JP3824264B2 - 放射線検査装置及び放射線検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は放射線を利用した放射線検査装置において、特にX線CT、陽電子放出型CT(ポジトロン・エミッション・コンピューテッド・トモグラフィ;Positron Emission computed Tomography、以下「PET」という)及び単光子放出型CT(シングル・フォトン・エミッション・コンピューテッド・トモグラフィ;Single Photon Emission Computed Tomography、以下「SPECT」という)等の複数種の放射線検査を同時に行う放射線検査装置及び放射線検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
放射線を利用した検査技術は、被検体内部を非破壊で検査することができる。特に人体に対する放射線検査技術にはX線CT、PET、SPECT等がある。これらの技術はいずれも、検出対象の物理量を放射線飛翔方向の積分値として計測し、その積分値を逆投影することにより被検体内の各ボクセルの物理量を計算し画像化する技術である。これらの技術は膨大なデータを処理する必要があり、近年のコンピュータ技術の急速な発達に伴い、高速・高精細画像を提供できるようになってきた。
【0003】
X線CT技術は、被検体を通過したX線強度を測定し、X線の体内通過率から被検体の形態情報を画像化する技術である。X線源からX線を被検体に照射し、体内を通過したX線強度を被検体の反対側に配置した検出素子により測定し、被検体の積分吸収係数を算出する。X線及び検出素子をスキャンすることにより、積分吸収係数の分布を測定する。この積分吸収係数からアイトリプルイー・トランザクション・オン・ニュークリア・サイエンス(IEEE Transaction on Nuclear Science)NS−21巻の21ページに記載されているフィルタードバックプロジェクション法(Filtered Back Projection Method)等を用いて各ボクセルの吸収係数を求め、その値をCT値に変換する。X線CTによく用いられる線源は約80keV前後である。
【0004】
一方、PET及びSPECTは、X線CT等ではできない分子生物学レベルでの機能や代謝の検出が可能な手法であり、身体の機能画像を提供することが可能である。PETとは、18F、15O、11Cといったポジトロン放出核種で標識した放射性薬剤を投与し、その分布を計測して画像化する手法である。薬剤にはフルオロデオキシグルコース(2-[F-18]fluoro-2-deoxy-D-glucose,18FDG)等があり、これは糖代謝により腫瘍組織に高集積することを利用し、腫瘍部位の特定に使用される。体内に取りこまれた放射線核種が崩壊しポジトロン(β+)を放出する。放出したポジトロンは電子と結合し消滅する際に511keVのエネルギを持つ一対の消滅γ線を放出する。この消滅γ線対はほぼ反対方向(180±0.6°)に放射されるので、被検体の周りを取り囲むように配置した検出素子で消滅γ線対を同時検出しその放射方向データを蓄積し投影データを得ることができる。投影データを逆投影(上記フィルタードバックプロジェクション法等を使用)することにより放射位置(放射線核種の集積位置)を同定し画像化することが可能となる。
【0005】
SPECTは、シングルフォトン放出核種で標識した放射性薬剤を投与し、その分布を計測して画像化する手法である。薬剤からは数100keV程度のエネルギを持った単一γ線が放出され、この単一γ線を検出素子で計測している。単一γ線の計測ではその飛翔方向を同定できないので、SPECTでは検出素子の前面にコリメータを挿入し特定の方向からのγ線のみを検出することにより投影データを得ている。PET同様、フィルタードバックプロジェクション法等を利用し投影データを逆投影して画像データを得る。PETとの違いは、単一γ線の計測に起因して同時計測の必要がなく、検出素子の数が少なくてすむこと等であり、装置構成が簡単で比較的安価な装置である。その反面、SPECTはコリメータを使用しているためγ線の検出率が低く一般的に画質が悪い。
【0006】
上記のようにPET及びSPECTは体内代謝を利用して機能画像を提供するために、薬剤の集積した部位はコントラスト良く抽出可能であるが、周辺臓器との位置関係を把握できない問題がある。そこで、近年X線CT等の形態画像とPET、SPECT等の機能画像を融合し、より高度な診断を行う技術が注目されている。本従来技術の一手法として、特開平7−20245号公報記載の技術がある。本技術では、PET検査とX線CT検査で擬似的な同時撮像を行っていた。
【0007】
特開平7−20245号公報では、X線CT検査とPET検査を連続に行う場合、図14に示すようにX線CT検査装置90とPET検査装置80を並べ、1つの寝台30、例えばベッドを共通に使用できるようにしたものである。そして、X線CT検査装置90で検査を行った後、被検体保持機構30で被検体40をPET検査装置80へ運びPET検査を行う。この場合、2つの検査を行う時間間隔が短く、被検体は比較的大きくは動かないため、2つのデータ間の位置関係がある程度分かる。その位置関係情報を用いて、PETデータとX線CTデータを結合し、被検体の病巣位置の特定を行っている。
【0008】
特開平9−5441号公報は、ベッドを兼用して、X線CT装置の撮像装置とSPECT装置の撮像装置を並列に配置した放射線検査装置を記載している。各撮像装置で得られた撮像データであるX線CTデータとSPECTデータとを結合し、被検体の病巣位置の特定を行っている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記の各公開公報に記載された放射線検査装置では、一見すると2つの撮像データの位置関係が明確であるように思えるが、被検体が両撮像装置の間で動く可能性がある。最近のPET装置の撮像分解能は約5mmであり、X線CT装置の撮像装置の分解能はそれよりも約1桁小さく約0.5mmである。そのため、両撮像装置の間で被検体が動いたり、被検体の角度が変わったりすれば両撮像装置で得られた各撮像データの対応関係が不明瞭になる。その結果、例えば、各々の撮像データを画像再構成した後、共通して各像に存在する特徴領域を抽出し、その特徴領域の位置関係から、各像の位置関係を求め、位置合わせを行う必要が生じてしまうという問題点がある。また、これらの放射線検査装置は、放射線検出器等をそれぞれ有する2つの撮像装置を備えているため装置構成が複雑であるという別の問題点もある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、各画像の位置合わせが容易で装置構成が単純化された放射線検査装置及び放射線検出方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するために、本発明は、1つの撮像装置で複数の放射線検査が実施できる構成とする。具体的に本発明は、被検体を載せるベッドと、撮像装置とを備え、被検体を取り囲むように複数の放射線検出素子を配置し、該放射線検出素子の各々に複数種の信号処理回路、及び複数の放射線検査を行うための検査シーケンスを内蔵しそのシーケンスに基づき該信号処理回路の切り替えやX線発生器の動作等を制御する放射線検査制御装置を設けることにより複数種の放射線検査が行える構成としたものである。本発明では、装置が1つの撮像装置で構成され、上記検査シーケンスに基づき自動的に複数の放射線検査が行えるため、複数の放射線検査画像の合成が極めて容易であり、検出装置や検出方法も単純化される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の放射線検査装置の好適な実施の形態を、第1実施形態〜第4実施形態として、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する放射線検査装置は、本発明の放射線検出方法を実行するものでもある。
【0013】
〔第1実施形態〕
第1実施形態の放射線検査装置1を、図1〜図6を参照して説明する。図1は、第1実施形態の放射線検査装置1の構成を示す図である。図2は、PET信号処理回路8の詳細な構成を示す図である。図3は、増幅されたγ線検出信号(以下γ線撮像信号という)を示すグラフである。図4は、図3の信号を低速波形成回路82によって処理したグラフである。図5は、CT信号処理回路9の詳細な構成を示す図である。図6は、図5の回路9における電流の蓄積状況を示すタイムチャートである。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の放射線検査装置1は、撮像装置2、寝台31、寝台移動機構32、X線発生器制御装置65、PET信号処理回路8、CT信号処理回路9、回路切替素子71、回路切替装置72、放射線検出器バイアス用電源52、CT/PET制御装置兼画像処理装置(以下「CT/PET制御装置10」という)及び表示装置11を備えている。CT/PET制御装置10は、請求項の「放射線検査制御装置」に相当する。
【0015】
このうち、撮像装置2は放射線検出器5、X線発生器6、X線発生器体軸方向移動機構(以下「体軸方向移動機構61」という)、X線発生器周方向移動機構(以下「周方向移動機構62」という)を有する。
【0016】
(放射線検出器)
図1に示す放射線検出器5は寝台31(被検体4)を取り囲むように環状に配置されており、その環状内部には寝台31が挿入される孔部50が形成される。放射線検出器5は孔部50の軸方向(以下「体軸方向」という)及び環状の径方向にも多数(合計約10000個)配列されている。放射線検出器5は例えば半導体放射線検出器であり、数mmの立方体の半導体素子部をカドミウムテルル(CdTe)で構成されている。その放射線検出器はガリウムヒ素(GaAs)やカドミウムテルル亜鉛(CZT)で構成しても良い。
【0017】
全ての放射線検出器5は放射線検出器バイアス用電源52により高電圧が印加されるようになっており、高電圧の印加及び停止はCT/PET制御装置10から受信したON及びOFFの信号で制御される。寝台31は寝台移動機構32により体軸方向に移動可能とする。寝台31の移動は、寝台移動機構32がCT/PET制御装置10から寝台移動量信号を受け、その信号に従い寝台31を駆動することで可能となる。
【0018】
(X線発生器)
図1に示すX線発生器6は、図示されていないが公知のX線管を有する。このX線管は、タングステン製のフィラメント熱陰極を有し、フィラメントから放出された電子は電圧(数百kV)を印加することにより加速され陽極であるターゲット(Mo、W等)に衝突する。電子の陽極への衝突により80keV程度のX線が発生し、X線放出用開閉器60を開くことによりX線発生器6からX線が放出される。X線形状は例えば周方向断面で60°、体軸方向に5°の拡がりを持った扇状である。つまり、ある厚みを持った扇状に照射される。
【0019】
X線発生器6は体軸方向移動機構61によって支持され、体軸方向に移動可能とされている。また、周方向移動機構62がX線発生器保持部63上に形成された周方向移動レール64によって周方向に移動することにより、X線発生器6は体軸方向移動機構61と共に周方向にも周回可能とされている。X線発生器制御装置65は、CT/PET制御装置10から受信した信号の内容(X線の発生、X線管の管電圧及び管電流の設定、開閉器60の動作、周方向及び体軸方向の移動)に従いX線発生器6を作動させるための電力を供給する。
【0020】
(回路切替素子)
図1に示す各放射線検出器5は配線51によって回路切替素子71に接続され、PET信号処理回路8、CT信号処理回路9の何れかに接続される。全ての放射線検出器5には例えば番号(アドレス或いはID)が与えられている。回路切替装置72は、例えばCT信号処理回路9に接続する放射検出器5の番号をCT/PET制御装置10から受信して認識し、指定された番号の放射線検出器5がCT信号処理回路9に接続されるように回路切替素子71を制御する。
【0021】
(PET信号処理回路)
PET信号処理回路8の詳細な構成を図2に示す。PET信号回路8は、被検体4内から180°方向に一対に放出されるγ線を一つずつ計測していくものであり、いわゆるパルスカウンティング計測用回路で構成されている。なお、被検体4は、予め18Fを含む放射性薬剤を投与(注射)してある。放射線検出器5によって検出された一つのγ線はγ線撮像信号としてPET信号処理回路8に送信され、前置増幅回路81によって増幅される。増幅された信号は図3に示すように最初に急激に変化し、その後指数関数的に減衰する波形となっている。この信号波形は低速波形整形回路82によって、例えば図4に示すような時間的にガウス分布となる信号に整形される。
【0022】
ここで、PET用の放射性薬剤から放出された陽電子が陽電子消滅により体内で生成するγ線のエネルギは先に述べたように511keVである。しかし、半導体素子内部(放射線検出素子5の内部)でγ線のエネルギ全てが電荷に変わるとは限らない。このため、γ線弁別回路83では例えば511keVより低い450keVをエネルギ設定値として、このエネルギ設定値以上のエネルギを有する信号が検出された場合のみ有効な信号とする。一方高速波形整形回路84は前置増幅器81によって増幅された信号の急峻な立ち上がりを検出し、その立ち上がりのタイミングをロジックパルス信号として出力する。同時計数回路85は、他の放射線検出器5に接続されたPET信号処理回路とも接続され、高速波形整形回路84から出力されたパルス信号を用いて同時計数を行い、γ線撮像信号に対する計数値を求める(ただしγ線弁別回路83によって有効と判定されたγ線に限る)。同時計数回路85は前述の一対のγ線を検出した2つの検出点をγ線検出の位置情報として数値化されたデータに変換し、CT/PET制御装置10に送信する。なお、PET信号処理回路8がCT/PET制御装置10に送信するデータ(以下「γ線撮像データ」という)のフォーマット例を、次の表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
なお、PET信号処理回路8は、一対のγ線を検出した2つの検出点をγ線検出の位置情報としてデータ化することを目的とした回路であるので、回路構成は上述に特定されず、公知のPET信号処理回路を用いても良い。
【0025】
(CT信号処理回路)
CT信号処理回路9の詳細な構成を図5に示す。CT信号処理回路9では、前述のX線発生器6により放出されたX線を検出し、X線検出信号(以下、X線撮像信号という)の強度をデータ化する。X線発生器6から放出されるX線は前述のγ線に比べ圧倒的に入射レートが高く、一般にいわゆる電流モード用(積分モード)計測回路で構成される。放射線検出器5は、非常に高レートのX線を検出することによって絶え間なく電荷に変換、即ち電流として出力される。この電流信号は積分型の増幅回路91によって図6に示すように蓄積されていき、ピークホールド回路92によってその信号のピーク値が保持される。以上の動作をリセット信号によって一定周期(最大数10ミリ秒程度)で繰り返されることで一定時間毎のX線強度がピークホールド回路92でデータ化されCT/PET制御装置10に送信される。なお、CT信号処理回路9がCT/PET制御装置10に送信するデータ(以下「X線撮像データ」という)のフォーマット例を、次の表2に示す。この表2に示すように、X線撮像データには、検出時刻でのX線発生器6の位置(X線発生器制御装置65から通知されたアドレス情報)が、付加される。
【0026】
【表2】
【0027】
なお、CT信号処理回路9はX線強度をデータ化することを目的とした回路であり、回路構成は上述に特定されず、公知のCT信号処理回路を用いてよい。
【0028】
(CT/PET制御装置)
図1に示すCT/PET制御装置10は専用のコンピュータもしくはワークステーションで構成されており、その内部においてPET検査及びCT検査のタイミングチャート(検査シーケンス)を作成し、そのタイミングチャートに基づいて寝台移動機構32、X線発生器制御装置65、PET信号処理回路8、CT信号処理回路9、回路切替装置72、及び放射線検出器バイアス用電源52に所望の動作を命令すると共に、γ線撮像データを用いて断層像(PET像)と、X線撮像データを元に得られる被検体内の各ボクセルにおけるX線信号減衰率を用いてX線CT像を再構成する。再構成された両断層像は表示装置11によって表示される。
【0029】
(放射線検査装置の動作)
次に、以上の構成を有する放射線検査装置1の動作を、図1〜図9を参照して説明する。図7は、CT/PET検査シーケンスを示す図(タイミングチャート)である。図8は、図7のCT/PET検査シーケンス作成のための情報入力画面例である。図9は、図7のCT/PET検査シーケンスの動作を説明する図である。
【0030】
第1実施形態では、X線CT検査(X線発生器6から放射されて被検体4の体内を透過したX線を放射線検出器5で検出する行為)及びPET検査(被検体4に投与したPET用の放射性薬剤に起因して被検体4の体内から放出されるγ線を放射線検出器5で検出する行為)を1台の撮像装置2を用いて行う。
【0031】
放射線検査を行う前に、まず被検体4に予め注射等の方法によりPET用の前述した放射性薬剤が、体内投与放射能が370MBqになるように、被検体4に投与される。放射性薬剤は、検査目的(癌の場所を把握、または心臓の動脈瘤の検査等)に応じて選ばれる。被検体4は、放射性薬剤が撮像可能な状態に集まるまでの間、待機する。その所定時間の経過によって放射性薬剤は被検体4の患部に集まる。その所定時間が経過した後、被検体4を寝台31に寝かせる。なお、検査の種類によっては、放射性薬剤を寝台31に寝かせられた被検体4に投与することもある。
【0032】
CT検査及びPET検査を実行する検査者(診療放射線技師や医師)は、検査の目的に応じて必要な情報(断層像を得たい領域(撮像領域或いは関心領域)、スライス数、スライス間隔、CTスキャンのタイミング、吸収線量等)を、CT/PET制御装置10に入力する。これは表示装置11に表示された図8に示すような情報入力画面に必要なデータを、キーボードやマウス等により入力する方法で良い。図8に示すようにコンボボックスやラジオボタン等を画面に配置すれば、入力を簡単に行うことができる。CT/PET制御装置10では、入力された情報に基づいてCT検査/PET検査シーケンス(適宜「検査シーケンス」と省略する)が作成される。ちなみに、図8の情報入力画面の「表示」ボタンをクリックすると、図7に示すような検査シーケンスがCT/PET制御装置10内部で作成されて表示装置11に表示され、「検査開始」ボタンをクリックすると検査が開始される。なお、CT/PET制御装置10では、以下のパラメータが全て一連の検査シーケンスの中でプログラム化され、検査を開始するための基準時間に対するクロック数に基づいたタイミングで実行される。
【0033】
(1)X線発生器6の周回、体軸方向の移動、照射量(管電流、管電圧)、開閉器60の開閉
(2)各放射線検出器5の回路切替及び放射線検出器バイアス用電源52への電圧の印加
(3)PET信号処理回路8及びCT信号処理回路9の作動及び停止
(4)γ線撮像データ、X線撮像データ送信の許可及び禁止
(5)寝台移動機構32の移動
【0034】
第1実施形態では、図7の[検査]の欄におけるPETとCTに示すように、PET検査を約30分行い、検査開始約10分後と約20分後にCT検査を1スライスずつ盛り込む検査シーケンスが組まれている。この検査シーケンスで、主に被検体4の胸部から腹部にかけての領域を中心に撮像するものとする。また、図7の[H.V.]の欄におけるONとOFFに示すように、PET検査の途中で放射線検出器バイアス用電源52を一旦ゼロにする動作を、3回挿入する検査シーケンスが組まれている(H.V.;High Voltage)。これは放射線検出器5を長時間使用することによる放射線検出器5の性能劣化を抑えるためである。また、図7の[X線発生器]の欄に示すように、CT検査に対応してX線発生器6が作動するようにシーケンスされている。また、図7の[回路切替]の欄に示すように各放射線検出器5が切り替えられるようにシーケンスされている。
【0035】
第1実施形態におけるCT/PET検査シーケンスを、図7及び図9を参照して説明する。なお、既に説明したとおりX線は体軸方向に照射領域が拡がるので、各放射線検出器5は、放射線検出器群5i1、5j1、5k1のように、体軸方向(図9を参照すると奥行き方向)に最大10個程度の検出器の集合体として切り替えがなされる。補足すると、1つの放射線検出器5が5mm角のサイズとすると、これを10個直列(図9の奥行き方向に10個直列)に並べると50mmになる。この50mmという値は、体軸方向に照射領域が拡がっているX線(体軸方向に5°の拡がりを持った扇状)の拡がりの程度にマッチしたものになっている。
【0036】
(ステップ10) 寝台31に寝かされた被検体4を所定の位置に移動する。放射線検出器バイアス用電源52により放射線検出器5に電圧(数100V)を印加し、回路切替装置72により全放射線検出器5をPET信号処理回路8に接続する。なお、図7における20番代のステップ数は、第4実施形態のものである。
【0037】
(ステップ11) CT/PET制御装置10からの指示によりPET信号処理回路8が作動し、PET検査を開始する。被検体4の体内から放射されたγ線は、放射線検出器5によって検出され、γ線撮像データとしてPET信号処理回路8に送信される。PET信号処理回路8では、既に説明したようにしてγ線撮像データ(表1参照)を生成し、CT/PET制御装置10へ送信する。シーケンスに従い、この状態でしばらくPET検査を行う。
【0038】
(ステップ12) 次に、放射線検出器バイアス用電源52を0Vにし、PET信号処理回路8の動作を停止する。この間はγ線撮像データの送信を禁止する。数秒もしくは数十秒経過後再度電圧を印加し、PET信号処理回路8の作動を再開し、γ線撮像データの送信を許可する。
【0039】
(ステップ13) PET検査を再開した後、CT検査に先立ち、X線発生器6の開閉器60を閉じた状態でフィラメントに電流を流して熱電子を放出し、ターゲットである陽電極との間の電圧印加によって熱電子を加速してターゲットに衝突させ、X線を発生させる。X線発生強度を所定の値(管電流、管電圧)で安定化させ、スタンバイ状態にする。そして体軸方向移動機構61を伸ばしX線発生器6を所定の位置(図1のz=z1)に移動させる。
【0040】
(ステップ14) X線が照射される領域に含まれる放射線検出器5をCT信号処理回路9に接続し、CT信号処理回路9を作動させ、X線撮像データ(表2参照)を取得する。ここでX線発生器6は体軸方向に約5°、周方向に約60°の拡がりを持ってX線を照射するため、図1の体軸方向照射領域6Z1、図9の周方向照射領域6Aに含まれる複数の放射線検出器5がCT信号処理回路9に接続される(放射線検出器5を放射線検出器群5i1等とし纏めて切り替えることで、体軸方向の5°の拡がり(6Z1,6Z2)を纏めて処理する)。X線発生器6の開閉器60を開き、周方向移動機構62を周方向に回転させることによりX線発生器6を周回させ、CT検査を行う。
【0041】
X線発生器6が回転移動すると、これに伴いX線が照射される照射領域は時々刻々変化する。このため、X線の照射領域に位置する各放射線検出器5は、X線を検出するように個々に回路が切り替えられる。
【0042】
例えば、放射線検出器群5i1、5j1はCT検査開始の時点でX線の照射領域に含まれているので、CT検査開始時点でCT信号処理回路9に切り替わっている(γ線→X線)。この状態でX線発生器6が図9の時計回りに回転すると、放射線検出器群5i1がX線の照射領域から外れるが、この外れたときは、回路切替素子71により放射線検出器群5i1の接続先がPET信号処理回路8に切り替えられ、γ線を検出する放射線検出器群として機能する(X線→γ線)。また、X線発生器6が時計回りに回転すると、放射線検出器群5k1がX線の照射領域に入る。このときは、回路切替素子71により放射線検出器群5k1は接続先がCT信号処理回路9に切り替えられ、X線を検出するように機能する(γ線→X線)。また、回転が進むと一度照射領域から外れた放射線検出器群5i1,5j1も再度X線の照射領域に入る。このとき、接続先がPET信号処理回路8からCT信号処理回路9に切り替わる(γ線→X線)。つまり、X線発生器6の移動(回転)に同期して放射線検出器群5xの接続先が切り替わる。
【0043】
なお、回路切替素子71に切替命令を出すのは、CT/PET制御装置10であるが、X線発生器6の回転と各放射線検出器群(5i1,5j1…)の切り替えのタイミングが同期するように検査シーケンスが組んであるので、切替命令は、X線発生器6の位置を検出することなく出される。つまり、各放射線検出器5の回路切り替えのタイミングは、X線発生器6の回転開始時間及び回転速度(角速度)が既知であるため、シーケンスプログラムの中で設定でき、その切替命令を回路切替装置72に送信することとしている。
【0044】
ちなみに、CT信号処理回路9に切り替えられた放射線検出器5に対しては、検出時刻でのX線発生器6のアドレス情報がX線発生器制御装置65から付加された形でX線撮像データ(表2参照)がCT/PET制御装置10に送信される。
【0045】
(ステップ15) X線発生器6の開閉器60を閉じ、回転を停止し1スライスを終了させると同時に、CT信号処理回路9に接続された放射線検出器5をPET信号処理回路8に切り替え、γ線撮像データ(表1参照)の送信を許可し、PET検査を再開する。X線管はその出力を停止させ、体軸方向移動機構61を縮めることにより撮像装置2の端部に退避させる。もしくは次回のスライス位置に移動させておいても良い。
【0046】
上記のステップ11〜15(ステップ12は必須としなくても良い)を再度実行し、約20分後は、図1のz=z2にてCT検査を行う。z=z2では体軸方向照射領域6Z2に含まれる放射線検出器5がCT信号処理回路9への接続対象となる。ここでは体軸方向照射領域6Z2に含まれている放射線検出器群5i2、5j2、5k2が(ステップ14)の5i1、5j1、5k1に相当する。z=z2においてCT検査が終了した後再度PET検査を実行してCT/PET検査を終了させる。
【0047】
CT/PET制御装置10では、PET信号処理回路8から受信したγ線撮像データを用いてPET画像を、CT信号処理回路9から得られたX線撮像データを用いてX線CT像を再構成する。
【0048】
X線CT像を求めるには、X線撮像データを元にX線の減衰率を用いて、X線発生器6とX線を検出した放射線検出器5の半導体素子部との間における体内での線減弱係数を求める。この線減弱係数を用いて、フィルタードバックプロジェクション法等の方法により各ボクセルの線減弱係数を求める。各ボクセルの線減弱係数の値を用いて各ボクセルにおけるCT値を得る。これらのCT値を用いてX線CT像データが得られる。
【0049】
PET像を求めるにはγ線撮像データの計数値を用いて、各放射線検出器5の半導体素子間における体内での消滅γ線対発生数を求める。患部で発生したγ線はは体内を透過する間に吸収減衰されるため、これらの効果を前述の減衰率データより見積もってγ線撮像データの計数値に補正をかけることにより、更に高精度なγ線撮像データの計数値を得ることも可能である。この消滅γ線対を用いて、フィルタードバックプロジェクション法等の方法により逆投影し各ボクセルの消滅γ線対発生密度を求める。この各ボクセルの消滅γ線対発生密度がPET像データである。
【0050】
これらPET像とX線CT像のデータとを合成して、両データを含む合成断層像を求め、表示装置11によって表示する。
【0051】
PET像のデータとX線CT像のデータとの合成は、両方の像データにおける、孔部50の中心軸の位置を合わせることによって、簡単にかつ精度良く行うことができる。即ち、PET像のデータ及びX線CT像のデータは、共有する放射線検出器5から出力された撮像信号に基づいて作成されるので、位置合わせを精度良く行える。そして、表示装置11に表示された合成断層像はX線CT像を含んでいるので、PET像における患部の、被検体4の体内での位置を容易に確認することができる。即ち、X線CT像は内臓及び骨の像を含んでいるので、患部(例えば癌の患部)が存在する位置を、その内臓及び骨との関係で特定することができる。
【0052】
本実施形態では、X線発生器6及び体軸方向移動機構61は環状の放射線検出器5の内側に位置しているため、それらが被検体4から放出されるγ線を遮ってそれらの真後ろに位置する放射線検出器5がそのγ線を検出できなくし、PET像の作成に必要なデータが欠損する可能性がある。しかし、本実施形態ではX線発生器6及び体軸方向移動機構61が周方向に周回しているので実質的にはそのデータの欠損は問題にならない。特に、X線発生器6の周回速度は約1秒/1スライスであるため、通常最低でも数分のオーダーを要するPET検査に比べて十分に短い。そこで、X線回転照射中は対象となる放射線検出器5だけでなく全放射線検出器5を、PET信号処理回路8からCT信号処理回路9に切り替えることとして、放射線検出器5の回路切替タイミングを簡略化しても良い。
【0053】
なお、本実施形態ではX線検査中にもγ線が放射線検出器5に入射するが、このγ線信号はX線信号強度に比べて無視できるほど十分小さい。これは、CdTe1個に入射するγ線によって1秒間あたりに発生する電荷量、即ち電流はnAオーダのレベルであるが、数100Vの電圧を印加した放射線検出器5においてはγ線を検出せずとも同程度の暗電流が流れており、これに比べて十分大きいX線信号強度が取れるようにX線が照射されるのでX線信号検出中におけるγ線入射は十分無視できる。
【0054】
以上、第1実施形態によれば、検査者が入力した情報(図8参照)を元にCT/PET制御装置10内部で検査シーケンス(図7参照)を決定し、そのシーケンスに基づいてX線発生器制御装置65や回路切替装置72をコントロールすることによって、PET検査とCT検査を織り交ぜた放射線検査を自動的に行い、PET像とCT像の合成断層像を得ることができる。また、同一の放射線検出器5を切り替えてγ線及びX線を検出するが、切替は、X線発生器6の位置を検出することなく行うことができる。また、本質的にCT画像とPET画像の合成が極めて容易であり、両画像の位置関係がずれることが殆どない。
【0055】
また、第1実施形態では30分間のPET検査中にCT検査を2回盛り込んだ方式であるが、PET検査及びCT検査の組み合わせ方法と各検査時間は本実施形態に限らない。例えば、PET検査30分の間に数分おきにz=z1、z2、z3、z4、z5(z=3〜5は図示せず)の5スライスのCT検査を繰り返すことにより、各スライスでの断層像を位置精度良く表示できる。他にも検査の最初にCT検査を行い、その後はPET検査のみを行っても良い。
【0056】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態である放射線検査装置1Aを、図10を参照して説明する。図10は、第2実施形態の放射線検査装置1Aの構成を示す図である。なお、第1実施形態と重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
第2実施形態では、放射線検出器5は、内周側に放射線検出器5a、外周側に放射線検出器5bを有している。放射線検出器5aは例えば一辺が5mmの正方形で厚みが1mmのGaAs半導体検出素子で構成され、放射線検出器5bは5mm立方体のGaAs半導体検出素子で構成されている(CdTe半導体検出素子で構成しても良い)。放射線検出器5a、5bは孔部50の体軸方向及び孔部50の周囲を囲むように環状に配置されている。なお、放射線検出器5bは径方向に向かって複数層に配置してもよい。
【0058】
放射線検出器5aは検出部が質量数の小さいGaAsで構成され、かつ厚みが1mmと薄いため、80keVのX線と比較して高エネルギである511keVのγ線の検出感度が低い。言いかえれば、X線と比較して高エネルギのγ線がX線用の放射線検出器5aに入射してもほとんどのγ線は無反応に通過する。従って放射線検出器5aを使用することにより、選択的にX線を検出することが可能である。γ線は主として放射線検出器5bで検出される。放射線検出器5bは、径方向に複数層に配置すれば実効的に厚さが増し、γ線の検出が可能になる。
【0059】
そこで、放射線検出器5aにはCT信号処理回路9及びPET信号処理回路8を用意し、放射線検出器5bにはPET信号処理回路8のみを用意する構成とする。このため、放射線検出器5aは回路切替素子71及び回路切替装置72により切り替えられ、γ線とX線とを交互に検出する。一方、放射線検出器5bについてはCT信号処理回路9及び回路切替の必要が無いことから、回路数低減の効果があり、CT/PET検査の間は常にPET検査を行い、γ線撮像データを送信する。
【0060】
つまり、第2実施形態では、放射線検出器5aが第1実施形態(図1参照)の放射線検出器5のように切り替えられてγ線及びX線を検出する。また、放射線検出器5bは、X線照射の有無にかかわらずγ線を常時検出する。これにより、第1実施形態と同様に、確実にPET検査及びCT検査を行うことができる。
【0061】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態である放射線検査装置1Bを、図11を参照して説明する。図11は、第3実施形態の放射線検査装置1Bの構成を示す図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図11に示すように、放射線検出器5aにはCT信号処理回路9のみを、放射線検出器5bにはPET信号処理回路8のみを用意し、回路切替素子71及び回路切替装置72を省略する。この場合、放射線検出器5a及びCT信号処理回路9はCT検査時のみ動作し、X線撮像データ送信を許可する。一方放射線検出器5bについては常にPET検査を行い、γ線撮像データを送信する。この第3実施形態によれば、回路切替が全く不要になり検査シーケンスは簡略化される。もちろん、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、確実にPET検査及びCT検査を行うことができる。
【0063】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態である放射線検査装置1Cを図12及び図13を用いて説明する。図12は、第4実施形態の放射線検査装置1Cの構成を示す図である。図13は、第4実施形態の放射線検出器5、第1切替素子731、検出器バイアス用電源52等の放射線検出器5周辺の詳細構成を示す図である。なお、第1実施形態〜第3実施形態と重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
第4実施形態の放射線検査装置1Cの各放射線検出器5は、配線51によって第1回路切替素子731(図13参照)に接続され、PET信号処理回路8、CT信号用配線53の何れかに接続される。各放射線検出器5から伸びたCT信号用配線53は、第2回路切替素子741にてCT信号処理回路群9Aに接続される。
【0065】
CT信号処理回路群9AはCT信号処理回路9(図5参照)の集合体であり、CT検査の1スライスを取得する際に必要な放射線検出器の数に相当する数のCT信号処理回路9(図5参照)を内部に備えている。従って、CT信号用配線53は全放射線検出器5の数だけあるが、その内CT信号処理回路群9Aに接続されるのは1スライス取得分に必要な分のみである。CT信号処理回路群9Aに接続されるCT信号用配線53はスライス位置、即ちX線発生器6の位置によって決まる。例えばX線発生器6がz=z1にある場合、その体軸方向照射領域6Z1に含まれる全ての放射線検出器5に対応するCT信号用配線53がCT信号処理回路群9Aとの接続対象となる。
【0066】
第1回路切替装置73及び第2回路切替装置74は、CT/PET制御装置10回路切替の対象となる放射線検出器5の番号を指定する信号を受信し、その指定に基づいて第1回路切替素子731及び第2回路切替素子741の動作を制御するものである。第4実施形態の放射線検査装置の他の構成は、実施形態1と同じであるので説明を省略する。
【0067】
この第4実施形態における、CT/PET検査シーケンスを図7、図12及び図13を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様に、PET検査を30分行い、途中にCT検査を2回(検査開始10分後と20分後)行うタイミングで、主に被検体の胸部から腹部にかけての領域を中心に撮像するものとする。
【0068】
(ステップ20) 寝台31に寝かされた被検体4は所定の位置に移動する。放射線検出器バイアス用電源52により放射線検出器5に電圧(数100V)を印加し、第1回路切替装置73により全放射線検出器5がPET信号処理回路8に接続される。
【0069】
(ステップ21) CT/PET制御装置10よりPET信号処理回路8が作動し、PET検査が開始する。放射線検出器によって検出されたγ線はPET信号処理回路8によって処理され、γ線撮像データがCT/PET制御装置10へ送信される。
【0070】
(ステップ22) 放射線検出器バイアス用電源52を0Vにし、PET信号処理回路8の動作を停止する。この間はγ線撮像データの送信を禁止する。数秒もしくは数十秒後再度電圧を印加し、PET信号処理回路8の作動を再開し、γ線撮像データの送信を許可する。
【0071】
(ステップ23) CT検査に先立ち、X線発生器6の開閉器60を閉じた状態でフィラメントに電流を流して熱電子を放出させ、ターゲットである陽電極との間に電圧印加によって熱電子をターゲットに衝突させX線を発生させる。X線発生強度を所定の値(管電流、管電圧)で安定化させ、スタンバイ状態にする。そして体軸方向移動機構61を伸ばしX線発生器6を所定の位置(図12のz=z1)に移動させる。X線発生器6の体軸方向照射領域6Z1に含まれる全ての放射線検出器5に対応するCT信号用配線53(ここではCT信号用配線群53Z1に相当)とCT信号処理回路群9Aが、第2回路切替装置74によって接続される。
【0072】
(ステップ24) X線が照射される領域に含まれる放射線検出器5を第1回路切替装置73によりCT信号用配線53に接続し、CT信号処理回路群9Aを作動させ、X線撮像信号を取得する。X線発生器6の開閉器60を開き、周方向移動機構62を周方向に回転させることによりX線発生器6を周回させ、CT検査を行う。ここで、X線発生器6の回転移動に伴いX線が照射される領域の放射線検出器群は時々刻々変化するため、各放射線検出器5は個々に回路が切り替わる。CT信号用配線53に切り替えられた放射線検出器5に対しては、検出時刻でのX線発生器6の位置(アドレス情報)がX線発生器制御装置65から付加された形でX線撮像データがCT/PET制御装置10に送信される(表2参照)。
【0073】
以上述べた各放射線検出器5の第1回路切替動作タイミングは、X線発生器6の回転開始時間及び回転速度が分かれば既知であるため、シーケンスプログラムの中で設定でき、その命令信号を第1回路切替機構に送信することで可能となる。また、X線回転照射中は1スライス取得においてX線が照射される領域全ての放射線検出器5をCT信号用配線53に切り替えて、放射線検出器5の第1回路切替タイミングを簡略化しても良い。
【0074】
(ステップ25) X線発生器6の開閉器60を閉じ、回転を停止し1スライスを終了させると同時に、CT信号用配線53に接続された放射線検出器5をPET信号処理回路8に切り替え、γ線撮像データの送信を許可し、PET検査を再開する。X線管はその出力を停止させ、体軸方向移動機構61を縮めることにより撮像装置2の端部に退避させる(もしくは次回のスライス位置z=z2に移動させておいても良い)。CT信号処理回路群9Aと接続されていたCT信号用配線群53Z1は切り離され、次回CT検査のスライス位置であるz=z2にX線発生器6がある場合の体軸方向照射領域6Z2に含まれる全ての放射線検出器5に対応するCT信号用配線53(ここではCT信号用配線群53Z2に相当)とCT信号処理回路群9Aが、第2回路切替装置74によって接続される。
【0075】
上記のステップ21〜25(ステップ22は必ずしも入れなくても良い)を再度実行し、次回はz=z2にてCT検査を行い、再度PET検査を実行してCT/PET検査を終了させる。
【0076】
この第4実施形態では、30分間のPET検査中にCT検査を2回盛り込んだ方式であるが、PET検査及びCT検査の組み合わせ方法と各検査時間は本実施形態に限らない。例えば、PET検査30分の間に数分おきにz=z1、z2、z3、z4、z5(z=3〜5は図12に示さず)の5スライスのCT検査を繰り返すことにより、各スライスでの断層像を位置精度良く表示できる。他にも検査の最初にCT検査を行い、その後はPET検査のみを行っても良い。例えば検査の最初にCT検査を行い、その後はPET検査のみを行っても良い。
【0077】
以上本実施形態によれば、第2回路切替装置74を用いてCT信号処理回路群9Aを切り替えることにより、CT検査で1スライスを得るのに必要最低限の数のCT信号処理回路を常に流用することができるため、CT信号処理回路数低減の効果がある。
また、第2の実施形態で述べたように放射線検出器5aに対してはCT/PET検査を、放射線検出器5bに対してはPET検査のみを行う場合であれば、放射線検出器5bに対しては第1回路切替装置73及び第1回路切替素子731を省略しPET信号処理回路8を直接接続しても良い。この場合、CT信号用配線53は放射線検出器5aだけに備えれば良い。また、第3の実施形態で述べたように放射線検出器5aではCT検査のみを、放射線検出器5bではPET検査のみを行う場合であれば、放射線検出器5aにはCT信号用配線53を、放射線検出器5BにはPET信号処理回路8を直接接続しても良い。
【0078】
以上説明した第1〜第4実施形態によれば、検査者が入力した情報(図8)をもとに放射線検査制御装置内部(CT/PET制御装置10内部)で検査シーケンスを決定し、そのシーケンスに基づいてX線発生器制御機構や回路切替機構をコントロールすることによって、1つの撮像装置で例えばCT検査とPET検査といった、複数の放射線検査を織り交ぜた放射線検査を自動的に行うことができる。その結果、得られたデータの位置合わせは、実に容易に行うことができ、複数の撮像装置を必要とした従来装置に比べ装置構成が単純である。また、ある特定の検査に対して使用する信号処理回路を1つの回路群に集約し、その検査で対象となる放射線検出器だけに適宜接続することにより、信号処理回路数の節約の効果がある。また、CT/PET制御装置10は、自己生成した検査シーケンスに従い、X線発生器の移動(回転)に同期して、放射線検出器5の接続先(PET信号処理回路8、CT信号処理回路9)を切り替えるが、この際、X線発生器6の位置を監視しつつ放射線検出器5の接続先を切り替える必要がないので、装置の構成を簡略化することができる。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、各画像の位置合わせが容易で装置構成が単純化された放射線検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態である放射線検査装置の構成図である。
【図2】 図1に示すPET信号処理回路の詳細構成図である。
【図3】 図2に示す前置増幅回路の出力波形を示す説明図である。
【図4】 図2に示す低速波形整形回路の出力波形を示す説明図である。
【図5】 図1に示すCT信号処理回路の詳細構成図である。
【図6】 図5に示す増幅回路の出力波形を示す説明図である。
【図7】 本発明の第1の実施形態である放射線検査装置のCT/PET検査シーケンスを示す説明図である。
【図8】 図7のCT/PET検査シーケンス作成のための情報入力画面例である。
【図9】 図7のCT/PET検査シーケンスの動作を説明するために引用した図である(図1のI−I断面図である)。
【図10】 本発明の第2実施形態である放射線検査装置の構成図である。
【図11】 本発明の第3実施形態である放射線検査装置の構成図である。
【図12】 本発明の第4実施形態である放射線検査装置の構成図である。
【図13】 本発明の第4実施形態である放射線検査装置の放射線検出器の周辺構成を詳細に示す説明図である。
【図14】 従来技術における放射線検査装置の概念図である。
【符号の説明】
1、1A、1B、1C…放射線検査装置、2…撮像装置、30、31…寝台、32…寝台移動機構、4、40…被検体、5、5a、5b…放射線検出器、5i1、5j1、5k1、5i2、5j2、5k2…放射線検出器群、51…配線、52…検出器バイアス用電源、53…CT信号用配線、53Z1、53Z2…CT信号用配線群、50…孔部、6…X線発生器、60…開閉器、61…体軸方向移動機構、62…周方向移動機構、63…X線発生器保持部、64…周方向移動レール、65…X線発生器制御装置、6A…周方向照射領域、6Z1、6Z2…軸方向照射領域、71…回路切替素子、72…回路切替装置、73…第1回路切替装置、731…第1回路切替素子、74…第2回路切替装置、741…第2回路切替素子、8…PET信号処理回路、81…前置増幅回路、82…低速波形整形回路、83…γ線弁別回路、84…高速波形整形回路、85…同時計数回路、80…PET検査装置、9…CT信号処理回路、91…増幅回路、92…ピークホールド回路、90…CT検査装置、9A…CT信号処理回路群、10…CT/PET制御装置、11…表示装置
Claims (9)
- 被検体を載せる寝台と、撮像装置と、放射線検査制御装置を備え、
前記撮像装置は、前記被検体にX線である第2放射線を照射する第2放射線発生器と、前記第2放射線発生器の位置を移動させる第2放射線発生器移動手段と、前記被検体から放出されたγ線である第1放射線及び前記被検体を透過した第2放射線の2種類の放射線の双方をそれぞれ検出する複数の放射線検出器と、前記各放射線検出器に対して第1放射線検出信号を処理する第1信号処理回路と第2放射線検出信号を処理する第2信号処理回路の双方を備えた信号処理回路系と、前記複数の放射線検出器の接続先を、前記第1信号処理回路にするか前記第2信号処理回路にするかを切り替える回路切替素子を有し、
前記複数の放射線検出器は環状に配置され、その内側に前記第2放射線発生器が前記第2放射線発生器移動手段により周回駆動可能に配置され、
前記放射線検査制御装置は、前記第2放射線発生器の移動の制御、前記第2放射線発生器による第2放射線照射の開始と終了の制御、及び前記第2放射線発生器の照射先にある放射線検出器が第2放射線を検出するように前記信号処理回路系における第1放射線検出信号の信号処理タイミングと第2放射線検出信号の信号処理タイミングの制御を行う機能を有し、
前記回路切替素子が、前記信号処理タイミングに基づいて前記放射線検出器の出力先を切り替えること、
を特徴とする放射線検査装置。 - 前記放射線検出器は半導体放射線検出器であることを特徴とする請求項1に記載の放射線検査装置。
- 前記半導体放射線検出器に電気的バイアスを与えるバイアス電圧印加手段を備え、前記放射線検査制御装置は、前記バイアス電圧印加手段に対してバイアスの供給及び停止を命令する機能を有したことを特徴とする請求項2に記載の放射線検査装置。
- 前記放射線検査制御装置から前記第2放射線発生器、前記第2放射線発生器移動機構、前記バイアス電圧印加手段、前記第1信号処理回路、前記第1信号処理回路系、及び前記第2信号処理回路へ送信する処理命令のうち、少なくとも1つ以上の処理命令は、検査開始からの経過時間に基づいたタイミングで送信されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線検査装置。
- 前記タイミングを決定する検査シーケンスは、検査者が前記放射線検査制御装置に入力する放射線検査情報に基づいて前記放射線検査制御装置で作成されることを特徴とする請求項4に記載の放射線検査装置。
- 前記第2放射線発生器は前記被検体への照射開始時間に先立ち、照射開始から終了までの間変動の無い線量で第2放射線を照射できるように第2放射線出力を安定させた状態にしておくことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射線検査装置。
- 前記第1放射線検出データに基づいて前記被検体の第1断層像のデータを作成し、前記第2放射線検出データに基づいて前記被検体の第2断層像のデータを作成し、かつ前記第1断層像のデータと第2断層像のデータとを合成した合成断層像のデータを作成する断層像データ作成装置を備えた請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の放射線検査装置。
- 前記第1断層像がPET像であり、前記第2断層像がX線CT像であることを特徴とする請求項7に記載の放射線検査装置。
- 被検体から放出された第1放射線及び第2放射線発生器から照射されて前記被検体を透過した第2放射線について、
前記被検体を取り囲んで筒状に配置した複数の放射線検出器の出力先を、第1放射線検出信号を処理する第1信号処理回路にするか第2放射線検出信号を処理する第2信号処理回路にするかを切り替える回路切替素子を用いて切り替えることで、前記第1放射線及び前記第2放射線の双方を前記複数の放射線検出器のそれぞれで検出する放射線検出方法であって、
前記第1放射線はγ線であり、前記第2放射線はX線であり、
前記複数の放射線検出器は環状に配置され、その内側に前記第2放射線発生器がこの第2放射線発生器を移動させる第2放射線発生器移動手段により周回駆動可能に配置され、
前記第2放射線発生器を周回駆動して第2放射線を照射すると、その照射先にある放射線検出器が照射された第2放射線を検出するように、予め定めたシーケンスで前記第2放射線発生器を駆動すると共に、予め定めたシーケンスで前記複数の放射線検出器の出力先を切り替えること、
を特徴とする放射線検出方法。
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