることが望ましい。
(d) 熟成工程
次いで、前記工程(c)で得られた微粒子分散液を、工程(c)の温度と同じ温度、あるいは高い温度に維持して球状微粒子を熟成する。この工程によって、得られる微粒子の粒子径がさらに均一となる。熟成時の温度および時間は、約20〜90℃、好ましくは50〜80℃の温度で、約0.5〜24時間維持することが好ましい。
【0071】
熟成温度が20℃未満では微小粒子径の粒子が新たに生成したり、またシリカ成分が充分析出しないために溶解して残留するシリカ成分が多くなり、単分散した粒子が得にくくなることがある。熟成温度が90℃以上では、粒子同士が凝集したり、さらには溶着した粒子が生成することがある。
【0072】
熟成後の球状微粒子は、遠心分離法などで球状微粒子分散液から分離され、必要に応じて乾燥される。
(e) 水分含有雰囲気処理工程
分離後、球状微粒子を水分含有雰囲気下で加熱処理する。この時の加熱温度は100〜600℃、好ましくは150〜500℃の範囲にあることが好ましい。
【0073】
加熱温度が、100℃未満では、微粒子の弾性が低下することがあり、加熱温度が600℃を越えると、微粒子の散布性が低下することがある。
また、水分含有雰囲気としては、水分を含む空気および/または不活性ガスなどが用いられるが、このときの水分の割合は、相対湿度で20〜90%の範囲が好ましく、特に好ましくは50〜80%の範囲にあることが望ましい。
【0074】
このような水分含有雰囲気処理に際して、球状微粒子中のオルガノポリシロキサンの重縮合を促進、完了させるため、必要に応じて球状粒子を焼成したり、あるいは該球状微粒子に紫外線などの電磁波を照射するなどの処理を行ってもよい。
【0075】
以上のような工程を経ることにより、粒子内に、珪素原子に直接結合した炭化水素基(a)と、珪素原子に直接結合したOH基(b)とを有するポリシロキサンを主成分とし、前記(i)〜(vi)の特徴を有するオルガノポリシロキサン微粒子を製造することができる。
【0076】
液晶表示装置
最後に、本発明に係る液晶表示装置について具体的に説明する。
【0077】
本発明に係る液晶表示装置は、一対の電極を備えた液晶セルを有し、前記電極間に前記オルガノポリシロキサン微粒子がスペーサーとして介在していることを特徴としている。
【0078】
上記液晶セルは、本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子が介在し、該微粒子により液晶セルの電極間距離が一定に保持されていることを除いて、公知の液晶セルと同様に構成されている。
【0079】
本発明に係る液晶表示装置では、オルガノポリシロキサン微粒子が、液晶セルの電極間スペーサーとして、電極面全面にわたって介在していてもよいが、電極間周縁部の接着剤層中に介在していてもよい。
【0080】
本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子を液晶セルの電極間スペーサーとして用いると、散布個数が少なくてすむとともに、電極面あるいは保護膜などの損傷を低減できる。さらに、本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子を用いると、スペーサー粒子の圧縮変形が小さいことに起因して発生する液晶セル内部液晶層の厚さの不均一化、および液晶セル内部で液晶層の熱膨張係数とスペーサーの熱膨張係数とが異なるために発生する低温気泡を低減できる。
【0081】
本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子を液晶セルの電極間スペーサーとして用いる場合、必要とされるセルギャップの大きさ、均一性などに応じてオルガノポリシロキサン微粒子の粒径およびCV値が選択される。このように電極間スペーサーとして用いる場合、特に粒径の均一性が重要で、その指標であるCV値は、5%以下、特に1〜3%の範囲であることが望ましい。
【0082】
本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子を液晶セルの電極間スペーサーとして用いる場合、オルガノポリシロキサン微粒子を一方の電極面(電極面上に保護膜が形成されている場合には保護膜の表面)に湿式法または乾式法で均一に散布し、次いで一方の電極面(または保護膜の表面)に散布されたオルガノポリシロキサン微粒子上に他方の電極面(または保護膜の表面)を載置して重ね合わせ、これにより形成されたセルギャップ中に液晶材料を充填し、両電極面の周縁部をシール用樹脂で貼り合わせ、密閉することによって、本発明に係る液晶表示装置で用いられる液晶セルが得られる。この場合、シール用樹脂中に本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子が混合されていてもよい。
【0083】
また、本発明に係る液晶表示装置で用いられる液晶セルは、本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子が混合されているシール用樹脂を一方の電極面(または保護膜の表面)の周縁部に液晶材料の注入口を除いて塗布し、次いで他方の電極面(または保護膜の表面)を載置して重ね合わせ、液晶材料の注入口から液晶材料を注入した後、この液晶材料の注入口をシール用樹脂で密閉する方法でも得られる。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、凝集率が低く粒度分布が極めてシャープであって、しかも圧縮弾性率、弾性復元率および圧縮変形率が高いオルガノポリシロキサン微粒子が提供される。
【0085】
このようなオルガノポリシロキサン微粒子は、疎水性基と併せて親水性基を有するために、特に水などを含む溶媒にも均一に分散し、このため散布性に優れたオルガノポリシロキサン微粒子が提供される。
【0086】
また、特に親水性基を有するために乾式散布では微粒子の帯電が抑制され、電極面あるいは保護膜以外の部分に付着することの少ないオルガノポリシロキサン微粒子が提供される。
【0087】
本発明に係るオルガノポリシロキサン微粒子を液晶セルの電極間スペーサーとして用いると、該微粒子の粒度分布がシャープであるので、液晶セルの電極間に形成された液晶層の厚さを均一に保持することができる。また、圧縮弾性率が高いので単位面積あたりの散布個数が少なくすることができる。さらに、該微粒子の弾性復元率および圧縮変形率が高いため、液晶セル内部に発生する低温気泡を防止し、画像ムラなどのない高性能の液晶表示装置を提供できる。
【0088】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0089】
【実施例1】
[シード粒子の調製]
メチルトリメトキシシラン8gと、テトラメトキシシラン8gとを、エタノール350gに溶解した溶液(A液)を調製した。他方、純水6gと、28%アンモニア水78gと、エタノール350gの混合溶液(B液)を調製した。
【0090】
上記A液とB液とを混合し、20℃で3時間攪拌し、アルコキシシランを加水分解・縮重合を行い、シード粒子分散液を調製した。
得られたシード粒子分散液に、濃度1重量%の水酸化カリウム水溶液3.3gを添加して、シード粒子の安定化(ヒールゾル化)を行った。このときのpHは12であった。このシード粒子分散液中のシード粒子の平均粒径は、遠心式粒度分布装置(堀場製作所製、CAPA-500)で測定したところ、0.15μmであった。
【0091】
[シード粒子の成長]
得られたシード粒子分散液が160gになるまでシード粒子分散液を加熱濃縮した後、陽イオン交換樹脂10ccを用いてアルカリおよびアンモニアの量を低減させた。このシード粒子分散液に純水5000gおよびブタノール250gを加えた。こうして希釈されたシード粒子分散液を0℃に冷却し、この温度を保持しながら、このシード粒子分散液にメチルトリメトキシシラン500gを0.005g/純水-g・時間の添加速度で滴下した。この際メチルトリメトキシシランとともに、濃度0.028%のアンモニア水溶液を約0.012g/純水-g・時間の添加速度で添加し、かつシード粒子分散液のpHを8.5に維持しながら、メチルトリメトキシシランをシード粒子上に加水分解・縮重合させてシード粒子を成長させた。
【0092】
その後、20℃で2時間攪拌した後、さらに80℃に加温して5時間熟成を行った。
熟成後、微粒子を液から分離し、乾燥した後、相対湿度50%の空気を供給しながら、250℃で加熱処理した。
【0093】
得られたオルガノポリシロキサン微粒子について、珪素と直接結合したOH基の量および炭素の量、平均粒径、CV値、10%圧縮弾性率、平均弾性復元率 (Rr)m および平均圧縮変形率 (Cr)m を測定した。
【0094】
OH基の量は、前記したように示差熱分析による100〜350℃の温度範囲における重量減少から算出した。その結果、OH基量は、粒子に対して、6重量%(5.3meq/g)であった。また炭素量は、化学分析等によって正確に定量できないため、製造に使用したアルコキシシランの量から、以下のように計算して算出した。
【0095】
実施例1の場合、シード粒子の製造工程で、アルコキシシランとしてメチルトリメトキシシラン8gとテトラメトキシシラン8gを使用し、粒子成長工程ではメチルトリメトキシシラン500gを使用しているので、炭素量は以下のように算出される。
【0096】
▲1▼シード粒子中の珪素原子に直接結合した炭化水素基中の炭素量:
CH3-Si-(OCH3)3 8gは、CH3-SiO3/2に換算すると、3.94gとなり、炭素量は、3.94×12/(15+28+24) =0.71gとなる。
【0097】
Si-(OCH3)4 8gは、SiO2に換算すると、3.16gとなり、炭素量は0gである。
▲2▼粒子成長時に使用されるメチルトリメトキシシラン中の炭素量:
CH3-Si-(OCH3)3 500gは、CH3-SiO3/2に換算すると、246.32gとなり、炭素量は、246.32×12/(15+28+24) =44.11 gとなる。
【0098】
全炭素量は、シード粒子中の炭素量と成長時の使用されたメチルトリメトキシシラン中の炭素量との合計量であり、0.71+44.11=44.82gとなる。この全炭素量は、全微粒子重量(3.94+3.16+246.32=253.42g)に対して、17.7重量%となる。前記測定したOH基含有量(H2O換算で4.8重量%)を考慮し、粒子中の珪素と直接結合した炭素の量は、(1-0.048)×0.177=0.169であり、すなわち16.9重量%である。
【0099】
また、オルガノポリシロキサン微粒子の平均粒径は走査型電子顕微鏡写真による観察によって測定し、CV値は該平均粒径から算出した。なお、10%圧縮弾性率、平均弾性復元率 (Rr)mおよび平均圧縮変形率 (Cr)mは、前記の方法で測定した。
【0100】
結果を表1に示す。
【0101】
【実施例2】
[シード粒子の調製]
実施例1で調製したA液とB液とを混合し、25℃で3時間攪拌し、アルコキシシランを加水分解・縮重合を行いシード粒子分散液を調製した。さらに、濃度1重量%の水酸化カリウム水溶液3.3gを添加し、さらに10分間超音波処理をして、シードの安定化を行った。このときのpHは12であった。シード粒子分散液中のシード粒子の平均粒径は、遠心式粒度分布測定法で測定したところ0.15μmであった。
【0102】
[シード粒子の成長]
得られたシード粒子分散液を、160gになるまで加熱濃縮した後、陽イオン交換樹脂10ccを用いてアルカリおよびアンモニアの量を低減させた。このシード粒子分散液に、純水5000gおよびブタノール250gを加えたのち、シード粒子分散液を0℃に冷却し、この温度を保持しながら、このシード粒子分散液にメチルトリメトキシシラン400gとビニルトリメトキシシラン100gの混合溶液を0.005g/純水-g・時間の添加速度で滴下した。このとき、濃度0.028%のアンモニア水溶液を約0.012g/純水-g・時間の添加速度で添加しながらシード粒子分散液のpHを8.0に維持して、メチルトリメトキシシランとビニルトリメトキシシランをシード粒子上に加水分解・縮重合させてシード粒子を成長させた。
【0103】
次いで、20℃で2時間攪拌した後、さらに80℃に加温して5時間熟成を行った。
熟成後、微粒子を液から分離し、乾燥した後、相対湿度60%の空気を供給しながら、220℃で加熱処理した。
【0104】
得られたオルガノポリシロキサン微粒子について、珪素と直接結合した炭化水素基中の炭素の量、珪素と結合したOH基の量、平均粒径、CV値、10%圧縮弾性率、平均弾性復元率 (Rr)m および平均圧縮変形率 (Cr)m を測定した。
【0105】
結果を表1に示す。
【0106】
【実施例3】
実施例1と同様にして得られた微粒子を、微粒子分散液から分離し、乾燥後、相対湿度70%の空気を供給しながら400℃で加熱処理してオルガノポリシロキサン微粒子を得た。
【0107】
得られたオルガノポリシロキサン微粒子について、珪素と直接結合した炭化水素基中の炭素の量、珪素と直接結合したOH基の量、平均粒径、CV値、10%圧縮弾性率、平均弾性復元率(Rr)m および平均圧縮変形率(Cr)m を測定した。
【0108】
結果を表1に示す。
【0109】
【比較例1】
[シード粒子の調製]
メチルトリメトキシシラン8gと、テトラメトキシシラン8gとを、エタノール350gに溶解した溶液(A液)を調製した。他方、純水6gと、28%アンモニア水78gと、エタノール350gの混合溶液(B液)を調製した。
【0110】
上記A液とB液とを混合し、20℃で3時間攪拌し、アルコキシシランを加水分解・縮重合することにより、シード粒子分散液を得た。このシード粒子分散液中のシード粒子の平均粒径は、遠心式粒度分布測定法で測定した結果、0.15μmであった。
【0111】
[シード粒子の成長]
得られたシード粒子分散液が160gになるまでシード粒子分散液を加熱濃縮した後、濃縮されたシード粒子分散液に純水5000gおよびブタノール250gを加えた。こうして希釈されたシード粒子分散液に0.28%アンモニア水100gを添加した。このときのpHは10.5であった。このアンモニア水が添加されたシード粒子分散液を−5℃に冷却し、この温度を保持しながら、このシード粒子分散液にメチルトリメトキシシラン500gを0.005g/純水-g・時間の添加速度で滴下し、メチルトリメトキシシランをシード粒子上に加水分解・縮重合させてシード粒子を成長させた。滴下終了後のpHは8.5であった。
【0112】
滴下終了後の液を60℃まで加温し、この温度で5時間攪拌して成長したシード粒子を熟成した。
熟成後、微粒子を液から分離し、乾燥後、空気中、300℃で焼成した。
【0113】
得られたオルガノポリシロキサン微粒子について、珪素と直接結合した炭化水素基中の炭素の量、珪素と結合したOH基の量、平均粒径、CV値、10%圧縮弾性率、平均弾性復元率(Rr)m および平均圧縮変形率(Cr)m を測定し、結果を表1に示す。
【0114】
【比較例2】
[シード粒子の成長]
比較例1で得られたシード粒子分散液を、160gになるまで加熱濃縮した後、濃縮されたシード粒子分散液に純水5000gおよびブタノール250gを加えた。こうして希釈されたシード粒子分散液に28%アンモニア水10gを添加した。このときのpHは13であった。このアンモニア水が添加されたシード粒子分散液を−5℃に冷却し、この温度を保持しながら、このシード粒子分散液にメチルトリメトキシシラン450gとジメチルメトキシシラン50gの混合溶液を0.005g/純水-g・時間の添加速度で滴下し、メチルトリメトキシシランとジメチルメトキシシランをシード粒子上に加水分解・縮重合させてシード粒子を成長させた。滴下終了後のpHは10であった。
【0115】
滴下終了後の液を60℃まで加温し、この温度で5時間攪拌して成長したシード粒子を熟成した。
得られた微粒子を液から分離し、乾燥後、空気中、300℃で焼成した。
【0116】
得られたオルガノポリシロキサン微粒子について、珪素と直接結合した炭化水素基中の炭素の量、珪素と結合したOH基の量、平均粒径、CV値、10%圧縮弾性率、平均弾性復元率(Rr)m および平均圧縮変形率(Cr)m を測定した。
【0117】
結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【実施例4】
液晶表示装置の液晶セルに用いられる一対の透明電極付透明基板を準備した。この透明電極付透明基板は、ガラス基板の片面に透明電極としてのITO薄膜、液晶材料に含まれている液晶性化合物分子を所定方向に配向させる配向膜がこの順序で形成されている。
【0120】
次いで、一方の透明電極付透明基板に形成された配向膜面に実施例1で得られたオルガノポリシロキサン微粒子を散布した。散布方法は、純水350cc、イソプロピルアルコール120cc、エチルアルコール30ccの混合溶媒中に、濃度が1重量%となるように実施例1で得られたオルガノポリシロキサン微粒子を、攪拌しながら超音波を照射して分散させた散布液を調製した。この散布液を、ノズル径0.5mmφの散布ノズル(ルミナPR−10)を用いて、ノズルと配向膜面との距離を70cmにして、圧力3Kg/cm2で噴霧して散布した。
【0121】
このときの平均粒子散布密度は130個/mm2であり、散布密度の最高値は147個/mm2、最小値は114個/mm2であり、バラツキは13%であった。また、散布密度を測定した各面内には複数の粒子の凝集体(密着粒子)は観察されなかった。なお、散布密度は、液晶スペーサーカウンタ装置(株式会社エデック製:ED−7510)によって、以下のように測定した。具体的には、散布面上に均等間隔で仮想横線および仮想縦線を各々10本設け、この交点100カ所の散布密度を求め、求めた値の平均をとり平均粒子散布密度とした。散布密度のバラツキは、上記で算出した平均粒子散布密度から算出した。
【0122】
次いで、散布したオルガノポリシロキサン微粒子上に、他方の透明電極付透明基板に形成された配向膜面を接触させ、両透明電極付透明基板を重ね合わせた。
こうして形成された両透明電極付透明基板の配向膜間の隙間に液晶材料を充填し、両基板の周縁部をシール用樹脂で貼り合わせ、密閉して液晶セルを作成した。なお、作成した液晶セルはSTNモードで駆動されるようになっている。
【0123】
以上のようにして作成した液晶セルを、室温から−40℃に冷却する操作を10回繰り返し、毎回−40℃における気泡の観察を行ったが、液晶セルの内部に低温気泡が観察されなかった。
【0124】
また、以上のようにして作成した液晶セルを液晶表示装置に取り付けて液晶表示装置を駆動させたところ、表示画像のムラは観察されなかった。
【0125】
【実施例5】
実施例4と同様に透明電極付透明基板に形成された配向膜面に実施例2で得られたオルガノポリシロキサン微粒子を散布した。
【0126】
平均粒子散布密度は125個/mm2であり、散布密度の最高値は135個/mm2、最小値は114個/mm2であり、バラツキは9%であった。散布密度を測定した面内には、複数の粒子の凝集体(密着粒子)は観察されなかった。
【0127】
次いで、散布したオルガノポリシロキサン微粒子上に、他方の透明電極付透明基板に形成された配向膜面を接触させ、両透明電極付透明基板を重ね合わせ、作成した各液晶セルを、室温から−40℃に冷却する操作を10回繰り返し、毎回−40℃における気泡の観察を行ったが、液晶セルの内部に低温気泡が観察されなかった。
【0128】
また、上記のようにして作成した液晶セルを液晶表示装置に取り付けて液晶表示装置を駆動させたところ、表示画像のムラは観察されなかった。
【0129】
【実施例6】
実施例4と同様に透明電極付透明基板に形成された配向膜面に実施例3で得られたオルガノポリシロキサン微粒子を散布した。
【0130】
平均粒子散布密度は123個/mm2であり、散布密度の最高値は143個/mm2、最小値は105個/mm2であり、バラツキは16%であった。散布密度を測定した面内には、複数の粒子の凝集体(密着粒子)は観察されなかった。
【0131】
次いで、散布したオルガノポリシロキサン微粒子上に、他方の透明電極付透明基板に形成された配向膜面を接触させ、両透明電極付透明基板を重ね合わせ、作成した各液晶セルを、室温から−40℃に冷却する操作を10回繰り返し、毎回−40℃における気泡の観察を行ったが、液晶セルの内部に低温気泡が観察されなかった。
【0132】
また、以上のようにして作成した液晶セルを液晶表示装置に取り付けて液晶表示装置を駆動させたところ、表示画像のムラは観察されなかった。
【0133】
【比較例3】
実施例4と同様に透明電極付透明基板に形成された配向膜面に比較例1で得られたオルガノポリシロキサン微粒子を散布した。
【0134】
平均粒子散布密度は128個/mm2であり、散布密度の最高値は173個/mm2、最小値は90個/mm2であり、バラツキは36%であった。また、散布密度を測定した面内に、複数の粒子の凝集体が存在していた。
【0135】
次いで、散布したオルガノポリシロキサン微粒子上に、他方の透明電極付透明基板に形成された配向膜面を接触させ、両透明電極付透明基板を重ね合わせ、作成した各液晶セルを、室温から−40℃に冷却する操作を10回繰り返し、毎回−40℃における気泡の観察を行ったところ、8回目の冷却操作以降で液晶セルの内部に低温気泡が観察された。
【0136】
また作成した液晶セルを液晶表示装置に取り付けて液晶表示装置を駆動させたところ、表示画像ムラが観察された。
【0137】
【比較例4】
実施例4と同様に透明電極付透明基板に形成された配向膜面に比較例2で得られたオルガノポリシロキサン微粒子を散布した。
【0138】
平均粒子散布密度は120個/mm2であり、散布密度の最高値は166個/mm2、最小値は78個/mm2であり、バラツキは38%であった。また、散布密度を測定した面内に、複数の粒子の凝集体が存在していた。
【0139】
次いで、散布したオルガノポリシロキサン微粒子上に、他方の透明電極付透明基板に形成された配向膜面を接触させ、両透明電極付透明基板を重ね合わせ、作成した各液晶セルを、室温から−40℃に冷却する操作を10回繰り返し、毎回−40℃における気泡の観察を行ったところ、5回目の冷却操作以降で液晶セルの内部に低温気泡が観察された。
【0140】
また作成した液晶セルを液晶表示装置に取り付けて液晶表示装置を駆動させたところ、表示画像ムラが観察された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、弾性復元率および圧縮変形率を説明するための図面である。
Claims (5)
- 粒子内に、珪素原子に直接結合した炭化水素基(a)と、珪素原子に直接結合したOH基(b)を有するポリシロキサンを主成分とするオルガノポリシロキサン微粒子であって、
(i) 珪素原子に直接結合した炭化水素基(a)中に含まれる炭素の量が、微粒子重量に対して5〜35重量%であり、
(ii)珪素原子に直接結合したOH基(b)の量が、微粒子に対して1〜8meq/gであり、
(iii) 10%圧縮弾性率が150〜900Kg/mm2、
(iv)平均圧縮変形率(Cr)m が20〜60%、(v) 平均弾性復元率(Rr)m が60〜90%、
(vi)平均粒子径が0.5〜50μmである
ことを特徴とするオルガノポリシロキサン微粒子。 - 下記(a)〜(e)の工程からなるオルガノポリシロキサン微粒子の製造方法。
(a) 式(1):Si(OR1)4で表される有機ケイ素化合物と、式(2):R'Si(OR2)3で表される有機ケイ素化合物との混合物を、水と有機溶媒との混合溶媒中で加水分解、縮重合することによりシード粒子の分散液を調製する工程、(式中、R1およびR2は、水素原子またはアルキル基、アルコキシアルキル基およびアシル基から選ばれる炭素数1〜10の有機基であり、R'は、置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の有機基である。)
(b) 前記シード粒子分散液にアルカリを添加してシード液を安定化させる工程、(c) 前記シード粒子分散液のpHを6〜9に維持しながら、シード粒子分散液に下記式(3)または(4)で表される化合物の1種または2種以上を、加水分解・縮重合してシード粒子を成長させて球状微粒子分散液を調製する工程、
R'Si(OR2)3 (3)
R'R"Si(OR3)2 (4)
(式中、R2、R'は、前記と同様の基であり、R"は、置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の有機基であり、R3は、水素原子またはアルキル基、アルコキシアルキル基およびアシル基から選ばれる炭素数1〜10の有機基である)
(d) 前記球状微粒子の分散液を加熱して熟成する工程、
(e) 球状微粒子を水分含有雰囲気下で、100〜600℃で処理する工程。 - 請求項2または3に記載された方法により得られたオルガノポリシロキサン微粒子が、請求項1に記載された物性を有するものであることを特徴とする請求項2に記載のオルガノポリシロキサン微粒子の製造方法。
- 一対の電極を備えた液晶セルを有し、該電極間に請求項1に記載のオルガノポリシロキサン微粒子がスペーサーとして介在していることを特徴とする液晶表示装置。
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