JP3824376B2 - 抄造法スタンパブルシート、軽量スタンパブルシートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタンパブルシートおよび該スタンパブルシートを素材とした軽量スタンパブルシートに関するものであり、さらに詳しくは抄造法で得られるスタンパブルシート、および該スタンパブルシートを素材として得られる高い曲げ剛性、曲げ強度を有し、さらには、ハンドリング性に優れた軽量スタンパブルシートに関するものである。
【0002】
本発明の軽量スタンパブルシートは、特に天井材、ドアトリム、エンジンカバー用吸音材などの自動車用内装品として有用である。
【0003】
【従来の技術】
スタンパブルシートを製造する方法として、熱可塑性樹脂と繊維状強化材(以下強化用繊維と記す)を原料とする、抄造法に基づく方法が知られている。
抄造法においては、微少気泡を含む界面活性剤水溶液中に、長さ5〜50mmの強化用繊維(ガラス繊維)と熱可塑性樹脂を分散させ、この分散液を多孔性支持体上で抄くことによりシート状のウエブを調製し、このウエブを熱可塑性樹脂の融点以上かつ分解温度未満の温度に加熱した後に圧力を加えて、その後冷却することにより固化した緻密なシート、いわゆる抄造法スタンパブルシートを製造する。
【0004】
次いで得られたシートを熱可塑性樹脂の融点以上かつ分解温度未満に再加熱し、樹脂が溶融することによって、樹脂に拘束されていた強化用繊維がスプリングバックを起こして、元の厚さの数倍に膨張したシート(以下膨張シートと記す)となる。
引き続き、この膨張シートを金型上に配置し、圧縮成形または真空成形または圧空成形などの成形法により、所望の形状が付与できる。
【0005】
すなわち成形時に、金型のクリアランスを理論厚さ、すなわち成形品の空隙率をゼロとした時の厚さより大きな間隔に調整することによって、上記抄造法スタンパブルシートよりも密度が小さく、面剛性の高い軽量スタンパブルシートを得ることができる。
これら軽量スタンパブルシートおよびその製造方法は、例えば特開昭60−179234号公報および特開昭62−161529号公報に開示されているが、抄造法で得られた従来の軽量スタンパブルシートは、原料として通常、比重の大きいガラス繊維を用いており、軽量化が不十分であったため、単位目付量当たりの強度、剛性(以下比強度、比剛性と記す)が低かった。
【0006】
このような問題を解決するため、これまで軽量スタンパブルシートの強度向上方法が検討されてきた。
この強度向上の方法の一つとして、特開昭63−41128 号公報に開示されているように、シランカップリング剤をウエブに添加する方法が知られている。しかしシランカップリング剤の添加により、軽量スタンパブルシートの比強度、比剛性を向上させるには、限界があった。
【0007】
また、軽量スタンパブルシートは、ガラス繊維を主体とする多孔質体のため、ハンドリング時にガラス繊維による皮膚刺激(痛み)が生じるという問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記した従来技術の問題点を解決することにあり、特に比強度、比剛性に優れ、皮膚刺激性が少なく、ハンドリング性に優れた軽量スタンパブルシートを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維を主成分とする繊維強化熱可塑性樹脂シートであって、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、該強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量 100 重量部に対して5〜 30 重量部であり、該強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点よりも高いことを特徴とする抄造法スタンパブルシートである。
【0010】
前記第1の発明においては、前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことが好ましい。
【0011】
さらに、前記第1の発明においては、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが好ましい。また、前記第1の発明においては、前記抄造法スタンパブルシートが、膨張成形用抄造法スタンパブルシートであることが好ましい。
なお、前記第1の発明の抄造法スタンパブルシートは、前記強化用無機繊維および強化用有機繊維のいずれもが、マトリックスである前記熱可塑性樹脂中に繊維形状で存在するものである。
【0012】
第2の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維を主成分とする繊維強化多孔質材料であって、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、該強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量 100 重量部に対して5〜 30 重量部であり、該強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点よりも高いことを特徴とする軽量スタンパブルシートである。
前記第2の発明においては、前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことが好ましい。
【0013】
また、前記第2の発明においては、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが好ましい。
なお、前記第2の発明の軽量スタンパブルシートは、前記強化用無機繊維および強化用有機繊維のいずれもが、マトリックスである前記熱可塑性樹脂中に繊維形状で存在するものである。
【0014】
第3の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる主原料を抄造して得られるウエブを加熱、加圧し、固化することにより、スタンパブルシートを製造する方法において、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、該強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量 100 重量部に対して5〜 30 重量部であり、前記ウエブを、前記熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度未満になるように加熱することを特徴とする抄造法スタンパブルシートの製造方法である。
【0015】
前記第3の発明においては、前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことが好ましい。
【0016】
さらに、前記第3の発明においては、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが好ましい。また、前記第3の発明においては、前記抄造法スタンパブルシートが、膨張成形用抄造法スタンパブルシートであることが好ましい。
第4の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる主原料を抄造して得られるウエブを加熱、加圧し、固化して得られるスタンパブルシートを再加熱して膨張させた後、成形することにより、軽量スタンパブルシートを製造する方法において、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、前記ウエブおよびスタンパブルシートを、前記熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度未満になるように加熱することを特徴とする軽量スタンパブルシートの製造方法である。
【0017】
第5の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる主原料を抄造して得られるウエブを加熱、圧着し、シートの厚み方向に膨張させ、冷却、固化することにより、軽量スタンパブルシートを製造する方法において、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、前記ウエブを、前記熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度未満になるように加熱、圧着することを特徴とする軽量スタンパブルシートの製造方法である。
【0018】
前記第4の発明または第5の発明においては、前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことが好ましい。
また、前記第4の発明または第5の発明においては、前記強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量100 重量部に対して5〜30重量部であることが好ましい。
【0019】
また、前記第4の発明または第5の発明においては、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者らは、抄造法により軽量スタンパブルシートを製造する際に、強化用繊維として従来の無機繊維と併用して、ウエブをシート化および膨張シート化する温度で融解もしくは分解しない有機繊維を特定量だけ用いることより、軽量スタンパブルシートの強度特性、膨張特性を維持しつつ、重量を大きく低減でき、さらには、皮膚刺激性が少なくなることを見い出し、本発明に至った。
【0021】
以下、本発明に係わる〔A〕強化用繊維(無機繊維)、〔B〕強化用繊維(有機繊維)、〔C〕マトリックス樹脂、〔D〕スタンパブルシートの製造方法、および軽量スタンパブルシートの製造方法である〔E〕膨張成形方法について順に説明する。
〔A〕強化用繊維(無機繊維):
強化用繊維のうち、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、および他の各種無機繊維から選ばれた1種または2種以上が用いられるが、特性対価格の面からガラス繊維を用いることが好ましい。
【0022】
強化用無機繊維(以下無機繊維と記す)の長さは、十分な補強効果を得、かつ成形時の成形性を確保する上で、5〜50mmが好ましい。さらに、好ましくは、10〜26mmである。
無機繊維の長さが5mm未満の場合、十分な補強効果が得られず、抄紙工程で断紙し易くなる。また無機繊維の長さが50mmを超えると、抄紙工程で無機繊維が十分に解繊せず、膨張が不均一になるとともに、成形時の賦形性も悪化する。
【0023】
無機繊維の繊維径は、繊維による補強効果と膨張効果を確保する上で5〜30μmであることが好ましい。さらに好ましくは、10〜25μmである。繊維径が5μm未満の場合、十分な膨張倍率が得られず、逆に繊維径が30μmを超えると、十分な補強効果が得られず、さらには皮膚刺激性が大きくなる。
〔B〕強化用繊維(有機繊維):
強化用繊維のうち、有機繊維としては、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリフッ化エチレン系樹脂などのフッ素樹脂などの樹脂、並びにこれらの樹脂のモノマーを主成分とした共重合体や、これらの樹脂を主成分とするグラフト化合物、もしくはこれらの樹脂の混合物などの熱可塑性樹脂からなる有機繊維が用いられる。
【0024】
また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂からなる有機繊維および羊毛、綿、絹糸、セルロース繊維などの天然繊維が使用できる。
さらに、前記熱可塑性樹脂からなる有機繊維、熱硬化性樹脂からなる有機繊維、天然繊維を混合して用いることも可能である。
また、抄紙時の分散性を向上させるために、有機繊維に表面処理を行っても良い。
【0025】
強化用繊維として用いられる有機繊維(以下強化用有機繊維と記す)の繊維径は、繊維の補強効果と良好な分散性を保つ上で、5〜30μmであることが好ましい。
繊維径が5μm未満の場合、膨張性が悪くなり、逆に繊維径が30μm超えの場合、繊維の分散性が悪くなる。
【0026】
また、強化用有機繊維の繊維長は5〜30mmであることが好ましい。
強化用有機繊維の繊維長が5mm未満の場合、十分な補強効果が得られず、抄紙工程で繊維が抜け落ちやすくなる。また、繊維長が30mm超えの場合、抄紙工程で強化用有機繊維が十分に解繊せず、膨張が不均一になり、成形時の賦形性も悪化する。
【0027】
強化用有機繊維の融点および分解温度は、マトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂の融点よりも高くなければならない。
強化用有機繊維の融点および分解温度がマトリックス樹脂の融点以下の場合、ウエブからスタンパブルシートを製造する際に、加熱により強化用有機繊維が融解もしくは分解し、膨張成形後に強化用繊維としての効果が無くなる。
【0028】
ウエブまたはスタンパブルシートの加熱温度の制御精度の面からも、強化用有機繊維の融点および分解温度は、マトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂の融点よりも10℃以上高いことが好ましい。
〔強化用有機繊維の融点−マトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂の融点〕および〔強化用有機繊維の分解温度−マトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂の融点〕のいずれかが10℃未満の場合、スタンパブルシートを製造する際に、ウエブの加熱温度の制御精度の面から強化用有機繊維が融解もしくは分解し、膨張成形後に強化用繊維としての効果が無くなる。
【0029】
強化用有機繊維の融点および分解温度の上限は、その目的とするところから特に制限はない。
例えば、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを用いる場合には、ポリプロピレンの融点135 〜160 ℃と比較して十分に融点が高いポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、アラミド樹脂、ポリフッ化エチレン系樹脂などのフッ素樹脂などから選ばれる樹脂からなる繊維、絹などの繊維を用いることが好ましく、これらの繊維を併用してもよい。
【0030】
また、本発明においては、熱硬化性樹脂からなる繊維など実質的に溶融状態を示さない強化用有機繊維を単独で、または併用して用いる場合は、該強化用有機繊維の分解温度が、マトリックスとして用いる熱可塑性樹脂の融点に対して前記範囲を満足していればよい。
なお、本発明における融点は、JIS K7121(-1987)のDSC 曲線の融解ピーク温度TpmまたはTpm1 を、分解温度は、JIS K7120(-1987)のTG曲線の中点温度Eまたは第一次中点温度E1 を示す。
【0031】
また、分解温度測定時の流入ガスの雰囲気は、スタンパブルシート製造時およびスタンパブルシート膨張成形時の雰囲気が、空気雰囲気の場合は、乾燥空気雰囲気下、両製造工程が窒素などの不活性ガス雰囲気下で行われる場合は、不活性ガス雰囲気下、すなわち両製造工程の製造雰囲気ガスに即した測定雰囲気下とし、さらに両製造工程の製造雰囲気ガスが異なる場合は、酸化条件の厳しい工程に合わせた測定雰囲気下とする。
【0032】
次に、無機繊維と有機繊維とからなる強化用繊維の好適配合量などについて述べる。
本発明の抄造法スタンパブルシートにおいては、強化用繊維の合計量100 重量部に対する有機繊維の含有量が5〜30重量部である。
5重量部未満の場合は、強化用有機繊維による高剛化と皮膚刺激性低下の両立が難しい。
【0033】
一方、30重量部超えの場合は、十分な膨張性および補強効果が期待できない。
また、マトリックスである熱可塑性樹脂と強化用繊維の合計量100 重量部に対する強化用繊維の合計量(無機繊維+有機繊維)は、20〜70重量部であることが好ましい。
20重量部未満、すなわち強化用繊維が過少の場合は、十分な補強効果が期待できず、一方、70重量部超え、すなわち強化用繊維が過剰の場合は、抄紙後のウエブがもろく、ハンドリング性が悪くなると共に、膨張させた場合に、バインダー成分としての熱可塑性樹脂が不足し、熱可塑性樹脂を強化用繊維の接合点に均一に含浸することが難しくなるため、強度の低下を招く。
【0034】
強化用繊維の表面は、必要によりカップリング剤および/または集束剤による処理が施される。
特に、強化用繊維における無機繊維がガラス繊維の場合には、濡れ性や接着性を改良するために、シランカップリング剤が好ましく用いられる。
シランカップリング剤としては、ビニルシラン系、アミノシラン系、エポキシシラン系、メタクリルシラン系、クロロシラン系、メルカプトシラン系が好ましい。
【0035】
シランカップリング剤によるガラス繊維の処理方法は、ガラス繊維を混合しながら、シランカップリング剤溶液を噴霧する方法や、シランカップリング剤溶液中に浸漬するなどの方法で行うことができる。
シランカップリング剤のガラス繊維への付着量は、ガラス繊維100 重量部に対して、0.001 〜 0.3重量部であることが好ましい。さらに、好ましくは、0.005 〜 0.2重量部である。 0.001重量部未満では、強度の向上効果が小さく、0.3 重量部超えでは強度の向上効果が平衝に達し、それ以上添加した場合経済的でない。
【0036】
抄造法スタンパブルシートの強度と膨張性を向上させるために、強化用繊維は単繊維に解繊させることが好ましい。このため、強化用繊維は、水溶性の集束剤で処理されることが好ましい。
これらの集束剤としては、ポリエチレンオキシド系、ポリビニルアルコール系などが例示される。
【0037】
集束剤の強化用繊維への付着量は、強化用繊維100 重量部に対して、0.03〜0.3 重量部である。さらに好ましくは、0.05〜 0.2重量部である。0.03重量部未満の場合、収束剤としての効果が小さく、0.3 重量部超えの場合、抄紙工程での解繊が難しくなる。
〔C〕マトリックス樹脂:
本発明においてマトリックスとして使用する熱可塑性樹脂としては、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリフッ化エチレン系樹脂など熱可塑性フッ素樹脂などの樹脂、並びにこれらの樹脂のモノマーを主成分とする共重合体や、これらの樹脂を主成分とするグラフト化合物、もしくはこれらの樹脂の混合物も好ましく用いることができる。
【0038】
なお、前記共重合体としては、例えば、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂の中でも、さらに好ましい熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンである。
これは、熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを用いた場合、特に、抄紙法スタンパブルシートおよび軽量スタンパブルシートの強度特性が優れ、かつポリプロピレンが安価に入手できるためである。
【0039】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50,000〜700,000 であることが好ましい。Mwが50,000未満の場合、溶融粘度が低く、ガラス繊維など強化用繊維の濡れ性、接着性は良くなるが、樹脂が脆化するため、軽量スタンパブルシートの機械的特性が低下する。Mwが700,000 超えの場合、ガラス繊維など強化用繊維の接合点へのマトリックス樹脂の含浸性、濡れ性が低下し、軽量スタンパブルシートの機械的特性が低下する。さらに成形時の流動性も低下する。
【0040】
マトリックス樹脂とガラス繊維などの強化用繊維との接着性をさらに向上させるために、前記熱可塑性樹脂を酸やエポキシ樹脂などの種々の化合物で変性したものを併用できる。
ポリプロピレンの場合、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸などで変性することができ、変性後の官能基が酸無水物基、カルボキシル基となる化合物を用いることが好ましい。
【0041】
変性した熱可塑性樹脂(以下変性熱可塑性樹脂と記す)の重量平均分子量(Mw)は、20,000〜200,000 であることが好ましい。
Mwが20,000未満の場合、溶融粘度が低いため、ガラス繊維などの強化用繊維に対する濡れ性と接着性は良くなるが、樹脂が脆化するため、軽量スタンパブルシートの機械的特性は低下する。
【0042】
逆に、Mwが200,000 超えの場合、ガラス繊維などの強化用繊維の接合点への変性熱可塑性樹脂の含浸性が低下し、軽量スタンパブルシートの機械的特性は低下する。さらに、成形時の流動性も低下する。
変性熱可塑性樹脂の官能基の量は、〔(官能基の重量/変性熱可塑性樹脂の重量)×100 〕として、0.02〜3.0wt %であることが好ましい。より好ましくは0.05〜2.0wt %である。0.02wt%未満の場合は、シランカップリング剤との接着性が不十分となり。強度向上効果が小さくなる。3wt%超えの場合は、熱可塑性樹脂の脆化やシートの着色などの不都合を招く。
【0043】
マトリックスとして使用する熱可塑性樹脂の形状は粒子状、繊維状、ペレット状などいかなる形状でもよいが、強化用繊維の絡み合い構造を緻密化し、高い強度特性を得るためには、細かい粒子、または繊維状であることが好ましく、これら粒子状、繊維状の熱可塑性樹脂の両者を併用してもよい。
粒子状熱可塑性樹脂を用いた場合の粒子径は、50〜2,000 μmであることが好ましい。粒子径が50μm未満の場合、後述する抄紙後の脱水工程において、圧力損失が大きくなり、製造上のトラブルの原因となる。また、粒子径が2,000 μm超えの場合、樹脂がガラス繊維などの強化用繊維中に均一に分散したスタンパブルシートを得にくい。
【0044】
〔D〕スタンパブルシートの製造方法:
[A] 強化用無機繊維、好ましくはガラス繊維のチョップドストランドと、[B] 強化用有機繊維、好ましくは熱可塑性樹脂からなる繊維と、[C] マトリックスである熱可塑性樹脂、好ましくは粒子状の熱可塑性樹脂と、場合によっては、さらに変性熱可塑性樹脂を、空気の微小気泡が分散した界面活性剤含有水溶液中に分散させる。
【0045】
本発明において用いられる界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
得られた分散液を多孔性支持体を介して脱水することにより、均一なウエブを得ることができる。
ウエブは、強化用繊維と熱可塑性樹脂などから構成され、強化用繊維の中に熱可塑性樹脂が均一に分散している。ウエブの厚さは、1〜10mmであることが好ましい。
【0046】
次に、得られたウエブを乾燥後、加熱し、樹脂を溶融させ、冷却盤間で圧力を加え、緻密な固化したスタンパブルシートを得る。
ウエブを加熱、加圧してスタンパブルシートを製造する際の加熱温度は、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ強化用有機繊維の融点未満、分解温度未満である。
【0047】
すなわち、マトリックスである熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、加熱温度は170 〜240 ℃が好ましく、特に好ましくは、190 〜220 ℃である。
加熱温度が170 ℃未満の場合、樹脂の溶融が不十分となり、強度低下が生じ、240 ℃超えの場合、ポリプロピレンの分解による着色、強度低下が生じる。
ウエブを加圧する際の圧力は、緻密なスタンパブルシートを得る目的で、3〜50kgf/cm2 とするのが好ましい。圧力が3kgf/cm2 未満の場合、緻密なスタンパブルシートが得られず、50kgf/cm2 超えの場合、ガラス繊維などの強化用繊維の破損が生じる可能性がある。
【0048】
本発明の高強度軽量スタンパブルシートは、用途によっては非通気性を持たせる。
すなわち、真空成形時に必要な圧損を確保し、真空成形を容易とするためである。
その他、表皮材と基材との接着性を持たせるか、もしくは単に表面の感触を改良するなどの目的で、単層もしくは多層の熱可塑性樹脂フィルムをスタンパブルシート製造時に同時に貼合することが可能である。
【0049】
また、これらの熱可塑性樹脂フィルム、非通気性フィルム、ホットメルト層を有したフィルムを貼合したスタンパブルシートを製造する場合にも、加熱温度、圧力ともに前記のスタンパブルシートの製造条件を適用できる。
なお、スタンパブルシートには、酸化防止剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、難燃剤、カーボンブラックなどの添加剤や着色剤などを含有することができる。
【0050】
これらの添加剤および着色剤は、例えば熱可塑性樹脂にあらかじめ配合するか、またはコーティングしたり、スタンパブルシート製造工程中に、スプレーなどで添加することによりスタンパブルシート中に含有させることができる。
また、前記したように、軽量スタンパブルシートに非通気性および良好な表皮接着性を持たせる場合には、スタンパブルシートを予熱する際に同時に非通気フィルムおよび表皮接着のためのホットメルト層を有したフィルムを同時貼合することが可能である。
【0051】
〔E〕膨張成形方法:
以上のようにして製造されたスタンパブルシートは、例えば公知の方法で膨張成形させ、軽量スタンパブルシートを得ることができる。
すなわち、スタンパブルシートを、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上に加熱後、成形金型上に配置し、金型のクリアランスを調整し、所定の厚みと密度を有する高強度軽量スタンパブルシートを得ることができる。
【0052】
スタンパブルシートの膨張成形時の加熱温度は、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ強化用有機繊維の融点未満、分解温度未満であることが好ましい。
すなわち、マトリックスである熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、加熱温度は 170〜240 ℃が好ましい。
【0053】
170 ℃未満の場合、シートの溶融、膨張が不十分となり強度低下が生じ、240 ℃超えの場合、ポリプロピレンの分解による着色、強度低下が生じる。
なお、本発明においては、強化用有機繊維として、熱硬化性樹脂からなる繊維など実質的に溶融状態を示さない有機繊維を単独で用いる場合は、スタンパブルシートの膨張成形時の加熱温度は、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ該強化用有機繊維の分解温度未満であることが好ましい。
【0054】
スタンパブルシートの加熱方法は、熱盤加熱、遠赤外線加熱、通風式加熱などがあり、特に限定されない。
前記のようにして製造されたスタンパブルシートは、加熱時にガラス繊維など強化用繊維のスプリングバックにより膨張する。膨張倍率、すなわち膨張材の厚みを空隙率がゼロの時の理論厚みで除した値は、好ましくは1.1 〜25倍である。
【0055】
膨張倍率が1.1 倍未満の場合、必要厚みにおける軽量化の効果が少なく、逆に25倍超えの場合、目付量が大きい場合には、加熱時の表面温度と内部温度の差が大きくなり、均一な加熱が困難となり、厚みの不均一を生じる。膨張倍率は、より好ましくは1.5 〜10倍、さらに好ましくは1.5 〜8倍である。
金型温度は、熱可塑性樹脂の凝固点以下であれば良く、ハンドリング性、生産性の点から、室温〜60℃の範囲内であることが好ましい。
【0056】
成形圧力は、製品形状により異なるが、50kgf/cm2 以下の範囲内であることが好ましい。過剰の圧力は、強化用繊維を破断させる。
高強度軽量スタンパブルシートの密度は、金型のクリアランスにより制御される。
軽量スタンパブルシートの密度は、理論密度すなわち空隙率がゼロのときの密度よりも小さければ良い。好ましくは、0.8g/cm3以下、さらに好ましくは0.7 〜0.05g/cm3 である。
【0057】
また、本発明では、ウエブからシートを経ずに直接軽量スタンパブルシートを製造することが可能である。
すなわち、前述した抄造法で得られたウエブを加熱、圧着し、シートの厚み方向に膨張させ、冷却、固化することにより、軽量スタンパブルシートを製造する。
【0058】
ウエブを加熱、圧着時の加熱温度は、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ強化用有機繊維の融点未満、分解温度未満である。
すなわち、マトリックスである熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、加熱温度は 170〜240 ℃が好ましく、特に好ましくは、190 〜220 ℃である。
加熱温度が170 ℃未満の場合、樹脂の溶融が不十分となり、強度低下が生じ、240 ℃超えの場合、ポリプロピレンの分解による着色、強度低下が生じる。
【0059】
ウエブを圧着する際の圧力は、緻密なスタンパブルシートを得る目的で、3〜50kgf/cm2 とし、強化用繊維をマトリックスである熱可塑性樹脂で濡らす必要がある。
圧力が3kgf/cm2 未満の場合、強化用繊維が熱可塑性樹脂で十分に濡れず、強度特性に優れた軽量スタンパブルシートが得られず、50kgf/cm2 超えの場合、ガラス繊維などの強化用繊維の破損が生じる可能性がある。
【0060】
次に、圧着したシートから圧力を減じさせ、シートを膨張させ、所望の厚みになるようにクリアランスを調整する。
最後にシートを冷却、固化し、軽量スタンパブルシートを得る。
軽量スタンパブルシートの密度は、理論密度、すなわち、空隙率がゼロのときの密度よりも小さければよい。
【0061】
軽量スタンパブルシートの密度は、好ましくは、0.8g/cm3以下、さらに好ましくは、0.7 〜0.05g/cm3 である。
本発明においては、スタンパブルシートを膨張成形する際、金型内に装飾用表皮を挿入し、表皮の同時貼合を行うことも可能である。
用いられる表皮は、自動車用内装用途に採用されるものであれば、特に限定されない。
【0062】
例えば天井材向けには、ポリエステルやポリプロピレンなどの不織布単独およびそれらにバッキング材を有したもの、あるいはさらに各種ホットメルト接着剤を有したものが好ましく使用される。
また、ドアトリム用途では、PVC(ポリ塩化ビニル)やTPO(熱可塑性ポリオレフィン)にウレタンまたはポリプロピレンやポリエチレンフォームで裏打ちされたもの、あるいはこれらにさらに各種ホットメルト接着剤を有したものが使用される。
【0063】
さらに、これら以外にも、表皮のバッキング材としては、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維などの繊維形状のものも使用できる。
ホットメルト接着剤は必須ではないが、ホットメルト付きの表皮を使用する場合には、例えば、ポリアミド系、変性ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリオレフィン系などの各種ホットメルト接着剤の内から、基材樹脂成分および貼合フィルム樹脂成分と親和性および接着性の良いものを選択することが望ましい。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例および比較例で用いたマトリックスである熱可塑性樹脂、強化用無機繊維、強化用有機繊維は下記のとおりである。
熱可塑性樹脂 :
粒子状ポリプロピレン(MFR:20、平均粒径:500 μm、融点:160 ℃、空気中分解温度:300 ℃)
強化用無機繊維:
ガラス繊維A(平均繊維長:25mm、平均繊維径:13μm)
ガラス繊維B(平均繊維長:25mm、平均繊維径:17μm)
ガラス繊維A:ガラス繊維B=50wt%:50wt%で混合して使用した。
【0065】
強化用有機繊維:
ポリプロピレン繊維(繊維径:15μm、融点:145 ℃、空気中分解温度:290 ℃)
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径:15μm、融点:270 ℃、空気中分解温度:340 ℃)
テフロン繊維(繊維径:16μm、空気中分解温度:400 ℃)
ナイロン6,6 繊維(繊維径:13μm、融点:268 ℃、空気中分解温度:310 ℃)
アラミド繊維(繊維径:18μm、融点:280 ℃、空気中分解温度:380 ℃)
なお、本実施例における融点は、JIS K7121(-1987)のDSC 曲線の融解ピーク温度を示す。
【0066】
また、分解温度は、JIS K7120(-1987)の乾燥空気流通下のTG曲線の中点温度を示す。
(実施例1)
それぞれ乾燥重量でポリプロピレン粒子50重量部、ポリエチレンテレフタレート繊維5重量部、ガラス繊維45重量部を全目付量が600g/m2 となるように混合、抄紙し、均質なウエブを得た。
【0067】
この場合、強化用繊維100 重量部中の有機繊維の含有量は10重量部である。
得られたウエブを空気雰囲気下で 210℃で加熱し、加熱したウエブを25℃の冷却盤間に配置し、5kgf/cm2 の圧力でプレスし、固化した緻密なシートを得た。
得られた緻密なシートを、遠赤外線ヒータで 210℃で空気雰囲気下で2分間加熱し、クリアランスを2.6mm に設定した金型により圧縮/冷却固化し、軽量スタンパブルシートを得た。
【0068】
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは、約 2.4mmであった。
また、軽量スタンパブルシートを素手で触った時に痛みが殆ど無かった。
次に、得られたサンプルから、長さ150mm 、幅50mmの試験片を作成し、スパン 100mm、クロスヘッドスピード50mm/minで3点曲げ試験を実施し、弾性勾配を測定した。
【0069】
得られた試験結果を表1に示す。
軽量スタンパブルシートの微細構造を光学顕微鏡で観察したところ、ポリエチレンテレフタレート繊維は、繊維形状で成形品中に存在していることがわかった。
(実施例2〜4)
有機繊維を表1に示すものに代えた以外は実施例1と同様の方法で軽量スタンパブルシートを試作した。
【0070】
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは、約 2.4mmであった。
また、軽量スタンパブルシートを素手で触った時に、実施例2〜4いずれの場合も痛みが殆ど無かった。
次に、得られた軽量スタンパブルシートを、実施例1と同様の方法で試験し、評価を行った。
【0071】
試験結果を表1に示す。
軽量スタンパブルシートの微細構造を光学顕微鏡で観察したところ、有機繊維は、繊維形状で成形品中に存在していることがわかった。
(実施例5)
実施例1と同様の原料、同様の方法でウエブを製造した。
【0072】
得られたウエブを空気雰囲気下で 210℃の熱盤で加熱し、5kgf/cm2 の圧力で圧着後、クリアランスを2.6mm に設定した金型により圧縮/冷却固化し、軽量スタンパブルシートを得た。
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは約 2.4mmであった。
また、軽量スタンパブルシートを素手で触った時に痛みが殆ど無かった。
【0073】
次に、得られた軽量スタンパブルシートを、実施例1と同様の方法で試験し、評価を行った。
試験結果を表1に示す。
軽量スタンパブルシートの微細構造を光学顕微鏡で観察したところ、ポリエチレンテレフタレート繊維は、繊維形状で成形品中に存在していることがわかった。
【0074】
(比較例1)
有機繊維としてポリプロピレン繊維を用いた以外は実施例1と同様の方法で軽量スタンパブルシートを試作し、評価を行った。
試験結果を表1に示す。
このときシートは膨張性が不十分であり、成形品の目標厚みの約 2.4mmに到達せず、軽量性の面で不適であった。
【0075】
軽量スタンパブルシートの微細構造を光学顕微鏡で観察したところ、ポリプロピレン繊維は、加熱により融解し、成形品中に繊維形状で存在していないことがわかった。
(比較例2)
表1に示す原料の配合量で実施例1と同様の方法で軽量スタンパブルシートを試作した。
【0076】
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは約 2.4mmであった。
次に、得られた軽量スタンパブルシートを、実施例1と同様の方法で試験し、評価を行った。
試験結果を表1に示す。
シートは強化用繊維の補強効果で剛性は十分であったが、サンプルを素手で触ったときに痛みがあった。
【0077】
(比較例3)
表1に示す原料の配合量で実施例1と同様の方法で軽量スタンパブルシートを試作した。
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは約 2.4mmに到達せず、軽量性の面で不適であった。
【0078】
また、サンプルを素手で触ったときに痛みがあった。
次に、得られた軽量スタンパブルシートを、実施例1と同様の方法で試験し、評価を行った。
試験結果を表1に示す。
表1に示されるように、強化用繊維として、温度特性を規定した有機繊維を併用することにより、成形品の軽量性、剛性が大幅に向上し、さらには、皮膚刺激性の少ない軽量スタンパブルシートが得られた。
【0079】
【表1】
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、軽量で高い剛性を有しながらも皮膚刺激性が少ない軽量スタンパブルシートを提供することが可能となった。
本発明の軽量スタンパブルシートは、特に、天井材、ドアトリムなどの自動車内装品などとして有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタンパブルシートおよび該スタンパブルシートを素材とした軽量スタンパブルシートに関するものであり、さらに詳しくは抄造法で得られるスタンパブルシート、および該スタンパブルシートを素材として得られる高い曲げ剛性、曲げ強度を有し、さらには、ハンドリング性に優れた軽量スタンパブルシートに関するものである。
【0002】
本発明の軽量スタンパブルシートは、特に天井材、ドアトリム、エンジンカバー用吸音材などの自動車用内装品として有用である。
【0003】
【従来の技術】
スタンパブルシートを製造する方法として、熱可塑性樹脂と繊維状強化材(以下強化用繊維と記す)を原料とする、抄造法に基づく方法が知られている。
抄造法においては、微少気泡を含む界面活性剤水溶液中に、長さ5〜50mmの強化用繊維(ガラス繊維)と熱可塑性樹脂を分散させ、この分散液を多孔性支持体上で抄くことによりシート状のウエブを調製し、このウエブを熱可塑性樹脂の融点以上かつ分解温度未満の温度に加熱した後に圧力を加えて、その後冷却することにより固化した緻密なシート、いわゆる抄造法スタンパブルシートを製造する。
【0004】
次いで得られたシートを熱可塑性樹脂の融点以上かつ分解温度未満に再加熱し、樹脂が溶融することによって、樹脂に拘束されていた強化用繊維がスプリングバックを起こして、元の厚さの数倍に膨張したシート(以下膨張シートと記す)となる。
引き続き、この膨張シートを金型上に配置し、圧縮成形または真空成形または圧空成形などの成形法により、所望の形状が付与できる。
【0005】
すなわち成形時に、金型のクリアランスを理論厚さ、すなわち成形品の空隙率をゼロとした時の厚さより大きな間隔に調整することによって、上記抄造法スタンパブルシートよりも密度が小さく、面剛性の高い軽量スタンパブルシートを得ることができる。
これら軽量スタンパブルシートおよびその製造方法は、例えば特開昭60−179234号公報および特開昭62−161529号公報に開示されているが、抄造法で得られた従来の軽量スタンパブルシートは、原料として通常、比重の大きいガラス繊維を用いており、軽量化が不十分であったため、単位目付量当たりの強度、剛性(以下比強度、比剛性と記す)が低かった。
【0006】
このような問題を解決するため、これまで軽量スタンパブルシートの強度向上方法が検討されてきた。
この強度向上の方法の一つとして、特開昭63−41128 号公報に開示されているように、シランカップリング剤をウエブに添加する方法が知られている。しかしシランカップリング剤の添加により、軽量スタンパブルシートの比強度、比剛性を向上させるには、限界があった。
【0007】
また、軽量スタンパブルシートは、ガラス繊維を主体とする多孔質体のため、ハンドリング時にガラス繊維による皮膚刺激(痛み)が生じるという問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記した従来技術の問題点を解決することにあり、特に比強度、比剛性に優れ、皮膚刺激性が少なく、ハンドリング性に優れた軽量スタンパブルシートを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維を主成分とする繊維強化熱可塑性樹脂シートであって、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、該強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量 100 重量部に対して5〜 30 重量部であり、該強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点よりも高いことを特徴とする抄造法スタンパブルシートである。
【0010】
前記第1の発明においては、前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことが好ましい。
【0011】
さらに、前記第1の発明においては、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが好ましい。また、前記第1の発明においては、前記抄造法スタンパブルシートが、膨張成形用抄造法スタンパブルシートであることが好ましい。
なお、前記第1の発明の抄造法スタンパブルシートは、前記強化用無機繊維および強化用有機繊維のいずれもが、マトリックスである前記熱可塑性樹脂中に繊維形状で存在するものである。
【0012】
第2の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維を主成分とする繊維強化多孔質材料であって、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、該強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量 100 重量部に対して5〜 30 重量部であり、該強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点よりも高いことを特徴とする軽量スタンパブルシートである。
前記第2の発明においては、前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことが好ましい。
【0013】
また、前記第2の発明においては、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが好ましい。
なお、前記第2の発明の軽量スタンパブルシートは、前記強化用無機繊維および強化用有機繊維のいずれもが、マトリックスである前記熱可塑性樹脂中に繊維形状で存在するものである。
【0014】
第3の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる主原料を抄造して得られるウエブを加熱、加圧し、固化することにより、スタンパブルシートを製造する方法において、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、該強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量 100 重量部に対して5〜 30 重量部であり、前記ウエブを、前記熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度未満になるように加熱することを特徴とする抄造法スタンパブルシートの製造方法である。
【0015】
前記第3の発明においては、前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことが好ましい。
【0016】
さらに、前記第3の発明においては、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが好ましい。また、前記第3の発明においては、前記抄造法スタンパブルシートが、膨張成形用抄造法スタンパブルシートであることが好ましい。
第4の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる主原料を抄造して得られるウエブを加熱、加圧し、固化して得られるスタンパブルシートを再加熱して膨張させた後、成形することにより、軽量スタンパブルシートを製造する方法において、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、前記ウエブおよびスタンパブルシートを、前記熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度未満になるように加熱することを特徴とする軽量スタンパブルシートの製造方法である。
【0017】
第5の発明は、熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる主原料を抄造して得られるウエブを加熱、圧着し、シートの厚み方向に膨張させ、冷却、固化することにより、軽量スタンパブルシートを製造する方法において、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、前記ウエブを、前記熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度未満になるように加熱、圧着することを特徴とする軽量スタンパブルシートの製造方法である。
【0018】
前記第4の発明または第5の発明においては、前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことが好ましい。
また、前記第4の発明または第5の発明においては、前記強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量100 重量部に対して5〜30重量部であることが好ましい。
【0019】
また、前記第4の発明または第5の発明においては、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者らは、抄造法により軽量スタンパブルシートを製造する際に、強化用繊維として従来の無機繊維と併用して、ウエブをシート化および膨張シート化する温度で融解もしくは分解しない有機繊維を特定量だけ用いることより、軽量スタンパブルシートの強度特性、膨張特性を維持しつつ、重量を大きく低減でき、さらには、皮膚刺激性が少なくなることを見い出し、本発明に至った。
【0021】
以下、本発明に係わる〔A〕強化用繊維(無機繊維)、〔B〕強化用繊維(有機繊維)、〔C〕マトリックス樹脂、〔D〕スタンパブルシートの製造方法、および軽量スタンパブルシートの製造方法である〔E〕膨張成形方法について順に説明する。
〔A〕強化用繊維(無機繊維):
強化用繊維のうち、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、および他の各種無機繊維から選ばれた1種または2種以上が用いられるが、特性対価格の面からガラス繊維を用いることが好ましい。
【0022】
強化用無機繊維(以下無機繊維と記す)の長さは、十分な補強効果を得、かつ成形時の成形性を確保する上で、5〜50mmが好ましい。さらに、好ましくは、10〜26mmである。
無機繊維の長さが5mm未満の場合、十分な補強効果が得られず、抄紙工程で断紙し易くなる。また無機繊維の長さが50mmを超えると、抄紙工程で無機繊維が十分に解繊せず、膨張が不均一になるとともに、成形時の賦形性も悪化する。
【0023】
無機繊維の繊維径は、繊維による補強効果と膨張効果を確保する上で5〜30μmであることが好ましい。さらに好ましくは、10〜25μmである。繊維径が5μm未満の場合、十分な膨張倍率が得られず、逆に繊維径が30μmを超えると、十分な補強効果が得られず、さらには皮膚刺激性が大きくなる。
〔B〕強化用繊維(有機繊維):
強化用繊維のうち、有機繊維としては、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリフッ化エチレン系樹脂などのフッ素樹脂などの樹脂、並びにこれらの樹脂のモノマーを主成分とした共重合体や、これらの樹脂を主成分とするグラフト化合物、もしくはこれらの樹脂の混合物などの熱可塑性樹脂からなる有機繊維が用いられる。
【0024】
また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂からなる有機繊維および羊毛、綿、絹糸、セルロース繊維などの天然繊維が使用できる。
さらに、前記熱可塑性樹脂からなる有機繊維、熱硬化性樹脂からなる有機繊維、天然繊維を混合して用いることも可能である。
また、抄紙時の分散性を向上させるために、有機繊維に表面処理を行っても良い。
【0025】
強化用繊維として用いられる有機繊維(以下強化用有機繊維と記す)の繊維径は、繊維の補強効果と良好な分散性を保つ上で、5〜30μmであることが好ましい。
繊維径が5μm未満の場合、膨張性が悪くなり、逆に繊維径が30μm超えの場合、繊維の分散性が悪くなる。
【0026】
また、強化用有機繊維の繊維長は5〜30mmであることが好ましい。
強化用有機繊維の繊維長が5mm未満の場合、十分な補強効果が得られず、抄紙工程で繊維が抜け落ちやすくなる。また、繊維長が30mm超えの場合、抄紙工程で強化用有機繊維が十分に解繊せず、膨張が不均一になり、成形時の賦形性も悪化する。
【0027】
強化用有機繊維の融点および分解温度は、マトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂の融点よりも高くなければならない。
強化用有機繊維の融点および分解温度がマトリックス樹脂の融点以下の場合、ウエブからスタンパブルシートを製造する際に、加熱により強化用有機繊維が融解もしくは分解し、膨張成形後に強化用繊維としての効果が無くなる。
【0028】
ウエブまたはスタンパブルシートの加熱温度の制御精度の面からも、強化用有機繊維の融点および分解温度は、マトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂の融点よりも10℃以上高いことが好ましい。
〔強化用有機繊維の融点−マトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂の融点〕および〔強化用有機繊維の分解温度−マトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂の融点〕のいずれかが10℃未満の場合、スタンパブルシートを製造する際に、ウエブの加熱温度の制御精度の面から強化用有機繊維が融解もしくは分解し、膨張成形後に強化用繊維としての効果が無くなる。
【0029】
強化用有機繊維の融点および分解温度の上限は、その目的とするところから特に制限はない。
例えば、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを用いる場合には、ポリプロピレンの融点135 〜160 ℃と比較して十分に融点が高いポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、アラミド樹脂、ポリフッ化エチレン系樹脂などのフッ素樹脂などから選ばれる樹脂からなる繊維、絹などの繊維を用いることが好ましく、これらの繊維を併用してもよい。
【0030】
また、本発明においては、熱硬化性樹脂からなる繊維など実質的に溶融状態を示さない強化用有機繊維を単独で、または併用して用いる場合は、該強化用有機繊維の分解温度が、マトリックスとして用いる熱可塑性樹脂の融点に対して前記範囲を満足していればよい。
なお、本発明における融点は、JIS K7121(-1987)のDSC 曲線の融解ピーク温度TpmまたはTpm1 を、分解温度は、JIS K7120(-1987)のTG曲線の中点温度Eまたは第一次中点温度E1 を示す。
【0031】
また、分解温度測定時の流入ガスの雰囲気は、スタンパブルシート製造時およびスタンパブルシート膨張成形時の雰囲気が、空気雰囲気の場合は、乾燥空気雰囲気下、両製造工程が窒素などの不活性ガス雰囲気下で行われる場合は、不活性ガス雰囲気下、すなわち両製造工程の製造雰囲気ガスに即した測定雰囲気下とし、さらに両製造工程の製造雰囲気ガスが異なる場合は、酸化条件の厳しい工程に合わせた測定雰囲気下とする。
【0032】
次に、無機繊維と有機繊維とからなる強化用繊維の好適配合量などについて述べる。
本発明の抄造法スタンパブルシートにおいては、強化用繊維の合計量100 重量部に対する有機繊維の含有量が5〜30重量部である。
5重量部未満の場合は、強化用有機繊維による高剛化と皮膚刺激性低下の両立が難しい。
【0033】
一方、30重量部超えの場合は、十分な膨張性および補強効果が期待できない。
また、マトリックスである熱可塑性樹脂と強化用繊維の合計量100 重量部に対する強化用繊維の合計量(無機繊維+有機繊維)は、20〜70重量部であることが好ましい。
20重量部未満、すなわち強化用繊維が過少の場合は、十分な補強効果が期待できず、一方、70重量部超え、すなわち強化用繊維が過剰の場合は、抄紙後のウエブがもろく、ハンドリング性が悪くなると共に、膨張させた場合に、バインダー成分としての熱可塑性樹脂が不足し、熱可塑性樹脂を強化用繊維の接合点に均一に含浸することが難しくなるため、強度の低下を招く。
【0034】
強化用繊維の表面は、必要によりカップリング剤および/または集束剤による処理が施される。
特に、強化用繊維における無機繊維がガラス繊維の場合には、濡れ性や接着性を改良するために、シランカップリング剤が好ましく用いられる。
シランカップリング剤としては、ビニルシラン系、アミノシラン系、エポキシシラン系、メタクリルシラン系、クロロシラン系、メルカプトシラン系が好ましい。
【0035】
シランカップリング剤によるガラス繊維の処理方法は、ガラス繊維を混合しながら、シランカップリング剤溶液を噴霧する方法や、シランカップリング剤溶液中に浸漬するなどの方法で行うことができる。
シランカップリング剤のガラス繊維への付着量は、ガラス繊維100 重量部に対して、0.001 〜 0.3重量部であることが好ましい。さらに、好ましくは、0.005 〜 0.2重量部である。 0.001重量部未満では、強度の向上効果が小さく、0.3 重量部超えでは強度の向上効果が平衝に達し、それ以上添加した場合経済的でない。
【0036】
抄造法スタンパブルシートの強度と膨張性を向上させるために、強化用繊維は単繊維に解繊させることが好ましい。このため、強化用繊維は、水溶性の集束剤で処理されることが好ましい。
これらの集束剤としては、ポリエチレンオキシド系、ポリビニルアルコール系などが例示される。
【0037】
集束剤の強化用繊維への付着量は、強化用繊維100 重量部に対して、0.03〜0.3 重量部である。さらに好ましくは、0.05〜 0.2重量部である。0.03重量部未満の場合、収束剤としての効果が小さく、0.3 重量部超えの場合、抄紙工程での解繊が難しくなる。
〔C〕マトリックス樹脂:
本発明においてマトリックスとして使用する熱可塑性樹脂としては、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリフッ化エチレン系樹脂など熱可塑性フッ素樹脂などの樹脂、並びにこれらの樹脂のモノマーを主成分とする共重合体や、これらの樹脂を主成分とするグラフト化合物、もしくはこれらの樹脂の混合物も好ましく用いることができる。
【0038】
なお、前記共重合体としては、例えば、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂の中でも、さらに好ましい熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンである。
これは、熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを用いた場合、特に、抄紙法スタンパブルシートおよび軽量スタンパブルシートの強度特性が優れ、かつポリプロピレンが安価に入手できるためである。
【0039】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50,000〜700,000 であることが好ましい。Mwが50,000未満の場合、溶融粘度が低く、ガラス繊維など強化用繊維の濡れ性、接着性は良くなるが、樹脂が脆化するため、軽量スタンパブルシートの機械的特性が低下する。Mwが700,000 超えの場合、ガラス繊維など強化用繊維の接合点へのマトリックス樹脂の含浸性、濡れ性が低下し、軽量スタンパブルシートの機械的特性が低下する。さらに成形時の流動性も低下する。
【0040】
マトリックス樹脂とガラス繊維などの強化用繊維との接着性をさらに向上させるために、前記熱可塑性樹脂を酸やエポキシ樹脂などの種々の化合物で変性したものを併用できる。
ポリプロピレンの場合、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸などで変性することができ、変性後の官能基が酸無水物基、カルボキシル基となる化合物を用いることが好ましい。
【0041】
変性した熱可塑性樹脂(以下変性熱可塑性樹脂と記す)の重量平均分子量(Mw)は、20,000〜200,000 であることが好ましい。
Mwが20,000未満の場合、溶融粘度が低いため、ガラス繊維などの強化用繊維に対する濡れ性と接着性は良くなるが、樹脂が脆化するため、軽量スタンパブルシートの機械的特性は低下する。
【0042】
逆に、Mwが200,000 超えの場合、ガラス繊維などの強化用繊維の接合点への変性熱可塑性樹脂の含浸性が低下し、軽量スタンパブルシートの機械的特性は低下する。さらに、成形時の流動性も低下する。
変性熱可塑性樹脂の官能基の量は、〔(官能基の重量/変性熱可塑性樹脂の重量)×100 〕として、0.02〜3.0wt %であることが好ましい。より好ましくは0.05〜2.0wt %である。0.02wt%未満の場合は、シランカップリング剤との接着性が不十分となり。強度向上効果が小さくなる。3wt%超えの場合は、熱可塑性樹脂の脆化やシートの着色などの不都合を招く。
【0043】
マトリックスとして使用する熱可塑性樹脂の形状は粒子状、繊維状、ペレット状などいかなる形状でもよいが、強化用繊維の絡み合い構造を緻密化し、高い強度特性を得るためには、細かい粒子、または繊維状であることが好ましく、これら粒子状、繊維状の熱可塑性樹脂の両者を併用してもよい。
粒子状熱可塑性樹脂を用いた場合の粒子径は、50〜2,000 μmであることが好ましい。粒子径が50μm未満の場合、後述する抄紙後の脱水工程において、圧力損失が大きくなり、製造上のトラブルの原因となる。また、粒子径が2,000 μm超えの場合、樹脂がガラス繊維などの強化用繊維中に均一に分散したスタンパブルシートを得にくい。
【0044】
〔D〕スタンパブルシートの製造方法:
[A] 強化用無機繊維、好ましくはガラス繊維のチョップドストランドと、[B] 強化用有機繊維、好ましくは熱可塑性樹脂からなる繊維と、[C] マトリックスである熱可塑性樹脂、好ましくは粒子状の熱可塑性樹脂と、場合によっては、さらに変性熱可塑性樹脂を、空気の微小気泡が分散した界面活性剤含有水溶液中に分散させる。
【0045】
本発明において用いられる界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
得られた分散液を多孔性支持体を介して脱水することにより、均一なウエブを得ることができる。
ウエブは、強化用繊維と熱可塑性樹脂などから構成され、強化用繊維の中に熱可塑性樹脂が均一に分散している。ウエブの厚さは、1〜10mmであることが好ましい。
【0046】
次に、得られたウエブを乾燥後、加熱し、樹脂を溶融させ、冷却盤間で圧力を加え、緻密な固化したスタンパブルシートを得る。
ウエブを加熱、加圧してスタンパブルシートを製造する際の加熱温度は、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ強化用有機繊維の融点未満、分解温度未満である。
【0047】
すなわち、マトリックスである熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、加熱温度は170 〜240 ℃が好ましく、特に好ましくは、190 〜220 ℃である。
加熱温度が170 ℃未満の場合、樹脂の溶融が不十分となり、強度低下が生じ、240 ℃超えの場合、ポリプロピレンの分解による着色、強度低下が生じる。
ウエブを加圧する際の圧力は、緻密なスタンパブルシートを得る目的で、3〜50kgf/cm2 とするのが好ましい。圧力が3kgf/cm2 未満の場合、緻密なスタンパブルシートが得られず、50kgf/cm2 超えの場合、ガラス繊維などの強化用繊維の破損が生じる可能性がある。
【0048】
本発明の高強度軽量スタンパブルシートは、用途によっては非通気性を持たせる。
すなわち、真空成形時に必要な圧損を確保し、真空成形を容易とするためである。
その他、表皮材と基材との接着性を持たせるか、もしくは単に表面の感触を改良するなどの目的で、単層もしくは多層の熱可塑性樹脂フィルムをスタンパブルシート製造時に同時に貼合することが可能である。
【0049】
また、これらの熱可塑性樹脂フィルム、非通気性フィルム、ホットメルト層を有したフィルムを貼合したスタンパブルシートを製造する場合にも、加熱温度、圧力ともに前記のスタンパブルシートの製造条件を適用できる。
なお、スタンパブルシートには、酸化防止剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、難燃剤、カーボンブラックなどの添加剤や着色剤などを含有することができる。
【0050】
これらの添加剤および着色剤は、例えば熱可塑性樹脂にあらかじめ配合するか、またはコーティングしたり、スタンパブルシート製造工程中に、スプレーなどで添加することによりスタンパブルシート中に含有させることができる。
また、前記したように、軽量スタンパブルシートに非通気性および良好な表皮接着性を持たせる場合には、スタンパブルシートを予熱する際に同時に非通気フィルムおよび表皮接着のためのホットメルト層を有したフィルムを同時貼合することが可能である。
【0051】
〔E〕膨張成形方法:
以上のようにして製造されたスタンパブルシートは、例えば公知の方法で膨張成形させ、軽量スタンパブルシートを得ることができる。
すなわち、スタンパブルシートを、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上に加熱後、成形金型上に配置し、金型のクリアランスを調整し、所定の厚みと密度を有する高強度軽量スタンパブルシートを得ることができる。
【0052】
スタンパブルシートの膨張成形時の加熱温度は、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ強化用有機繊維の融点未満、分解温度未満であることが好ましい。
すなわち、マトリックスである熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、加熱温度は 170〜240 ℃が好ましい。
【0053】
170 ℃未満の場合、シートの溶融、膨張が不十分となり強度低下が生じ、240 ℃超えの場合、ポリプロピレンの分解による着色、強度低下が生じる。
なお、本発明においては、強化用有機繊維として、熱硬化性樹脂からなる繊維など実質的に溶融状態を示さない有機繊維を単独で用いる場合は、スタンパブルシートの膨張成形時の加熱温度は、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ該強化用有機繊維の分解温度未満であることが好ましい。
【0054】
スタンパブルシートの加熱方法は、熱盤加熱、遠赤外線加熱、通風式加熱などがあり、特に限定されない。
前記のようにして製造されたスタンパブルシートは、加熱時にガラス繊維など強化用繊維のスプリングバックにより膨張する。膨張倍率、すなわち膨張材の厚みを空隙率がゼロの時の理論厚みで除した値は、好ましくは1.1 〜25倍である。
【0055】
膨張倍率が1.1 倍未満の場合、必要厚みにおける軽量化の効果が少なく、逆に25倍超えの場合、目付量が大きい場合には、加熱時の表面温度と内部温度の差が大きくなり、均一な加熱が困難となり、厚みの不均一を生じる。膨張倍率は、より好ましくは1.5 〜10倍、さらに好ましくは1.5 〜8倍である。
金型温度は、熱可塑性樹脂の凝固点以下であれば良く、ハンドリング性、生産性の点から、室温〜60℃の範囲内であることが好ましい。
【0056】
成形圧力は、製品形状により異なるが、50kgf/cm2 以下の範囲内であることが好ましい。過剰の圧力は、強化用繊維を破断させる。
高強度軽量スタンパブルシートの密度は、金型のクリアランスにより制御される。
軽量スタンパブルシートの密度は、理論密度すなわち空隙率がゼロのときの密度よりも小さければ良い。好ましくは、0.8g/cm3以下、さらに好ましくは0.7 〜0.05g/cm3 である。
【0057】
また、本発明では、ウエブからシートを経ずに直接軽量スタンパブルシートを製造することが可能である。
すなわち、前述した抄造法で得られたウエブを加熱、圧着し、シートの厚み方向に膨張させ、冷却、固化することにより、軽量スタンパブルシートを製造する。
【0058】
ウエブを加熱、圧着時の加熱温度は、マトリックスである熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ強化用有機繊維の融点未満、分解温度未満である。
すなわち、マトリックスである熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、加熱温度は 170〜240 ℃が好ましく、特に好ましくは、190 〜220 ℃である。
加熱温度が170 ℃未満の場合、樹脂の溶融が不十分となり、強度低下が生じ、240 ℃超えの場合、ポリプロピレンの分解による着色、強度低下が生じる。
【0059】
ウエブを圧着する際の圧力は、緻密なスタンパブルシートを得る目的で、3〜50kgf/cm2 とし、強化用繊維をマトリックスである熱可塑性樹脂で濡らす必要がある。
圧力が3kgf/cm2 未満の場合、強化用繊維が熱可塑性樹脂で十分に濡れず、強度特性に優れた軽量スタンパブルシートが得られず、50kgf/cm2 超えの場合、ガラス繊維などの強化用繊維の破損が生じる可能性がある。
【0060】
次に、圧着したシートから圧力を減じさせ、シートを膨張させ、所望の厚みになるようにクリアランスを調整する。
最後にシートを冷却、固化し、軽量スタンパブルシートを得る。
軽量スタンパブルシートの密度は、理論密度、すなわち、空隙率がゼロのときの密度よりも小さければよい。
【0061】
軽量スタンパブルシートの密度は、好ましくは、0.8g/cm3以下、さらに好ましくは、0.7 〜0.05g/cm3 である。
本発明においては、スタンパブルシートを膨張成形する際、金型内に装飾用表皮を挿入し、表皮の同時貼合を行うことも可能である。
用いられる表皮は、自動車用内装用途に採用されるものであれば、特に限定されない。
【0062】
例えば天井材向けには、ポリエステルやポリプロピレンなどの不織布単独およびそれらにバッキング材を有したもの、あるいはさらに各種ホットメルト接着剤を有したものが好ましく使用される。
また、ドアトリム用途では、PVC(ポリ塩化ビニル)やTPO(熱可塑性ポリオレフィン)にウレタンまたはポリプロピレンやポリエチレンフォームで裏打ちされたもの、あるいはこれらにさらに各種ホットメルト接着剤を有したものが使用される。
【0063】
さらに、これら以外にも、表皮のバッキング材としては、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維などの繊維形状のものも使用できる。
ホットメルト接着剤は必須ではないが、ホットメルト付きの表皮を使用する場合には、例えば、ポリアミド系、変性ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリオレフィン系などの各種ホットメルト接着剤の内から、基材樹脂成分および貼合フィルム樹脂成分と親和性および接着性の良いものを選択することが望ましい。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例および比較例で用いたマトリックスである熱可塑性樹脂、強化用無機繊維、強化用有機繊維は下記のとおりである。
熱可塑性樹脂 :
粒子状ポリプロピレン(MFR:20、平均粒径:500 μm、融点:160 ℃、空気中分解温度:300 ℃)
強化用無機繊維:
ガラス繊維A(平均繊維長:25mm、平均繊維径:13μm)
ガラス繊維B(平均繊維長:25mm、平均繊維径:17μm)
ガラス繊維A:ガラス繊維B=50wt%:50wt%で混合して使用した。
【0065】
強化用有機繊維:
ポリプロピレン繊維(繊維径:15μm、融点:145 ℃、空気中分解温度:290 ℃)
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維径:15μm、融点:270 ℃、空気中分解温度:340 ℃)
テフロン繊維(繊維径:16μm、空気中分解温度:400 ℃)
ナイロン6,6 繊維(繊維径:13μm、融点:268 ℃、空気中分解温度:310 ℃)
アラミド繊維(繊維径:18μm、融点:280 ℃、空気中分解温度:380 ℃)
なお、本実施例における融点は、JIS K7121(-1987)のDSC 曲線の融解ピーク温度を示す。
【0066】
また、分解温度は、JIS K7120(-1987)の乾燥空気流通下のTG曲線の中点温度を示す。
(実施例1)
それぞれ乾燥重量でポリプロピレン粒子50重量部、ポリエチレンテレフタレート繊維5重量部、ガラス繊維45重量部を全目付量が600g/m2 となるように混合、抄紙し、均質なウエブを得た。
【0067】
この場合、強化用繊維100 重量部中の有機繊維の含有量は10重量部である。
得られたウエブを空気雰囲気下で 210℃で加熱し、加熱したウエブを25℃の冷却盤間に配置し、5kgf/cm2 の圧力でプレスし、固化した緻密なシートを得た。
得られた緻密なシートを、遠赤外線ヒータで 210℃で空気雰囲気下で2分間加熱し、クリアランスを2.6mm に設定した金型により圧縮/冷却固化し、軽量スタンパブルシートを得た。
【0068】
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは、約 2.4mmであった。
また、軽量スタンパブルシートを素手で触った時に痛みが殆ど無かった。
次に、得られたサンプルから、長さ150mm 、幅50mmの試験片を作成し、スパン 100mm、クロスヘッドスピード50mm/minで3点曲げ試験を実施し、弾性勾配を測定した。
【0069】
得られた試験結果を表1に示す。
軽量スタンパブルシートの微細構造を光学顕微鏡で観察したところ、ポリエチレンテレフタレート繊維は、繊維形状で成形品中に存在していることがわかった。
(実施例2〜4)
有機繊維を表1に示すものに代えた以外は実施例1と同様の方法で軽量スタンパブルシートを試作した。
【0070】
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは、約 2.4mmであった。
また、軽量スタンパブルシートを素手で触った時に、実施例2〜4いずれの場合も痛みが殆ど無かった。
次に、得られた軽量スタンパブルシートを、実施例1と同様の方法で試験し、評価を行った。
【0071】
試験結果を表1に示す。
軽量スタンパブルシートの微細構造を光学顕微鏡で観察したところ、有機繊維は、繊維形状で成形品中に存在していることがわかった。
(実施例5)
実施例1と同様の原料、同様の方法でウエブを製造した。
【0072】
得られたウエブを空気雰囲気下で 210℃の熱盤で加熱し、5kgf/cm2 の圧力で圧着後、クリアランスを2.6mm に設定した金型により圧縮/冷却固化し、軽量スタンパブルシートを得た。
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは約 2.4mmであった。
また、軽量スタンパブルシートを素手で触った時に痛みが殆ど無かった。
【0073】
次に、得られた軽量スタンパブルシートを、実施例1と同様の方法で試験し、評価を行った。
試験結果を表1に示す。
軽量スタンパブルシートの微細構造を光学顕微鏡で観察したところ、ポリエチレンテレフタレート繊維は、繊維形状で成形品中に存在していることがわかった。
【0074】
(比較例1)
有機繊維としてポリプロピレン繊維を用いた以外は実施例1と同様の方法で軽量スタンパブルシートを試作し、評価を行った。
試験結果を表1に示す。
このときシートは膨張性が不十分であり、成形品の目標厚みの約 2.4mmに到達せず、軽量性の面で不適であった。
【0075】
軽量スタンパブルシートの微細構造を光学顕微鏡で観察したところ、ポリプロピレン繊維は、加熱により融解し、成形品中に繊維形状で存在していないことがわかった。
(比較例2)
表1に示す原料の配合量で実施例1と同様の方法で軽量スタンパブルシートを試作した。
【0076】
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは約 2.4mmであった。
次に、得られた軽量スタンパブルシートを、実施例1と同様の方法で試験し、評価を行った。
試験結果を表1に示す。
シートは強化用繊維の補強効果で剛性は十分であったが、サンプルを素手で触ったときに痛みがあった。
【0077】
(比較例3)
表1に示す原料の配合量で実施例1と同様の方法で軽量スタンパブルシートを試作した。
得られた軽量スタンパブルシートの厚みは約 2.4mmに到達せず、軽量性の面で不適であった。
【0078】
また、サンプルを素手で触ったときに痛みがあった。
次に、得られた軽量スタンパブルシートを、実施例1と同様の方法で試験し、評価を行った。
試験結果を表1に示す。
表1に示されるように、強化用繊維として、温度特性を規定した有機繊維を併用することにより、成形品の軽量性、剛性が大幅に向上し、さらには、皮膚刺激性の少ない軽量スタンパブルシートが得られた。
【0079】
【表1】
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、軽量で高い剛性を有しながらも皮膚刺激性が少ない軽量スタンパブルシートを提供することが可能となった。
本発明の軽量スタンパブルシートは、特に、天井材、ドアトリムなどの自動車内装品などとして有用である。
Claims (16)
- 熱可塑性樹脂と強化用繊維を主成分とする繊維強化熱可塑性樹脂シートであって、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、該強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量 100 重量部に対して5〜 30 重量部であり、該強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点よりも高いことを特徴とする抄造法スタンパブルシート。
- 前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことを特徴とする請求項1記載の抄造法スタンパブルシート。
- 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の抄造法スタンパブルシート。
- 前記抄造法スタンパブルシートが、膨張成形用抄造法スタンパブルシートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抄造法スタンパブルシート。
- 熱可塑性樹脂と強化用繊維を主成分とする繊維強化多孔質材料であって、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、該強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量 100 重量部に対して5〜 30 重量部であり、該強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点よりも高いことを特徴とする軽量スタンパブルシート。
- 前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことを特徴とする請求項5記載の軽量スタンパブルシート。
- 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする請求項5または6に記載の軽量スタンパブルシート。
- 熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる主原料を抄造して得られるウエブを加熱、加圧し、固化することにより、スタンパブルシートを製造する方法において、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、該強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量 100 重量部に対して5〜 30 重量部で あり、前記ウエブを、前記熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度未満になるように加熱することを特徴とする抄造法スタンパブルシートの製造方法。
- 前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことを特徴とする請求項8記載の抄造法スタンパブルシートの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする請求項8または9に記載の抄造法スタンパブルシートの製造方法。
- 前記抄造法スタンパブルシートが、膨張成形用抄造法スタンパブルシートであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の抄造法スタンパブルシートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる主原料を抄造して得られるウエブを加熱、加圧し、固化して得られるスタンパブルシートを再加熱して膨張させた後、成形することにより、軽量スタンパブルシートを製造する方法において、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、前記ウエブおよびスタンパブルシートを、前記熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度未満になるように加熱することを特徴とする軽量スタンパブルシートの製造方法。
- 熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる主原料を抄造して得られるウエブを加熱、圧着し、シートの厚み方向に膨張させ、冷却、固化することにより、軽量スタンパブルシートを製造する方法において、前記強化用繊維が無機繊維と有機繊維とからなり、前記ウエブを、前記熱可塑性樹脂の融点以上、分解温度未満、かつ前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度未満になるように加熱、圧着することを特徴とする軽量スタンパブルシートの製造方法。
- 前記強化用有機繊維の融点または分解温度のうち、いずれか低い方の温度が、前記熱可塑性樹脂の融点に対して10℃以上高いことを特徴とする請求項12または13に記載の軽量スタンパブルシートの製造方法。
- 前記強化用有機繊維の含有量が、前記強化用繊維の合計量100 重量部に対して5〜30重量部であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の軽量スタンパブルシートの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の軽量スタンパブルシートの製造方法。
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