JP3823773B2 - 鉄道車両用車輪およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両用車輪およびその製造方法に関し、具体的にはシャッタードリムの発生を実用上問題ない程度に防止することができる鉄道車両用車輪およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、鉄道による貨物輸送の効率化を図るため、貨車1両当たりの貨物積載量は、年々増加する傾向にあり、今後もこの傾向は強まることが予想される。このため、各貨車の車輪に負荷される重量 (以下、「輪重」という) も増加する傾向にある。
【0003】
このような輪重の増加に伴って、「シャッタードリム」といわれる鉄道車両用車輪のリム部の損傷が発生し易くなる。このシャッタードリムは、転動疲労によって、鉄道車両用車輪の踏面下内部(リム部)に存在する介在物が起点となって、剪断型 (モードII) の亀裂が伸展することによって鉄道車両用車輪の踏面の剥離や損傷に至る損傷であり、最悪の場合には鉄道車両用車輪の脱線に至ることもある。このため、今後、輪重の増加を図るには、シャッタードリムの発生を防止することが不可欠になるが、現状では、シャッタードリムの発生を防止することを目的とした技術は、開示されていない。
【0004】
しかしながら、シャッタードリムは、前述したように、介在物や鋳造欠陥を起点とした疲労破壊現象として捉えることができるため、介在物や鋳造欠陥の発生を抑制することが有効であると推定される。したがって、シャッタードリムの発生を防止するには、鉄道車両用車輪の母材となる溶鋼の清浄度を向上させることが有効であることは容易に想像できる。なお、以降の説明では、シャッタードリムの起点となる介在物および鋳造欠陥を合わせて、単に「欠陥」と総称することとする。
【0005】
一方、シャッタードリムとは損傷形態が異なるものであるが、介在物を起点としたモードI型の疲労破壊による損傷を抑制して疲労強度を向上するには、最大介在物寸法を小さくすることが有効であることが知られている。
【0006】
また、B.CATOT et al.は、車輪の清浄度向上に関して、ladle refining (転炉精製) 後にR-H 真空脱ガス炉を用いて、Si−Ca処理とdeep真空脱ガス処理とを行う方法が有効であるとともに、溶鋼の成分としてはS量を低減することが有効であると、報告している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、鉄道車両用車輪の内部の欠陥の周辺における発生応力が一定であると仮定すれば、欠陥の品質があるレベル以下、具体的にはある許容欠陥寸法以下に抑制されれば、シャッタードリムの発生を防止できることが推定される。しかし、この許容欠陥寸法が如何なる値であるかは、現状では不明である。
【0008】
また、鉄道車両用車輪の内部の欠陥寸法が一定であると仮定すれば、輪重と車輪径とに基づいて決定される、欠陥の周辺における発生応力があるレベル以下、具体的には損傷が生じない許容応力 (各車輪径に対する許容荷重) 以下に抑制されれば、シャッタードリムの発生を防止できることが推定される。しかし、現状では、この許容応力も如何なる値であるか不明である。
【0009】
このため、現状では、鉄道車両用車輪を設計および製造するに際して、シャッタードリムの発生を確実に防止することはできず、使用時における定期的な点検によってシャッタードリムの発生を未然に防止するしかなかった。
【0010】
本発明は、このような従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、シャッタードリムの発生を実用上問題ない程度に防止することができる鉄道車両用車輪およびその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
破壊力学的な考え方に基づけば、鉄道車両用車輪の亀裂の進展は、応力拡大係数範囲 (ΔK) >下限界応力拡大係数範囲 (ΔKth) の関係が満足された時に発生することが知られている。
【0012】
ここで、介在物を起点としたモードI型の疲労破壊では、介在物と同寸法の亀裂が存在するとの前提にたって、応力拡大係数範囲ΔKを算出し、上記の関係式を用いて介在物からの亀裂の進展を評価することができる。
【0013】
そこで、本発明者らはさらに検討を重ねた結果、以上の関係をシャッタードリム、すなわちモードII型の疲労損傷にも適用すること、具体的には、数種の車輪鋼についてモードIIの下限界応力拡大係数範囲(ΔKIIth)を求め、車輪径と使用輪重の任意の組合せに対して、内部に存在する許容欠陥寸法を定めることにより、シャッタードリムの発生を実用上問題ない程度に防止することができる鉄道車両用車輪を提供できることを知見し、本発明を完成した。
【0020】
本発明は、鉄道車両用車輪の製造方法であって、この鉄道車両用車輪に作用する輪重とこの鉄道車両用車輪の形状およびレールの形状とからヘルツ応力を求め、求めたヘルツ応力を用いて鉄道車両用車輪にシャッタードリムが発生する位置における剪断応力変動範囲を求め、求めた剪断応力変動範囲と、鉄道車両用車輪の内部に存在する欠陥から、この欠陥と等価な面積のペニーシェープ型内部亀裂のモード II 応力拡大係数範囲を求め、このモード II 応力拡大係数範囲が、モード II 下限界応力拡大係数範囲と同じ値となるように許容欠陥寸法を求め、超音波探傷により測定する鉄道車両用車輪の内部に存在する欠陥の寸法がこの許容欠陥寸法以下となるように検査する工程を含むことを特徴とする鉄道車両用車輪の製造方法である。
【0021】
この本発明にかかる鉄道車両用車輪の製造方法においては、acrを許容欠陥の直径(mm)とし、Pstを設計時に想定される静的輪重の最大値(kN)とし、Dwは新製時の車輪の直径(inch)とし、さらにΔKIIthをモード下限界応力拡大係数範囲(MPa√m)とした場合に、許容欠陥寸法が、下記(1)式におけるモードII下限界応力拡大係数範囲(ΔKIIth)に、18MPa√mまたは20MPa√mを代入することによって、求められることが望ましい。
acr
={84.22ΔKIIth/(1.2Pst(0.002166Dw 2−0.2422Dw+9.128)+1000)}2
・・・・・・・・・(1)
【0022】
本発明にかかる鉄道車両用車輪の製造方法をより具体的に説明すれば、以下の通りである。
工程▲1▼:車輪リム中の最大内部欠陥寸法を測定する。
工程▲2▼:測定された最大欠陥寸法と、予め決定された本車輪における欠陥寸法と許容荷重との関係を比較し、最大許容荷重を決定する。
工程▲3▼:さらにこれらの工程▲1▼および▲2▼において、車輪リム部の下限界モードII応力拡大係数範囲を見積もり、複数の欠陥寸法に対する輪重を決定することにより欠陥寸法と許容荷重との関係を求めるステップを含む。この時、上記輪重は本車輪リム部の下限界応力拡大係数範囲より大きくないモードII応力拡大係数に対応する。
工程▲4▼:工程▲1▼〜工程▲3▼において、車輪の最大負荷荷重を提供し、最大許容荷重が最大負荷荷重より小さい状態で使用された車輪は廃却されることを含む。
工程▲5▼:工程▲1▼〜工程▲3▼において、車輪に負荷される荷重として最大許容荷重より大きくない荷重を承認するステップを含む。
工程▲6▼:工程▲1▼〜工程▲3▼において、最大負荷荷重の発生が想定される鉄道用車輪におけるシャッタードリム破壊を防止する方法として、以下のステップを含む。
【0023】
(i) リム、ハブおよびリムとハブとを接続する板部を有する鉄道用車輪を用意する。
(ii)車輪リム中の最大内部欠陥寸法を測定する。
(iii) この車輪が最大荷重を受けた時、最大欠陥に発生するモードII応力拡大係数を見積もる。
(iv)モードII応力拡大係数範囲と下限界応力拡大係数範囲とを比較することによって欠陥から亀裂が進展するか否かを判断する。
(v) 最大荷重を受けた時、欠陥から亀裂が進展すると判断される場合、車輪を廃却する。
【0024】
このように、本発明によれば、本発明で規定される許容欠陥寸法と許容応力 (各車輪径に対する許容輪重) との関係を満足することにより、確実にシャッタードリムの発生を防止することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる鉄道車両用車輪およびその製造方法の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態の鉄道車両用車輪の製造方法を用いて、耐シャッタードリム車輪の許容欠陥寸法を求める手順の一例を示すためのフロー図である。このフロー図は、シャッタードリム損傷を欠陥と同寸法の亀裂進展として捉え、破壊力学的に亀裂の進展性を評価することによって、許容欠陥寸法を得るものである。
【0027】
以下、図1に示すフロー図を参照しながら、許容欠陥寸法を得る過程を詳細に説明する。
図1におけるステップ (以下、単に「S」と略記する) 1において、輪重と車輪直径との関係を求める。
【0028】
図2は、使用輪重(設計時に想定される最大値)と車輪直径との関係の一例を示すグラフである。図2における各プロットは、現在の実績値であり、実線はプロット点の上限、中間もしくは下限を示す近似線であり、それぞれ(2) 式により表される。
【0029】
PST=2.232 Dw +A ・・・・・・・・・(2)
ここで、PSTは静的輪重(kN)を示し、Dw は車輪径(inch)を示し、Aは103.8(上限値) 、45.9 (下限値) 、74.85(中間値) である。
【0030】
S1においては、この図2にグラフで示す関係により、輪重と車輪直径との関係が求められる。そして、S2に移行する。
S2において、まず、輪重、ヘルツ応力および車輪径との関係を近似する。図3は、動的輪重PDYとヘルツ応力Pmax (MPa) との関係の一例を示すグラフである。図3のグラフにおけるヘルツ応力Pmax は、動的輪重PDYと車輪形状とレール形状からヘルツの弾性接触理論を用いて算出した。ここで、動的輪重PDYは(3) 式により表される。
【0031】
PDY=1.2 PST ・・・・・・・・・(3)
ここで、PDYは動的輪重(kN)を示す。なお、動的荷重係数は1.2 である。
図3のグラフにおいて、25インチ車輪および50インチ車輪それぞれの上限と下限とをそれぞれ結ぶ線分を、(4) 式および(5) 式によりそれぞれ近似した。
【0032】
25インチ車輪:Pmax = 4.143PDY+1040.4 ・・・・・・・(4)
50インチ車輪:Pmax = 2.630PDY+ 958.1 ・・・・・・・(5)
(4) 式および(5) 式より、25インチ車輪と50インチ車輪では両式のY切片がほぼ同じ約1000であり、式の傾きのみが異なることがわかる。そこで、(4) 式および(5) 式の切片を1000として新たに求め直した傾き (Pmax −1000)/PDYと車輪径との関係を図4にグラフで示す。本式は、動的荷重PDYが0KNの場合、ヘルツ応力Pmax が1000MPa となることを示しており、物理的には不具合な点があるが、上限と下限との間の近似としては問題ないことを確認している。
【0033】
図4に示すグラフから、上限値、中間値および下限値に対する傾きのプロットが、各車輪径毎に一致しており、図3のグラフにおける25インチ車輪および50インチ車輪それぞれの上限と下限とをそれぞれ結ぶ線分の傾きの車輪径依存性を、一本の曲線で近似することが可能であることがわかる。この曲線は、(6) 式により表される。
【0034】
Pmax =PDY(0.002166 Dw 2 −0.2422Dw +9.128)+1000 ・・・・(6)
このようにして、S2において、車輪とレールとの間の接触応力状態が算出され、S3に移行する。
【0035】
S3において、欠陥と同寸法のペニーシェープ型内部亀裂のモードII応力拡大係数範囲 (ΔKII) が算出される。
すなわち、シャッタードリムの起点位置は、文献によると踏面下深さ10〜20mmの領域、一説によると深さ10〜40mmの領域で発生する。この起点位置におけるヘルツ応力Pmax と剪断応力τxyとの関係は、(7) 式により表される。
【0036】
τxy=0.2 Pmax ・・・・・・・(7)
ヘルツの弾性接触理論で求めた剪断応力τxyは、深さ10〜40mmの範囲内では、深さ10mmが最も大きいため、深さ10mmでの関係を(7) 式に用いた。上式は、円筒−円筒接触状態に対応したものであり、車輪−レール間の球−円筒接触状態 (接触面が楕円形状となる状態) では、τxy<0.2 Pmax となるが、安全側 (τxyを大きく見積もる側) として(7) 式を採用した。
【0037】
さらに、シャッタードリムを含む疲労損傷には、接触前後における剪断応力の変動範囲Δτが重要な影響因子となる。これは(8) 式により表される。
Δτ=2τxy ・・・・・・・(8)
そして、本実施の形態では、この剪断応力の変動範囲Δτより欠陥と同寸法のペニーシェープ型内部亀裂のモードII応力拡大係数範囲 (ΔKII) を(9) 式を用いて算出する。
【0038】
ΔKII=0.9387Δτ√a ・・・・・・・(9)
この(9) 式において、aは欠陥直径を示す。
このようにして、S3において、欠陥と同寸法のペニーシェープ型内部亀裂のモードII応力拡大係数範囲 (ΔKII) を算出し、S4に移行する。
【0039】
S4において、数種の車輪鋼につき、Y.Murakami et al. の提案する方法に従い、モードII亀裂進展試験を行う。図5はモードII亀裂進展試験の状況を模式的に示す説明図である。図5に示すように、モードII亀裂進展試験は、シェブロン型切欠きを付与した試験片を用い、図5に示すように試験片全体に曲げ (剪断) 荷重を負荷することにより、切欠き底に剪断応力を生じさせて、モードII型の亀裂を進展させる試験である。
【0040】
S4では、このモードII亀裂進展試験により、複数の試験片を用いて途中止め試験を行い、破面観察によって疲労亀裂進展量を測定する。そして、S5へ移行する。
【0041】
S5では、S4でのモードII亀裂進展試験により得た亀裂長さと繰返し数との関係を、亀裂進展速度とモードII応力拡大係数範囲ΔKIIとの関係に変換し、図6のグラフを作成する。
【0042】
図6に示すグラフから、HV :294 〜360 の車輪鋼のモードIIの下限界応力拡大係数範囲 (ΔKIIth) は15〜20MPa √a であることがわかる。本実施の形態では、許容欠陥寸法を求めるために、18MPa √m(ランクI) および20MPa √m(ランクII) の2水準の下限界応力拡大係数範囲ΔKIIthを用いた。
【0043】
すなわち、ランクIはシャッタードリム損傷防止効果が極めて高いレベルを示し、ランクIIはシャッタードリム損傷防止効果を有するレベルを示す。
【0044】
S5において、このようにしてモードIIの下限界応力拡大係数範囲 (ΔKIIth) の評価を行い、S6へ移行する。
【0045】
S6において、得られたモードII応力拡大係数範囲ΔKIIと、下限界応力拡大係数範囲ΔKIIthとを比較することにより、欠陥からのモードII亀裂進展挙動は、以下のように示される。すなわち、
(a)ΔKII>ΔKIIthの場合には、欠陥から亀裂が進展する。
(b)ΔKII<ΔKIIthの場合には、欠陥から亀裂が進展しない。
(c)ΔKII=ΔKIIthの場合には、欠陥寸法と許容寸法とが等しくなる。
・・・・・・・(10)
【0046】
このため、ΔKII=ΔKIIthとして得られる、車輪径と使用輪重の任意の組合せに対する車輪リム中に存在する許容欠陥寸法は、(3) 式、(6) 〜(10)式を組み合わせて、(11)式として表される。
acr={84.22 ΔKIIth/(1.2 PST(0.002166Dw 2-0.2422D w +9.128)+1000)}2
・・・・・・・(11)
【0047】
ここで、acrは許容欠陥の直径(mm)を示し、PSTは設計時に想定される静的輪重の最大値(kN)を示し、Dw は新製時の車輪直径(inch)を示し、ΔKIIthはモードII下限界応力拡大係数範囲(MPa√m ) を示す。
【0048】
このようにして、S6において許容欠陥の直径acr(mm)が求められる。
ここで、(11)式における下限界応力拡大係数範囲ΔKIIthに、18MPa √m(ランクI) 、20MPa √m(ランクII) を代入して得られた許容欠陥寸法の具体的数値を表1に、またその静的輪重および車輪直径 (新製時) との関係を図7にグラフで示す。
【0049】
また、得られた許容欠陥寸法acrの妥当性を評価するため、この許容欠陥寸法とシャッタードリム損傷の起点となった介在物寸法とを比較した。なお、J.J.Maraisによって、シャッタードリム損傷の実例として、以下のデータが報告されている。
【0050】
輪重:130kN
車輪直径 (最小) :34.25 インチ(870mm)
起点介在物直径:1mm
【0051】
【表1】
【0052】
表1によれば、上記条件 (輪重と車輪直径) に対応する許容欠陥寸法は直径で0.969mm(ランクI) と1.196mm ( ランクII) となり、実際の起点欠陥寸法と符合する。すなわち、ランクIの許容欠陥寸法である0.969mm 以下となるように、介在物の大きさを管理すれば、シャッタードリムの発生を確実に防止できると考えられる。したがって、S6において求めた許容欠陥寸法acrは、シャッタードリムの発生を確実に防止するために妥当なレベルにあると考えられる。
【0053】
次に、鉄道車両用車輪中に存在する介在物の寸法が、S6において求めた許容欠陥寸法acrを満足するための製造方法について説明する。
本実施の形態の鉄道車両用車輪は、周知慣用の手段によって製造される。例えば、 AARクラスCに相当する成分系となるように転炉にて精製した溶鋼を、R-H 真空脱ガス炉により真空脱ガス処理し、連続鋳造によって直径450mm のビレットを製造する。このビレットを切断し、鍛造、圧延さらに熱処理 (踏面焼入れ) し、車輪の最終形状を得た。
【0054】
そして、図8に示す、この車輪リム内部について超音波探傷を行った。この時、超音波検査のスペックを、表1に示す許容欠陥寸法 (ランクIまたはランクII) 以下に設定する。ランクIまたはランクIIのいずれを適用するかは、使用される車両の安全に対する重要度 (例えば客車か貨車か) を考慮して適宜決定する。
【0055】
これ以外は、鉄道車両用車輪についての周知慣用の手法によればよいが、以下に列記する事項、すなわち▲1▼高炉による銑鉄の使用、▲2▼転炉精製、▲3▼真空脱ガス処理 (Ruhrstahl-Heraus炉) 、▲4▼連続鋳造(360〜450mm 径ブルーム、ArまたはNガスによるタンディッシュシールド) 、▲5▼鍛造、▲6▼圧延等の適当な手段によって、介在物の低減を図ることがより望ましい。
【0056】
本実施の形態では、超音波探傷の探傷波の周波数を5MHz とするとともに、輪重:147kN 、車輪直径:840mm(33インチ) 、欠陥寸法:0.7mm 以下となるように、超音波探傷を行った。なお、欠陥寸法0.7mm とは、(11)式および表1から得られる許容欠陥寸法以下の値である。
【0057】
得られた鉄道車両用車輪を実際に数年間使用したところ、シャッタードリムの損傷は全く発生しなかった。
【0058】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、シャッタードリムの発生を実用上問題ない程度に防止することができる鉄道車両用車輪およびその製造方法を提供することができた。
【0059】
かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の鉄道車両用車輪の製造方法を用いて、耐シャッタードリム車輪の許容欠陥寸法を求める手順の一例を示すためのフロー図である。
【図2】使用輪重(設計時に想定される最大値)と車輪直径との関係の一例を示すグラフである。
【図3】動的輪重とヘルツ応力との関係の一例を示すグラフである。
【図4】 (4) 式および(5) 式の切片を1000として新たに求め直した傾き (Pmax −1000)/PDYと車輪径との関係を示すグラフである。
【図5】モードII亀裂進展試験の状況を模式的に示す説明図である。
【図6】モードII亀裂進展試験により得た亀裂長さと繰返し数との関係を、亀裂進展速度とモードII応力拡大係数範囲ΔKIIとの関係に変換した結果を示すグラフである。
【図7】静的輪重および車輪直径 (新製時) との関係を示すグラフである。
【図8】車輪リム内部を模式的に示す説明図である。
Claims (2)
- 鉄道車両用車輪の製造方法であって、該鉄道車両用車輪に作用する輪重と該鉄道車両用車輪の形状およびレールの形状とからヘルツ応力を求め、求めた該ヘルツ応力を用いて鉄道車両用車輪にシャッタードリムが発生する位置における剪断応力変動範囲を求め、求めた該剪断応力変動範囲と、前記鉄道車両用車輪の内部に存在する欠陥から、該欠陥と等価な面積のペニーシェープ型内部亀裂のモード II 応力拡大係数範囲を求め、求めた該モード II 応力拡大係数範囲が、モード II 下限界応力拡大係数範囲と同じ値となるように許容欠陥寸法を求め、超音波探傷により測定する鉄道車両用車輪の内部に存在する欠陥の寸法が、前記許容欠陥寸法以下であるか否かを検査する工程を含むことを特徴とする鉄道車両用車輪の製造方法。
- 前記許容欠陥寸法は、下記 (1) 式におけるモード II 下限界応力拡大係数範囲 ( ΔK II th ) に、 18MPa √ m または 20MPa √ m を代入することによって、求められる請求項1に記載された鉄道車両用車輪の製造方法。
a cr ={ 84.22 ΔK II th /(1.2 P st (0.002166D w 2 − 0.2422D w + 9.128) + 1000) } 2
・・・・・・・・・ (1)
ただし、a cr は許容欠陥の直径 (mm) を示し、P st は設計時に想定される静的輪重の最大値 (kN) を示し、 D w は新製時の車輪の直径 (inch) を示し、ΔK II th はモード下限界応力拡大係数範囲 (MPa √ m) を示す。
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